説明

【課題】衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝の洗浄を行う際に適した形状の溝を提供する。
【解決手段】開口部の一方側上端部から他方側の拡張部の上端に引いた直線が地面と有する角度をα1とし、拡張部が地面と有する角度をα2とする。洗浄水が放射されるときに地面と有する角度は、0〜90°の間の任意の角度をとることが可能であり、α1の角度で放射されることが可能である。すなわち、α2をα1以上にすることにより、放射された洗浄水が拡張部に効果的に当たり、拡張部を確実に洗浄して底部へ流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝に関し、特に、洗浄が容易な、溝、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溝に関して、例えば、特表2005−524010号公報(特許文献1)、特開2000−328543号公報(特許文献2)等に記載されている。
【0003】
特許文献1は、排水部と、穴を有する2つの対向側壁を有する首部と、穴を通る突起を有し、首部である対向側壁の各々を分離して保持するセパレータと、から構成される溝を開示している。
【0004】
特許文献2は、排水部と、首部と、首部の左右一対の上部開口縁に連接し、地面に沿って存在するフランジ部と、フランジ部に連接し、地面下方へ延びる延長フランジ部と、から構成され、さらに、首部、フランジ部及び延長フランジ部は、互いに間隔をおいた複数の貫通孔を有して、構成される溝を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−524010号公報(請求項1及びそれに関連する記載)
【特許文献2】特開2000−328543号公報(請求項1及びそれに関連する記載)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来からある溝は、上記のように構成されていた。しかし、溝の洗浄において、溝の内部全体に洗浄水が十分当たらず、洗浄が不十分となり、雑菌が繁殖して不衛生になるという問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝の洗浄を行う際に適した形状の溝を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る溝は、板金で成形され、第1方向に所定の第1寸法の間隔を有して、第1方向と交わる第2方向に延在する開口部を有し、第1及び第2方向に交わる第3方向と第1方向における断面が、開口部の第3方向の下端部から、相互に第1方向に広がるように設けられた拡張部と、拡張部の第3方向の下端部に設けられた底部と、を含み、第1方向の開口部の一方側端部から他方側の拡張部の上端へ引いた直線は第1の角度を有し、拡張部と水平面との有する第2の角度が、前記第1の角度以上である。
【0009】
好ましくは、溝はステンレス製である。
【0010】
好ましくは、拡張部と底部との間に、第3方向に延在する接続部を含む。
【0011】
好ましくは、第2方向の端部において、接続部を有さない第1端部と、接続部を有する第2端部とを含む。
【0012】
さらに好ましくは、前記開口部は第3方向に延在する首部を含む。
【発明の効果】
【0013】
拡張部が水平面に対して有する角度を、第1方向の開口部の一方側端部から他方側の拡張部の上端へ引いた直線が有する所定の角度以上にすることにより、開口部の外部の一方側端部から他方側の拡張部の上端へ向かった洗浄水が、他方側の拡張部を確実に洗浄して底部へ流される。
【0014】
その結果、洗浄が容易な溝を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ステンレス製の溝を地面に埋め込んだ状態を示す、地面を一部破断した斜視図である。
【図2】ステンレス製の溝について、第1方向と第3方向の交わる平面から見た断面図である図2(A)と、第2方向と第3方向の交わる平面かつ溝の外部から見た断面図である図2(B)である。
【図3】図2(B)の長手方向の長さを大きくしたものを簡略的に示す図3(A)と、図3(A)に示す第1端部を第1端部側から見た図3(B)と、図3(A)に示す第2端部を第2端部側から見た図3(C)である。
【図4】図3(A)の第1端部から変換部の間は接続部を有さず、変換部から第2端部の間は接続部を有する場合を簡略的に示す図4(A)と、図4(A)に示す第1端部を第1端部側から見た図4(B)と、図4(A)に示す変換部の断面図である図4(C)と、図4(A)に示す第2端部を第2端部側から見た図4(D)である。
【図5】図2(A)の拡大図である。
【図6】ステンレス製の溝の断面形状が異なる場合を簡略的に示す断面図である。
【図7】図2(A)の首部がない場合の拡大図である。
【図8】首部がないステンレス製の溝の断面形状が異なる場合を簡略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、製薬工場、食品工場、厨房等の衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝10を地面(水平面)に埋め込んだ状態を示す、地面を一部破断した斜視図である。溝10は、ステンレス製であり、図1に示すように地面下に埋設される。地面の排水は、この溝10の上端開口部11から首部12を経て、排水部13に流れ落ちる。
【0017】
図2は、溝10について、横方向(第1方向)と深さ方向(第3方向)の交わる平面から見た断面図(A)と、長手方向(第2方向)と深さ方向の交わる平面かつ溝10の外部から見た断面図(B)とを示している。ここで、横方向とは、溝10が延在する方向と直角かつ地面と平行な方向であり、長手方向とは、溝10が延在する方向であり、深さ方向とは、横方向と長手方向が交わる平面と直角な方向のことである。
【0018】
図2(A)を参照して、溝10は、横方向に所定の寸法d(第1寸法)の間隔を有して長手方向に延在する開口部11と、寸法dを有して深さ方向に延在する首部12a1,12a2と、首部12a1,12a2の上端部に設けられ、横方向に延在するフランジ部12b1,12b2と、フランジ部12b1,12b2の横方向の端部において、深さ方向に曲げられた折り曲げ部12c1,12c2と、横方向と深さ方向の交わる断面が開口部の深さ方向の下端部から相互に横方向に広がるように設けられた拡張部13a1,13a2と、拡張部13a1,13a2の下端部に設けられた底部13b1,13b2と、拡張部13a1,13a2と底部13b1,13b2との間に設けられた深さ方向に延在する接続部13c1,13c2と、を含む。
【0019】
なお、寸法dは、20〜35mmが好ましい。こうすることにより、排水が地面から開口部11に十分入ることができると共に、人の足が開口部11に入って、人が怪我等することを防止することができる。
【0020】
なお、排水部13は、拡張部13a1,13a2各々の上端部を一辺としたとき、七角形である。
【0021】
なお、溝10は、首部12a1,12a2と、フランジ部12b1,12b2と、折り曲げ部12c1,12c2と、拡張部13a1,13a2と、底部13b1,13b2と、接続部13c1,13c2の全部について、一枚のステンレスの板を板金で成形することにより、成形が容易になると共に成形時間を短縮できるようにしてもよいし、ステンレスの板金したものを、例えば、接続部13c1,13c2等の適当な箇所で複数溶接してもよい。
【0022】
図2(B)を参照して、溝10は、図示していないが、排水が排水口に向けて流れて行くための勾配を、長手方向に有する。
【0023】
なお、必要であれば、溝10を長手方向に複数設けてもよい。
【0024】
図3(A)は、溝10について、図2(B)よりも長手方向の長さを大きくして見たときの簡略図である。図3(B)は、図3(A)に示す第1端部131を第1端部131側から見た図であり、図3(C)は、図3(A)に示す第2端部132を第2端部132側から見た図である。第1端部131は、接続部13cを有さず、第2端部132は、接続部13cを有する。
【0025】
図3(A)を参照して、溝10の底部13bは所定の傾斜を示しており、接続部13cの深さ方向の長さは、溝10の延在する長手方向に沿って、第1端部131から次第に長くなり、第1端部131から第2端部132に至る傾斜を形成する。
【0026】
例えば、第1端部131から第2端部132までの長さを30mとして傾斜を1/100とした場合、首部12aも含めた溝10の全高は、第1端部131は100mm、第2端部132は400mmになる。この傾斜により、排水は、第2端部132の底部13bに設けられた図示しない排水口へと流れ落ちる。
【0027】
図4(A)は、図3(A)の変形例である。図4(A)は、第1端部131から長手方向にHまでの間は接続部13cを有さず、Hから第2端部132までの間は接続部13cを有する場合を簡略化して図示したものである。溝10を長手方向から見た断面の形状が変化する箇所を変換部14とする。図4(B)は、図4(A)に示す第1端部131を第1端部131側から見た図であり、図4(C)は、図4(A)に示す変換部14の断面図であり、図4(D)は、図4(A)に示す第2端部132を第2端部132側から見た図である。
【0028】
この場合、第1端部131から変換部14の間における底部13bの長手方向の傾斜は、底部13b1,13b2の地面と有する角度を変更する等して設けてもよい。
【0029】
図5は、図2(A)の拡大図である。図5を参照して、開口部11の一方側上端部から他方側の拡張部13a1の上端に引いた直線が地面と有する角度をα1とし、拡張部13a1が地面と有する角度をα2とする。洗浄水が放射されるときに地面と有する角度は、0〜90°の間の任意の角度をとることが可能であり、α1の角度で放射されることが可能である。すなわち、α2をα1以上にすることにより、放射された洗浄水が拡張部13a1に効果的に当たる。α1は、10〜70°とするのが好ましい。より好ましくは、20〜60°とする。さらに好ましくは、45〜51°とする。
【0030】
その結果、製薬工場、食品工場、厨房等の衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝の洗浄において、洗浄水が溝の内部全体に十分当たり、洗浄が不十分になって雑菌が繁殖し、不衛生になることを未然に防止することができる。
【0031】
なお、折り曲げ部12c1,12c2の深さ方向の長さをt、首部12a1,12a2の深さ方向の長さをTとした場合、T≧t+5mmとすることが好ましい。
【0032】
以上、図5に示す横方向と深さ方向が交わる平面における断面形状の実施形態を述べたが、図6に示す様な断面形状であってもよい。図6は、横方向と深さ方向の交わる平面における、溝10の異なる断面形状を示す簡略図である。
【0033】
図6(A)は、溝10が、接続部13c1,13c2を有さない場合である。この場合、溝10の底部13b1,13b2が有する長手方向の傾斜は、底部13b1,13b2が地面と有する角度を変更する等して設けてもよい。
【0034】
図6(B)は、溝10が接続部13c1,13c2を有し、底部13bを半円状にした場合である。また、図示しないが、底部13bは、半円状に限らず半楕円状や他の曲線を有する形状であってもよい。
【0035】
図6(C)は、溝10が接続部13c1,13c2を有さず、かつ溝10の底部13bを半円状とした場合である。この場合、溝10の底部13bが有する長手方向の傾斜は、底部13bの曲線形状を変更する等して設けてもよい。また、図示しないが、底部13bは、半円状に限らず半楕円状や他の曲線を有する形状であってもよい。
【0036】
以上は、首部12aを有する溝10について述べたが、図7に示すように首部12aを有さないものであってもよい。なお、図7において、同一部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図7を参照して、開口部11の一方側上端部から他方側の拡張部13a1に引いた直線が地面と有する角度をβ1とし、拡張部13a1が地面と有する角度をβ2とする。洗浄水が放射されるときに地面と有する角度は、0〜90°の間の任意の角度をとることが可能であり、β1の角度で放射されることが可能である。すなわち、β2をβ1以上にすることにより、放射された洗浄水が拡張部13a1に効果的に当たる。β1は、10〜70°とするのが好ましい。より好ましくは、20〜60°とする。さらに好ましくは、45〜51°とする。また、β2は65°以上とするのが好ましい。
【0038】
その結果、製薬工場、食品工場、厨房等の衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝の洗浄において、洗浄水が溝の内部全体に十分当たり、洗浄が不十分になって雑菌が繁殖し、不衛生になることを未然に防止することができる。
【0039】
また、図7に示す首部12aを有さない溝10の断面形状は、図8に示す様な断面形状であってもよい。図8は、首部12aがない場合の、横方向と深さ方向の交わる平面における、溝10の異なる断面形状を示す簡略図である。
【0040】
図8(A)は、首部12aを有さない溝10が、接続部13c1,13c2を有さない場合である。この場合、溝10の底部13b1,13b2が有する長手方向の傾斜は、底部13b1,13b2が地面と有する角度を変更する等して設けてもよい。
【0041】
図8(B)は、溝10が接続部13c1,13c2を有し、底部13bを半円状にした場合である。また、図示しないが、底部13bは、半円状に限らず半楕円状や他の曲線を有する形状であってもよい。
【0042】
図8(C)は、首部12aを有さない溝10が、接続部13c1,13c2を有さず、かつ、底部13bを半円状としたものである。この場合、溝10の底部13bが有する長手方向の傾斜は、底部13bの曲線形状を変更する等して設けてもよい。また、図示しないが、底部13bは、半円状に限らず半楕円状や他の曲線を有する形状であってもよい。
【0043】
なお、上記実施の形態においては、溝をステンレスの板金で成形する場合について説明したが、これに限らず、ガルバリウム鋼板等の他の材料を板金で成形してもよい。
【0044】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明に係る溝は、衛生管理に注力すべき現場で用いられる溝として有利に利用される。
【符号の説明】
【0046】
10 ステンレス製の溝、11 開口部、12a1,12a2 首部、12b1,12b2 フランジ部、12c1,12c2 折り曲げ部、13 排水部、13a1,13a2 拡張部、13b1,13b2 底部、13c1,13c2 接続部、131 第1端部、132 第2端部、14 変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金で成形される溝であって、第1方向に所定の第1寸法の間隔を有して、前記第1方向と交わる第2方向に延在する開口部を含み、
前記第1及び前記第2方向に交わる第3方向と前記第1方向における断面が、前記開口部の前記第3方向の下端部から、相互に前記第1方向に広がるように設けられた拡張部と、
前記拡張部の前記第3方向の下端部に設けられた底部と、を含み、
前記第1方向の前記開口部の一方側端部から他方側の前記拡張部の上端へ引いた直線が第1の角度を有し、
前記拡張部と水平面との有する第2の角度が、前記第1の角度以上である、溝。
【請求項2】
前記溝はステンレス製である、請求項1に記載の溝。
【請求項3】
前記拡張部と前記底部との間に、前記第3方向に延在する接続部を含む、請求項1または2に記載の溝。
【請求項4】
前記第2方向の端部において、前記接続部を有さない第1端部と、前記接続部を有する第2端部とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の溝。
【請求項5】
前記開口部は前記第3方向に延在する首部を含む、請求項1から4のいずれかに記載の溝。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91996(P2013−91996A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235387(P2011−235387)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(511259577)オーバルリンク株式会社 (1)
【出願人】(511259588)
【出願人】(511259599)
【Fターム(参考)】