説明

測定試薬用担体粒子及び測定試薬

【課題】 高い測定感度及び測定精度で抗原抗体反応を測定することができ、長期安定性にも優れる測定試薬用担体粒子及び測定試薬を提供する。
【解決手段】 フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(A)と、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸リチウム塩を有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(B)とを含有し、担体粒子(A)及び担体粒子(B)は、平均粒子径が0.01〜1.5μmであり、担体粒子(A)は、粒子表面のスルホン酸基量が、0.005〜0.7μmol/mであり、担体粒子(B)は、サイクリックボルタンメトリ測定による粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量が、−10〜−40μAである測定試薬用担体粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫反応物質、核酸等の被測定物質(被検査物質)と特異的に結合する物質(検査物質)の担持用として好適な測定試薬用担体粒子及びそれを用いてなる測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原又は抗体等の血清学的活性物質を担体に吸着又は結合(以下、本操作を感作ともいう)させて免疫血清学的凝集反応又は凝集反応を行い、対応する抗体又は抗原等の存在を検査する免疫血清学的検査は、簡便かつ鋭敏な方法であるので、広く利用されている。
【0003】
免疫血清学的検査試薬としては、妊娠診断テスト、リウマチ因子を検出するRAテスト、C反応性タンパク質を検出するCRPテストや、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)、抗HBs抗体、β2ミクログロブリン抗体、マイコプラズマ抗原、核酸、核タンパク質、エストロゲン、抗エストロゲン抗体等を検出するための多くの検査試薬が開発されている。
【0004】
このような免疫血清学的検査試薬用の担体としては、ポリスチレン等の重合体粒子が広く用いられている。免疫血清学的検査試薬用の担体として用いられるポリスチレンラテックス粒子は、一般に粒子径が0.05〜1μmであり、粒子径分布が狭く粒子径の揃ったものが好ましい。このようなラテックス粒子は、公知の乳化重合の方法を用いて製造することができる(非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
免疫血清学的検査試薬用の担体として用いられる重合体粒子に要求される性能としては、抗原又は抗体等を重合体粒子に感作した状態のラテックス(以下、感作ラテックスという)中での重合体粒子のコロイド化学的安定性と免疫血清学的凝集反応性とが挙げられる。
しかし、重合体粒子のコロイド化学的安定性を向上させると、免疫血学的凝集反応性は低下し(感度の低下)、逆に免疫血清学的凝集反応性を高めるためにコロイド化学的安定性を低下させると、非特異的に凝集し実用に共し得なくなる。
【0006】
このように、互いに相反するコロイド化学的安定性と免疫血清学的凝集反応性とを同時に満足させる重合体粒子を得ることは従来極めて困難であった。特に近年、免疫血清学的検査の分野において、抗原又は抗体等の微量物質を定性的だけでなく定量的に測定することが重要な課題となっている。
【0007】
従来は、感作ラテックスをガラス板上で被測定物質と混合して反応させ、感作ラテックス中の重合体粒子の凝集状態を肉眼で観察することによって、被測定物質を定量的に検出していたが、最近では、凝集反応の肉眼観察の代わりに、例えば、分光光度計、濁度計、光錯乱測定装置等の光学的装置を用いて被測定物質を定量的に検出しようとする試みが多くなされている。このような方法としては、例えば、感作ラテックスが凝集する現象を利用して上澄液の濁度の減少率を測定する方法、感作ラテックス中の重合体粒子の凝集による吸光度や散乱光の変化を測定する方法等が知られている(非特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0008】
上記の原理を利用した測定装置として、日立製作所社製のHITACHI−7070、7150、7170、LPIA−A700、S500他多数の自動分析機が市販されている。これらの分析機は感作ラテックスの免疫血清学的凝集反応による反応系の吸光強度、散乱光強度等の光学的特性の変化を測定することによって被測定物質を定量的に検出しようとするものであり、それらに適した担体粒子としては特許文献5、特許文献6に記載の技術に基づき製造されたポリスチレン粒子が汎用されている。
【0009】
近年、老人人口増加により、国民保険、健康保険組合等の医療報酬負担増加による負の遺産が大きな社会問題として取り上げられ新聞等をにぎわしており、医療現場では治療から予防への転換がなされている。
また、医療現場においては、上記の各種検査後の血液等の医療廃棄物問題がにわかにクローズアップされ医療保険同様に社会問題化している。このため、RF、CRP、ASO等の一般検査項目については勿論のこと、癌マーカー、梅毒、肝炎、エイズ等の感染ウイルスに関連する項目についても、今まで以上に低濃度域で再現性良く検出できる測定試薬が求められている。これらの検査に用いられる自動分析機では、めざましい技術革新により、少量検体、少量試薬使用が可能となり、上記問題が改善されつつあるが、これら自動分析機に搭載し使用される測定試薬に用いられる不溶性担体粒子には満足しうるものが未だ開発されていない。
【0010】
広い濃度範囲(低濃度〜高濃度)にわたって抗原抗体反応の測定を可能にするための手段としては、これまでに、特許文献3に、少なくとも2つの異なった量の同一抗原又は抗体を負荷された2種の異なった粒子径のラテックス粒子を含有する、抗体及び抗原の検出及び測定のためのラテックス試薬が開示されており、特許文献4に、平均粒子径の異なる2種類以上のラテックスに抗体若しくは抗原を感作して混合した懸濁液、又は、平均粒子径の異なる2種類以上のラテックスを混合した後、抗体又は抗原を感作した懸濁液と、感作した抗体に対する抗原若しくは感作した抗原に対する抗体とを水溶媒中で反応させ、特定波長の光を照射してその吸光度変化又は散乱光の強度を測定する様にして、広い濃度範囲にわたって抗原抗体反応の測定を可能にする技術が開示されている。
【0011】
これらの技術によれば、小粒径ラテックスに起因する測定範囲の広さと、大粒径ラテックスに起因する低濃度領域での高感度という2つの性質をもった試薬を提供できると言うメリットがあり、現在多くの試薬に適用されている。しかし、試薬調製時に、これらに記載されている粒子径及びCV値と同じ値になるように定められた試薬プロトコールに従い製造しても、現行試薬と比較し乖離幅の大きい試薬、又は、全く異なる試薬性能しか得られないことがあった。
【0012】
また、非特許文献1には、スチレンモノマーの過硫酸塩による水溶液系重合方法が開示されている。このような方法は、乳化剤を用いないソープフリー重合方法であるが、試薬調製時の安定性が悪く、結局は乳化剤を添加して安定性を向上させる必要があった。
更に、特許文献5には、スチレンとスチレンスルホン酸塩とを乳化剤の不存在下で過硫酸塩を開始剤として共重合させ、このラテックスをアルカリ性の条件下で加熱処理することを特徴とするラテックスの製造方法が開示されている。しかしながら、この技術では、均一な粒子からなり安定性に優れたラテックスが得られにくいという問題点があった。また、スチレンモノマーに対する触媒量を増量すれば均一な粒子からなるラテックスの製造も可能ではあるが、得られたラテックスを試薬化した場合感度が低く、また、非特異的凝集反応をおこす確率が高く、充分な安定性が得られにくかった。
【0013】
加えて、特許文献7には、芳香族ビニル化合物と下記式(1)に示す化合物とを共重合体させて得られるポリマー粒子からなるが開示されている。しかしながら、これらの技術でも、測定精度という面では依然として不充分なものであった。
【0014】
【化1】

【特許文献1】特開昭51−9716号公報
【特許文献2】特開昭54−45393号公報
【特許文献3】特開昭63−24015号公報
【特許文献4】特開昭54−109494号公報
【特許文献5】特公昭58−50645号公報
【特許文献6】特公平1−36484号公報
【特許文献7】特開2000−355553号公報
【非特許文献1】高分子化学 22、481(1965)
【非特許文献2】Immunochemistry 12(1975) p349〜351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、免疫反応物質、核酸等の被測定物質(被検査物質)と特異的に結合する物質(検査物質)の担持用として好適な測定試薬用担体粒子及びそれを用いてなる測定試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(A)と、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸リチウム塩を有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(B)とを含有する測定試薬用担体粒子であって、前記担体粒子(A)及び前記担体粒子(B)は、平均粒子径が0.01〜1.5μmであり、担体粒子(A)は、粒子表面のスルホン酸基量が、0.005〜0.7μmol/mであり、担体粒子(B)は、サイクリックボルタンメトリ測定による粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量が、−10〜−40μAである測定試薬用担体粒子である。以下に本発明を詳述する。
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、担体粒子表面に存在するスルホン酸基量及び担体粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量が抗原抗体反応や試薬特性に重大な影響を及ぼすことを見出した。本発明者らは更に鋭意検討した結果、所定の平均粒子径を有し、粒子表面のスルホン酸量を所定の範囲内に調整した担体粒子と、スルホン酸リチウム荷電量を所定の範囲内に調整した担体粒子とを混合することにより、担体粒子表面に吸着させる抗体、抗原の種類に関わらず、低濃度領域から高濃度領域にいたる幅広い濃度範囲において、高い測定感度及び高い測定精度で抗原抗体反応を測定することが可能であるとともに、長期安定性にも優れる測定試薬用担体粒子及び測定試薬とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
本発明の測定試薬用担体粒子は、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(A)を含有する。
【0019】
上記フェニル基を有する重合性単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでもスチレンが好ましい。
【0020】
上記フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体としては特に限定されず、例えば、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、エチルスチレンスルホン酸塩、α−メチルスルホン酸塩等が挙げられる。上記スルホン酸塩としては、例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸アンモニウム、スルホン酸リチウム等が挙げられる。これらのフェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、スチレンスルホン酸塩が好適であり、スチレンスルホン酸ナトリウムがより好適である。
【0021】
上記フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントの含有量は、得られる測定試薬に求められる検出感度、測定時に使用する自動分析機の機種等により異なるが、好ましい上限は上記フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントに対して2重量%である。2重量%を超えると、重合時の温度を制御することが難しくなりクリーム化したり、担体粒子表面のスルホン酸基量の増加によりタンパク質の吸着量が不足して、得られた担体粒子を用いた試薬の感度が低下したり、非特異的な凝集の発生を防ぐために添加物を使用する必要が生じ、当該添加物によりセルが汚れるとともに、試薬粘度が上昇して分散性が低下したり、コストが上昇し高価な試薬となる等の不都合が生じる。より好ましい下限は0.0001重量%、より好ましい上限は1.3重量%である。更に好ましい下限は0.001重量%、更に好ましい上限は1.2重量%である。
【0022】
本発明の測定試薬用担体粒子において、上記担体粒子(A)は、粒子表面のスルホン酸基量の下限が0.005μmol/m、上限が0.7μmol/mである。
0.005μmol/m未満であると、非特異凝集が発生し、0.7μmol/mを超えると、表面基の異なる担体粒子(B)と混合する際に、凝集反応性が低下し、感度が鈍くなる。好ましい下限は0.02μmol/m、好ましい上限は0.5μmol/mである。上記範囲内とすることで、低濃度領域において高い検出感度を実現することができるとともに、試薬安定性を向上させることが可能となる。
なお、上記スルホン酸基量は、Jounal of Colloid and Intarface Sciencs、49(3)425、1974に記載されている測定方法により求めることができる。
【0023】
本発明の測定試薬用担体粒子は、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸リチウム塩を有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(B)を含有する。
【0024】
上記フェニル基とスルホン酸リチウム塩を有する重合性単量体としては、重合後の担体粒子表面にスルホン酸リチウム塩基を含有せしめることができる単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレンスルホン酸リチウム塩、ジビニルベンゼンスルホンリチウム酸塩、エチルスチレンスルホン酸リチウム塩、α−メチルスチレンスルホン酸リチウム塩等が挙げられる。なかでも、スチレンスルホン酸リチウム塩が好ましい。これらのスルホン酸リチウム塩とを有する重合性単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記フェニル基を有する重合性単量体としては、担体粒子(A)と同様のものを用いることができる。
【0025】
上記担体粒子(B)は、サイクリックボルタンメトリ測定による粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量の下限が−10μA、上限が−40μAである。−10μA未満であると、非特異的な凝集を起こしやすく、−40μAを超えると、凝集反応性が低下し感度が鈍くなることがある。
なお、本発明において、担体粒子のサイクリックボルタンメトリ測定による粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量は、以下のようにして測定する。即ち、透析セルロースチューブ膜に濾過処理後ラテックスを注入後、自動注廃水及び攪拌機能付ガラス円筒管透析装置(積水化学工業社製)を用い、7日間連続処理したラテックスを10%に調整後5mL採取し、蒸留水にて2〜10%濃度に希釈した試料を用い、W(作用電極、特殊カーボン電極)で、Ref(Ag・AgCl)電極、C(対極電極、Pt)を用い、−1〜1Vまでサイクリックボルタンメトリ(CV)を測定する。
【0026】
上記フェニル基とスルホン酸リチウム塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントの含有量の好ましい上限は、フェニル基を有する重合性単量体に対して4重量%である。4重量%を超えると、得られた担体粒子の凝集反応性が低下し感度が鈍くなる場合がある。より好ましい下限は0.0001重量%、より好ましい上限は1.8重量部であり、更に好ましい下限は0.001重量%、更に好ましい上限は1.2重量%である。
【0027】
本発明の測定試薬用担体粒子は、平均粒子径の下限が0.01μm、上限が1.5μmである。上記範囲外であると、測定試薬用担体粒子及び測定試薬の長期安定性が低下して、測定試薬が非特異的凝集を起こし易くなる。また、0.01μm未満であると、凝集による光学的変化量が小さすぎて、測定に必要な感度が得られなかったり、又は、試薬調製時の遠心分離工程に多くの時間がかかりすぎて効率が悪く試薬コストが高くなってしまう。また、1.5μmを超えると、被測定物質が多いときに、担体粒子の凝集による光学的変化量が測定可能領域を超えてしまい、高濃度領域では被測定物質の量に応じた光学的変化量が得られず、定量的な測定ができなくなってしまう。好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は0.8μmである。
【0028】
本発明の測定試薬用担体粒子において、上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の平均粒子径は、同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の平均粒子径を同一とした場合、ロット毎の品質のバラツキを抑制できるという利点があり、上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)を異なるものとした場合、低濃度領域から高濃度領域にいたる幅広い濃度範囲において、高い測定感度及び高い測定精度で抗原抗体反応を測定することができる。
【0029】
上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の好適な粒子径分布は、該粒子が使用される測定方法、測定機器によって異なるが、粒子径分布が狭く粒子径が揃っていることが好ましい。粒子径が揃っていないと試薬製造時のロット再現性が悪く、これらを試薬に用いた場合、測定結果の再現性が低下するため好ましくない。
上記粒子径分布は、下記式で定義される担体粒子の変動係数(Cv値)が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下である。
変動係数(Cv値)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
【0030】
上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の混合比率は特に限定されないが、固形分換算の重量比で、担体粒子(A)/担体粒子(B)=1/10〜10/1であることが好ましい。上記範囲外であると、低濃度領域から高濃度領域にいたる幅広い濃度範囲において、特に高濃度領域において、高い測定感度及び高い測定精度で抗原抗体反応を測定することが不可能となる。
【0031】
本発明の測定試薬用担体粒子は、上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)を製造した後、これらを混合することにより製造することができる。
上記担体粒子(A)を製造する方法としては、例えば、溶媒として水が仕込まれた反応器内に、上記フェニル基を有する重合性単量体、及び、上記フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体を加え、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気化で攪拌しながら加熱して共重合を行う方法等が挙げられる。
また、上記担体粒子(B)を製造する方法としては、例えば、溶媒として水が仕込まれた反応器内に、上記フェニル基を有する重合性単量体、及び、上記フェニル基とスルホン酸 リチウム塩とを有する重合性単量体を加え、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気化で攪拌しながら加熱して共重合を行う方法等が挙げられる。
【0032】
上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の製造方法における重合反応温度の好ましい下限は50℃、好ましい上限は90℃であり、より好ましい下限は60℃、より好ましい上限は85℃である。また、重合反応に要する時間は、重合性単量体組成、重合性単量体濃度、重合開始剤等により変わるが、通常5〜50時間である。
【0033】
上記重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、過硫酸塩類が使用され、具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が好適に用いられる。上記重合開始剤の添加量としては、重合性単量体100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が1重量部である。0.01重量部未満であると、重合がスムースに進行しない場合があり、1重量部を超えると、重合時にエマルションがクリーム状化したり、得られた担体粒子を試薬として使用する際に、抗原・抗体が吸着し難くなり非特異凝集を起こし易く、凝集反応性が低下し感度が鈍くなることがある。
【0034】
上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の共重合反応は、乳化剤の存在(共存)下で行ってもよいし、乳化剤の非存在(非共存)下で行ってもよい。
上記乳化剤としては特に限定されず、例えば、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等のノニオン性(非イオン性)界面活性剤;カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン性(陰イオン性)界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩等のカチオン性(陽イオン性)界面活性剤;ベタイン型、アミノカルボン酸塩型等の両面界面活性剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記乳化剤を用いた場合には、重合後の後処理工程において、例えば、重合後に透析等を行うことにより乳化剤を除去することが好ましい。
【0035】
上記乳化剤の添加量は、特に限定されないが、フェニル基を有する重合性単量体に対して、好ましい上限は1重量%であり、より好ましい上限は0.5重量%であり、更に好ましい下限は0.01重量%、更に好ましい上限は0.02重量%である。
【0036】
上述のとおり、上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)の共重合反応は、乳化剤の存在(共存)下で行ってもよいし、乳化剤の非存在(非共存)下で行ってもよいが、得られる担体粒子(A)及び担体粒子(B)の耐湿性や耐水性がより優れたものとなることから、乳化剤の非存在下で共重合反応を行うことが好ましい。換言すれば、上記担体粒子(A)及び上記担体粒子(B)は、実質的に乳化剤を含有していないことが好ましい。
【0037】
このようにして得られた本発明の測定試薬用担体粒子に、被測定物質と特異的に結合する物質を担持させることにより測定試薬を得ることができる。このような測定試薬もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明における被測定物質と特異的に結合する物質としては、免疫学的凝集反応及び凝集阻止反応を利用する免疫血清学的検査試薬や生化学測定法において、通常使用される生理活性物質であれば特に限定されないが、なかでも、抗原又は抗体として機能するものが好ましく用いられる。
【0039】
上記抗原又は抗体として機能するものとしては、例えば、タンパク質、核酸、核タンパク質、エストロゲン脂質等が挙げられる。
上記抗原としては、例えば、各種抗原、レセプター、酵素等が挙げられ、より具体的には、β2マイクログロブリン、C−反応性蛋白質(CRP)、ヒトフィブリノーゲン、フェリチン、リウマチ因子(RA)、α−フェトプロテイン(AFP)、マイコプラズマ抗原、HBs抗原等が例示される。
【0040】
上記抗体としては、例えば、各種の毒素や病原菌等に対する抗体が挙げられ、より具体的には、抗ストレプトリジンO抗体、抗エストロゲン抗体、β2マイクログロブリン抗体、梅毒トレポネーマ抗体、梅毒脂質抗原に対する抗体、HBs抗体、HBc抗体、HBe抗体等が例示される。また、上記抗体としては、免疫グロブリン分子自体の他、例えば、F(ab’)2のような免疫グロブリン分子の断片であってもよい。
【0041】
上記被測定物質と特異的に結合する物質の担持量は、その種類により異なるため特に限定されない。
本発明の測定試薬用担体粒子に、被測定物質と特異的に結合する物質を担持する方法としては特に制限されず、従来公知の方法により、物理的及び/又は化学的結合により担持させればよい。
【0042】
本発明の測定試薬は、適当な検体希釈液で希釈されてもよい。上記検体希釈液としてはpH5.0〜9.0の緩衝液であれば特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。
【0043】
本発明の測定試薬は、例えば、測定感度の向上や、抗原抗体反応の促進のために種々の増感剤を用いてもよい。上記増感剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル化多糖類;プルラン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0044】
本発明の測定試薬は、検体中に存在する他の物質により起こる非特異的凝集反応を抑制するため、又は、試薬の安定性を高めるために、アルブミン(牛血清アルブミン、卵性アルブミン)、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質、タンパク質分解物、アミノ酸、界面活性剤等を含有してもよい。
【0045】
本発明の測定試薬を用いて、検体中の被測定物質と、該被測定物質に特異的に結合する物質との反応により生じる凝集の度合いを光学的に測定することにより、検体中の被測定物質の反応量を測定することができる。
【0046】
上記凝集の度合いを光学的に測定する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、凝集の形成を粒度分布又は平均粒子径の変化としてとらえる方法、凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。上記の測定法においては、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分、すなわち増加速度に基づき凝集の程度を求める速度試験(レートアッセイ)、及び、通常は反応の終点と考えられるある時点で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の程度を求める終点試験(エンドポイントアッセイ)を利用できるが、測定の簡便性、迅速性の点から比濁法による速度試験を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、低濃度領域から高濃度領域にいたる幅広い濃度範囲において、特に高濃度領域において、高い測定感度及び高い測定精度で抗原抗体反応を測定することが可能であり、且つ、長期安定性にも優れる測定試薬用担体粒子及び測定試薬を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に本発明の実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
(担体粒子の製造)
攪拌機、冷却コイル、温度検出器、ジャケット等を装備したガラス反応器(容量2L)に、表1に記載した組成で水、スチレン及びスチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸リチウム塩を仕込み、窒素置換したのち、攪拌しながら反応温度を71〜73℃に制御して48時間共重合反応を行なった。重合開始剤としては過硫酸カリウムを用い、過硫酸カリウム0.5gを蒸留水10gに溶解し水溶液として使用した。得られたラテックスを取り出し、ペーパー濾紙にて濾過した。濾過処理後、得られた試料1〜8の担体粒子の平均粒子径、粒子径分布、及び、サイクリックボルタンメトリ測定による担体粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量を測定した。なお、担体粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡にて担体粒子を撮影し、直接続された画像解析装置により測定した。
【0050】
サイクリックボルタンメトリ測定による担体粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量は、透析セルロースチューブ膜に濾過処理後ラテックスを注入後、自動注廃水及び攪拌機能付ガラス円筒管透析装置(積水化学工業社製)を用い、7日間連続処理したラテックスを10%に調整後5mL採取し、蒸留水にて2.5〜10%濃度に希釈調整した試料を用い、W(作用電極、特殊カーボン電極)で、Ref(Ag・AgCl)電極、C(対極電極、Pt)を用い、−1〜1Vまでサイクリックボルタンメトリ(CV)の測定を行った。
結果を表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
(試薬の調製)
試料1の担体粒子を固形分濃度が10%濃度となるようにグリシン緩衝液に分散させたものを、8mLガラス管に250μL注入し、次いで、抗ヒトCRP山羊血清(DAKO社製、タンパク質濃度18mg/mL;以下、抗体溶液という)170μLを添加し、37℃で1時間攪拌し、担体粒子に抗ヒトCRP山羊抗体を吸着させた後、BSA(牛血清アルブミン)を1%含むグリシン緩衝液(pH8.5)2080μLを加え、37℃にて60分攪拌してブロッキング処理を行った。次にブロッキング処理品を、8mL遠心管に分取し、18000rpmで40分間遠心分離処理した後、上清を廃棄し、BSA含有グリシン緩衝液(pH8.5)に再分散させて、余剰抗体を除去するための洗浄処理を2回繰り返し行なった後、BSA含有グリシン緩衝液(pH8.5)を2.5mL添加し、超音波処理した後、更にBSA含有グリシン緩衝液(pH8.5)を追加し、最終液量を5mLにし、測定試薬とした。
【0053】
試料2〜7の担体粒子を用いた測定試薬は、担体粒子の表面積当たりの抗体感作量が試料1と同じになるようBSA含有グリシン緩衝液(pH8.5)を調整したこと、並びに、試料3、5、7の担体粒子に対する遠心処理条件を15000rpmで50分間とし、試料2、4、6の担体粒子に対する遠心処理条件を15000rpmで40分間としたこと以外は、試料1の担体粒子を用いた場合と同様にして調製した。なお、試料8では、重合中にクリーム状になり正常なラテックスが得られなかった。
【0054】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
得られた測定試薬を表2に示した混合比で混合することにより、混合測定試薬を作製した。
【0055】
(比較例5〜12)
試料1〜8の担体粒子を用いた測定試薬を混合せずそのまま使用した。
【0056】
【表2】

【0057】
(評価)
(1)試薬性能(感度)評価
上記の方法にて調製した各測定試薬を用いて以下の測定条件にて、CRP濃度0.08〜20mg/dLの検体測定時の吸光度変化量を測定した。
測定機種:日立7150形自動分析装置
検体:3μL
希釈液:270μL(1%BSA含有グリシン緩衝液(pH8.5))
測定試薬:90μL
測定波長:800nm
測光ポイント:2ポイント30−50p
なお、測定結果を図1〜4に示した。なお、比較例12については、重合中にクリーム状となったことから、測定は行わなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、上述の構成よりなるので、低濃度領域から高濃度領域にいたる幅広い濃度範囲において、特に高濃度領域において、高い測定感度及び高い測定精度で抗原抗体反応を測定することが可能であるとともに、長期安定性にも優れる測定試薬用担体粒子及び測定試薬を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1〜4の測定試薬の試薬性能評価の測定結果を示すグラフである。
【図2】比較例1〜4の測定試薬の試薬性能評価の測定結果を示すグラフである。
【図3】比較例5〜8の測定試薬の試薬性能評価の測定結果を示すグラフである。
【図4】比較例9〜11の測定試薬の試薬性能評価の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸塩とを有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(A)と、フェニル基を有する重合性単量体に由来するセグメントと、フェニル基とスルホン酸リチウム塩を有する重合性単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる担体粒子(B)とを含有する測定試薬用担体粒子であって、
前記担体粒子(A)及び前記担体粒子(B)は、平均粒子径が0.01〜1.5μmであり、
担体粒子(A)は、粒子表面のスルホン酸基量が、0.005〜0.7μmol/mであり、
担体粒子(B)は、サイクリックボルタンメトリ測定による粒子表面のスルホン酸リチウム荷電量が、−10〜−40μAである
ことを特徴とする測定試薬用担体粒子。
【請求項2】
担体粒子(A)と担体粒子(B)との混合比率が、固形分概算の重量比でA/B=1/10〜10/1であることを特徴とする請求項1記載の測定試薬用担体粒子。
【請求項3】
担体粒子(A)及び担体粒子(B)は、乳化剤の不存在化で共重合して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の測定試薬用担体粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の測定試薬担体粒子に、被測定物質と特異的に結合する物質を担持させてなることを特徴とする測定試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329959(P2006−329959A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157915(P2005−157915)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】