説明

溶接作業装置

【課題】
アルミ管継手の溶接を自動で簡単に行なえる溶接作業装置を提供する。
【解決手段】
溶接する主管3aと枝管3bとの溶接条件を入力する入力部101と、XYZ軸周りに回転可能で、ワーク3の姿勢を変更する三次元回転台1と、該三次元回転台1を駆動する回転台駆動部1a,1b,1cと、溶接トーチ4を下向きに保持する溶接トーチ保持部2dと、入力部101からの入力情報に基づいて回転台駆動部1a,1b,1cを制御する制御部106とを備え、入力部101からの情報に基づいて、全ての溶接箇所6の絶対座標系における座標位置を演算し、溶接トーチ4の中心線が常に絶対座標系のXZ平面上に位置させ、かつ、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aのなす線分を溶接線7としたとき、溶接線7がほぼXY平面に含まれるように前記回転台駆動部1a,1b,1cの三軸回転条件を演算し、回転台駆動部1a,1b,1cを回転制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業を補助する溶接作業装置であって、特に、主管とその側面から突出する枝管との接合部を簡単に溶接が行なえる溶接作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、溶接作業の自動化が進んでいる。例えば、産業用ロボットマニピュレータを用いた、自動車等のボディの溶接が挙げられる。しかしながら、雨樋等に使用されるアルミ管同士の溶接においては、自動化が行われていない。そのため、生産性の向上のために、アルミ管同士を自動で溶接できる溶接作業装置の開発が望まれている。
【0003】
ところで、アルミ管等の主管および枝管からなるワークの接合としては、溶接、接着、圧着、ビス止め等の種々の方法が挙げられる。特に、管同士を溶接してL字型、T字型、Y字型等の製品を得るには、溶接するワークの向きを何度も置き換えて作業をする必要がある。そのため、溶接の継ぎ目や溶接ガスによる変色等が発生し、外観上の見栄えが悪くなるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、ワークを溶接する準備段階として、先ず、ワークを回転テーブルに載せ、これを一定速度で回転させながら、その動作を画像センサおよびレーザ変位計で読み取り、溶接経路を演算測定し、その測定結果に基づいて、回転テーブルと多関節ロボットの先端にある溶接トーチとを駆動制御する溶接作業装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−103039号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶接作業装置は、回転テーブルと多関節ロボットの2つの駆動対象を備えていることから、その振り分け制御動作が複雑になり、制御データ作りに時間を要することになる。
【0006】
また、溶接線の決定に画像センサおよびレーザ変位計を用い、かつ、多関節ロボットを用いるため、高価な溶接作業装置になる。したがって、特許文献1の溶接作業装置は、小ロット多品種の生産には向かず、このような小ロット多品種の生産に最適な溶接作業装置の出現が望まれているところである。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、簡単な構成によって溶接作業を支援でき、小ロット多品種生産に最適な溶接作業装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、溶接するワークの溶接条件を入力する入力部と、垂直軸となるZ軸、このZ軸に直交する水平軸となるY軸、および前記Y軸に直交するX軸の三軸周りに回転可能で、ワークの姿勢を変更する三次元回転台と、該三次元回転台を駆動する回転台駆動部と、溶接トーチを下向きに保持する溶接トーチ保持部と、前記入力部からの入力情報に基づいて前記回転台駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記入力部からの情報に基づいて、全ての溶接箇所の絶対座標系における座標位置を演算し、溶接トーチの中心線が常に絶対座標系のXZ平面上に位置させ、かつ現在の溶接箇所と次の溶接箇所のなす線分を溶接線としたとき、前記溶接線がXY平面に平行な平面で区切られる所定の許容幅に含まれるように前記回転台駆動部の三軸回転条件を演算し、前記回転台駆動部を回転制御することを特徴とする。
【0009】
ここで、溶接方式としては、溶接アークによる弊害が生じるおそれのある溶接方式ならば、特に限定されるものではない。例えば、TIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接などが例示でき、これらのいずれの溶接方式にも適用することができる。
【0010】
また、入力部に入力される溶接条件としては、コンピュータのキーボードから直接入力される情報や外部より通信部を介して入力される情報も含まれる。これらの情報は、例えば、主管とその側面に接合する枝管とからなるT字型やY字型などの継手管の場合、主管と枝管のなす角度や直径などである。また、入力部には、三次元回転台の可動範囲情報や溶接トーチを保持して稼動するマニピュレータの可動範囲情報が入力される。これらの情報により、例えば、XYZの絶対座標系における溶接位置の座標を演算し、また、溶接トーチの動作計画をすることができる。
【0011】
また、制御部は、マイクロコンピュータのCPU、ROM、RAMから構成され、さらにその他の記憶部を備えている。この制御部では、入力部から入力した溶接条件に基づいて、溶接線演算部で溶接線の位置情報を演算する。また、三次元回転台の回転角度演算部により、回転台駆動部の三軸回転条件を演算する。さらに、マニピュレータの制御演算部により、溶接トーチを保持して互いに直交する三軸X,Y,Z方向に沿って移動可能とするマニピュレータの駆動制御を行なう。
【0012】
なお、「溶接線がXY平面に平行な平面で区切られる所定の許容幅に含まれる」とは、溶接線が、ほぼXY平面内に含まれることを意味する。溶接トーチおよび溶接線をほぼXY平面内に含まれるように設定することで、アークが溶接線以外の部分に当たるのを防止するためである。
【0013】
さらに、溶接トーチを下方向に向けることでシールドガスが重力にしたがって広がり、溶接トーチ先端から発生するアークが安定する。また、溶接トーチの中心線を常に絶対座標系のほぼXZ平面上に位置させ、かつ現在の溶接箇所と次の溶接箇所のなす線分を溶接線としたとき、溶接線がほぼXZ平面内に含まれるように回転台駆動部の三軸回転条件を演算するようにしたので、溶接線に対して溶接トーチが傾く角度と傾く方向を一定にして溶接電流などのパラメータを設定しやすくできる。
【0014】
なお、溶接トーチ保持部は、溶接トーチを下向きに保持するが、溶接トーチ保持部は、マニピュレータによって、溶接トーチを互いに直交する三軸X,Y,Z方向に沿って移動可能か否かを問わない。本発明は、三次元回転台の三軸回転条件を制御して、溶接トーチのアークを溶接線以外に当たらないようにすることを本質的事項としているからである。
【0015】
また、現在の溶接箇所と次の溶接箇所のなす線分を溶接線としたとき、溶接線がほぼXZ平面内に含まれるようにしているので、アークが溶接箇所以外の部分に当たるのを防ぎ、アルミ管等の金属光沢が損失するのを防止できる。
【0016】
また、現在の溶接箇所のZ座標よりも次の溶接箇所のZ座標が小さく(低く)なるようにする。また、溶接トーチの中心線を前記絶対座標系XYZのXZ平面に平行な平面で区切られる前記許容幅内で、前記溶接線に対して溶接トーチの進行方向と逆方向に所定角度傾斜した姿勢で溶接できるように、回転台駆動部の三軸回転条件を設定する。
【0017】
上記構成によると、次の溶接箇所が下向きになり、また、アークが次の溶接箇所の方向に広がるため、溶接が終了した箇所のビードへのアークによる影響をなくすことができる。
【0018】
また、制御部は、少なくとも以下の判定式を入力し、各溶接位置でこれらの判定式を満たすように前記三次元回転台の三軸回転条件を演算する。
(ア)|現在の溶接箇所のY座標−次の溶接箇所のY座標|<L(mm)(但し、Yは絶対座標系のY座標、LはX軸両側に持たせた許容幅)
(イ)現在の溶接箇所のZ座標>次の溶接箇所のZ座標
【0019】
さらに、三次元回転台の機構上、X軸、Y軸の回転角度が制限されている場合もあるので、これらの制限事項も入力して回転条件を演算することもできる。すなわち、制御部は、以下の判定式を入力し、各溶接位置でこれらの判定式を満たすように前記三次元回転台の三軸回転条件を演算する。但し、A,Bは、三次元回転台のベース中央を原点とした作業座標系の各軸XYZの反時計周りの回転角を正、時計周りの回転角を負としたときの角度である。
(ウ)−A≦X軸の回転角度≦A(但し、0°<|A|<180°)
(エ)−B≦Y軸の回転角度≦B(但し、0°<|B|<90°)
【0020】
また、制御部は以下の手順により動作計画を実行することができる。つまり、制御部は、
1)溶接位置ごとに、前記三次元回転台のZ軸を360°回転させながら、各Z軸角度において前記判定式を満たすワーク姿勢を取れるか否かを判定し、判定式を満たす場合と満たさない場合とに区分し、
2)すべての溶接位置に対する前記1)の計算が終了した時点で、最初の溶接位置から最終の溶接位置まで、Z軸角度の変化率を所定値以下に保ちながら前記判定式を満たすZ軸角度の系列を選択して前記三次元回転台の三軸回転条件の動作計画を行なう。
3)前記最初の溶接位置から最終の溶接位置まで、前記判定式を満たすZ軸角度の系列を選択することができずに不連続となるか、あるいは、前記判定式を満たすZ軸角度の系列が連続する場合でも、前記Z軸角度の変化率が所定値を越える場合には、前記(ア)式の許容幅Lを拡大して、前記1)のZ軸角度の分類から再計算して動作計画を行ない、前記判定式を満たすZ軸の範囲が溶接位置の移動に対して連続となるように動作計画を実行する。
【0021】
上記構成によると、溶接箇所は、全ての判定式を満たす動作可能領域がZ軸回りに連続する場合と、途中で不連続となり、これを補うために。不連続となる動作可能領域を結ぶ条件付の動作可能領域を通る場合とがある。
【0022】
つまり、溶接トーチの中心線は絶対座標系のXZ平面内で溶接トーチの進行方向と逆方向に所定角度傾斜した姿勢で連続して溶接できる場合と、このような動作可能領域から、溶接トーチが前記XZ平面内からわずかに外れて進行する条件付の動作可能領域を通る場合とがある。このような条件付の動作可能領域を通る場合でも、溶接トーチは極力溶接線に沿って移動するので、アークの金属表面への影響を極力抑えて溶接することができる。
【0023】
特に、主管とその側面に接合する枝管とからなる継手管の溶接作業において、本発明に係る溶接作業装置を使用すれば、自動化溶接が熟練を要することなく簡単に行なえる。また、金属表面にアークの影響が大きく出るアルミ管では有効な手段となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によると、主管と枝管のなす角度の違いや直径、ワークの溶接箇所に溶接トーチを傾けて当てる際の溶接トーチの傾く角度に拘わらず、T字型やY字型といったワークを溶接することができる。
【0025】
また、ワークの形状のデータを予め入力しておくだけで、溶接箇所の座標を演算し、これに基づいて装置各部の動作計画を自動的に行なうので、現物でのティーチングが不要となる。そのため、小ロット・多品種の製品の溶接を効率よく行なうことができる。特に、アルミの溶接は熟練者が必要な分野であるが、溶接経験が無くても、形状を指定することで幅広い溶接が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
〔溶接作業装置の構成〕
図1は本実施形態における溶接作業装置の構成ブロック図である。図に示すように、本実施形態の溶接作業装置は、溶接するワークの溶接条件等を入力する入力部101と、垂直軸となるZ軸、このZ軸に直交する水平軸となるY軸、および前記Y軸に直交するX軸の三軸周りに回転可能で、ワーク3の姿勢を変更する三次元回転台1と、該三次元回転台1を駆動する回転台駆動部1a,1b,1cと、溶接トーチ4を鉛直下向きに保持する溶接トーチ保持部2dと、溶接トーチ4を互いに直交する三軸X,Y,Z方向に沿って移動可能とする直交座標形マニピュレータ2と、前記入力部101からの入力情報に基づいて前記回転台駆動部1a,1b,1cおよび溶接トーチ4の移動を制御する制御部106とを備えている。
【0028】
入力部101に入力される溶接条件としては、コンピュータのキーボードから直接入力される情報や、外部より通信部を介して入力される情報も含まれる。これらの情報は、例えば、主管3aとその側面に接合する枝管3bとからなるT字型やY字型などの継手管の場合、主管3aと枝管3bのなす角度や直径などである。
【0029】
また、入力部101には、三次元回転台1の可動範囲情報や、溶接トーチ4を保持して稼動する直交座標形マニピュレータ2の可動範囲情報が入力される。これらの情報により、例えば、XYZの絶対座標系における溶接箇所6の座標を演算し、また、溶接トーチ4の動作計画をすることができる。
【0030】
また、制御部106は、マイクロコンピュータのCPU、ROM、RAMから構成され、さらに、その他の記憶部を備えている。この制御部106では、入力部101から入力した溶接条件に基づいて、溶接線演算部106aで溶接線7の位置情報を演算する。また、三次元回転台1の回転角度演算部106bにより、回転台駆動部1a,1b,1cの三軸回転条件を演算する。
【0031】
また、直交座標形マニピュレータ2の制御演算部106cにより、溶接トーチ4を保持して互いに直交する三軸X,Y,Z方向に沿って移動可能とする直交座標形マニピュレータ2の駆動制御を行なう。
【0032】
さらに、制御部106では、モニタ等の表示部107に三次元回転台1の動作や直交座標形マニピュレータ2の動作を確認するためのシミュレーションを視覚的に表示制御する。
【0033】
溶接対象となるワーク3は、T字型やY字型といった継手管、特にアルミ管である。アルミ管の溶接箇所6、すなわち、主管3aとその側面から突出する枝管3bとの接合部が自動で溶接される。溶接方式は、TIG溶接であるが、これに限定されるものではなく、プラズマ溶接やレーザ溶接などのアーク溶接であってもよい。
【0034】
本実施形態の溶接作業装置は、図2および図3に示すように、三次元回転台1と直交座標形マニピュレータ2とを備えている。直交座標形マニピュレータ2は、ワーク3の溶接箇所6の溶接を、常に鉛直下向きに行なえるように、三次元回転台1の上方を囲うように設置されている。
【0035】
三次元回転台1は、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てるために、現在溶接する溶接箇所6が鉛直上向きになるように、溶接の対象であるワーク3の姿勢を変更する。ワーク3の溶接箇所6を鉛直上向きにすることにより、溶接トーチ4から発生するアーク4aがワーク3である主管3aと枝管3bに均等に当たるため、溶接作業が行ないやすくなる。また、ワーク3の姿勢を変更することによって、溶接を行なう際に、ワーク3へのアーク4aの当たり方を調整することもできる。
【0036】
三次元回転台1は、図2に示すように、3つの回転軸(X軸、Y軸、Z軸)を持ち、これら3つの回転軸の回転によってワーク3の姿勢を変更する。三次元回転台1のZ軸の回転を与えるZ軸モータ1cにはダイレクトドライブモータが使用され、X軸およびY軸の回転を与えるX軸モータ1aおよびY軸モータ1bには、ステッピングモータが使用されている。
【0037】
直交座標形マニピュレータ2は、図3に示すように、溶接トーチ4の位置決めを行なうためのX軸、Y軸、Z軸の3つの方向への平行移動を可能とする直動スライダ2a,2b,2cを備える。また、溶接トーチ4と三次元回転台1のフレームおよびワーク3との接触を回避するために、直交座標形マニピュレータ2の手先部分には、ステッピングモータを用いた回転関節2eを有する手先リンク2dが備えられる。
【0038】
手先リンク2dは溶接トーチ保持部を構成する。手先リンク2dの先端には、溶接トーチ4が鉛直下向きに取り付けられている。溶接トーチ4を鉛直下向きに取り付けることで、溶接トーチ4から排出されるシールドガスが重力にしたがって下方に広がり、溶接トーチ4の先端から発生するアーク4aを安定させることができる。
【0039】
本実施形態では、ワーク3の溶接動作の計画を行なうために、三次元回転台1と直交座標形マニピュレータ2のそれぞれに作業座標系を設定する。
【0040】
三次元回転台1に設定した作業座標系の三軸(X軸、Y軸、Z軸)の向きは、垂直方向をZ軸、このZ軸に直交する水平方向をY軸、および、前記Y軸に直交する方向をX軸とする。すなわち、この三軸は、図2に示すように、三次元回転台1の3つの回転軸(X軸、Y軸、Z軸)とそれぞれが同じ方向となる。なお、作業座標系の三軸(X軸、Y軸、Z軸)の原点は、三次元回転台1の架台の中央である。
【0041】
直交座標形マニピュレータ2に設定した作業座標系は、図3に示すように、鉛直方向をZ軸、水平方向をY軸、Y軸およびZ軸と直交する方向をX軸とする座標系である。この座標系の原点は、直交座標形マニピュレータ2のX軸方向の直動スライダ2aの移動距離が0mmとなる位置である。
【0042】
〔ワークの溶接動作を行なうための条件式〕
ワーク3の溶接は、TIG溶接を用いて行われている。TIG溶接では、フィラワイヤ9と呼ばれるワーク3とほぼ同じ材質の棒を、溶融した溶接箇所6に充填することで溶接が行われる。溶接の結果として、溶接線7上には、ビード4bと呼ばれる鱗状の溶着金属が形成される。溶接作業では、高い品質を持つ製品の基準として、ビード4bの幅や高さが均一であることや、ビード4bが金属光沢を失っていないことが挙げられる。また、ワーク3の溶接箇所6は、ワーク3の周囲を囲むように線を形成している。この線を溶接線7とする。
【0043】
本実施形態では、溶接の結果として得られるビード4bの形成において、特に、アーク4aの溶解作用によるワーク3の表面への影響を最小限にし、金属光沢の損失が無いビード4bを形成できるように溶接トーチ4の姿勢やアーク4aの当たる範囲を考慮して、ワーク3の姿勢変更を行なう。
【0044】
三次元回転台1の各軸の回転方向は、図4に示すように、架台1eの中央を原点とした作業座標の各軸の正方向から三次元回転台1を見た状態で、反時計回りの回転を正の向き、時計回りの回転を負の向きとする。
【0045】
図4に示すように、本実施形態で使用する三次元回転台1は、その機構上、X軸とY軸の回転を実現する回転軸の可動範囲に制限がある。三次元回転台1のX軸は、正負共に120°まで回転することができる。X軸の可動範囲の制限は、ワーク3を回転させた際に、枝管3bが三次元回転台1のフレームに接触することを防ぐためである。
【0046】
Y軸が回転できる範囲は、正の向きに45°、負の向きに60°まで回転することができる。この制限は、手作業でワーク3の溶接を行なう際に、作業者がワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てるときの姿勢から設計された三次元回転台1の機構上の制限である。なお、三次元回転台1のZ軸の回転は、回転角度の制限を持たない。そのため、三次元回転台1のZ軸は、正の向き、負の向き共に360°自由に回転することができる。
【0047】
以上に挙げた三次元回転台1の可動範囲の制限から、本実施形態で行なう溶接動作計画では、三次元回転台1を可動範囲内で動作させるために、以下のような条件式を設定した。
−120°≦X軸の回転角度≦120° ・・・(ウ)
−60° ≦Y軸の回転角度≦45° ・・・(エ)
【0048】
なお、X軸,Y軸の回転角度の制限は、上記例に限定されるものではない。例えば、X軸の回転角度は、三次元回転台の機構が理想的なものである場合、正負180°の範囲内とすることができる。また、Y軸の回転角度は、同様に正負90°の範囲内に設定することができる。
【0049】
次に、直交座標形マニピュレータ2の可動範囲について説明する。
【0050】
図3に示すように、直交座標形マニピュレータ2は、3つの直動スライダ2a,2b,2cによって溶接トーチ4の位置決めを行なうことができる。これらは、全て可動範囲が400(mm)の同じ直動スライダを使用して実現されている。したがって、直交座標形マニピュレータ2の平行移動の可動範囲は、X軸,Y軸,Z軸方向にそれぞれ400(mm)となる。
【0051】
手先リンク2dに設けられた回転関節2eの回転可動範囲は、図5に示すように、絶対座標系のZ軸方向から見て正負共に90°までに制限される。これは、手先リンク2dに取り付けられる溶接トーチ4が、直交座標形マニピュレータ2のフレームに接触することを避けるためである。
【0052】
以上のことから、直交座標形マニピュレータ2を可動範囲内で動作させるために、以下のような条件式を設定した。
0(mm)≦直動スライダの移動距離≦400(mm) ・・・(3)
−90°≦回転関節の回転角度≦90° ・・・(4)
【0053】
〔アルミ平板自動溶接実験における溶接状況の再現〕
図6は、アルミ平板5の自動溶接実験の状況を模試的に示す斜視図である。この自動溶接実験では、溶接トーチ4を斜めに傾けた状態でアルミ平板5の溶接箇所8に当て、溶接トーチ4の傾き角度を一定に保ったまま、溶接対象であるアルミ平板5を移動させて溶接を行なう。この溶接では、アルミ平板5の表面にアーク4aが当たることによってアルミ平板5の表面の金属光沢が失われることを防いでいる。そのための方法として挙げられるのは、溶接対象であるアルミ平板5の溶接箇所8に対して、溶接トーチ4を傾けて当てていることである。
【0054】
例えば、溶接トーチ4を真上から溶接箇所8に当てた場合には、溶接が終了した箇所にアーク4aが当たってしまう。そのため、溶接トーチ4の進行方向と逆の方向に溶接トーチ4を傾けることによって、溶接が終了した箇所にアーク4aが当たることを防止できる。また、溶接トーチ4の先端が向く方向を固定し、アルミ平板5の溶接箇所以外の部分にアーク4aが当たらないようにすることもできる。傾けた溶接トーチ4の先端が、常に次の溶接箇所8aの方向を向いた状態となっていることによって、アーク4aは常に溶接線8a上に広がるようになる。これにより、溶接箇所以外のアルミ平板5の表面へのアーク4aの溶解作用による影響を防止できる。
【0055】
本実施形態では、アルミ平板5の自動溶接実験の状況と同様に、溶接が終了した箇所にアーク4aが当たらないようにすることと、溶接箇所以外のワーク3の表面にアーク4aが当たらないようにする。そのために、本実施形態では、溶接トーチ4を溶接箇所6に対して傾け、更にアーク4aが広がる方向を固定することで溶接箇所以外の箇所に当たることを防止する。これらのことによって、ワーク3の自動溶接でも金属光沢の損失が無いビード4bを得られると考えたためである。
【0056】
先ず、溶接箇所6に溶接トーチ4を傾けて当てることについて説明する。
【0057】
本実施形態では、ワーク3の溶接箇所6に、溶接トーチ4を当てるための方向を表す方向ベクトルを使用する。この方向ベクトルRの求め方を図7に示す。
【0058】
ワーク3の溶接箇所6において、主管3aの法線Hと枝管3bの法線Hを求め、それら2つの法線の二等分線をとることによってできたベクトルが方向ベクトルRとなる。この方向ベクトルRは、溶接トーチ4をワーク3の溶接箇所6に真上から当てるために計画された方向ベクトルである。
【0059】
この方向ベクトルRが、鉛直上向きとなるように三次元回転台1でワーク3の姿勢を変更し、直交座標形マニピュレータ2の動作によって溶接トーチ4を鉛直上向きから溶接箇所6に当てた状況は、アルミ平板5の溶接実験において、溶接トーチ4を溶接箇所8に真上から当てた場合と同様にアーク4aが溶接箇所6に当たる。そのため、アーク4aの溶解作用とシールドガスのクリーニング作用の影響が溶接を終了した溶接箇所6におよぶことになる。そのため、溶接を終了した溶接箇所6が再び溶融し、ビード4bの金属光沢が失われることになる。
【0060】
本実施形態では、ワーク3の溶接箇所6に設定した方向ベクトルRを、鉛直上向きにした状態から、さらに、図8に示した絶対座標系のZ軸に対して角度φ傾ける。これによって、方向ベクトルRと絶対座標系のZ軸は角度φをなす(図9参照)。溶接トーチ4は、Z軸の正の方向から当てることになる。そのため、角度φは、溶接トーチ4をワーク3の溶接箇所6に当てた際に溶接トーチ4が傾く角度となる。
【0061】
次に、アーク4aの広がる方向をワーク3の溶接線7上にするための方法について説明する。図6に示したアルミ平板5の自動溶接実験の状況のように、溶接トーチ4を傾けてワーク3の溶接箇所6に当てた場合、溶接トーチ4の中心線と溶接線7のなす角度によって、アーク4aが広がる方向が変化する。
【0062】
図10は、溶接トーチ4の中心線とワーク3の溶接線7がなす角度が変化した様子を絶対座標系のXY平面で示したものである。ここでは、アーク4aが広がる領域を斜線部で示す。図10(a)に示すように、溶接トーチ4の中心線とワーク3の溶接線7が90°の角度をなす場合は、アーク4aの広がる領域となる斜線部が溶接箇所以外のワーク3の表面に広がってしまう。したがって、アーク4aが当たることによって溶接箇所以外のワーク3の表面が溶解して金属光沢を失うため、ワーク3の品質が落ちてしまう。
【0063】
また、図10(b)に示すように、溶接トーチ4の中心線とワーク3の溶接線7のなす角度が0°の場合、溶接トーチ4の中心線は、ワーク3の溶接線7に沿った状態となる。この場合は、アーク4aがワーク3の溶接線7上に広がるようになるため、溶接線以外の箇所にアーク4aが当たる範囲を最小限にできる。
【0064】
本実施形態では、図10(b)のように、溶接トーチ4の中心線がワーク3の溶接線7に沿う状態にする。ワーク3の溶接線7は曲線であるため、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aを結んだ線分に溶接トーチ4の中心線が沿う状態にすることで、アルミ平板5の自動溶接実験と同様の状態を作り出すことができる。
【0065】
また、溶接トーチ4は、鉛直下向きであることから、溶接トーチ4の中心線は、常に絶対座標系のXZ平面上にあると考える。したがって、方向ベクトルRを傾けることをXZ平面内で行ない、溶接トーチ4を傾く角度をXZ平面内で構成した。
【0066】
更に、本実施形態では、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aのなす線分を溶接線7と考え、ワーク3の溶接箇所6に設定した方向ベクトルR回りにθ回転してワーク3の姿勢変更を行なうことによって、溶接線7がXZ平面内に含まれるようにする(図9(b)参照)。これによって、溶接トーチ4の中心線と溶接線7のなす角度はφとなる。すなわち、図9(b)に示した方向ベクトルRを回転軸としてワーク3を回転させることで、溶接トーチ4と溶接線7がXZ平面内で角度φを構成する。
【0067】
以上のことから、本実施形態では、現在の溶接箇所6の座標と次の溶接箇所6aの座標を使用して、以下のような条件式を設定した。この条件式によって、アーク4aが広がる方向が溶接線7上になっていることを判定する。なお、この条件式のLは、アーク4aが広がる方向の許容幅である。
|現在の溶接箇所のY座標−次の溶接箇所のY座標|<L(mm) ・・・(ア)
【0068】
この条件を満たしている場合、アーク4aが溶接箇所以外に当たることを最小限にしており、ワーク3の表面への影響が最も少ない状態であると判断される(図11参照)。条件式に許容幅を持たせることによって、X軸の両側にL(mm)の幅を持たせ、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aを結んだ溶接線7がXZ平面の周囲L(mm)の範囲内にあれば条件式を満たすとする。
【0069】
また、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てた際に、溶接トーチ4の傾く方向は、ワーク3の溶接線7が傾く方向によって変化する。その溶接トーチ4の傾く方向の変化を、図12に示す。
【0070】
図12は、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aを結んだ溶接線7を、溶接トーチ4が存在する絶対座標系のXZ平面をY軸の正の方向から見たものである。ここで、溶接トーチ4の進行方向は、絶対座標系のX軸の正の方向とし、溶接トーチ4の進行方向は、図12中の上方に矢印で示されている。図12(a)のように、次の溶接箇所6aのZ座標が現在の溶接箇所6のZ座標よりも大きい場合、溶接トーチ4は、溶接トーチ4の進行方向となるX軸の正の方向に傾くことになる。この場合、溶接トーチ4から発生するアーク4aは、次の溶接箇所6aとは逆の方向、つまり、溶接が終了した溶接箇所6の方向へ広がることになる。したがって、アーク4aの溶解作用によって溶接が終了した箇所のビード4bが溶解し、ビード4bから金属光沢が失われてしまう。
【0071】
また、図12(b)のように、次の溶接箇所6aのZ座標が現在の溶接箇所6のZ座標よりも小さい場合、溶接トーチ4は、溶接トーチ4の進行方向とは逆となるX軸の負の方向に傾くことになる。この場合、溶接トーチ4から発生するアーク4aは、次の溶接箇所6aの方向に広がるため、溶接が終了した箇所のビード4bへのアーク4aによる影響を防止できる。
【0072】
したがって、本実施形態では、ワーク3の姿勢を変更することで溶接トーチ4が進行方向、つまり、次の溶接箇所6aがある方向とは逆の方向に傾くようにワーク3の姿勢を変更する。このような状態となるように、ワーク3の姿勢を変更して溶接線7を傾けることで、現在の溶接箇所6のZ座標よりも次の溶接箇所6aのZ座標を低くする。したがって、本実施形態では、溶接トーチ4を傾けるためのワーク3の傾き方向を決定するために以下の条件式を設定した。
現在の溶接箇所のZ座標>次の溶接箇所のZ座標 ・・・(イ)
【0073】
〔ワークの溶接箇所の座標と三次元回転台の回転角度の計算方法〕
上述したように、本実施形態で行なう動作計画では、ワーク3の姿勢を変更した後の現在の溶接箇所6の座標と、次の溶接箇所6aの座標によって動作の妥当性を判定する。したがって、動作計画の際に、ワーク3の溶接箇所6の座標を求める必要がある。
【0074】
また、ワーク3の溶接箇所6に、常に溶接トーチ4を傾けて当てるために、ワーク3の溶接箇所6に設定した方向ベクトルは、溶接動作中に常に絶対座標系のZ軸とXZ平面内で角度φを保っていなければならない。そこで、条件式の判定に使用するワーク3の溶接箇所6の座標の計算方法と、ワーク3の姿勢を変更する際の三次元回転台1の三軸の回転角度の計算方法について説明する。
【0075】
〔ワークの溶接箇所の座標の計算方法〕
ワーク3の溶接線7は、ワーク3の周囲を囲うように存在するが、ワーク3の溶接箇所6は特に枝管3bの円周上に存在する。このことから、本実施形態では、枝管3b上に溶接箇所6の座標を求めるための基準点6bをとることで溶接箇所6の座標を求めた。
【0076】
ワーク3の溶接箇所6の座標は、まず、図13に示すワーク3に設定した作業座標系上で求める。この作業座標系は、ワーク3の主管3aの中心線と枝管3bの中心線の交点を原点とする。また、ワーク3の主管3aの中心線とX軸は一致しており、枝管3bが傾いている方向を正の方向とした。
【0077】
Y軸は、ワーク3の側面方向に正の方向とする。また、枝管3bの中心線がXZ平面に位置するようにZ軸をおき、Z軸は枝管3bの伸びた方向に正の方向とする。ワーク3のT字型やY字型の形状から、主管3aの中心線と枝管3bの中心線は角度をなす。よって、溶接箇所6は、中心線の交点を原点として存在すると考え、作業座標系の原点は、主管3aの中心線と枝管3bの中心線の交点とした。
【0078】
図13には、ワーク3に設定した作業座標系と同時に、溶接箇所6の座標計算のために設定した基準点6bを示す。ワーク3の溶接箇所6の座標を求めるための基準点は、図13に示すように、枝管3bの先端の円周上に位置するとした。枝管3b上に設定した基準点から枝管3bの表面に沿った直線を引いた場合、その直線は必ず主管3aと交わることになる。
【0079】
本実施形態におけるワーク3の溶接箇所6の座標の計算では、主管3aの中心線と枝管3bの中心線が角度をなすこと、基準点6bと溶接箇所6が枝管3bの中心線に平行な直線で結べること、溶接箇所が主管3aと枝管3bの上に必ず同時に存在することの3つの条件から溶接箇所6の座標を求めた。
【0080】
ワーク3は、T字型のものとY字型のものがあり、主管3aと枝管3bの中心線のなす角は、ワーク3の作業座標系のX軸と枝管3bの中心線のなす角度であり、T字型は91.1°、Y字型は45°および75°である。
【0081】
ここでは、ワーク3の溶接箇所6の座標を(X,Y,Z)、枝管3bの先端にとった溶接箇所6の座標を求めるための基準点6bの座標を(x,y,z)とする。
【0082】
まず、枝管3bが主管3aと重なっている状態、つまり、主管3aの中心線と枝管3bの中心線の角度が0°の状態を考える(図14(a)参照)。この状態で、枝管3b先端の円周上に点をとり、枝管3bの長さをl、枝管3bの半径をrとする。また、枝管3bの円周上の点であることから、図14(b)に示した角度θを用いてB(x,y,z)の座標をワーク3の作業座標系上で表わすと以下のようになる。
=l ・・・(7)
=rcosθ ・・・(8)
=rsinθ ・・・(9)
【0083】
実際は、主管3aの中心線と枝管3bの中心線は角度θをなすことから、点Bをワーク3の作業座標系のY軸で回転させることにより基準点の座標が得られる。したがって、基準点の座標は、
=xcosθ+zsinθ ・・・(10)
=y ・・・(11)
=−xsinθ+zcosθ ・・・(12)
となる。ここで、使用した枝管3bの円周上の点を表す角度θは、枝管3bの円周上の基準点6bの位置を表している。したがって、角度θによって枝管3bの円周上にある溶接箇所6の位置を特定することができ、この角度を変更することによって全ての溶接箇所6の位置を求めることができる。
【0084】
次に、基準点6bの座標からワーク3の溶接箇所6の座標を求める。まず、ワーク3の主管3aの中心線と枝管3bの中心線が角度をなすことから、中心線の角度をθとすると以下の式を得ることができる。
(X−x)tanθ=Z−z ・・・(13)
【0085】
また、ワーク3の溶接箇所6と基準点6bが枝管3bの表面上で直線で結べることから、次の式を得ることができる。
Y=y ・・・(14)
【0086】
加えて、主管3aの直径をrとすると、ワーク3の溶接箇所6は必ず主管3a上にあることから、以下の式を得ることができる。
+Y= r ・・・(15)
【0087】
以上の(13)、(14)、(15)式を解くことによって、ワーク3に設定した作業座標系の上での溶接箇所6の座標(X,Y,Z)は以下のように表される。
【数1】

【0088】
ここで、溶接箇所6のZ座標には、符号の異なる2つの値が得られる。しかし、溶接箇
所6は主管3aの上側半分にしか存在しないことから、Z座標の値は正の値を選べばよい。
【0089】
〔三次元回転台の回転角度の計算方法〕
次に、三次元回転台1の回転角度の計算方法を説明する。
【0090】
ワーク3の溶接箇所6に対する溶接トーチ4の傾きは、溶接箇所6に設定した方向ベクトルRを絶対座標系のZ軸に対してXZ平面内で角度φ傾けることで作り出す。まず、上述した計算方法を用いてワーク3の溶接箇所6の座標を求める。ワーク3は三次元回転台1に取り付けられていることから、求めた溶接箇所6の座標を設定した絶対座標系の上で表わす。
【0091】
本実施形態では、ワーク3の溶接箇所6に設定した方向ベクトルRが、目標ベクトルRに一致するための三次元回転台1の三軸の回転角度を、ワーク3の姿勢変更のための角度とした。
【0092】
本実施形態で使用する三次元回転台1は、図15(a)に示すような機構を備える。よって、方向ベクトルRは三次元回転台1のX軸とY軸の回転を用いることで、Z軸の回転が加えられても、目標ベクトルの位置に移動させるようにワーク3の姿勢を変更することができる(図15(b)参照)。
【0093】
ワーク3の溶接線7をXZ平面に移動させるための方向ベクトルR回りの回転θによってワーク3の姿勢を変更し、ワーク3の表面へのアーク4aの影響を最小限にする場合、方向ベクトルR回りの回転角度は、三次元回転台1のZ軸の回転角度として表わすことができる。このことから、三次元回転台1のZ軸の回転角度をφとすると、
φ=φ ・・・(19)
と表わすことができる。
【0094】
また、三軸の回転によってワーク3の姿勢変更を行なう場合、三次元回転台1のX軸とY軸の回転によって方向ベクトルRの向きを変更することができることから、ワーク3の姿勢をひとつに決定するために、三次元回転台1のZ軸の回転を先に決定しておくことが必要となる。
【0095】
ワーク3の姿勢変更において、目標ベクトルR(x,y,z)は、絶対座標系のZ軸と角度φをなすことと、角度φが絶対座標系のXZ平面内で構成されることから、Rを以下のように表わすことができる。
(X,Y,Z)=(sinφ,0,cosφ) ・・・(20)
【0096】
溶接箇所6に設定した方向ベクトルR(x,y,z)は、絶対座標系上で表されたワーク3の溶接箇所6の座標を(X,Y,Z)と、方向ベクトルRの頂点T(x,y,z)から以下のように求められる。
=x−X ・・・(21)
=y−Y ・・・(22)
=z−Z ・・・(23)
【0097】
次に、方向ベクトルRを目標ベクトルRの位置に移動させるための三次元回転台1の回転角度を求める。ここで、絶対座標系のX軸の回転角度をφ、Y軸の回転角度をφとすると、X軸、Y軸、Z軸による回転行列Rφz、Rφy、RφRは、それぞれ以下のように表わされる。
【数2】

【0098】
これら3つの回転行列を用いて、方向ベクトルRを目標ベクトルRに一致させることから、以下の式を得ることができる。
=RφxφyφRR ・・・(27)
【0099】
この式を展開することによって、以下の3つの式を得ることができる。ここでは、sinθをS、cosθをCと略して記載する。θ、θの正弦、余弦を表わす場合にも同様に略して記載した。
【数3】

【0100】
これら3つの式をθ、θについて解くと、ワーク3の姿勢を変更する際の三次元回転台1のX軸とY軸の回転角度を以下のように求めることができる。
【数4】

【0101】
(31)、(32)式で求めたX軸の回転角度とY軸の回転角度は±の符号に応じて、それぞれ2つの値が求められるが、三次元回転台1の可動範囲に含まれる値を取るように角度の選択を行なう。
【0102】
〔動作計画法〕
次に、本実施形態で提案する動作計画法における、ワーク3の姿勢を変更するための三次元回転台1の動作計画方法と、溶接トーチ4の位置を決定するための直交座標形マニピュレータ2の動作計画法について説明を行なう。
【0103】
また、本実施形態で提案する動作計画法では、以下に示す順番でワーク3の溶接動作を計画する。
(1)ワーク3の姿勢を決定するための、三次元回転台1の三軸の回転角度の計画
(2)姿勢を変更されたワーク3の溶接箇所6にトーチを当てるための、直交座標形マニピュレータ2の3つの直動スライダの平行移動距離と手先リンク2dの回転角度の計画
【0104】
〔三次元回転台の動作計画〕
三次元回転台1のZ軸の角度を変数とすることで、X軸とY軸の角度の決定を行なう計算方法を説明した。この方法は、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を常に角度φだけ傾けて当てるための計算方法である(図9参照)。
【0105】
したがって、本実施形態では、(32)、(33)式から三次元回転台1のX軸とY軸の回転角度を決定するために、まず、三次元回転台1のZ軸の角度を決定しなければならない。その後、溶接箇所6の座標を座標変換によって求めることで、(ア)、(イ)式の判定を行なう。本実施形態では、図16に示す手順によって三次元回転台1の動作計画を行なった。
【0106】
〔動作計画のための条件を満たすワークの姿勢の選択方法〕
本実施形態におけるワーク3の姿勢は、上述で示した三次元回転台1のX軸とY軸の回転角度の計算方法から、三次元回転台1のZ軸の角度の値を決定することによって求めることができる。
【0107】
また、今回行なう動作計画法では、三次元回転台1の回転角度から座標変換によって溶接箇所6の座標を求めることによって、(ア)、(イ)式に示した溶接トーチ4を溶接箇所6に傾けて当てるための判定式と、溶接アーク4aによる枠の表面への影響を抑えるための判定式を判定することができる。
【0108】
同様に、(ウ)、(エ)式に示した三次元回転台1の可動範囲の判定式も判定することができる。
【0109】
したがって、すべての条件の判定式を判定するためには、三次元回転台1のZ軸の角度を決定しなければならない。よって、本実施形態で行なう動作計画では、まず、三次元回転台1のZ軸が取り得る全ての回転角度において、(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)式に示した判定式を満たすかどうかをワーク3の各溶接箇所6において判定し、全ての判定式を満たすワーク3の姿勢と、判定式をひとつでも満たさないワーク3の姿勢に分類する。その結果は、pgm(ポータブルグレイマップ)形式のデータを用いて、二次元平面に画像データとして表した。
【0110】
pgm形式の画像データでは、ひとつの数字が1ピクセルの色として認識され、GIMP(GNU Image Manipulation Program)等の画像の加工が行なえるソフトで読み込むことによって、画像として表示される。画像はグレイスケールとなるため、本実施形態では、数字の最大値を8として、数字が8のときは白色、0のときには黒色となるように設定した。本実施形態では、(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)式で示した判定式全てを満たすワーク3の姿勢を示す領域10の数値を7として薄い灰色、判定式をひとつでも満たさないワーク3の姿勢を示す領域11の数値を8として白色で表した。
【0111】
本実施形態では、上述した枝管3b上の基準点6bを求める方法で使用した、枝管3bの円周上の点を表わすための角度θを一度ずつ変更することによって、ワーク3の溶接箇所6の数を360箇所とした。また、ワーク3の各溶接箇所6で取り得るZ軸の角度を0〜359°とした。
【0112】
したがって、今回は溶接箇所6が360箇所、それぞれの溶接箇所6でのワーク3の姿勢が360あることから、360ピクセル×360ピクセルのpgm画像を作成した。このpgm画像によって、溶接箇所6毎に360の異なるワーク3の姿勢を作り出し、そのワーク3の姿勢を、全ての判定式を満たすワーク3の姿勢と、そうでないワーク3の姿勢に分類を行なった結果を確認した。
【0113】
図17で示したpgm画像では、全ての判定式を満たすワーク3の姿勢を示す領域を薄い灰色で表している。また、ひとつでも判定式を満たさない場合のワーク3の姿勢を示す領域を白色で表している。作成したpgm画像の縦軸は、上端から下端の方向へ溶接箇所6の数1〜360点目までを、横軸は、左端から右端の方向へ三次元回転台1のZ軸の角度0〜359°までを表わしている。
【0114】
ここで、例として示した図17におけるワーク3の形状は、主管3aの直径89(mm)、枝管3bの直径63(mm)の場合の異径T字型の画像である。また、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てる際の溶接トーチ4が傾く角度は20°、(ア)式の許容幅Lの値は0.05(mm)である。
【0115】
また、本実施形態では、上述した判定式(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)式を全て満たす場合のワーク3の姿勢を示す薄い灰色の領域を動作可能領域10と呼称する。また、判定式をひとつでも満たしていない場合のワーク3の姿勢を示す白色の領域を動作不可能領域11と呼称する。加えて、上述の三次元回転台1の可動範囲の説明において示したように、三次元回転台1のZ軸は360°自由に回転させることができる。したがって、本実施形態で行なう動作計画法では、作成した全てのpgm画像の右端と左端は連続していると考える。
【0116】
ワーク3の全ての溶接箇所6を次々と連続して溶接するためには、pgm画像に現れる動作可能領域10が上端から下端まで連続して存在していることが望ましい。例として示した図17のpgm画像においては、pgm画像の右端と左端がZ軸角度として連続していることから、動作可能領域10は連続しているといえる。しかし、図17に示すpgm画像から分るように、動作可能領域10は幅を持っている。したがって、この幅の中からZ軸角度をひとつに決定しなければならない。
【0117】
よって、本実施形態では、各溶接箇所の動作可能領域10を構成する三次元回転台1のZ軸の角度の最大値と最小値を調べ、それらの中点をとることでZ軸の角度をひとつに決定した。図18は、この方法で決定した三次元回転台1のZ軸の角度を表す線12を図17に加えたpgm画像である。この画像では、決定した三次元回転台1のZ軸の角度を示す線12が、動作可能領域10を表す薄い灰色の箇所の幅の中央を通っていることが確認できる。
【0118】
〔動作可能領域が不連続となる状況〕
異径T字型のワーク3の場合のpgm画像(図17参照)では、動作可能領域10が上端から下端まで連続している。これは、異径T字型の場合の溶接線7が枝管3bの円周に沿って円形になっているためである。しかし、同径管の場合は、図19に示すように、溶接線7が側面で90°に屈折する。このような場合、溶接線7が屈折する溶接箇所6に溶接トーチ4を当てた際は、それまで溶接を行なっていた溶接線7に対して90°方向の異なる位置に次の溶接箇所6の位置とすることになる。したがって、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6aの座標が(イ)式を満たすように動作計画を行った場合、次の溶接箇所6aの位置がXZ平面上に位置するようにするためには、溶接線7が屈折する箇所で三次元回転台1のZ軸の角度を90°回転させなければならない。
【0119】
また、三次元回転台1のZ軸の角度が大きく変更されるため、X軸とY軸の回転角度も大きく変更される。したがって、溶接線7の屈折がある同径のワーク3では、全ての溶接箇所6に動作可能領域10は存在するが、動作可能領域10は途中で分断された状態となる。また、動作可能領域10内で三次元回転台1のZ軸を決定したとしても、決定したZ軸角度を表わすわ線は途中で不連続になってしまう(図20参照)。
【0120】
また、(ウ)、(エ)式を満たす状態、つまり、三次元回転台1の可動範囲内でワーク3の姿勢変更を行ったとしても、(ア)、(イ)式を満たさない場合が考えられる。そのような場合には、溶接箇所6に動作可能領域10が存在しない範囲を持つ(図21参照)。したがって、動作可能領域10を持たない溶接箇所6が存在する場合にも動作可能領域10は不連続となり、決定したZ軸角度を表す線も不連続となる。
【0121】
以上のことから、ワーク3の溶接動作計画を行なうためには、動作可能領域10が上端から下端まで連続して存在し、かつ、決定したZ軸角度を表す線の連続で存在できるようなpgm画像を作成しなければならない。そのため、本実施形態では、(ア)式の許容幅Lを変更したpgm画像を作成した。
【0122】
図22は、直径140(mm)の同径T字型のワーク3において、(ア)式の許容幅Lを0.05(mm)、1.5(mm)とした場合のそれぞれのpgm画像である。図22(a)では動作可能領域10は不連続であり、決定したZ軸角度を表す線12が連続になるように引くことはできないが、図22(b)では、許容幅Lを広げることによって(ア)式を満たすワーク3の姿勢が増加したため、動作可能領域10は連続で存在し、決定したZ軸角度の線12も引くことができる。
【0123】
しかし、(ア)式の許容幅Lを広げるということは、ワーク3の溶接動作計画において、アーク4aの溶解作用によるワーク3の表面への影響を増大させるということである。よって、本実施形態では、アーク4aの溶解作用によるワーク3の表面への影響を極力小さくするために、(ア)式の許容幅Lが異なる2つのpgm画像を重ね合わせた画像(図23参照)を作成した。
【0124】
このpgm画像は、3つの異なる領域を持つため、三色にわけられている。一つめは、図22の(a)と(b)の両方の画像で動作可能領域10となる領域を表している薄い灰色の領域である。二つめは、許容幅Lの値を大きくした図22(b)の画像でのみ動作可能領域10となる濃い灰色の領域である。三つめは、図22の(a)と(b)の両方の画像で動作不可能領域11となる白色の領域である。本実施形態では、以後、2つのpgm画像を重ね合わせた画像においても薄い灰色で表される領域を動作可能領域10、白色で表される領域を動作不可能領域11と呼称する。また、濃い灰色で表される領域を、条件付き動作可能領域10aと呼称する。
【0125】
本実施形態では、まず、動作可能領域10内で三次元回転台1のZ軸の角度を決定し、動作可能領域10が不連続となる箇所でのみ、条件付き動作可能領域10a内で三次元回転台1のZ軸の角度を決定する。この方法によって、アーク4aの溶解作用によるワーク3の表面への影響を極力抑えることができる。
【0126】
〔動作可能領域が不連続となる場合の三次元回転台の角度の決定方法〕
次に、(ア)式の許容幅Lが小さい値の場合にワーク3の溶接線7が屈折していることや、三次元回転台1の動作範囲によって動作可能領域10が存在しないことで動作可能領域10が不連続となる場合の、三次元回転台1のZ軸の角度の計画方法について説明を行なう。
【0127】
pgm画像の動作可能領域10が不連続となる場合、本実施形態では、三次元回転台1のZ軸の角度を条件付き動作可能領域10aから決定する。その決定方法として、条件付き動作可能領域10aを通って動作可能領域10を結ぶ直線を引き、その直線に沿ってZ軸角度を決定した。
【0128】
直線を引くためには、まず、作成したpgm画像を図24に示すような二次元の座標系として考える。この二次元座標系では、X軸が三次元回転台1のZ軸の角度、Y軸がワーク3の溶接箇所の位置を表している。三次元回転台1のZ軸の角度を決定するための直線13は、この二次元座標系において、一次関数の直線として表わすことができる。
【0129】
本実施形態では、この直線13を引くために、直線13の傾きの値と、直線13の通過点を二次元座標系上で決定した。直線13の傾きの値は、直線13に沿ってZ軸の角度を決定した場合に、溶接箇所6が一点移動した際のZ軸の角度の変化量を決定する。
【0130】
本実施形態では、溶接箇所6を移る際の移動時間を1.0(s)、三次元回転台1の動作する速度を2.0(°/s)と設定し、この条件から求めた角度の変化量の最大値は2.0°とした。したがって、本実施形態では、角度の変化量が2.0°となるように直線13の傾きを0.5と設定した。また、直線13の通過点を決めることによって、二次元座標系上における直線13の位置を決定する。以後は、引く直線13が必ず通る点を、直線13を引くための基準点13cと呼称し、その二次元座標系上での座標を(X,Y)とする。
【0131】
三次元回転台1のZ軸は、360°自由に回転できるようになっている。したがって、図23に示したようなpgm画像の場合、三次元回転台1のZ軸の角度を決定するための直線は、Z軸の角度が0°となる箇所を経由して2つの動作可能領域10を結ぶ(図25参照)。
【0132】
また、図26に示すように、動作不可能領域11によって動作可能領域10が分断されている場合は、動作不可能領域11を避けるように2つの動作可能領域10を結ぶ必要がある。図27は、三次元回転台1のZ軸の角度の決定を行なうための直線13を引く手順を表わすフローチャートである。
【0133】
ここからは、図27に示した手順にしたがって、直線13を引くための方法について説明を行なう。最初に、直線13の基準点13cの位置の決定方法について説明を行なう。
【0134】
Z軸の角度が0°の箇所を経由して動作可能領域10を直線13で結ぶ場合(図25参照)は、直線13の基準点13cのX座標Xを0とする。しかし、図28に示すように、Z軸角度が0°となる位置を示す直線13上には濃条件付き動作可能領域10aの幅がある。したがって、基準点を(0,Y)とした時のY座標の値Yは、複数存在することになる。したがって、直線13を引くための基準点13cを一点に決定するためには、Yを決定しなければならない。
【0135】
本実施形態では、Yを更に2本の直線13a,13bを引くことによって決定した(図29参照)。ここで用いた2本の直線13a,13bは、図29に示すように、動作不可能領域11と条件付き動作可能領域10aの境界となる位置にある点13d,13eを通過点として引く。これらの2本の直線13a,13bにおいてX座標を0°としてY座標を求めると、それら2つのY座標の幅は、Z軸角度を決定するための直線13を、動作不可能領域11内を通らない状態で引くことができるY座標の幅を表わす。したがって、これらの2本の直線13a,13b上でX=0となるY座標の値の中点を、Yの値とした(図30参照)。
【0136】
また、図26のような動作可能領域10が存在しない範囲を持つ場合も、直線13に沿ってZ軸の角度を決定する。直線は、基準点13c(X,Y)を二次元座標系上で決定することで引く。まず、基準点13cのX座標の値Xを決定する。動作可能領域10の中点をとることでZ軸の角度を決定した場合、不連続となる箇所が2箇所あることになる(図31参照)。本実施形態では、その2箇所のX座標の幅の中点をXの値とする。
【0137】
次に、基準点13cのY座標Yを決定する。図32に示すように、決定した基準点のX座標Xにおいて、条件付き動作可能領域10aとなるY座標の値には幅がある。よって、本実施形態では、Y座標の幅の最大値と最小値を取り、それらの中点をとることで基準点のY座標Yの値を決定した。
【0138】
本実施形態では、動作可能領域10の中点を取る方法と、直線13に沿う方法の2つの方法によってZ軸の角度を決定する。動作計画ではこれらの2つの方法を切替えながら三次元回転台1のZ軸の角度を決定することによって、ワーク3表面へのアーク4aによる影響を抑えることができる。
【0139】
本実施形態では、Z軸の角度を決定するための直線13と動作可能領域10の交点を二次元座標系上で求め、その交点の位置でZ軸の角度を求める2つの方法を切替えた。また、直線13は、動作可能領域10と動作可能領域10を結ぶため、Z軸の角度を決定するための直線13と動作可能領域10の交点は2箇所求める。
【0140】
まず、1箇所目の交点を求める。直線13の基準点13cのY座標Yから直線に沿ってYを1ずつ加算して行く。それぞれのYの値の位置では、そのときのX座標の値Xと、現在のYに1を加算したY座標の位置における動作可能領域10の中点をとることによって求めたX座標を求め、それらの値の差の絶対値をとる(図33(a)参照)。この値が、直線13の傾きを決定する際に用いた三次元回転台1の角度の変化量2.0°以下ならば、三次元回転台1のZ軸の角度が連続となっていると判断し、交点のY座標を現在のY座標の値Yとする。決定したY座標の位置は直線13上であるので、直線13にしたがってX座標を決めることができ、その点(X,Y)を直線13に沿ったZ軸の角度決定が開始される交点であるとする。
【0141】
また、2箇所目の交点は、直線13の基準点13cの位置からYの値を1ずつ減少させ、それぞれのYの値の位置において直線13上のX座標Xと、現在のYから1を減算したY座標の位置における動作可能領域10の中点を取ったX座標を求め、それらの値の差の絶対値をとる(図33(b)参照)。この値が三次元回転台1の回転速度から決定した角度の変化量2.0°以下ならば、三次元回転台1のZ軸の角度が連続していると判断して、交点のY座標の値を現在のYの値とする。正の方向の交点を求めた時と同様に、決定したY座標での位置は直線13上となるので、2箇所目の交点のX座標は、直線13の式からXを求めることができる。
【0142】
次に、直線13の位置変更について説明する。Z軸角度を決定するための直線13上に動作不可能領域11がある場合、直線13に沿ってZ軸角度を決定することができない。そのため、動作不可能領域11を回避するように直線13の基準点13cの位置を変更することにした。また、本実施形態では、直線13のどの範囲で動作不可能領域11を検出したかによって、直線13の基準点13cを移動させる方向を決定した。
【0143】
ここでは、図25および図26に示した直線13において、直線13の基準点13cの位置を境界として基準点13cよりもX座標の値が大きい右側の部分と、X座標の値が小さい左側の部分にわけて考えた。
【0144】
本実施形態でZ軸の角度の決定のために引く直線13は、傾きが正の値であるため、二次元座標系で見ると右上りの直線13となる。したがって、基準点13cよりも右側の位置で動作不可能領域11を検知した場合には、基準点13cを二次元座標系のY軸の負の方向に移動させ、直線13の基準点13cよりも左側の位置で動作不可能領域11が検知された場合には、二次元座標系のY軸の正の方向に移動させる。これによって、直線が動作不可能領域11を回避できる可能性が高いと考えた。
【0145】
しかし、動作不可能領域11の位置によっては、基準点13cの位置を変更しても直線13が動作不可能領域11を回避できないことも考えられる。よって、そのような場合には直線13の傾きを小さくすることで直線を水平に近くし、次の溶接箇所6aに移る際のZ軸の角度の変化量を大きくすることによって、動作不可能領域11を回避できるようにした。
【0146】
しかし、Z軸角度を決定するための直線13を移動した場合、動作不可能領域11を回避できたとしても、動作可能領域10と交わらなくなってしまうことが考えられる。図34中のAに示すように、動作可能領域10の形状が曲線状になっている場合には、直線13を引くための基準点13cの位置によっては、直線13と動作可能領域10とが交わらない。このような状態においても、Z軸角度を決定するため、本実施形態では、直線13と動作可能領域10の交点がない場合、図35に示すような二次元座標系において、Y軸に平行な直線14を用いてZ軸の角度の決定を行った。
【0147】
Z軸角度を決定するための直線13が動作可能領域10と交わらない場合に、この直線13と動作可能領域10を結ぶY軸に平行な直線14は、以下の手順で設定する。
(1)動作可能領域10の不連軸においてZ軸の角度を決定するための直線13と、動作可能領域10との交点が無い場合、動作可能領域10が不連続となる点からY軸に平行な直線14を引く。
(2)Z軸の角度を決定するための直線13と、Y軸に平行な直線14の交点を求める。
(3)動作可能領域10が不連続となる点から、上記(2)で求めた交点までの間で、動作不可能領域11が無いことを確認する。
【0148】
Y軸に平行な直線14上に動作不可能領域11が検知された場合、この直線14の位置を不連続となる点の位置からX軸の正の方向へ移動する。図35の場合、Y軸に平行な直線14を画像の右方向に移動する。この方法を用いることによって、Z軸の角度を決定するための直線13と動作可能領域10が動作不可能領域11によって分断されているような状況であっても、Z軸の角度を決定することができる。
【0149】
図37は、条件付き動作可能領域10aを通過する直線13を用いて、Z軸角度を決定した様子を示したpgm画像である。この画像では、Z軸角度の決定に用いたpgm画像に、動作可能領域10の中点をとることで決定したZ軸角度を表わす線12と、条件付き動作可能領域10aを通過する直線によって決定したZ軸角度の線13を加えている。
【0150】
〔直交座標形マニピュレータ2の動作計画〕
本実施形態で行なう直交座標形マニピュレータ2の動作計画では、マニピュレータ2の手先リンク2dに鉛直下向きに取り付けられた溶接トーチ4の先端を姿勢変更後のワーク3の溶接箇所6に当てる動作の計画を行なう。また、マニピュレータ2の手先リンク2dの動作計画を行ない、溶接動作中に溶接トーチ4や手先リンク2dとワーク3および三次元回転台1とが接触しないような動作の計画を行なう。加えて、本実施形態では、ワーク3の溶接箇所6全てに溶接トーチ4を当てるために、ワーク3の溶接箇所6全てが溶接トーチ4の移動できる範囲内に位置するように、三次元回転台1と直交座標形マニピュレータ2の位置関係を決定した。
【0151】
まず、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dの動作計画について説明を行なう。
【0152】
本実施形態では、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6を結んだ線分に、溶接トーチ4を沿わせるように手先リンク2dの角度を変更することによって、マニピュレータ2の手先リンク2dや溶接トーチ4とワーク3の枝管3bとの接触の可能性を抑えることができると考えた。この方法における手先リンク2dの角度は、図38に示す角度φによって表される。この角度は絶対座標系のXY平面上で求めることができる。
【0153】
上述した直交座標型マニピュレータ2の機構から、手先リンク2dの初期位置は、絶対座標系のY軸の正の方向に一致している。したがって、絶対座標系のY軸と2つの溶接箇所6を結んだ線分のなす角度を手先リンク2dの回転関節2eの角度として求めることができる。
【0154】
このように、手先リンク2dの回転関節2eの角度を変更することによって、溶接トーチ4は、ワーク3の枝管3bを回り込むように動作することができる(図39参照)。したがって、本実施形態では、この方法を用いて、ワーク3の枝管3bと直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dおよび溶接トーチ4とが接触することを回避する。
【0155】
しかし、ワーク3は、三次元回転台1のチャック1dに固定されているため、図40に示すように、ワーク3の枝管3bが鉛直上向きに向くような姿勢になった場合に、チャック1dとワーク3の枝管3bの間が狭くなる。そのため、枝管3bを回り込むように手先リンク2dが動いた場合に、図40中でgapとして示した幅には、手先リンク2dが入れない可能性が考えられる。また、ワーク3を固定するためのチャック1dが大きいため、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dがチャック1d上を通過することができない状況も存在すると考えられる(図41参照)。このような場合に、本実施形態では、チャック1dを回避するために、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dの角度を決定する方法を変更した。
【0156】
手先リンク2dの回転関節2eの回転角度を決定するための2つ目の方法は、現在の溶接箇所6と次の溶接箇所6を結んだ線分と手先リンク2dが90°の角度をなすように手先リンク2dの回転関節2eの回転角度を決定する方法である。
【0157】
この方法で決定する手先リンク2dの回転関節2eの回転角度は、図42に示した角度φで表される。この角度を手先リンク2dの回転関節2eの回転角度とすることで、枝管3bとチャック1dとが近接した箇所に手先リンク2dが入り込むことなく、枝管3bの上から溶接箇所6に溶接トーチ4を当てることができる(図40参照)。本実施形態では、この方法によって、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dと、三次元回転台1のチャック1dとの接触を回避する。
【0158】
ワーク3の溶接箇所6を溶接して行く順番は、まず、ワーク3の側面の溶接箇所6から溶接を開始し、チャック1dに近い方向の溶接箇所6から次々と溶接していく。そして、溶接を開始した側面の裏側の側面の溶接箇所6を経由して、溶接を開始した溶接箇所6に戻って来る。
【0159】
溶接動作の前半は、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dがチャック1dに近接しているため、手先リンク2dとチャック1dの接触の可能性が高い。したがって、本実施形態では、チャック1dとの接触を回避するために、溶接動作の前半となる溶接開始点からその裏側の点までの間、溶接線7と90°の角度をなすように、手先リンク2dの角度を決定する。溶接動作の後半となる裏側の点から溶接の開始点までの間では、溶接線7に沿うように手先リンク2dの回転関節2eの角度を決定する。
【0160】
これら2つの方法では、溶接線7と手先リンク2dの回転関節2eのなす角度が90°異なる。これら2つの方法は、溶接を開始する溶接箇所6の裏側の溶接箇所6で切替えられる。2つの方法を切替える溶接箇所6に溶接トーチ4を合わせた場合、同径管では、溶接線7に溶接トーチ4が沿うように手先リンク2dが位置する(図43(a)参照)。そのため、溶接線と手先リンク2dが90°をなす状態から溶接線7に沿う状態に切替えた際にそのまま溶接線7に沿うことができる。
【0161】
しかし、異径管の場合は、手先リンク2dが溶接線7に沿うような状態ではない(図43(b)参照)。したがって、手先リンク2dの角度を決める方法を切替えた際に、溶接線7に沿うために角度が大きく変化してしまう。これを防ぐために、異径管の溶接動作では、全ての溶接箇所6において、溶接線7と手先リンク2dが90°の角度をなす状態で溶接動作を行なう。
【0162】
次に、直交座標形マニピュレータ2と三次元回転台1の位置関係について説明を行なう。
【0163】
全てのワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てるためには、ワーク3の溶接箇所6全てが直交座標形マニピュレータ2によって溶接トーチ4の先端が移動できる範囲内になければならない。上述した三次元回転台1の機構から、三軸によるワーク3の姿勢変更を行った場合に、Z軸の回転軸を中心としてワーク3の溶接箇所6の位置が変更される。したがって、本実施形態では、まず、直交座標形マニピュレータ2の動作によって溶接トーチ4の先端が移動できる範囲を求め、その範囲の中央に三次元回転台1を設置した。
【0164】
溶接トーチ4の移動できる範囲は、3つの直動スライダ2a,2b,2cの平行移動距離0(mm)、手先リンク2dの回転角度を0°とした場合の溶接トーチ4の位置を原点としている。直交座標形マニピュレータ2の可動範囲から求めた溶接トーチ4の移動できる範囲を図44に示す。図44(a)は、絶対座標系のX軸の正の方向から見た画像であり、溶接トーチ4がY軸方向とZ軸方向に移動できる範囲を表している。Y軸の正の方向とZ軸の正の方向へは400(mm)移動することができる。また、図44(b)は、直交座標形マニピュレータ2を絶対座標系のZ軸の正の方向から見た画像であり、溶接トーチ4がX軸方向に移動できる範囲を表している。X軸方向の移動範囲は、直動スライダ2aの可動範囲は400(mm)となるが、手先リンク2dが回転関節によって正の方向、負の方向共に90°まで回転することができるため、手先リンク2dの長さを含めて600(mm)の幅を持つ。
【0165】
以上に示した溶接トーチ4が移動できる範囲の中央に、三次元回転台1の作業座標系の原点となる架台の中央が位置するように三次元回転台1を設置した。
【0166】
〔動作計画実験〕
本実施形態では、作成した動作計画プログラムを用いて、T字型やY字型のワーク3に対する動作計画実験を行なった。加えて、溶接動作確認用シミュレータを用いて計画した動作の状況を表示し、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dや溶接トーチ4と、三次元回転台1およびワーク3の動作中の接触の有無について目視で確認を行なった。
【0167】
〔溶接動作計画を行なうワークの形状〕
今回行なった動作計画実験で設定したワーク3であるアルミ管の形状には、主管3aと枝管3bのなす角度の違いと、主管3aと枝管3bの直径の違いを考えて以下の6種類を設定した。
(1)同径T字型(角度91.1° 管直径140(mm))
(2)異径T字型(角度91.1° 主管直径89(mm) 枝管直径63(mm))
(3)同径Y字型(角度75° 管直径89(mm))
(4)同径Y字型(角度45° 管直径114(mm))
(5)異径Y字型(角度75° 主管直径114(mm) 枝管直径89(mm))
(6)異径Y字型(角度45° 主管直径89(mm) 枝管直径63(mm))
【0168】
これら6種類のワーク3について、自動溶接作業装置による自動溶接の動作の計画と、動作確認用シミュレータによる計画された動作の表示を行なった。
【0169】
本実施形態で提案する動作計画法では、動作計画のパラメータとして、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を傾けて当てる際の角度を決定する必要がある。今回行なった溶接動作計画実験では、この角度を10°、20°、30°とした場合の動作計画を行なった。
【0170】
また、ワーク3が同径管である場合に、2つのpgm画像を重ねる場合は、各ワーク3の形状において、上端から下端まで動作可能領域10が連続するようになる最低限の許容幅を調査し、調査した許容幅で作成したpgm画像と許容幅0.05(mm)で作成したpgm画像の2つを重ねて用いた。
【0171】
各形状のワーク3の動作計画実験では、動作確認用シミュレータを用いて計画された溶接動作の表示を行なった。また、計画された溶接動作の表示中に動作確認用シミュレータの動作の再生を途中で停止させて視点を変更することによって、溶接トーチ4や直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dの位置、ワーク3の姿勢および三次元回転台1のフレームの位置を確認することで、それらの機材が接触していないことの確認を行なった。
【0172】
〔動作確認用シミュレータによる動作の再現方法と機能〕
図45は、本実施形態で作成した動作確認用シミュレータの画面である。動作確認用シミュレータでは、OpenGLを用いた3D−CGで直交座標形マニピュレータ2、三次元回転台1、ワーク3の描画を行ない、表示・再生している動作を途中で停止する機能と、視点の位置を変更する機能を持たせた。動作確認用シミュレータの画面は、三次元回転台1に取り付けられたワーク3を中心としている。また、ズーム機能も備え、ズームさせることで、画面の中心部分を拡大することができる。これらの機能は、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4が傾けて当てられていることや、溶接トーチ4および手先リンク2dとワーク3あるいは手先リンク2dと三次元回転台1との接触の有無を確認するためのものである。したがって、本実施形態で行なう動作計画では、これらの機能を用いて、各溶接箇所6におけるワーク3の姿勢と直交座標形マニピュレータ2の動作の確認および各機材の接触の有無を目視によって確認する。
【0173】
動作確認用シミュレータを用いて計画された動作の表示を行なうためには、各溶接箇所6の三次元回転台1の三軸の回転角度、直交座標形マニピュレータ2を構成する直動スライダ2a,2b,2cの平行移動距離、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dの回転角度の値を使用する。したがって、本実施形態では、動作計画プログラムによる動作計画の結果として、動作確認用シミュレータによる動作の表示に必要な値をひとつのファイルに出力している。動作確認用シミュレータでは、出力されたファイルを読み込むことで計画された動作を表示する。
【0174】
〔実験結果と考察〕
動作計画実験の結果と計画された動作の様子を示す。また、動作計画実験では、動作計画プログラムの実行時間についても検証を行った。
【0175】
まず、実験概要で示した形状の異なる6種類のワーク3についてpgm画像の作成を行った結果を図46〜図48に示す。なお、掲載するpgm画像には、計画された三次元回転台1のZ軸の角度を表す線12を加えて示した。また、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を当てる際の溶接トーチ4を傾ける角度は20°である。
【0176】
図46は、同径と異径のT字型の動作計画結果を表したpgm画像である。T字型の場合には、同径管の場合のみ(5)式の許容幅Lを変更して作成したpgm画像を2つ重ねて使用した。pgm画像を作成する際の許容幅は、0.05(mm)と1.5(mm)であり、動作可能領域10と、条件付き動作可能領域10aからZ軸角度を決定した。また、異径管の場合の許容幅は0.05(mm)である。
【0177】
図46(a)の同径T字型の場合では、上述した同径管の側面の溶接線7の屈折による動作可能領域10の不連続を、条件付き動作可能領域10aを通過する直線13に沿ってZ軸角度の決定を行なうことによって、全ての溶接箇所6のZ軸角度の決定が行なえていることが確認できる。また、図46(b)の異径T字型の場合には、動作可能領域10内からZ軸角度の決定が行なえていることが確認できる。
【0178】
図47は、中心線の角度が75°の場合のY字型の動作計画結果である。このワーク3の場合は、T字型の場合と同様に同径管でのみpgm画像を2つ重ね合わせて動作計画を行った。同径管の場合の許容幅は0.05(mm)と1.2(mm)である。異径管の場合は異径T字型と同様に0.05(mm)である。図47(a)の角度75°の同径Y字型の場合は、同径T字型の動作計画結果と同様に、上述した溶接線7の屈折による動作可能領域10の不連続が見られるため、条件付き動作可能領域10aを通過する直線13によって動作可能領域10を結ぶことで全ての溶接箇所6のZ軸の角度を決定できている。
【0179】
また、図47(b)の角度75°の異径Y字型の場合にも、異径T字型と同様に動作可能領域10の中点をとることによって全ての溶接箇所6のZ軸の角度を決定できている。
【0180】
図48は、中心線の角度が45°のY字型の動作計画結果である。45°のY字型の場合には、三次元回転台1の可動範囲によって動作可能領域10が存在しない箇所が現れている。したがって、同径、異径にかかわらず(ア)式の許容幅Lを変更した2つのpgm画像を重ねて使用した。許容幅は同径管、異径管どちらの場合も0.05(mm)と1.2(mm)である。図48(a)に示す角度45°の同径Y字型の場合には、上述した同径管の場合の溶接線7の屈折と、三次元回転台1の可動範囲による動作可能領域10の不連続を、条件付き動作可能領域10aを通る直線13によって接続した動作を計画している。
【0181】
また、図48(b)に示した角度45°の異径Y字型の場合にも、三次元回転台1の可動範囲による動作可能領域10の不連続を、条件付き動作可能領域10aを通る直線13によって接続してZ軸の角度を決定できていることが確認できる。また、図49は、図48(b)に示した45°の異径Y字型の場合の動作結果の画像において、三次元回転台1の可動範囲による動作可能領域10の不連続箇所を拡大した画像である。図49中のBでは、Z軸の角度を決定するための直線13と動作可能領域10との交点がないため、上述で計画したY軸に平行な直線14を用いてZ軸の角度を決定した様子を確認することができる。
【0182】
本実施形態で行った動作計画実験では、実験の概要で示した全ての形状のワーク3において、溶接動作の計画を行なうことができた。また、動作可能領域10の不連続があった場合には、条件付き動作可能領域10aを通る傾き0.5の直線13を用いてZ軸の角度の決定が正しく行われていることが確認できた。
【0183】
しかし、角度45°の同径Y字型の動作計画結果において、三次元回転台1の可動範囲による動作可能領域10の存在しない範囲において決定したZ軸の角度を表す直線12を見ると、動作不可能領域11と条件付き動作可能領域10aの境界付近を通っていることが確認できる(図50参照)。
【0184】
このように、Z軸角度を決定した場合、溶接動作では、三次元回転台1の可動範囲内と可動範囲外の境界となる付近で動作していることになる。そのため、不慮の異常動作などでワーク3の姿勢が変更された場合、三次元回転台1の可動範囲を越えてしまうことが考えられる。このような事態があった場合、アーク4aが溶接箇所6以外に当たってしまう可能性が考えられる。
【0185】
したがって、決定したZ軸の角度の直線のX座標の±10°の範囲内に動作不可能領域11がある場合には、Z軸の角度を決定するための直線13の位置を動作不可能領域11から遠ざかる方向に移動させることで位置を変更し、動作不可能領域11と条件付き動作可能領域10aとの境界付近でのZ軸角度の決定を控えるような動作計画が必要ではないかと考えられる。図50中のCに示すように、直線13の基準点よりも右側で動作不可能領域11が直線13の付近にある場合には、動作不可能領域11から遠ざけるために直線13を下の方向へ移動させる。
【0186】
次に、動作計画プログラムの実行時間の測定について説明を行なう。本実施形態では、実行に必要な時間が最も少ないと考えられる異径T字型の場合と、実行に必要な時間が最も多いと考えられる中心線の角度45°の同径Y字型の場合について計測を行なった。動作計画プログラムは、Debian Linux(登録商標)上で作成し、実行時間の計測に用いたコンピュータのCPUは、INTEL Celeron d 2.13GHz(登録商標)、メモリは512MB、使用したコンパイラはgcc(GNU Compiler Collection)バージョン 3.3.5である。また、コンパイルオプションとして−O2オプションを付けて最適化を行なっている。
【0187】
まず、最も計算プロセスが少ないと考えられる異径T字型の動作計画にかかった時間は47.241(s)であった。また、最も計算プロセスが多いと考えられる45°の同径Y字型の動作計画の時間は83.404(s)であった。このように動作計画にかかる時間に差があるのは、動作可能領域10の不連続の有無が関係していると考えられる。また、最も時間が必要となる角度45°の同径Y字型においてでも約83(s)であることから、作成した動作計画プログラムを用いて十分に実用的な時間でワーク3の溶接動作の計画が行なえる。
【0188】
〔動作確認用シミュレータによる動作確認〕
動作計画を行った6種類のワーク3の中で角度45°の同径Y字型における動作計画実験の結果を動作確認用シミュレータで表示した様子を示す。この動作計画では、溶接線7の屈折によって動作可能領域10が不連続になる箇所と、三次元回転台1の可動範囲によって動作可能領域10が不連続になる箇所を直線で結んでZ軸の角度を決定した様子が確認できる。そのため、本実施形態で行われた三軸の回転による溶接動作計画プログラムで使用したZ軸角度の計画方法をすべて確認することができた。
【0189】
図51〜図53は、動作確認用シミュレータで動作を表示した際の様子を示した画像である。これらの画像は、上述した絶対座標系のX軸の負の方向から見た様子である。また、これらの画像では、時間の経過をアルファベット順で表し、図51、図52、図53の順に連続して溶接動作を表している。加えて、同じ動作の様子を別の視点から確認した画像を、時間を表すアルファベットに「‘」を付けた画像で同時に示した。この画像は、溶接トーチ4と手先リンク2dが、ワーク3や三次元回転台1と接触していないことが確認できる位置に視点を移して動作確認を行ったものである。
【0190】
図51〜図53の全体を通して三次元回転台1の動作を見ると、Z軸の回転がほぼ一周していることが確認できた。また、図51(C)〜図52(F)までの間では、三次元回転台1のZ軸の角度が大きく変化している。このZ軸の角度の変化は、溶接線7の屈折による動作可能領域10の不連続箇所において、条件付き動作可能領域10aを通る直線13で結んでZ軸の角度の決定を行った際の様子である。ここでは、傾き0.5の直線に沿ってZ軸の角度が決定されているため、溶接箇所6がひとつ変わる毎にZ軸の角度が2.0°変化する。そのため、Z軸の角度が大きく変化している。同様に図52(G)〜図53(J)の間でのZ軸の角度の大きな変化は、三次元回転台1の可動範囲による動作可能領域10の不連続箇所を直線で結んでZ軸角度を決定した様子である。ここでも、Z軸の角度が直線13に沿って決定されており、溶接箇所6の位置がひとつ変わるごとにZ軸角度が2.0°変化するために、Z軸のモータ1cが大きく回転している。
【0191】
次に、直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dの動作について説明を行なう。図51(A)〜図52(F)の間では、ワーク3の姿勢変更によって三次元回転台1のチャック1dが上方に回転してくる。したがって、上述したチャック1dを回避するために計画した通りに、手先リンク2dは、溶接線7に対して90°の角度を保って動作している。
【0192】
また、図52(G)〜図53(K)の間では、三次元回転台1のチャック1dは、下方向に移動して行くことと、ワーク3の枝管3bが再び上方に回転してくることが確認できる。したがって、手先リンク2dは、上述した枝管3bを回避するために計画した通りにワーク3の溶接線7に沿うように角度が変更され、手先リンク2dが枝管3bを回り込んでいることが確認できた。
【0193】
また、今回行なった動作確認では、動作中の溶接トーチ4や手先リンク2dと三次元回転台1およびワーク3の接触について確認を行なった。視点を変更して確認した画像から、各機材が接触することが無いことが確認できた。
【0194】
本実施形態では、三次元回転台1の三軸の回転によるワーク3の姿勢変更を用いた自動溶接作業装置の動作計画法を提案し、提案した動作計画を行なう動作計画プログラムと動作確認用シミュレータを作成した。本実施形態で提案した動作計画法を用いてワーク3の溶接動作の計画を行ったところ、主管3aと枝管3bのなす角度の違いや直径、ワーク3の溶接箇所6に溶接トーチ4を傾けて当てる際の溶接トーチ4の傾く角度にかかわらず、T字型やY字型のワーク3を溶接するための自動溶接作業装置の動作の計画を行なうことができた。
【0195】
また、動作計画プログラムによって計画された動作を動作確認用シミュレータを用いて確認したところ、溶接トーチ4や直交座標形マニピュレータ2の手先リンク2dと、ワーク3および三次元回転台1とが接触することなく溶接動作を行なえることが確認できた。
【0196】
また、本実施形態では、動作計画に必要となる計算プロセスの時間計測を行った。その結果から、動作計画を行なうために必要となる時間は、最長で83.404(s)であり、作業者が動作計画を行なう際に動作計画に時間がかかることで不快になったりせず、十分に実用的な時間で動作計画が行なえることが分った。
【0197】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で修正・変更を加えることができるのは勿論である。例えば、上記実施形態においては、駆動部の構成としてモータを例示したが、これに限らず、各種流体圧シリンダや他の駆動手段であってもよいことは勿論である。また、各回転部材はモータのモータ軸に直結した例を示したが、減速機構を介して連結するようにしてもよい。
【0198】
本実施形態では、ワークを同径T字型、異径T字型、同径Y字型、異径Y字型を例に説明したが、特にこの限りではなく、主管が角筒で枝管が円筒といった形状が異なるワークであっても良い。
【0199】
また、ワークの接続形状がT字、Y字に限られることはなく、L字、X字といった種々の接合形状であっても良い。さらに、溶接方法は、TIG溶接だけでなく、プラズマ溶接、レーザ溶接であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の実施形態を示す溶接作業装置の全体ブロック図
【図2】三次元回転台の機構を示す概略図
【図3】直交座標形マニピュレータの機構を示す斜視図
【図4】三次元回転台の可動範囲を示す概略図であって、(a)はY軸の可動範囲を示す図、(b)はX軸の可動範囲を示す図
【図5】直交座標形マニピュレータの手先リンクの回転関節の可動範囲を示す概略図
【図6】平板の自動溶接実験の様子を示す図
【図7】溶接箇所における方向ベクトルを示す図
【図8】溶接作業装置における絶対座標を示す斜視図
【図9】溶接トーチの傾き角度を示す図であって、(a)は溶接トーチが鉛直上向きの状態を示す図、(b)は溶接トーチを鉛直上向きから傾けた状態を示す図
【図10】アークの広がる方向を示す概略図であって、(a)は溶接線と溶接トーチの中心線が90°の角度をなす場合を示す図、(b)は溶接線と溶接トーチの中心線が0°の角度をなす場合を示す図
【図11】Y座標に関する条件の溶接幅を示す図
【図12】溶接トーチの先端の向きを示す図であって、(a)は溶接トーチを進行方向に傾けた場合を示す図、(b)は溶接トーチを進行方向と逆に傾けた場合を示す図
【図13】主管の作業座標系と、枝管上の基準点および枝管に沿った溶接線を示す図
【図14】枝管の円周上の基準点を示す図であって、(a)は主管と枝管とが重なった状態を示す図、(b)は枝管の円周上の点を表わす角度を示す図
【図15】三次元回転台の機構を示す概略図であって、(a)はZ軸の回転を加えていない状態を示す図、(b)はZ軸の回転を加えた状態を示す図
【図16】三次元回転台の動作計画のフローチャート
【図17】主管と枝管の径が異なる管をT字型に溶接する場合のpgm画像を示す図
【図18】図17に決定したZ軸角度を表わす線を加えた図
【図19】主管と枝管の径が同じ場合の側面の溶接線を示す図
【図20】主管と枝管の径が同じ管をT字型に溶接する場合のpgm画像を示す図
【図21】主管と枝管との溶接において、動作可能領域が存在しない範囲を持つ場合のpgm画像を示す図
【図22】許容幅を変更したpgm画像を示す図であって、(a)は許容幅が0.05mmの場合を示す図、(b)は許容幅が1.5mmの場合を示す図
【図23】図22の(a)のpgm画像と(b)のpgm画像とを重ねた画像を示す図
【図24】図23に2次元の座標を加えた図
【図25】Z軸の角度が0°の位置を経由したZ軸角度を決定するための直線を示す詳細図
【図26】動作可能領域が存在しない範囲を持つ場合のZ軸の角度が0°の位置を経由したZ軸角度を決定するための直線を示す詳細図
【図27】Z軸角度を決定するための直線を引くためのフローチャート
【図28】Z軸の角度が0°での条件付き動作可能領域の幅を示す図
【図29】図25に基準点の設定をする際に用いた2本の直線を加えた図
【図30】図25に基準点の設定をする際に用いた2本の直線の溶接線の許容幅を示す図
【図31】2箇所の動作可能領域の不連続箇所を示す図
【図32】基準点のZ軸角度における溶接箇所の許容幅を示す図
【図33】Z軸角度を決定するための直線と動作可能領域の交点を示す図であって、(a)はX軸の正の方向に検索した場合を示す図、(b)はX軸の負の方向に検索した場合を示す図
【図34】基準点を通る直線と動作可能領域に交点がない場合を示す図
【図35】図34に縦方向の直線を加えた状態を示す図
【図36】図35の動作不可能領域が広がった状態を示す図
【図37】図24に決定したZ軸角度の線を加えた図
【図38】溶接線に沿うような手先リンクの状態を示す図
【図39】手先リンクが枝管を回り込んだ状態を示す図
【図40】枝管とチャックが近接した状態を示す図
【図41】チャックの上方から溶接トーチを溶接箇所に当てた状態を示す図
【図42】枝管の上に手先リンク移動させた状態を示す図
【図43】溶接開始点の裏側の溶接箇所に溶接トーチを当てた状態を示す図であって、(a)は主管と枝管の径が同じ場合の図、(b)は主管と枝管の径が異なる場合の図
【図44】溶接トーチが移動できる範囲を示す図であって、(a)はY軸方向とZ軸方向に溶接トーチが移動できる範囲を示す図、(b)はX軸方向に溶接トーチが移動できる範囲を示す図
【図45】動作確認用シミュレータの画面を示す図
【図46】T字型の動作計画結果を示す図であって、a)は主管と枝管の径が同じ場合の図、(b)は主管と枝管の径が異なる場合の図
【図47】角度75°で接合するY字型の動作計画結果を示す図であって、(a)は主管と枝管の径が同じ場合の図、(b)は主管と枝管の径が異なる場合の図
【図48】角度45°で接合するY字型の動作計画結果を示す図であって、(a)は主管と枝管の径が同じ場合の図、(b)は主管と枝管の径が異なる場合の図
【図49】基準点を通る直線と動作可能領域の交点の補正した状態を示す図
【図50】動作可能領域と動作不可能領域との境界を通る直線を示す図
【図51】動作確認用シミュレータによる表示の様子を示す図
【図52】動作確認用シミュレータによる表示の様子を示す図
【図53】動作確認用シミュレータによる表示の様子を示す図
【符号の説明】
【0201】
1 三次元回転台
1a X軸モータ
1b Y軸モータ
1c Z軸モータ
1d チャック
2 直交座標形マニピュレータ
2a X軸直動スライダ
2b Y軸直動スライダ
2c 軸直動スライダ
2d 手先リンク
2e 回転関節
3 ワーク
3a 主管
3b 枝管
4 溶接トーチ
4a アーク
5 アルミ平板
6 溶接箇所
6a 次の溶接箇所
6b 基準点
7 溶接線
8 溶接箇所
8a 次の溶接箇所
9 フィラワイヤ
10 動作可能領域
10a 条件付き動作可能領域
11 動作不可能領域
12 Z軸の角度を示す直線
13 Z軸の角度を決定する直線
13a 動作可能領域と動作不可能領域の境界を通る直線
13b 動作可能領域と動作不可能領域の境界を通る直線
13c 基準点
13d 条件付き動作可能領域と動作不可能領域の境界点
13e 条件付き動作可能領域と動作不可能領域の境界点
14 Y軸に平行に引いた直線
101 入力部
106 制御部
106a 溶接線演算部
106b 3次元回転台の回転角度演算部
106c 直交座標形マニピュレータの制御演算部
107 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接するワークの溶接条件を入力する入力部と、垂直軸となるZ軸、このZ軸に直交する水平軸となるY軸、および前記Y軸に直交するX軸の三軸周りに回転可能で、ワークの姿勢を変更する三次元回転台と、該三次元回転台を駆動する回転台駆動部と、溶接トーチを鉛直下向きに保持する溶接トーチ保持部と、前記入力部からの入力情報に基づいて前記回転台駆動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記入力部からの情報に基づいて、全ての溶接箇所の絶対座標系における座標位置を演算し、溶接トーチの中心線が常に絶対座標系のXZ平面上に位置させ、かつ現在の溶接箇所と次の溶接箇所のなす線分を溶接線としたとき、前記溶接線がXY平面に平行な平面で区切られる所定の許容幅Lに含まれるように前記回転台駆動部の三軸回転条件を演算し、前記回転台駆動部を回転制御することを特徴とする溶接作業装置。
【請求項2】
前記溶接トーチ保持部は、前記溶接トーチを互いに直交する三軸X,Y,Z方向に沿って移動可能とされ、前記制御部は、前記入力部からの入力情報に基づいて溶接トーチの移動を制御することを特徴とする請求項1に記載の溶接作業装置。
【請求項3】
前記制御部は、現在の溶接箇所のZ座標よりも次の溶接箇所のZ座標が小さくなるように演算することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接作業装置。
【請求項4】
前記制御部は、溶接トーチの中心線を前記絶対座標系XYZのXZ平面に平行な平面で区切られる前記許容幅内で、前記溶接線に対して溶接トーチの進行方向と逆方向に所定角度傾斜した姿勢で溶接できるように、回転台駆動部の三軸回転条件を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶接作業装置。
【請求項5】
前記制御部は、少なくとも以下の判定式を入力し、各溶接位置でこれらの判定式を満たすように前記三次元回転台の三軸回転条件を演算することを特徴とする請求項1に記載の溶接作業装置。
(ア)|現在の溶接箇所のY座標−次の溶接箇所のY座標|<L(mm)(但し、Yは絶対座標系のY座標、LはX軸両側に持たせた許容幅)
(イ)現在の溶接箇所のZ座標>次の溶接箇所のZ座標
【請求項6】
前記制御部は、さらに以下の判定式を入力し、各溶接位置でこれらの判定式を満たすように前記三次元回転台の三軸回転条件を演算することを特徴とする請求項5に記載の溶接作業装置。但し、A,Bは、三次元回転台のベース中央を原点とした作業座標系の各軸XYZの反時計周りの回転角を正、時計周りの回転角を負としたときの角度である。
(ウ)−A≦X軸の回転角度≦A(但し、0°<|A|<180°)
(エ)−B≦Y軸の回転角度≦B(但し、0°<|B|<90°)
【請求項7】
前記制御部は、
1)溶接位置ごとに、前記三次元回転台のZ軸を360°回転させながら、各Z軸角度において前記判定式を満たすワーク姿勢を取れるか否かを判定し、判定式を満たす場合と満たさない場合とに区分し、
2)すべての溶接位置に対する前記1)の計算が終了した時点で、最初の溶接位置から最終の溶接位置まで、Z軸角度の変化率を所定値以下に保ちながら前記判定式を満たすZ軸角度の系列を選択して前記三次元回転台の三軸回転条件の動作計画を行ない、
3)記最初の溶接位置から最終の溶接位置まで、前記判定式を満たすZ軸角度の系列を選択することができずに不連続となるか、あるいは、前記判定式を満たすZ軸角度の系列が連続する場合でも、前記Z軸角度の変化率が所定値を越える場合には、前記(ア)式の許容幅Lを拡大して、前記1)のZ軸角度の区分から再計算して動作計画を行ない、前記判定式を満たすZ軸の範囲が溶接位置の移動に対して連続となるように動作計画を実行することを特徴とする請求項5または6に記載の溶接作業装置。
【請求項8】
ワークは、主管とその側面に接合される枝管とから構成される継手管であることを特徴とする請求項1に記載の溶接作業装置。
【請求項9】
継手管がアルミ管であることを特徴とする請求項8に記載の溶接作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公開番号】特開2009−45642(P2009−45642A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212988(P2007−212988)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年2月20日 国立大学法人 福井大学主催の「平成18年度 福井大学大学院工学研究科 知能システム工学専攻 修士論文公聴会」に文書をもって発表
【出願人】(592131663)井上商事株式会社 (18)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)