説明

溶剤置換装置

【課題】共沸を利用する溶剤の置換における溶液の組成を自動的かつ即時に観測することができ、さらには共沸を利用する溶剤の置換の運転操作を自動で行うことができる技術を提供する。
【解決手段】濃縮槽3と、目的物質を含有するエタノール溶液及びn−ヘキサンを濃縮槽3に供給する手段と、濃縮槽3中の液体を加熱するための加熱装置4と、濃縮槽3中の液体の蒸気を冷却して凝縮させるための凝縮器5と、凝縮器5で生成した凝縮液を収容するための留出槽6と、記凝縮液又は濃縮槽3中の液体におけるエタノール又はn−ヘキサンの濃度を検出するための検出器と、n−ヘキサンの濃縮槽3への供給及び加熱装置4による濃縮槽3中の液体の加熱を前記検出器の検出値に応じて制御するための制御装置8とを有する溶剤置換装置において、前記検出器に近赤外分光センサ7を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共沸によって溶剤を置換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中の目的物質を晶析させる方法としては、目的物質の溶解性に優れる良溶剤に目的物質を溶解した後に、この良溶剤と共沸しかつ目的物質の溶解性がより低い貧溶剤を前記溶液に供給し、目的物質と良溶剤と貧溶剤とを含む液体を濃縮して良溶剤と貧溶剤とを共沸させ、良溶剤を貧溶剤に置換し、その後目的物質を晶析させる方法が知られている。
【0003】
このような方法において溶液中の良溶剤を貧溶剤に置換するための装置としては、例えば目的物質の前記良溶剤の溶液と貧溶剤とが収容され、収容された液体を濃縮するための濃縮槽と、貧溶剤を濃縮槽に供給するための装置と、濃縮槽中の液体を加熱するための加熱装置と、濃縮槽中の液体の蒸気を冷却するための凝縮器と、凝縮器で生成した凝縮液を収容するための留出槽とを有する溶剤置換装置がある。
【0004】
前記溶剤置換装置における溶剤置換操作の終点は、直接又は間接的に測定される、濃縮槽中の液体における良溶剤或いは貧溶剤の濃度によって確認することができる。前記終点は、例えば濃縮槽中の液体又は凝縮液の一部を採取し、ガスクロマトグラフィー(GC)等の適当な公知の検出器によって、採取した液体における良溶剤の濃度を検出することによって確認することができる。
【0005】
例えば医薬又はその中間体としての光学異性体を溶液中の目的物質とする晶析では、この目的物質を溶解する第一の溶剤に目的物質を溶解した溶液を濃縮槽に仕込み、一方で第一の溶剤と共沸しかつ第一の溶剤に比べて前記目的物質の溶解性が低い第二の溶剤を濃縮槽に所定量仕込んだ後、濃縮槽内の減圧と加熱とによって第一及び第二の溶剤を共沸させ、濃縮槽中の第一の溶剤を第二の溶剤に置換する操作を行うことがある。この操作はバッチ式の操作である。第二の溶剤の濃縮槽への仕込みから共沸までの操作は、第一の溶剤中の前記目的物質の量にもよるが、通常は複数回、例えば三回程度行われる。その後、凝縮液の一部を作業者が現場にて採取し、採取した凝縮液における第一の溶剤の濃度をGCによって検出し、第一の溶剤の濃度が一定値以下になったことを確認し、第一の溶剤から第二の溶剤への置換の終点が確認される。
【0006】
しかしながら前述したような確認方法では、操作の終点の確認のために、製造工程(共沸工程)を一旦中断し、現場でのサンプリング操作、サンプルの分析操作、及び分析結果を作業者が確認する操作が行われる。このため、前述の確認方法では、確認のための時間と作業負荷とが必要となる。さらに、最初に濃縮槽に仕込む第一の溶剤の量が変わると前述のバッチ操作の回数も変わることがある。このため、前述の確認方法では、第一の溶剤の仕込み量が変わるたびに、その都度サンプリングと分析と確認との作業が必要になることがある。
【0007】
一方で、サンプリングを伴わない、工程中の液体の分析を利用する技術としては、例えば蒸留塔の運転制御において、塔頂液及び塔底液の一方又は両方の組成を近赤外線スペクトルで分析し、得られた測定値を用いて塔頂液及び塔底液の一方又は両方の組成を一定にする方法(例えば、特許文献1参照)や、分液時における流出液の近赤外領域の光の吸収率を測定し、測定された吸収率の変化に基づき流出液の流路を切り替える方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】特開平8−266802号公報
【特許文献2】特開平11−314009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、共沸を利用する溶剤の置換における溶液の組成を自動的かつ即時に観測することができる技術を提供する。
また本発明は、共沸を利用する溶剤の置換の運転操作を自動で行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、共沸を利用した溶剤の置換において、プロセスラインに近赤外分光センサを取り付け、このセンサにより溶液中の対象となる成分(溶剤)の濃度を測定することで溶剤置換操作の終点を確認する。また本発明は、近赤外分光センサの測定データに基づいて、溶剤の仕込み量の決定、操作回数の決定、タンク内の減圧、ジャケットによるタンク内の温度の調節の開始及び停止、タンクへの溶液の仕込み及び排出に係る弁の開閉のような、バッチ式の溶剤置換操作における各操作を制御装置によって制御することで自動化する。
【0010】
すなわち本発明は、目的物質とこの目的物質を溶解する第一の溶剤とを含む溶液と、前記第一の溶剤と共沸しかつ第一の溶剤に比べて前記目的物質の溶解性が低い第二の溶剤とが収容され、収容された液体を濃縮するための濃縮槽と、前記第二の溶剤を前記濃縮槽に供給するための第二の溶剤供給装置と、前記濃縮槽中の液体を加熱するための加熱装置と、前記濃縮槽で発生した濃縮層中の液体の蒸気を冷却するための凝縮器と、前記凝縮器で生成した凝縮液を収容するための留出槽と、前記凝縮液又は前記濃縮槽中の液体における第一或いは第二の溶剤の濃度を検出するための検出器と、少なくとも前記第二の溶剤の前記濃縮槽への供給及び前記加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱を前記検出器の検出値に応じて制御するための制御装置とを有し、前記検出器は近赤外分光センサである溶剤置換装置を提供する。
【0011】
前記装置によれば、溶剤置換操作中において凝縮液又は濃縮槽中の液体の組成を高い精度で自動的かつ即時に検出することが可能であり、共沸を利用する溶剤の置換において、溶剤置換操作を止めることなく、また溶剤を採取することなく溶剤置換操作の終点を確認することが可能となる。
【0012】
また前記装置によれば、溶剤置換操作中の凝縮液又は濃縮槽中の液体の組成の測定データに基づいて溶剤置換における各操作を制御装置によって実施することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記溶剤置換装置が、前記凝縮液を前記濃縮槽に供給するための還流管と、前記凝縮器から前記留出槽及び前記還流管のいずれか一方又は両方への前記凝縮液の流路を形成するための流路形成装置とをさらに有し、前記検出器は前記還流管の凝縮液における第一又は第二の溶剤の濃度を検出するための装置であると、還流液の組成の検出によって溶剤置換操作の終点を確認することが可能となる。
【0014】
また本発明は、前記目的物質が医薬又はその中間体である場合や、前記目的物質が、複数のカラムが連結されてなる無端状の流路に目的物質を含有する試料溶液と移動相とを供給し、かつ無端状の流路から移動相を排出する擬似移動床式クロマトグラフィーで得られた場合や、前記目的物質が超臨界流体と二種以上の溶剤とからなる流体を移動相として用いる超臨界流体クロマトグラフィーで得られた場合にも好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の溶剤置換装置は、前記濃縮槽、前記第二の溶剤供給装置、前記加熱装置、前記凝縮器、前記留出槽、前記検出器、及び前記制御装置を有し、前記検出器が近赤外分光センサであることから、共沸を利用する溶剤の置換における溶液の組成を自動的かつ即時に観測することができる。また本発明の溶剤置換装置は、共沸を利用する溶剤の置換の運転操作を自動で行うことも可能である。
【0016】
本発明の溶剤置換装置は、前記還流管と前記流路形成装置とをさらに有し、前記検出器が前記還流管の凝縮液における第一又は第二の溶剤の濃度を検出するための装置であると、還流液の組成から溶剤置換操作の終点を確認することができる。また、凝縮液の還流が可能となり、揮発性の高い成分を前記溶液から優先的に除去することも可能となる。
【0017】
本発明の溶剤置換装置は、前記目的物質が医薬又はその中間体である場合や、前記目的物質が、複数のカラムが連結されてなる無端状の流路に目的物質を含有する試料溶液と移動相とを供給し、かつ無端状の流路から移動相を排出する擬似移動床式クロマトグラフィーで得られた場合や、前記目的物質が超臨界流体と二種以上の溶剤とからなる流体を移動相として用いる超臨界流体クロマトグラフィーで得られた場合のように、目的物質からの不純物の高度な除去が望まれる場合や、移動相の溶剤が不純物として混入しやすい目的物質を用いる場合において、より高度に精製された目的物質を得る観点でより一層効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の溶剤置換装置は、目的物質とこの目的物質を溶解する第一の溶剤とを含む溶液と、前記第一の溶剤と共沸しかつ第一の溶剤に比べて前記目的物質の溶解性が低い第二の溶剤とが収容され、収容された液体を濃縮するための濃縮槽と、前記第二の溶剤を前記濃縮槽に供給するための第二の溶剤供給装置と、前記濃縮槽で発生した濃縮層中の液体を加熱するための加熱装置と、前記濃縮槽中の液体の蒸気を冷却するための凝縮器と、前記凝縮器で生成した凝縮液を収容するための留出槽と、前記凝縮液又は前記濃縮槽中の液体における第一或いは第二の溶剤の濃度を検出するための検出器と、少なくとも前記第二の溶剤の前記濃縮槽への供給及び前記加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱を前記検出器の検出値に応じて制御するための制御装置とを有する。本発明では、前記検出器には、近赤外領域(例えば0.8〜2.5μm)における反射光(又は透過光)の波長ごとの強度を検出することができる近赤外分光センサが用いられる。
【0019】
前記濃縮槽は、目的物質とこの目的物質を溶解する第一の溶剤とを含む溶液と前記第二の溶剤とを収容し、これらの液体を共沸させることができる容器であれば特に限定されない。前記液体の共沸は一般に減圧下で行われることから、濃縮槽には、槽内を減圧可能な公知の槽を用いることができる。
【0020】
前記第二の溶剤供給装置は、前記第二の溶剤を濃縮槽に供給することができる装置であれば特に限定されない。第二の溶剤供給装置は、公知の種々の部材や装置を用いて構成することができる。例えば第二の溶剤供給装置は、第二の溶剤を収容するための第二の溶剤槽と、第二の溶剤槽と前記濃縮槽とを接続する第二の溶剤供給管と、第二の溶剤供給管の溶剤を濃縮槽に向けて供給するためのポンプと、第二の溶剤供給管を開閉するための弁とから構成することができる。
【0021】
前記加熱装置は、濃縮槽中の液体を加熱することができる装置であれば特に限定されない。加熱装置には、濃縮槽の外周部に熱媒の流路を形成するジャケットやコイル、濃縮槽内に設けられる電気ヒータ等の、槽内の液体を加熱可能な公知の装置を用いることができる。前記加熱装置は、濃縮槽中の液体の冷却も含めた温度調整を実現する観点から、ジャケットやコイルであることが好ましい。
【0022】
前記凝縮器は、濃縮槽で加熱された液体の蒸気を冷却して凝縮させることができる装置であれば特に限定されない。凝縮器には溶剤の濃縮に用いられる公知の装置を用いることができる。
【0023】
前記留出槽は、凝縮器で生成した凝縮液を収容することができる容器であれば特に限定されない。前記溶液の共沸を減圧下で行う場合では、留出槽には槽内を減圧可能な公知の槽を用いることが好ましい。
【0024】
前記検出器は、前記凝縮液又は前記濃縮槽中の液体における第一或いは第二の溶剤の濃度を検出する近赤外分光センサである。検出器は、第一又は第二の溶剤の濃度を少なくとも検出することができれば特に限定されず、第一又は第二の溶剤の濃度以外にも、他の溶剤や目的物質に付随する不純物等の他の成分の濃度をさらに検出しても良い。
【0025】
また検出器は、凝縮液及び濃縮槽中の液体のいずれか一方又は両方を測定する位置に適当数設けることができる。複数の検出器を設ける場合では、凝縮液及び濃縮槽中の液体の組成を検出するための検出器の少なくとも一つには近赤外分光センサが用いられるが、他の検出器は、近赤外分光センサであっても良いし他のセンサであっても良い。
【0026】
凝縮液の組成を検出する近赤外分光センサは、例えば凝縮器と留出槽とを接続する凝縮液の流路や、留出槽に設けられる。また濃縮槽中の液体の組成を検出する近赤外分光センサは、例えば濃縮槽に設けられる。近赤外分光センサには、例えばブルカー・オプティクス社製のMATRIXシリーズ等の公知の近赤外分光センサを用いることができる。また前記他のセンサには、凝縮液や濃縮槽中の液体の少なくとも一部の成分を直接又は間接的に検出することができるセンサを用いることができ、例えば濃縮槽中の液体又は凝縮液の誘電率を検出するための誘電率測定装置等が挙げられる。
【0027】
前記制御装置は、少なくとも前記第二の溶剤の前記濃縮槽への供給及び前記加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱を前記検出器の検出値に応じて制御することができる装置であれば特に限定されない。第二の溶剤の前記濃縮槽への供給は、検出器で検出される第一又は第二の溶剤の濃度に基づいて制御装置によって制御することもできるし、また前記濃縮槽にさらに液量計を設け、この液量計の検出値をさらに利用して制御装置によって制御することもできる。
【0028】
第二の溶剤の前記濃縮槽への供給について、検出器で検出される第一又は第二の溶剤の濃度に基づく制御には、例えば前記検出器による第一又は第二の溶剤の濃度の検出値と前記制御装置に予め記憶されている第一又は第二の溶剤の濃度の設定値とを比較し、前記検出値が前記設定値から外れたとき(例えば前記設定値を下回ったとき)に制御装置が第二の溶剤を濃縮槽に所定量供給させる制御が挙げられる。また前記液量計によれば、制御装置は、制御装置に予め設定されている濃縮槽の液量の許容値の範囲(許容容量)から濃縮槽の液量の検出値が外れたときに、制御装置が第二の溶剤を濃縮槽の許容容量の範囲内で連続して、又は上限まで断続的に供給させる制御を行うことができる。このような液量に基づく制御を、制御装置は前記検出器の検出値に応じて行うことができる。
【0029】
さらに第二の溶剤の前記濃縮槽への供給について、前記制御装置は、溶剤置換操作における作業員の負担のさらなる軽減の観点から、第二の溶剤の仕込み量及び仕込み操作の回数を決定する装置であることが好ましい。第二の溶剤の仕込み量及び仕込み操作の回数は、例えば濃縮槽に供給された溶液中の第一の溶剤の量と、第一及び第二の溶剤の共沸混合比と、共沸後に濃縮槽に収容されているべき第二の溶剤の量とから制御装置が第二の溶剤の総供給量を決定し、求められた第二の溶剤の総供給量と第二の溶剤の一回当たりの濃縮
槽への仕込み量とに基づいて制御装置が仕込み操作の回数を決定することによって行うことができる。第二の溶剤を濃縮槽へ複数回仕込む時の各仕込み量は、一定の値であっても良いし、共沸の進行による前記溶液中の第一の溶剤の減量を見込んで、回数を重ねるにつれて増やされている異なる値であっても良い。
【0030】
前記加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱は、検出器で検出される第一又は第二の溶剤の濃度に基づいて制御することができる。例えば加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱は、前記検出器による第一又は第二の溶剤の濃度の検出値と前記制御装置に予め記憶されている第一又は第二の溶剤の濃度の設定値とを比較し、前記検出値が前記設定値の範囲内のときに加熱装置によって濃縮槽中の液体を加熱させる制御が挙げられる。
【0031】
本発明の溶剤置換装置は、前述した装置や部材以外の他の手段をさらに有していても良い。前記他の手段は、溶剤の濃縮及び目的物質の晶析に使用することができ、また種々の操作を自動制御するために使用することができる機器であれば特に限定されない。前記他の手段には、前記凝縮液を前記濃縮槽に供給するための還流管や、前記凝縮器から前記留出槽及び前記還流管への前記凝縮液の流路を形成するための流路形成装置等が挙げられる。
【0032】
前記還流管は、前記濃縮槽への前記凝縮液の流路を形成する管であれば特に限定されない。還流管には、減圧濃縮における減圧度や溶剤の種類等の諸条件に応じた適当な公知の管を用いることができる。なお、還流管が設けられる場合では、前記凝縮液の任意の成分の濃度を検出するために、検出器を還流管に設けても良い。
【0033】
また前記流路形成装置は、前記凝縮器から前記留出槽への前記凝縮液の流路を形成することができる装置、凝縮器から前記還流管への凝縮液の流路を形成することができる装置、又は凝縮器から留出槽及び還流管への凝縮液の流路を形成することができる装置であれば特に限定されない。流路形成装置には、例えば凝縮器と留出槽とを接続する凝縮液供給管と、この管に接続される還流管との接続位置に設けられる三方弁や、前記凝縮液供給管及び還流管のそれぞれに設けられる二以上の二方弁を用いることができる。
【0034】
さらに前記他の手段には、濃縮槽内を減圧するための減圧装置や、前記目的物質と前記第一の溶剤とを含む溶液を濃縮槽に供給するための溶液供給装置等が挙げられる。
【0035】
前記減圧装置は、濃縮槽内の溶剤の濃縮の雰囲気を減圧させることができる装置であれば特に限定されない。減圧装置には、真空ポンプ等の公知の減圧装置を用いることができる。減圧装置は、凝縮器かそれよりも下流側の凝縮液の流路に接続されることが好ましい。
【0036】
前記溶液供給装置は、前記溶液を濃縮槽に供給することができる装置であれば特に限定されない。溶液供給装置は、第二の溶剤供給装置と同様に、公知の種々の部材や装置を用いて構成することができ、例えば前記溶液を収容するための溶液槽と、溶液槽と濃縮槽とを接続する溶液供給管と、溶液供給管の溶液を濃縮槽に向けて供給するためのポンプと、溶液供給管を開閉するための弁とから構成することができる。
【0037】
さらに前記他の手段には、近赤外分光センサによる溶剤の濃度の検出の精度の観点から、コイルやジャケット等の検出される溶剤の温度を調整するための装置、検出される溶剤の温度を測定する温度計、検出対象となる溶剤の検出を妨害する成分(例えば検出対象溶剤がアルコールのときの水)を検出前に、すなわち前記溶液、前記液体又は前記凝縮液から吸着して除去するための吸着装置等が挙げられる。これらの他の手段にも公知の手段を用いることができる。
【0038】
なお、前記制御装置は、前記他の手段によるさらなる操作をさらに制御する装置であることが溶剤置換操作における作業員の負担のさらなる軽減の観点から好ましい。前記さらなる操作には、例えば溶液供給装置から濃縮槽への溶液の供給、減圧濃縮の場合における濃縮槽内の減圧、濃縮槽中の液体の排出等が挙げられる。
【0039】
溶液供給装置から濃縮槽への溶液の供給は、例えば溶剤置換運転の開始の指示に際して、設定されている溶液の量を制御装置が濃縮槽に溶液供給装置により供給させることによって行うことができる。溶液の供給量は、溶液槽から濃縮槽へ溶液を供給するポンプの運転や溶液槽と濃縮槽との間に介在する弁の開閉によって制御することができるが、溶液槽の液量や濃縮槽の液量の検出を前記制御に利用しても良い。
【0040】
また減圧濃縮の場合における濃縮槽内の減圧は、例えば濃縮槽中の液量又は前記検出器の検出値に応じて、真空ポンプの運転又は真空ポンプと濃縮槽とを接続する管における弁の開閉の制御によって、予め設定されている圧力に制御装置が濃縮槽内を減圧させることにより行うことができる。
【0041】
また濃縮槽中の液体の排出は、例えば濃縮運転(溶剤置換)の終点の確認の後に、又はその後の晶析操作の制御の後に、制御装置が濃縮槽の底部に設けられている弁を開かせることによって行うことができる。
【0042】
この他にも、前記制御装置は、溶剤置換装置の構成に応じて、溶剤置換装置を構成する種々の装置を適切に制御することができる。前記制御装置には、プラントの運転制御に用いられる公知の制御装置を用いることができる。
【0043】
前記第一の溶剤及び第二の溶剤は、互いに共沸する溶剤でありかつ前記目的物質の溶解度が異なる溶剤が公知の溶剤の中からそれぞれ一種又は二種以上の溶剤が選ばれる。第一及び第二の溶剤は、各溶剤の沸点、共沸点、各溶剤における目的物質の溶解度、これらの溶剤における目的物質の溶解度差、及び近赤外分光センサで検出される、溶剤に特有の波数の領域等の諸条件に応じて、水及び公知の有機溶剤から適宜選ぶことができる。
【0044】
前記の有機溶剤には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等の一般的なアルコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸メチル、及びジエチルアミン等の極性の高い溶剤、クロロホルムやアセトニトリル等の極性がさほど高くない溶剤、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の極性の低い溶剤等、クロマトグラフィー装置で移動相として一般的に用いられる種々の有機溶剤が挙げられる。さらに前記の有機溶剤にはヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、アセトン、トルエン、塩化メチレン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等も挙げられる。
【0045】
溶剤の沸点や溶解度に関する条件については、共沸による溶剤置換の通常の条件を採用することができる。近赤外分光センサで検出される前記波数の領域については、第一の溶剤の濃度変化に応じて変化する第一の溶剤に特有の第一の領域の波数と、第二の溶剤の濃度変化に応じて変化する第二の溶剤に特有の第二の領域の波数とがそれぞれ判別可能な二種以上の溶剤から第一及び第二の溶剤を選ぶことができる。
【0046】
近赤外分光センサで検出される、溶剤に特有の波数としては、例えばアセトニトリルであれば6873.3〜7332.3cm-1が挙げられ、メタノールであれば6873.3〜7332.3cm-1及び4713.4〜5114.5cm-1が挙げられ、IPAであれば6611.1〜6919.6cm-1が挙げられ、n−ヘキサンであれば8153.9〜
8377.6cm-1が挙げられ、ジエチルアミンであれば6449.06〜6468.35cm-1が挙げられる。前記の溶剤中で近赤外分光センサで検出することができる二種以上の溶剤の組み合わせとしては、アセトニトリルとIPAの組み合わせ以外のあらゆる組み合わせが挙げられる。なお、溶剤に特有の波数の領域は、例えば二種以上の溶剤の混合溶剤において所定の溶剤の濃度を変えながら混合溶剤を近赤外分光センサで分析することによって求めることができる。
【0047】
前記目的物質は、減圧濃縮等の溶剤の置換時における濃縮でも変性せず、かつ第一の溶剤に溶解する物質であれば特に限定されない。
【0048】
前記第一の溶剤と前記目的物質とを含有する前記溶液は、目的物質と第一の溶剤とを混合して得ることができるし、また目的物質を含有する組成物と第一の溶剤とを混合して得ることもできる。前記目的物質を含む組成物には、例えばカラムクロマトグラフィー等の分離方法で得られた目的物質の溶液、その濃縮液、目的物質を得るための反応の反応生成物、及びその精製物等が挙げられる。
【0049】
本発明では、第一及び第二の溶剤以外の、前記濃縮槽中の液体に含まれる特定の成分の除去を、共沸による溶剤の置換の前後に行うことが、又は共沸による溶剤の置換と並行することが可能である。前記特定の成分としては、例えば第一及び第二の溶剤に比べて沸点が低い成分、第一及び第二の溶剤に比べて揮発性が高い成分、及び第一の溶剤又は第二の溶剤と共沸する成分等が挙げられる。
【0050】
例えば前記目的物質は、カラムクロマトグラフィーによって混合物中から所望の成分を分離して製造することができる。この場合、前記目的物質は、通常、濃縮された溶液の状態で得られる。またカラムクロマトグラフィーによる分離では、分離中の目的物質の安定性を向上させるために、有機酸や有機塩基等の添加剤を、移動相に適量添加することが知られている。前記特定の成分には、前記移動相に用いられる溶剤や前記添加剤が挙げられる。
【0051】
前記カラムクロマトグラフィーには、高速液体クロマトグラフィー、擬似移動床式クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、及び擬似移動床式超臨界流体クロマトグラフィー等の、公知の種々の方法が挙げられる。
【0052】
前記カラムクロマトグラフィーでは、水、酸、アルカリ、有機溶剤、及びこれらのうちの二種以上を含有する混合溶剤等の、公知の種々の溶剤を移動相として用いることができる。このような移動相用溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸メチル及びジエチルアミン等の極性の高い溶剤、クロロホルムやアセトニトリル等の極性がさほど高くない溶剤、n−ヘキサン等の極性の低い溶剤、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、アセトン、トルエン、塩化メチレン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0053】
これらのカラムクロマトグラフィーにおける前記添加剤は、分離中の目的物質を安定化させることができる物質であれば特に限定されない。前記添加剤は、pH等の移動相の物性や目的物質の物性等の観点から適宜選ぶことができる。前記添加剤には、例えば酢酸のようなカルボン酸、及びジエチルアミンのようなアミン等が挙げられる。
【0054】
前記添加剤の添加量は、分離中の目的物質を安定させ、かつ目的物質の分離に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に限定されないが、移動相全量に対して0.01〜0.5体積%であることが好ましく、0.01〜0.2体積%であることがより好ましい。
【0055】
前記カラムクロマトグラフィーには、生産性に優れる方法として、擬似移動床式クロマトグラフィーや超臨界流体クロマトグラフィーが知られている。これらのカラムクロマトグラフィーは、目的物質の種類や分離剤の種類に応じて、通常行われるように実施することができる。
【0056】
擬似移動床式クロマトグラフィーは、複数のカラムが直列に接続されてなる無端状の流路と、無端状の流路に移動相を供給するための第一の流路と、目的物質を含有する移動相を無端状の流路に供給するための第二の流路と、無端状の流路から移動相を排出するための第一及び第二の排出用流路とを有する装置を用いて行うことができる。
【0057】
超臨界流体クロマトグラフィーでは、移動相の極性の調整や目的物質に対する溶解性の向上の観点から、超臨界流体と前記移動相用溶剤とを含有する流体を移動相として用いることができる。超臨界流体クロマトグラフィーは、超臨界流体と溶剤とが混合した流体である移動相を生成する移動相生成装置と、生成した移動相に目的物質を含有する試料を注入するための注入器と、注入された試料中の目的物質を分離するためのカラムと、カラムを通った移動相中の物質を検出する検出器と、超臨界流体生成装置から検出器までの系内の圧力を所定の圧力に保つための背圧弁と、背圧弁を通過した移動相から超臨界流体を溶剤とを分離する気液分離装置とを有する装置を用いて行うことができる。
【0058】
超臨界流体クロマトグラフィーにおける超臨界流体としては、臨界圧力以上及び臨界温度以上のいずれか一方又は両方の状態(すなわち超臨界状態)にある物質が用いられる。超臨界流体として用いられる物質としては、例えば二酸化炭素、アンモニア、二酸化イオウ、ハロゲン化水素、亜酸化窒素、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ハロゲン化炭化水素、水等が挙げられる。
【0059】
前記カラムクロマトグラフィーにおいて、混合物から目的物質を分離するための、カラムに充填又は収容される分離剤は、目的物質の種類に応じて種々の分離剤の中から適宜選ぶことができる。例えば目的物質が光学異性体である場合では、前記分離剤としては、例えば国際公開95/23125号パンフレットにも記載されているような、セルロース、アミロース、セルロースのエステル誘導体、セルロースのカルバメート誘導体、アミロースのエステル誘導体、及びアミロースのカルバメート誘導体等の、多糖又は多糖誘導体を含む分離剤を好適に用いることができる。
【0060】
これらの分離剤の形態は特に限定されず、例えばシリカゲルやアルミナによって構成されている公知の担体に担持されている形態であっても良いし、分離剤そのものが粒子状等のカラム管に収容される形状に成型されている形態であっても良い。このような分離剤の形態は、例えば特許第2783819号明細書に記載されているような公知の方法によって実現させることができる。
【0061】
前記超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、移動相における超臨界流体に対する移動相用溶剤の混合比は、目的物質の種類や分離剤の分離能等の諸条件に応じて適宜決めることができる。
【0062】
前記カラムクロマトグラフィー装置では、目的物質が移動相に溶解した状態で得られる。前記カラムクロマトグラフィー装置は、分離後の移動相から移動相のみを回収する装置をさらに有することが、移動相の溶剤の使用量の低減や環境への負荷の軽減の観点から好ましい。このような回収装置には、カラムクロマトグラフィー装置から排出された移動相の少なくとも一部を蒸発させて留出させるための蒸発装置と、前記蒸発装置から留出した留出液を収容する回収槽と、前記蒸発装置で濃縮された濃縮液を収容する貯留槽と、回収
槽中の留出液の組成を調整するための調整装置とを有する装置が挙げられる。
【0063】
また前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、気液分離装置で分離された気体を超臨界流体に再生するために回収する装置をさらに有することが、超臨界流体を構成する成分の使用量の低減や環境への負荷の軽減の観点から好ましい。このような気体回収装置には、例えば前記気液接触装置と前記超臨界流体精製装置とを接続するガス回収管と、ガス回収管を流れる回収ガスから液体を分離するための気液分離装置とを有する装置が挙げられる。
【0064】
前記回収溶剤を用いるカラムクロマトグラフィー装置では、前述した添加剤等の特定の成分の移動相中における濃度が、移動相の回収の繰り返しに従って高くなることがあり、目的物質に同伴する前記特定の成分の濃度が高くなることがある。したがって、溶剤の置換と特定の成分の除去とを並行することが可能な本発明の溶剤置換装置に、前記回収装置を用いるカラムクロマトグラフィーによって得られた目的物質を適用することは、高い純度の目的物質を得る観点からより一層効果的である。したがって本発明の溶剤置換装置は、目的物質に医薬やその中間体を用いる場合に好適である。
【0065】
さらに、カラムクロマトグラフィーによって得られた目的物質を用いる場合では、前述したカラムクロマトグラフィーを実施できる装置と本発明の溶剤置換装置とを含む分離精製システムを構築することも可能である。
【0066】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0067】
本発明の一実施の形態における溶剤置換装置は、図1に示されるように、目的物質とこの目的物質を溶解する第一の溶剤とを含む溶液が収容されている溶液槽1と、第一の溶剤と共沸しかつ第一の溶剤に比べて目的物質の溶解性が低い第二の溶剤が収容されている第二の溶剤槽2と、溶液槽1の溶液と第二の溶剤槽2における第二の溶剤とが供給される濃縮槽3と、濃縮槽中の液体を加熱するための加熱装置4と、濃縮槽3中の液体の蒸気を冷却するための凝縮器5と、凝縮器5で生成した凝縮液を収容するための留出槽6と、凝縮液における第一又は第二の溶剤の濃度を検出するための近赤外分光センサ7と、近赤外分光センサ7の検出信号が入力される制御装置8とを有する。
【0068】
溶液槽1と濃縮槽3とは溶液供給管9によって接続されている。溶液供給管9には、溶液を濃縮槽3に向けて送るためのポンプ10と、溶液供給管9を開閉するための弁11とが設けられている。溶液槽1、溶液供給管9、ポンプ10及び弁11は、溶液供給装置を構成している。
【0069】
第二の溶剤槽2と濃縮槽3とは第二の溶剤供給管12によって接続されている。第二の溶剤供給管12には、第二の溶剤を濃縮槽に向けて送るためのポンプ13と、第二の溶剤供給管12を開閉するための弁14とが設けられている。第二の溶剤槽2、第二の溶剤供給管12、ポンプ13及び弁14は、第二の溶剤供給装置を構成している。
【0070】
濃縮槽3と凝縮器5とは蒸気供給管15によって接続されている。凝縮器5と留出槽6とは凝縮液供給管16によって接続されている。凝縮液供給管16には三方弁17と近赤外分光センサ7(例えばブルカー・オプティクス社製のMATRIXシリーズ)とが設けられている。
【0071】
濃縮槽3は濃縮槽3中の液体を排出するための排出管18をさらに有する。排出管18には排出管18を開閉するための弁19が設けられている。
【0072】
加熱装置4は濃縮槽3の外周部に熱媒の流路を形成するジャケットである。加熱装置4は不図示の熱媒供給装置に接続されており、温度が制御された熱媒が熱媒供給装置から供給される。
【0073】
凝縮器5には排気管20が接続されている。排気管20には、排気管20を開閉するための弁21と、凝縮器5の雰囲気を吸引する真空ポンプ22とが設けられている。
【0074】
三方弁17と濃縮槽3とは還流管23によって接続されている。三方弁17は、流路形成装置であり、凝縮器5から留出槽6への流路か、又は凝縮器5から濃縮槽3への流路のいずれかを形成する。
【0075】
制御装置8は、図示しないが、弁11、14、18及び21、三方弁17、ポンプ10及び13、真空ポンプ22、及び前記熱媒供給装置のそれぞれに接続されており、近赤外分光センサ7の検出値及び予め入力されているプログラムのいずれか一方又は両方に従って、これらの機器の操作量を制御するように構成されている。また、溶液槽1、第二の溶剤槽2、濃縮槽3及び留出槽6には、槽内の液量を検出するための不図示の液量計がそれぞれ設けられており、これらの液量計も制御装置8に接続されている。
【0076】
目的物質は、例えば医薬品又はその中間体としての光学異性体であり、前記目的物質はカラムクロマトグラフィーによって分離され、移動相の濃縮液から取り出されたものであり、第一の溶剤はエタノールであり、第二の溶剤はn−ヘキサンであるとする。
【0077】
前記目的物質及びエタノールは溶液槽1に供給され、溶液槽1には前記目的物質のエタノール溶液が収容される。一方で第二の溶剤槽2にはn−ヘキサンが収容されている。溶液槽1に供給されたエタノールの量は、制御装置8に入力される。この入力は、作業員による入力であっても良い。又は、前記入力に代えて、溶液槽1に溶液中のエタノールの濃度を検出可能な近赤外分光センサ等の検出器を設け、この検出器から入力された検出値から制御装置8が溶液中のエタノールの量を求めても良い。
【0078】
制御装置8は弁11を開きポンプ10を運転させて、溶液槽1の前記目的物質の溶液を濃縮槽3に所定量(例えば濃縮槽3において液体の収容が許容される容量の半分)供給する。前記目的物質の溶液を濃縮槽3へ所定量供給したら、制御装置8はポンプ10の運転を停止し弁11を閉じる。
【0079】
制御装置8は、例えばエタノールの留出量が最大となるエタノールとn−ヘキサンとの共沸混合比に基づいて、濃縮槽3に供給された前記目的物質の溶液中のエタノールの留出に必要なn−ヘキサンの量を求める。そして制御装置8は、求められたn−ヘキサンの量に、エタノール留出後に濃縮槽3に収容されているべきn−ヘキサンの量を足してn−ヘキサンの総供給量を求める。さらに制御装置8は、求められたn−ヘキサンの総供給量を濃縮槽3の残りの許容容量である許容容量の半分の量で除し、得られた数値に小数点以下の値が含まれる場合では一の位の値を一つ繰り上げて、第二の溶剤槽2からのn−ヘキサンの仕込み回数(バッチ数)を求める。
【0080】
制御装置8は、弁14を開き、ポンプ13を運転させて、濃縮槽3の許容容量の半分の量のn−ヘキサンを第二の溶剤槽2から濃縮槽3へ供給する。n−ヘキサンを濃縮槽3へ供給したら、制御装置8はポンプ13の運転を停止し弁14を閉じる。
【0081】
濃縮槽3への前記目的物質の溶液又はn−ヘキサンの供給の制御は、溶液槽1、第二の溶剤槽2、及び濃縮槽3に設けられている液量計の検出値、又はポンプ10、13のそれぞれの運転量によってさらに確認しながら行われても良い。
【0082】
制御装置8は、例えば前記目的物質の熱安定性が得られる範囲の温度や、共沸によってエタノールの留出量が最大となる温度や圧力に基づいて、前記熱媒供給装置によって水等の熱媒の温度を調整し、熱媒供給装置とジャケットとの間で温度が調整された熱媒を循環させ、濃縮槽3中の液体を加熱し、また弁21を開き真空ポンプ22を運転させ、濃縮槽3から凝縮器5を経て留出槽6に至る系を減圧させる。このような加熱と系の減圧とにより、濃縮槽3でエタノールとn−ヘキサンとが共沸する。
【0083】
濃縮槽3において発生したエタノールとn−ヘキサンの蒸気は、蒸気供給管15を通って凝縮器5に供給される。凝縮器5に供給された溶剤の蒸気は冷却されて凝縮し、凝縮液となる。凝縮液は、凝縮液供給管16、三方弁17、及び近赤外分光センサ7を経て留出槽6に供給される。
【0084】
近赤外分光センサ7は、凝縮液供給管16中の凝縮液の近赤外領域(例えば0.8〜2.5μm)における反射光(又は透過光)の波長ごとの強度を検出し、その信号を制御装置8に送信する。制御装置8は前記検出値から特定の成分に特有の波長の強度を必要に応じて補正し、特定の成分の濃度を算出する。制御装置8は、前記検出値から例えば凝縮液中のエタノール及びn−ヘキサンの濃度を算出し、得られたエタノールの濃度の検出値やn−ヘキサンの濃度の検出値が予め設定されているエタノールの濃度の設定値やn−ヘキサンの濃度の設定値の範囲内か否かを判定する。
【0085】
例えば制御装置8は、n−ヘキサンの濃度の検出値がn−ヘキサンの濃度の設定値の範囲内である場合は、溶剤置換のための共沸が正常に行われていると判断し、前述した加熱と減圧との制御を続行する。n−ヘキサンの濃度の検出値がn−ヘキサンの濃度の設定値を下回る場合では、制御装置8は、濃縮槽3中のn−ヘキサンの量が不足していると判断し、前述したように第二の溶剤槽2からn−ヘキサンを濃縮槽3に供給する。このようにして、先に求めた、第二の溶剤槽2からのn−ヘキサンの仕込み回数のn−ヘキサンの補給が行われる。
【0086】
n−ヘキサンの濃度の検出値がn−ヘキサンの濃度の設定値の範囲内であり、かつエタノールの濃度の検出値がエタノールの濃度の設定値を下回る場合では、制御装置8は、共沸による溶剤置換が終了したと判断し、弁21を閉じ真空ポンプ22を停止し、また前記熱媒供給装置における熱媒の温度を必要に応じて調整し、減圧濃縮運転を停止する。前述した操作により、濃縮槽3に供給された前記目的物質の溶液の溶剤はエタノールからn−ヘキサンに置換される。
【0087】
なお、先に求めた総供給量のn−ヘキサンの供給と減圧濃縮とを実施してもなお減圧濃縮が必要な場合、すなわちn−ヘキサンの濃度の検出値がn−ヘキサンの濃度の設定値の範囲内でありかつエタノールの濃度の検出値がエタノールの濃度の設定値を下回る場合では、制御装置8は、n−ヘキサンをもう一回分補給し、減圧濃縮運転を行う。
【0088】
一方で、制御装置8は、留出槽6における前記液量計の検出値が留出槽6の液量の設定値(例えば留出槽6の許容容量)を上回ると、弁21を閉じ、凝縮器5と濃縮槽3とを接続するように三方弁17を操作して凝縮器5から濃縮槽3への凝縮液の流路を形成し、留出槽6から凝縮液の排出を指示するか又は実施する。留出槽6から凝縮液が排出されたら、制御装置8は三方弁17を操作して凝縮器5から留出槽6への流路を再び形成し、弁21を開いて減圧濃縮運転を続ける。
【0089】
前記溶液の溶剤がエタノールからn−ヘキサンへ置換されたら、制御装置8は弁19を開き、濃縮槽3中の液体を濃縮槽3から排出管18へ排出する。なお、エタノールからn
−ヘキサンへの置換が確認された後に濃縮槽3の液量の検出値が濃縮槽3の液量の設定値又は算出値よりも少ない場合には、制御装置8は、第二の溶剤槽2からn−ヘキサンを必要量供給させて濃縮槽3の液量を調整する。制御装置8は、前記熱媒供給装置における熱媒の温度をさらに調整し、前記目的物質を析出させた後に、前記目的物質のスラリーを排出管18に排出しても良い。
【0090】
本実施の形態によれば、凝縮液のサンプリングをせずに近赤外分光センサ7によって凝縮液中のエタノール濃度を連続して測定することができ、共沸のための減圧濃縮運転をサンプリングのために中断することなく減圧濃縮運転の終点を確認することができる。
【0091】
また本実施の形態によれば、制御装置8は少なくともn−ヘキサンの濃縮槽3への供給及び加熱装置4による濃縮槽3中の液体の加熱を近赤外分光センサ7の検出値に応じて制御し、さらに系内の減圧を制御することから、減圧濃縮運転の一連の操作を自動化することができる。
【0092】
また本実施の形態では、三方弁17及び還流管23をさらに有することから、減圧濃縮運転を中断せずに留出槽6の凝縮液を留出槽6から排出することができる。
【0093】
また本実施の形態では、加熱装置4がジャケットであることから、熱媒の温度によって濃縮槽3中の液体の温度を調整することができることから、濃縮槽3中の液体を冷却することも可能である。したがって、前述した溶剤の置換に引き続き、目的物質の晶析を濃縮槽3において行うことも可能である。
【0094】
本実施の形態では、近赤外分光センサ7によるエタノール及びn−ヘキサンの濃度の検出値に基づいてn−ヘキサンの補給を制御しているが、近赤外分光センサ7では置換したい溶剤であるエタノールの濃度のみを検出し、n−ヘキサンの補給は、濃縮槽3における液量計の検出値に基づいて濃縮槽3の液量が常に濃縮槽3の許容容量の範囲内にあるように、第二の溶剤槽2から濃縮槽3へ制御総理8によってn−ヘキサンを供給させることにより行うこともできる。
【0095】
本実施の形態では、近赤外分光センサ7を凝縮液供給管16に設けているが、近赤外分光センサ7は、図2に示すように還流管23に設けても良いし、図3に示すように濃縮槽3に設けても良い。
【0096】
近赤外分光センサ7を還流管23に設ける場合では、バッチごとに凝縮液中のエタノール濃度を測定することができる。したがって、減圧濃縮の条件が既にわかっている減圧濃縮運転をさらに簡略にする観点からより一層効果的である。
【0097】
近赤外分光センサ7を濃縮槽3に設ける場合では、濃縮槽3中の液体のエタノールの濃度を測定することができる。図1や図2に示すように凝縮液のエタノールの濃度を近赤外分光センサ7で測定する場合では、制御装置8には、エタノールの濃度の設定値としては、濃縮槽3中の液体における所望のエタノールの濃度が得られるまでの凝縮液におけるエタノール濃度の値の範囲が設定される。しかしながら、濃縮槽3中の液体のエタノール濃度を近赤外分光センサ7で測定する場合では、濃縮槽3中の液体における所望のエタノール濃度を直接、エタノールの濃度の設定値とすることができるので、減圧濃縮運転の制御の条件設定をさらに簡略にする観点からより一層効果的である。また、近赤外分光センサ7を濃縮槽3に設けることは、溶剤の置換の条件の検討に好適である。
【0098】
また本実施の形態では、流路形成装置に三方弁17を用いているが、三方弁17に代えて図4に示すように、凝縮液供給管16と還流管23との接続箇所と近赤外分光センサ1
7との間の凝縮液供給管16を開閉するための弁24と、還流管23を開閉するための弁25とを設け、これらの弁を制御装置8に接続して制御装置8で制御できるように構成しても良い。二つの弁24及び25によって流路形成装置を構成すると、留出槽6と還流管23との両方へ任意の割合で凝縮液を分配することができる。
【0099】
溶液槽1に供給される前記目的物質に、カラムクロマトグラフィーの移動相に用いられる溶剤や添加剤のような不純物が同伴している場合があるが、本発明では、近赤外分光センサ7で検出された信号から、この不純物に特有の波長の光の強度を必要に応じて補正して、不純物の濃度を求めることが可能である。この場合、制御装置8は、この不純物の濃度の検出値と不純物の濃度の設定値とを比較して濃縮槽3中の液体における不純物の濃度が所定値以下になっていることをさらに確認し、必要に応じて減圧濃縮運転をさらに制御しても良い。
【0100】
例えば不純物が留出しやすい成分である場合では、近赤外分光センサ7を用いて凝縮液中の不純物の濃度を求め、不純物の濃度の検出値が不純物の濃度の設定値を下回ったことを確認することによって、濃縮槽3中の液体からの不純物の除去の終点を決定しても良い。
【0101】
不純物がエタノールとn−ヘキサンとの存在下よりもエタノール単独の条件での濃縮で留出しやすい成分である場合では、制御装置8は、第二の溶剤槽2から濃縮槽3へのn−ヘキサンの供給前に、不純物を除去するための減圧濃縮運転を行う。不純物がエタノールとn−ヘキサンとの存在下よりもn−ヘキサン単独の条件での濃縮で留出しやすい成分である場合では、制御装置8は、前述した溶剤置換のための減圧濃縮運転の後に、不純物を除去するための減圧濃縮運転をさらに行う。これらの不純物除去用の減圧濃縮運転は、前述した溶剤置換のための減圧濃縮運転と同様に、近赤外分光センサ7による検出値と設定値との比較によってその終点を決定することができる。
【0102】
カラムクロマトグラフィーによって混合物から分離された成分を目的物質として用いる場合では、前記不純物を同伴しやすい。このようなカラムクロマトグラフィーとして、目的物質の生産性に優れる形態を以下に示す。
【0103】
<擬似移動床式クロマトグラフィー>
擬似移動床式クロマトグラフィーは、図5に示す装置を用いて行うことができる。この擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、12本のカラムa〜lが直列に接続されてなる無端状の流路31と、無端状の流路31に移動相を供給するための第一の流路32と、目的物質を含有する移動相を無端状の流路31に供給するための第二の流路33と、無端状の流路31から移動相を排出するための第一及び第二の排出用流路34、35と、無端状の流路31において移動相を循環させるための循環ポンプ36とを有する。
【0104】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、第一の排出用流路33に直列に接続されている三基の蒸発装置37〜39と、蒸発装置37〜39のそれぞれの塔頂に接続され、蒸発装置37〜39から留出した留出液が流される第一の留出液流路40と、蒸発装置39の缶出液を収容するための第一の貯留槽41とを有する。
【0105】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、第二の排出用流路34に直列に接続されている三基の蒸発装置42〜44と、蒸発装置42〜44のそれぞれの塔頂に接続され、蒸発装置42〜44から留出した留出液が流される第二の留出液流路45と、蒸発装置44の缶出液を収容するための第二の貯留槽46とを有する。
【0106】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに第一及び第二の留出液流路40、
45のそれぞれが接続されこれらの留出液流路の留出液が収容される回収槽47と、回収槽47に回収された留出液を精製するための蒸留装置48と、精製された留出液の組成を調整するための溶剤調整装置49と、溶剤調整装置49と第一の流路32とを接続する再利用用流路50とを有する。
【0107】
無端状の流路31は、カラムa〜lと、カラムa〜lのそれぞれを直列に接続する複数の接続用流路とから構成されている。第一及び第二の流路32、33、第一及び第二の排出用流路34、35のそれそれの流路は、前記接続用流路のそれぞれに接続されており、特定の接続用流路に対して開閉するように構成されている。
【0108】
蒸発装置37〜39は、蒸発装置37の缶出液が蒸発装置38に供給され、蒸発装置38の缶出液が蒸発装置39に供給されるように接続されている。同様に、蒸発装置42〜44は、蒸発装置42の缶出液が蒸発装置43に供給され、蒸発装置43の缶出液が蒸発装置44に供給されるように接続されている。
【0109】
溶剤調整装置49は、例えば米国特許第6325898号明細書に開示されている装置を利用した装置であって、誘電率測定装置に代えて、例えばブルカー・オプティクス社製のMATRIXシリーズ等の近赤外分光センサを設けた装置である。
【0110】
目的物質が光学異性体であり、試料溶液が光学異性体の混合物であり、カラムには例えば特許第2783819号明細書に記載の方法によって製造されるセルロースのカルバメート誘導体からなる粒子が分離剤として収容されており、50体積%のメタノールと50体積%のアセトニトリルとの混合溶剤に総量で0.01体積%のジエチルアミンを混合した混合溶剤を移動相とする場合を例に、前記装置による擬似移動床式クロマトグラフィーを説明する。
【0111】
第一の流路32は、例えばカラムlとカラムaとの間から無端状の流路31に移動相を供給する。第二の流路33は、例えばカラムfとカラムgとの間から無端状の流路31に試料溶液を供給する。第一の排出用流路33は、無端状の流路31の移動相を、例えばカラムcとカラムdとの間から排出する。第二の排出用流路34は、無端状の流路31の移動相を、例えばカラムiとカラムjとの間から排出する。
【0112】
無端状の流路31に供給された試料溶液中の光学異性体は、まずカラムgの分離剤に吸着する。試料溶液中の光学異性体のうち、分離剤に吸着しやすい成分(以下、この成分を「エクストラクト」とも言う)は分離剤に強く吸着し、分離剤に吸着しにくい成分(以下、この成分を「ラフィネート」とも言う)は、エクストラクトに比べて弱く吸着する。ラフィネート及びエクストラクトは、共に移動相の流れによってカラムgを移動するが、ラフィネートは、エクストラクトよりも移動相が流れる方向における下流側に分布する。
【0113】
ラフィネート及びエクストラクトがカラムgを流出したら、第一及び第二の流路32、33、第一及び第二の排出用流路34、35のそれぞれを、カラム一本分下流側の位置で接続して流路を切り替える。すなわち、無端状の流路31において、第一の流路32はカラムaとカラムbとの間に接続し、第二の流路33はカラムgとカラムhとの間に接続し、第一の排出用流路34はカラムdとカラムeとの間に接続し、第二の排出用流路35はカラムjとカラムkとの間に接続する。ラフィネート及びエクストラクトがカラムgを通過する時間を1ピリオドとしたときに、前述したような流路の切り替えを1ピリオドごとに行う。
【0114】
前述した流路の切り替えを数ピリオド続けると、分離剤に対する吸着性に起因するエクストラクトの分布とラフィネートの分布との偏りがより顕在化する。すなわち、試料溶液
の供給位置に対して、無端状の流路31における移動相の流れ方向の上流側にはエクストラクトが主に分布して濃縮され、下流側にはラフィネートが主に分布して濃縮される。偏在し濃縮されたエクストラクトは、無端状の流路31から移動相とともに第一の排出用流路34を介して排出され、偏在し濃縮されたラフィネートは、無端状の流路31から移動相とともに第二の排出用流路35を介して排出される。
【0115】
なお、エクストラクト及びラフィネートが無端状の流路から排出されるようになると、無端状の流路におけるエクストラクトとラフィネートの分布はほぼ一定となる。したがって、移動相と試料溶液の無端状の流路31への供給と、無端状の流路31からの移動相の排出とを一定に行い、前述した流路の切り替えをピリオドごとに行うと、試料溶液の供給と分離された目的物質を含有する移動相の排出とが連続して行われる。
【0116】
第一の排出用流路34に排出されたエクストラクトを含有する移動相は、蒸発装置37〜39によって、まず30〜50質量%まで、次いで40〜70質量%まで、さらに60〜99質量%まで、段階的に濃縮される。エクストラクトを含有する濃縮された移動相は第一の貯留槽41に収容され、蒸発装置37〜39から留出した留出液は第一の留出液流路39を介して回収槽47に収容される。
【0117】
同様に、第二の排出用流路35に排出されたラフィネートを含有する移動相は、蒸発装置42〜44によって段階的に濃縮される。ラフィネートを含有する濃縮された移動相は第二の貯留槽46に収容され、蒸発装置42〜44から留出した留出液は第二の留出液流路45を介して回収槽47に収容される。
【0118】
第一の貯留槽41に収容された液又は第二の貯留槽46に収容された液は、そのまま又は洗浄等の適当な作業が行われ、目的物質として本発明の溶剤置換装置に用いられる。
【0119】
なお、回収槽47に収容された留出液は、蒸留装置48に供給されてさらに精製され、溶剤調整装置49に供給されて移動相の組成に調整され、再利用用流路50を介して第一の流路32に供給され、移動相として再利用される。
【0120】
<超臨界流体クロマトグラフィー>
超臨界流体クロマトグラフィーは、図6に示す装置を用いて行うことができる。この超臨界流体クロマトグラフィー装置は、二酸化炭素が高圧で充填されているボンベ51と、ボンベ51から供給される二酸化炭素を冷却して液化ガスとするための熱交換器52と、熱交換器52で生成した液化ガスを収容するためのバッファタンク53と、バッファタンク53に収容された液化ガスを定量的に送るための高圧ポンプ54と、溶剤を収容する溶剤タンク55と、高圧ポンプ54で送られる液化ガスに溶剤タンク55から溶剤を定量的に供給するための高圧ポンプ56と、液化ガスと溶剤との混合液を加熱して混合液中の液化ガスを超臨界流体とし、超臨界流体と溶剤との混合流体である移動相を生成するための熱交換器57とを有する。
【0121】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、さらに、生成した移動相に目的物質を含有する試料を注入するための注入器58と、注入された試料中の目的物質を分離するためのカラム59と、カラム59を通った移動相中の物質を検出する検出器60と、高圧ポンプ54から検出器60までの系内の圧力を所定の圧力に保つための背圧弁61とを有する。
【0122】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、さらに、背圧弁61に対して並列に接続され背圧弁61を通過した移動相を気液分離するための二台の気液分離装置62、63と、背圧弁61とそれぞれの気液分離装置62、63とを接続する流路を開閉するための弁64、65と、気液分離装置62、63で分離された液相を収容する第一の槽66、67と
、第一の槽66に接続されている第一の排出用流路34を開閉するための弁68と、第一の槽67に接続されている第二の排出用流路35を開閉するための弁69とを有する。第一及び第二の排出用流路34、35から溶剤調整装置49までは、前述した擬似移動床式クロマトグラフィー装置と同様に構成されている。
【0123】
前記超臨界流体クロマトグラフィー装置は、さらに、気液分離装置62、63と熱交換器52とを接続するガス回収管70と、ガス回収管70を流れる回収ガスから液体を分離するための気液分離装置71と、気液分離装置71から気液分離装置62へのガスの逆流を防止するための逆止弁72と、気液分離装置71から気液分離装置63へのガスの逆流を防止するための逆止弁73と、気液分離装置71で分離された液相を収容する第二の槽74と、第二の槽74に接続されている第三の槽75と、第二の槽74と第三の槽75とを接続する管を開閉するための弁76と、ボンベ51から所定の圧力で二酸化炭素のガスを供給するためのレギュレータ77と、熱交換器52からボンベ51へのガスの逆流を防止するための逆止弁78と、溶剤調整装置49と溶剤タンク55とを接続する再利用用流路79とを有する。
【0124】
目的物質、試料溶液、カラムに収容されている分離剤、及び前記擬似移動床式クロマトグラフィーにおける移動相を溶剤とする場合を例に、前記装置による超臨界流体クロマトグラフィーを説明する。
【0125】
ボンベ51から適当な初期圧力で二酸化炭素が熱交換器52に供給される。供給された二酸化炭素は熱交換器52で冷却されて液化ガスとなり、バッファタンク53に収容される。バッファタンク53に収容された液化ガスは、高圧ポンプ54によって定量的に熱交換器57に向けて送られ、背圧弁61で規定される所定の圧力(例えば臨界圧力)まで加圧されながら熱交換器57に供給される。
【0126】
一方で溶剤タンク55からは、溶剤が熱交換器57に向けて高圧ポンプ56によって定量的に送られる。前記溶剤は熱交換器57に供給される前に液化ガスと合流し、混合する。液化ガスと溶剤との混合液は、熱交換器57に供給されて所定の温度(例えば臨界温度又はカラム59の設定温度)まで加熱される。この加熱により、混合物中の液化ガスが超臨界流体となり、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相が生成する。
【0127】
生成した移動相には、目的物質を含有する試料が注入器58から注入される。試料が注入された移動相はカラム59に送られる。カラム59では試料中から目的物質が分離される。目的物質は検出器60で検出される。検出器60で目的物質が検出されると、例えば第一の排出用流路16に対応する弁64が開き、弁65は閉じる。目的物質を含有する移動相は、背圧弁61に送られる。
【0128】
背圧弁61を通過した移動相は、背圧弁61による圧力調整から解除され、減圧され、気液分離装置62に供給される。気液分離装置62に送られた移動相は気液分離される。超臨界流体を形成していた二酸化炭素は気相として移動相から分離し、目的物質及び溶剤は液相として移動相から分離する。気液分離装置62で分離された二酸化炭素は、逆止弁72を通って気液分離装置71に送られる。気液分離装置62で分離された液相は、第一の槽66に収容される。
【0129】
第一の槽66に収容された液相は、目的物質を含有する溶剤の溶液である。この溶液は、前記擬似移動床式クロマトグラフィーにおいて説明したように、第一の排出用流路34を通り、濃縮され、第一の貯留槽41に収容され、必要に応じて適当な処理が施され、本発明の溶剤置換装置に目的物質として用いられる。また前記液相の溶剤は、前述したように回収され、精製され、組成が調整され、再利用用流路79を通って溶剤タンク55に供
給され、移動相の一部を構成する溶剤に再利用される。
【0130】
一方で気液分離装置71に送られた二酸化炭素のガス(回収ガス)は、気液分離装置71によって気液分離される。回収ガスに含まれていた微量の液相(溶剤)は、第二の槽74に収容され、次いで第三の槽75に収容され、廃棄される。
【0131】
気液分離装置71によって精製された回収ガスは、ガス回収管70を通って熱交換器52へ送られる。回収ガスの圧力がレギュレータ77で規定されている前記初期圧力よりも高い場合は、回収ガスが熱交換器52に供給され、液化される。液化された回収ガスは、移動相の一部を構成する超臨界流体となる液化ガスに再利用される。
【0132】
回収ガスの圧力がレギュレータ77で規定されている前記初期圧力よりも低い場合は、ボンベ51からの新規の二酸化炭素のガスが熱交換器52に供給され、液化される。
【0133】
なお、目的物質以外の他の物質が検出器60によって検出されると、気液分離装置62に対応する弁64が閉じ、気液分離装置63に対応する弁65が開く。気液分離装置63では、前述した気液分離装置62と同様に、移動相中の二酸化炭素が気相として逆止弁73を通って気液分離装置71に送られ、移動相中の溶剤成分が液相として第一の槽67に収容される。
【0134】
第一の槽67に収容された液相も、前述したように濃縮され、前記他の物質を含有する溶液が第二の貯留槽46に収容され、留出液は前記溶剤として再利用される。また気液分離装置71に送られた回収ガスも、前述したようにその圧力に応じて液化ガスに再利用される。第二の貯留槽46に収容された溶液は、加熱等によって前記他の物質をラセミ化し、試料溶液として再利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の一実施の形態の溶剤置換装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の溶剤置換装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の溶剤置換装置の構成を概略的に示す図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の溶剤置換装置の構成を概略的に示す図である。
【図5】本発明における目的物質を得ることができる擬似移動床式クロマトグラフィー装置の一例の構成を概略的に示す図である。
【図6】本発明における目的物質を得ることができる超臨界流体クロマトグラフィー装置の一例の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0136】
1 溶液槽
2 第二の溶剤槽
3 濃縮槽
4 加熱装置
5 凝縮器
6 留出槽
7 近赤外分光センサ
8 制御装置
9 溶液供給管
10、13 ポンプ
11、14、19、21、64、65、68、69、76 弁
12 第二の溶剤供給管
15 蒸気供給管
16 凝縮液供給管
17 三方弁
18 排出管
20 排気管
22 真空ポンプ
23 還流管
31 無端状の流路
32 第一の流路
33 第二の流路
34 第一の排出用流路
35 第二の排出用流路
36 循環ポンプ
37〜39、42〜44 蒸発装置
40 第一の留出液流路
41 第一の貯留槽
42 第二の留出液流路
46 第二の貯留槽
47 回収槽
48 蒸留装置
49 溶剤調整装置
50、79 再利用用流路
51 ボンベ
52、57 熱交換器
53 バッファタンク
54、56 高圧ポンプ
55 溶剤タンク
58 注入器
60 検出器
61 背圧弁
62、63、71 気液分離装置
66、67 第一の槽
70 ガス回収管
72、73、78 逆止弁
74 第二の槽
75 第三の槽
77 レギュレータ
a〜l、59 カラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物質とこの目的物質を溶解する第一の溶剤とを含む溶液と、前記第一の溶剤と共沸しかつ第一の溶剤に比べて前記目的物質の溶解性が低い第二の溶剤とが収容され、収容された液体を濃縮するための濃縮槽と、
前記第二の溶剤を前記濃縮槽に供給するための第二の溶剤供給装置と、
前記濃縮槽中の液体を加熱するための加熱装置と、
前記濃縮槽で発生した濃縮槽中の液体の蒸気を冷却して凝縮させるための凝縮器と、
前記凝縮器で生成した凝縮液を収容するための留出槽と、
前記凝縮液又は前記濃縮槽中の液体における第一或いは第二の溶剤の濃度を検出するための検出器と、
少なくとも前記第二の溶剤の前記濃縮槽への供給及び前記加熱装置による濃縮槽中の液体の加熱を前記検出器の検出値に応じて制御するための制御装置とを有し、
前記検出器は近赤外分光センサであることを特徴とする溶剤置換装置。
【請求項2】
前記凝縮液を前記濃縮槽に供給するための還流管と、前記凝縮器から前記留出槽及び前記還流管のいずれか一方又は両方への前記凝縮液の流路を形成するための流路形成装置とをさらに有し、
前記検出器は前記還流管の凝縮液における第一又は第二の溶剤の濃度を検出するための装置であることを特徴とする請求項1記載の溶剤置換装置。
【請求項3】
前記目的物質は医薬又はその中間体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶剤置換装置。
【請求項4】
前記目的物質は、複数のカラムが連結されてなる無端状の流路に目的物質を含有する試料溶液と移動相とを供給し、かつ無端状の流路から移動相を排出する擬似移動床式クロマトグラフィーで得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶剤置換装置。
【請求項5】
前記目的物質は、超臨界流体と二種以上の溶剤とからなる流体を移動相として用いる超臨界流体クロマトグラフィーで得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶剤置換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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