説明

測設点指示装置及び測量システム

【課題】容易に測設点の決定、杭打ち作業が行える様にした測設点指示装置及び測量システムを提供する。
【解決手段】レーザ光線17を発するレーザ発光器16と、中心部に空洞14を有する全周プリズム9と、空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、レーザ発光器16から発せられたレーザ光線17を任意の方向に偏向可能に設けられたミラー18と、ミラー18の姿勢又は回転を制御する制御部19とを有するプリズム装置5と、プリズム装置5を支持する支持体とを具備し、レーザ光線17がプリズム装置5の中心位置を所要の転写面に転写する様構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測量作業、例えば測設点の決定等の作業に用いられる測設点指示装置、及び測設点指示装置を具備する測量システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量作業、例えば測設点に杭打ちを行う測設作業では、既知点に測量装置が設けられ、測量装置から測設点(座標)を指示し、測設点に杭打ちを行う作業者(以下杭打ち作業者)に測設点の情報を伝達する。
【0003】
杭打ち作業者は測設点指示装置を支持し、測量装置から測設点指示装置の位置を測定し、測設点指示装置の現在位置と測設点とのずれを杭打ち作業者に伝達する。杭打ち作業者は、ずれがなくなる位置に測設点指示装置を支持して、該測設点指示装置が示す点を測設点として決定している。
【0004】
従来の測設点指示装置としては、プリズムが装着されたポールがあり、ポールの下端が測設点を示し、測量装置はプリズムの位置を測定している。ポールを垂直に支持した状態で、前記測量装置が測定する値が測設点の値と一致した場合に測設点が決定される。
【0005】
従って、ポールには、ポールが垂直であることを確認する為、気泡管等の傾き検出器が設けられている。
【0006】
この為、前記測量装置が測定する値が測設点の値と一致した場合でも、ポールが傾斜していると、ポールを垂直に修正(整準)する必要がある。ポールの傾斜を調整するとプリズムの位置は水平方向に変位し、測設点からずれてしまう。この為、更に測設点指示装置の位置を調整する必要がある。従って、正確な測設点の設定には測設点指示装置の位置調整と、整準とを繰返す面倒な作業となっていた。
【0007】
尚、特許文献1には、ポールにプリズムが装着された測設点指示装置が示され、特許文献2には3脚に水平方向に延出するアームが設けられ、アームの先端にプリズム、該プリズムの位置を地表に転写する下げ振りを具備する測設点指示装置が示され、特許文献3には3脚に水平方向に延出するアームが設けられ、アームの先端にプリズム、該プリズムの位置を地表に転写する手段としてレーザポインタを具備する測設点指示装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−204557号公報
【特許文献2】実開平3−27310号公報
【特許文献3】特開2001−227950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、容易に測設点の決定、杭打ち作業が行える様にした測設点指示装置及び測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、該ミラーの姿勢又は回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体とを具備し、前記レーザ光線が前記プリズム装置の中心位置を所要の転写面に転写する様構成された測設点指示装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御する測設点指示装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記プリズム装置が傾斜センサを有し、前記制御部は前記傾斜センサの検出結果に基づき、前記レーザ光線を鉛直又は水平に射出する様、前記ミラーを制御する測設点指示装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記支持体は傾動可能であり、該支持体の傾動により、前記レーザ光線の転写位置の調整を可能とした測設点指示装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、傾斜センサと、前記ミラーの回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体と、第1通信部とを具備する測設点指示装置と、第2通信部を有すると共に既知点に設置され、前記測設点指示装置の位置を測定する測量機とを具備し、該測量機は測定した前記全周プリズムの位置と測設点の位置とを前記測設点指示装置に送信し、前記制御部は前記第1通信部が受信した全周プリズムの位置と測設点の位置とに基づき前記レーザ光線が測設点を照射する様、前記ミラーを制御する測量システムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が、前記測設点及び全周プリズムの現在位置を含む所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御する測量システムに係り、又、前記所定のパターンは、直線であり、直線の一端は前記全周プリズムの現在位置であり、他端は測設点である測量システムに係り、又、前記所定のパターンは、前記全周プリズムの現在位置を中心とする円であり、円の半径は前記全周プリズムの現在位置から測設点迄の距離である測量システムに係るものであり、又、前記所定のパターンは、前記全周プリズムの現在位置を中心とする楕円であり、楕円の長軸の一端が測設点である測量システムに係るものである。
【0016】
又本発明は、前記制御部は、前記レーザ光線が鉛直下方に照射される様、前記ミラーの姿勢を制御する測量システムに係るものである。
【0017】
又本発明は、前記測設点指示装置は案内告知部を有し、前記全周プリズムの位置が測設点に対し、測定誤差範囲内となった場合、前記案内告知部が測定誤差範囲内となったことを告知する測量システムに係るものである。
【0018】
又本発明は、前記ミラーがMEMSミラーである測設点指示装置、又は、測量システムに係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、該ミラーの姿勢又は回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体とを具備し、前記レーザ光線が前記プリズム装置の中心位置を所要の転写面に転写する様構成されたので、前記支持体の状態に拘らず前記プリズム装置の中心位置を所要の転写面に容易に転写することができ、本測設点指示装置を用いて測設作業を行うことで、測設作業が容易となる。
【0020】
又本発明によれば、前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御するので、レーザ光線は測設点を示すだけでなく、作業者を測設点迄誘導する機能を奏する。
【0021】
又本発明によれば、前記プリズム装置が傾斜センサを有し、前記制御部は前記傾斜センサの検出結果に基づき、前記レーザ光線を鉛直又は水平に射出する様、前記ミラーを制御するので、地表での位置、座標を示すだけでなく、高さも示すことができる。
【0022】
又本発明によれば、前記支持体は傾動可能であり、該支持体の傾動により、前記レーザ光線の転写位置の調整を可能としたので、前記支持体の立設位置が測設点からずれていた場合でも、容易に測設点の決定が可能となる。
【0023】
又本発明によれば、レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、傾斜センサと、前記ミラーの回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体と、第1通信部とを具備する測設点指示装置と、第2通信部を有すると共に既知点に設置され、前記測設点指示装置の位置を測定する測量機とを具備し、該測量機は測定した前記全周プリズムの位置と測設点の位置とを前記測設点指示装置に送信し、前記制御部は前記第1通信部が受信した全周プリズムの位置と測設点の位置とに基づき前記レーザ光線が測設点を照射する様、前記ミラーを制御するので、前記支持体の状態に拘らず前記プリズム装置の中心位置を所要の転写面に容易に転写することができ、測設作業が容易且つ能率よく行える。
【0024】
又本発明によれば、前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が、前記測設点及び全周プリズムの現在位置を含む所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御するので、レーザ光線は測設点を示すだけでなく、作業者を測設点迄誘導する機能を奏する。
【0025】
又本発明によれば、前記制御部は、前記レーザ光線が鉛直下方に照射される様、前記ミラーの姿勢を制御するので、前記支持体の状態に拘らず、常にプリズム装置の中心を地表に転写することができる。
【0026】
又本発明によれば、前記測設点指示装置は案内告知部を有し、前記全周プリズムの位置が測設点に対し、測定誤差範囲内となった場合、前記案内告知部が測定誤差範囲内となったことを告知するので、作業者は、レーザ光線の照射位置を見ているだけで、測設作業を行え、作業性が向上する。
【0027】
又本発明によれば、前記ミラーはMEMSミラーであるので、プリズム装置を軽量化でき、又高速での回転が可能であるので、又任意方向に高速でレーザ光線を偏向できるので、任意のパターンでレーザ光線の照射が可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】測設点指示装置を具備した測量システムの概略図である。
【図2】本発明に係る実施例に用いられるプリズム装置の概略断面図である。
【図3】該実施例に於ける誘導装置と測量機の概略ブロック図である。
【図4】前記プリズム装置の作動説明図であり、(A)はプリズム装置が鉛直状態に支持されている場合、(B)はプリズム装置が傾斜して支持されている場合を示している。
【図5】本実施例のフローチャートである。
【図6】第2の実施例のプリズム装置の要部説明図である。
【図7】第2の実施例の作動説明図である。
【図8】第2の実施例の他の作動説明図である。
【図9】第1の応用例を示す作動説明図である。
【図10】第2の応用例を示す作動説明図である。
【図11】第3の応用例を示す作動説明図である。
【図12】第4の応用例を示す作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0030】
図1は、本発明の本実施例に係る測設点指示装置、及び該測設点指示装置を具備した測量システムを示しており、図中、1は測設点指示装置、2は既知の点に設置される測量機を示し、前記測設点指示装置1と前記測量機2は、それぞれ測設作業を実行するに必要な情報を授受できる通信部を具備している。
【0031】
該測量機2が前記測設点指示装置1の位置(測定座標)を測定し、測定座標と杭打ちする位置(杭打ち座標)とを比較し、測定座標が杭打ち座標に合致する様、誘導の情報を前記測設点指示装置1側に通信する。
【0032】
前記測設点指示装置1は棒状の支持体3、誘導装置4及びプリズム装置5を具備している。前記誘導装置4は前記支持体3の上端に設けられ、該支持体3に対して直角、水平方向に延出している。前記誘導装置4は前記プリズム装置5の支持体として機能し、前記誘導装置4の下面に前記プリズム装置5が設けられている。
【0033】
前記プリズム装置5の基本構成について、図2を参照して説明する。
【0034】
複数のプリズム8が、全周方向の任意の方向から入射する測距光を反射する様、周方向に配設され、前記複数のプリズム8は全周プリズム9を構成する。該全周プリズム9はプリズムホルダ10によって保持され、又該プリズムホルダ10を介してプリズム支持部6に固定される。前記プリズムホルダ10の底部には投光窓11が設けられる。
【0035】
前記プリズム装置5は、密閉構造となっており、内部には前記全周プリズム9の上下に空間12,13が形成されると共に前記全周プリズム9の中心部には空洞14が形成される。
【0036】
前記空間12には、傾斜センサ15、例えば加速度センサが設けられ、又レーザ光線17を射出するレーザ発光器16、例えばレーザポインタが設けられている。前記空洞14にはMEMSミラー18が設けられ、前記レーザ発光器16から射出されるレーザ光線17は、前記MEMSミラー18の中心に入射する様になっており、又該MEMSミラー18によって反射され、前記投光窓11を透して射出される様になっている。射出された前記レーザ光線17は、転写面、例えば地表に前記プリズム装置5の中心位置を転写する。
【0037】
該MEMSミラー18は、鉛直線を中心に回転可能であると共に紙面に対して垂直な水平線に対して回転可能であり、同一の回転中心で2方向に回転可能となっている。又、前記MEMSミラー18の回転中心に前記レーザ光線17が入射し、更に前記回転中心は前記全周プリズム9のプリズム中心と合致している。
【0038】
又、前記レーザ発光器16、前記MEMSミラー18を駆動制御する為の制御部19が前記空間12の所要位置に収納され、又前記傾斜センサ15からの検出結果は前記MEMSミラー18を制御する為の信号として前記制御部19に入力される。尚、該制御部19は、前記プリズム装置5の外部に設けてもよい。
【0039】
図3により、本実施例に係る測量システムの概略について説明する。
【0040】
上述した様に、該測量システムは、主に前記測設点指示装置1、前記測量機2から構成される。尚、前記測設点指示装置1は、以下に述べる前記誘導装置4を備えてもよい。
【0041】
図3に示される様に、前記誘導装置4は、作業状態、測設点迄の情報等を表示する表示部21、第1制御演算部22、測設点の座標等のデータ、前記測量機2から送信されたデータ等を保存する記憶部23、前記測量機2とデータの通信を行う第1通信部24、測設点と前記測設点指示装置1の位置合せ状態を告知する案内告知部25を有している。
【0042】
又、前記測量機2は、レーザ光線(測距光)17を照射し、測定対象物からの反射レーザ光線(反射測距光)を受光して測定対象物迄の測距を行い、又受光した時点の測定対象物の方向を測定する測距・測角部27、前記測量機2の測距作動を制御する第2制御演算部28、前記測設点指示装置1、前記誘導装置4との間でデータ通信を行う第2通信部29を具備している。
【0043】
前記第2制御演算部28には、予め測設点の座標が入力されている。前記測距・測角部27で前記全周プリズム9の位置(測定座標)を測定し、測定結果と測設点の座標とを比較し、前記第2通信部29を介して前記誘導装置4に、測定結果、測設点の座標、測設点と現在位置の相違、測設点への誘導についての情報等の情報をリアルタイムで無線通信する。
【0044】
前記誘導装置4は、前記第1通信部24を介して測定結果、測設点の座標に関する情報等、前記第2通信部29から送信される情報を受信する。前記第1制御演算部22は、受信した測設点の座標と、前記支持体3即ち前記全周プリズム9の現在位置を前記表示部21に表示し、或は測設点の座標と現在位置とのずれ量、更にずれ量を0にする為の移動方向等を前記表示部21に表示する。
【0045】
更に、前記測設点の座標と現在位置とのずれ量、更にずれ量を0にする為の移動方向等の情報を前記制御部19に入力する。
【0046】
該制御部19は、前記傾斜センサ15からの傾斜検出結果及び前記情報に基づき、前記MEMSミラー18の向き(姿勢)、動きを制御する。該MEMSミラー18の姿勢、動きが制御されることで、即ち前記レーザ光線17の射出方向、該レーザ光線17の動きが制御される。
【0047】
尚、前記制御部19には、入力される情報に応じた、前記MEMSミラー18の制御パターンが予め設定されており、制御パターンを選択することで、前記レーザ光線17の動きのパターンが決定され、前記レーザ光線17の照射点の軌跡が所定のパターンを描く様、前記制御部19が前記MEMSミラー18の動きを制御する。
【0048】
制御パターンとしては、前記レーザ光線17が直線上を往復走査する、或は円或は楕円を描く様に照射する等である。
【0049】
図4(A)(B)を参照して、前記MEMSミラー18の姿勢の制御、前記レーザ光線17の照射方向の制御の一例を説明する。尚、図4(A)(B)は、前記全周プリズム9の中心位置(座標)を地表にレーザ光線17で点として転写する場合を示しており、レーザ光線17は常に鉛直下方に照射される様、前記MEMSミラー18の姿勢が制御される。又、前記測量機2は、前記全周プリズム9の中心位置を測定する。
【0050】
図4(A)は、前記支持体3が鉛直な状態であり、鉛直な状態は前記傾斜センサ15で検出され、前記制御部19は前記MEMSミラー18で反射された前記レーザ光線17が鉛直下方に照射される様に前記MEMSミラー18の姿勢を制御する。
【0051】
図4(B)は、例えば前記全周プリズム9が、紙面上を時計方向にθ回転した状態を示している。前記全周プリズム9の傾斜は前記傾斜センサ15によって検出され、前記制御部19は前記傾斜センサ15の検出信号に基づき前記MEMSミラー18を反時計方向にθ/2回転させる。而して、前記MEMSミラー18で反射された前記レーザ光線17は鉛直下方に照射され、該レーザ光線17は前記全周プリズム9の中心を地表に転写する。
【0052】
而して、前記支持体3の傾きに拘らず、前記全周プリズム9の中心位置を正確に地表に転写することができる。
【0053】
更に、前記支持体3を測設点の近傍に立設し、該支持体3を立設点を中心に傾斜させ、或は該支持体3を中心に回転させ(捻転させ)、或は前記全周プリズム9の位置を調整することで、容易に全周プリズム9の位置を測設点に合致させることができる。又、該全周プリズム9の位置が、測設点の座標と合致した場合、或は前記全周プリズム9の位置が誤差範囲となった場合、前記案内告知部25から告知音、或は振動させ作業者に前記全周プリズム9の位置があったことを知らせる。
【0054】
前記案内告知部25が告知音、振動を発することで、作業者は、前記表示部21の表示を確認しなくても杭打ち作業が行える。或は、前記案内告知部25が告知音、振動を発する代りに、並行して前記レーザ光線17を点滅させる様にしてもよい。
【0055】
又、前記支持体3の姿勢に拘らず、前記レーザ光線17により正確に全周プリズム9の位置を地表に転写できるので、一度の位置合せで直ちに測設点のマーキング、更に杭打ちが可能となる。
【0056】
前記測量機2は、追尾機能を有するもの、追尾機能がないもの、いずれでもよいが、追尾機能を有する測量機では、1人作業で杭打ちが行える。
【0057】
図5を参照して、本実施例に係る杭打ち作業の流れを説明する。尚、以下は、追尾機能を有する測量機2、例えばトータルステーションを用いて、測設作業を行う場合について説明する。
【0058】
STEP:01 前記測量機2に、測設点の情報を設定入力する。
【0059】
STEP:02 前記測量機2を測設点の方向に向け、又測設点指示装置1を測設点の方向に保持する。
【0060】
STEP:03 前記測量機2を動作させ、前記全周プリズム9の追尾を開始する。追尾の開始と共に前記全周プリズム9の測距と角度(水平角、鉛直角)を連続測定する。測定結果、及び測設点の座標データが前記測設点指示装置1に送信される。
【0061】
STEP:04 前記測設点指示装置1では、前記測量機2から送信された情報に基づき、現在位置と測設点迄のずれ量が演算され、ずれ量が表示される。尚、ずれ量の表示としては、XYの座標値、或はずれの方向を示す矢印であり、又ずれ量に対応して矢印の長さを変えてもよい。
【0062】
STEP:05,STEP:06 前記全周プリズム9が、測設点に近づき、概略測設点となると、前記支持体3を地面に立てる。
【0063】
STEP:07 前記全周プリズム9の位置を前記測量機2の測距結果で確認し、前記全周プリズム9が測設点の鉛直上にあるかどうかを確認する。
【0064】
STEP:08 前記全周プリズム9が測設点の鉛直上にない場合は、前記支持体3を下端を中心に鉛直に対して傾動させ、或は前記支持体3の軸心を中心に回転(捻転)させ、前記全周プリズム9の位置が測設点の鉛直上となる様に前記全周プリズム9の位置調整を行う。
【0065】
STEP:09 前記全周プリズム9が測設点の鉛直上にあると確認できた状態で、前記レーザ発光器16からレーザ光線17を照射させる。射出される前記レーザ光線17は測設点を照射する。或は、前記レーザ発光器16からレーザ光線17を照射させつつ位置調整を行ってもよい。
【0066】
STEP:10 測設点をマーキングする(杭を打つ)。1つの測設作業が完了し、次の測設点の決定に移行する。
【0067】
上記測設点指示装置1の測設点、決定作業では、前記支持体3の姿勢(傾斜、捻転)に拘らず、前記レーザ発光器16は常に、前記全周プリズム9の中心の鉛直下方を照射するので、作業者は、前記支持体3を鉛直姿勢に維持することに注意を払わず、前記レーザ発光器16の照射位置を測設点に合致させることだけに専念すればよいので、作業性が著しく向上する。
【0068】
尚、測設点の情報については、前記誘導装置4の前記記憶部23に予め設定入力しておいてもよい。
【0069】
上記実施例では、前記レーザ光線17を鉛直方向に射出する様にしたが、前記制御部19によって前記MEMSミラー18の姿勢を制御して、所望の方向に前記レーザ光線17を射出する様にしてもよい。
【0070】
図6、図7は、第2の実施例を示している。第2の実施例では、レーザ光線17を鉛直方向でなく、所要の角度で射出させ、前記レーザ光線17の照射点が、測設点となる様に制御したものである。
【0071】
第2の実施例に於けるプリズム装置5は、傾斜センサ15の他に方位センサ31(例えば磁気センサ)を具備しており、傾斜の他にプリズム装置5の方位(向き)を検出できる様になっている。
【0072】
前記プリズム装置5の中心(プリズム中心)は、測量機2によって測定でき、更に前記プリズム装置5は前記支持体3の既知の高さに設けられているので、水平位置Dと高さ位置hが既知となる。
【0073】
前記測量機2によって、前記プリズム装置5の位置(座標)を測定することで、該プリズム装置5の現在位置と測設点Oの位置(座標)との比較により、現在位置に対する測設点Oの距離、方向が演算できる。更に、レーザ光線17の照射点を前記測設点Oに合致させる為の照射角αも演算できる。従って、前記MEMSミラー18の姿勢を制御することで、前記レーザ光線17を測設点Oに向って反射させることができる。
【0074】
従って、完全に前記プリズム装置5を測設点Oの位置に合致させなくとも、前記レーザ光線17により、測設点Oを地表に転写することができる。第2の実施例では、測設点指示装置1を測設点O近傍に立設することで、自動的に前記レーザ光線17による測設点Oの転写が行え、作業性は更に向上する。
【0075】
上記実施例では、レーザ光線17を静止させた状態で照射し、測設点を1点で示したが、前記レーザ光線17を動的に照射させ、該レーザ光線17の照射で測設点へと導く案内機能を付加してもよい。
【0076】
図8は、前記レーザ光線17を往復走査させる様、前記MEMSミラー18を動的に制御するものであり、該MEMSミラー18を動的に制御することで、地表に測設点Oを通過する、或は測設点Oを含む直線33を形成することができる。更に、該直線33の方向を測設点Oへの移動方向と合致させ、更に前記直線33の長さを現在位置と測設点O迄の距離に対応させた長さとする。従って描かれる直線33の方向と長さによって、杭打ち作業者は移動方向と、移動量を理解することができる。即ち、前記直線33によって、作業者が適切な移動ができる様に案内することができる。更に、前記直線33が示されることによって、作業者は誘導装置4の表示部21を見なくても作業が行える。
【0077】
尚、前記レーザ光線17を往復走査させるパターンの1つとしては、前記プリズム装置5の現在位置を始点(該プリズム装置5から鉛直下方に前記レーザ光線17を照射した点)として、現在位置と測設点Oとの間を往復走査させる等である。
【0078】
図9は、動的に照射する場合の応用例である。
【0079】
図9に示す応用例では、前記レーザ光線17によって円34が描かれる様に前記MEMSミラー18の姿勢を動的に制御するものである。
【0080】
前記円34は、測設点Oを通過する円であり、該円34はプリズム装置5の鉛直下を中心とし、測設点O迄の距離が半径となる。従って、円34の大きさが移動量(現在位置と測設点O迄の偏差)となる。従って、前記プリズム装置5が測設点Oに近づくと前記円34は小さくなる。従って、作業者は円34の大きさの変化を見ることで、移動方向が正しいかどうかを判断できる。尚、前記円34を描くと合わせて、前記直線33を描く様にしてもよい。或は、前記レーザ光線17により楕円を描く様にし、楕円の長軸の方向が作業者の移動方向である様にしてもよい。この場合、楕円の中心が測設点指示装置1の現在位置であり、楕円の長軸の一端が測設点Oとなる。
【0081】
図10は、第2の応用例を示している。第2の応用例では、前記プリズム装置5を上向きにしたものであり、上向きにすることで、鉛直上に測定された座標位置を転写することができる。
【0082】
図11は、第3の応用例を示し、第3の応用例では、前記プリズム装置5を横向きにし、水平方向にレーザ光線17を照射する様にしたものであり、第3の応用例では測定した高さを壁等に転写することができる。
【0083】
図12は、第4の応用例を示している。第4の応用例では、レーザ光線17を水平方向に射出すると共に往復走査させたものであり、壁面に水平ラインを形成するものである。
【0084】
第2の応用例〜第4の応用例のいずれも、プリズム装置5が傾斜センサ15を持っているので、該傾斜センサ15の検出結果に基づき、前記プリズム装置5の姿勢に応じて、所望の方向に、位置の転写、線の描写が行える。
【0085】
尚、上記実施例では、1つのMEMSミラー18により直交する2軸に関して回転可能としたが、1軸に関して回転可能なMEMSミラー18を回転軸が直交する様に組合わせてもよい。
【0086】
又、MEMSミラー18に限らず、回転可能に支持されたミラーと該ミラーを回転させる駆動部を備えていればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 測設点指示装置
2 測量機
3 支持体
4 誘導装置
5 プリズム装置
8 プリズム
9 全周プリズム
10 プリズムホルダ
14 空洞
15 傾斜センサ
16 レーザ発光器
17 レーザ光線
18 MEMSミラー
19 制御部
21 表示部
22 第1制御演算部
23 記憶部
24 第1通信部
25 案内告知部
27 測距・測角部
28 第2制御演算部
29 第2通信部
31 方位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、該ミラーの姿勢又は回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体とを具備し、前記レーザ光線が前記プリズム装置の中心位置を所要の転写面に転写する様構成されたことを特徴とする測設点指示装置。
【請求項2】
前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御する請求項1の測設点指示装置。
【請求項3】
前記プリズム装置が傾斜センサを有し、前記制御部は前記傾斜センサの検出結果に基づき、前記レーザ光線を鉛直又は水平に射出する様、前記ミラーを制御する請求項1又は請求項2の測設点指示装置。
【請求項4】
前記支持体は傾動可能であり、該支持体の傾動により、前記レーザ光線の転写位置の調整を可能とした請求項1〜請求項3のいずれかの測設点指示装置。
【請求項5】
レーザ光線を発するレーザ発光器と、中心部に空洞を有する全周プリズムと、前記空洞に設けられ、直交する2軸で回転可能であり、前記レーザ発光器から発せられたレーザ光線を任意の方向に偏向可能に設けられたミラーと、傾斜センサと、前記ミラーの回転を制御する制御部とを有するプリズム装置と、該プリズム装置を支持する支持体と、第1通信部とを具備する測設点指示装置と、第2通信部を有すると共に既知点に設置され、前記測設点指示装置の位置を測定する測量機とを具備し、該測量機は測定した前記全周プリズムの位置と測設点の位置とを前記測設点指示装置に送信し、前記制御部は前記第1通信部が受信した全周プリズムの位置と測設点の位置とに基づき前記レーザ光線が測設点を照射する様、前記ミラーを制御することを特徴とする測量システム。
【請求項6】
前記制御部は、転写面での前記レーザ光線の照射点の軌跡が、前記測設点及び全周プリズムの現在位置を含む所定のパターンとなる様に、前記ミラーを制御する請求項5の測量システム。
【請求項7】
前記所定のパターンは、直線であり、直線の一端は前記全周プリズムの現在位置であり、他端は測設点である請求項6の測量システム。
【請求項8】
前記所定のパターンは、前記全周プリズムの現在位置を中心とする円であり、円の半径は前記全周プリズムの現在位置から測設点迄の距離である請求項6の測量システム。
【請求項9】
前記所定のパターンは、前記全周プリズムの現在位置を中心とする楕円であり、楕円の長軸の一端が測設点である請求項6の測量システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記レーザ光線が鉛直下方に照射される様、前記ミラーの姿勢を制御する請求項6の測量システム。
【請求項11】
前記測設点指示装置は案内告知部を有し、前記全周プリズムの位置が測設点に対し、測定誤差範囲内となった場合、前記案内告知部が測定誤差範囲内となったことを告知する請求項5又は請求項10の測量システム。
【請求項12】
前記ミラーはMEMSミラーである請求項1〜請求項3のいずれかの測設点指示装置、又は、請求項5又は請求項6又は請求項10の測量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−233770(P2012−233770A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101912(P2011−101912)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)