説明

湿式現像装置及び湿式現像方法

【課題】湿式現像装置において、現像ローラに膜厚が均一なトナー層を形成し、現像ローラによる感光体ドラムの静電潜像の現像を良好に行うことができるようにする。
【解決手段】現像ローラにアニロックスローラを転接し、アニロックスローラにドクタブレードとトナー帯電用チャージャを対設し、現像ローラの感光体ローラとの転接部の上流側にプラス電荷を印加するコロナチャージャを対設し、粘度が5〜80mPa.sの液体現像剤を用い、現像ローラ表面に3〜4.8μmの膜厚のトナー層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電子写真印刷機に用いられて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を液体現像剤にて現像(可視化)するための湿式現像装置、及びこの装置を用いた湿式現像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式現像装置は、感光体ドラムが転接する現像ローラに、液体現像剤に一部浸漬したアニロックスローラ(供給ローラ)を転接し、このアニロックスローラを介して液体現像剤を現像ローラへ供給するようになっており、この現像ローラが感光体ドラムに転接することにより、この感光体ドラム上に形成された静電潜像がトナー像に現像されるようになっている。この感光体ドラム上に現像されたトナー像は、用紙(記録媒体)に転写されるようになっている。
【0003】
従来のこの種の湿式現像装置にあっては、電源部からのアニロックスローラの電圧印加によって、現像ローラに現像バイアスとなる電圧が印加されるようになっている。そしてアニロックスローラ及び現像ローラに、上記バイアス電圧によりプラスの電圧を印加し、この入力電圧を適正に制御しながら、現像ローラ上に均一なトナー層の薄膜を形成し、この薄膜のトナー層により感光体ドラム上の静電潜像を現像して用紙に印字を行っている(特許文献1)。このときの現像ローラの表面上のトナー層の薄膜は、印字濃度、印字品質の安定性など、その印字品質に及ぼす影響が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−192920号公報
【特許文献2】特開2007−147977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の湿式現像装置にあっては、アニロックスローラへのローラバイアスを変化させて現像ローラの表面上に形成されるトナー層の膜厚を制御しようとした場合に、ローラバイアスが印加されるアニロックスローラと現像ローラ間の電位差が小さかったことにより、印刷速度が速くなるにしたがって、また液体現像剤の物性などにより、画像濃度の低下、網点の再現性の低下、筋やムラの発生、アニロックスローラの表面のセルの痕跡が画像表面に出る等、印字濃度は画像の再現性などの印字品質や、連続印刷時での印字品質の安定性において制御が難しくなるという問題があった。
【0006】
また、上記濃度低下等による印刷品質の劣化を抑えるために特許文献2の図5に示されるように、現像ローラの外周に圧縮ローラを転接し、現像ローラ上の液体現像剤を圧縮(膜化)し、さらに現像ローラにクリーニングローラを転接させて現像ローラのクリーニングを行うようにしたものがあるが、この圧縮ローラとクリーニングローラの取り付けが現像ローラを交換するときの障害となり、メンテナンス性を悪化させてしまうという問題があった。
【0007】
また、上記圧縮ローラはローラ偏心等による圧縮ムラが生じやすく、液体現像剤の膜化が均一になりにくいという問題がある。
【0008】
また、上記現像ローラの転接により感光体ドラムの表面の潜像を現像するに際して、現像ローラ表面のトナー層の膜厚を薄くするほど液体現像剤の使用量を少なくできると共に均一な膜厚を作り易く、また液体現像剤は、これの粘度が低いほどトナーの撹拌が容易である等により製造コストが低く安価にすることができる。しかしながら、一般的には液体現像剤の粘度が100mPa.s以下ではトナー濃度が低くなると共に、トナー粒子の分散性が悪くなるので、現像ローラ表面に形成するトナー層の膜厚は5μm以上ないと印刷濃度が不足する傾向があることから、従来は5〜40μmの厚さのトナー層にして現像するようにしていて、この液体現像剤の使用量が多かった。
【0009】
上記のことから、従来の液体現像剤は100〜1000mPa.sの粘度のものが用いられており、このように粘度が高い液体現像剤は、これのトナー撹拌がむずかしくなって製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、粘度が低い液体現像剤を用いると共に、現像ローラ表面に形成するトナー層の膜厚を薄くして、粘度の低い安価な液体現像剤を用いることができ、その上、現像ローラ表面での膜厚を薄くして膜厚が均一なトナー層を形成すると共に、液体現像剤の使用量を少なくでき、さらに現像ローラ表面でのトナー粒子の電位差を大きくすることで、高濃度で感光体ドラムの静電潜像の現像を行うことができて、濃度低下等による印刷品質の劣化を防止して高速性を向上することができ、また現像ローラ表面の残存トナーのクリーニングを容易にできて、この現像ローラ表面でのトナーによるケーキングを防止でき、しかもクリーニングローラが邪魔になることなく現像ローラやアニロックスローラのメンテナンスを行うことができ、さらにアニロックスローラ、現像ローラ、クリーニングローラの表面に当接するクリーニングブレードの上記当接圧力をばね付勢にて適正に、かつ一定に保持することができ、その上、現像ローラのたわみ変形の防止を図ることができるようにした湿式現像装置を提供しようとするものである。
【0011】
また、回転が止まった状態での現像ローラと感光体ドラムとの接触をなくして現像ローラの撓み変形をなくし、現像ローラを感光体ドラムに転接する前のアニロックスローラと現像ローラのならし回転を行って、現像ローラを感光体ドラムに転接してからの現像作動における現像画像の濃度を一定に、かつ均一にすることができるようにした湿式現像方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の湿式現像装置は、感光体ドラムの表面に露光により形成された静電潜像を、表面に液体現像剤が塗布された現像ローラが転接することによりトナー像に現像するようにした湿式現像装置において、上記現像ローラに、液体現像剤に一部浸漬したアニロックスローラを同一周速度で、かつ同一周方向に回転するようにして転接し、このアニロックスローラの表面に液体現像剤の汲み上げ量を規制するドクタブレードを当接すると共に、このドクタブレードとの当接部から現像ローラとの転接部の回転方向の間の表面にトナー帯電用チャージャを対設し、現像ローラの上記アニロックスローラとの転接部から感光体ドラムとの転接部の回転方向の間の表面に、現像ローラ側にトナー粒子を押し付ける極性の電荷を印加する上流側のコロナチャージャを対設し、上記液体現像剤の粘度が5〜80mPa.sであり、またアニロックスローラから現像ローラへ液体現像剤をこれの膜厚が3〜4.8μmになるように供給するようにした構成になっている。
【0013】
請求項2に係る発明は、上記した湿式現像装置において、アニロックスローラの凹状セルの深さを24〜30μm、アニロックスローラの表面に電荷を印加するトナー帯電用チャージャの設定電圧を4〜5.6kvに、アニロックスローラと現像ローラとのニップ幅を8〜12mmにして現像ローラ表面の液体現像剤の膜厚を3〜4.8μmにするようにした。
【0014】
請求項3に係る発明は、上記した湿式現像装置において、現像ローラの感光体ドラムとの転接部よりも回転方向下流側の表面に、上記上流側のコロナチャージャの電荷とは逆極性で、現像ローラからトナー粒子が離れるように働く電荷を印加する下流側のコロナチャージャを対設し、現像ローラの上記下流側のコロナチャージャとの対設位置とアニロックスローラとの回転方向の間の表面に、現像ローラに転接してこれの表面をクリーニングするクリーニングローラを転接すると共に、このクリーニングローラとの転接部より回転方向下流側にクリーニングブレードを当接した構成になっている。
【0015】
請求項4に係る発明は、上記した湿式現像装置において、現像ローラとアニロックスローラを支持する現像部支持フレームを、現像ローラが感光体ドラムに対して接離する方向に移動可能にすると共に、現像ローラとアニロックスローラの少なくとも一方を接離方向に移動可能にして両ローラの接離とニップ幅を調整可能にした構成になっている。
【0016】
請求項5に係る発明は、上記した湿式現像装置において、クリーニングローラをクリーニングローラ支持フレームに支持し、このクリーニングローラ支持フレームを、現像ローラとアニロックスローラを支持する現像部支持フレームに、クリーニングローラが現像ローラに対して接離する方向に移動可能に支持した構成になっている。
【0017】
請求項6に係る発明は、上記した湿式現像装置において、現像ローラに当接するクリーニングブレード、クリーニングローラに当接するクリーニングブレードのそれぞれを、付勢力を調整可能にしたばね力にて各ローラ表面に当接させた構成になっている。
【0018】
請求項7に係る発明は、湿式現像装置にて感光体ドラムの静電潜像を液体現像剤にてトナー像に現像する湿式現像方法において、現像の休止時には現像ローラを感光体ドラムより離隔しておき、現像開始時に、アニロックスローラ、現像ローラ、クリーニングローラをそれぞれ転接させた状態で2〜20秒駆動してから現像ローラを感光体ドラムに転接させるようにした。
【発明の効果】
【0019】
上記構成において、請求項1に係る発明によれば、粘度が低い液体現像剤を用いることで液体現像剤のコストを低くできると共に、現像ローラ表面でのトナー層の膜厚を薄くして液体現像剤の使用量を少なくでき、またこれの膜厚を均一にすることができる。
【0020】
また、アニロックスローラの表面にトナー帯電用チャージャにて電荷を印加することにより、アニロックスローラの凹状セル内に貯留された液体現像剤は帯電されて移動性がよくなり、現像ローラ表面での液体現像剤の膜厚を均一にすることができる。
【0021】
また、現像ローラとアニロックスローラとの転接部から感光体ドラムとの転接部の回転方向の間の表面に、上流側のコロナチャージャにて、現像ローラ側にトナー粒子を押し付ける極性に電荷を印加したことにより、現像ローラ表面のトナー粒子を凝集することができ、この凝集したトナー粒子にて感光体ドラム表面の潜像を現像することができて、濃度低下等による印刷品質の劣化を防止でき、高速性を向上することができる。
【0022】
また、アニロックスローラ上の液体現像剤の量は、凹状セルの溝の容積で決められるため、液体現像剤の粘度の依存がなく、本発明装置では、液体現像剤の製造が容易な低粘度域の粘度5〜80mPa.sの液体現像剤を用いることができた。そしてアニロックスローラから現像ローラ表面へ層状に供給される液体現像剤を、これの膜厚を3〜4.8μmにしたことにより、現像ローラにて現像された感光体ドラム表面から用紙に転写される印刷において、画像濃度、画像の再現性に優れた安定した品質で印刷を行うことができた。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、現像ローラ表面に形成される液体現像剤の膜厚を3〜4.8μmにすることができる。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、現像後の現像ローラの感光体ドラムとの転接部よりも下流側の表面に対設したコロナチャージャにて、感光体ドラムとの転接部よりも上流側のコロナチャージャの電荷とは逆極性の電荷を印加することにより、上流側のコロナチャージャにて現像ローラ表面に凝集、残存したトナー粒子に現像ローラ表面から剥離する方向に力が付与されて、この残存トナーが現像ローラ表面から剥がれやすくなり、現像ローラ表面に残存トナーが残りにくくなって、クリーニングローラとクリーニングブレードによるクリーニングが良好に行われ、残存トナーが現像ローラ表面に付着することによって生じるケーキングを防止することができる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、現像部支持フレームを移動して、現像ローラ及びこれに転接するアニロックスローラやクリーニングローラを感光体ドラム側から離隔することができることにより、これら現像部のローラ周りのメンテナンスを感光体ドラムから離れた位置で行うことができ、これらはメンテナンス性をよくすることができる。
【0026】
また、非印刷時には現像ローラとアニロックスローラとの転接部を離隔させることができ、表面がゴム材にて構成される現像ローラの非回転状態での長時間の撓み接触による現像ローラ表面のアニロックスローラとの転接による撓み変形を防止することができる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、クリーニングローラを支持するクリーニングローラ支持フレームが現像部支持フレームに対して移動可能になっていて、このクリーニングローラ部を現像部支持フレームに対してカセット化することができ、このクリーニングローラ部を現像部支持フレームより取り外すことにより、現像ローラの拭き取り作業やこれの交換が容易となって湿式現像装置のメンテナンス性を向上することができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、各ローラ表面に当接するクリーニングブレードのローラ表面への当接力を適正に、かつ一定に保持することができ、ブレードの当接力過大によるローラ、特にゴムにて構成される現像ローラのブレードによる摩耗、傷入れを軽減でき、各ローラ、特に現像ローラの交換頻度を減らしてメンテナンス性を向上することができる。
【0029】
請求項7に係る発明によれば、現像の休止時には現像ローラを感光体ドラムから離隔することにより、回転が止まった状態での両ローラの接触がなくなって、現像ローラ表面の撓み変形をなくすことができる。
【0030】
また現像開始時に、アニロックスローラ、現像ローラ、クリーニングローラのそれぞれを転接した状態でアイドリングすることができ、現像ローラを感光体ドラムに転接してからの現像作動における現像画像の濃度を一定に、かつ均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る湿式現像装置を概略的に示す説明図である。
【図2】現像ローラの軸受部の一例を示す一部破断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】アニロックスローラの軸受部を示す一部破断面図である。
【図5】ドクタブレードを示す側面図である。
【図6】スプリングプランジャを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図中1は感光体ドラム、2はこの感光体ドラム1に転接して、この感光体ドラム1の表面に露光装置3による露光にて作像された静電潜像をトナー像に現像(可視化)する現像ローラ、4はこの現像ローラ2に転接して、この現像ローラ2に液体現像剤を供給するアニロックスローラ(液体現像剤供給ローラ)、5は上記現像ローラ2に転接してこれの表面をクリーニングするクリーニングローラであり、これらは感光体ドラムから離隔した状態であっても同期して各矢印方向に、すなわち各転接部での同一周方向に回転するよう単独駆動するようになっている。
【0034】
上記アニロックスローラ4は、これの一部が現像剤槽6内に溜められた液体現像剤7に浸漬されている。この液体現像剤7には粘度5〜80mPa.sのものが用いられており、図示しない回路を介してメインタンクから一定のレベル位置まで供給されるようになっている。8は現像材槽6内の液体現像剤7を撹拌するアジテータである。このアニロックスローラ4の凹状のセル形状はヘリカル状の細い溝、あるいは細かい網点状等があり、この凹状セル内に液体現像剤が貯留されるようになっている。
【0035】
また、このアニロックスローラ4の上記液体現像剤7の浸漬部より回転方向下流側の表面にドクタブレード9の先端が当接されていて、このドクタブレード9にてアニロックスローラ4の表面に構成される凹状セル内の液体現像剤以外の余分の液体現像剤が掻き落とされるようになっている。
【0036】
また、アニロックスローラ4の回転方向で、上記ドクタブレード9との当接部と現像ローラ2との転接部の間のアニロックスローラ4の表面に対向する位置にトナー帯電用チャージャ(コロトロン)10が対設されていて、このトナー帯電用チャージャ10にてアニロックスローラ4のセル内に貯留されて定量移送される液体現像剤7のトナー粒子をプラスに帯電させるようになっている。
【0037】
現像ローラ2の回転方向で、上記アニロックスローラ4との転接部と感光体ドラム1との転接部の間の現像ローラ2の表面に対向する位置に、現像ローラ2の表面にプラス電荷を印加する上流側のコロナチャージャ(スコロトロン)11が対設されている。
【0038】
また、現像ローラ2の回転方向で、上記感光体ドラム1との転接部とクリーニングローラ5との転接部の間の現像ローラ2の表面に対向する位置に、現像ローラ2の表面にマイナス電荷を印加する下流側のコロナチャージャ(コロトロン)12が対設されている。
【0039】
さらに、現像ローラ2のクリーニングローラ5との転接部のすぐ下流側にクリーニングブレード13が当接されており、またクリーニングローラ5の現像ローラ2との転接部の下流側にクリーニングブレード14が当接されている。
【0040】
上記した構成において、アニロックスローラ4の回転によりこれの凹状セル内にて現像剤槽6から汲み上げられた液体現像剤は、ドクタブレード9にてその余分な量が掻き落とされてから現像ローラ2との転接部に至る間にトナー帯電用チャージャ10にてプラス電荷が印加され、この液体現像剤中のトナー粒子のプラス電荷が高められる。
【0041】
このアニロックスローラ4の表面の凹状セル内に貯留されてプラス電荷が高められた液体現像剤(トナー粒子)は、現像ローラ2との転接により現像ローラ2の表面に移動し、膜厚が一定の薄膜状のトナー層を形成する。この現像ローラ2の表面に形成されるトナー層の厚さは、アニロックスローラ4の凹状セルの深さと、トナー帯電用チャージャ10によるアニロックスローラ4への印加電圧、及び互いに転接する現像ローラ2とアニロックスローラ4とのニップ幅によって設定され、本発明にあってはこれらの設定を上記現像ローラ2の表面に形成される液体現像剤のトナー層の膜厚が3〜4.8μmになるようにした。
【0042】
このように現像ローラ2の表面に膜厚が3〜4.8μmのトナー層を形成するための手段としては、アニロックスローラ4の溝形状をハニカムまたはヘリカル形状とし、この溝の深さの最適値を30μm、許容範囲として24〜30μmにした。
【0043】
また、トナー帯電用チャージャ10によるアニロックスローラ4への印加電圧は、これの最適値を4.6kv(チャージャ用ワイヤの出力値)、許容範囲として4〜5.6kv(チャージャ用ワイヤの出力値)にした。
【0044】
さらに、現像ローラ2とアニロックスローラ4とのニップ幅は、最適値を8mm、許容範囲として8〜12mmにした。
【0045】
上記した現像ローラ2の表面に形成されるトナー層の膜厚が3〜4.8μmであることの測定は、現像ローラ2の表面に形成されているトナー層を一定範囲で拭き取り、拭き取った量の重量と比重から上記膜厚を換算して測定値とする。
【0046】
ついで、現像ローラ2の回転に従って現像ローラ2の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ2と対接された上流側のコロナチャージャ11からのプラス電荷が印加され、このトナー層中のトナー粒子は、このプラス電荷にて現像ローラ2の表面側へ凝集された状態となる。そしてこの現像ローラ2の表面で凝集された状態のトナー粒子は感光体ドラム1の表面に移動されて、この感光体ドラム1の表面にトナー像を形成する。
【0047】
現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部より回転方向下流側の表面は、これの回転に従って下流側のコロナチャージャ12からマイナス電荷が印加される。
【0048】
上記感光体ドラム1との転接部より回転方向下流側の現像ローラ2の表面には、感光体ドラム1の静電潜像を現像した残りの残存トナーが付着されているが、この残存トナーのトナー粒子は、現像ローラ2の回転に従って下流側のコロナチャージャ12からマイナス電荷が印加され、上記した上流側のコロナチャージャ11にて印加された電荷とは逆極性のマイナス電位となって、現像ローラ2の表面から離れる方向の力を受ける。
【0049】
本発明にあっては上記したように、トナー帯電用チャージャ10にて、これのチャージャ用ワイヤ出力値で4〜5.6kvの電荷をアニロックスローラ4の表面に印加したことにより、アニロックスローラ4の表面に汲み上げられた液体現像剤のトナー粒子は帯電されて移動性が良くなり、現像ローラ2上での膜厚を薄くすることができると共にこれの膜厚を均一にすることができる。
【0050】
その上、上記したようにアニロックスローラ4の凹状セルの形状をハニカムまたはヘリカル形状にすると共に、これの深さを24〜30μmにし、またアニロックスローラ4と現像ローラ2間のニップ幅を8〜12mmとしたことにより、現像ローラ2の表面には膜厚が3〜4.8μmの均一な膜厚のトナー層を形成することができた。
【0051】
ついで、この現像ローラ2の表面の残存トナーは、これより回転方向下流側で転接しているクリーニングローラ5に移動してクリーニングされる。クリーニングローラ5に移動しないで残ったトナー粒子は、クリーニングンブレード13にて掻き落とされる。
【0052】
一方、クリーニングローラ5に移動したトナーは、クリーニングブレード14にて掻き落とされる。
【0053】
上記において、アニロックスローラ4へのトナー帯電用チャージャ10からの加電がない場合には、アニロックスローラ4表面上でのトナー粒子の凝集力が弱く、現像ローラ2へのトナー粒子の移動が不均一になり、印刷結果として濃度ムラや筋の発生など印刷品質の低下につながる。
【0054】
このようにして現像ローラ2の表面に移動したトナー粒子は、現像ローラ2への上流側のコロナチャージャ11からプラスの電圧が印加されることにより、この現像ローラ2の表面のトナー粒子は凝集されて現像ローラ2から感光体ドラム1へのトナー粒子の移動量の制御精度が高められ、濃度低下等による印刷品質の劣化を防止して高速性を向上することができる。
【0055】
現像後の現像ローラ2の表面には、下流側のコロナチャージャ12からマイナスの電圧が印加されることにより、上流側のコロナチャージャ11によるプラス電圧印加により現像ローラ2の表面に凝集されて残存している粒子は、これと逆極性に荷電されて現像ローラ2の表面からの剥離力が付与され、現像ローラ2の表面に残存するトナー粒子は、クリーニングローラ4にてクリーニングされやすくなって、現像ローラ2に残存トナーが凝固して残ってしまうことがなくなり、現像ローラ2の表面での残存トナーによるケーキング(凝固状態)を防止することができる。
【0056】
このときにおいて、現像ローラ2の表面に形成される液体現像剤の膜厚は、薄いほどその使用量を少なくできると共に膜厚が均一な膜を作りやすい。一方、この膜厚は5μm以上ないと印刷濃度が不足する傾向がある。また、一般的には液体現像剤の粘度が100mPa.s以下ではトナー濃度が低くなると共に、トナー粒子の分散性が悪くなって現像ローラ表面上での膜厚を薄くすることがむずかしくなる。なお、この液体現像剤の濃度が高くなるほどトナー粒子の撹拌がむずかしくなって製造が容易でなくコストが高くなり、このことからこのトナー濃度はできるだけ低いことが望まれている。
【0057】
本発明にあっては上記したように、アニロックスローラ4の表面にトナー帯電用チャージャ10にてプラス電荷を印加したことにより、このアニロックスローラ4の表面に付着した液体現像剤の流動性がよくなって、現像ローラ2上でのトナー膜厚を均一で、しかもこれ以上薄くできない3〜4.8μmの膜厚にすることができた。ついで、現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部の上流側において、コロナチャージャ11にてプラス電荷が印加されて、この現像ローラ表面でのトナー粒子が凝集されることにより、濃度が100mPa.sより低い5〜80mPa.sであっても、トナー膜のトナー濃度を高くすることができ、現像ローラ2表面上でのトナー膜厚が薄い方の限界値である3〜4.8μmの膜厚であっても均一な膜厚でもって、印刷ムラがない十分な印刷濃度を有する印刷物を得ることができた。
【0058】
上記した湿式現像装置において、現像ローラ2とアニロックスローラ4及び現像剤槽6を支持している現像部支持フレーム15は、上記現像ローラ2が感光体ドラム1に対して接離する方向に移動可能にして基台16に支持されている。これの移動は、基台16側に設けられたシリンダ装置17の伸縮動作にて行われるようになっている。
【0059】
また、クリーニングローラ5を支持しているクリーニングローラ支持フレーム18は、上記現像ローラ2に対して接離する方向に移動可能にして上記現像部フレーム15に支持されている。このクリーニングローラ支持フレーム18は、クリーニングローラ5が現像ローラ2に接触する位置まで移動した状態で結合装置19にて固定されるようになっている。この結合装置19の一例では、現像部支持フレーム15に回動自在に設けたフック19aをアニロックスローラ支持フレーム18に設けたピン19bに係合することにより、両フレーム15,18が結合するようにした構成になっている。
【0060】
また、この湿式現像装置において、現像ローラ2はアニロックスローラ4に対して接離可能に、かつこの接離方向の作動量を変えることにより両ローラ2,4のニップ幅を変えることができるようになっていて、現像部フレーム15を感光体ドラム1側から離隔方向に移動した状態での印刷作動の休止時に、現像ローラ2がアニロックスローラ4から離隔できるようになっている。
【0061】
また、クリーニングローラ5は、クリーニングローラ支持フレーム18を現像部支持フレーム15側にセットした状態で、現像ローラ2に対して離隔可能になっている。
【0062】
図2はアニロックスローラ4に対して接離可能にした現像ローラ2の軸受構成を示すもので、現像ローラ2の軸方向両側の軸は偏心軸受20a,20bに支承されている。偏心軸受20a,20bは、軸方向両側の現像部フレーム15a,15bに、上記現像ローラ2の軸心に対して偏心した軸心を中心にして回転可能に支持されていて、この両偏心軸受20a,20bを軸方向両側の同期作動するシリンダ装置21a,21bの伸縮にて同期回動することにより、現像ローラ2が現像部フレーム15に対して偏心回転して、これの周面がアニロックスローラ4の周面に対して接離可能に移動されるようになっている。
【0063】
なお、上記現像ローラ2は、これの軸方向両側を支持する上記偏心軸受20a,20bに対して着脱しやすいように、軸受20a,20bにて支持する支持部軸22a,22bに対してローラ端軸23a,23bは、支持軸22a,22b側に設けた軸継手24a,24bにて着脱可能に結合されている。この軸継手24a,24bは図3に示すように2つ割り構成になっていて、継手本体25にローラ端軸23aを嵌合し、これの上側に蓋部材26をかぶせる構成になっていて、この蓋部材26を外すことにより現像ローラ2が軸直角方向に離脱できるようになっている。
【0064】
アニロックスローラ4のローラ端軸も上記現像ローラ2のローラ端軸23a,23bと同様になっていて、軸継手にて偏心軸受に支承されている支持部軸に結合されるようになっている。
【0065】
このような構成により、両端が軸受を介して現像部フレーム15に支持された現像ローラ2とアニロックス4は、軸継手24a,24bを分解することにより軸方向両側の軸受に関係なく着脱でき、この組み立て、取り外しを容易に行うことができる。
【0066】
なお、上記偏心軸受20a,20bは、現像ローラ2をアニロックスローラ4に対して接離するための一例を示すもので、現像ローラ2を軸直角方向に移動するための手段として、例えばリニアスライド装置であってもよい。
【0067】
図4はクリーニングローラ5の両端部の支持構成を示すもので、このクリーニングローラ5の両端部はクリーニングローラ支持フレーム18に、クリーニングローラ5の軸心に対して偏心とした軸心を中心にして回転可能に支持された偏心軸受27a,27bに支承されていて、偏心軸受27a,27bを所定角にわたって回転することにより、クリーニングローラ5が現像ローラ2に対して接離方向に移動されるようになっている。上記偏心軸受27a,27bの回転は、これの外周面に設けた穴28に工具の一端を挿し込んで工具を介して回転することによって行われる。
【0068】
図1に示す構成において、アニロックスローラ4の周面に当接しているドクタブレード9、現像ローラ2の周面に当接しているクリーニングブレード13及びクリーニングローラ5の周面に当接しているクリーニングブレード14のそれぞれの各ローラに対する当接は、ばね付勢にて一定の当接圧にてなされるようになっており、かつばね付勢力を調整することにより上記当接圧が変えられるようになっている。
【0069】
上記ブレードの一例としてアニロックスローラ4の周面に当接しているドクタブレード9の支持構成を図5、図6を用いて説明する。
【0070】
ドクタブレード9はブラケット29の先端に取り付けられており、このブラケット29はドクタブレード9の先端がアニロックスローラ4に対して接離する方向に回動自在にピン30にて枢支されている。このブラケット29は、ドクタブレード9の先端がアニロックスローラ4に接触する方向にスプリングプランジャ31にてばね付勢されている。
【0071】
スプリングプランジャ31は図6に示すようになっており、外周がねじになっている筒体32内にボール33とばね34が内装されていて、ボール33が筒体32より突出する方向にばね付勢されている。そしてこのスプリングプランジャ31が上記ブラケット29に螺合され、これのボール33がフレーム側に設けた偏心カム35に当接されていて、この偏心カム35を回動することにより、ボール33がばね34に抗して変位してスプリングプランジャ31による付勢力が調整されるようになっている。なお、このスプリングプランジャ31の付勢力は、これの筒体32のブラケット29に対するねじ込み深さを調整することによっても調整することができる。
【0072】
なお、上記ドクタブレード9をアニロックスローラ4に対してばね付勢する手段はスプリングプランジャ31に限るものではなく、トーションばね、引張りばね等、ドクタグレード9を取り付けたブラケット29をドクタブレード9がアニロックスローラ4の周面に当接する方向に回動する方向にばね付勢できるものであればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…感光体ドラム、2…現像ローラ、3…露光装置、4…アニロックスローラ、5…クリーニングローラ、6…現像剤槽、7…液体現像剤、8…アジテータ、9…ドクタブレード、10…トナー帯電用チャージャ、11,12…上流側、下流側のコロナチャージャ、13,14…クリーニングブレード、15…現像部支持フレーム、16…基台、17…シリンダ装置、18…クリーニングローラ支持フレーム、19…結合装置、20a,20b…偏心軸受、21a,21b…シリンダ装置、22a,22b…支持部軸、23a,23b…ローラ端軸、24a,24b…軸継手、25…継手本体、26…蓋部材、27a,27b…偏心軸受、28…穴、29…ブラケット、30…ピン、31…スプリングプランジャ、32…筒体、33…ボール、34…ばね、35…偏心カム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に露光により形成された静電潜像を、表面に液体現像剤が塗布された現像ローラが転接することによりトナー像に現像するようにした湿式現像装置において、
上記現像ローラに、液体現像剤に一部浸漬したアニロックスローラを同一周速度で、かつ同一周方向に回転するようにして転接し、
このアニロックスローラの表面に液体現像剤の汲み上げ量を規制するドクタブレードを当接すると共に、このドクタブレードとの当接部から現像ローラとの転接部の回転方向の間の表面にトナー帯電用チャージャを対設し、
現像ローラの上記アニロックスローラとの転接部から感光体ドラムとの転接部の回転方向の間の表面に、現像ローラ側にトナー粒子を押し付ける極性の電荷を印加する上流側のコロナチャージャを対設し、
上記液体現像剤の粘度が5〜80mPa.sであり、またアニロックスローラから現像ローラへ液体現像剤をこれの膜厚が3〜4.8μmになるように供給するようにした
ことを特徴とする湿式現像装置。
【請求項2】
アニロックスローラの凹状セルの深さを24〜30μm、アニロックスローラの表面に電荷を印加するトナー帯電用チャージャの設定電圧を4〜5.6kvに、アニロックスローラと現像ローラとのニップ幅を8〜12mmにして現像ローラ表面の液体現像剤の膜厚を3〜4.8μmにすることを特徴とする請求項1記載の湿式現像装置。
【請求項3】
現像ローラの感光体ドラムとの転接部よりも回転方向下流側の表面に、上記上流側のコロナチャージャの電荷とは逆極性で、現像ローラからトナー粒子が離れるように働く電荷を印加する下流側のコロナチャージャを対設し、現像ローラの上記下流側のコロナチャージャとの対設位置とアニロックスローラとの回転方向の間の表面に、現像ローラに転接してこれの表面をクリーニングするクリーニングローラを転接すると共に、このクリーニングローラとの転接部より回転方向下流側にクリーニングブレードを当接したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項記載の湿式現像装置。
【請求項4】
現像ローラとアニロックスローラを支持する現像部支持フレームを、現像ローラが感光体ドラムに対して接離する方向に移動可能にすると共に、現像ローラとアニロックスローラの少なくとも一方を接離方向に移動可能にして両ローラの接離とニップ幅を調整可能にしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の湿式現像装置。
【請求項5】
クリーニングローラをクリーニングローラ支持フレームに支持し、このクリーニングローラ支持フレームを、現像ローラとアニロックスローラを支持する現像部支持フレームに、クリーニングローラが現像ローラに対して接離する方向に移動可能に支持したことを特徴とする請求項3,4のいずれか1項記載の湿式現像装置。
【請求項6】
現像ローラに当接するクリーニングブレード、クリーニングローラに当接するクリーニングブレードのそれぞれを、付勢力を調整可能にしたばね力にて各ローラ表面に当接させたことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の湿式現像装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項記載の湿式現像装置にて感光体ドラムの静電潜像を液体現像剤にてトナー像に現像する湿式現像方法において、
現像の休止時には現像ローラを感光体ドラムより離隔しておき、
現像開始時に、アニロックスローラ、現像ローラ、クリーニングローラをそれぞれ転接させた状態で2〜20秒駆動してから現像ローラを感光体ドラムに転接させるようにしたことを特徴とする湿式現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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