説明

湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】トナー画像の乱れを防止することができる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】電子写真方式を用いた画像形成装置としてのプリンタ1は、トナー画像Tが転写される中間転写ベルト8と、トナー画像Tに定着液を付与するための湿式定着装置11とを備える。湿式定着装置11は、トナー画像Tに定着液を付与する付与ローラ19と、中間転写ベルト8を介して付与ローラ19と対向する対向ローラ20とを有する。中間転写ベルト8の外周面8aに転写されたトナー画像Tには、付与ローラ19の周面19aから定着液が付与される。また、対向ローラ20は、トナーTと逆極性に帯電させられている。トナー画像Tは、電気的に中間転写ベルト8の外周面8aの方に引き付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置には、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を用紙等の記録材上に定着させる湿式定着装置を備えるものがある。
このような湿式定着装置としては、例えば、中間転写ベルトと、定着液付与ローラと、定着液タンクとを備えるものがある。中間転写ベルトは、無端状であり、その外周面にトナー画像が転写される。定着液付与ローラは、その周面が中間転写ベルトの外周面と接しており、定着液タンクから汲み取った定着液を、定着液付与ローラの周面から中間転写ベルトの外周面に転写された未定着のトナー画像に付与している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−109747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の湿式定着装置では、定着液付与ローラが中間転写ベルト上のトナー画像に定着液を付与する際に、トナーが定着液付与ローラの周面によって引きずられ、トナー画像に乱れが生じてしまう場合がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、トナー画像の乱れを防止することができる湿式定着装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置において、トナー画像(T)が転写される被転写面(19a,23)を有する被転写材(2,19)と、定着液を貯留する定着液タンク(18)と、周面(19a)によって定着液タンクから定着液を汲み取り、その周面から被転写面に転写されたトナー画像に定着液を付与する定着液付与ローラ(19)と、被転写材の被転写面の裏面に配置され、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する電極部材(20,22)とを備え、上記電極部材には、トナーと逆極性の電荷が与えられていることを特徴とする湿式定着装置(11)である。
【0005】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、定着液付与ローラが、その周面によって定着液タンクから定着液を汲み取り、その周面から被転写面に転写されたトナー画像に定着液を付与する。また、被転写材の被転写面の裏面に配置された電極部材には、トナーと逆極性の電荷が与えられており、正または負に帯電したトナーは、被転写材の方へ電気的に引き付けられる。これにより、定着液付与ローラが被転写面上のトナー画像に定着液を付与する際に、トナーが定着液付与ローラに引きずられ、トナー画像に乱れが生じることを防止できる。
【0006】
請求項2記載の発明は、上記電極部材は、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する対向ローラ(20)であり、定着液付与ローラの周面と対向ローラの周面(20a)とが互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、対向ローラの周面は、被転写材を介して定着液付与ローラの周面と対向するように配置されており、被転写材は、定着液付与ローラおよび対向ローラによって所定の方向へ導かれる。また、対向ローラが電極部材として機能するので、トナー画像に乱れが生じることを防止できる。
【0007】
請求項3記載の発明は、上記電極部材は、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する板状部材(22)であり、板状部材は、被転写材を所定の方向(X1)へ案内するガイド部材(21)に保持されていることを特徴とする請求項1記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、定着液付与ローラとガイド部材とによって、被転写材を所定の方向へ導くことができる。また、電極部材としての板状部材がガイド部材に保持されているので、トナー画像に乱れが生じることを防止できる。
【0008】
請求項4記載の発明は、上記被転写材は、記録材(2)または記録材にトナー画像を転写するための転写ベルト(8)を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の湿式定着装置である。
この構成によれば、用紙等の記録材に転写されたトナー画像や転写ベルトに転写されたトナー画像に定着液を付与する場合であっても、トナー画像に乱れが生じることを防止できる。
【0009】
請求項5記載の発明は、画像データに基づくトナー画像を形成する画像形成部(30〜34)と、上記画像形成部により形成されたトナー画像を定着させるための請求項1〜4の何れか1項に記載の湿式定着装置とを備える画像形成装置(1,200)である。
この構成によれば、トナー画像の乱れの発生を防止して、良好な画像品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における湿式定着装置11を備えた画像形成装置としてのプリンタ1の概略構成を示めす図解的な断面図である。また、図2は、図1における湿式定着装置11を概略的に示す拡大断面図である。
図1を参照して、プリンタ1は、記録材としての用紙2が収容されたカセット3と、カセット3内の用紙2が搬送される用紙搬送路4と、用紙搬送路4に沿って設けられ、用紙2にトナー画像Tを転写するための転写装置5と、用紙搬送路4に沿って設けられ、転写装置5によってトナー画像Tが転写された用紙2を機外に排出するための排出ローラ対6とを備える。
【0011】
転写装置5は、用紙搬送路4を挟んで設けられた転写ローラ対7a,7bと、無端状の中間転写ベルト8とを含む。中間転写ベルト8は、一方の転写ローラ7aと複数の支持ローラ9とによって張架されており、図示しない駆動源によって中間転写ベルト8の周方向に回転駆動される。
また、中間転写ベルト8の周囲には、プリンタ1に送られる画像データに基づくトナー画像Tを形成するための複数(本実施の形態では4つ)の画像形成部30〜33と、画像形成部30〜33から中間転写ベルト8に転写されたトナー画像Tに定着液を付与するための湿式定着装置11とが設けられている。
【0012】
画像形成部30〜33は、互いに異なる色のトナー画像Tを形成するためのものであり、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれの色に対応するトナー画像Tを形成することができる。また、画像形成部30〜33は、それぞれ、感光体ドラム12ならびに感光体ドラム12の周囲に設けられた帯電装置13、露光装置14、現像装置15、除電装置16およびクリーニング装置17を有している。感光体ドラム12の周面12aには、電子写真方式によって所定の静電潜像が形成され、この静電潜像が現像装置15によって現像されてトナー画像Tが形成される。
【0013】
画像形成部30〜33に備えられた感光体ドラム12は、それぞれ、その周面12aが中間転写ベルト8の外周面8aに接するように配置されている。また、各感光体ドラム12は、図示しない駆動源によって回転駆動される。これにより、感光体ドラム12の周面12aに形成されたトナー画像Tを中間転写ベルト8の外周面8aに転写することができる。すなわち、本実施形態においては、中間転写ベルト8が被転写材としての役割を果たし、中間転写ベルト8の外周面8aが被転写面に相当する。
【0014】
各感光体ドラム12の周面12aに形成されたトナー画像Tは、それぞれが重ね合わされるように中間転写ベルト8の外周面8aに転写される。これにより、中間転写ベルト8の外周面8aに、フルカラーのトナー画像Tが形成される。
図1および図2を参照して、湿式定着装置11は、定着液を貯留する定着液タンク18と、中間転写ベルト8の外周面8aに転写されたトナー画像Tに定着液を付与する付与ローラ19と、中間転写ベルト8を介して付与ローラ19と対向する電極部材としての対向ローラ20とを有する。
【0015】
付与ローラ19および対向ローラ20は、図示はしないが、中間転写ベルト8の幅方向(図1および2においては、紙面に垂直な方向)に延びており、中間転写ベルト8の幅と同等以上の軸長をそれぞれ有している。また、付与ローラ19は、中間転写ベルト8の外周側に配置されており、対向ローラ20は、中間転写ベルト8の内周側に配置されている。すなわち、付与ローラ19および対向ローラ20は、中間転写ベルト8をその厚み方向に挟むように配置されている。これにより、中間転写ベルト8は、付与ローラ19および対向ローラ20によって、中間転写ベルト8の回転方向X1に案内されるようになっている。
【0016】
また、付与ローラ19は、その周面19aが中間転写ベルト8の外周面8aと接するように配置されており、図示しない駆動源によって回転駆動される。
定着液タンク18は、中間転写ベルト8の外周面8aに転写されたトナー画像Tに付与する定着液を貯留するためのものであり、付与ローラ19が定着液タンク18内に入り込めるようになっている。付与ローラ19は、定着液タンク18内において、その周方向の一部が軸方向に亘って、定着液に浸されている。定着液タンク18内の定着液は、その表面張力によって付与ローラ19の周面19aに付着し、付与ローラ19が回転することによって定着液タンク18内から汲み取られる。
【0017】
定着液タンク18内から汲み取られた定着液は、付与ローラ19の周面19aから中間転写ベルト8の外周面8aに塗布され、中間転写ベルト8の外周面8aに転写されたトナー画像Tに定着液が付与される。これにより、トナーTは、定着液により溶解または膨潤されて、弾力性のあるガム状になり、粘着力を生じる。このトナーTは、粘着性を生じている間に、中間転写ベルト8の回転によって所定の転写位置に移動し、転写ローラ対7a,7b間において中間転写ベルト8の外周面8aと用紙2の表面との摩擦力の違いによって用紙2に転写される。そして、用紙2の表面に転写されたトナーTは、定着液が蒸発(気化)することにより固まり、用紙2に定着固定される。
【0018】
一方、中間転写ベルト8を介して付与ローラ19と対向する対向ローラ20には、所定の電荷が与えられ、対向ローラ20は正または負(本実施の形態では負)に帯電している。すなわち、電子写真方式を経て形成されたトナー画像T中のトナー粒子には、電荷が残留しており、トナーTは正または負(本実施形態では正)に帯電している。対向ローラ20の周面20aには、トナーTと逆極性の電荷が与えられ、対向ローラ20は、トナーTと逆極性に帯電している。
【0019】
これにより、トナーTは、対向ローラ20の方へ電気的に引き付けられる。また、対向ローラ20は、中間転写ベルト8の外周面8aの裏面である内周面8b側に配置されているので、外周面8a上のトナー画像Tは、外周面8aの方へ引き付けられる。したがって、付与ローラ19から中間転写ベルト8の外周面8a上のトナー画像Tに定着液が付与される際に、定着液の表面張力や粘着性によって、定着液が付与ローラ19の周面19aに付着し、トナーTが付与ローラ19の周面19aに引きずられて、トナー画像Tに乱れが生じることを防止することができる。その結果、乱れのないトナー画像Tを用紙2に転写して、良好な画像品質を達成することができる。
【0020】
図3は、本発明の別の実施形態における湿式定着装置11を概略的に示す拡大断面図である。この図3において、上述の図1および図2に示された各部と同等の構成部分については、図1および図2と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図3を参照して、本実施の形態が上述の実施形態と主に相違するのは、中間転写ベルト8を介して付与ローラ19と対向するガイド部材21が設けられており、電極部材としての板状部材22がガイド部材21に保持されていることにある。
【0021】
板状部材22は、図示はしないが、中間転写ベルト8の幅方向に延びており、中間転写ベルト8の幅と同等以上の長さを有している。また、板状部材22は、トナーTと逆極性に帯電させられている。ガイド部材21は、付与ローラ19と共に中間転写ベルト8を回転方向X1に案内することができるようにされている。
この実施形態によれば、上述の実施形態と同様に、トナー画像Tが転写される中間転写ベルト8の外周面8aの裏面である内周面8b側に板状部材22を配置し、この板状部材22をトナーTと逆極性に帯電させることにより、トナー画像Tの乱れを防止し、良好な画像品質を達成することができる。
【0022】
図4は、本発明のさらに別の実施形態における湿式定着装置11を備えた画像形成装置としてのプリンタ200の要部の概略構成を示す図解的な断面図である。
この図4において、上述の図1〜図3に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図3と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図4を参照して、本実施の形態が上述の実施形態と主に相違するのは、画像形成部34で形成されたトナー画像Tを直接、用紙2に転写し、湿式定着装置11によって用紙2に直接、定着液を付与することにある。
【0023】
画像形成部34は、感光体ドラム12ならびに感光体ドラム12の周囲に設けられた帯電装置13、露光装置14、現像装置15、転写ローラ25、除電装置16およびクリーニング装置17を有している。
感光体ドラム12の周面12aに形成されたトナー画像Tは、感光体ドラム12および転写ローラ25間で、用紙搬送路4を搬送される用紙2の一方の面23に転写される。すなわち、本実施形態においては、用紙2が被転写材としての役割を果たし、用紙2の一方の面23が被転写面に相当する。
【0024】
そして、用紙2の一方の面23に転写されたトナー画像Tには、付与ローラ19によって定着液が付与されて、用紙2にトナー画像Tが定着する。この際に、用紙2の一方の面23に転写されたトナー画像Tは、用紙2の他方の面24側に配置された対向ローラ20によって電気的に引き付けられ、トナー画像Tに乱れが生じることが防止されている。これにより、良好な画像品質を達成することができる。また、図1〜3の実施形態よりもプリンタ200の構成を簡素化することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、湿式定着装置11が定着液タンク18、付与ローラ19および対向ローラ20を備える例について説明したが、湿式定着装置11は、図3に示した、定着液タンク18、付与ローラ19、ガイド部材21および板状部材22を備えるものであってもよい。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、画像形成装置がプリンタである例について説明したが、画像形成装置は、複写機またはファクシミリであってもよい。さらに、画像形成装置は、プリンタ、複写機またはファクシミリの内の2つ以上の機能を有する複合機であってもよい。
【0026】
また、上記の実施形態では、付与ローラ19の周面19aが中間転写ベルト8の外周面8aと接している例について説明したが、付与ローラ19の周面19aは、中間転写ベルト8の外周面8aに接していなくてもよく、例えば、中間転写ベルト8の外周面8aに付与ローラ19の周面19aが近接するように、付与ローラ19が配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態における湿式定着装置を備えた画像形成装置としてのプリンタの概略構成を示めす図解的な断面図である。
【図2】図1における湿式定着装置を概略的に示す拡大断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態における湿式定着装置を概略的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態における湿式定着装置を備えた画像形成装置としてのプリンタの要部の概略構成を示す図解的な断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1,200 プリンタ(画像形成装置)
2 用紙(記録材、被転写材)
8 中間転写ベルト(被転写材、転写ベルト)
8a 外周面(被転写面)
11 湿式定着装置
18 定着液タンク
19 付与ローラ(定着液付与ローラ)
19a 周面(定着液付与ローラの周面)
20 対向ローラ(電極部材)
20a 周面(対向ローラの周面)
21 ガイド部材
22 板状部材(電極部材)
30〜34 画像形成部
23 一方の面(被転写面)
T トナー、トナー画像
X1 回転方向(所定の方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像に定着液を付与することにより、トナーに粘着力を生じさせ、その粘着力を用いてトナー画像を記録材上に定着させる湿式定着装置において、
トナー画像が転写される被転写面を有する被転写材と、
定着液を貯留する定着液タンクと、
周面によって定着液タンクから定着液を汲み取り、その周面から被転写面に転写されたトナー画像に定着液を付与する定着液付与ローラと、
被転写材の被転写面の裏面に配置され、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する電極部材とを備え、
上記電極部材には、トナーと逆極性の電荷が与えられていることを特徴とする湿式定着装置。
【請求項2】
上記電極部材は、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する対向ローラであり、定着液付与ローラの周面と対向ローラの周面とが互いに対向するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の湿式定着装置。
【請求項3】
上記電極部材は、被転写材を介して定着液付与ローラと対向する板状部材であり、板状部材は、被転写材を所定の方向へ案内するガイド部材に保持されていることを特徴とする請求項1記載の湿式定着装置。
【請求項4】
上記被転写材は、記録材または記録材にトナー画像を転写するための転写ベルトを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の湿式定着装置。
【請求項5】
画像データに基づくトナー画像を形成する画像形成部と、
上記画像形成部により形成されたトナー画像を定着させるための請求項1〜4の何れか1項に記載の湿式定着装置とを備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−193158(P2007−193158A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12014(P2006−12014)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】