説明

溶液の凍結濃縮方法

【目的】
凍結濃縮により溶液たる被濃縮溶液を濃縮する際に、凍結濃縮装置の運転時間を短縮できて、生産面や経済面等の効率を大に向上でき、しかも環境保護にも優れる溶液の凍結濃縮方法を提供できるようにした。
【解決手段】
冷却により、被濃縮溶液3中に氷結晶を生成させて同溶液を固液混合物化する際に、被濃縮溶液3中に氷結晶が発生するタイミングに合わせて同被濃縮溶液を加熱手段によって加熱し、同加熱により、被濃縮溶液3中に生じた比較的小なる粒径の氷結晶(氷結晶(小)8a)を融解させてから同被濃縮溶液3中に残留する氷結晶(氷結晶(大)8)を成長させて被濃縮溶3液を固液混合物化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や薬品等の被濃縮溶液中に氷晶を生成せしめて固液混合物化し、この固液混合物から氷結晶を取り除くことによって溶液を濃縮する凍結濃縮方法に関し、より詳しくは、被濃縮溶液を固液混合物化する時間の短縮と高効率化を実現できる凍結濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凍結濃縮により溶液たる被濃縮溶液を濃縮する際に用いる凍結濃縮装置は、被濃縮溶液を冷却して同溶液中に氷結晶を生成させることにより被濃縮溶液を固液混合物化する氷結晶生成部たる冷却装置と、固液混合物化した被濃縮溶液を濃縮液と氷結晶とに分離する遠心分離槽等から構成されてなる分離装置とで構成され、氷結晶を分離することによって被濃縮溶液を濃縮している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、分離装置で行う固液混合物化した溶液を濃縮液と氷結晶とに分離する分離効率の向上を図るため、被濃縮溶液をゆっくりと冷却(緩慢凍結)して氷結晶の粒径を大なるものに成長させていた。
【0004】
したがって凍結濃縮装置の運転時間が長くなり、生産面や経済面等の効率が悪いという問題があり、これらの改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−166880号公報(第1〜11頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、凍結濃縮装置の運転時間を短縮できて、生産面や経済面等の効率を向上できる溶液の凍結濃縮方法を提供できるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る溶液の凍結濃縮方法は、冷却により、被濃縮溶液中に氷結晶を生成させて同溶液を固液混合物化する際に、被濃縮溶液中に氷結晶が発生するタイミングに合わせて同被濃縮溶液を加熱手段によって加熱し、同加熱により、被濃縮溶液中に生じた比較的小なる粒径の氷結晶を融解させてから同被濃縮溶液中に残留する氷結晶を成長させて被濃縮溶液を固液混合物化するものとしてある。
【0008】
また前記被濃縮溶液中に残留する成長途中にある氷結晶を、加熱手段によって1回以上加熱し、同加熱時に、氷結晶の中で比較的大なる粒径の氷結晶を融解方向に指向させて被濃縮溶液を固液混合物化するものとしてある。
【0009】
また前記加熱手段に、通電加熱装置を用いたものとしてある。
【0010】
また前記通電加熱装置に有する一対で設けられる電極を、被濃縮溶液を収容して氷結晶を生成する溶液処理槽の周囲に複数配し、同電極に、同時もしくは所定の順に電流を流すものとしてある。
【0011】
また前記加熱手段に、マグネトロンを用いたものとしてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溶液の凍結濃縮方法によれば、溶液たる被濃縮溶液を固液混合物化する氷結晶生成部において、被濃縮溶液中に氷結晶が発生するタイミングに合わせて同被濃縮溶液を加熱手段によって加熱し、同加熱により、被濃縮溶液中に生じている比較的小なる粒径の氷結晶を融解させてから同濃縮溶液中に残留する氷結晶を成長させて被濃縮溶液を固液混合物化し、すなわち被濃縮溶液中に発生した氷結晶の中で比較的大なる氷結晶だけを成長させるようにしているため、同氷結晶が粗大な氷結晶に成長するまでの時間を短縮でき、したがって凍結濃縮装置の運転時間も短縮できて、生産面や経済面等の効率向上を期することができる。
【0013】
また、被濃縮溶液中に生じている比較的小なる粒径の氷結晶を融解させてから同濃縮溶液中に残留する氷結晶を成長させる際に、1回以上加熱手段によって加熱し、同加熱時に、氷結晶の中で比較的大なる粒径の氷結晶を融解方向に指向させて被濃縮溶液を固液混合物化しているので、成長過程にある氷結晶の粒径が次第に均一化されて、溶液たる被濃縮溶液を固液混合物化する氷結晶生成部における粗大氷結晶への調整時間を短縮できて、これにより濃縮液の品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る溶液の凍結濃縮方法における第1段階を示す図。
【図2】本凍結濃縮方法における第2段階を示す図。
【図3】溶液処理槽に配する電極の一配置例を示す図。
【図4】図3に示した電極間の通電例を示す図。
【図5】溶液処理槽に配する電極の他の配置例を示す図。
【図6】凍結濃縮装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る溶液の凍結濃縮方法を添付図面に基づいて説明する。また実施例では、加熱手段に通電加熱装置を用いた例として説明している。
【0016】
本凍結濃縮方法は、凍結濃縮方法の第1段階として、図1中の(a)図に示すように、凍結濃縮装置(図6を参照)を構成する冷却装置たる掻き取り熱交換器1の氷結晶生成部たる溶液処理槽2内の被濃縮液3が、ブライン4との熱交換作用によって冷却が進行して、同被濃縮溶液3中に氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’、氷結晶(小)8a)が発生するタイミングになった時、これに合わせて溶液処理槽2の周囲に設けている加熱手段たる通電加熱装置の電極5、5´間に、同溶液処理槽2内の被濃縮溶液3中を介して電流5aを流し、同電流5aの流れによって生じる熱で、溶液処理槽2内の被濃縮液3中に発生している氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’、氷結晶(小)8a)の中で比較的小なる粒径の氷結晶(氷結晶(小)8a)を融解する。
【0017】
そして、図1中の(b)図に示すように、被濃縮溶液3中に比較的大なる粒径の氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’)を残し、この氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’)をブライン4との熱交換作用により冷却を進行させて被濃縮溶液2を固液混合物化する。
【0018】
また凍結濃縮方法の第2段階として、必要に応じて前述する図1中の(b)図に示した被濃縮溶液3中に残る比較的大なる粒径の氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’)を、ブライン4との熱交換作用により冷却を進行させて被濃縮溶液3を固液混合物化して行く過程で、図2中の(a)図に示すように、溶液処理槽2の周囲に設けている同通電加熱装置の電極5、5´間に電流5aを流し、同電流5aの流れによって生じる熱で、溶液処理槽2内の被濃縮液3中に発生している氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’)の中で比較的大なる粒径の氷結晶(氷結晶(大)8)を融解方向に指向させ、同融解方向への操作を、1〜n回行いながら被濃縮溶液3を固液混合物化する。
【0019】
そして、上述する被濃縮液3中に発生している氷結晶(氷結晶(大)8、氷結晶(中)8’)の中で比較的大なる粒径の氷結晶(氷結晶(大)8)を融解方向に指向させる通電加熱装置によって行う操作を、ブライン4との熱交換作用により冷却を進行させて被濃縮溶液3を固液混合物化して行く過程で1〜n回行いながら被濃縮溶液3を固液混合物化する。
【0020】
これにより、図2中における説明の中で、溶液処理槽2内における被濃縮溶液3中の氷結晶(氷結晶(大)8)の粒径が次第に同被濃縮溶液3中の氷結晶(氷結晶(中)8’)の粒径に近づいて行きながらそれぞれの氷結晶が成長し、溶液処理槽2内における被濃縮溶液3の固液混合物化が完了するタイミングでは、図2中の(b)図に示すように、同溶液処理槽2内における被濃縮溶液3の粒径が氷結晶(氷結晶(中)8’)の粒径に近い形状で大なる粒径の氷結晶となる。
すなわち、溶液処理槽2内における被濃縮溶液3中の成長過程にある氷結晶の粒径を均一化しながら、同氷結晶を成長させることができる。
【0021】
また、溶液処理槽2の周囲に設ける通電加熱装置の電極は、図1、図2に示したように、対となる電極5、5´を対向させて1箇所に設けたり、図3に示すように、対となる電極5、5´と同じく対となる電極6、6´を各々対向させて2箇所に設けたりする場合がある。
【0022】
そして、電極5、5´間と電極6、6間に流す通電加熱装置の作動時における電流の方向を、例えば図4中の(a)に示すように、電極5から電極5´方向と電極6から電極6´方向に、同時もしくは順に1回以上流したり、また、図4中の(b)に示すように、電極5から電極5´方向と電極6から電極6´方向、電極5´から電極5方向と電極6´から電極6方向に、順にもしくは任意に1回以上流したりする場合もあり、被濃縮溶液3に合わせて好適な通電を行えばよい。
【0023】
さらに、溶液処理槽2の周囲に設ける通電加熱装置の電極は、必要に応じて図5に示すように、対となる電極5、5´と対となる電極6、6´と対となる電極7、7´を各々対向させて3箇所に設けたり、またこれ以上に対となる電極を溶液処理槽2の周囲に設ける場合もある。
【0024】
そして加熱手段は、通電加熱装置と同じように、熱を直接溶液処理槽2内における被濃縮溶液3中の氷結晶に加えることができる915MHzまたは2,450MHzのマイクロ波を照射できるマグネトロンで構成する場合もある。
【0025】
実施例中における符号9は、溶液処理槽2内に設けている掻き取りブレード、また、図6中における符号10は、凍結濃縮装置を構成する例えば遠心分離槽等から構成された分離装置で、同分離装置によって固液混合物化した被濃縮溶液を濃縮液と氷とに分離している。
【符号の説明】
【0026】
1 掻き取り熱交換器
2 溶液処理槽
3 被濃縮液
4 ブライン
5 電極
5´ 電極
5a 電流
6 電極
6´ 電極
7 電極
7´ 電極
8 氷結晶(大)
8’ 氷結晶(中)
8a 氷結晶(小)
9 掻き取りブレード
10 分離槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却により、被濃縮溶液中に氷結晶を生成させて同溶液を固液混合物化する際に、被濃縮溶液中に氷結晶が発生するタイミングに合わせて同被濃縮溶液を加熱手段によって加熱し、同加熱により、被濃縮溶液中に生じた比較的小なる粒径の氷結晶を融解させてから同被濃縮溶液中に残留する氷結晶を成長させて被濃縮溶液を固液混合物化する溶液の凍結濃縮方法。
【請求項2】
前記被濃縮溶液中に残留する成長途中にある氷結晶を、加熱手段によって1回以上加熱し、同加熱時に、氷結晶の中で比較的大なる粒径の氷結晶を融解方向に指向させて被濃縮溶液を固液混合物化する請求項1に記載の溶液の凍結濃縮方法。
【請求項3】
前記加熱手段に、通電加熱装置を用いてなる請求項1または2に記載の溶液の凍結濃縮方法。
【請求項4】
前記通電加熱装置に有する一対で設けられる電極を、被濃縮溶液を収容して氷結晶を生成する溶液処理槽の周囲に複数配してなる請求項3に記載の溶液の凍結濃縮方法。
【請求項5】
前記電極に、同時もしくは所定の順に電流を流してなる請求項4に記載の溶液の凍結濃縮方法。
【請求項6】
前記加熱手段に、マグネトロンを用いてなる請求項1乃至請求項2に記載の溶液の凍結濃縮方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−162451(P2010−162451A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5455(P2009−5455)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(390026974)株式会社東洋製作所 (132)
【Fターム(参考)】