説明

湯たんぽ

【課題】使用後の排水が容易に行えるようにする。
【解決手段】湯や冷水、氷などを貯留し、上面側の長手方向の一端部に給排水口14を有する湯たんぽ11において、前記給排水口14を下に向けるべく反転するとともに、前記給排水口14の高さを低くする傾斜した排水姿勢に保つための排水補助手段51を備える。この排水補助手段51は、湯たんぽ11の上面に膨出形成した凸部52で構成され、凸部52を接地したときに前記排水姿勢に保持し易くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湯や冷水、氷など(以下、明細書全体を通して単に「湯」という。)を入れて使用する湯たんぽに関し、より詳しくは、排水が容易に行えるような湯たんぽに関する。
【背景技術】
【0002】
湯たんぽの使用後は、内部の湯を毎回排出する。排出された湯は、必要に応じて洗顔や洗濯などに有効利用される。
【0003】
このような湯たんぽには、小さいものから大きいものまで様々あるが、一般的に用いられるものは、容量が1.6リットルから3.5リットル程度である。特に、樹脂製の湯たんぽでは変形を防止するために使用に際して湯を満タンにしなければならない。
【0004】
このため、湯たんぽは決して軽くはなく、両手で持っての排水が不可欠となる。しかも、排出される湯の乱流によって腕には負荷がかかり、湯量が多いと排水に時間もかかる。
【0005】
このような不都合があるため、例えば下記特許文献1に開示されているように、立てて排水できる湯たんぽが案出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3147043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された湯たんぽは、立てた姿勢で置ける湯たんぽの下部側面に給排水口を設けた構造である。この構造によって、排水は、湯たんぽを立ててから給排水口のキャップを外せば自動的に行える。
【0008】
しかし、給排水口は横を向いている。このため、広い流し台に排水するような場合はよいが、例えば洗面器や洗濯機などに排水する場合には、湯たんぽを立てて置くことができないので、結局のところ湯たんぽを手で持たなければならない。
【0009】
したがって、特に老人や女性が多い湯たんぽ利用者にとって、必ずしも排水作業が軽減されるわけではなかった。前述のように洗面器や洗濯機に対する排水が面倒であるので、湯の有効利用が行われにくいという側面もあった。
【0010】
また、給排水口が下部の側面にあるため、立てて置いただけでは湯が完全に排出されない。完全に排出することは、内部を清潔に保つために、特に金属製の湯たんぽの場合には耐蝕性を確保するために、大事である。にもかかわらず、立てて排水した後の残量が比較的多いので、傾けたり、振ったりして排水する作業が不可欠であった。それでも水切れはよくなく、残留水分により腐食してしまうこともあり、より簡単で完全な排水を可能にした水切れのよい湯たんぽが求められていた。また前述のように湯たんぽを傾けたり振ったりすると、湯が飛び散って周囲を濡らすことになり、周囲の掃除を強いることになるなど、湯たんぽの排水は意外と煩雑な作業となっていた。
【0011】
そこで、この発明は、より完全な排水が容易に行えるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、上面側に給排水口を有する湯たんぽであって、前記給排水口を下に向けるべく反転するとともに、前記給排水口の高さを低くする排水姿勢に保つための排水補助手段を備えた湯たんぽである。
【0013】
この排水補助手段は、例えば、前記排水姿勢で接地する支持部や、前記排水姿勢になるように重心を移動させる重錘、着脱可能に取付けられて、前記排水姿勢になるように提げる提げ手など、又はこれらの組み合わせで構成できる。
【0014】
排水を行うときには、排水補助手段が、湯たんぽを排水姿勢に保つのを補助するので、排水時の荷重や振動による負担を軽減する。このため、単に置いたり、軽く手を添えたりしておけば排水ができる。そのうえ、排水姿勢で給排水口は下を向いており高さは低いので、排水補助手段は残留する湯量を少なくする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、排水補助手段が排水時の荷重や振動による負担を軽減するので、排水作業が容易になる。しかも、排水配補助手段は湯たんぽを自立させるものではないので、広い流し台のような場所でなくても排水を容易にすることができる。そして、排水姿勢により残留する湯量が少なくなるので、完全な排水をすることが容易で、周囲を濡らしたりするような不都合も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】湯たんぽの基本構造を示す平面図と一部断面側面図。
【図2】湯たんぽの平面図と作用状態の断面図。
【図3】図2の湯たんぽを積み重ねた状態の一部断面側面図。
【図4】湯たんぽの側面図と作用状態の断面図。
【図5】作用状態を示す湯たんぽの断面図。
【図6】傾斜補助手段の平面図と、作用状態を示す湯たんぽの断面図。
【図7】パッキンの側面図と、湯たんぽの平面図と、作用状態を示す湯たんぽの断面図。
【図8】湯たんぽの平面図とその断面図。
【図9】湯たんぽの一部拡大側面図と、作用状態を示す側面図。
【図10】傾斜補助手段の側面図と、これを取付けた湯たんぽの断面図。
【図11】図10に示した湯たんぽの作用状態の断面図。
【図12】湯たんぽの平面図と、作用状態を示す断面図。
【図13】湯たんぽの構造を示す平面図と側面図と横断面図。
【図14】湯たんぽの構造を示す側面図と横断面図。
【図15】湯たんぽの構造を示す平面図と側面図と横断面図。
【図16】湯たんぽの側面図と、作用状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1(a)は湯たんぽ11の基本構造を示す平面図、図1(b)はその一部断面側面図であり、図1に示すような構造の湯たんぽ11は、図2〜図12に示したような排水補助手段51を備えることで、使用後の排水が容易に行えるように構成されている。
【0018】
まず、図1を用いて湯たんぽ11の基本構造を説明した後、前記排水補助手段51について説明する。
【0019】
図1に例示した湯たんぽ11の本体12は金属製で、平面視略小判型をなし、下面と上面が平らな全体として偏平な形状である。上下両面が平らであるので、湯たんぽ同士の積み重ねが可能である。このような形状の本体12は、上側部材21と下側部材31の外周縁22,32をカシメにより一体化して構成され、内部に湯を入れる貯留空間13が設けられている。
【0020】
前記上側部材21と下側部材31の表面のうち平らな部分には、直線状の凹凸23,33が形成され、補強と暖房(又は冷却)面積の拡大が図られている。図1の湯たんぽ11では、上側部材21の凹凸23は本体12の長手方向に延びるように複数条形成される一方、下側部材31の凹凸33は、本体12の長手方向と直交する方向に延びるように複数条形成されている。
【0021】
また上側部材21における長手方向の端部には円形の開口部24が形成され、この開口部24に口金部材25がカシメによって固定されて、給排水口14が形成される。口金部材25は、下端に固定鍔部25aを有する円筒状をなし、固定鍔部25aより上の外周面に雄ねじ25bが形成されている。前記固定鍔部25aが、前記開口部24に固定され、前記雄ねじ25bを有する部分が上側部材21の表面より上方に突出する。
【0022】
前記雄ねじ25bには、前記貯留空間13に貯留した湯の漏れを防止するキャップ41が固定される。キャップ41は、厚みの厚い円板状をなし、下面には円筒状の円筒状部42を突出させている。この円筒状部42の内側に、前記口金部材25に嵌めるための凹所43が形成され、この凹所43の内面に前記雄ねじ25bに螺合する雌ねじ43aが形成されている。
【0023】
前記円筒状部42の外周には、パッキン44が装着され、完全な止水が行えるように構成されている。パッキン44の厚みは、前記円筒状部42の高さと同等か、それ以上に設定されるとよい。
【0024】
なお、湯たんぽ11は、金属製でなくともよく、樹脂製や陶製であってもよく、上側部材21や下側部材31の形状や、凹凸23,33の形状、給排水口14の位置などの細部の態様についても前述の構成に限定されるものではない。例えば、上側部材21と下側部材31の凹凸23,33を、双方とも長手方向に長く形成してもよい。
【0025】
前記排水補助手段51は、上面側に形成された前記給排水口14を下に向けるべく本体を反転するとともに、前記給排水口14の高さを低くする排水姿勢に保つためのもので、接地した、又は手に持った湯たんぽ11を、前記排水姿勢に保つ、又はそれを助ける。前記給排水口14は本体12の長手方向の端部に形成されているので、前記排水姿勢では、給排水口14を有する端部が下がるように傾斜した姿勢となる。
【0026】
前記排水補助手段51は、例えば前記排水姿勢で接地する支持部や、前記排水姿勢になるように重心を移動させる重錘、本体に対して着脱可能に取付けられて前記排水姿勢になるように提げる提げ手、又はこれらの組み合わせで構成できる。排水補助手段51を支持部で構成する場合には、支持部の形成位置は、確実に前記排水姿勢にするため、本体12の重心位置よりも前記給排水口14の反対側に偏った位置に設定される。
【0027】
以下、図2〜図12を用いて、排水補助手段51について順に説明する。
【0028】
図2に示した湯たんぽ11は、前記支持部からなる排水補助手段51を有する例である。すなわち、排水補助手段51は上面側に設けられた凸部52で構成されており、本体12を構成する上側部材21の上面に、膨出形成によって上に向けて突出する前記凸部52を一体に有する。
【0029】
この凸部52は、上側部材21の長手方向における前記給排水口14の反対側に形成され、凸部52の上端部は半球状である。また、本体12の長手方向と直交する方向に間隔をあけて2個配設され、バランスよく接地して本体12が安定するように構成されている。なお、前記給排水口14が本体12の一端部に形成された湯たんぽ11では、凸部52の形成位置は、確実に前記排水姿勢にするため、本体12の重心位置よりも前記給排水口14の反対側に偏った位置に設定される。
【0030】
また、前記凸部52を形成した関係上、図3に示した如く湯たんぽ11同士を積み重ねできるように、本体12を構成する下側部材31における前記凸部52に対応する部位に、凸部52の嵌まり込みを許容する嵌合凹部34が形成されている。
【0031】
このような構成の湯たんぽ11では、排水に際しては、キャップ41を外して、またはキャップ41をつけたままの状態で本体12を反転させて排水姿勢にする。このとき、流し台などの湯を排出する部分の縁に上側部材21の表面を当てて排水補助手段51としての凸部52を接地させる。すると、本体12は排水姿勢で安定するので、キャップ41を外した場合にはそのままで、キャップ41をつけたままである場合にはキャップ41を外せば、貯留空間13内の湯は排出される。このとき、本体12に軽く手を添える程度の力で保持すればよく、容易に排水がなされる。
【0032】
上側部材21に形成された凹凸23は本体12の長手方向に長いので、排出される湯は凹凸23に沿って給排水口14方向に導かれ、排水は円滑になされる。また、給排水口14の高さは低いので、残留する湯量も少なくできる。
【0033】
図4に示した湯たんぽ11も、前記支持部からなる排水補助手段51を有する例である。この場合の支持部は、上面側に設けられた凹部53からなる。凹部53は、本体12を構成する上側部材21の上面の一部を、長手方向と直行する方向に長い形状に陥没して構成されている。凹部53の断面形状は、直角三角形の直角をなす2辺を有する形状に形成され、排水姿勢で流し台等の縁に接地できるように構成されている。
【0034】
このような構成の湯たんぽ11では、排水に際しては、キャップ41を外して、またはキャップ41をつけたままの状態で本体12を反転させて排水姿勢にする。このとき、湯を排出する部分の縁に上側部材21の凹部53を当てて接地させる。すると、本体12は排水姿勢で安定するので、キャップ41を外した場合にはそのままで、キャップ41をつけたままである場合にはキャップ41を外せば、貯留空間13内の湯は排出される。このとき、本体12に軽く手を添える程度の力で保持すればよく、容易に排水がなされる。
【0035】
この場合も、前述と同様に、上側部材21に形成された凹凸23は本体12の長手方向に長いので、排出される湯は凹凸23に沿って給排水口14に導かれ、排水は円滑になされる。また、給排水口14の高さは低いので、残留する湯量も少なくできる。以下の例においても同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0036】
図5に示した湯たんぽ11は、図2の湯たんぽ11のように凸部52からなる排水補助手段51を備えた例であるが、この場合には、排水補助手段51である凸部52を本体12に対して着脱可能な別部材で構成した例である。
【0037】
図5(a)の排水補助手段51は、凸部52となる凸部材54を磁石54aにより着脱可能にした構成である。すなわち、適宜形状に形成された凸部材54の下面に磁石54aが埋設され、排水時に凸部材54を固定できるように構成されている。凸部材54は、接地時のバランスを考慮して、複数個備えられる。前記磁石54aに代えて吸盤等を用いることもできる。
【0038】
図5(b)の排水補助手段51は、凸部52となる凸部材54を嵌合により着脱可能にした構成である。すなわち、本体12を構成する上側部材21の表面に、プレス成形により上側部材21の一部を上方に突出させ、円筒状の嵌合凹部26が形成されている。この嵌合凹部26は、接地時のバランスを考慮して、本体12の長手方向と直交する方向に複数個形成される。この嵌合凹部26に前記凸部材54の下部を嵌合すると、排水補助手段51が形成されることになる。
【0039】
図5(c)の排水補助手段51は、凸部となる凸部材54に、前記キャップ41を利用するようにした構成である。すなわち、本体12を構成する上側部材21の表面に、プレス成形により上側部材21の一部を上方に突出させ、キャップ41の一部、すなわち図1に示した構造のキャップ41の場合には下面に形成された凹所43を嵌合する嵌合凸部27が形成されている。この嵌合凸部27は、本体12の長手方向と直交する方向の中間位置に一個形成されればよい。嵌合凸部27に前記キャップ41を嵌合すると、排水補助手段51が形成されることになる。
【0040】
図5(b)の嵌合凹部26も図5(c)の嵌合凸部27も、給排水口14にキャップ41を取付けた時のキャップ41の上面と同等程度の高さに設定しておけば、湯たんぽ11を積み重ねるときに邪魔にならない。
【0041】
また、図5(c)のように、キャップ41を利用することによって、部材点数の低減ができる上に、キャップ41が不要な時、すなわち湯を注入するときや本体12を乾燥させるときにキャップ41を嵌合凸部27に嵌めておけばキャップ41の紛失防止を図ることができる。
【0042】
図6も、図5の湯たんぽ11のように着脱可能な凸部(凸部材)からなる排水補助手段51を備えた例であるが、この排水補助手段51は、合成樹脂やゴムのような部材を用いて板状に構成されており、給排水口14を利用して取付けられるようにした凸部材54からなる。
【0043】
すなわち、凸部材54は、図6(a)に示したように平面視短冊状をなし、一端部に、前記給排水口14の外周に嵌める嵌合穴54bを有し、他端部に、図6(b)に示したように断面三角形状に突出する隆起部54cを有する。この隆起部54cの先端が接地して、本体12を傾斜した排水姿勢にする。隆起部54cと前記嵌合穴54bとの間の位置には、前記隆起部54cよりも細かい凹凸で幅方向に延びる凹凸条54dが複数形成されている。この凹凸条54dは、流し台の縁などに引っ掛かりやすくするためのものである。
【0044】
このような凸部材54を備えた湯たんぽ11では、排水に際して、凸部材54を給排水口14に取り付けてから、本体12を排水姿勢にして、前記隆起部54cと凹凸条54dを接地させると、排水姿勢に保つことが助けられ、排水姿勢で安定させることができる。
【0045】
前記凸部材54は、給排水口14に嵌める嵌合穴54bを有する短冊状であるため、給排水口14に取付けた状態のままで湯たんぽ11として使用することもできる。この場合には、凸部材54にパッキン44の機能を兼ねさせることができる。
【0046】
図7に示した湯たんぽ11も、着脱可能な凸部材54からなる排水補助手段51を備えた例である。この排水補助手段51は、キャップ41に取付けられる前記パッキン44を、パッキンとしての機能のほかに、前記凸部材54を構成するための部材や、キャップ41や湯たんぽ11を吊り下げるための部材としての機能も有するように構成したものである。
【0047】
すなわち、前記凸部材54は、キャップ41と、このキャップ41に取付けられるパッキン44で構成される。
【0048】
キャップ41の構造は前述の通りであるが、パッキン44は前述とは異なる構成である。すなわち、図7(a)、図7(b)に示したように適宜の平面視形状をなす板状に形成され、給排水口14に嵌める嵌合穴44aを一端部に有し、他端部には、厚み方向に貫通する吊り下げ穴44bが形成されている。また、下面における前記吊り下げ穴44bを長手方向に挟む位置には、本体12の上側部材21に形成された凹凸23の凹み23aに嵌合可能な突部44c,44dが形成されている。突部44c,44dのうち、端部側の突部44dを長手方向の中間側の突部44cよりも低く形成し、図7(c)に示したように、本体12の下に挟み込んで本体12を排水姿勢に支持できるようにしている。前記パッキン44の嵌合穴44a近傍の厚さは、その下面がキャップ41の下面よりも下に位置するように設定されている。
【0049】
このような構成の湯たんぽ11では、排水に際してキャップ41を外し、パッキン44の他端部を折り返してキャップ41の上面にのせてから、排水姿勢にした本体12の下に敷く。パッキン44の下面は、キャップ41の下面よりも下に位置するので、接地したときにすべり止め作用が期待でき、同様に、本体12に対してもすべり止めができて、排水姿勢に安定的に支持できる。
【0050】
図8に示した湯たんぽ11は、前記重錘からなる排水補助手段51を有する例である。すなわち、排水補助手段51は、貯留空間53の湯が冷めて圧力の変化で本体12が変形しないように補強する支柱部材15の一部に重錘部55を備えている。
【0051】
支柱部材15は、金属板をプレス成形したもので、図8(a)に破線で示したように全体として平面視略Z字状に折曲形成されている。上下両縁には、図8(b)に示したように、上側部材21と下側部材31の凹凸23,33の形に合わせて凹凸縁15aが形成され、さらに湯を通すための切欠15bを備えており、給排水口14に近い部分が、複数層に折り返されて、その他の部位よりも重い前記重錘部51とされている。
【0052】
このような構成の湯たんぽ11では、排水に際してキャップ41を外し、またはキャップ41を付けた状態のまま、本体12の一部を流し台の縁などに当てて排水姿勢にすると、前記重錘部55の重さによって本体の重心が給排水口14側に移動し、給排水口14の高さが低い排水姿勢に安定し易くなる。
【0053】
前記重錘部55は、支柱部材15から分離して別部材としたものであってもよく、また支柱部材15なしで重錘のみを内蔵したものであってもよい。
【0054】
図9に示した湯たんぽ11も、前記重錘からなる排水補助手段51を有する例であるが、この場合には、重錘として別の部材であるキャップ41を用いている。
【0055】
すなわち、図9(a)に示したように本体12の上側部材21における給排水口14よりも端部側に、キャップ41に備えられた吊り下げ環45を係止可能にする係止部28を備えている。キャップ41は、例えば真鍮を削り出して形成されるものであるため、重錘としての重量を確保できる。
【0056】
このような構成の湯たんぽ11では、排水に際してキャップ41を外し、図9(b)に示したように、キャップ41の吊り下げ環45を係止部28に係止する。この状態で、本体12の一部を流し台の縁などに当てて排水姿勢にすると、前記重錘たるキャップ41の重さによって、給排水口14の高さが低い排水姿勢を安定し易くなる。
【0057】
図10(a)は、前記重錘となる重錘部材56で、例えばゴム塊で構成される。この重錘部材56は、短い円柱の外周面から中心にかけて切り込み部56aを有する断面略開ループ状で、前記切り込み部56aを開閉する弾性変形が可能な構造である。そして、切り込み部56aを挟む一方側の部分は板状に形成され、給排水口14に取付けるための嵌合穴56bを有する。前記切り込み部56aを挟む他方側の部分は、前記嵌合穴56b側の部分よりも厚肉に形成されて、重心部56cとされる。この重心部56cの先端側の内面には、本体12の下側部材31と、その凹凸33の凹み33aに嵌合する嵌合形状部56dが形成されている。これら嵌合穴56bと重心部56cの中間部分は弾性変形を可能にする変形ヒンジ部56eである。
【0058】
重錘部材56の切り込み部56aを開いて変形ヒンジ部56eを変形して、嵌合穴56bを給排水口14に取り付けるとともに、嵌合形状部56dを対応位置に嵌合させると、図10(b)に示したように重錘部材56は素材の有する弾性復帰力により、本体12に噛み付いた状態となる。
【0059】
このような重錘部材56を用いる湯たんぽ11では、重錘部材56を取付けて、本体12の一部を流し台の縁などに当てて排水姿勢にすると、図11(a)に示したように、前記重錘部材56の重さによって、給排水口14の高さが低い排水姿勢を安定し易くなる。
【0060】
前記重錘部材56は、重心部56cを厚肉に形成しているので、図11(b)に示したように本体12に取付けた状態で接地すると、本体12の給排水口14側を上に上げた傾斜状態に保持できる。このため、湯を注入するときにやかん等の口から放物線を描くように流れる湯を注入し易くなる。
【0061】
そして、湯たんぽを机の下に置いて足を暖めるために使用するような場合には、重錘部材56を取付けた状態のまま使用すると、暖を取り易い傾斜姿勢が容易に得られる。
【0062】
湯たんぽ11が金属製の場合には、湯たんぽに手で直接触れられないので、重錘部材56を取付けておくことによって、ゴムの断熱性により取り扱いの便利さも得られる。これらの場合、重錘部材56の嵌合穴56b部分は、前述のように、キャップ41のパッキン44の役割を果たすことになる。
【0063】
図12に示した湯たんぽ11は、前記提げ手からなる排水補助手段51を有する例である。すなわち、排水補助手段51として、合成樹脂またはゴム等からなるシート状の提げ手57を備えている。
【0064】
提げ手57は、適宜形状の帯状をなし、図12(a)に示したように、給排水口14に嵌合する嵌合穴57aを一端部に有し、他端部には、手を引掛ける取っ手57b部を有する。これら嵌合穴57aと取っ手57bとの間の部分は、本体を安定して支えられるように中間部ほど幅広に形成されている。
【0065】
このような提げ手57を備える湯たんぽでは、排水に際しては提げ手57を取付けて本体12を排水姿勢にする。提げ手57の長手方向の中間部を流し台等の縁に当てて位置を規制するとともに、一方の手で取っ手57bを持って本体12の後方を引き上げ、他方の手で本体12の給排水口14側の部分を押さえれば、その排水姿勢を安定させることができる。
【0066】
このような湯たんぽ11の場合には特に、提げ手57で湯たんぽ11を引き上げるようにするため、接地させるための接地面積を確保できない箇所、例えば洗面器や洗濯機で排水するような場合に、有効である。
【0067】
前記提げ手57を備えた湯たんぽ11では、スタッキングするときに提げ手57を取付けておくことで、重ね合わされる湯たんぽ11同士の間のすべり止めが可能になり、安定した状態で保管ができる。また、提げ手57の取っ手57bを引掛けて吊り下げて保管等をすることもできる。
【0068】
以上、排水補助手段51の例について説明した。このような排水補助手段51により、排水姿勢を保つことが補助される。この結果、傾斜した本体12内の湯に重力が効果的に作用して湯の自然な流下が促進され、排水時の荷重や振動による負担も軽減され、排水作業が容易になる。特に、湯たんぽ11の給排水口14を長手方向の両側に2個形成したり、給排水口14の大きさを大きめに形成したりして、あえて空気の導入を確保して排水が円滑になされるようにせずに、従来行われているように給排水口14を本体12の長手方向の一箇所に大きくなく形成しても、円滑で水切れのよい排水ができ、腐食の抑制を図ることができる。
【0069】
しかも、排水配補助手段51は湯たんぽ11を自立させるものではないので、広い流し台のような場所でなくても排水を容易にすることができる。つまり、洗面器や洗濯機等に対しても容易な排水が可能であるため、湯の有効利用を促進できる。
【0070】
そのうえ、排水姿勢で給排水口14は下を向き、高さは低いので、残留する湯量を少なくできるため、完全な排水をすることが容易である。従来のように下部の側面に給排水口を有する場合には、残量が多いため、傾けたり振ったりして排水をする作業が不可欠であったが、そのような作業によって周囲を濡らしたりするような不都合も回避できる。
【0071】
このような容易な排水をより促進するため、湯たんぽ11の本体12を構成する上側部材21を図13〜図15に示したように構成することができる。すなわち、上側部材21の内面に、前記排水姿勢にしたときに湯を前記給排水口14に導く導水路16が形成されている。
【0072】
図13の湯たんぽ11は、図13(a)の平面図に示したように、本体12の長手方向に沿って直線状ではなく、一端部が給排水口14に向けて収束するように湾曲させて凹凸23が形成されている。図13(b)の側面図におけるA−A断面図である図13(c)に示したように、上側部材21の内面における前記凹凸23の膨らみ23bに対応する凹部分が、前記導水路16となる。すなわち、導水路16は湯たんぽ11の表面に形成される凹凸23で構成されている。
【0073】
図13の例では、上側部材21の表面が平らな例を示したが、図14(a)に示したように、上側部材21の表面は上に凸に湾曲した形態であっても同様である。図14(b)に示したように、上側部材21の内面における前記凹凸23の膨らみ23bに対応する凹部分が、前記導水路16となる。
【0074】
このように導水路16を有することにより、排水姿勢にされたときに湯が導水路16を通って、給排水口14に向けて自然に流れ、速やかな排水が期待できる。
【0075】
図15に示した湯たんぽ11は、図15(a)の平面図に示したように、本体の長手方向と直交する方向に凹凸23が形成された湯たんぽ11において、これらの凹凸23を横断するように本体12の長手方向に延びる凸条23cを備えた例である。
【0076】
湯たんぽ11の縦断面図である図15(b)のA−A断面図である図15(c)に示したように、前記凸条23cの下面が前記導水路16となる。
【0077】
また、図15の例においては、口金部材25が上側部材21の表面から突出しないように構成されている。このため、給排水口14に、湯たんぽ11内に向けて突出する内筒部25cが形成されることになる。内筒部25cの内周面にはキャップ41が螺合する雌ねじが形成されている。
【0078】
このような内筒部25cがあると、導水路16の有無にかかわらず速やかな排水が出来ないので、内筒部25cに、内筒部25cの外側から内側への通水を許容する切欠部25dが形成されている。切欠部25dは、例えば導水路16の長さ方向に合わせて、本体12の長手方向の両側にスリット状に形成することができる。
【0079】
このように、導水路16を形成し、必要に応じて口金部材25に切欠部25dを形成することによって、前記排水補助手段51を備えたことと相俟って、円滑で、より完全に近い排水が容易に行えることになり、前述の効果をさらに高めることができる。
【0080】
図15では、上側部材21の上面が平らな例を示したが、図16(a)に示した湯たんぽ11のように上面が上に凸に湾曲した形状のものであってもよい。この場合でも、図15に示した湯たんぽ11と同様に導水路16を形成できる。
【0081】
このように上面が上に凸に湾曲した形状である場合には、図16(a)に示したように、最も隆起している上面の中央に給排水口14を設けると、本体12を傾斜しなくとも前記排水姿勢にすることができる。この場合には、図2に示した湯たんぽ11に備えた凸部52(排水補助手段51)と同様の凸部52(排水補助手段51)を有するものであるとよい。
【0082】
凸部52(排水補助手段51)は、例えば給排水口14を囲む4箇所、または3箇所に設けられる。また、凸部52(排水補助手段51)の高さは、給排水口14に取付けるキャップ41の上面と面一になるように設定する。
【0083】
このように構成された湯たんぽ11では、排水時には、図16(b)に示したように、単に反転しただけの排水姿勢にして接地させる。すると、接地面から浮いた給排水口14から湯は自動的に排出される。前記のように凸部52(排水補助手段51)を4箇所または3箇所に設けているので、設置時の安定性がよい。また、凸部52(排水補助手段51)の高さをキャップ41の上面と面一であるので、積み重ねが安定した状態で行える。さらに、湯たんぽ11を足の下に置いて使用する場合には、凸部52(排水補助手段51)を指圧に用いることができるという利点も有する。
【0084】
以上はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前記の構成のみに限定されるものではない。
【0085】
例えば、支持部からなる排水補助手段と、重錘からなる排水補助手段と、提げ手かなる排水補助手段を単独で備えるのではなく、これらのうち適宜のものを組み合わせて排水補助手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
11…湯たんぽ
14…給排水口
16…導水路
23…凹凸
25c…内筒部
25d…切欠部
51…排水補助手段
52…凸部
53…凹部
54…凸部材
55…重錘部
56…重錘部材
57…提げ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に給排水口を有する湯たんぽであって、
前記給排水口を下に向けるべく反転するとともに、前記給排水口の高さを低くする排水姿勢に保つための排水補助手段を備えた
湯たんぽ。
【請求項2】
前記排水補助手段が、前記排水姿勢で接地する支持部である
請求項1に記載の湯たんぽ。
【請求項3】
前記支持部が、上面側に設けられた凸部または凹部である
請求項2に記載の湯たんぽ。
【請求項4】
前記支持部が着脱可能である
請求項2に記載の湯たんぽ。
【請求項5】
前記排水補助手段が、前記排水姿勢になるように重心を移動させる重錘である
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の湯たんぽ。
【請求項6】
前記排水補助手段が、着脱可能に取付けられて、前記排水姿勢になるように提げる提げ手である
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の湯たんぽ。
【請求項7】
前記上面側の内面に、前記排水姿勢にしたときに水を前記給排水口に導く導水路が形成された
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の湯たんぽ。
【請求項8】
前記導水路が、当該湯たんぽの表面に形成される凹凸で構成された
請求項7に記載の湯たんぽ。
【請求項9】
前記給排水口に、当該湯たんぽ内に向けて突出する内筒部を有し、
該内筒部に、通水を許容する切欠部が形成された
請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の湯たんぽ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−90782(P2013−90782A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234511(P2011−234511)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(599064328)マルカ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】