説明

湿式画像形成装置

【課題】ニップ部において均一な薄層を形成することが可能な湿式画像形成装置を得る。
【解決手段】湿式画像形成装置100は、お互いの表面同士を接触させた状態で回転する汲上ローラー10および搬送ローラー20と、上記表面同士が接触することによって汲上ローラー10および搬送ローラー20の間に形成されたニップ部Nに対して間隔を空けて対向配置された空間規定部材30とを備え、空間規定部材30は、ニップ部Nに向かって供給される現像剤Wを、ニップ部Nよりも上流側において貯留させた状態でニップ部Nに向かって供給させる貯留空間Sを規定し、現像剤Wがニップ部Nに供給されている状態において、ニップ部Nに供給される現像剤Wの貯留空間S内における鉛直方向の液面高さWHは、ニップ部Nの中央部における鉛直方向の高さNH以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式画像形成装置に関し、特に、複写機、プリンター、ファクシミリまたはこれらの複合機等の内部に搭載され、現像剤を使用してトナー画像を形成する湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−008946号公報(特許文献1)に開示されるように、対向配置された2つの回転部材同士を互いに接触させることによって、一方の回転部材の表面上に薄層を形成する技術が知られている。薄層は、2つの回転部材同士が接触している部分であるニップ部において形成される。
【0003】
図13を参照して、湿式現像装置を採用する一般的な湿式現像装置について説明する。図13は、一般的な湿式現像装置に備えられる汲上ローラー110および搬送ローラー120を示す斜視図である。一般的な湿式現像装置においては、現像剤容器148内に貯留された現像剤Wを用いて、搬送ローラー120上に薄層が形成されている。現像剤Wは、キャリア液とトナーとを含む。
【0004】
搬送ローラー120と現像剤容器148との間には、搬送ローラー120と接触するように汲上ローラー110が設けられる。汲上ローラー110の一部は、現像剤容器148内の現像剤Wに浸漬されている。汲上ローラー110は、矢印AR110方向に回転する。搬送ローラー120は、汲上ローラー110と接触した状態で、矢印AR120方向に回転する。汲上ローラー110の回転によって、現像剤容器148中の現像剤Wは、搬送ローラー120に向かって汲み上げられる。
【0005】
汲上ローラー110が搬送ローラー120に対して所定の圧力で接触していることによって、汲上ローラー110および搬送ローラー120同士が接触している部分であるニップ部において、上記現像剤からなる薄層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−008946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
搬送ローラー120の表面上に薄層を形成しようとした際、汲上ローラー110の形状(直径若しくは長さなど)、搬送ローラー120の形状、現像剤Wを構成するキャリア液の種類、汲上ローラー110の回転数、または搬送ローラー120の回転数などによっては、汲上ローラー110の表面に、図13に示すような筋状部P1、盛下部P2、または盛上部P3などが形成される場合がある。
【0008】
筋状部P1、盛下部P2、または盛上部P3などは、ニップ部の上流側(図13紙面手前側)におけるニップ部の近傍において、現像剤Wが汲上ローラー110の軸方向に対して不均一な液溜りを形成することによって発生するものと考えられる。
【0009】
筋状部P1においては、下方に向かって筋状に垂れ下がる現像剤Wと、その内側において上方に向かって汲み上げられる現像剤Wとが互いに重なることによって、現像剤Wが汲上ローラー110の表面上において層状に形成される。
【0010】
盛下部P2においては、ニップ部の上流側におけるニップ部の近傍において、現像剤Wの一部が盛り下がるように形成される。盛上部P3においては、ニップ部の上流側におけるニップ部の近傍において、現像剤Wの一部が盛り上がるように形成される。
【0011】
筋状部P1、盛下部P2、または盛上部P3などが汲上ローラー110の表面上に形成されると、ニップ部において形成される薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じ、ニップ部の下流側に形成される薄層の厚みは不均一となる。
【0012】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであって、ニップ部において均一な薄層を形成することが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に基づく湿式画像形成装置は、お互いの表面同士を接触させた状態で回転する第1回転部材および第2回転部材と、上記表面同士が接触することによって上記第1回転部材および上記第2回転部材の間に形成されたニップ部に対して間隔を空けて対向配置された空間規定部材と、を備え、上記空間規定部材は、上記ニップ部に向かって供給される現像剤を、上記ニップ部よりも上流側において貯留させた状態で上記ニップ部に向かって供給させる空間を規定し、上記現像剤が上記ニップ部に供給されている状態において、上記ニップ部に供給される上記現像剤の上記空間内における鉛直方向の液面高さは、上記ニップ部の中央部における鉛直方向の高さ以上である。
【0014】
好ましくは、上記空間規定部材は、上記空間内に貯留した上記現像剤を排出する排出部を含み、上記排出部の鉛直方向の高さは、上記ニップ部の上記中央部における鉛直方向の上記高さ以上であり、上記現像剤が上記ニップ部に供給されている状態において、上記現像剤の一部は、上記排出部を通して上記空間から排出される。
【0015】
好ましくは、上記第1回転部材および上記第2回転部材のうちの一方は、アニロックスローラーから構成される。
【0016】
好ましくは、上記空間規定部材は、上記ニップ部の長手方向における両端を塞ぐように設けられた側壁部を有する。
【0017】
好ましくは、本発明に基づく上記の湿式画像形成装置は、上記現像剤を上記ニップ部に向かって供給する現像剤供給ポンプをさらに備え、上記現像剤供給ポンプから上記ニップ部に向かって上記現像剤を供給する上記現像剤供給ポンプの配管は、上記空間規定部材の内部を通して上記空間に連通している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ニップ部において均一な薄層を形成することが可能な湿式画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1における湿式画像形成装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態1における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は静止している)。
【図3】実施の形態1における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は動作している)。
【図4】実施の形態1における湿式画像形成装置の汲上ローラーおよび搬送ローラーの間に形成されるニップ部の近傍を拡大して示す断面図である。
【図5】実施の形態1における湿式画像形成装置に用いられ得る汲上ローラーおよび搬送ローラーの構成を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1における湿式画像形成装置に用いられ得る汲上ローラーおよび搬送ローラーの構成を示す断面図である。
【図7】実施の形態2における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は動作している)。
【図8】実施の形態3における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は静止している)。
【図9】実施の形態3における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は動作している)。
【図10】実施の形態4における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材の近傍を示す断面図である(湿式画像形成装置は静止している)。
【図11】実施の形態4における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、および空間規定部材を示す斜視図である。
【図12】実施の形態5における湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラー、搬送ローラー、空間規定部材、および現像剤供給ポンプの近傍を示す断面図である。
【図13】一般的な湿式画像形成装置に備えられる汲上ローラーおよび搬送ローラーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0021】
[実施の形態1]
図1を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置100の全体構成について説明する。
【0022】
湿式画像形成装置100は、像担持体40、帯電装置41、露光装置42、現像ローラー43、用紙搬送ベルト44、プレ攪拌ローラー45、クリーニングブレード46,47、現像剤容器48、汲上ローラー10(第1回転部材)、搬送ローラー20(第2回転部材)、空間規定部材30、用紙トレイ51、用紙ガイドローラー52、支持ローラー53,55、2次転写ローラー54、および、定着ローラー56を備える。
【0023】
像担持体40は、ドラム状に形成される。帯電装置41、露光装置42、現像ローラー43、用紙搬送ベルト44、プレ攪拌ローラー45、および、クリーニングブレード46は、像担持体40の回転方向(矢印AR40方向)に沿って、像担持体40の周りに順に配置される。
【0024】
現像ローラー43は、矢印AR43方向に回転する。現像ローラー43は、矢印AR20方向に回転する搬送ローラー20に接触するように配置される。搬送ローラー20は、矢印AR10方向に回転する汲上ローラー10に接触するように配置される。汲上ローラー10および搬送ローラー20は、お互いの表面同士を接触させた状態で回転する。汲上ローラー10の一部は、現像剤容器48内の現像剤Wに浸漬されている。
【0025】
現像剤容器48内に貯留される現像剤Wは、トナーおよびキャリア液を含む。トナーの平均粒径は、湿式画像形成方式を採用しているため、たとえば0.1μm〜5μmである。トナーの平均粒径が0.1μm未満での場合、現像性が低下する。トナーの平均粒径が5μmより大きい場合、画像品位が低下する。
【0026】
現像剤は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナーと、前記トナーを分散させる分散剤とを主要成分としている。キャリア液としては、一般に電子写真用現像液に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができるが、用紙への残留防止を考慮して揮発性の液体が好ましい。揮発性液体としては、例えば、シリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、または、鉱物油等をあげることができる。
【0027】
トナーとしては、一般に電子写真用現像液に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンーアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリウレタン樹脂等の、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
トナー用結着樹脂としては、これらの樹脂を複数、混合して用いても良い。トナーの着色に用いられる顔料および染料としても、一般に市販されているものを用いることができる。顔料としては、たとえば、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、または、レーキレッドD等を用いることができる。染料としては、たとえば、ソルベントレッド27、またはアシッドブルー9等を用いることができる。
【0029】
現像液の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、またはロールミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末を、たとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。
【0030】
得られたトナーをキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、現像液を得ることができる。トナー濃度としては、10〜50質量%が好ましい。
【0031】
汲上ローラー10および搬送ローラー20の表面同士が接触することによって、汲上ローラー10および搬送ローラー20の間にはニップ部(図2〜図4におけるニップ部N、詳細は後述する)が形成される。空間規定部材30は、このニップ部に対して間隔を空けて対向するように配置される。
【0032】
用紙搬送ベルト44は、いわゆる無端ベルト状に形成される。用紙搬送ベルト44は、矢印AR53方向に回転する支持ローラー53、および矢印AR55方向に回転する支持ローラー55によって支持されている。2次転写ローラー54は、用紙搬送ベルト44を挟んで像担持体40の反対側に配置される。
【0033】
(湿式画像形成装置100の動作)
湿式画像形成装置100においては、像担持体40の表面が、帯電装置41によって所定の表面電位に一様に帯電される。その後、像担持体40の表面は、露光装置42によって所定の画像情報に応じて露光される。像担持体40の表面には、静電潜像が形成される。
【0034】
現像剤容器48内には、上述のとおり、トナーおよびキャリア液を含む現像剤Wが貯留されている。現像剤Wは、汲上ローラー10の回転によって汲み上げられ、搬送ローラー20を通して現像ローラー43に供給される。像担持体40の表面に形成された静電潜像が現像剤Wによって現像されることによって、像担持体40の表面にはトナー像が形成される。
【0035】
用紙トレイ51から用紙ガイドローラー52を通して用紙搬送ベルト44上に用紙50が供給される。用紙50は、用紙搬送ベルト44によって矢印AR50a方向に搬送される。用紙50が像担持体40と2次転写ローラー54との間を通過する際、2次転写ローラー54は、像担持体40の表面に形成されたトナー像を形成するトナー粒子に対して、逆極性のバイアスを印加する。2次転写ローラー54によって形成された電界の作用によって、トナー像を形成するトナー粒子は、用紙50の表面に転写される。
【0036】
その後、用紙50は、用紙搬送ベルト44によって矢印AR50b方向に搬送された後、矢印AR56方向に回転する定着ローラー56,56の間に搬送される。用紙50上に形成されたトナー像は、加熱されることによって用紙50に定着する。
【0037】
用紙50上に転写されずに像担持体40の表面に残留したトナー粒子は、矢印AR45方向に回転するプレ攪拌ローラー45によって均された後、クリーニングブレード46によって除去される。現像ローラー43上に残留した現像剤Wは、クリーニングブレード47によって除去される。湿式画像形成装置100による用紙50に対する印刷は、以上のように行なわれる。
【0038】
(空間規定部材30)
図2を参照して、ここで、湿式画像形成装置100における空間規定部材30についてより詳細に説明する。図2は、汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30の近傍を示す断面図である。図2においては、湿式画像形成装置100が静止している状態の様子が示されている。上述のとおり、空間規定部材30は、汲上ローラー10および搬送ローラー20の間に形成されたニップ部Nに対して間隔を空けて対向するように配置される。
【0039】
空間規定部材30は、樹脂または金属製のブロックから構成される。空間規定部材30は、汲上ローラー10の表面に沿うように湾曲して形成された内周面30S1と、搬送ローラー20の表面に沿うように湾曲して形成された内周面30S3と、内周面30S1および内周面30S3を接続するように形成された内周面30S2と、上端部30T(排出部)と、を含む。
【0040】
内周面30S1と汲上ローラー10との間には、ニップ部Nの長手方向(図2紙面垂直方向)に沿って均一な断面積を有する空間S1が形成される。内周面30S2とニップ部Nとの間には、ニップ部Nの長手方向に沿って均一な断面積を有する空間S2が形成される。内周面30S3と搬送ローラー20との間には、ニップ部Nの長手方向に沿って均一な断面積を有する空間S3が形成される。空間S1,S2,S3によって、貯留空間Sが形成される。
【0041】
図3は、汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30の近傍を示す断面図である。図3においては、湿式画像形成装置100が動作している状態の様子が示されている。湿式画像形成装置100が用紙50(図1参照)に対して所定の画像を印刷する際、上述のとおり、汲上ローラー10は矢印AR10方向に回転し、搬送ローラー20は矢印AR20方向に回転し、現像ローラー43は矢印AR43方向に回転する。
【0042】
現像剤容器48内の現像剤Wに一部が浸漬された汲上ローラー10が回転することによって、現像剤Wは汲上ローラー10によって汲み上げられる(矢印AR1参照)。現像剤Wは、空間S1,S2の内部を順に満たしつつ、ニップ部Nに向かって供給される。その後、現像剤Wは、汲上ローラー10および搬送ローラー20同士が接触している部分であるニップ部Nに進入する。
【0043】
この際、空間規定部材30は、ニップ部Nよりもニップ部Nの進入方向の上流側において現像剤Wを貯留させた状態で、ニップ部Nに向かって現像剤Wを供給させる。空間規定部材30は、ニップ部Nよりもニップ部Nの進入方向の上流側における現像剤Wの溜まり量を規定する。
【0044】
現像剤Wは、ニップ部Nを通過することによって、搬送ローラー20の表面において薄層状に形成される。薄層状に形成された現像剤Wは、搬送ローラー20の回転によってさらに上方に搬送される(矢印AR2参照)。現像剤Wは現像ローラー43の回転によってさらに上方に搬送される(矢印AR3参照)。その後、像担持体40の表面にトナー像を形成するために、現像ローラー43上の現像剤Wは、像担持体40の表面に形成された静電潜像を現像する。
【0045】
ニップ部Nを通過しなかった現像剤Wの一部は、空間S3および上端部30Tを順に通過し(矢印AR4参照)、その後、現像剤容器48内に再び戻る(矢印AR5参照)。
【0046】
図4は、湿式画像形成装置100におけるニップ部Nの近傍を拡大して示す断面図である。図4を参照して、本実施の形態における空間規定部材30の上端部30Tの鉛直方向における高さTHは、現像剤Wがニップ部Nに供給されている状態において、ニップ部Nに供給される現像剤Wの貯留空間S内における鉛直方向の液面高さWHが、ニップ部Nの中央部における鉛直方向の高さNHよりも高くなるように構成される。ここで、ニップ部Nの中央部とは、ニップ部Nの端部N1およびニップ部Nの端部N2の丁度中心に位置する部分である。
【0047】
現像剤Wがニップ部Nに供給されている状態において、ニップ部Nに供給される現像剤Wの貯留空間S内における鉛直方向の液面高さWHが、ニップ部Nの中央部における鉛直方向の高さNHよりも高くなることによって、ニップ部Nには十分な現像剤Wが供給される。
【0048】
以上の構成によれば、ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍において、現像剤Wが、ニップ部Nの長手方向(汲上ローラー10の軸方向)に対して略均一な溜りを形成することが可能となる。ニップ部Nの長手方向において所定の量の均一な液溜りが形成されることによって、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力が一定となり、ニップ部Nを通過する現像剤Wの量も一定となる。
【0049】
湿式画像形成装置100によれば、ニップ部Nにおいて形成される現像剤Wの薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じることもなく、薄層の厚みは略均一となる。像担持体40上に形成されるトナー画像も所望の厚さに形成される。したがって、湿式画像形成装置100によれば、高画質な画像を用紙50(図1参照)上に形成することが可能となる。
【0050】
また、湿式画像形成装置100においては、ニップ部Nを通過しなかった現像剤Wの一部は、空間S3および上端部30Tを順に通過し(矢印AR4参照)、その後、現像剤容器48内に再び戻る(矢印AR5参照)。余剰の現像剤Wが貯留空間S内から常に排出されることによって、ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍においては、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力変動が抑制されることによって、より均一な液溜まりが形成される。ニップ部Nによって形成される薄層の厚みは、より均一になる。
【0051】
空間規定部材30の材質、および、空間規定部材30の内周面30S1,30S2,30S3の形状については、ニップ部Nの長手方向において所定の量のより均一な液溜りが形成されるように、現像剤Wの種類、汲上ローラー10の材質および形状、ならびに、搬送ローラー20の材質および形状などに応じて最適化されるとよい。
【0052】
図5は、湿式画像形成装置100に用いられ得る汲上ローラー10および搬送ローラー20の構成を示す斜視図である。図6は、湿式画像形成装置100に用いられ得る汲上ローラー10および搬送ローラー20の構成を示す断面図である。
【0053】
図5および図6を参照して、本実施の形態における上記の湿式画像形成装置100においては、汲上ローラー10として、円柱状ないし円筒状に形成された金属製の部材の表面11に、複数の溝部12が形成されたアニロックスローラーが用いられるとよい。当該構成によれば、汲上ローラー10の表面に適切な量の現像剤Wを供給することが可能となる。また、搬送ローラー20としては、表層が弾性体から構成された部材が用いられるとよい。
【0054】
[実施の形態2]
図7は、本実施の形態における湿式画像形成装置101に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30Aの近傍を示す断面図である。図7においては、湿式画像形成装置100が動作している状態の様子が示されている。
【0055】
湿式画像形成装置101における空間規定部材30Aにおいては、空間規定部材30Aの上端部30Tが、上述の実施の形態1における空間規定部材30(図4参照)に比べて高く設けられている。当該構成においても、ニップ部Nに供給される現像剤Wの貯留空間S内における鉛直方向の液面高さWHが、ニップ部Nの中央部における鉛直方向の高さNHよりも高くなるように、空間規定部材30Aが構成される。
【0056】
湿式画像形成装置101においては、ニップ部Nを通過しない現像剤Wの一部は、空間S3内において滞留する。湿式画像形成装置101によっても、ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍において、現像剤Wが、ニップ部Nの長手方向(汲上ローラー10の軸方向)に対して略均一な溜りを形成することが可能となる。ニップ部Nの長手方向において所定の量の均一な液溜りが形成されることによって、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力が一定となり、ニップ部Nを通過する現像剤Wの量も一定となる。
【0057】
湿式画像形成装置101によれば、ニップ部Nにおいて形成される現像剤Wの薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じることもなく、薄層の厚みは略均一となる。像担持体40上に形成されるトナー画像も所望の厚さに形成される。したがって、湿式画像形成装置101によっても、高画質な画像を用紙50(図1参照)上に形成することが可能となる。
【0058】
[実施の形態3]
図8および図9を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置102について説明する。図8は、湿式画像形成装置102に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30Bの近傍を示す断面図である。図8においては、湿式画像形成装置102が静止している状態の様子が示されている。図9は、湿式画像形成装置102に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30Bの近傍を示す断面図である。図9においては、湿式画像形成装置102が動作している状態の様子が示されている。
【0059】
図8に示すように、湿式画像形成装置102においては、空間規定部材30Bに、開口部30H(排出部)が設けられる。開口部30Hは、空間規定部材30Bの内周面30S3に設けられる。開口部30Hは、空間S3と空間規定部材30Bの背面側の空間とを連通している。
【0060】
図9に示すように、空間規定部材30Bにおける開口部30Hは、開口部30Hの(底面における)鉛直方向の高さHHが、ニップ部Nの中央部における鉛直方向の高さNHよりも高くなるように構成される。
【0061】
当該構成によれば、ニップ部Nを通過しなかった現像剤Wの一部は、空間S3および開口部30Hの内部を順に通過し、その後、現像剤容器48内に再び戻る(矢印AR5参照)。湿式画像形成装置102によっても、ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍において、現像剤Wが、ニップ部Nの長手方向(汲上ローラー10の軸方向)に対して略均一な溜りを形成することが可能となる。ニップ部Nの長手方向において所定の量の均一な液溜りが形成されることによって、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力が一定となり、ニップ部Nを通過する現像剤Wの量も一定となる。
【0062】
湿式画像形成装置102によれば、ニップ部Nにおいて形成される現像剤Wの薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じることもなく、薄層の厚みは略均一となる。像担持体40上に形成されるトナー画像も所望の厚さに形成される。したがって、湿式画像形成装置102によっても、高画質な画像を用紙50(図1参照)上に形成することが可能となる。
【0063】
[実施の形態4]
図10および図11を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置103について説明する。図10は、湿式画像形成装置103に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30Cの近傍を示す断面図である。図10においては、湿式画像形成装置103が静止している状態の様子が示されている。図11は、湿式画像形成装置103に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、および空間規定部材30Cを示す斜視図である。
【0064】
図10に示すように、湿式画像形成装置103においては、空間規定部材30Cに、側壁部37が設けられる。側壁部37は、ニップ部N(図2など参照)の長手方向(図10紙面垂直方向)における両端を塞ぐように設けられる。
【0065】
図11を参照して、側壁部37は、外壁部35と内壁部36とから構成される。外壁部35は、空間規定部材30Cを構成する部材と一体的に構成されるとよい。内壁部36は、ウレタンフォームなどのシール部材から構成される。
【0066】
当該構成によれば、ニップ部Nの両側の端部から現像剤Wが流れ出ることが抑制される。ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍において、現像剤Wが、ニップ部Nの長手方向(汲上ローラー10の軸方向)に対してより均一な溜りを形成することが可能となる。ニップ部Nの長手方向において所定の量の均一な液溜りが形成されることによって、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力が一定となり、ニップ部Nを通過する現像剤Wの量も一定となる。
【0067】
湿式画像形成装置103によれば、ニップ部Nにおいて形成される現像剤Wの薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じることもなく、薄層の厚みは略均一となる。像担持体40上に形成されるトナー画像も所望の厚さに形成される。したがって、湿式画像形成装置103によっても、高画質な画像を用紙50(図1参照)上に形成することが可能となる。
【0068】
[実施の形態5]
図12を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置104について説明する。図12は、湿式画像形成装置104に備えられる汲上ローラー10、搬送ローラー20、空間規定部材30、および現像剤供給ポンプ60の近傍を示す断面図である。
【0069】
湿式画像形成装置104においては、現像剤Wをニップ部Nに向かって供給する現像剤供給ポンプ60が用いられる。汲上ローラー10は、現像剤容器48内に貯留された現像剤W内に浸漬されていなくてもよい。現像剤供給ポンプ60からニップ部Nに向かって現像剤Wを供給する現像剤供給ポンプ60の配管62は、空間規定部材30の内部を通して貯留空間S(空間S2)に連通している。湿式画像形成装置104においては、ニップ部Nを通過しない現像剤Wの一部は、空間S1を通して排出される(矢印AR6参照)。
【0070】
湿式画像形成装置104によっても、ニップ部Nの上流側におけるニップ部Nの近傍において、現像剤Wが、ニップ部Nの長手方向(汲上ローラー10の軸方向)に対して略均一な溜りを形成することが可能となる。ニップ部Nの長手方向において所定の量の均一な液溜りが形成されることによって、ニップ部Nに進入する現像剤Wの圧力が一定となり、ニップ部Nを通過する現像剤Wの量も一定となる。
【0071】
湿式画像形成装置104によれば、ニップ部Nにおいて形成される現像剤Wの薄層には、いわゆる縦スジノイズと称される厚みのばらつきが生じることもなく、薄層の厚みは略均一となる。像担持体40上に形成されるトナー画像も所望の厚さに形成される。したがって、湿式画像形成装置104によっても、高画質な画像を用紙50(図1参照)上に形成することが可能となる。
【0072】
また、配管62を用いて汲上ローラー10の表面に現像剤Wを供給し、汲上ローラー10の回転によって現像剤Wがニップ部Nに向かって供給されるように構成されてもよい。
【0073】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10 汲上ローラー(第1回転部材)、11 表面、12 溝部、20 搬送ローラー(第2回転部材)、30,30A,30B,30C 空間規定部材、30H 開口部、30S1,30S2,30S3 内周面、30T 上端部、35 外壁部、36 内壁部、37 側壁部、40 像担持体、41 帯電装置、42 露光装置、43 現像ローラー、44 用紙搬送ベルト、45 プレ攪拌ローラー、46,47 クリーニングブレード、48,148 現像剤容器、50 用紙、51 用紙トレイ、52 用紙ガイドローラー、53,55 支持ローラー、54 2次転写ローラー、56 定着ローラー、60 現像剤供給ポンプ、62 配管、100,101,102,103,104 湿式画像形成装置、110 汲上ローラー、120 搬送ローラー、AR1,AR2,AR3,AR4,AR5,AR6 矢印、HH,NH,TH 高さ、N ニップ部、N1,N2 端部、P1 筋状部、P2 盛下部、P3 盛上部、S 貯留空間、S1,S2,S3 空間、W 現像剤、WH 液面高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
お互いの表面同士を接触させた状態で回転する第1回転部材および第2回転部材と、
前記表面同士が接触することによって前記第1回転部材および前記第2回転部材の間に形成されたニップ部に対して間隔を空けて対向配置された空間規定部材と、を備え、
前記空間規定部材は、前記ニップ部に向かって供給される現像剤を、前記ニップ部よりも上流側において貯留させた状態で前記ニップ部に向かって供給させる貯留空間を規定し、
前記現像剤が前記ニップ部に供給されている状態において、前記ニップ部に供給される前記現像剤の前記貯留空間内における鉛直方向の液面高さは、前記ニップ部の中央部における鉛直方向の高さ以上である、
湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記空間規定部材は、前記貯留空間内に貯留した前記現像剤を排出する排出部を含み、
前記排出部の鉛直方向の高さは、前記ニップ部の前記中央部における鉛直方向の前記高さ以上であり、
前記現像剤が前記ニップ部に供給されている状態において、前記現像剤の一部は、前記排出部を通して前記貯留空間から排出される、
請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記第1回転部材および前記第2回転部材のうちの一方は、アニロックスローラーから構成される、
請求項1または2に記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記空間規定部材は、前記ニップ部の長手方向における両端を塞ぐように設けられた側壁部を有する、
請求項1から3のいずれかに記載の湿式画像形成装置。
【請求項5】
前記現像剤を前記ニップ部に向かって供給する現像剤供給ポンプをさらに備え、
前記現像剤供給ポンプから前記ニップ部に向かって前記現像剤を供給する前記現像剤供給ポンプの配管は、前記空間規定部材の内部を通して前記貯留空間に連通している、
請求項1から4のいずれかに記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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