説明

溶接用ポジショナの操作装置

【課題】 溶接姿勢を安定させ、ポジショナを回転ムラが無いように回転操作でき、またポジショナ回転を中断させずに作業者の移動ができる操作スイッチを有する溶接用ポジショナの操作装置を提供する。
【解決手段】 溶接中に作業者の顔面を覆って保護するための溶接保護面(11)の取っ手(12)に、溶接用ポジショナ回転の操作スイッチ(13)を設ける。操作スイッチ(13)は、正転スイッチ及び逆転スイッチである。また操作スイッチ(13)は、シーソー型操作ボタン(13a)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業を容易にするために溶接対象物を保持し、手動で回転操作がなされる溶接用ポジショナの操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接対象物の溶接品質を向上させる目的で、溶接対象物の溶接線に対するトーチ姿勢(以下、溶接姿勢と呼ぶ。)を適切なものとするために、溶接対象物を保持して所定方向に回転させるポジショナ装置(以下、単にポジショナと言う。)が使用されている。溶接対象物が簡単な構造の場合には、駆動回転軸数が1軸である仕様のポジショナが多く使用されている。例えば、パイプ部材を他の部材に突き合わせてその突合せ部の外周部を溶接するような場合、パイプ部材をその軸線がポジショナの回転軸の軸心方向に平行になるように保持し、ポジショナを回転操作してパイプ部材を所定速度で回転させながら溶接する。手動操作による溶接作業において、このポジショナの回転操作は、作業者の足元に置かれた足踏み式スイッチボックスの正転ペダル又は逆転ペダルを作業者が踏んで操作される。正転ペダル又は逆転ペダルは、オン/オフスイッチを作動させるようになっており、踏み込まれているときに該スイッチのオン信号をポジショナ制御装置に出力し、ポジショナを所定速度で正転又は逆転方向に回転操作することができる。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
【特許文献1】特開2000−263291号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の足踏み式スイッチボックスを備えたポジショナでは、次のような問題が生じている。すなわち、作業者は片足で体重の大部分を支えながら、もう一方の足で正転ペダル又は逆転ペダルを踏み込んだり離したりしてポジショナ回転を操作した状態で、体のバランスをとって溶接姿勢を決め、溶接作業をしなければならない。このため、溶接姿勢を安定させるのが非常に困難であり、溶け込み量、脚長、ビード外観等の溶接品質が安定し難い。また、足踏みによるスイッチ操作では、ポジショナの回転をスムーズにコントロールすることが困難なので回転ムラが発生し易く、溶接ビードにバラツキが出易い。さらに、溶接作業中にポジショナの回転に伴って作業者が少しずつ移動する必要がある場合には、正転ペダル又は逆転ペダルから足を離さなければならないため、一時的にポジショナの回転を停止して溶接作業を中断しなければならず、作業能率が低下するという問題もある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、溶接姿勢を安定させ、ポジショナを回転ムラが無いように回転操作することができ、またポジショナ回転を中断させずに作業者の移動ができる操作スイッチを有する溶接用ポジショナの操作装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明は、溶接用ポジショナの操作装置において、
溶接中に作業者の顔面を覆って保護するための溶接保護面の取っ手に、溶接用ポジショナ回転の操作スイッチを設けた構成としている。
【0007】
第2発明は、第1発明において、前記操作スイッチは、正転スイッチ及び逆転スイッチである構成としている。
【0008】
第3発明は、第1発明において、前記操作スイッチは、シーソー型操作ボタンを有する構成としている。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によると、溶接保護面の取っ手にポジショナの回転操作スイッチを設けたため、作業者は両足に略等しく体重をかけて立って、安定した溶接姿勢を保持しながら溶接でき、安定した溶接品質を得ることができる。また、取っ手を握る手の指で操作スイッチを操作し易く、またスイッチの操作力が小さいのでポジショナの回転を容易に微操作できる。このため、ポジショナの回転ムラが生じないので、溶接ビードのバラツキを無くすことができる。
【0010】
また、第2発明によると、正転スイッチ及び逆転スイッチを備えているため、溶接対象物の各種の溶接条件に容易に対応できるので、適用範囲を広くできる。
【0011】
第3発明によると、溶接保護面の取っ手を把持した手の指先でシーソー型操作ボタンを容易に操作でき、操作スイッチの操作性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る溶接用ポジショナの操作装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
先ず、図1に基づき本実施形態にかかる溶接用ポジショナの構成を説明する。溶接用ポジショナ1は、ポジショナ本体2と、ポジショナ本体2の回転駆動を制御する制御装置10と、ポジショナ本体2の回転操作をする操作スイッチ13を設けた溶接保護面11とを備えている。ポジショナ本体2は、支持部材3と、支持部材3に回転自在に支持され、溶接対象物7を取り付けるための取り付け部材6を有する回転台4と、図示しないギアを介して回転台4を回転駆動する電動モータ5とを備えている。
【0014】
制御装置10は、電動モータ5に動力を供給し電動モータ5の回転を制御する駆動装置(図示せず。)を備えている。制御装置10の駆動装置は、溶接保護面11の取っ手12に取り付けられた操作スイッチ13にケーブル15を介して接続されている。
【0015】
図2及び図3に基づき、操作スイッチ13を設けた溶接保護面11の詳細を説明する。溶接保護面11は、作業者が溶接ビードや溶接状態を見ながら手動で溶接している時に作業者の顔面を覆って保護する面(カバー)であり、おおよそ半割の円筒面形状をした保護面部16と、この保護面部16の中央部に形成された貫通孔に紫外線透過防止用ガラスが装着された覗き窓部17と、保護面部16の下部に下方に延びるように取り付けられた取っ手12とを備えている。操作スイッチ13は、この取っ手12の、作業者の手の指がかかる前面部に取り付けられている。取っ手12には、取っ手12の前面部を覆うようにカバー14が取り付けられている。操作スイッチ13は、上下2個のポジショナ正転用及び逆転用のモーメンタリスイッチで構成され、シーソー型操作ボタン13aで操作される。シーソー型操作ボタン13aは、その上下方向中央部を中心に上部又は下部が前後に揺動自在に設けられており、非操作時には中立状態(図2で略垂直状態)に戻されるようになっている。このシーソー型操作ボタン13aの上部又は下部を押し込むと、操作スイッチ13からそれぞれポジショナ正転信号又は逆転信号が出力され、ケーブル15を介して前記制御装置10に入力される。
【0016】
次に、上記構成の溶接用ポジショナの作動を説明する。作業者は手動で溶接するとき、溶接保護面11の取っ手12を把持して溶接保護面11の覗き窓部17から溶接箇所を観察しつつ、取っ手12を把持した指先でシーソー型操作ボタン13aの正転側(上部)又は逆転側(下部)を押す。すると、押された側に対応した正転信号又は逆転信号に応じて、制御装置10は電動モータ5を制御してポジショナ本体2の回転台4をそれぞれ正転方向又は逆転方向に予め設定された速度で回転駆動する。こうして作業者は、操作スイッチ13を操作して回転台4を回転させつつ、溶接対象物7を手動で溶接する。回転台4の回転を停止させるときには、作業者は操作ボタン13aから指を離す。回転台4の回転速度を微調整したい場合には、操作ボタン13aを指先でインチング操作することにより可能となる。
【0017】
上記のように、溶接保護面11の取っ手12を把持した手の指先で溶接用ポジショナ1の回転を操作できるので、操作性が非常に良く、溶接用ポジショナ1の回転を速度ムラが無いように操作できる。また、作業者は両足で安定的に立つことができて、自分の溶接姿勢を安定して保持することができる。このため、溶接ビードのバラツキが無くなり、溶接品質を向上できる。さらに、両足で左右略均一に自分の体重を支えて、楽な姿勢で溶接ができるので、作業者の疲労を低減できる。またさらに、溶接作業中に体の移動もスムーズにできるため、溶接を中断させる必要が無くなり、作業能率を大幅に向上できる。
【0018】
溶接保護面11の取っ手12に取り付けた操作ボタン13aをシーソー型としたので、取っ手12を把持した手の指先で容易に、確実に操作することができ、操作性が良い。また、正転スイッチ及び逆転スイッチを設けているので、多種形状をした溶接対象物の各種溶接条件に容易に対応できる。
【0019】
なお、操作スイッチ13の操作ボタン13aはシーソー型でなくてもよく、例えば2つの別個のボタンでそれぞれ正転スイッチ及び逆転スイッチを操作するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る溶接用ポジショナの構成図である。
【図2】本発明に係る操作スイッチを設けた溶接保護面の斜視図である。
【図3】本発明に係る操作スイッチを設けた溶接保護面の正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…溶接用ポジショナ、2…ポジショナ本体、4…回転台、5…電動モータ、7…溶接対象物、10…制御装置、11…溶接保護面、12…取っ手、13…操作スイッチ、13a…操作ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接用ポジショナの操作装置において、
溶接中に作業者の顔面を覆って保護するための溶接保護面(11)の取っ手(12)に、溶接用ポジショナ回転の操作スイッチ(13)を設けた
ことを特徴とする溶接用ポジショナの操作装置。
【請求項2】
前記操作スイッチ(13)は、正転スイッチ及び逆転スイッチである
ことを特徴とする請求項1記載の溶接用ポジショナの操作装置。
【請求項3】
前記操作スイッチ(13)は、シーソー型操作ボタン(13a)を有する
ことを特徴とする請求項1記載の溶接用ポジショナの操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−877(P2006−877A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178660(P2004−178660)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)