説明

溶出制御された農薬製剤

【課題】本発明は、農薬活性成分の溶出を制御できる農薬製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、またはスチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を含有する組成物が相溶状態またはマトリックスを形成してなる農薬含有樹脂組成物であって、前記(1)農薬活性成分が、25℃における水における溶解度が100ppm以上の成分であり、前記(3)溶出制御剤が水溶性高分子、または界面活性剤であることを特徴とする農薬含有樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性成分の放出を制御した農薬製剤に関する。
本願は、2004年8月6日に出願された日本国特許出願第2004−231403号及び2005年2月25日に出願された日本国特許出願第2005−050857号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
農薬活性成分の溶出を制御する農薬製剤として、例えば、下記(a)、(b)及び(c)の成分:(a)水易溶性農薬原体を少なくとも一種、(b)融点もしくは軟化点が50℃以上130℃未満の非水溶性物質又は難水溶性物質、(c)ホワイトカーボン、を(b)の融点もしくは軟化点以上かつ130℃以下の温度で加熱混合し得られることを特徴とする農薬活性成分の溶出抑制能を有する農薬含有樹脂組成物、及び必要に応じて非イオン系界面活性剤を添加することできることが知られている。(特許文献1を参照)
また、農薬活性成分、ポリエチレン及び疎水性シリカからなることを特徴とする農薬含有樹脂組成物を含有する、溶出コントロールされた浮遊走行性が良好な水面施用農薬製剤及びその製造方法、並びに溶出コントロールされた農薬組成物が知られている。(特許文献2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−92007号公報
【特許文献2】特開平11−315004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した製剤であっても、必ずしも農薬活性成分の溶出制御が十分であるとはいえない問題があった。
本発明は、農薬活性成分の溶出を制御できる農薬製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、農薬活性成分を、スチレン無水マレイン酸共重合体等の難水溶性樹脂と、疎水性処理した酸化ケイ素で相溶状態またはマトリックスを形成させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、第1に、(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、またはスチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を含有する組成物が相溶状態またはマトリックスを形成してなる農薬含有樹脂組成物であって、前記(1)農薬活性成分が、25℃における水における溶解度が100ppm以上の成分であり、前記(3)溶出制御剤が水溶性高分子、または界面活性剤であることを特徴とする農薬含有樹脂組成物を提供するものである。
本発明の農薬含有樹脂組成物においては、前記スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂のスチレン無水マレイン酸共重合体以外の樹脂がロジン若しくはその誘導体、またはサリチル酸若しくはその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する重合体であることができる。
また、本発明の農薬含有樹脂組成物においては、前記農薬活性成分がネオニコチノイド系化合物であることができる。
更に、本発明の農薬含有樹脂組成物においては、前記ネオニコチノイド系化合物が、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、またはジノテフランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
加えて、本発明の農薬含有樹脂組成物においては、原末平均粒径が200μm以下であることができる。
更に、本発明の農薬含有樹脂組成物においては、原末平均粒径が1〜100μmの範囲であることができる。
【0007】
本発明は、第2に、(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を混合・加熱溶融・混練し冷却する工程を有することを特徴とする本発明の農薬含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
本発明は、第3に、(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を有機溶剤に溶解・分散・混合したのち有機溶剤を留去する工程を有することを特徴とする本発明の農薬含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
本発明は、第4に、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂をアルカリ水溶液に溶解後、(1)農薬活性成分と(3)溶出制御剤、を溶解・分散・混合し、酸性溶液としたのち、ろ過、乾燥する工程を有することを特徴とする本発明の農薬含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明は、第5に、本発明の農薬含有樹脂組成物を含有する農薬製剤を提供するものである。
本発明は、第6に、本発明の上記農薬含有樹脂組成物を1種以上含み、種子処理剤、土壌処理剤、または茎葉処理剤として使用されることを特徴とする農薬製剤を提供するものである。
更に、本発明の上記農薬製剤においては、前記農薬含有樹脂組成物1種以上以外に農薬活性成分1種以上を含有することができる。
加えて、本発明の上記農薬製剤においては、前記農薬含有樹脂組成物1種以上以外の農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることができる。
【0009】
本発明は、第7に、本発明の上記農薬製剤1種以上と農薬活性成分1種以上を含有する組成物を同時にあるいは時期をずらして処理することを特徴とする処理方法を提供するものである。
また、本発明の処理方法においては、前記農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることができる。
【0010】
本発明は、第8に、本発明の上記処理方法で処理された植物種子を提供するものである。
【0011】
本発明は、第9に、本発明の上記農薬含有樹脂組成物1種以上、または、本発明の上記農薬含有樹脂組成物1種以上及び他の農薬活性成分1種以上を含有する医薬、動物薬、食品用保存剤、およびバイオサイド剤からなる群から選ばれる用途に用いられることを 特徴とする農薬含有製剤を提供するものである。
また、本発明の農薬含有製剤において、用途は土壌病虫害防除剤、シロアリ防除剤、衣料用剤、害虫防除剤、木材害虫防除剤、ベイト剤、動物外部寄生虫防除剤、衛生害虫防除剤、家庭防疫用剤、船底塗料、魚網等の防藻剤、および木材等の防黴剤からなる群から選ばれることができる。
更に、本発明の農薬含有製剤において、本発明の上記農薬含有樹脂組成物の他の農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明の農薬製剤を用いることにより、農薬処理直後に農薬活性成分が短期的に大量に放出されてしまう現象、すなわち初期バーストを抑え、かつ本来放出されるべき農薬活性成分が全量放出されないで残る現象、即ち死蔵を抑えることができることから、残効性を維持し、農薬活性成分の作物の残留量が増加したり、薬害を生じたりする問題を解決でき、さらに、環境中への残留を防止することができる。また、上記効果以外に、光安定性向上、揮散性制御、耐雨性向上などによる、農薬活性成分の残効性向上および環境中への流失低減効果、総散布薬量の低減、散布回数の低減、散布者への毒性の軽減等の効果を有し、特に種子処理剤および土壌処理剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用される農薬活性成分は、液体か固体か、あるいは有機化合物か無機化合物か、また単一化合物か混合物か等によって限定されるものではなく、具体的には、下記にしめす殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、植物生長調節剤、除草剤等を例示することができる。尚、これらの農薬活性成分は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
殺菌剤:
銅剤;塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅等。
硫黄剤;チウラム、ジネブ、マンネブ、マンコゼブ、ジラム、プロピネブ、ポリカーバメート等。
ポリハロアルキルチオ剤;キャプタン、フォルペット、ジクロルフルアニド等。
有機塩素剤;クロロタロニル、フサライド等。
有機リン剤;IBP、EDDP、トリクロホスメチル、ピラゾホス、ホセチル等。
ベンズイミダゾール剤;チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール等。
ジカルボキシイミド剤;イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン、フルオルイミド等。
カルボキシアミド剤;オキシカルボキシン、メプロニル、フルトラニル、テクロフタラム、トリクラミド、ペンシクロン等。
アシルアラニン剤;メタラキシル、オキサジキシル、フララキシル等。
メトキシアクリレート剤;クレソキシムメチル、アゾキシストロビン、メトミノストロビン等。
アニリノピリミジン剤;アンドプリン、メパニピリム、ピリメタニル、ジプロジニル等。
SBI剤;トリアジメホン、トリアジメノール、ビテルタノール、ミクロブタニル、ヘキサコナゾール、プロピコナゾール、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、フェナリモール、ピリフェノックス、トリホリン、フルシラゾール、エタコナゾール、ジクロブトラゾール、フルオトリマゾール、フルトリアフェン、ペンコナゾール、ジニコナゾール、イマザリル、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、ブチオベート、エポキシコナゾール、メトコナゾール等。
抗生物質剤;ポリオキシン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、バリダマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン等。
その他;プロパモカルブ塩酸塩、 キントゼン、ヒドロキシイソオキサゾール、メタスルホカルブ、アニラジン、イソプロチオラン、プロベナゾール、キノメチオナート、ジチアノン、ジノカブ、ジクロメジン、フェルムゾン、フルアジナム、ピロキロン、トリシクラゾール、オキソリニック酸、ジチアノン、イミノクタジン酢酸塩、シモキサニル、ピロールニトリン、メタスルホカルブ、ジエトフェンカルブ、ビナパクリル、レシチン、重曹、フェナミノスルフ、ドジン、ジメトモルフ、フェナジンオキシド、カルプロパミド、フルスルファミド、フルジオキソニル、ファモキサドン等。
【0015】
殺虫・殺ダニ剤:
有機燐及びカーバメート系殺虫剤;フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、フェントエート、ジメトエート、ホルモチオン、マラソン、トリクロルホン、チオメトン、ホスメット、ジクロルボス、アセフェート、EPBP、メチルパラチオン、オキシジメトンメチル、エチオン、サリチオン、シアノホス、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、ホサロン、メチダチオン、スルプロホス、クロルフェンビンホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、イソフェンホス、エチルチオメトン、プロフェノホス、ピラクロホス、モノクロトホス、アジンホスメチル、アルディカルブ、メソミル、チオジカルブ、カルボフラン、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、BPMC、MTMC、MIPC、カルバリル、ピリミカーブ、エチオフェンカルブ、フェノキシカルブ等。
ピレスロイド系殺虫剤;ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、ピレトリン、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、ジメスリン、プロパスリン、フェノトリン、プロトリン、フルバリネート、シフルトリン、シハロトリン、フルシトリネート、エトフェンプロクス、シクロプロトリン、トロラメトリン、シラフルオフェン、ブロフェンプロクス、アクリナスリン等。
ベンゾイルウレア系その他の殺虫剤;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、トリフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、メトプレン、ベンゾエピン、ジアフェンチウロン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、フィプロニル、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、硫酸ニコチン、ロテノン、メタアルデヒド、機械油、BTや昆虫病原ウイルスなどの微生物農薬、フェロモン剤等。
【0016】
殺線虫剤;フェナミホス、ホスチアゼート等。
殺ダニ剤;クロルベンジレート、フェニソブロモレート、ジコホル、アミトラズ、BPPS、ベンゾメート、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ポリナクチン、キノメチオネート、CPCBS、テトラジホン、アベルメクチン、ミルベメクチン、クロフェンテジン、シヘキサチン、ピリダベン、フェンピロキシメート、テブフェンピラド、ピリミジフェン、フェノチオカルブ、ジエノクロル等。
【0017】
植物生長調節剤:ジベレリン類(例えばジベレリンA3 、ジベレリンA4 、ジベレリンA7 )、IAA、NAA等。
【0018】
除草剤:
アニリド系除草剤;ジフルフェニカン、プロパニル等。
クロロアセトアニリド系除草剤;アラクロール、プレチラクロール等。
アリールオキシアルカン酸系除草剤;2,4−D、2,4−DB等。
アリールオキシフェノキシアルカン酸系除草剤;ジクロホップ−メチル、フェノキサプロップ−エチル等。
アリールカルボン酸系除草剤;ジカンバ、ピリチオバック等。
イミダゾリン系除草剤;イマザキン、イマゼタピル等。
ウレア系除草剤;ジウロン、イソプロツロン等。
カーバメート系除草剤;クロルプロファム、フェンメジファム等。
チオカーバメート系除草剤;チオベンカルブ、EPTC等。
ジニトロアニリン系除草剤;トリフルラリン、ペンジメタリン等。
ジフェニルエーテル系除草剤;アシフルオルフェン、ホメサフェン等。
スルホニルウレア系除草剤;ベンスルフロン−メチル、ニコスルフロン等。
トリアジノン系除草剤;メトリブジン、メタミトロン等。
トリアジン系除草剤;アトラジン、シアナジン等。
トリアゾピリミジン系除草剤;フルメツラム等。
ニトリル系除草剤;ブロモキシニル、ジクロベニル等。
リン酸系除草剤;グリホサート、グリホシネート等。
第四アンモニウム塩系除草剤;パラコート、ジフェンゾコート等。
環状イミド系除草剤;フルミロラック−ペンチル、フルチアセット−メチル等、
ベンゾイルアミノプロピオン酸系除草剤;ベンゾイルプロップエチル、フランプロップエチル等、
その他の除草剤;イソキサベン、エトフメセート、オキサジアゾン、ピペロホス、ダイムロン、ベンタゾン、ベンフルセート、ダイフェンゾコート、ナプロアニリド、トリアゾフェナミド、キンクロラック、クロマゾン、スルコトリオン、シンメチリン、ジチオピル、ピラゾレート、ピリデート、フルポキサム、更に、セトキシジム、トラルコキシジム等のシクロヘキサンジオン系の除草剤等
【0019】
共力・解毒剤;オクタクロロジプロピルエーテル、ピペロニルブトキサイド、サイネピリン、IBTA、ベノキサコール、クロキントセットメチル、シオメトリニル、ジクロルミド、フェンクロラゾールエチル、フェンクロリム、フルラゾール、フラクソフェニミ、フリラゾール、メフェンピルジエチル、MG191、ナフタリック アンヒドライド、オキサベトリニル、ネオニコチノイド系化合物等が挙げられる。
【0020】
防菌・防かび・防藻剤;トリアルキルトリアミン、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、トリスニトロ、クロロブタノール、プロノポール、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、α−ブロムシンアムアルデヒド、スケーンM−8、ケーソンCG、NS−500W、BIT、n−ブチルBIT、イソチオシアン酸アリル、チアベンダゾール、2−ベンツイミダゾリルカルバミン酸メチル、ラウリシジン、バイオバン、トリクロカルバン、ハロカルバン、グラシイシカル、安息香酸、ソルビン酸、カプリル酸、プロピオン酸、10−ウンデシレン酸、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸カリウム、安息香酸カリウム、フタル酸モノマグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛、8−ヒドロキシキノリン、キノリン銅、TMTD、トリクロサン、ジクロヘルアニリド、トリフルアニド、しらこタンパク、卵白リゾチーム、ベンチアゾール、カーバムナトリウム、トリアジン、テビコナゾール、ヒノキチオール、テトラクロロイソフタロニトリル、テクタマール38、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド、ポリビグアナイド塩酸塩、ダントプロム、クライダント、ピリチオンナトリウム、ジンクピリチオン、デンシル、カッパーピリチオン、チモール、イソプロピルメチルフェノール、OPP、フェノール、ブチルバラペン、エチルパラベン、メチルパラペン、プロピルパラペン、メタクレゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール、オルトフェニルフェノールナトリウム、クロロフェン、パラクロルフェノール、パラクロロメタキシレート、パラクロロクレゾール、フルオロフォルペット、ポリリジン、バイオパンP−1487、ジョートメチルパラトリルスルフォン、ポリビニルピロリドンパラクロロイソシアネル、過酸化水素、安定化二酸化塩素、過酢酸、ナフテン酸銅、ノパロンAG300、塩化銀、酸化チタン、銀、リン酸亜鉛カルシウム、シルバーエース、銀亜鉛アルミノケイ酸塩、銀亜鉛ゼオライト、ノバロンAGZ330、ホロンキラー、ダイマー136、ペンザルコニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、バーダック2250/80、塩化ベンゾトニウム、ハイアミン3500J、臭化セチルアンモニウム、セトリミド、CTAB、セタブロン、ダイマー38、塩化ペンザルコニウム、バーダック170P、DC−5700、セチルピリジニウムクロライド、キトサン、デュウロン、DCMU、プリペントールA6、CMI、2Cl−OIT、BCM、ZPT、BNP、OIT、IPBC、TCMSP等が挙げられる。
【0021】
本発明の農薬製剤を用いれば、水に対する溶解度(25℃)が100ppm以上、より好ましくは500ppm以上と比較的高い化合物を用いた場合においても、溶出制御が可能となる。溶解度が比較的高い農薬活性成分として、具体的には、ネオニコチノイド系化合物を例示することができ、さらに具体的には、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、またはジノテフラン等を好ましく例示することができる。
【0022】
本発明で使用されるスチレン無水マレイン酸共重合体またはその誘導体としては、特にスチレン無水マレイン酸共重合体、及びその誘導体としてアルコールによりエステル化されたものを好ましく例示することができる。また、スチレン無水マレイン酸共重合体の重合形態は、特に限定されず、ランダム、ブロック、グラフトいずれの形態のものを用いることができる。
【0023】
スチレン無水マレイン酸の共重合体及びその誘導体と混合して用いる樹脂としては、具体的には、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を例示することができる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂として具体的には、一般の成形用樹脂として使用される低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンワックス、エチレン−αオレイン共重合体エラストマー等のポリエチレン樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体等を例示することができる。
【0025】
ポリ(メタ)アクリル系樹脂として具体的には、例えばメチルメタクリレート単独重合体の他、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルに、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルなどをそれぞれ共重合させた(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステルにブタジエン、スチレン、アクリロニトリルを共重合させた対衝撃性(メタ)アクリル樹脂等を例示することができる。
【0026】
ポリスチレン系樹脂として具体的には、一般に成形用樹脂として使用される、例えば、スチレンの単一重合体のほか、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等を例示することができる。
【0027】
ポリエステル系樹脂として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル、さらに塗料用樹脂などで使用されるジオールとジカルボン酸との縮合により得られるポリエステル等を例示することができ、なかでも脂肪族系のジオールとジカルボン酸との重縮合により得られる脂肪族ポリエステルを好ましく例示することができる。
【0028】
なかでも、3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート共重合体を代表とするポリヒドロキシアルカノエート共重合体、またはポリ乳酸に代表される単一ヒドロキシアルカノエートによる単独重合体、ポリカプロラクトン、またはポリ乳酸とポリエステルの共重合体等の生分解性樹脂を例示することができる。
【0029】
ポリ塩化ビニル系樹脂として具体的には、例えば塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルとエチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等とのそれぞれの共重合体等を例示することができる。
【0030】
これらの樹脂の中でも特に、農薬活性成分との相性と溶出制御性の点を考慮して、ロジン誘導体、またはサリチル酸から誘導される繰り返し単位を有する重合体誘導体を好ましく例示することができる。
【0031】
ロジン誘導体とは、松脂の主成分であるアビエチン酸及びその誘導体を示し、具体的にはトールロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸等を例示することができる。
【0032】
サリチル酸またはその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する重合体として、重合体中の構成単位としてサリチル酸またはその誘導体を含めば、他の構造を繰返し単位として含んでいてもよく、具体的には、同一の、または2種以上の2分子以上のサリチル酸が縮合した重合体、または、サリチル酸と他のヒドロキシカルボン酸が縮合した重合体等を例示することができ、より具体的には、POVIRON社製の線状ポリサリチレート等を例示することができる。
【0033】
用いる混合樹脂の混合割合として、具体的には、スチレン無水マレイン酸共重合体30〜99重量%とロジンまたはその誘導体またはサリチル酸またはその誘導体から誘導され繰り返し単位を有する重合体を1〜70重量%の範囲を好ましく例示することができ、より好ましくは、前者が、50〜99重量%と後者が、1〜50重量%の範囲を例示することができる。(以下、これらの樹脂類を難水溶性樹脂という場合がある。)
【0034】
本発明に用いられる疎水性処理された酸化ケイ素とは、酸化ケイ素の表面の親水性のシラノール基(Si−OH)を、化学修飾、熱処理等により疎水化処理したものを示す。本発明において、疎水化処理は酸化ケイ素の少なくとも表面に施されていればよく、酸化ケイ素内部のシラノール基全てが疎水化処理されていてもよく、表面のみが疎水化処理されているものが、より好ましい。
【0035】
疎水化処理方法は、特に限定されないが、具体的には、シリコーンオイルにより疎水化する方法や、シラノール基をアルキル化する方法等を例示することができ、炭素数1〜30のアルキル基を好ましく例示することができる。表面疎水基として、具体的には、(CHSi−、(CHSi−、(−Si(CH−O−)n、C17Si−等を例示することができる。また本発明で使用する疎水性二酸化ケイ素等は、1次粒子の平均粒子径が0.5〜100nmと極めて微小な無定形の粒子であるのが好ましい。疎水性二酸化ケイ素等として、具体的には、焼成ホワイトカーボン、疎水性ホワイトカーボン等を例示することができ、より具体的には、Sipernat D17(デグサ社製・登録商標)やAerosil R972(アエロジル社製・登録商標)等の製品を例示することができる。
【0036】
本発明の農薬含有樹脂組成物は、上記した(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体と、ロジンまたはその誘導体またはサリチル酸またはその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する重合体との混合物、及び(3)疎水性処理された酸化ケイ素を含有する組成物が相溶状態またはマトリックスを形成していることを特徴とする。相溶状態またはマトリックスとは、不連続でない(連続相である)難水溶性樹脂中に、農薬活性成分が溶解または分散している状態をいう。各成分の混合比は、農薬活性成分の徐放性を最適化するために任意に設定されるものであり、特に限定されるものではないが、農薬活性成分が1重量%〜80重量%、難水溶性樹脂が19重量%〜98重量%、疎水性酸化ケイ素等が、1重量%〜80重量%の範囲が好ましく、農薬活性成分が10重量%〜50重量%、難水溶性樹脂が45重量%〜85重量%、疎水性酸化ケイ素等が5重量%〜50重量%の範囲が更に好ましい。
【0037】
本発明の農薬含有樹脂組成物の製造方法は、相溶状態またはマトリックスを形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、具体的には、農薬活性成分、水難溶性樹脂、疎水性処理した酸化ケイ素を混合・加熱溶融・混練し冷却する工程(以下溶融法ということがある。)、または、農薬活性成分、水難溶性樹脂、疎水性処理した酸化ケイ素を有機溶剤に溶解・分散・混合したのち有機溶剤を留去する工程(以下溶媒法ということがある。)、または、水難溶性樹脂をアルカリ水溶液に溶解し、農薬活性成分と疎水性処理した疎水性処理した酸化ケイ素を添加して溶解・分散・混合して酸性溶液としたのち、ろ過、乾燥する工程(以下pH析出法ということがある)、及び微粒子化工程を有する製造方法を好ましく例示することができる。
【0038】
溶融法として、より具体的には、難水溶性樹脂をニーダーに入れて加熱溶解させた後、農薬活性成分、疎水性酸化ケイ素等をそれぞれ添加して溶融混練し、その後、単軸または双軸の押出機により押出し、ペレタイザーによりペレット化し、得られたペレットを解砕後粉砕機にかけ、微粒子化する方法、また、農薬活性成分、難水溶性樹脂、疎水性酸化ケイ素等の混合物を加熱式連続ニーダーで加熱溶解・混練し、得られた混練物を冷却・解砕した後粉砕機にかけ微粒子化する方法を例示することができる。
【0039】
溶融法における溶解温度は農薬活性成分が分解せず、樹脂と十分に相溶または均一に混合される温度であれば限定されるものでない。また、溶融法においては樹脂を加熱溶解するために、熱による原体の分解を回避するためにできるだけ低い温度で、しかも単時間で製造することが望まれるが、低温状態では粘性が増加してしまい十分に攪拌しても相溶または均一な混合状態の樹脂を得ることは困難である場合があり、界面活性剤を添加することにより、粘性の高い状態でも均一な組成物を得ることができる場合がある。
【0040】
溶媒法として、より具体的には、溶媒を減圧留去が可能な容器に溶媒を入れ、難水溶性樹脂、農薬活性成分をそれぞれ添加して加熱・攪拌により樹脂と農薬活性成分を完全に溶解し、疎水性酸化ケイ素等を入れて分散または溶解した後、加熱減圧濃縮により溶媒を完全に留去し、得られた粉体を粉砕機にかけ、微粒子化する方法を例示することができる。
【0041】
溶媒法に使用される溶媒は使用する樹脂および農薬原体を溶解し、それらが安定に存在するものであれば限定されるものではないが、具体的には、キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、アセトニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、大豆油、綿実油等の植物油等を例示することができ、これらの中でも特に、ジクロロメタン、アセトン、メタノール等を好ましく例示することができる。
【0042】
さらに溶媒と難水溶性樹脂との混合比率は、農薬活性成分及び難水溶性樹脂が溶解する量であれば限定されるものではないが、10〜20重量%の範囲が好ましい。できるだけ少ない溶媒に溶解して製造した方が溶媒の留去に無駄なコストをかけずに済み望ましいが、少ない溶媒では粘性が増加してしまい攪拌により相溶または均一な混合状態の樹脂を得ることは困難となる場合があり、界面活性剤を添加することにより、粘性の高い状態でも均一な組成物を得ることができる場合がある。農薬活性成分と樹脂を溶解する温度は農薬活性成分を安定に保つために20〜40℃が望ましい。
【0043】
溶媒の留去方法としては通常の方法が使用できるが、具体的には減圧留去、加熱留去、減圧加熱留去等を例示することができる。また、樹脂及び原体が不溶な第2の溶媒と添加し、析出した固形分を濾過する方法や、噴霧乾燥造粒機を用いる方法を例示することができる。
【0044】
溶融法、及び溶媒法において、農薬活性成分、難水溶性樹脂、疎水性酸化ケイ素等を溶融、または溶解する順番は同時でも相前後しても良く、さらに、何回かに分けて溶融または溶解しても良く、組成によっては溶媒法と溶融法を併用することもできる。
【0045】
pH析出法として、より具体的には、難水溶性樹脂と農薬活性成分をアンモニア溶液に完全に溶解し、更に疎水性酸化ケイ素等を添加・分散した後、塩酸を添加して酸性溶液とすることにより得られる析出物をろ過、乾燥し、得られた粉体を粉砕機にかけ、微粒子化する方法を例示することができる。
【0046】
本製剤の解砕・微粒子化方法としては、いずれの方法で製造した農薬含有樹脂組成物でも、押し出し成形の粒剤用に使用する解砕機や、水和剤用に使用するピンミルやジェットミル粉砕機を用いることができる。また、農薬含有樹脂組成物を溶媒法で製造する場合には、上記の他に噴霧乾燥造粒機を用いて、溶媒の留去と微粒子化を同時に行うことも可能である。
【0047】
溶出制御剤は、相溶状態またはマトリックス中から溶出する農薬活性成分量を促進または抑制し、溶出性をコントロールできる物質であれば、特に限定されず、具体的には、水溶性高分子、酸化ケイ素または界面活性剤等を例示することができる。
【0048】
水溶性高分子として、具体的には、デンプン,ゼラチン等の天然由来のもの、カルボキシメチルセルロース,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース等の半合成のセルロース誘導体、あるいはポリビニルアルコール,ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド,ポリエチレングリコール等の合成系のもの等を例示することができる。
【0049】
酸化ケイ素として、具体的には、ホワイトカーボン等を例示することができ、より具体的には、通常のホワイトカーボン、焼成ホワイトカーボン、疎水性ホワイトカーボン等を例示することができる。通常のホワイトカーボンとは、SiOからなる非晶質二酸化ケイ素の総称であり、製法の違いにより沈降法シリカとヒュームドシリカに分けられる。焼成ホワイトカーボンとは、通常のホワイトカーボンを高温で処理することにより表面のシラノール基を疎水化したホワイトカーボンであり、疎水性ホワイトカーボンとは、上述したとおりであり、農薬活性成分の放出性を制御するため、また、溶媒法での製造において、溶媒中に均一に分散させ、凝集、沈降による偏析をなくすためには、疎水性ホワイトカーボンが特に好ましく、より具体的には、上述したとおりである。
【0050】
本発明で使用される界面活性剤は、通常の農薬用製剤に使用できるものであれば限定されるものではなく、具体的には、非イオン性界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18),POEソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18),ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型で界面活性剤、POE脂肪酸エステル(C12〜18),POE樹脂酸エステル,POE脂肪酸ジエステル(C12〜18)などの脂肪酸エステル型界面活性剤、POEアルキルエーテル(C12〜18)等のアルコール型界面活性剤、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテル,POEジアルキル(C8〜12)フェニルエーテル,POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー,アルキル(C12〜18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤、POEアルキルアミン(C12〜18),POE脂肪酸アミド(C12〜18)などのアルキルアミン型界面活性剤、POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤、POAベンジルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテル,POAスチリルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤、POEエーテルおよびエステル型シリコンおよびフッ素系界面活性剤などのシリコン系、フッ素系界面活性剤、POEヒマシ油,POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤、アニオン性界面活性剤としてはアルキルサルフェート(C12〜18,Na,NH,アルカノールアミン),POEアルキルエーテルサルフェート(C12〜18,Na,NH,アルカノールアミン),POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12〜18,NH,アルカノールアミン,Ca),POEベンジル(またはスチリル)フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na,NH,アルカノールアミン),ポリオキシエチレン,ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na,NH,アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤、パラフィン(アルカン)スルホネート(C12〜22,Na,Ca,アルカノールアミン),AOS(C14〜16,Na,アルカノールアミン),ジアルキルスルホサクシネート(C8〜12,Na,Ca,Mg),アルキルベンゼンスルホネート(C12,Na,Ca,Mg,NH ,アルキルアミン,アルカノール,アミン,シクロヘキシルアミン),モノまたはジアルキル(C3〜6)ナフタレンスルホネート(Na,NH ,アルカノールアミン,Ca,Mg),ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na,NH),アルキル(C8〜12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na,NH),リグニンスルホネート(Na,Ca),POEアルキル(C8〜12)フエニルエーテルスルホネート(Na),POEアルキル(C12〜18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤、カルボン酸型脂肪酸塩(C12〜18,Na,K,NH,アルカノールアミン),N−メチル−脂肪酸サルコシネート(C12〜18,Na),樹脂酸塩(Na,K)などPOEアルキル(C12〜18)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン)、POEモノまたはジアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン),POEベンジル(またはスチリル)化フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na,アルカノールアミン),ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na,アルカノールアミン),ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン),アルキル(C8〜12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤、カチオン性界面活性剤としてはアルキルトリメチルアンモニウムクロライド(C12〜18),メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド(C12〜18),アルキル・N−メチルピリジウムブロマイド(C12〜18),モノまたはジアルキル(C12〜18)メチル化アンモニウムクロライド,アルキル(C12〜18)ペンタメチルプロピレンジアミンジクロライドなどのアンモニウム型界面活性剤、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(C12〜18),ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)などのベンザルコニウム型界面活性剤、両性界面活性剤としてはジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルベタイン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤、ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルグリシン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルグリシンなどのグリシン型界面活性剤等を例示することができる。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
本発明の農薬製剤には、必要に応じて、炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、ステアリン酸等の有機酸及びそれらの塩、乳糖、ショ糖等の糖類等、アルミナ粉、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、クレー等の無機添加剤、没食子酸n−プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸アンモニウム等のpH調節剤や緩衝化剤、食用青色一号、メチレンブルー、ピグメントレッド48等の着色剤の他、防腐剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などを添加することができる。
【0052】
本発明の農薬製剤の平均粒径は使用目的により種々異なり限定されるものではないが、製剤基材、種子粉衣または粉剤として使用するためには200μm以下の範囲が好ましく、1〜100μmの範囲が特に好ましい。また、異なる粒径や組成の本発明農薬製剤を2種以上組み合わせて用いることにより、農薬活性成分の放出速度を調整することができる。
【0053】
また、農薬活性成分同士が接触した場合に不安定であり、または物性の大きく異なる農薬活性成分を混合製剤する場合に、各農薬成分ごとに本発明の製剤を行った後に、さらに混合製剤することにより、通常困難であると考えられていた混合製剤を作成することができる。
【0054】
また、生物効果への適用範囲を広げるために、本発明の製剤に他の殺菌剤や殺虫剤の原体を混合して製剤化する(混合剤)ことや、本発明の製剤と他の殺菌剤や殺虫剤とを混合して使用すること(タンクミックス)や、散布時期を相前後して(体系)処理することも可能である。
【0055】
混合剤、タンクミックスおよび体系処理で用いることのできる原体は農薬登録を得ているものであれば限定されるものではなく、上記したものと同様のものを具体的に例示することができる。特に好ましいものとしてピレスロイド系殺虫剤(pyrethroid insecticides)として、アクリナトリン(acrinathrin)、アレスリン(allethrin)、バイオアレスリン(Bioallethrin)、バースリン(barthrin)、ビフェンスリン(bifenthrin)、バイオエタノメトリン(Bioethanomethrin)、サイクレスリン(Cyclethrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータシフルトリン(beta−cyfluthrin)、シハロトロリン(cyhalothrin)、ガンマシハロトロリン(gamma−cyhalothrin)、ラムダシハロトロリン(lambda−cyhalothrin)、サイパーメスリン(cypermethrin)、アルファサイパーメスリン、(alpha−cypermethrin)、ベータイパーメスリン(beta−cypermethrin)、シータサイパーメスリン(theta−cypermethrin)、ゼータサイパーメスリン(zeta−cypermethrin)、シフェノスリン(cyphenothrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、ジメフルスリン(Dimefluthrin)、ジメスリン(dimethrin)、エンペンスリン(Empenthrin)、フェンフルスリン(fenfluthrin)、フェンピレスリン(fenpirithrin)、フェンプパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、エスフェンバレレート(Esfenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、タウフルバリネート(tau−fluvalinate)、フレスリン(furethrin)、イミプロスリン(imiprothrin)、メトフルスリン(Metofluthrin)、ペルメトリン(permethrin)、バイオペルメトリン(Biopermethrin)、トランスペルメトリン(transpermethrin)、フェノトリン(phenothrin)、プラレトリン(prallethrin)、プロフルトリン(Profluthrin)、ピレスメトリン(pyresmethrin)、レスメトリン(resmethrin)、バイオレスメトリン(bioresmethrin)、シスメトリン(cismethrin)、テフトリン(Tefluthrin)、テトラトロリン(terallethrin)、テトラメトリン(Tetramethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、エトフェンプロックス(Etofenprox:2−(4−ethoxyphenyl)−2−methylpropyl 3−phenoxybenzyl ether)、フルフェンプロックス(flufenprox)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、プロトリフェンブート(Protrifenbute)、シラフルオフェン(Silafluofen)等を挙げることができる。
【0056】
本発明の農薬含有樹脂組成物を基材として、通常の農薬製剤として知られている粉剤、粉粒剤、粒剤、くん煙剤、ペースト剤、水和剤、顆粒水和剤、錠剤、フロアブル剤等を一般的に農薬製剤の製造で用いられる製造方法で製造することができる。具体的には、破砕・粉砕前の農薬含有樹脂組成物に界面活性剤やキャリアー等の製剤基材を加え、破砕・粉砕・造粒することによって製造する方法を例示することができる。
【0057】
本発明の農薬製剤は、農耕地、非農耕地双方に処理することができ、種子処理剤としては種芋等への吹き付け処理、粉衣処理、散布塗布、浸漬処理等、茎葉処理剤としては散布処理、トップドレッシング処理等、土壌処理剤としては表面散布処理、混和処理、灌注処理、燻蒸処理、植穴処理、株元処理、作条処理、播溝処理、育苗箱処理、育苗ポット処理など、水田処理剤としては粒剤処理、ジャンボ剤処理、フロアブル剤処理等、その他の処理剤としては燻蒸処理、芝生用処理等として使用することができる。これらの処理の中でも種子処理剤、または土壌処理剤として好適に用いることができる。
【0058】
種子処理剤の施用方法としては、製剤品をスティッカー溶液{種子処理した際に付着性が良くなるようにPVA(ポリビニルアルコール)やCMC(カルボキシメチルセルロース)等の水溶性高分子と、薬剤処理の目印となる色素等を水に溶解した溶液}に溶解・分散し、この溶液または分散液を作物の種子と共に混合・乾燥することにより、薬剤が均一に付着した種子を調製する方法等がある。この種子を通常通りに土壌中に播種すると、種子そのものあるいは種子から発芽した根を通じて吸収された薬剤が植物全体に行き渡り、病気や害虫から作物が保護される。
土壌処理剤の施用方法としては、通常通りに播種や植え付けを行い、土壌を被覆する前または被覆した後に上から水で希釈した製剤品を散布機やジョーロ等で処理する方法や、育苗箱やセル苗で育苗した幼苗に、水で希釈した製剤品を散布機やジョーロ等で処理する方法等がある。これらの方法で処理した場合、薬剤は発芽した作物の根から吸収され、種子処理と同様に病気や害虫から作物が保護される。
【0059】
さらに本発明の農薬含有樹脂組成物は農業用途以外として、医薬、動物薬、食品用保存剤、およびバイオサイド剤からなる群から選ばれる用途に用いることができ、より具体的には土壌病虫害防除剤、シロアリ防除剤、衣料用剤、害虫防除剤、木材害虫防除剤、ベイト剤、動物外部寄生虫防除剤、衛生害虫防除剤、家庭防疫用剤、船底塗料、魚網等の防藻剤、および木材等の防黴剤からなる群から選ばれる用途に用いることができる。
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1(参考例))
アセタミプリド1gとSMA3000(スチレン無水マレイン酸共重合体ベースレジン;分子量:9500/サートマー社製)9g、及びSipernat D−17(疎水性ホワイトカーボン/デグサ社製)10gを300mlのナス形フラスコに量り取り、ここにジクロロメタン100mlを入れて超音波浴で全て溶解した。この溶液からエバポレーターで大部分の溶媒を留去し、更に真空乾燥機で40℃,2時間乾燥して固形物を得た。この固形物を乳鉢でよくすりつぶして粉砕し、目開き44μmと105μmの篩で44μm〜105μmの部分を篩別することよって、平均粒径:78μmの微粒子組成物を得た。尚、本発明の平均粒径は日機装株式会社のマイクロトラック9320−X−100により体積平均粒径を測定した結果である。
【0062】
(実施例2(参考例))
SMA3000に代えてSMA2625(スチレン無水マレイン酸共重合体;分子量:9000/サートマー社製)を添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:75μmの微粒子組成物を得た。
【0063】
(実施例3(参考例))
SMA3000に代えてSMA17352(スチレン無水マレイン酸共重合体;分子量:7000/サートマー社製)を添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:80μmの微粒子組成物を得た。
【0064】
(実施例4(参考例))
Sipernat D−17に代えてAEROSIL R972(疎水性ホワイトカーボン/アエロジル社製)を添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:82μmの微粒子組成物を得た。
【0065】
(実施例5)
SMA3000の添加量を9gから8gに変え、新たにPEG20000(ポリエチレングリコール;分子量:20000/和光純薬(株)製)を1g添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:86μmの微粒子組成物を得た。
【0066】
(実施例6(参考例))
アセタミプリドの添加量を1gから6gに、SMA17352の添加量を9gから12gに、Sipernat D−17の添加量を10gから2gに変えた以外は実施例3と同様の方法により行い、平均粒径:74μmの微粒子組成物を得た。
【0067】
(実施例7(参考例))
実施例6で乳鉢粉砕したものを目開き44μmの篩で篩分けし、篩下より平均粒径:21μmの微粒子組成物を得た。
【0068】
(実施例8(参考例))
SMA17352の添加量を12gから11gに、Sipernat D−17の添加量を2gから3gに変えた以外は実施例6と同様の方法により行い、平均粒径:72μmの微粒子組成物を得た。
【0069】
(実施例9(参考例))
実施例8で乳鉢粉砕したものを目開き44μmの篩で篩分けし、篩下より平均粒径:19μmの微粒子組成物を得た。
【0070】
(実施例10(参考例))
SMA17352の添加量を12gから10gに、Sipernat D−17の添加量を2gから4gに変えた以外は実施例6と同様の方法により行い、平均粒径:81μmの微粒子組成物を得た。
【0071】
(実施例11(参考例))
実施例10で乳鉢粉砕したものを目開き44μmの篩で篩分けし、篩下より平均粒径:22μmの微粒子組成物を得た。
【0072】
(実施例12(参考例))
SMA17352の添加量を12gから6gに変え、線状ポリサリチレート(PROVIRON社製)を6g添加した以外は実施例6と同様の方法により行い、平均粒径:74μmの微粒子組成物を得た。
【0073】
(実施例13(参考例))
線状ポリサリチレートの代わりにタマノル340(ロジン変性フェノール樹脂/荒川化学工業(株)製)6gを使用した以外は実施例9と同様の方法により行い、平均粒径:73μmの微粒子組成物を得た。
【0074】
(実施例14(参考例))
線状ポリサリチレートの代わりにマルキード3002(ロジン変性マレイン酸樹脂/荒川化学工業(株)製)6gを使用した以外は実施例9と同様の方法により、平均粒径:81μmの微粒子組成物を得た。
【0075】
(実施例15(参考例))
アセタミプリドに代えてイミダクロプリドを添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:80μmの微粒子組成物を得た。
【0076】
(実施例16(参考例))
アセタミプリドに代えてモニュロンを添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:76μmの微粒子組成物を得た。
【0077】
(実施例17)
アセタミプリド6gとSMA17352 12gを100mlのビーカーに量り取り、このビーカーをマントルヒーターに入れて200〜230℃の温度で加熱溶融した。ここにSipernat D−17 2gとニューカルゲンRX−B(リグニンスルホン酸Na/竹本油脂製)0.2gを添加して溶融物と均一になるように混合した。次に溶融物を冷却し固化したものを乳鉢粉砕し、44μmの篩で篩別することよって平均粒径:23μmの微粒子組成物を得た。
【0078】
(実施例18)
SMA17352をSMA2625に代えた以外は実施例17と同様の方法により行い、平均粒径:20μmの微粒子組成物を得た。
【0079】
(実施例19)
実施例6と同様の方法で調製した篩分け前の固形物196gに、ニューカルゲンRX−B(リグニンスルホン酸Na/竹本油脂製)2gと、ニューカルゲンBX−C(アルキルナフタレンスルホン酸Na/竹本油脂製)2gを加えてビニール袋で良く混合した。この混合物全量をピンミルで粉砕することにより、平均粒径:23μmの微粒子組成物を含む水和剤1を得た。
【0080】
(実施例20)
実施例8と同様の方法で調製した篩分け前の固形物196gを使用した以外は、実施例19と同様の方法により行い、平均粒径:19μmの微粒子組成物を含む水和剤2を得た。
【0081】
(実施例21)
実施例10と同様の方法で調製した篩分け前の固形物196gを使用した以外は、実施例19と同様の方法により行い、平均粒径:13μmの微粒子組成物を含む水和剤3を得た。
【0082】
(実施例22)
アセタミプリド200g、SMA17352 750g、Sipernat D−17 50gをビニール袋に入れてよく混合した。この混合物を胴体温度110℃〜120℃に加熱したKRCニーダーS−1型(加熱連続ニーダー/(株)栗本鐵工所製)で加熱溶融、混練し、得られた混練物をフードカッターで粉砕した。この粉砕物490gに、ニューカルゲンRX−B(リグニンスルホン酸Na/竹本油脂製)5gと、ニューカルゲンBX−C(アルキルナフタレンスルホン酸Na/竹本油脂製)5gを加えてビニール袋で良く混合した。この混合物全量を4Bウルマックス(ジェット粉砕機/日曹エンジニアリング(株)製)で粉砕することにより、平均粒径:7.5μmの微粒子組成物を含む水和剤4を得た。
【0083】
(実施例23)
80℃〜100℃で融解したビフェンスリン(Bifenthrin)原体とカープレックス#80D(ホワイトカーボン/塩野義製薬製)を1:1(wt/wt)の割合で乳鉢中で混合吸着したもの98gに、ニューカルゲンRX−B(リグニンスルホン酸Na/竹本油脂製)1gと、ニューカルゲンBX−C(アルキルナフタレンスルホン酸Na/竹本油脂製)1gを加えてビニール袋で良く混合した。この混合物全量をピンミルで粉砕することにより、平均粒径:17μmの微粒子組成物を含む水和剤5を得た。17gの水和剤5と73gの実施例19で得た水和剤1とをビニール袋で良く混合し、平均粒径20μmの水和剤6を得た。
【0084】
(実施例24)
実施例22で得た水和剤4を105gとゴーセノールGL05S(ポリビニルアルコール/日本合成化学工業(株)製)20g、昭和クレー(鉱物質担体/昭和ケミカル(株)製)875gをビニール袋で良く混合した後、ニーダー(KDHJ−2/フジパウダル(株)製)に入れ、ここに蒸留水190mlを加えて10分間混練した。混練物をφ1mmのスクリーンをつけた粒剤形成機(EXK−1/不二電気工業(株)製)に入れて押出し、押出し物を約1〜2センチの厚みとなるようにホーロー製のバットに入れて、40℃の恒温槽で20時間乾燥した後、目開き0.59mmと1.68mmの篩で篩分けし、農薬含有樹脂組成物を含む粒剤1を得た。
【0085】
(実施例25(参考例))
アセタミプリド1.5gとSMA17352 3.25g、及びSipernat D−17 0.25gを50mlの三角フラスコに量り取り、ここに蒸留水20mlと28%アンモニア水2.2gを入れ、80℃の温浴で30分間加温・溶解した。この分散液を室温まで冷却した後、濃塩酸3.67gを添加して結晶を析出させた。この結晶を吸引ろ過して集め、40℃の恒温槽で2時間、更に真空乾燥機を使用して40℃で2時間乾燥して結晶を得た。この結晶を乳鉢でよくすりつぶして粉砕し、目開き44μmと105μmの篩で44μm〜105μmの部分を篩別することよって、平均粒径:66μmの微粒子組成物を得た。
【0086】
(比較例1)
Sipernat D−17に代えてカープレックス#80(ホワイトカーボン/シオノギ製薬(株)製)を添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:82μmの微粒子組成物を得た。
【0087】
(比較例2)
Sipernat D−17に代えてAEROSIL 200(ホワイトカーボン/アエロジル社製)を添加した以外は実施例1と同様の方法により行い、平均粒径:88μmの微粒子組成物を得た。
【0088】
(比較例3)
SMA17352をヒドロキシスチレンポリマー(Poly(p−hydroxystyrene;分子量:7600/日本曹達(株)製)に変えた以外は実施例6と同様の方法により行い、平均粒径:80μmの微粒子組成物を得た。
【0089】
(比較例4)
SMA17352をポリエチレン(分子量:4000/シグマアルドリッチ製)に代えた以外は実施例17と同様の方法により行い、平均粒径:88μmの微粒子組成物を得た。
【0090】
(比較例5)
アセタミプリド72.3gとニューカルゲンRX−B(リグニンスルホン酸Na/竹本油脂製)2.5g、クレー20.2g、カープレックス#80(ホワイトカーボン/シオノギ製薬(株)製)5.0gを乳鉢中で良く混合した後、エアー粉砕機で粉砕してアセタミプリド70重量%水和剤を得た。
【0091】
(実施例26)
試験例1 <水中溶出性試験>
実施例1〜14及び17〜24で得られた微粒子組成物及びそれらの水和剤、粒剤、及び対照としてアセタミプリド70重量%水和剤について、それぞれアセタミプリド原体として約10mgを含むサンプルを100mlのバイアル管に精秤し、ここに25℃の蒸留水80mlと内部標準としてmethyl 4−hydroxybenzoate溶液(500mg/L蒸留水)20mlを添加し、蓋をして5回倒立し、サンプリングまで25℃の恒温槽に静置した。サンプルが水和剤形態でない場合には、サンプル秤量後に秤量値の10重量%の界面活性剤混合物(各種界面活性剤30重量%とクレー70重量%を混合粉砕したもの)を添加して良く混合してから蒸留水と内部標準を添加して分散させた。経時毎に5回倒立してから約0.7mlをサンプリングした(0.45μmのフィルターでろ過)。サンプリングした溶液中のアセタミプリドの濃度をHPLCで測定して水中のアセタミプリド濃度を求め、水中に投入したアセタミプリドが全て水に溶解した場合のアセタミプリド濃度との百分率で水中溶出率を算出した。実施例15,16については原体の種類が異なるため、水中の原体濃度の分析は内部標準を使用せずに実施した。結果を表1に示す。表1において対照としたアセタミプリド70重量%WPが15分後には水中溶出率が100%となったのに対して、各実施例の微粒子組成物とそれらの水和剤の水中溶出率は低いレベルに制御されていた。また、比較例1,2,4の微粒子組成物は15分後の水中溶出率(初期バースト)が高く、比較例1,2ではその後の水中溶出率の上昇が認められず死蔵した。比較例3の微粒子組成物は、15分後の水中溶出率は低く抑えられたが、72時間以降の水中溶出率の上昇が認められず死蔵した。
【0092】
【表1】

【0093】
これらのことから、実施例1〜14及び17〜23の微粒子組成物とそれらの水和剤のアセタミプリド水中溶出率は低いレベルに制御されており、水中溶出率の経時的な上昇が認められ、死蔵しないことが分かった。また、アセタミプリド以外の原体を使用した実施例15,16のような微粒子組成物においても同様な傾向であることが分かった。さらに、疎水性ホワイトカーボンや水溶性高分子を溶出制御剤として添加することや、微粒子組成物の粒子径を変えることにより、溶出速度をコントロールできることが分かった。
【0094】
(実施例27)
試験例2 <土壌中安定性試験>
土壌10gに対して、アセタミプリド1mgが混合されるように、実施例19〜21で得られた水和剤1〜3を土壌に均一に混合した。温度25℃、相対湿度90%の恒温槽に保管し、所定期間ごとにサンプリングして、土壌中のアセタミプリドを溶媒で抽出してHPLCで分析し、仕込み量に対するアセタミプリドの残存率を算出した。
比較例5のアセタミプリドの70重量%水和剤についても同様の試験を行い、土壌中安定性(残存率)を測定した。結果を表2に示す。表2において、土壌中半減期とは、この試験条件において仕込んだアセタミプリドの量が半分になるまでに要する期間(日数)を意味する。
【0095】
【表2】

【0096】
表2より、水和剤1,2,3のアセタミプリドの土壌中半減期は、アセタミプリド70重量%水和剤のアセタミプリドの土壌中半減期に比べて高く、水和剤1,2,3の土壌中安定性が高いことが分かった。
【0097】
(実施例28)
試験例3 <種子処理剤としての試験>
水94重量%にポリビニルアルコール(ゴーセノールGL−05S、日本合成化学工業(株)製)5重量%と、界面活性剤としてリグニンスルホン酸Na(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂(株)製)1重量%を溶解した溶液(スティッカー溶液)3mlにアセタミプリドが70mg含まれるように実施例19〜21で得られた水和剤1〜3を分散し、この分散液0.3mlを、コムギ種子(農林61号)20gを入れたチャック付のビニール袋に入れ、直ちにチャックをして30秒間激しく混合攪拌して、コムギ種子に薬剤を付着させた。この種子をバットに薄く広げ、室温で一夜風乾し、種子100kgに対して35gのアセタミプリドが付着したコムギ種子を得た。得られた種子を黒ぼく土壌を入れた素焼き2号鉢に播種し、23日後(又は40日後)にムギクビレアブラムシの成幼虫を一株当たり20頭接種した。接種して2日、4日、7日経過後に、寄生虫数を計数して残効力を評価した。対照として、比較例5のアセタミプリド70重量%水和剤を用いた場合、及び無処理の場合についても同様に試験を行った。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
表3より、水和剤1,2,3は比較例5のアセタミプリド70重量%水和剤に比して農薬活性成分の効力の持続性が高いことが分かった。
【0100】
(実施例29)
試験例4 <土壌処理剤としての試験>
実施例19,20で得られた水和剤1、2各25.39gを2.346Lの水に分散し、散布液を調整し、じゃがいものコロラドハムシに対する圃場効果試験に供試した。薬剤処理は、じゃがいも種芋の植え付け時に、播種溝100m当たり水和剤18.5g相当の散布液を種芋の上から作条散布処理することにより行った。植え付け44日後、じゃがいもに寄生するコロラドハムシ成幼虫数を調査することにより薬効を評価した。対照として、同一有効成分量のアセタミプリド70重量%水和剤(比較例5)処理区及び無処理区を設けた。結果を表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
表4より、水和剤1,2では比較例5のアセタミプリド70重量%水和剤に比して、圃場における防除効果が向上することが分かった。
【0103】
(実施例30)
試験例5 <合成ピレスロイド剤混用による種子処理剤としての試験>
水94重量%にポリビニルアルコール(ゴーセノールGL−05S、日本合成化学工業(株)製)5重量%と、界面活性剤としてリグニンスルホン酸Na(ニューカルゲンRX−B、竹本油脂(株)製)1重量%を溶解した溶液(スティッカー溶液)2.8mlに、アセタミプリドが400mg含まれるように実施例20で得られた水和剤2を分散し、この分散液0.35mlを、ナタネ種子8gを入れたチャック付のビニール袋に入れ、直ちにチャックをして30秒間激しく混合攪拌して、ナタネ種子に薬剤を付着させた。この種子をバットに薄く広げ、室温で一夜風乾し、種子100kgに対して500gのアセタミプリドが付着したナタネ種子を得た。
【0104】
蒸留水1.3mlに、サイパーメスリン(cypermethrin)水和剤(有効成分6重量%)1gを分散し、この分散液0.65ml(cypermethrinとして20mg)を、種子100kgに対して500gのアセタミプリドが付着したナタネ種子8gを入れたチャック付きのビニール袋に入れ、直ちにチャックをして30秒間激しく混合攪拌して、ナタネ種子に薬剤を付着させた。この種子をバットに薄く広げ、室温で1〜2時間風乾した後、再びチャック付きのビニール袋に入れて、上記分散液0.65mlを添加して同じ操作を繰り返した。この種子をバットに薄く広げ、室温で一夜風乾し、種子100kgに対して500gのサイパーメスリン(cypermethrin)と500gのアセタミプリドが付着したナタネ種子を得た。
【0105】
また、ビフェンスリン(bifenthrin)SC剤(有効成分7.2wt%)1.1gに、アセタミプリドが80mg含まれるように実施例20で得られた水和剤2を分散し、この分散液0.55ml(ビフェンスリンとして40mg,アセタミプリドとして40mg)を、ナタネ種子8gを入れたチャック付のビニール袋に入れ、直ちにチャックをして30秒間激しく混合攪拌して、ナタネ種子に薬剤を付着させた。この種子をバットに薄く広げ、室温で一夜風乾し、種子100kgに対して500gのビフェンスリンと500gのアセタミプリドが付着したナタネ種子を得た。
【0106】
得られた種子を沖積土壌を入れた2号鉢に播種し、温室内で栽培した。播種18日後に、キスジノミハムシ成虫100頭を放飼したケージへナタネ幼苗を移し、3日間放置した後、各試験区3株のキスジノミハムシ成虫による食害痕数を計数した。対照として、種子100kgに対して500gの水和剤2もしくはサイパーメスリンもしくはビフェンスリンのみを処理した場合、および無処理の場合についても同様に試験を行った。結果を表5に示す。防除率%=((無処理の痕数−処理区の痕数)/無処理の痕数)×100
【0107】
【表5】

【0108】
表5より、水和剤2は合成ピレスロイド剤であるサイパーメスリンもしくはビフェンスリンを混用することによって、水和剤2のみの処理に比較して、キスジノミハムシに対する防除効果が高いことが分かり、水和剤2と合成ピレスロイド剤の間で共力効果が認められることが分かった。
【0109】
(実施例31)
試験例6 <セルトレイ灌注処理剤としての試験>
3.57gの実施例20で得られた水和剤2を1Lの水に分散して薬液を調整した。セルトレイで栽培された4〜4.5葉期のハクサイ幼苗に、1株当たり0.5mlの薬液を苗の上からピペットを用いて滴下した。薬液処理翌日、処理苗を黒ぼく土壌を入れた6号鉢に定植し、温室内で栽培した。定植2、14、28日後、各鉢に円筒ケージをかぶせ、キスジノミハムシ成虫10頭を放飼し、害虫放飼6日後、各試験区4鉢のキスジノミハムシ成虫による食害痕数を計数した。対照として市販のビフェンスリンSC、および無処理の場合についても同様に試験を行った。結果を表6に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
表6より、水和剤2は、ビフェンスリンSC剤より、残効性に優れることが分かった。
【0112】
(実施例32)
試験例7 <育苗箱灌注処理による水稲剤としての試験>
実施例22で得られた水和剤4を所定濃度に水で希釈し薬液を調整した。粒状培土を充填した小型塩ビトレイで栽培された草丈約10cmの幼苗の土壌面にトレイあたり10mlの薬液をピペットを用いて滴下した。薬剤処理後トレイに円筒ケージをかぶせ、ツマグロヨコバイ2令幼虫6頭を放飼し、害虫放飼3、7日後に生死虫数を計数した。対照としてイミダクロプリドを処理した場合、および無処理の場合についても同様に試験を行った。対照のイミダクロプリドはツィーン20を1.5重量%含有するジメチルホルムアミドに5重量%となるように調整し、水で希釈して散布した。結果を表7に示す。
補正殺虫率=((無処理区の生存率−処理区の生存率)/無処理区の生存率)×100
【0113】
【表7】

【0114】
表7より、水和剤4はイミダクロプリドと比較してこれにまさる殺虫活性を示し、水稲の育苗箱潅注剤として有用であることがわかった。
【0115】
(実施例33)
試験例8 <シロアリ用土壌処理剤としての効力試験>
0.5gの実施例22で得た水和剤4を水道水1.6Lに分散し薬液を調整した。この薬液1mlを黒ぼく土14gに添加し、均一となるよう撹拌混合した。処理土壌は36℃の恒温器に置き、7日毎に蒸発した水分量を加水して初期重量に合わせ撹拌混合した。処理21日後に処理土壌を塩化ビニール製チューブ(内径11mm、5cm長)に詰め、このチューブを、2つのPET樹脂製試験容器(内径5cm、11cm高)の底面から2cmの高さの架橋部に接続した。一方の試験容器には無処理土壌30gを入れ、2日後にヤマトシロアリの働き蟻60頭と兵蟻1頭を接種した。もう一方の試験容器には餌として裁断した段ボール5gと水道水5mlを入れた。試験容器は25℃の恒温室に置き、21日間処理土壌の穿孔状況、行動状況、健康状況を観察して薬効を評価した。対照として同一有効成分量のアセタミプリド70重量%水和剤(比較例5)処理区及び薬剤無処理区を設けた。試験は2反復で行った。結果を表8に示す。
【0116】
【表8】

【0117】
表8より、水和剤4では比較例5のアセタミプリド70重量%水和剤に比して、ヤマトシロアリに対する土壌処理における防除効果が向上することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、またはスチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を含有する組成物が相溶状態またはマトリックスを形成してなる農薬含有樹脂組成物であって、
前記(1)農薬活性成分が、25℃における水における溶解度が100ppm以上の成分であり、
前記(3)溶出制御剤が水溶性高分子、または界面活性剤であることを特徴とする農薬含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂のスチレン無水マレイン酸共重合体以外の樹脂がロジン若しくはその誘導体、またはサリチル酸若しくはその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する重合体である請求項1記載の農薬含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記農薬活性成分がネオニコチノイド系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の農薬含有樹脂組成物。
【請求項4】
前記ネオニコチノイド系化合物が、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、またはジノテフランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の農薬含有樹脂組成物。
【請求項5】
原末平均粒径が200μm以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物。
【請求項6】
原末平均粒径が1〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物。
【請求項7】
(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を混合・加熱溶融・混練し冷却する工程を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
(1)農薬活性成分、(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂、(3)溶出制御剤、を有機溶剤に溶解・分散・混合したのち有機溶剤を留去する工程を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
(2)スチレン無水マレイン酸共重合体、または、スチレン無水マレイン酸共重合体混合樹脂をアルカリ水溶液に溶解後、(1)農薬活性成分と(3)溶出制御剤、を溶解・分散・混合し、酸性溶液としたのち、ろ過、乾燥する工程を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の農薬含有樹脂組成物を含有する農薬製剤。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の農薬含有樹脂組成物を1種以上含み、種子処理剤、土壌処理剤、または茎葉処理剤として使用されることを特徴とする農薬製剤。
【請求項12】
前記農薬含有樹脂組成物1種以上以外に農薬活性成分1種以上を含有することを特徴とする請求項10または11に記載の農薬製剤。
【請求項13】
前記農薬含有樹脂組成物1種以上以外の農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることを特徴とする請求項12記載の農薬製剤。
【請求項14】
請求項10または11記載の農薬製剤1種以上と農薬活性成分1種以上を含有する組成物を同時にあるいは時期をずらして処理することを特徴とする処理方法。
【請求項15】
前記農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることを特徴とする請求項14記載の処理方法。
【請求項16】
請求項14または15いずれかに記載の処理方法で処理された植物種子。
【請求項17】
請求項1〜6いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物1種以上、または、請求項1〜6記載の農薬含有樹脂組成物1種以上及び他の農薬活性成分1種以上を含有する医薬、動物薬、食品用保存剤、およびバイオサイド剤からなる群から選ばれる用途に用いられることを特徴とする農薬含有製剤。
【請求項18】
用途が土壌病虫害防除剤、シロアリ防除剤、衣料用剤、害虫防除剤、木材害虫防除剤、ベイト剤、動物外部寄生虫防除剤、衛生害虫防除剤、家庭防疫用剤、船底塗料、魚網等の防藻剤、および木材等の防黴剤からなる群から選ばれることを特徴とする請求項17記載の農薬含有製剤。
【請求項19】
請求項1〜6いずれかに記載の農薬含有樹脂組成物の他の農薬活性成分の少なくとも一種がピレスロイドであることを特徴とする請求項17または18いずれかに記載の農薬含有製剤。

【公開番号】特開2011−1371(P2011−1371A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180212(P2010−180212)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【分割の表示】特願2006−531593(P2006−531593)の分割
【原出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】