説明

測定治具

【課題】より好適に乗りかご床と秤装置との間の距離を測定できる測定治具を提供することである。
【解決手段】測定治具100は、乗りかご床と磁気的に接続するために磁化された固定平板部112と、案内棒部126の移動を案内するための貫通溝116を含む固定平板延伸部114とを有する固定部110と、固定平板部112と平行な状態で設けられる移動平板部122と、移動平板延伸部124と垂直となるように延伸し固定平板延伸部114の貫通溝116を挿通する案内棒部126を含む移動平板延伸部124とを有する移動部120と、案内棒部126を用いて移動平板部122を固定平板部112と平行な状態を保ちつつ移動させ、移動平板部122が秤装置に当接したときの移動平板部122と固定平板部112との間の距離を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定治具に係り、特に、エレベータの乗りかご床と、乗りかご床の下方に設けられる秤装置との間の間隙を測定するための測定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所において、エレベータが設置されている。エレベータには乗りかご内に乗れる乗客数、換言すれば、乗りかご内に乗車可能な総重量が規定されている。そして、乗りかご内の総重量は、乗りかご床の下方に設けられる秤装置により計測されている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、エレベータの秤装置診断方法として、エレベータのかご内が無人であることを検出するステップと、上記かごを所定階に停止させるステップを備える構成が開示されている。そして、上記かごの停止後、無負荷状態における上記かごの重量を秤装置によって測定するステップと、上記秤装置によって測定された無負荷状態における上記かごの重量が正常であるか否かを判定するステップと、無負荷状態における上記かごの重量が正常であると判定された場合に、上記かごを所定の一定加速度で移動させるステップを備える構成が開示されている。さらに、上記かごが所定の一定加速度で移動中に、上記秤装置によって上記かごの重量を測定するステップと、上記秤装置によって測定された一定加速度中における上記かごの重量が正常であるか否かを判定するステップと、を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗りかご内の総重量を正確に測定するために必要な点検として、乗りかご内に乗客が乗っていないときに、乗りかご床と秤装置との間の間隙が所定の距離となっているか否かを調べる点検作業がある。この点検作業を行う場合には、保守作業員は、乗りかごを最下階に移動させた後に、いわゆるエレベータの昇降路の最も下の部分にある、いわゆるピット部に入り、狭くて作業をしづらい環境の中で、乗りかご床と秤装置との間の間隙を測定する必要があるため、より簡単に測定を行なえることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、より好適に乗りかご床と秤装置との間の距離を測定できる測定治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測定治具は、エレベータの乗りかご床と、乗りかご床の下方に設けられる秤装置との間の間隙を測定するための測定治具であって、乗りかご床と磁気的に接続するために磁化された固定平板部と、固定平板部の平板面の端部から固定平板部の平板面と垂直となるように延伸し、案内棒部の移動を案内するための貫通溝を含む固定平板延伸部と、を有する固定部と、固定平板部と平行な状態で設けられる移動平板部と、移動平板部の平板面の端部から移動平板部の平板面と垂直となるように延伸する移動平板延伸部であって、移動平板延伸部の平板面と垂直となるように延伸し固定平板延伸部の貫通溝に挿通される案内棒部を含む移動平板延伸部と、を有する移動部と、案内棒部を用いて移動平板部を固定平板部と平行な状態を保ちつつ移動させ、移動平板部の平板面が秤装置に当接したときの移動平板部と固定平板部との間の距離を測定することで、乗りかご床と秤装置との間の間隙の距離を測定する手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る測定治具において、固定平板延伸部は、乗りかご床と秤装置との間の間隙の距離を測定するための目盛部を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る測定治具において、固定平板部の平板面積は、移動平板部の平板面積よりも大きいことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る測定治具において、固定平板延伸部は、移動平板延伸部の移動を移動平板延伸部の延伸方向に沿った方向への移動のみに規制する案内溝部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る測定治具において、案内棒部は、移動平板延伸部の移動を移動平板延伸部の延伸方向に沿った方向への移動のみに規制する機構を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る測定治具において、固定平板延伸部は、磁化された部材であり、移動平板部は、固定平板部に磁気的に接続されない部材であり、移動平板延伸部は、固定平板延伸部に磁気的に接続するために磁化された部材であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る測定治具において、案内棒部に締結される締結部材であって、締め付けることで案内棒部の移動を停止させる締結部材をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の測定治具によれば、固定平板部を乗りかご床に磁気的に接続した状態で、案内棒部を用いて移動平板部を移動させ、移動平板部の平板面が秤装置に当接したときの移動平板部と固定平板部との間の距離を測ることで、乗りかご床と秤装置との間の間隙の距離を測定することができる。これにより、狭くて作業をしづらい環境の中であっても、好適に乗りかご床と秤装置との間の距離を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施の形態において、エレベータの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、測定治具の斜視図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、乗りかご床と秤装置との間の間隙を測定する際の測定治具の側面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、図3のうち、矢印A方向から測定治具を見た様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、測定治具の第1変形例の斜視図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、図5の矢印X方向から測定治具の第1変形例を見た様子を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、図6に対応する測定治具の第2変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0017】
図1は、エレベータ10の構成を示す図である。エレベータ10は、巻上機14を中心として、巻上機14のシーブに巻き架けられた主ロープ7のうちの一方端には乗りかご2が取り付けられ、他方端にはカウンタウエイト16が取り付けられている。そして、エレベータ10のシステム全体の制御は、エレベータ制御部22によって行われている。ここで、巻上機14とエレベータ制御部22とが昇降路9の上方に位置するいわゆる機械室20に設置されている。また、昇降路9の下部には、いわゆるピット部9aが設けられている。
【0018】
カウンタウエイト16は、釣合い錘とも呼ばれ、いわゆるつるべ式エレベータシステムで用いられる錘である。カウンタウエイト16は、全体の形状は扁平で縦に長く、非常に重い鉄の塊であり、主ロープ7の一方端に接続されている乗りかご2との間でバランスを取っている。
【0019】
巻上機14は、主ロープ7の折り返し中間地点に設置され、電動機(モータ)と、それに連結された滑車(シーブ)に掛かる摩擦力によって、乗りかご2とカウンタウエイト16を昇降(上昇下降)させる機能を有する。この方法によって乗りかご2の昇降を行うと、主ロープ7の両端の重量バランスが良いので、比較的小さい力で主ロープ7に吊るされた乗りかご2を昇降させることができる。
【0020】
乗りかご2は、昇降路9内を昇降し、行先階設定釦部83によって設定された行先階まで乗客4を移動させるための箱型の構造物である。乗りかご2は、乗りかご枠部32と、乗りかご本体部34と、緩衝部材36と、秤装置38とを含んで構成される。乗りかご本体部34は、乗りかご操作盤8と、乗りかご扉6とを含んで構成される。
【0021】
乗りかご扉6は、乗りかご2が乗客4によって設定された行先階に着床したときに開閉する両開き、あるいは、片開き扉である。乗りかご扉6は、エレベータ制御部22の制御によって開閉制御される。エレベータ制御部22の開閉制御の1つである自動戸開閉制御機能によって、乗りかご扉6は、乗りかご2が着床した際に一旦開かれた後、所定の時間(例えば、10秒)が経過してから自動的に閉じられる。この自動戸開閉制御機能により、乗客4がスムーズに乗りかご2に乗降することができる。
【0022】
乗りかご操作盤8は、表示パネル84と、行先階設定釦部83と、開閉操作釦部86と、を含んで構成される。表示パネル84は、乗りかご2が移動しているときに、乗りかご2が現在位置している階床を表示する機能を有する。
【0023】
行先階設定釦部83は、乗客4が乗りかご2の行先階を設定するための押釦であり、1階設定押釦83aと、2階設定押釦83bと、3階設定押釦83cとを含んで構成される。
【0024】
1階設定押釦83aは、乗りかご2の行先階を1階に設定するための押釦である。2階設定押釦83bは、乗りかご2の行先階を2階に設定するための押釦である。3階設定押釦83cは、乗りかご2の行先階を3階に設定するための押釦である。
【0025】
開閉操作釦部86は、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗客4が手動で乗りかご扉6を開閉操作するための押釦であり、戸開押釦86aと、戸閉押釦86bとを含んで構成される。
【0026】
戸開押釦86aは、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗りかご扉6を手動操作で開くための押釦であり、乗りかご2が着床している際に押されると、強制的に乗りかご扉6を開くようにエレベータ制御部22に対して戸開信号を送信する機能を有する。戸開押釦86aは、乗客4が手で操作しやすい高さ位置に取り付けられている。
【0027】
戸閉押釦86bは、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗りかご扉6を手動操作で閉じるための押釦であり、乗りかご2が着床している際に押されると、強制的に乗りかご扉6を閉じるようにエレベータ制御部22に対して戸閉信号を送信する機能を有する。戸閉押釦86bは、乗客4が手で操作しやすい高さ位置に取り付けられている。
【0028】
乗りかご枠部32は、乗りかご本体部34の周囲を覆う枠体である。乗りかご枠部32と、乗りかご本体部34の乗りかご床342との間には、緩衝部材36と、秤装置38が設けられている。なお、乗りかご本体部34の乗りかご床342は、磁化された部材で構成されている。
【0029】
緩衝部材36は、乗りかご枠部32と、乗りかご本体部34の乗りかご床342との間の外縁部に設けられて、例えば、適当な強度を有するゴム部材を用いて構成することができる。緩衝部材36は、乗りかご本体部34に乗客4が乗り込んで乗りかご本体部34が沈んだ場合に乗りかご床342を支える緩衝材として機能する。
【0030】
秤装置38は、乗りかご枠部32の下側内壁面に設けられ、乗りかご本体部34に乗客が乗り込んでいないときは、乗りかご床342との間の間隙39が所定の距離を保つように配置されている。また、秤装置38は、乗りかご本体部34に乗客が乗り込んで、乗りかご床342と当接したときに、乗りかご本体部34に乗り込んでいる乗客4の総重量を計測する装置である。
【0031】
昇降路9の下部であるピット部9aには、万が一、乗りかご2が落下した際に衝撃を和らげる機能を果たす緩衝バッファ19が設けられている。緩衝バッファ19は、乗りかご枠部32の下面の中央に対応した位置に設けられている。
【0032】
エレベータ制御部22は、エレベータ10全般を制御する機能を有する。具体的には、エレベータ制御部22は、巻上機14に巻上させることで乗りかご2を昇降させる機能を有する。さらに、エレベータ制御部22は、乗りかご2が着床した際に乗りかご扉6を一旦開いた後、所定の時間(例えば、10秒)が経過してから自動的に乗りかご扉6を閉じる自動戸開閉制御機能を有している。そして、エレベータ制御部22は、自動戸開閉制御機能とは別に、戸開押釦86aからの戸開信号を受け取って乗りかご扉6を開く機能と、戸閉押釦86bからの戸閉信号を受け取って乗りかご扉6を閉じる機能とを有している。
【0033】
ここで、エレベータ10において、乗りかご2内の総重量を正確に測定するために必要な点検作業として、乗りかご2内に乗客4が乗っていないときに、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39が所定の距離となっているか否かを調べる必要がある。この点検作業を行う場合には、保守作業員は、乗りかご2を最下階(1階)に移動させた後にピット部9aに入り、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を測定する。
【0034】
測定治具100は、保守作業員がピット部9aに入って乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を測定する際に用いる治具である。図2は、測定治具100の斜視図である。測定治具100は、固定部110と、移動部120と、締結部材130とを含んで構成される。
【0035】
固定部110は、固定平板部112と、固定平板延伸部114と、貫通溝116と、目盛部118とを含んで構成される。
【0036】
固定平板部112は、その上側平板面が、乗りかご床342の下側平板面と磁気的に接続するために磁化された部材で構成された平板部材である。固定平板部112の平板面積は、後述する移動平板部122の平板面積よりも大きい。
【0037】
固定平板延伸部114は、固定平板部112の下側平板面の端部から固定平板部112の下側平板面と垂直になるように延伸した平板部材である。なお、固定平板延伸部114は、磁化されている。
【0038】
貫通溝116は、固定平板延伸部114のほぼ中央付近に形成される溝である。貫通溝116は、後述する案内棒部126を案内する方向(固定平板延伸部114の延伸方向(図2の矢印X方向あるいは矢印Y方向))に延伸して形成された貫通溝である。
【0039】
目盛部118は、固定平板延伸部114の平板面上で貫通溝116に沿って設けられる目盛である。目盛部118は、案内棒部126の位置が、固定平板部112と後述する移動平板部122との間の距離(換言すれば、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離)に対応するように目盛を設けている。
【0040】
移動平板部122は、固定平板部112と平行な状態で設けられる平板部材である。移動平板部122の平板面積は、固定平板部112の平板面積よりも小さい。移動平板部122は、案内棒部126を用いることにより固定平板部112と平行な状態を保ちつつ固定平板延伸部114の延伸方向(図2の矢印X方向あるいは矢印Y方向)に沿って移動する。なお、移動平板部122は、磁化されておらず、固定平板部112と磁気的に接続しない。
【0041】
移動平板延伸部124は、移動平板部122の下側平板面の端部から延伸して移動平板部122の下側平板面と垂直になるように延伸した平板部材である。なお、移動平板延伸部124は、磁化されており、その平板面は、固定平板延伸部114の平板面と合わさって磁気的に接続している。
【0042】
案内棒部126は、移動平板延伸部124の平板面のほぼ中央から移動平板延伸部124の平板面に垂直な方向に延伸する棒部材である。案内棒部126は、固定平板延伸部114の貫通溝116に対して挿通され、貫通溝116から突出した状態で設けられる。案内棒部126は、貫通溝116によって、矢印X方向あるいは矢印Y方向への移動が案内され、案内棒部126が移動すると移動部120が移動することとなる。また、案内棒部126には締結部材130が螺合するためのねじ切りが形成されている。
【0043】
締結部材130は、案内棒部126に螺合するためのねじ切りが形成され、締め付けることで固定平板延伸部114の平板面と当接する。このとき、締結部材130と移動平板延伸部124とによって固定平板延伸部114が強い力で挟持された状態となると、案内棒部126の移動が停止される。
【0044】
上記構成の測定治具100の作用について図1〜図4を用いて説明する。図3は、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を測定する際の測定治具100の側面図である。図4は、図3において矢印A方向から測定治具100を見た様子を示す図である。エレベータ10を長期間使用していると、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39が予め設定された所定の距離からずれてしまうことがあるため、定期的に点検する必要がある。
【0045】
ここで、保守作業員は、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を計測する場合に、エレベータ10を点検モード状態に移行させ、乗りかご2を最下階(1階)に移動させる。そして、保守作業員は、ピット部9aに入って、測定治具100を乗りかご床342と秤装置38との間に近づけて、秤装置38の上方において、乗りかご床342の下側平板面と固定平板部112の上側平板面とを磁気的に接続する。そして、締結部材130を緩めて、案内棒部126を矢印X方向あるいは矢印Y方向に移動可能な状態とし、案内棒部126を用いて移動平板部122を固定平板部112と平行な状態と保ちつつ矢印X方向あるいは矢印Y方向に移動させて、図3に示されるように、移動平板部122の下側平板面を秤装置38の先端部と当接させる。その後、締結部材130を締め付けて、案内棒部126の移動を停止させてから、測定治具100を乗りかご床342と秤装置38との間から取り外す。
【0046】
その後、作業しやすい場所において、案内棒部126の位置と、当該案内棒部126の位置に対応する目盛部118の位置の関係から、固定平板部112と移動平板部122との間の距離(換言すれば、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離)を読み取って測定することができる。なお、目盛部118を用いなくとも、締結部材130は締め付けられた状態であるため、固定平板部112と移動平板部122との間の距離は一定の状態に保たれている。したがって、保守作業員は、測定治具100を乗りかご床342と秤装置38との間から取り外して、作業しやすい場所において、定規等を用いて固定平板部112と移動平板部122との間の距離を直接計測することで、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を調べることもできる。
【0047】
上記のように、固定平板部112を乗りかご床342に磁気的に接続させた後に、案内棒部126を用いて移動平板部122を移動させて、乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を調べることができるため、保守作業員は片手だけで乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離の計測をすることができる。さらに、締結部材130を締め付けることで固定平板部112と移動平板部122との間の距離は一定の状態に保つことができるため、測定治具100を作業しやすい場所に移動させてから固定平板部112と移動平板部122との間の距離を計測することができる。したがって、保守作業員は、測定治具100を用いることにより、より好適に乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を測定することができる。
【0048】
なお、測定治具100のうち、固定平板部112は磁化されているが、移動平板部122は磁化されていないため、固定平板部112と移動平板部122とは磁気的に接続されない。したがって、移動平板部122の移動をさせやすい。また、測定治具100は、固定平板延伸部114と移動平板延伸部124の両方とも磁化されており、固定平板延伸部114の平板面と移動平板延伸部124の平板面が合わさって磁気的に接続される。したがって、案内棒部126を用いて移動平板延伸部124を移動させる場合に、固定平板延伸部114の延伸方向(移動平板延伸部124の延伸方向(矢印X方向あるいは矢印Y方向))に沿ってのみ延伸させやすい。また、測定治具100は、固定平板部112の平板面積が、移動平板部122の平板面積に比べて大きいため、安定した状態で乗りかご床342と磁気的に接続するため、好適に乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39の距離を測定することができる。
【0049】
次に、測定治具100の第1変形例である測定治具101について説明する。図5は、測定治具101の斜視図である。図6は、図5の矢印X方向から測定治具101を見た様子を示す図である。測定治具101と測定治具100の相違は、案内溝部128のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0050】
案内溝部128は、略コの字断面形状(図6参照)を有する溝部であり、その溝を構成する内側壁が移動平板延伸部124の3つの側面と接触する状態で固定平板延伸部114に取り付けられる。このとき、移動平板延伸部124のもう1つの側面(平板面)は、固定平板延伸部114の平板面と接触している状態であるため、移動平板延伸部124は、案内溝部128によって、その延伸方向(図5の矢印X方向あるいは矢印Y方向)に沿ってのみに移動するように案内される。
【0051】
続いて、測定治具101の作用について説明する。測定治具101は、保守作業員がエレベータ10の乗りかご床342と秤装置38の間の間隙39の距離を測定する際に用いることができる。ここで、測定治具101は、案内溝部128によって移動平板延伸部124の移動が延伸方向に沿った方向(図5の矢印X方向あるいは矢印Y方向)のみに規制されるため、保守作業員は簡単に片手で計測作業を行うことができる。したがって、保守作業員は、測定治具101を用いることにより、より簡単に乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39を計測することができる。
【0052】
次に、測定治具100の第2変形例である測定治具102について説明する。図7は、図6に対応する測定治具102の構成を示す図である。測定治具102と測定治具100の相違は、案内棒部127の形状のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0053】
案内棒部127は、移動平板延伸部124の平板面に垂直に延伸しており、図7に示されるように、貫通溝116に挿入されている部分127aは、その幅が貫通溝116の幅よりも少しだけ狭いが、貫通溝116から突出した部分127bは、貫通溝116の幅よりも広く、貫通溝116から突出した部分127bの端部が貫通溝116の端部に係合しているため、移動平板延伸部124は、その延伸方向(図5の矢印X方向あるいは矢印Y方向参照)に沿ってのみに移動するように案内される。
【0054】
続いて、測定治具102の作用について説明する。測定治具102は、測定治具100保守作業員がエレベータ10の乗りかご床342と秤装置38の間の間隙39の距離を測定する際に用いることができる。ここで、測定治具102は、移動平板延伸部124の移動を延伸方向に沿った方向(図5の矢印X方向あるいは矢印Y方向参照)のみに移動するように規制するための案内棒部127を有しているため、保守作業員はより簡単に片手で計測作業を行うことができる。したがって、保守作業員は、測定治具102を用いることにより、より簡単に乗りかご床342と秤装置38との間の間隙39を計測することができる。
【符号の説明】
【0055】
4 乗客、6 乗りかご扉、7 主ロープ、8 乗りかご操作盤、9 昇降路、9a ピット部、10 エレベータ、14 巻上機、16 カウンタウエイト、19 緩衝バッファ、20 機械室、22 エレベータ制御部、32 乗りかご枠部、34 乗りかご本体部、36 緩衝部材、38 秤装置、39 間隙、83 行先階設定釦部、83a 1階設定押釦、83b 2階設定押釦、83c 3階設定押釦、84 表示パネル、86 開閉操作釦部、86a 戸開押釦、86b 戸閉押釦、100,101,102 測定治具、110 固定部、112 固定平板部、114 固定平板延伸部、116 貫通溝、118 目盛部、120 移動部、122 移動平板部、124 移動平板延伸部、126,127 案内棒部、128 案内溝部、130 締結部材、342 乗りかご床。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご床と、乗りかご床の下方に設けられる秤装置との間の間隙を測定するための測定治具であって、
乗りかご床と磁気的に接続するために磁化された固定平板部と、固定平板部の平板面の端部から固定平板部の平板面と垂直となるように延伸し、案内棒部の移動を案内するための貫通溝を含む固定平板延伸部と、を有する固定部と、
固定平板部と平行な状態で設けられる移動平板部と、移動平板部の平板面の端部から移動平板部の平板面と垂直となるように延伸する移動平板延伸部であって、移動平板延伸部の平板面と垂直となるように延伸し固定平板延伸部の貫通溝に挿通される案内棒部を含む移動平板延伸部と、を有する移動部と、
案内棒部を用いて移動平板部を固定平板部と平行な状態を保ちつつ移動させ、移動平板部の平板面が秤装置に当接したときの移動平板部と固定平板部との間の距離を測定することで、乗りかご床と秤装置との間の間隙の距離を測定する手段と、
を備えることを特徴とする測定治具。
【請求項2】
請求項1に記載の測定治具において、
固定平板延伸部は、乗りかご床と秤装置との間の間隙の距離を測定するための目盛部を有することを特徴とする測定治具。
【請求項3】
請求項2に記載の測定治具において、
固定平板部の平板面積は、移動平板部の平板面積よりも大きいことを特徴とする測定治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の測定治具において、
固定平板延伸部は、
移動平板延伸部の移動を移動平板延伸部の延伸方向に沿った方向への移動のみに規制する案内溝部を有することを特徴とする測定治具。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の測定治具において、
案内棒部は、
移動平板延伸部の移動を移動平板延伸部の延伸方向に沿った方向への移動のみに規制する機構を有することを特徴とする測定治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の測定治具において、
固定平板延伸部は、磁化された部材であり、
移動平板部は、固定平板部に磁気的に接続されない部材であり、
移動平板延伸部は、固定平板延伸部に磁気的に接続するために磁化された部材であることを特徴とする測定治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の測定治具において、
案内棒部に締結される締結部材であって、締め付けることで案内棒部の移動を停止させる締結部材をさらに備えることを特徴とする測定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219248(P2011−219248A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92508(P2010−92508)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】