説明

準等方性の三次元プリフォームおよびその製造方法

【課題】準等方性の三次元織りプリフォーム(100)の提供。
【解決手段】プリフォーム(100)は、個々のファブリックストリップ(布細片)つまり織り部材(10)を含む。それらの織り部材(10)は、次には編組されて、一体的に織った軸外れスチフナ配列を伴う、準等方性の三次元織り構造を形作る。織り部材(10)は、その長さに沿って周期的に位置する一体的な横断スチフナを伴う構成のファブリックストリップである。織り部材(10)は、スキンの3つの部分および3つの横断スチフナを含む。スキンおよびスチフナ部分は、どのような数にもすることができる。より多くの部分にすれば、より大きなパネル(すなわち、より多くの6角形セル)を作ることができる。織り部材(10)については、その縦の軸線を0°、+60°および−60°に向けるようなパターンで編組する。横断スチフナ(16)は、織り部材(10)を編組する間スキンに平らに折り、その後、織り部材(10)を決まった場所に編組した後で正しい位置に折りたたむ。繊維強化コンポジットは、そのような準等方性の三次元織りプリフォーム(100)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、織りプリフォームに関し、特には、織りストリップ材を含む編組プリフォームであって、強化コンポジット材料に用いるものに関し、プリフォーム中に好ましくないループを生じることなく平坦に編み、最終形状に折ることができ、最終形状には2あるいは3以上の方向の補強がなされる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0002】
ここで引用するすべての特許、特許出願、文書、文献、製造者の使用説明書、解説、製品仕様書、およびここで述べる製品についての製品説明書を引用によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0003】
構造的な構成要素あるいは部品を製造するために、強化コンポジット材料を用いることは、今や一般的である。特に、重さが軽いこと、強固、丈夫、耐熱性、自らを支える能力、および形作る上で適合するという、好ましい特性が求められるところでは広く普及している。そのような構成要素あるいは部品は、たとえば、航空、航空宇宙産業、人工衛星、レクレーション分野(レース艇やレーシングカーなど)、およびその他の分野で用いられる。
【0004】
そのような構成要素あるいは部品は、典型的に、マトリックス材料の中に埋め込んだ強化素材から構成される。強化の構成部分は、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエチレン、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性、第1には応力に対する大きな耐久性を示すその他の材料から構成される。そのような強化材料、それらは結局は完成品の構成要素になるのであるが、それらを使用するとき、たとえば非常に大きな強度のようなそれら強化素材の望ましい特性が、完成したコンポジット部品に授けられることになる。構成要素である強化材料は、典型的には、織られたり編まれたり、あるいはその他のやり方で強化プリフォームのための好ましい形状および形に形成される。通常、選択理由である強化材料の特性が最大限に活用されるように注意が図られる。また、そのような強化プリフォームについては、マトリックス材料と組み合わせることにより必要な完成品を得、あるいは、完成品の最終生産のために役立つ在庫品を得る。
【0005】
必要な強化プリフォームを構成した後、マトリックス材料をプリフォームおよびその中に加えるようにする。それにより、強化プリフォームは、マトリックス材料で包まれ、マトリックス材料は強化プリフォームの構成要素の間のすき間部分を埋める。マトリックス材料としては、たとえば、エポキシ、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、炭素および/またはその他の材料で、必要とする物理的、熱的、化学的および/または他の特性を示すものなど、いろいろな材料を広く適用することができる。マトリックスとして用いる材料としては、強化プリフォームの材料と同じものでも良いし、異なるものでも良く、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似したものでも良いし、類似しないものでも良い。しかし、通常、それらは強化プリフォームと同じ材料ではなく、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似しない。なぜなら、第1にコンポジットを用いる通常の目的は、ただ一つの構成材料だけでは得ることができない組合せ特性を完成品で得ることにあるからである。強化プリフォームおよびマトリックス材料は、そのように組み合わされた後、熱硬化処理あるいは他の公知の方法で同じ作業工程において硬化および安定化され、さらに、目的とする構成部品を製造するための他の作業工程に入る。ここで、そのように硬化した時点において、マトリックス材料の固体化したものが、通常、強化材料(たとえば、強化プリフォーム)に非常に強く付着していることに気付くことが大事である。結局、完成品上の応力が、繊維間の接着剤として機能するそのマトリックス材料を特に通して、補強された強化プリフォームの構成材料に有効に移され保持される。
【0006】
構成要素あるいは部品にしばしば求められることは、たとえば平板、薄板、長方形あるいは正方形の立体などの幾何学的に単純な形状以外の形状のものを製造することである。これに応えるための一つの方法は、そのような基本的な幾何学形状を組み合わせることにより、求められる複雑な形態にすることである。そのような典型的な組合せの一つは、上で述べたようにして作った強化プリフォームを互いに角度をもって(典型的には、直角)接合することにより作ったものである。そのような角度をもって強化プリフォームを接合し配列する普通の目的は、1または2以上の端壁やたとえば「T」交差を含む強化プリフォームを形作る狙いとする形を作り出すこと、あるいは、強化プリフォームの組合せで得たものおよびコンポジット構造について、圧力や張力などの外力を受けた場合でもたわみや破損に耐えられるように強化することである。とにかく、関連する動機は、構成する構成要素間の各連結をできるだけ強固にすることである。強化プリフォームの構成要素それ自体に求められる非常に大きな強度が与えられるとき、構造上の「チェーン」における「弱いリンク」となるのが、実際上、連結における弱さである。
【0007】
交差する構成の一例について、USP第6,103,337号が示している。その文献に示す内容は、参照によってこの中に含ませる。その文献においては、2つの強化板(補強プレート)をT型に結合する有効な方法を示している。
【0008】
今まで、そのような結合を作るために他のいろいろな方法が提案されている。パネル構成要素と、角度をもって置く強化のための構成要素とを互いに別々に作り硬化することが提案されている。後者の構成要素は、単一のパネル接触面をもつか、あるいは、一端が二股に分かれて分岐した同一平面上の2つのパネル接触面をもっている。そして、2つの構成要素は、熱硬化接着剤あるいは他の接着材料を用いて、強化のための構成要素のパネル接触面を他の構成要素の接触面に接着によって結合する。しかし、硬化したパネルに対しあるいは複合構造の外皮に対し張力がかかると、結合の有効な強度が接着剤のそれではなく、マトリックス材料のそれであることから、受け入れることができないような小さな値の負荷が「はがし(ピ−ル)」力となり、それが強化のための構成要素をパネルとの界面でパネルから分離してしまう。
【0009】
そのような両構成要素の界面に金属ボルトやリベットを用いることはできない。なぜなら、そのような付加をすれば、複合構造自体の完全な形の少なくとも一部を破壊し弱めてしまうし、重さを増すことになるし、そのような構成要素と周囲の材料との熱膨張係数に違いを生じてしまうからである。
【0010】
この問題を解決する他の方法では、結合領域の全域に高い強度の繊維を加えるという考え方を基礎にしている。すなわち、2つの構成要素の一方を他方に縫い、縫い糸によってそのような強化繊維が結合に加わるようにしている。USP第4,331,495号がそのような方法の一つを示し、また、USP第4,256,790号がそれを分割したものである。これらの特許は、繊維層を接着によって結合した第1および第2の複合パネル間の接合について示している。第1のパネルは、一端で二股に分かれ、従来技術のように同一平面上の2つのパネル接触面をもつ。その第1のパネルと第2のパネルとを結合するため、両パネルを通して未硬化のフレキシブルな複合糸を縫い込んでいる。その後、両パネルおよび縫い込んだ糸は、「共に硬化」、つまり同時に硬化される。また、USP第5,429,853号が、結合強度を改良する他の方法を示している。しかし、その方法は、先に述べた方法と同様である。なぜなら、分離して構成した別個の構成要素を、2つの間の第3の糸あるいは繊維で針縫いすることによって共に結合するからである。どの方法を用いるにかかわらず、結果として得る構造は、個々の部品間の境界面に比較的に弱い結合を含み、個々の層(プライ)を切断し突き合わせるのにかなりの熟練が求められる。
【0011】
今までも強化のための複合物を構造的に一体化しようとする改良がなされ成功しているが、特にUSP第6,103,337号のものでは、接着剤あるいは機械的な結合部材を用いる場合とは異なる方法における問題に取り組みそれを改良するという要求がある。この点から、特殊化した専用の機械によって、三次元(「3D」)の織り構造を作り出す方法が考えられる。しかし、それにはかなりの費用がかかるし、しかも、織機で単純な構造を作り出すという要求が強く求められるところである。この事実にもかかわらず、繊維強化コンポジットの構成要素に加工することができる3Dプリフォームは、魅力的である。なぜなら、それらの構成要素は、今までの二次元の積層コンポジットよりも大きな強度を提供するからである。それらのプリフォームは、面外荷重を支えるコンポジットを必要とする用途に特に有用である。しかし、上に述べた今までのプリフォームでは、大きな面外荷重に耐える上、自動織機で織る上で、およびプリフォームに厚さの異なる部分を得る上で能力的な制限がある。
【0012】
他の方法として、二次元(「2D」)の構造に織り、それを所定の3D形に折り込んでパネルを複合的に強化すること、すなわち、平らなベースあるいはパネル部分と補強材(スチフナ)との間に糸を連続的に織り込むことが考えられる。3D形状に折る2D織り構造物の一例をUSP第6,874,543号が示す。そのすべての内容を参照によってここに組み込む。たとえば、「T」、「I」、「H」あるいは「パイ」断面のような特定の構造による形を伴う繊維プリフォームは、今までの有ひ織機で織ることができる。存続するいくつかの特許(たとえば、USP第6,446,675号やUSP第6,712,099号)がそのような構造を織る方法を示す。また、強化パネルを構成するための他の方法について、USP第6,019,138号が示す。そのすべての内容を参照によってここに組み込む。その方法では、縦糸およびフィル(横糸)の両方向の補強スチフナによって強化パネルを作っている。そこに示すように、その方法は、織りの全体にわたって2方向を強化したり、あるいは、プリフォームのパネル部分に単に織りの高密度な個所を得るようにしている。しかし、今までの技術のすべてにおいて、プリフォームは、スチフナを0°あるいは+/−90°のいずれかの方向性をもって構成されている。
【発明の概要】
【0013】
したがって、一体的な織りプリフォームに対し、2あるいは3以上の方向に強化を得ること、それも特別な改変をすることなく、今までの織機を用いて一つのプロセスで織るという要求がある。特に、その要求は、軸外れスチフナを伴う一体的な織りプリフォームに対するものである。軸外れスチフナを伴う場合とは、スチフナが0°あるいは90°とは別の方向あるいは角度の方向性をもつ場合、あるいは、軸外れスチフナを0°あるいは90°の方向性をもつスチフナと組み合わせて構成した場合である。
【0014】
この発明は、スキン層とスチフナとを一体的に織り、少なくともいくつかの接合を横切る連続的な繊維が存在するようにすることによって、先行技術で述べた弱い結合をなくす。
【0015】
一つの実施形態によれば、この発明は、複数の織り部材を互いに編組した準等方性の三次元織りプリフォームである。織り部材は、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は織り部材の面に対し垂直の方向に位置する。織り部材中に一体的に織るスチフナは、一緒になって、織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る。
【0016】
別の実施形態は、互いに編組した複数の織り部材を含む準等方性の三次元織りプリフォームからなる繊維強化コンポジットである。織り部材は、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は織り部材の面に対し垂直の方向に位置する。織り部材中に一体的に織るスチフナは、一緒になって、織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る。コンポジットは、織りプリフォームをマトリックス材料中に含浸し硬化することによって形作ることができる。
【0017】
さらに別の実施形態は、準等方性の三次元織りプリフォームを製造する方法である。その方法は、複数の織り部材を互いに編組する工程を備える。織り部材は、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は織り部材の面に対し垂直の方向に位置する。織り部材中に一体的に織るスチフナは、一緒になって、織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る。一体的に織るスチフナは、織り部材の一部をループ形態に織り、そのループの下部を織り部材の基材(ベース)に縫うことにより形成する。織り部材は、多層の織りファブリックにすることができ、そして、一体的に織るスチフナは、多層の織りファブリックの上層の一部を切断し折ることによって形成することができる。
【0018】
また、別の実施形態によれば、織り部材を形成するために次の手法を行う。すなわち、複数の縦糸と複数の横糸とを織り部材が第1の所定の長さに達するまで織り、織り部材の上層を織り続け、そして、織り部材が第2の所定の長さに向けて下層を浮かせ、第2の所定の長さまで織ったら、下層について織機のテークアップ機構を再び始め、それによって、織り部材に完全なループあるいは壁を形成し、そして、上層と下層とを一緒に織り続ける。
【0019】
さらにまた、この発明の別の実施形態は、繊維強化コンポジットを製造する方法である。その方法は、複数の織り部材を互いに編組することによって、準等方性の三次元織りプリフォームを形成する工程と、織りプリフォームをマトリックス材料中に含浸し硬化する工程とを備える。織りプリフォームを形成する工程においては、1あるいは2以上の織り部材が、織り部材の面に対し垂直である、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備える。
【0020】
この発明の方法は、互いに平行あるいは斜めになったスチフナであって、可変の厚さあるいは可変の長さのものを伴うプリフォームを織るために用いることができる。プリフォームは、縦糸繊維に対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。炭素繊維が好ましいが、この発明は、他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。
【0021】
この発明の織りプリフォームは、強化スキン(外皮)を利用する構造なら、どのようなものにも適用することができ、たとえば、強化パネルの例として、航空機の翼、胴体、あるいは尾部の構造がある。また、6角形のセルが望ましい用途に適用することができる。
【0022】
この発明を特徴づける新規ないろいろな技術的事項について、特には、添付のクレーム(そこに示した事項はこの出願の開示の一部である)に指摘する。この発明、ならびに、それを使用することによって得る作用効果および特定の目的について良く理解するため、詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好ましい実施形態(これに限定されない)が図面に示されている。
【0023】
この中で用いる用語「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は、「含んでいる(including)」および「含む(includes)」という意味になるし、あるいは米国特許法におけるそれらの意味にもなる。また、「本質的に有している(consisting essentially of)」および「本質的に有する(consists essentially of)」の用語は、クレームで用いるときには、米国特許法におけるそれらの意味である。この発明の他の考え方(形態)については、以下の説明に記載されているか、その記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態であって、一体的な横断スチフナを伴う織り部材である。
【図2】この発明の一実施形態であって、軸外れスチフナを伴う繰り返しユニットの模式図である。
【図3(a)】この発明の一実施形態であって、折る前の織り部材の典型的な大きさを示す。
【図3(b)】この発明の一実施形態であって、縫いループを伴う織り部材の模式図を示す。
【図4(a)】この発明の一実施形態であって、2層の織り部材の模式図を示す。
【図4(b)】この発明の一実施形態であって、直立したスチフナを伴う織り部材の模式図である。
【図5(a)】この発明の一実施形態であって、織りプリフォームの織り部材の形成方法が含む工程である。
【図5(b)】この発明の一実施形態であって、織りプリフォームの織り部材の形成方法が含む工程である。
【図5(c)】この発明の一実施形態であって、織りプリフォームの織り部材の形成方法が含む工程である。
【図5(d)】この発明の一実施形態であって、織りプリフォームの織り部材の形成方法が含む工程である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
さて、図面に戻ると、図2は、この発明の方法によって製造した準等方性の三次元織りプリフォーム100の模式図である。プリフォーム100は、個々のファブリックストリップ(布細片)つまり織り部材10を含む。それらの織り部材10は、次には編組されて、一体的に織った軸外れスチフナ配列を伴う、準等方性の三次元織り構造を形作る。織り部材10の模式図を図1に示す。そこに示すように、織り部材10は、その長さに沿って周期的に位置する一体的な横断スチフナを伴う構成のファブリックストリップである。織り部材10は、スキンの3つの部分および3つの横断スチフナを含む。図1に示す織り部材10は、スキンの付加的な部分を含むが、それは基材ユニットがいかに繰り返されているかについて単に明らかにするだけである。スキンおよびスチフナ部分は、どのような数にもすることができる。より多くの部分にすれば、より大きなパネル(すなわち、より多くの6角形セル)を作ることができる。
【0026】
これらの織り部材については、図2に示すように、織り部材10の縦の軸線を0°、+60°および−60°に向けるようなパターンで編組する。横断スチフナ16は、織り部材10を編組する間スキンに平らに折り、その後、織り部材10を決まった場所に編組した後で正しい位置に折りたたむ。留意すべきは、図2に示すものは、最終構造の繰り返し部分であるということである。この繰り返しセルを用いることにより、任意の大きさの構造を構成することができ、それは使用するストリップの長さによってのみ制限されるだけである。
【0027】
図2に示すように、織り部材10の横断スチフナ16は、一連の6角形セルを形作る。気付くとは思うが、横断スチフナ16はスキンに一体的であるが、角の部分は互いに連結されていない。織り部材10に結合したスチフナ16は、セルの上面になく、その上方の織り部材10が開放する空所を通って突き出ている。
【0028】
各セル内部のスキンについては、3層あるいは4層以上のラミネートにすることができる。0°、+60°および−60°方向の補強の大きさが等しいラミネートの基本的な特性は、ラミネートの面における準等方性の剛性特性をもつということである。すなわち、有効な剛性がすべての方向に均一であることである。
【0029】
織り部材の寸法を制御することができ、たとえば、織り部材の幅(a)は6角形セルの平らな部分の長さに等しくし、スチフナ間の間隔は2a・cos(30°)にする。それらの寸法について、たとえば、図3(a)に示す。織り部材10は、この発明の中に示す多少の方法の一つを用いることによって作ることができる。
【0030】
一つの実施例によれば、織り部材10は、図3(b)に示すように、適切な幅をもつ織り部材あるいはファブリックに周期的に「ループ」を縫うことによって作ることができる。公知の縫い方法のどれによっても、縫い目30を加えて、ループ20の下部部分を織り部材10の基材あるいは基部に縫うことができる。
【0031】
また、一つの実施例によれば、2つの層12,14がファブリックの長さ方向に均一な間隔で入れ替わるような2層ファブリックを織ることによって、織り部材10を作り上げることができる。必要な位置28で上層12を切断し、下部層14に対して折ることにより横断スチフナを作り出す。この方法について、たとえば、図4(a)および4(b)に示す。
【0032】
さらに一つの実施例によれば、織り部材10は、おさ打ちおよびテークアップ機構をプログラム可能な織機を用いて作ることができる。その織機はサーボ制御によるおさ打ちおよびテークアップ機構をもつ。この方法は、たとえば、図5(a)〜5(d)に示すように、4つの工程を含む。
【0033】
第1の工程において、等しいテークアップ増分を用いてファブリックの2層を一緒に織り、各ピック(横糸)を挿入した後、同じ位置におさ打ちする。このおさ打ちの位置について、参照位置として示す。その位置において、図5(a)は、織りファブリックの通常の伏せ(fell)を示す。当業者には自明なことであるが、縦糸32,34,36,38と織るとき、おさは各横糸22を通常その位置まで動かし、ファブリックは次第に前方に(図5(a)の左側に)進む。すべての横糸22(ひ)を所定位置に締めるために4つの縦糸を示すが、それは単なる例示であり、その目的のためにはどのような数の縦糸を用いることができる。縦糸32,34はあるデント(おさ羽)に織り、それに対し、縦糸36,38はその次のデント(おさ羽)に織る。このパターン(模様)を織機の幅方向にわたって繰り返す。
【0034】
ファブリックを必要な長さまで織った後、縦糸32,36を含む上層は織り続けるが、縦糸34,38を含む下層は浮織りになるようにする。この工程の間、テークアップ機構は止め、おさ打ちは各横糸24の後、一様に減らす。第1の工程においてテークアップが進む量と同じだけおさ打ち長さを減らす。そこで、上層の横糸24間隔は等しいままである。おさの動きはプログラム可能であり、したがって、横糸24を挿入するときストロークを増加的に短くすることができ、ファブリックは進まない。縦糸34,38は、その処理の部分の間には編まないが、縦糸32,36は、横糸24のすべてに組み合ったままである。
【0035】
次の工程において、テークアップ機構は作動状態とし、両層を再び織り、そして、おさ打ちは参照位置に戻る。すなわち、横糸26を挿入した後おさの通常の動きが再び始まる。この工程における横糸26は、織った上層を押し、ファブリックに「ループ」を形作る。そのループは、ファブリックあるいは織り部材の一体的な横断スチフナあるいは直立した脚になる。それらのループは、求めにより、ファブリックの全長にわたり繰り返すようにすることができる。図5(d)に示すように、横糸24と織る層が、ファブリックの上面に「ループ」を形成する。ループを形成した後、通常の織りが再び始まり、ループを所定の位置に固定する。
【0036】
個々の織り部材10を形成しさえすれば、第1の実施例で述べたように、織りプリフォーム100を構成することができる。この発明の方法は、互いに平行あるいは斜めになったスチフナであって、可変の厚さあるいは可変の長さのものを伴うプリフォームを織るために用いることができる。プリフォームは、縦糸繊維に対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。炭素繊維が好ましいが、この発明は、他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。適用可能な繊維として、たとえば、炭素、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維、木綿、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および金属の糸あるいは繊維がある。
【0037】
この発明の一つの実施形態によれば、織りプリフォーム100を用いて、繊維強化コンポジットを構成することができる。その際、織りプリフォームは、マトリックス材料(たとえば、樹脂)中に含浸し硬化する。樹脂としては、たとえば、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、および炭素のいずれでも良い。コンポジットは、たとえば、樹脂トランスファー成形や化学的気相ろ過など、いくつかの方法で形成することができる。
【0038】
この発明の織りプリフォームは、強化スキン(外皮)を利用する構造なら、どのようなものにも適用することができ、たとえば、強化パネルの例として、航空機の翼、胴体、あるいは尾部の構造がある。また、6角形のセルが望ましい用途に適用することができる。
【0039】
この発明の好ましい実施例および変形例について詳しく述べたが、この発明は、それらの実施例や変形例に限定されるわけではない。特許請求の範囲に記載するこの発明の考え方の範囲内において、他の変形や修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
10 織り部材
12 上層
14 下層
16 横断スチフナ
20 ループ
22,24 横糸(ひ)
25 間隔
28 必要な位置
30 縫い目
32,34,36,38 縦糸
100 織りプリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
準等方性の三次元プリフォームであって、互いに編組した複数の織り部材を備え、前記織り部材の1あるいは2以上のものが、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は前記織り部材の面に対し垂直の方向に位置する、三次元プリフォーム。
【請求項2】
前記織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁は、一緒になって、前記織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る、請求項1のプリフォーム。
【請求項3】
前記1あるいは2以上の織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナは、前記織り部材の一部を折ることによって形成される、請求項1のプリフォーム
【請求項4】
前記ループの下部を前記織り部材の基材(ベース)に縫う、請求項3のプリフォーム。
【請求項5】
前記複数の織り部材は、多層の織りファブリックである、請求項1のプリフォーム。
【請求項6】
前記1あるいは2以上の織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナは、前記多層の織りファブリックの上層の一部を切断し折ることによって形成する、請求項5のプリフォーム。
【請求項7】
前記1あるいは2以上の織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナは、織機上で形成する、請求項1のプリフォーム。
【請求項8】
前記複数の織り部材のパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一つである、請求項1のプリフォーム。
【請求項9】
前記複数の織り部材は、複数の横および縦の糸あるいは繊維を織り込むことにより形成したものであり、前記横および縦の糸あるいは繊維は、炭素、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維、木綿、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および金属の糸あるいは繊維の中の一つである、請求項1のプリフォーム。
【請求項10】
前記織りプリフォームにおける前記準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナは、0°、および+/−60°の方向性で形成されている請求項2のプリフォーム。
【請求項11】
準等方性の三次元プリフォームを備える繊維強化コンポジットであって、互いに編組した複数の織り部材を備え、前記織り部材の1あるいは2以上のものが、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は前記織り部材の面に対し垂直の方向に位置する、繊維強化コンポジット。
【請求項12】
前記織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁は、一緒になって、前記織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る、請求項11のコンポジット。
【請求項13】
前記複数の織り部材は、複数の横および縦の糸あるいは繊維を織り込むことにより形成したものであり、前記横および縦の糸あるいは繊維は、炭素、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維、木綿、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および金属の糸あるいは繊維の中の一つである、請求項11のコンポジット。
【請求項14】
前記織りプリフォームにおける前記準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナは、0°、および+/−60°の方向性で形成されている請求項12のコンポジット。
【請求項15】
マトリックス材料をさらに備える、請求項11のコンポジット。
【請求項16】
前記マトリックス材料は樹脂であり、前記コンポジットは、樹脂トランスファー成形および化学的気相ろ過の中の一つの方法で形成される、請求項15のコンポジット。
【請求項17】
前記マトリックス材料は、エポキシ、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、および炭素の中から選択される、請求項15のコンポジット。
【請求項18】
準等方性の三次元プリフォームの製造方法であって、複数の織り部材を互いに編組する工程を備え、前記織り部材の1あるいは2以上のものが、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は前記織り部材の面に対し垂直の方向に位置する、製造方法。
【請求項19】
前記織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁は、一緒になって、前記織りプリフォーム中に準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナを形作る、請求項18の製造方法。
【請求項20】
前記1あるいは2以上の織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナは、前記織り部材の一部を折ることによって形成する、請求項18の製造方法。
【請求項21】
前記ループの下部を前記織り部材の基材(ベース)に縫う、請求項20の製造方法。
【請求項22】
前記複数の織り部材は、多層の織りファブリックである、請求項18の製造方法。
【請求項23】
前記1あるいは2以上の織り部材の前記1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナは、前記多層の織りファブリックの上層の一部を切断し折ることによって形成する、請求項22の製造方法。
【請求項24】
前記複数の織り部材を形成するとき、
・複数の縦糸と複数の横糸とを前記織り部材が第1の所定の長さに達するまで織る工程、
・前記織り部材の上層を織り続け、そして、前記織り部材が第2の所定の長さに向けて下層を浮かせ、第2の所定の長さまで織る工程、
・前記下層について織機のテークアップ機構を再び始め、それによって、前記織り部材に完全なループあるいは壁を形成する工程、
・前記の上層と下層とを一緒に織り続ける工程
を通して行う、請求項18の製造方法。
【請求項25】
前記複数の織り部材のパターンは、プライ対プライ、直交、およびアングルインターロックの中の一つである、請求項18の製造方法。
【請求項26】
前記複数の織り部材は、複数の横および縦の糸あるいは繊維を織り込むことにより形成したものであり、前記横および縦の糸あるいは繊維は、炭素、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維、木綿、セラミックス、アラミド、ポリエステル、および金属の糸あるいは繊維の中の一つである、請求項18の製造方法。
【請求項27】
前記織りプリフォームにおける前記準等方性の軸外れあるいは6角形のスチフナは、0°、および+/−60°の方向性で形成されている請求項18の製造方法。
【請求項28】
繊維強化コンポジットの製造方法であって、複数の織り部材を互いに編組することによって、準等方性の三次元織りプリフォームを形成する工程を備え、前記織り部材の1あるいは2以上のものが、1あるいは2以上の一体的に織ったスチフナあるいは壁を備え、それらのスチフナあるいは壁は前記織り部材の面に対し垂直の方向に位置し、
しかもまた、前記織りプリフォームをマトリックス材料中に含浸する工程を備える、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【公表番号】特表2012−514138(P2012−514138A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543591(P2011−543591)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068539
【国際公開番号】WO2010/078053
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508135080)アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】