説明

溝蓋吊上げ具

【課題】 目的とする溝蓋のみを垂直方向に安全且つ確実に持ち上げることができ、しかも軽量、安価且つメンテナンスフリーで提供することのできる溝蓋吊上げ具を創出することを課題とする。
【解決手段】 長手方向の両端に貫通孔(1a、1a)が穿設された棒状の可動梁(1)と、可動梁(1)の長手方向の両側に固定された一対の取っ手(2)と、同じく可動梁(1)の両側の下面側に設けられた一対のプレート(3)と、一対のプレート(3)の各底板(3A)に回転自在に垂設され且つ溝蓋を支持する支持腕(4a)を備えた支持ロッド(4)と、貫通孔(1a,1a)に挿入されて可動梁(1)を螺子送りさせる螺子部材(6,6)と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝に被嵌されている溝蓋の取り外しを容易とする溝蓋吊上げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等の両側には、U字溝やコンクリート壁等による側溝が設けられているが、このような側溝の上面開口部はコンクリート製の溝蓋で被嵌されているため、側溝内の清掃等を行うには溝蓋を離脱させる必要がある。
【0003】
側溝に溝蓋を取り付けた期間が短期(半年程度)の場合には、溝蓋を外すのに必要な力は大人の男性が通常持ち上げ可能な重量(重いものでも40kg程度)であることからほとんど機械に頼ることなく人力によって行うことが可能である。
【0004】
しかし、側溝に溝蓋を取り付けた期間が長期(半年〜1年以上)の場合には、側溝の内壁と溝蓋の側面との間、あるいは長手方向(流水方向ともいう。以下同様)の前後(上流側及び下流側ともいう。以下同様)に隣接する溝蓋どうしの側面間に、細かい土や砂などが入り込むことにより、あるいはこれらが泥土化した後に固形化することにより、側溝本体に対して溝蓋が強固に被嵌している場合があり、通常の持ち上げ力程度では容易に持ち上げることが困難になる。また溝蓋を垂直に持ち上げることが容易な治具は現在のところ確認されていない。
【0005】
このような場合に備え、従来より溝蓋を取り外すための装置としては、例えば以下の特許文献1及び特許文献2に示すような技術が開発されている。
特許文献1及び特許文献2に示される溝蓋を取り外すための装置は、4個の車輪を有するフレーム本体上に、両端に垂設した一対のチェーン又はベルトの先端にそれぞれフックを取り付けた横架部材と、この横架部材を上下に昇降させるジャッキとを有して構成されており、両フックで溝蓋の長手方向前後の側面に形成された手がけ用切欠き孔を係止した状態でジャッキを駆動させることにより、溝蓋が昇降できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−53875号公報
【特許文献2】特開平11−11887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載の装置では、以下に示すような問題がある。
(1)溝蓋の長手方向の両端を、長手方向及び左右方向に調整可能なチェーン又はベルト等の調整具を用いて支持する構成であり、横架部材の長手方向の中心部の一箇所を、バランスをとりながらジャッキで持ち上げる構成であるため、溝蓋を垂直に吊り上げる作業が不安定となりやすい。
【0008】
(2)しかも4個の車輪で移動自在であるため、溝蓋に対する装置の位置合わせが難しく、場合によっては吊り上げ後の溝蓋が長手方向又は左右方向に振れることがあり、作業中に装置に支持された溝蓋が落下する危険性がある。特に未舗装道路に沿って設けられた側溝に対しては、未舗装道路を移動する際に大きなガタツキが発生しやすいため、移動中に溝蓋が落下する危険性が高い。
【0009】
(3)さらに目的とする溝蓋を持ち上げたときに、これに隣接する前後の溝蓋が一緒に持ち上がってしまう。
【0010】
(4)4個の車輪を有するフレーム本体上に、いわゆるパンダグラフジャッキや油圧ジャッキを配して構成する必要があるため、装置全体の重量が重くなると共に製造コストの低廉化が難しい。
【0011】
(5)4個の車輪、パンダグラフジャッキまたは油圧ジャッキなどの機構部材を有して構成されているため、定期的にメンテナンスする必要がある。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、目的とする溝蓋のみを垂直方向に安全且つ確実に持ち上げることができ、しかも軽量で、安価な製造コストで、さらにはメンテナンスフリーで提供することのできる溝蓋吊上げ具を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
長手方向の両端に貫通孔が穿設された棒状の可動梁と、可動梁の長手方向の両側に固定された一対の取っ手と、同じく可動梁の両側の下面側に設けられた一対のプレートと、一対のプレートの各底板に回転自在に垂設され且つ溝蓋を支持する支持腕を備えた支持ロッドと、貫通孔に挿入されて可動梁を螺子送りさせる螺子部材と、を有することを特徴とする、と云うものである。
【0014】
上記構成の溝蓋吊上げ具では、目的とする溝蓋の長手方向の手がけ用切欠き孔(通称「手がけ」という。製品により長手方向の両側に手がけを有する両手がけ溝蓋(図示せず)と、一方にのみ片手がけを有する片手がけ溝蓋(図1参照)とがあるが、手がけの長手方向における幅寸法(縦幅寸法)はいずれも2〜3cmである。)に一対の支持ロッドを挿入すると共に固定梁を取り付けた後、可動梁の両側の位置で螺子部材を所定の方向に回転させることにより、可動梁が相対的に上方に螺子送りされ、プレート上に設けられた支持ロッドの支持腕が溝蓋の下面を長手方向の前後から支持する。このため、さらに螺子部材を回転させることにより、側溝本体に強固に被嵌している溝蓋であっても垂直方向に1〜2cmの機械的な吊り上げを確実に達成する。
【0015】
本発明の他の構成は、請求項1に記載の手段において、螺子送り中の螺子部材の先端が当接したときに、螺子部材を支持して可動梁を上昇させる固定梁を備える、と云うものである。
【0016】
上記手段では、固定梁が隣接配置された他の溝蓋を押さえ込むことで、目的とする溝蓋のみの吊り上げを達成する。
【0017】
また本発明の他の構成は、請求項1または2に記載の手段において、一対の支持孔をプレートの各底板に穿設し、丸棒をクランク状に屈曲形成した支持ロッドを一対の支持孔内に回転自在に挿入した、と云うものである。
【0018】
上記手段では、支持ロッドを容易に手がけ用切欠き孔に挿入することができる。
【0019】
また本発明の他の構成は、請求項3に記載の手段において、一方の支持孔と他方の支持孔との間隔を、支持ロッドの支持腕の長さ寸法を2倍した長さ寸法よりも長い寸法とし、且つ溝蓋に形成された手がけ用切欠き孔の横幅寸法未満とした、と云うものである。
【0020】
すなわち、一方の支持孔と他方の支持孔との間隔をWa、支持ロッドの支持腕の長さ寸法をL、溝蓋11に形成された手がけ用切欠き孔の横幅寸法をWbとしたときに、2・L<Wa<Wbの関係とすることにより、一対の支持ロッドの支持腕の先端どうしを対向させた状態で、一対の支持ロッドを手がけ用切欠き孔内に挿入することを可能として、挿入作業のスムーズ化を達成する。
【0021】
また本発明の他の構成は、請求項3または4に記載の手段において、支持ロッドの回転を規制するストッパを、底板に穿設された支持孔の近傍に形成した、と云うものである。
【0022】
上記手段では、支持ロッドを手がけ用切欠き孔内に挿入する段階、及び溝蓋を支持腕で支持して吊上げている状態において、支持ロッドの支持孔内での自由な回転を制限する。
【0023】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至5のいずれかに記載の手段において、
可動梁の両端に、螺子部材に螺着可能なナットを貫通孔に連通する状態で固定した、と云うものである。
【0024】
上記手段では、確実な螺子送り作業を達成する。
【0025】
さらに本発明の他の手段は、請求項1乃至6のいずれかに記載の手段において、螺子部材がボルトである、と云うものである。
【0026】
上記手段では、本発明たる溝蓋吊上げ具全体の軽量化及び製造コストの低廉化を達成する。
【0027】
さらに本発明の他の手段は、請求項1乃至7のいずれかに記載の手段において、可動梁の長さ寸法を調節可能とした、と云うものである。
【0028】
上記手段では、可動梁の長さ寸法を調節することにより、長手方向両側の支持ロッドの間隔を、溝蓋の長手方向の両側に位置する一対の手がけ用切欠き孔間の間隔に一致させることを達成する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、可動梁の両端に設けた一対の螺子部材をそれぞれ回転させるだけで大きな吊り上げ力を発生させることができるため、側溝本体に対して強固に被嵌している溝蓋であっても容易に吊り上げることができる。
また可動梁の両端での螺子回し作業を略均等に行うことにより、前後両側の支持ロッドの上昇量を調整することができ、溝蓋のバランスを保ちながら垂直に安定的に吊り上げることが可能となる。そして、溝蓋を1〜2cm吊り上げた後に、溝蓋の長手方向の前後両側に配置した2人の作業員が、人力によりそれぞれ取っ手を持ちながら上方に7〜10cm程度溝蓋吊上げ具ごと持ち上げることにより、側溝本体から溝蓋を容易に引き上げて横移動させる作業が可能となる。
【0030】
しかも、一対の支持ロッドを両手がけ用切欠き孔にそれぞれ挿入すると、固定梁の重心と溝蓋の重心とを略一致させることができるため、垂直方向に安定的に持ち上げることができ、前後左右に振れることなく安全に作業することができる。
【0031】
また螺子送り中の螺子部材の先端が当接したときに、螺子部材を支持して可動梁を上昇させる固定梁を備えるとした構成にあっては、固定梁が隣接配置された他の溝蓋の上面を押さえ込むことができるため、目的とする溝蓋以外の溝蓋が目的とする溝蓋と一緒に吊り上がってしまうこと防止することができる。すなわち、目的とする溝蓋のみを吊り上げることができる。
また既に隣接する溝蓋が外されている場合であっても、固定梁を用いることにより目的とする溝蓋を同様に吊り上げることができる。
【0032】
また、一対の支持孔をプレートの各底板に穿設し、丸棒をクランク状に屈曲形成した支持ロッドを一対の支持孔内に回転自在に挿入した構成にあっては、溝蓋を支持する支持ロッドを、簡単に構成することができると共に、製造コストを安価とすることができる。しかも、支持ロッドの手がけ用切欠き孔への挿入を容易且つ確実に行うことが可能となる。
【0033】
また、一方の支持孔と他方の支持孔との間隔、支持ロッドの支持腕の長さ寸法を2倍した長さ寸法よりも長い寸法とし、且つ溝蓋に形成された手がけ用切欠き孔の幅寸法未満とした構成にあっては、一対の支持ロッドの支持腕の先端どうしを対向させた状態で、一対の支持ロッドを手がけ用切欠き孔内に挿入することができるため、挿入作業をスムーズに行うことが可能となる。そして、挿入完了後に、一対の支持ロッドをそれぞれ逆方向に90度回転させることにより、各支持腕で溝蓋の下面を確実に支持することが可能となる。
【0034】
また支持ロッドの回転を規制するストッパを、底板に穿設された支持孔の近傍に形成した構成にあっては、支持ロッドを支持孔内へ挿入する作業工程中に支持ロッドが回転して挿入作業ができなくなることを防止することができる。すなわち、支持ロッドの支持孔内への挿入作業を容易且つ確実に達成することができる。また支持ロッドの回転を阻止することが可能となるため、溝蓋の下面を支持している支持腕が下面から外れて溝蓋が落下するような事故の発生を防止することができる。
【0035】
また可動梁の両端に、螺子部材に螺着可能なナットを貫通孔に連通する状態で固定した構成にあっては、螺子部材を用いた螺子送り作業をスムーズ且つ高精度で行うことができるため、可動梁の両端での螺子回し作業を略均等に行うことにより、垂直方向への吊り上げ作業を行うことが可能となり、溝蓋の吊り上げ作業を安定させることができる。これにより、手戻りのない確実安全な作業が可能となる。
【0036】
さらに、螺子部材がボルトであるとした構成にあっては、溝蓋吊上げ具の全体的な重量の軽量化が可能になると共に、製造コストを低廉化することができる。
しかもパンダグラフジャッキや油圧ジャッキ等の専用のジャッキが不要であり、ボルトという汎用品で且つ不具合の少ない部材で螺子部材を構成することができるため、メンテナンスフリー化を達成することができる。
【0037】
また、可動梁の長さ寸法を調節可能とした構成にあっては、両側の支持ロッドの長手方向の間隔を、溝蓋の両側に設けられた手がけ用切欠き孔に適宜対応させることができ、長さ寸法の異なる複数種類の溝蓋の吊り上げが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の溝蓋吊上げ具の全体構成を示す斜視図である。
【図2】溝蓋吊上げ具の平面図である。
【図3】溝蓋吊上げ具の側面図である。
【図4】溝蓋吊上げ具の正面図である。
【図5】Aは溝蓋吊上げ具を用いた第1の作業工程を示す側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図である。
【図6】溝蓋吊上げ具を用いた作業の第2の作業工程を示し、Aは図5A同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図である。
【図7】溝蓋吊上げ具を用いた作業の第3の作業工程を示し、Aは図5同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図である。
【図8】溝蓋吊上げ具を用いた作業の第4の作業工程を示し、Aは図5同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図である。
【図9】溝蓋吊上げ具の他の実施例を示す側面図であり、Aは調整前の状態、Bは調整後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の溝蓋吊上げ具の全体構成を示す斜視図、図2は溝蓋吊上げ具の平面図、図3は溝蓋吊上げ具の側面図、図4は溝蓋吊上げ具の正面図である。
【0040】
図1乃至図4に示す溝蓋吊上げ具は、側溝の上面開口部を被嵌している溝蓋を持ち上げて移動させる前段階において、垂直に1〜2cm吊り上げて側溝の内壁と溝蓋の側面との間、あるいは長手方向(流水方向)の前後に隣接する溝蓋の側面間に、細かい土や砂などが入り込んで泥土化した後に固形化した部分を崩壊させて溝蓋を溝蓋吊上げ具と共に持ち上げることにより、その後の人力による持ち上げ(7〜10cm)作業及び横移動作業を容易に行うことを可能とするものである。
【0041】
図1乃至図4に示すように、溝蓋吊上げ具は角柱状(または棒状)の所定の長さ寸法からなる可動梁1を有し、この可動梁1の両側(長手方向の両側)に固定された略U字形状からなる取っ手2,2が溶接で固定され、さらに可動梁1の下面の両側の位置に略三角形状からなるプレート3,3が溶接で固定されて形成されている。
【0042】
可動梁1の両端には貫通孔1a,1aが穿設されており、その下面にはナット7,7が溶接で固定されている。貫通孔1a,1aとナット7,7とは垂直方向に連通している。この貫通孔1a及びナット7には、螺子部材6の一態様を構成するボルト6Aが螺着可能となっている。なお、貫通孔1a,1aの内面にねじ山を刻設した構成にあっては、ナット7,7を不要とすることが可能である。
【0043】
プレート3の底部には水平な面からなる底板3Aが設けられている。なお、可動梁1の下面とプレート3との間、およびプレート3とその底板3Aとの間に板材を溶接して補強してもよい。
【0044】
底板3Aの左右の位置には、垂直方向に貫通する一対の支持孔3a,3aが穿設されている。これら支持孔3a,3aの内部には、丸鋼の両端をクランク状に垂直に折り曲げ、下部側に支持腕4aを形成し、上部側に制御腕4bを形成した支持ロッド4,4が回転自在に遊挿されている。
【0045】
左右方向に並ぶ一方の支持孔3aと他方の支持孔3aとの間隔はWaである(図2参照)。この間隔Waは、支持腕4aの長さ寸法Lを2倍した長さ寸法2・Lよりも長い寸法で形成されている(2・L<Wa)。他方、一対の支持孔3a,3aの間隔Waは、溝蓋11の長手方向の少なくとも一方に形成された手がけ用切欠き孔11Aの横幅寸法Wb(図1及び図4参照)よりも短い寸法で形成されている(Wa<Wb)。
このため、一方の支持ロッド4と他方の支持ロッド4とを各支持孔3a,3a内で回転させ、互いの支持腕4a,4aの先端どうしを接近させて直線状に並べた状態とすることにより(図1、図4及び図5B参照)、一対の支持ロッド4,4を手がけ用切欠き孔11A内に容易に挿入することができるようになっている。
【0046】
底板3Aの上で、且つ支持孔3aの近傍の位置には、凸形状からなるストッパ5,5が対向する状態で突設されている。一方のストッパ5と他方のストッパ5との対向間隔は、支持ロッド4,4の太さ寸法よりも若干広い寸法を有して形成されている。方のストッパ5と他方のストッパ5との間に支持ロッド4の制御腕4bを挿入することにより、支持ロッド4の回転を規制することが可能となっている。
【0047】
溝蓋11の長手方向の両側の少なくとも一方には手がけ用切欠き孔11Aが設けられており、側溝本体12内に長手方向に沿って縦列配置された複数の溝蓋11どうしの間では溝蓋11の長手方向の長さ寸法ごとに手がけ用切欠き孔11Aが配置される。
【0048】
ここで、溝蓋11の長手方向の長さ寸法(縦寸法)をLaとすると、溝蓋吊上げ具の長手方向の両側に配置される一方のプレート3側に設けられた一対の支持腕4a,4aと、他方のプレート3側に設けられた一対の支持腕4a,4aとの間隔もLaに設定されている。
【0049】
固定梁8は、容易に撓み変形し難い金属製の角鋼または角パイプなどから形成された部材が好ましいが、高い強度を備えた木材や合成樹脂材などで代用することも可能である。
なお、固定梁8の長さ寸法L1は、側溝本体12の幅寸法をW1とした場合に、W1<L1としたものが好ましい(図1参照)が、側溝本体の外幅と同じでもよい。
【0050】
螺子部材6は、例えば、ラチェットレンチなどを用いて容易に回転させることができ、且つ部品単価も安価な六角ボルトなどを使用することができる。
【0051】
上記構成からなる溝蓋吊上げ具を用いた作業として、溝蓋の取り外しの作業工程について説明する。
図5乃至図8は溝蓋吊上げ具を用いた作業の各工程を示しており、図5Aは溝蓋吊上げ具を用いた第1の作業工程を示す側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図、図6は第2の作業工程を示し、Aは図5同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図、図7は第3の作業工程を示し、Aは図5同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図、図8は第4の作業工程を示し、Aは図5同様の側面図、BはAのb−b線における矢印方向からの断面図である。
【0052】
図5に示すように、第1の作業工程では、側溝本体12から取り外したい溝蓋11の頭上に溝蓋吊上げ具を移動させる。このとき、図5Bに示すように、一方の支持ロッド4と他方の支持ロッド4とを、互いの支持腕4a,4aの先端どうしを接近させた状態に設定する。この状態では、制御腕4bが、ストッパ5とプレート3との間に挟まれた状態に設定されるので、制御腕4bがストッパ5を乗り越えない限り支持ロッド4が回転することがない。
【0053】
よって、溝蓋11の長手方向の両端において、一対の支持腕4a,4aと溝蓋11の長手方向の前後に設けられた手がけ用切欠き孔11Aとの位置合わせ行い、この状態から溝蓋吊上げ具を下降させることにより、溝蓋11の長手方向の両端において、一対の支持腕4a,4aを手がけ用切欠き孔11Aにスムーズに挿入させることができる。なお、一対の支持腕4a,4aの手がけ用切欠き孔11Aへの挿入は、本実施例に示すような片手がけ溝蓋の場合は勿論のこと、両手がけ溝蓋に対しても同様に適応することが可能である。
【0054】
なお、このときにはプレート3の底板3Aの下面が、溝蓋11の表面に載置される。また溝蓋吊上げ具の重心位置と溝蓋11の重心位置とが略一致する状態に設定される。よって、溝蓋11を垂直方向に安定的に吊り上げることが可能となる。
【0055】
図6A及び図6Bに示す第2の作業工程では、支持ロッド4の制御腕4bを上方に引き上げた状態において、互い先端を互いに逆方向に90度回転させて離した後、一方のストッパ5と他方のストッパ5とが対向する部分に制御腕4bを挿入する。これにより、各支持ロッド4の回転を規制することができると共に、各支持ロッド4の支持腕4aを溝蓋11の下面にそれぞれ配置することができる。
【0056】
図7A及び図7Bに示すように、第3の作業工程では、固定梁8,8を側溝本体12の左右の側溝上端12a,12a上に横架する。このとき、図7Aに示すように、固定梁8は長手方向の前後に隣接配置された他の溝蓋11上に設置される。なお、ボルト6Aの真下に固定梁8の長手方向の中心が位置するように設置することが好ましい。
【0057】
図8A及び図8Bに示すように、第4の作業工程では、長手方向の両端の位置において、ボルト6Aを回転させることにより、ボルト6Aを下方に向かって前進させる。ボルト6Aの先端が固定梁8に当接した後も続けてボルト6Aを回転させると、ボルト6Aの前進が停止する代わりにナット7が上方に向かって相対的に螺子送りされるため、可動梁1を上方に移動さることができる。このとき、プレート3の底板3Aに支持されている支持ロッド4も一緒に上昇するので、支持ロッド4の支持腕4aが溝蓋11の下面に当接して溝蓋11を支持する。
さらに前後のボルト6A,6Aを回転させることにより、長手方向の両端の位置において、各支持ロッド4の支持腕4aによって溝蓋11の吊り上げが達成される。なお、可動梁1の上方への移動距離は1〜2cm程度でよく、その後の持ち上げ作業は人力で行う。
【0058】
このとき、固定梁8は前後に隣接する他の溝蓋11上に設置されているので、目的とする溝蓋11の吊り上げに釣られて隣接する他の溝蓋11が一緒に吊り上げられてしまうことが防止される。すなわち、目的とする溝蓋11のみを吊り上げることができる。
【0059】
そして、図8Bに示すように、溝蓋11を、その下面が側溝本体12の支持段差12bから離れる位置まで吊り上げるが、この距離は1〜2cmで充分であり、これにより固形した部分を強制的に崩壊させることが可能となる。よって、この状態から、溝蓋11の長手方向の前後両側に配置された2人の作業員が、それぞれ取っ手2,2を両側で持ちながら溝蓋吊上げ具を上方に持ち上げることにより、溝蓋11を側溝本体12から容易に取り外すことができる。
【0060】
図9は溝蓋吊上げ具の他の実施例を示す側面図であり、Aは調整前の状態、Bは調整後の状態を示すものである。
図9A及び図9Bに示す溝蓋吊上げ具が、上述の溝蓋吊上げ具と異なる点は、可動梁1の長さ寸法を調節可能として可変とした点にあり、その他の構成は上記実施例と同様である。
【0061】
図9Aに示す溝蓋吊上げ具では、可動梁1が二分割され、一方の可動梁1の先端に細身部1Aが、他方の可動梁1に鞘部1Bがそれぞれ形成されている。そして、細身部1Aは鞘部1B内に進退自在に収納されており、互いに離れる方向に引き離して細身部1Aを露出させて伸張させることにより、可動梁1全体の長さ寸法を、調整前の長さ寸法L2の状態(図9A参照)から調整後の長さ寸法L2’(L2<L2’)の状態(図9B参照)に自在に調整することが可能となっている。
よって、可動梁1の長さ寸法L2を、溝蓋11の縦寸法Laに応じて調節することにより、縦寸法Laの異なる溝蓋11であっても上記同様に支持して吊上げることが可能である。
【0062】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施の形態では、固定梁8を有する構成を示して説明したが、ボルト6Aの先端が隣接配置された前後の溝蓋11の上面に当接さえすれば、ボルト6Aの螺子送り機能により可動梁1を上昇させることができるので、固定梁8を有しない構成とすることも可能である。
ただし、隣接する溝蓋11が既に取り外されている場合には、ボルト6Aの先端を受ける部材が存在しなくなり、ボルト6Aによる螺子送り機能が発揮されず可動梁1を上昇させることができない。よって、このような場合においては、固定梁8を用いることにより、確実に溝蓋11の吊り上げを行うことができる。
【0064】
また、例えば上記実施例では、螺子部材6として六角ボルト6Aを用いて説明したが、頭部を六角とする代わりにT字状またはリング状のハンドルを設けたスクリュー部材を使用することも可能である。また高力ボルトを使用してもよい。このような螺子部材6においては、螺子ピッチを粗めにして作業スピードを上げることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 ; 可動梁
1A ; 細身部
1B ; 鞘部
1a ; 貫通孔
2 ; 取っ手
3 ; プレート
3A ; 底板
3a ; 支持孔
4 ; 支持ロッド
4a ; 支持腕
4b ; 制御腕
5 ; ストッパ
6 ; 螺子部材
6A ; ボルト
7 ; ナット
8 ; 固定梁
11 ; 溝蓋
11A ; 手がけ用切欠き孔
12 ; 側溝本体
12a ; 側溝上端
12b ; 支持段差
L ; 支持腕の長さ寸法
L1 ; 固定梁の長さ寸法
L2 ; (調整前の)可動梁の長さ寸法
La ; 溝蓋の長さ寸法(縦寸法)
W1 ; 側溝本体の幅寸法
Wa ; 一方の支持孔と他方の支持孔との間隔
Wb ; 溝蓋に形成された手がけ用切欠き孔の横幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端に貫通孔(1a、1a)が穿設された棒状の可動梁(1)と、前記可動梁(1)の長手方向の両側に固定された一対の取っ手(2)と、同じく前記可動梁(1)の両側の下面側に設けられた一対のプレート(3)と、前記一対のプレート(3)の各底板(3A)に回転自在に垂設され且つ溝蓋を支持する支持腕(4a)を備えた支持ロッド(4)と、前記貫通孔(1a,1a)に挿入されて前記可動梁(1)を螺子送りさせる螺子部材(6,6)と、を有することを特徴とする溝蓋吊上げ具。
【請求項2】
螺子送り中の螺子部材(6)の先端が当接したときに、螺子部材(6)を支持して可動梁(1)を上昇させる固定梁(8)を備える請求項1記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項3】
一対の支持孔(3a,3a)をプレート(3)の各底板(3A)に穿設し、丸棒をクランク状に屈曲形成した支持ロッド(4)を前記一対の支持孔(3a,3a)内に回転自在に挿入した請求項1または2記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項4】
一方の支持孔(3a)と他方の支持孔(3a)との間隔(Wa)を、支持ロッド(4)の支持腕(4a)の長さ寸法(L)を2倍した長さ寸法(2・L)よりも長い寸法とし、且つ溝蓋(11)に形成された手がけ用切欠き孔(11A)の横幅寸法(Wb)未満とした請求項3記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項5】
支持ロッド(4)の回転を規制するストッパを、底板(3A)に穿設された支持孔(3a)の近傍に形成した請求項3または4記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項6】
可動梁(1)の両端に、螺子部材(6,6)に螺着可能なナット(7,7)を貫通孔(1a,1a)に連通する状態で固定した請求項1乃至5のいずれか一項に記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項7】
螺子部材(6)が、ボルトである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の溝蓋吊上げ具。
【請求項8】
可動梁(1)の長さ寸法を調節可能とした請求項1乃至7のいずれか一項に記載の溝蓋吊上げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−44092(P2013−44092A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180343(P2011−180343)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(595136483)永井コンクリート工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】