説明

湿分分離器

【課題】セパレータに供給される蒸気の流量に偏りが生じることを抑制可能な湿分分離器を提供する。
【解決手段】湿分分離器10Gは、ハウジング12と、ハウジングの長手方向と直交する一方側に設けられ、当該長手方向に複数配列された蒸気入口と、ハウジングの長手方向において各蒸気入口の間に配列され、湿分を分離するセパレータと、セパレータに沿って長手方向に延びており、各蒸気入口からの蒸気をセパレータに分配可能な分配通路とを有している。蒸気入口の直下流側には、湿分分離器の横断面において蒸気入口側に底を有する略U字形状に湾曲し、蒸気入口から流入した蒸気流を2つの流れに分流する受衝体20が設けられており、蒸気入口は、開口から受衝体20に向かうに従って流路断面積が大きくなるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン等に用いられ、蒸気から湿分を分離して加熱する湿分分離器に関し、詳細には、湿分分離器の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントや火力発電プラント等には、一般的に、蒸気発生器や高圧蒸気タービンからの蒸気の湿分を分離し、加熱して、蒸気を低圧蒸気タービンに供給する湿分分離加熱器等の湿分分離加熱器が設けられている。湿分分離加熱器は、通常、蒸気から湿分を分離するセパレータと、湿分が分離された蒸気を再び加熱する伝熱管とを有している。
【0003】
加えて、湿分分離加熱器には、蒸気入口から流入した蒸気を、セパレータになるべく均等に分配するよう、セパレータに対応して湿分分離加熱器の長手方向に延びており、蒸気入口からの蒸気流を各セパレータに分配する通路(以下、分配通路と記す)が、内部に設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
下記の特許文献1に記載の湿分分離加熱器には、蒸気入口の上方(直下流側)にU字形断面の受衝体が設けられており、湿分分離加熱器の胴体(ハウジング)の内面に、胴体の長手方向に沿って一対の三角形断面の蒸気案内板が設けられている。この蒸気案内板により、受衝体と胴体内面との間において蒸気流の速度分布の偏りを抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3354706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、比較的大型の湿分分離器には、蒸気入口が複数設けられたものがある。例えば、図15に断面図を示すように、複数の蒸気入口14,14sを有する湿分分離器100においては、各蒸気入口14,14sから流入する蒸気の流量が均一でないことがある。各蒸気入口14,14sで流量が均一でないと、流量が比較的高い蒸気入口14の近くに設けられたセパレータ40においては、他のセパレータ40sに比べて高い流量の蒸気流が通過する、すなわち多量の湿分を分離することとなる。このため、各蒸気入口14,14sに均一な流量の蒸気流が流入する場合に比べて、蒸気流の圧力損失が大きくなるという問題が生じる。
【0007】
また、蒸気入口14の近傍に設けられた分配通路33においては、蒸気入口14から湿分分離加熱器100の長手方向に直交して入口近傍の通路31を流れる蒸気流が、矢印Bで示すように、湿分分離器の長手方向に延びる分配通路33に流入するときに、セパレータ40に蒸気を分配する分配孔36が形成された壁体34から、蒸気流が剥離するという問題が生じる虞がある。このように蒸気流の剥離が生じると、分配通路33内において蒸気流の偏りが生じ、当該分配通路33に対応して設けられたセパレータ40に均一な流量で蒸気を供給することができなくなるという問題が生じる。
【0008】
このように、湿分分離器100において、セパレータ40,40sに供給される蒸気流の流量、すなわちセパレータ40,40sにおいて分離される湿分(水分)に偏りが生じると、分離される湿分が他に比べて多量となる部位において侵食(エロージョン)が生じる虞がある。このため、湿分分離器100においては、セパレータ40,40sに供給される蒸気の流量に偏りが生じることを抑制する技術が求められている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、セパレータに供給される蒸気の流量に偏りが生じることを抑制可能な湿分分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る湿分分離器は、筒状をなすハウジングと、ハウジングの長手方向と直交する一方側に設けられ、当該長手方向に複数配列された蒸気入口と、ハウジングの長手方向において各蒸気入口の間に配列され、湿分を分離するセパレータと、セパレータに沿って長手方向に延びており、各蒸気入口からの蒸気をセパレータに分配可能な分配通路と、を有する湿分分離器であって、分配通路には、蒸気入口からの蒸気流を整流する整流部材が設けられており、蒸気入口の直下流側には、湿分分離器の横断面において蒸気入口側に底を有する略U字形状に湾曲し、蒸気入口から流入した蒸気流を2つの流れに分流する受衝体が設けられており、蒸気入口は、開口から受衝体に向かうに従って流路断面積が大きくなるよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る湿分分離器において、受衝体は、U字形状の底から端まで、曲率の中心に対して90度以上に亘って湾曲するよう構成されているものとすることができる。
【0012】
本発明に係る湿分分離器において、外装を構成するハウジングと受衝体との間隔が、蒸気入口の開口径と略同一となるよう構成されているものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る湿分分離器によれば、蒸気入口の直下流側には、湿分分離器の横断面において蒸気入口側に底を有する略U字形状に湾曲し、蒸気入口から流入した蒸気流を2つの流れに分流する受衝体が設けられており、蒸気入口は、開口から受衝体に向かうに従って流路断面積が大きくなるよう構成されているものとすることで、開口から流入した蒸気流を、蒸気入口内で減速して、受衝体に向けて流すことができる。これにより、受衝体において、蒸気流の剥離等による渦流が形成されることを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る湿分分離器において、受衝体は、U字形状の底から端まで、曲率の中心に対して90度以上に亘って湾曲するよう構成されているものとすることで、受衝体の端において蒸気流が剥離して渦流が生じてしまうことを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る湿分分離器において、外装を構成するハウジングと受衝体との間隔が、蒸気入口の開口径と略同一となるよう構成されているものとすることで、蒸気入口から流入して受衝体とハウジングとの間を流れる蒸気流に、流路断面積の変化に起因する剥離や渦流が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図2】実施例1に係る湿分分離加熱器の縦断面図である。
【図3】実施例1に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図2のX−X線による横断面図である。
【図4】実施例1に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図2のY−Y線による横断面図である。
【図5】実施例2に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図6】実施例3に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図7】実施例3に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図6のY−Y線による断面図である。
【図8】実施例4に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図9】実施例4に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図8のY−Y線による断面図である。
【図10】実施例5に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図11】実施例5に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図10のY−Y線による断面図である。
【図12】実施例6に係る湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【図13】実施例6に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図12のY−Y線による断面図である。
【図14】実施例7に係る湿分分離加熱器の横断面図であり、図3のX−X線による横断面図である。
【図15】湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図1〜図4を用いて説明する。図1は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。図2は、湿分分離加熱器の縦断面図である。図3は、図2のX−X線による横断面図である。図4は、図2のY−Y線による横断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、湿分分離加熱器10は、その外装形状を構成する円筒状のハウジング12と、蒸気から湿分を分離するセパレータ40,40sと、湿分が分離された蒸気を再び加熱する加熱器として伝熱管50,52が設けられている。セパレータ40,40sは、湿分分離加熱器10のハウジング12の長手方向(以下、単に「長手方向」と記す)に複数配列されている。一方、伝熱管50,52は、長手方向外側から中央に向けて延びている。
【0020】
湿分分離加熱器10は、ハウジング12の長手方向の一方側(鉛直下側)に設けられ、当該長手方向に複数配列された複数の蒸気入口14,14sを有している。湿分分離加熱器10の長手方向の略中央には、蒸気入口14が設けられており、蒸気入口14より長手方向外側、すなわち湿分分離加熱器10の端部側には、蒸気入口14sが設けられている。蒸気入口14,14sには、図示しない高圧蒸気タービンや蒸気発生器から蒸気が流入する。セパレータ40は、ハウジング12の長手方向において、各蒸気入口14,14sの間に配列されている。
【0021】
また、湿分分離加熱器10には、長手方向の略中央の蒸気入口14に対応して蒸気出口55が設けられており、長手方向外側にある蒸気入口14sに対応して蒸気出口55sが設けられている。すなわち、蒸気出口55,55sは、湿分分離加熱器10の軸心を挟んで、対応する蒸気入口14,14sと対向するよう配置されている。
【0022】
また、図1及び図3に示すように、湿分分離加熱器10には、蒸気入口14,14sからの蒸気を、セパレータ40,40sに導く蒸気流路として、蒸気入口14,14sと連続して長手方向と略直交する方向を蒸気出口50,50s側に延びている入口通路31,31sと、入口通路31,31sから長手方向にセパレータ40,40sに沿って長手方向に延びており、各蒸気入口14,14sから入口通路31,1sに流入した蒸気をセパレータ40,40sに分配する分配通路33,33sが設けられている。なお、湿分分離加熱器10において、セパレータ40,40sは、分配通路33,33sに対して鉛直下側に位置するよう配設されている。
【0023】
図3に示すように、湿分分離加熱器10のハウジング12内には、蒸気入口14に対して蒸気流の流動方向の直下流側すなわち蒸気出口55側には、蒸気入口14から流入した蒸気流を、2つの流れに分流する壁体(以下、受衝体と記す)20が設けられている。受衝体20は、湿分分離加熱器10の横断面において、蒸気入口14側に底を有する略U字形状に湾曲して設けられており、湿分分離加熱器10の縦断面を規定する仮想平面(図に一点鎖線Bで示す)について線対称な形状で構成されている。
【0024】
なお、本実施例において「横断面」とは、湿分分離加熱器10の長手方向すなわち軸心に対して直交する断面である。これに対して「縦断面」とは、湿分分離加熱器10を含むよう長手方向に延びており、蒸気入口14,14s及び蒸気出口55,55sを通る断面である。
【0025】
受衝体20は、蒸気入口14,14sからの蒸気流を、2つの流れに分流して、矢印Aで示すように、ハウジング12と受衝体20との間に流すこととなる。このようにして、湿分分離加熱器10のハウジング12と受衝体20との間には、蒸気入口14からの蒸気流を、分配通路33に導く入口通路31が形成されている。入口通路31は、図3に示すように、ハウジング12と、蒸気出口55を覆う壁体22,23に囲まれて構成されている。なお、図1及び図2に示す蒸気入口14sの直下流側には、蒸気入口14と同様に、受衝体20sが設けられており、ハウジング12との間に、入口通路31sが形成されている。
【0026】
一方、分配通路33は、図4に示すように、ハウジング12と、セパレータ40側に設けられた壁体34と、当該壁体34に結合され上下方向に延びる壁体24と、当該壁体24の端とハウジング12とを結合する壁体23に囲まれて構成されている。これら壁体23,24,34により、分配通路33は、伝熱管50,52が通る空間44と仕切られている。分配通路33を区画する壁体23,24,34のうち、セパレータ40側の壁体34には、分配通路33とセパレータ40側の空間とを連通させる孔であり、分配通路33を流れる蒸気を、各セパレータ40に分配する分配孔36が形成されている。
【0027】
このようにして横断面が構成された分配通路33は、図1に示すように、長手方向に延びており、セパレータ40に沿って形成されている。分配通路33のうち長手方向外側の端部、詳細には、分配通路33のうち中央側の入口通路31に開口する端と,長手方向外側の入口通路31sに開口する端には、それぞれ複数の貫通孔62が形成された多孔板60が設けられている。多孔板60は、板状の部材であり、分配通路33を塞ぐように当該分配通路33の横断面に沿って延びている。多孔板60は、その全面に亘って複数の貫通孔62が配列されている。分配通路33と入口通路31及び入口通路31sは、多孔板60の貫通孔62を介して連通している。
【0028】
以上のように構成された湿分分離加熱器10は、図3に示すように、蒸気入口14から蒸気が流入すると、受衝体20により2つの蒸気流に分流され、矢印Aで示すように、入口通路31により分配通路33に向けて多孔板60に導かれる。蒸気流は、図1に矢印Bで示すように、多孔板60の貫通孔62を通って分配通路に流入する。多孔板60は、複数の貫通孔62を通過する蒸気流に流路抵抗を付与して整流することで、入口通路31から分配通路33に流入する蒸気流の剥離及び速度分布の偏りを抑制する。
【0029】
整流された蒸気流は、図1及び図4に矢印Cで示すように、壁体34の分配孔36を通ってセパレータ40に向けて流れ、図4に矢印Dで示すように当該セパレータ40を通過する。セパレータ40は、蒸気に含まれる湿分を分離して水として湿分分離加熱器10外に排出する。セパレータ40を通過した蒸気流は、湿分が分離されて湿り度が低下する。この蒸気は、伝熱管50,52を有する空間44に流れる。図2に矢印Eで示すように、湿分が分離された蒸気は、蒸気出口55又は蒸気出口55sに向けて、伝熱管50,52に沿って空間44を流れ、当該伝熱管50,52により加熱されて過熱蒸気となる。この蒸気は、矢印Fで示すように、蒸気出口55から湿分分離加熱器10外に流出して、低圧蒸気タービン(図示せず)等に供給される。
【0030】
以上に説明したように本実施例に係る湿分分離加熱器10は、筒状をなすハウジング12と、ハウジング12の長手方向と直交する一方側に設けられ、当該長手方向に複数配列された蒸気入口14,14sと、ハウジング12の長手方向において各蒸気入口14,14sの間に配列され、湿分を分離するセパレータ40と、セパレータ40に沿って長手方向に延びており、各蒸気入口14,14sからの蒸気をセパレータ40に分配可能な分配通路33とを有し、分配通路33には、蒸気入口14,14sからの蒸気流を整流する整流部材として多孔板60が設けられている。分配通路33において蒸気流を整流することで、分配通路33からセパレータ40に分配される蒸気流の流量に偏りが生じることを抑制することができる。
【0031】
湿分分離加熱器10は、分配通路33のうち少なくとも長手方向の端部には、当該分配通路33の横断面に沿って設けられ、複数の貫通孔62が配列された多孔板60を有するものとしたので、蒸気入口14,14sから分配通路33に流入する蒸気流に剥離が生じることを抑制することができる。分配通路33を流れる蒸気流を整流されたものとすることができ、セパレータ40に分配される蒸気流の流量に偏りが生じることを抑制することができる。
【実施例2】
【0032】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図5を用いて説明する。図5は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。なお、実施例1に係る湿分分離加熱器と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Bにおいては、分配通路33の長手方向の略中央に、多孔板60Bが設けられている。多孔板60Bの構成は、分配通路33の端部に設けられた多孔板60と略同一であり、複数の貫通孔62が形成されている。
【0034】
このように構成された湿分分離加熱器10Bは、入口通路31から多孔板60を通過して分配通路33に流入した蒸気流に、さらに、多孔板60Bにより流路抵抗を付与して整流することができる。これにより、分配通路33内における蒸気流の速度分布の偏りを抑制して、分配通路33からセパレータ40に分配される蒸気流の流量に偏りが生じることを、より確実に抑制することができる。
【実施例3】
【0035】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。図7は、図6のY−Y線による横断面図である。なお、実施例1に係る湿分分離加熱器と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図6及び図7に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Cにおいては、当該分配通路33を流れる蒸気流を絞る絞り部材66,66Bが設けられている。分配通路33のうち長手方向の端部には、絞り部材66が設けられており、長手方向の略中央には、絞り部材66Bが設けられている。絞り部材66,66Bは、貫通孔68が略中央に単数形成された平板状又はブロック状の部材であり、分配通路33を塞ぐように当該分配通路33の横断面に沿って延びている。
【0037】
湿分分離加熱器10Cにおいて、入口通路31からの蒸気流は、絞り部材66により流れを絞られて、分配通路33内に流入する。絞り部材66より蒸気流に流路抵抗を付与し、貫通孔68により絞って分配通路33内に流すことで、分配通路33内における蒸気流の速度分布の偏り、すなわち分配通路33内における圧力の偏りを抑制することが可能となる。
【0038】
このように本実施例に係る湿分分離加熱器10Cにおいては、蒸気入口14,14sからの蒸気流を整流する整流部材として、分配通路33において長手方向の蒸気流を絞る絞り部材66,66Bが設けられているものとしたので、分配通路33内の蒸気流の速度分布の偏りすなわち分配通路33内における圧力の偏りを抑制することができる。
【0039】
また、本実施例に係る湿分分離加熱器10Cにおいて、絞り部材66,66Bは、分配通路の横断面に沿って延びており、蒸気流の流路となる貫通孔68が略中央に単数形成されて構成されているものとすることで、分配通路33の横断面に沿って延びる部材に、貫通孔68を単数形成するだけで、長手方向の蒸気流を絞る絞り部材66,66Bを容易に実現することができる。
【実施例4】
【0040】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。図9は、図8のY−Y線による横断面図である。なお、実施例1に係る湿分分離加熱器と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8及び図9に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Dにおいては、鉛直下側に設けられ、分配通路33,33sの蒸気をセパレータ40,40sに分配する分配孔36に面しており、セパレータ40,40sと連通している通路33a,33sa(以下、セパレータ側通路と記す)と、セパレータ40,40sを有しない側すなわち鉛直上側に設けられ、分配孔36に面していない通路33c,33sc(以下、非セパレータ側通路と記す)に、上述の分配通路33,33sを仕切る水平仕切板70が設けられている。
【0042】
水平仕切板70は、板状の部材であり、図9に示すように横断面において壁体34と略平行に延びている。セパレータ側通路33a,33saは、この横断面を規定する壁体34に形成された分配孔36を介してセパレータ40,40sと直接、連通している。
【0043】
また、水平仕切板70は、図8に示すように、長手方向に延びており、水平仕切板70の長手方向内側の端70aは、長手方向の略中央にある入口通路31に達しており、長手方向外側の端70cは、長手方向外側の入口通路31sより外側に延びている。つまり、水平仕切板70は、長手方向内側の分配通路33(33a,33c)から、長手方向外側の分配通路33s(33sa,33sc)まで、複数の分配通路33、33sに亘って延びている。
【0044】
以上のように構成された湿分分離加熱器10Dにおいては、図8に示すように、蒸気入口14から入口通路31に蒸気が流入すると、水平仕切板70の長手方向内側の端70aにおいて、蒸気流をセパレータ側通路33aと非セパレータ側通路33cに分流して、長手方向外側に向けて流すことができる。セパレータ側通路33aを流れる蒸気は、図9に示すように、分配孔36から長手方向内側のセパレータ40に分配される。
【0045】
一方、入口通路31から非セパレータ側通路33cに流入した蒸気は、入口通路31sよりも長手方向外側にある非セパレータ通路33scに流れ、水平仕切板70の長手方向外側の端70cから、入口通路31sより長手方向外側にあるセパレータ通路33saに流入する。そして、セパレータ通路33saから分配孔36を介して長手方向外側にあるセパレータ40sに分配される。なお、長手方向外側にある蒸気入口14sから入口通路31sに流入した蒸気は、長手方向内側のセパレータ通路33aと長手方向外側の非セパレータ通路33cに分流されて、それぞれ長手方向内側のセパレータ40と長手方向外側のセパレータ40sに分配される。
【0046】
このように本実施例に係る湿分分離加熱器10Dにおいては、長手方向内側の分配通路33(33a,33c)から長手方向外側の分配通路33s(33sa,33sc)まで延びる水平仕切板70を設けることで、長手方向外側に配設されたセパレータ40sに、長手方向内側の蒸気入口14sからの蒸気に加えて、長手方向の略中央にある蒸気入口14からの蒸気を導くことができる。これにより、長手方向外側にあるセパレータ40sに供給される蒸気の流量が、長手方向内側にあるセパレータ40に供給される蒸気の流量に比べて低くなることを抑制することができる。
【実施例5】
【0047】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。図11は、図10のY−Y線による横断面図である。なお、実施例4に係る湿分分離加熱器と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図10及び図11に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Eにおいては、鉛直下側のセパレータ側の通路33aと、鉛直上側の非セパレータ側の通路33cに仕切る水平仕切板70Bには、セパレータ側の通路33aと非セパレータ側の通路33cを連通させる複数の貫通孔72が形成されている。貫通孔72は、水平仕切板70Bの全面に亘って配列されている。これにより、セパレータ側通路33a,33saと、それぞれ対応する非セパレータ側通路33c,33scとの間において、圧力が高い領域から圧力の低い領域に向かう流れを形成することができる。
【0049】
これにより、湿分分離加熱器10Eにおいては、各セパレータ側通路33a,33saにおける圧力を、貫通孔72を有しない場合に比べて、より均一なものとすることができる。すなわちセパレータ側通路33aからセパレータ40に供給される蒸気の流量と,セパレータ側通路33saからセパレータ40sに供給される蒸気の流量を、より均一なものにすることができる。
【実施例6】
【0050】
本実施例に係る湿分分離加熱器について、図12及び図13を用いて説明する。図12は、湿分分離加熱器のセパレータ及び分配通路を通る切断線による断面図である。図13は、図12のY−Y線による横断面図である。なお、実施例1と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図13に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Fにおいては、セパレータ40に蒸気流を分配する分配孔36に面するセパレータ側通路であり、分配通路のうち外側を構成する通路33f(以下、単に「外側通路」と記す)と、分配孔36に面しない非セパレータ側通路であり、分配通路のうち伝熱管52を有する側すなわち内側を構成する通路33e(以下、単に「内側通路」と記す)に、分配通路(33e,33f)を内外に仕切る垂直仕切板80が設けられている。垂直仕切板80は、板状の部材であり、外側通路33fと内側通路33eとを連通させる貫通孔82が、全面に亘って設けられている。なお、長手方向外側にある垂直仕切板80sも、上述の垂直仕切板80と同様に構成されている。
【0052】
垂直仕切板80,80sは、図12に示すように、長手方向に延びる板状の部材であり、それぞれセパレータ40,40sに対応して延びている。垂直仕切板80は、セパレータ40に沿って、長手方向内側の端80aが入口通路31に達し、且つ長手方向外側の端80cが長手方向外側の入口通路31sに達するよう延びている。垂直仕切板80sは、垂直仕切板80と同様に、長手方向内側の端80saが入口通路31sに達するよう延びている。
【0053】
以上のように構成された湿分分離加熱器10Fにおいては、長手方向略中央にある蒸気入口14から流入する蒸気の流量が、長手方向外側にある蒸気入口14sに比べて多量である場合、すなわち入口通路31内の圧力が入口通路31s内に比べて高い場合、入口通路31に流入した蒸気を、垂直仕切板80の端80aにおいて蒸気流を内側通路33eと外側通路33fに分流して、長手方向外側に向けて流すことができる。外側通路33fを流れる蒸気は、分配孔36からセパレータ40に分配される。内側通路33eを流れる蒸気は、一部が貫通孔82を介して外側通路33f内に流れ、残りが、そのまま長手方向外側に流れて、長手方向外側の入口通路31sに流入する。
【0054】
一方、長手方向外側にある入口通路31s内の圧力が、長手方向略中央にある入口通路31内に比べて高い場合、湿分分離加熱器10Fは、入口通路31sに流入した蒸気を、垂直仕切板80の長手方向外側の端80cで分流して、長手方向内側に向けて流すことができる。外側通路33fを流れる蒸気は、分配孔36からセパレータ40に分配される。一方、内側通路33eを流れる蒸気は、一部が貫通孔82から外側通路33f内に流れ、残りが、そのまま長手方向内側に流れて、長手方向略中央の入口通路31に流入する。
【0055】
このように本実施例に係る湿分分離加熱器10Fにおいても、分配孔36に面しているセパレータ側通路である外側通路33fと、分配孔36に面していない非セパレータ側通路である内側通路33eに分配通路(33f,33e)を仕切る垂直仕切板80,80sを設けることで、外側通路33fからセパレータ40に蒸気を供給すると共に、内側通路33eにより、入口通路31と入口通路31sのうち、圧力の高い通路から圧力の低い通路に向けて蒸気流を導くことができる。これにより、長手方向内側にあるセパレータ40と、長手方向外側にあるセパレータ40sとの間で、供給される蒸気の流量に偏りが生じることを抑制することができる。
【0056】
また、本実施例に係る湿分分離加熱器10Fにおいては、垂直仕切板80,80sには、全面に亘って貫通孔82が形成されているものとしたので、内側通路33eを流れる蒸気の一部を、貫通孔82から外側通路33fに流すことができる。これにより、分配通路(33f,33e)内における圧力分布の偏りを抑制して、セパレータ40に分配される蒸気の流量に偏りが生じることを抑制することができる。
【0057】
なお、本実施例において、垂直仕切板80,80sには、断面が略円形をなす貫通孔82が形成されているものとしたが、貫通孔の態様は、これに限定されるものではない。内側通路33eと外側通路33fとを連通させることができれば良く、例えば、貫通孔を、所定の方向に長さを有するスリット状に形成しても良い。また、貫通孔を通過する蒸気流を絞るように断面を構成するものとしても良い。
【実施例7】
【0058】
本実施例に係る湿分分離加熱器について図14を用いて説明する。図14は、図3のX−X線による横断面図である。なお、実施例1と略共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図14に示すように、本実施例に係る湿分分離加熱器10Gにおいて、蒸気入口15は、蒸気の流動方向下流側の端15cの内径が、上流側の開口端15aの内径すなわち蒸気入口15の開口径(図に寸法D1で示す)に比べて、大きく設定された径違い配管、いわゆるレデューサ(reducer)として構成されている。蒸気入口15は、上流側の端15aすなわち開口から、下流側の端15cすなわち受衝体20に向かうに従って、流路断面積が大きくなるよう構成されている。上流側の端15aから流入した蒸気は、蒸気入口15内を下流側の端15cに向けて流れるに従って、流速が低下することとなる。
【0060】
また、湿分分離加熱器10Gの外装を構成するハウジング12内には、蒸気入口15から流入した蒸気流を、2つの流れに分流する受衝体20が設けられている。受衝体20は、侵食(エロージョン)の発生を抑制するよう、ステンレス鋼(SUS)で構成されている。受衝体20は、湿分分離加熱器10Gの横断面において、蒸気入口15側に底20cを有する略U字形状に湾曲して設けられており、湿分分離加熱器10Gの縦断面を規定する仮想平面(図に一点鎖線Bで示す)について線対称な形状で構成されている。
【0061】
受衝体20は、U字形状の底20cから端20eまで、湾曲形状の曲率の中心(図に点Gで示す)に対して、図に角度θで示すように90度以上に亘って湾曲するよう構成されている。このように構成された受衝体20は、ハウジング12の内面との間隔、すなわちハウジング12との間に形成される入口通路31の間隔(図に寸法D2で示す)が、蒸気入口15の上流側の端15aの内径D1と略等しくなるように配設されている。
【0062】
このように本実施例に係る湿分分離加熱器10Gにおいて、蒸気入口15は、下流側の端15cの内径が、上流側の端15cすなわち開口の内径(D1)に比べて大きく設定されているものとしたので、上流側の端15aから流入した蒸気流を、蒸気入口15内で減速して下流側の端15cから受衝体20に向けて流出させることができる。受衝体20とハウジング12との間の入口通路31を流れる蒸気流を減速することで、受衝体20、特に端20eにおいて、蒸気流の剥離等により渦流が形成されることを抑制することができ、渦流の発生による圧力損失の増大を抑制することができる。
【0063】
本実施例に係る湿分分離加熱器10Gにおいて、受衝体20は、U字形状の底20cから端20eまで、曲率の中心Gに対して90度以上に亘って湾曲するよう構成されているものとすることで、受衝体20の端20eにおいて蒸気流が剥離して渦流が生じてしまうことを抑制することができる。
【0064】
また、本実施例に係る湿分分離加熱器10Gにおいて、ハウジング12と受衝体20との間隔D2が、蒸気入口15の開口径D1と略同一となるよう構成されているものとしたので、蒸気入口15からに流入して受衝体20とハウジング12との間を流れる蒸気流に、流路断面積の急激な変化に起因して蒸気流に剥離や渦流が生じることを抑制することができる。
【0065】
なお、上述した各実施例において、分配通路内の蒸気流を整流する整流部材は、上述した多孔板60;60Bや、絞り部材66;66B、水平仕切板70;70B、垂直仕切板80;80sに限定されるものではない。分配通路内の蒸気流に流路抵抗を付与して整流することができれば、様々な形状の構造部材を用いることができる。
【0066】
また、上述した各実施例において、複数の蒸気入口は、長手方向の略中央にある蒸気入口14と、長手方向外側にある2つの蒸気入口14sであるものとしたが、複数の蒸気入口の配列の態様は、これに限定されるものではない。湿分分離加熱器の長手方向に複数の蒸気入口が配列されているものであれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10,10B,10C,10D,10E,10F,10G 湿分分離加熱器(湿分分離器)
12 ハウジング
14,14s 蒸気入口
15 蒸気入口
20,20s 受衝体
31,31s 入口通路
33,33s 分配通路
33a,33sa 分配通路(セパレータ側通路)
33c,33sc 分配通路(非セパレータ側通路)
33e 内側通路(非セパレータ側通路)
33f 外側通路(セパレータ側通路)
34 壁体
36 分配孔
40,40s セパレータ
50,52 伝熱管(加熱器)
55,55s 蒸気出口
60,60B 多孔板
66,66B 絞り部材
70,70B 水平仕切板(仕切板)
80 垂直仕切板(仕切板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすハウジングと、
ハウジングの長手方向と直交する一方側に設けられ、当該長手方向に複数配列された蒸気入口と、
ハウジングの長手方向において各蒸気入口の間に配列され、湿分を分離するセパレータと、
セパレータに沿って長手方向に延びており、各蒸気入口からの蒸気をセパレータに分配可能な分配通路と、
を有する湿分分離器であって、
分配通路には、蒸気入口からの蒸気流を整流する整流部材が設けられており、
蒸気入口の直下流側には、湿分分離器の横断面において蒸気入口側に底を有する略U字形状に湾曲し、蒸気入口から流入した蒸気流を2つの流れに分流する受衝体が設けられており、
蒸気入口は、開口から受衝体に向かうに従って流路断面積が大きくなるよう構成されている
ことを特徴とする湿分分離器。
【請求項2】
請求項1に記載の湿分分離器において、
受衝体は、U字形状の底から端まで、曲率の中心に対して90度以上に亘って湾曲するよう構成されている
ことを特徴とする湿分分離器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の湿分分離器において、
外装を構成するハウジングと受衝体との間隔が、蒸気入口の開口径と略同一となるよう構成されている
ことを特徴とする湿分分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−255643(P2012−255643A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166902(P2012−166902)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2008−42043(P2008−42043)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)