説明

溶接ワイヤ矯正装置

【課題】矯正ローラの位置再現性を容易に確保できるようにする。
【解決手段】溶接ワイヤ1の曲り癖を大径の矯正ローラ2と小径の矯正ローラ3,3aとの間を通すことにより直すようにした溶接ワイヤ矯正機構4の上記大径の矯正ローラ2を、矯正ローラ移動機構5の矯正ローラ取付座支持部材21に取り付けた矯正ローラ取付座10に取り付けるようにする。矯正ローラ移動機構5の上記矯正ローラ取付座支持部材21は、上端部を係止用フレーム6に取り付けて垂直に配置したスライド軸8にスライド部材15を介して昇降できるようにしてある。矯正ローラ移動機構5は、係止用フレーム6に係止できるようにしてあり、又、上記係止用フレーム6とスライド部材15との間には、ばね23が圧縮されて介装されている。矯正ローラ移動機構5を係止用フレーム6から離脱させると、ばね23によりスライド部材15、矯正ローラ取付座10を介して矯正ローラ2が下降できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤの曲り癖を矯正するために用いる溶接ワイヤ矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤスプール、ペールパックなどに巻かれて収納されている溶接ワイヤを溶接トーチに供給する際に、溶接ワイヤの曲り癖を矯正して、溶接トーチ先端での溶接ワイヤの振れを防止するようにすることが行われている。
【0003】
このような溶接ワイヤの曲り癖を矯正する矯正装置としては、たとえば、ペールパックに収納された溶接ワイヤを、コンジットチューブ内を通して3個の矯正ローラを上下に配してなる矯正ローラ組に送り、該矯正ローラ組で溶接ワイヤを一旦直線状に矯正した後、矯正ローラ組の下流側に配置された巻付けローラに上記溶接ワイヤを巻き付けるようにし、一定曲率の曲り癖を与えた溶接ワイヤを溶接トーチに送るようにしたものがある。上記構成のワイヤ矯正装置の矯正ローラ組は、溶接ワイヤ送給経路に沿って上下にジグザグ状に配置された3個の同径の矯正ローラからなり、上方に位置する中央の矯正ローラに押込み調整ネジを設けて、該中央の矯正ローラを、上下方向に進退動できるようにしてある。
【0004】
かかる構成において、溶接ワイヤを直線状に矯正する場合は、ペールパックから引き出して矯正ローラ組に通した溶接ワイヤの先端をバネばかりに引っ掛けた状態で、このバネばかりを介し引っ張るようにし、このとき、上記バネばかりの測定値が所定値以上となるように上記押込み調整ネジをまわして、上記中央の矯正ローラを、溶接ワイヤに対し進退動させて押圧力の調整を行うようにし、押圧力調整後、溶接ワイヤを矯正するようにしてある(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
又、従来の溶接ワイヤ矯正装置の他の例としては、ガイド装置を介してワイヤリールから送られる溶接ワイヤを、曲げローラ組で一旦所定の曲率に変形させた後、該曲げローラ組の下流側に配置される矯正ローラ組にて溶接ワイヤを曲げローラ組による曲げ方向と反対方向に曲げて直線状に矯正するようにして、該溶接ワイヤを溶接トーチに送るようにしたものがある。上記曲げローラ組は、溶接ワイヤ送給経路に沿って所定の間隔で配置される第1と第2の2つの受けローラと、該受けローラ間に配置される成形ローラとからなり、該成形ローラは、加圧機構により溶接ワイヤ送給経路に直交する方向に進退動できるようにしてある。又、上記矯正ローラ組は、上記成形ローラと、該成形ローラの下流側に配置される第2受けローラと、該受けローラに対向して配置される加圧ローラとからなり、該加圧ローラは、加圧機構により上記成形ローラと同じ方向に進退動できるようにしてある。更に、上記成形ローラの上流側に位置する第1受けローラには、加圧機構により進退動できる加圧ローラを対向させて設けるようにしてある。
【0006】
かかる構成において、溶接ワイヤを矯正する場合は、ワイヤリールから引き出した溶接ワイヤを、第1受けローラと加圧ローラとの間、第1受ローラと成形ローラとの間、成形ローラと第2受けローラとの間、第2受けローラと加圧ローラとの間に通すようにし、しかる後、曲げローラ組により曲げ変形し、続いて矯正ローラ組により直線状に矯正するようにしてある(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−277047号公報
【特許文献2】特許第3232607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載されたものでは、溶接ワイヤを矯正ローラ組に通すときに、溶接ワイヤに先端を引っ掛けたバネばかりの測定値が所定値以上となるように押込み調整ネジを操作して、中央の矯正ローラを移動させるものであり、中央の矯正ローラの位置再現性を確保する操作が大変であるという問題がある。又、矯正ローラ組を構成する3個の矯正ローラは比較的小径のものであることから、中央の矯正ローラで溶接ワイヤを曲げたときに該中央の矯正ローラへの溶接ワイヤの接触面圧が大きくなる。これにより、溶接ワイヤの擦れが大きくなることから、溶接ワイヤの削り屑が発生しやすく、この削り屑がワイヤスプールに詰ると溶接が不可能になるおそれがあるという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2には、溶接ワイヤを曲げローラ組、矯正ローラ組に通す際の段取りについては触れられていないが、溶接ワイヤを交換する際等では、2つの加圧ローラと成形ローラとをそれぞれ移動させて、元の位置に戻すという作業が必要であり、2つの加圧ローラと成形ローラの位置再現性を確保することが難しいという問題がある。又、曲げローラ組を構成する成形ローラは、各受けローラに比して小径としてあることから、成形ローラに沿わされて曲げられる溶接ワイヤの成形ローラへの接触面圧が大きくなる。これにより、溶接ワイヤの擦れが大きくなることから、特許文献1に記載したのと同様の問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、溶接ワイヤを交換する場合等で、溶接ワイヤを矯正ローラ間から外したり、矯正ローラ間に通したりする矯正ローラの取付位置の再現性を容易に確保できるようにし、又、溶接ワイヤの矯正時における溶接ワイヤの矯正ローラへの接触面圧を減らして、ワイヤの擦れを低減できるようにする溶接ワイヤ矯正装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、溶接ワイヤを送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備える、溶接ワイヤを複数の矯正ローラ間に通して矯正させる溶接ワイヤ矯正装置において、上記少なくとも一方の矯正ローラを、矯正ローラ取付座に回転可能に支持させて、該一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して上記矯正ローラ間に送給される溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位できるようにし、且つ上記一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位させるための矯正ローラ移動機構を、固定側のフレームに、該矯正ローラ移動機構を固定側のフレームから離脱させたときに上記一方の矯正ローラが溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるよう離脱可能に係止できるようにした構成とする。
【0012】
又、上記構成において、溶接ワイヤ矯正機構における複数の矯正ローラを小径の矯正ローラとすると共に、上記複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラを大径の矯正ローラとし、且つ矯正ローラ取付座を介して矯正ローラを変位させる矯正ローラ移動機構に、矯正ローラ取付座を溶接ワイヤから離反する方向へ変位するよう付勢する弾性構造体を備えた構成とする。
【0013】
更に、上記構成における矯正ローラ移動機構を、固定側のフレームに取り付けたスライド軸と、矯正ローラ取付座を取り付けて上記スライド軸に沿い溶接ワイヤに近接したり、離反する方向へ移動できるようにしたスライド部材と、該スライド部材に一端側を取り付け、且つ他端側を上記固定側のフレームに離脱可能に係止できるようにした操作ロッドと、上記スライド部材を溶接ワイヤから離反する方向へ付勢する弾性構造体とを備えてなる構成とした構成とする。
【0014】
更に又、上記構成における操作ロッドの他端側に、調整用つまみを螺合して取り付け、調整ねじの長さを任意に調整して溶接ワイヤに対する矯正ローラの近接する方向への移動量を調整できるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の溶接ワイヤ矯正装置によれば、溶接ワイヤを送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備える、溶接ワイヤを複数の矯正ローラ間に通して矯正させる溶接ワイヤ矯正装置において、上記少なくとも一方の矯正ローラを、矯正ローラ取付座に回転可能に支持させて、該一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して上記矯正ローラ間に送給される溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位できるようにし、且つ上記一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位させるための矯正ローラ移動機構を、固定側のフレームに、該矯正ローラ移動機構を固定側のフレームから離脱させたときに上記一方の矯正ローラが溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるよう離脱可能に係止できるようにした構成としてあるので、溶接ワイヤの交換など、溶接ワイヤの段取りを変更するときに、上記矯正ローラ移動機構の固定側のフレームに対する係止を解除するだけで、上記矯正ローラは溶接ワイヤから離反する方向に移動させられて、矯正ローラ間に通した溶接ワイヤを簡単に取り外すことができ、又、上記矯正ローラ移動機構を固定側のフレームに係止させるだけで、上記矯正ローラを元の設置位置に戻すことができ、上記矯正ローラの位置再現性を容易に確保することができる。又、溶接ワイヤの交換など、溶接ワイヤの段取り変更の前後で矯正ローラの設置位置に変化はないので、交換した溶接ワイヤに対して交換前の溶接ワイヤと同じ逆歪を与えることができる、という優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の溶接ワイヤ矯正装置の実施の一形態を示す概略正面図である。
【図2】(イ)は図1のA−A方向概略側面図、(ロ)は(イ)のX部拡大図である。
【図3】図1の概略平面図である。
【図4】図2(イ)の状態から溶接ワイヤ下側の大径矯正ローラを下げた状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図4は本発明の実施の一形態を示すもので、図示しないワイヤスプール等から引き出されて図示しないワイヤ送給装置により溶接トーチに送給される溶接ワイヤ1の曲り癖を矯正するための本発明の溶接ワイヤ矯正装置を上記ワイヤ送給装置の上流側に設置するようにする。
【0019】
本発明の溶接ワイヤ矯正装置は、上記溶接ワイヤ1の送給路を挟むように2つの矯正ローラ3,3aと該2つの矯正ローラ3の外径よりも大径とした1つの矯正ローラ2とを位置させるようにして、上記ワイヤスプール等より引き出されてワイヤ送給装置へ導かれる溶接ワイヤ1を上記矯正ローラ2と3,3aとの間に通すことにより該溶接ワイヤ1の曲り癖を矯正するようにする溶接ワイヤ矯正機構4と、該溶接ワイヤ矯正機構4における1つの大径の矯正ローラ2を溶接ワイヤ1の送給路を挟んで2つの小径の矯正ローラ3,3aに近接、離反させる方向に進退動させるようにする矯正ローラ移動機構5とからなる構成とする。
【0020】
詳述すると、上記溶接ワイヤ矯正機構4は、水平板状の係止用フレーム6と、該係止用フレーム6の一端側(前端側)に上端部を取り付けて横方向(ワイヤ送給方向と平行な方向)に長くした垂直板状の矯正ローラ取付用フレーム7とからなる固定側のフレームにおける上記矯正ローラ取付用フレーム7に、2つの矯正ローラ3,3aを、該矯正ローラ取付用フレーム7の長手方向、すなわち、該溶接ワイヤ1の送給方向(矢印の方向)に所要間隔を隔ててそれぞれ回転自在に取り付けるようにすると共に、該2つの矯正ローラ3と3aとの間の位置の下方位置に、1つの大径の矯正ローラ2を、上記係止用フレーム6に上端をナット9で締結させて垂下させた2本のスライド軸8に沿い昇降できるようにしてある矯正ローラ取付座10に回転自在に取り付けるようにした構成としてある。上記固定側の矯正ローラ取付用フレーム7に回転自在に取り付ける2つの矯正ローラ3,3aは、矯正ローラ取付用フレーム7の外側に水平方向に配置されて該矯正ローラ取付用フレーム7の裏面側でナット12により着脱可能に取り付けてあるボルト11に、スライドブッシュ13を介し嵌合させて回転自在に且つ該ボルト11の頭部11aと矯正ローラ取付用フレーム7との間でボルト11の軸方向に移動(変位)できるように支持させてある。又、該各矯正ローラ3,3aの外周面には溶接ワイヤ1を沿わせるための溝14が形成されている。一方、上記矯正ローラ取付座10に回転自在に取り付けられる大径の矯正ローラ2は、矯正ローラ取付座10の外側に水平方向に配置されて該矯正ローラ取付座10の裏面側でナット12により着脱可能に取り付けてあるボルト11に、スライドブッシュ13を介し嵌合させて回転自在に且つ該ボルト11の頭部11aと矯正ローラ取付座10との間でボルト11の軸方向に移動(変位)できるように支持させてある。又、該矯正ローラ2の外周面には溶接ワイヤ1を沿わせるための溝14が形成されている。上記矯正ローラ取付座10は、スライド部材15の端面(ワイヤ送給路側端面)に固定してあり、該スライド部材15は、上記係止用フレーム6に上端部を取り付けて矯正ローラ取付用フレーム7と平行に垂下されている上記2本の平行配置のスライド軸8に両端部が遊嵌されており、該スライド部材15とともに矯正ローラ取付座10が2本のスライド軸8に沿い昇降することにより、大径の矯正ローラ2が上方の2つの矯正ローラ3,3aに対し近接、離反する方向である上下方向に移動できるようにしてある。
【0021】
一方、上記矯正ローラ移動機構5は、係止用フレーム6の中央部分の他端側に開口させた切欠部6aに挿入させるようにした目盛17付き調整ねじ16と、該調整ねじ16の上端部に螺合させて下端面を係止用フレーム6の上面に係止させるようにすると共に、調整ねじ16の調整ねじ支持部材20と係止用フレーム6との間における長さを調整できるようにする調整用つまみ18と、上記調整ねじ16の下端部に上端部を螺着させた調整ねじ支持部材20の下端部を、前記スライド部材15を介して矯正ローラ取付座10に一端側を固定した矯正ローラ取付座支持部材21の他端部にヒンジ軸22で上下方向に回動可能に連結してなる屈伸式操作ロッド19と、2本のスライド軸8の外側に配置して係止用フレーム6の下面とスライド部材15の上端面との間に圧縮して介装させた弾性構造体としてのばね23と、係止用フレーム6の切欠部6aの片側に沿うように他端側へ張り出させたガイド部材24とからなる構成としてある。これにより、調整ねじ16の長さを目盛17を見ながら調整して操作ロッド19をヒンジ軸22で屈曲させ、調整ねじ16を係止用フレーム6の切欠部6aに挿入させて、調整用つまみ18を係止用フレーム6に係止させるようにすれば、ばね23の弾力に打ち勝って調整ねじ支持部材20、矯正ローラ取付座支持部材21を介し、スライド部材15と矯正ローラ取付座10がスライド軸8に沿い上昇させられて、大径の矯正ローラ2が2つの矯正ローラ3,3aに近接させられるようにしてある。又、調整用つまみ18を引き上げるようにして係止用フレーム6の切欠部6に沿い倒して係止用フレーム6から離脱させるようにすることにより、スライド軸8の外側のばね23の弾力により大径の矯正ローラ2が2つの矯正ローラ3,3aから離反するようにしてある。
【0022】
なお、図中25は調整用つまみ18を係止させるために係止用フレーム6の切欠部6a側に設けたストッパー、26はスライド軸8の下端に設けてあるストッパー、27は出口案内ローラであり、矯正ローラ取付用フレーム7に、前記矯正ローラ2,3,3aの場合と同様なボルト11を介して回転自在に且つボルト11の軸方向に変位可能に取り付けられている。
【0023】
以上の構成において、溶接ワイヤ1の交換など、溶接ワイヤ1の段取り替えのため、矯正ローラ2と3,3aとの間を開くようにするときは、上記調整用つまみ18を掴んで矯正ローラ2が矯正ローラ3,3aに接近する方向へ移動させて、該調整用つまみ18の下端部がストッパー25から外れるようにする。すなわち、図1及び図2(イ)において、調整用つまみ18を上方へ引き上げるようにして、調整用つまみ18の下端がストッパー25よりも上方に位置するようにする。次に、この状態から調整用つまみ18を掴んだまま調整ねじ16が係止用フレーム6の切欠部6aから外れる方向へヒンジ軸22を中心に回動させるようにする。これにより調整用つまみ18と調整ねじ16は、係止用フレーム6から離脱させられ、矯正ローラ移動機構5の係止が解除されることになる。
【0024】
上記調整用つまみ18を掴んで調整ねじ16を倒すことにより、図2(イ)の状態から図4に示す状態になると、矯正ローラ移動機構5の2本のスライド軸8に沿わせて係止用フレーム6とスライド部材15との間に介装されているばね23の弾性によりスライド部材15がスライド軸8に沿い移動させられる。これにより、スライド部材15はスライド軸8端部のストッパー26に当たるまで移動させられる。このスライド部材15の移動により、該スライド部材15に取り付けられている矯正ローラ取付座10を介して大径の矯正ローラ2は溶接ワイヤ1から離反した状態になる。これにより、矯正ローラ2と3,3aとの間に挟まれていた溶接ワイヤ1は、上記矯正ローラ2と3,3aとの間から容易に取り外すことができる。
【0025】
次に、別の溶接ワイヤ1を各小径の矯正ローラ3,3aの溝14に沿わせると共に、下流側に位置させてある出口案内ローラ27の溝14に沿わせるように通した後、図4に示す状態にある調整用つまみ18を調整ねじ16とともにヒンジ軸22を中心に回動させ、調整ねじ16をスライド軸8と平行になるように操作ロッド19を屈曲させるようにする。しかる後、調整ねじ16の部分をガイド部材24に沿わせながらばね23の弾力に抗して調整用つまみ18を引き上げて調整ねじ16を係止用フレーム6の切欠部6a内に挿入させ、図2(イ)のように、調整用つまみ18をストッパー25に係止させて係止用フレーム6上に載置させるようにする。これにより、操作ロッド19が上記調整ねじ16と一体的に引き上げられることから、スライド部材15と矯正ローラ取付座10を介して矯正ローラ2は小径の2つの矯正ローラ3と3aに近接する方向へ移動させられる。この際、調整ねじ16の長さを一定にしておくことにより、大径の矯正ローラ2を、2つの矯正ローラ3,3aから離反する方向へ移動させる前の位置へ正しく復帰させることが容易にできることになり、段取り替え時の再現性を容易に確保することができる。
【0026】
このように、本発明の溶接ワイヤ矯正装置によれば、調整用つまみ18を、係止用フレーム6から離脱させたり、係止用フレーム6に係止させたりする操作を行うだけで大径側の矯正ローラ2を2つの小径側の矯正ローラ3,3aに近接、離反させることができ、調整ねじ16の長さを一定にしておくことにより、大径側の矯正ローラ2を元の位置に常に正しくセットできるという再現性を確保しながら、ばね23の作用、操作ロッド19の屈伸作用により溶接ワイヤ1の着脱を容易に行わせることが可能となる。
【0027】
上記において、調整ねじ16の長さを、該調整ねじ16に付けた目盛17を見ながら調整することにより、小径の矯正ローラ3,3aに対する大径の矯正ローラ2の位置関係を任意に調整することができ、溶接ワイヤ1の矯正時の曲げ角度を任意に調整させることができることになる。
【0028】
又、本発明の溶接ワイヤ矯正装置は、溶接ワイヤ矯正機構4として、大径矯正ローラ2と、該大径矯正ローラ2の上流側と下流側に配置され且つ大径矯正ローラ2よりも小径の小径矯正ローラ3,3aとからなる構成としてあるので、特に鋼製の溶接ワイヤ1を矯正する場合に、溶接ワイヤ1の大径矯正ローラ2への接触面圧を小さくすることができ、溶接ワイヤ1の擦りを少なくすることができる。特に、上記溶接ワイヤ1がアルミニウムなどの軟質金属の場合には、溶接ワイヤ1の削り屑の発生を抑えることができ、該削り屑がワイヤスプールに詰まることによる溶接不能を防止することができる。又、溶接ワイヤ矯正機構4の下流側位置に、曲り癖が直された溶接ワイヤ1をワイヤ供給装置にガイドする出口案内ローラ27を設けるようにした構成としてあるので、出口位置での溶接ワイヤ1の位置を安定させることができて、溶接ワイヤ1とワイヤ供給装置との間の擦れを少なくすることができる。
【0029】
更に、係止用フレーム6に切欠き19と、該切欠き19から調整ねじ16が抜け出すのを防ぐ係止用ストッパー25を設けるようにした構成としてあることから、調整ねじ16の係止用フレーム6への係止と該係止の解除を短時間で容易に行うことができる。
【0030】
更に又、大径矯正ローラ2を、ボルト11の軸方向に移動自在に取り付けると共に、各小径矯正ローラ3,3a及び出口案内ローラ27もボルト11の軸方向に移動自在に取り付けるようにした構成としてあるので、溶接ワイヤ矯正機構4に通す溶接ワイヤ1が蛇行していたとしても、上記各矯正ローラ2,3,3a及び出口案内ローラ27を溶接ワイヤ1の蛇行に対応させて移動させることができ、蛇行する溶接ワイヤ1の曲り癖を直すことができる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、一例として、大径矯正ローラ2を溶接ワイヤ1に対して移動可能にした場合について説明したが、矯正ローラ移動機構5と同様な機構を小径の矯正ローラ3,3a側に用いるようにして、大径の矯正ローラ2を固定させるようにしたり、小径の矯正ローラ3,3a側と大径の矯正ローラ2側の双方を同様な機構で移動できるようにしてもよいこと、ワイヤ矯正機構4を大径矯正ローラ2と2つの小径矯正ローラ3,3aとの組み合わせとした場合について説明したが、矯正ローラ2,3の個数を適宜増減した構成のものとしてもよいこと、調整ねじ16に調整用つまみ18を螺合させて調整ねじ16の長さを調整するようにした場合を示したが、調整ねじ16と調整用つまみ18を一体にして調整ねじ16の調整ねじ支持部材20へのねじ込み深さを調整するようにしてもよいこと、各矯正ローラ2,3,3a及び出口案内ローラ27にスライドブッシュ13を介してボルト11の軸方向に移動できるようにした場合を示したが、これに限定されるものではなく、同様の移動動作が行えるものであれば、他の手段を採用するようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 溶接ワイヤ
2 大径矯正ローラ(矯正ローラ)
3,3a 小径矯正ローラ(矯正ローラ)
4 溶接ワイヤ矯正機構
5 矯正ローラ移動機構
6 係止用フレーム
6a 切欠部
7 矯正ローラ取付用フレーム
8 スライド軸
10 矯正ローラ取付座
11 ボルト
16 調整ねじ
18 調整用つまみ
19 屈伸式操作ロッド
22 ヒンジ軸
23 ばね(弾性構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備える、溶接ワイヤを複数の矯正ローラ間に通して矯正させる溶接ワイヤ矯正装置において、上記少なくとも一方の矯正ローラを、矯正ローラ取付座に回転可能に支持させて、該一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して上記矯正ローラ間に送給される溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位できるようにし、且つ上記一方の矯正ローラを矯正ローラ取付座を介して溶接ワイヤに近接したり離反する方向へ変位させるための矯正ローラ移動機構を、固定側のフレームに、該矯正ローラ移動機構を固定側のフレームから離脱させたときに上記一方の矯正ローラが溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるよう離脱可能に係止できるようにしたことを特徴とする、溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項2】
溶接ワイヤ矯正機構における複数の矯正ローラを小径の矯正ローラとすると共に、上記複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラを大径の矯正ローラとし、且つ矯正ローラ取付座を介して矯正ローラを変位させる矯正ローラ移動機構に、矯正ローラ取付座を溶接ワイヤから離反する方向へ変位するよう付勢する弾性構造体を備えた請求項1記載の溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項3】
矯正ローラ移動機構を、固定側のフレームに取り付けたスライド軸と、矯正ローラ取付座を取り付けて上記スライド軸に沿い溶接ワイヤに近接したり、離反する方向へ移動できるようにしたスライド部材と、該スライド部材に一端側を取り付け、且つ他端側を上記固定側のフレームに離脱可能に係止できるようにした操作ロッドと、上記スライド部材を溶接ワイヤから離反する方向へ付勢する弾性構造体とを備えてなる構成とした請求項1又は2記載の溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項4】
操作ロッドの他端側に、調整用つまみを螺合して取り付け、調整ねじの長さを任意に調整して溶接ワイヤに対する矯正ローラの近接する方向への移動量を調整できるようにした請求項3記載の溶接ワイヤ矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194419(P2011−194419A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61970(P2010−61970)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】