説明

溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物

溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物は、重量%で100%になるように、以下の化学組成、すなわち、40〜45.5%のZrO+HfO、46〜58%のAl、0〜10%の添加剤、0.8%未満のSiO、1.2%未満の不純物を有する。前記混合物は、不純物含有粒子の度合いが2%未満であり、前記混合物のあらゆる粒子の断面で測定されるノジュール濃度が少なくとも全体の50%において500ノジュール/mmを超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に二元共晶に近い割合(ジルコニアは42重量%)でアルミナとジルコニアとからなると共に、改善された研磨性能を有する溶融セラミック粒子の混合物に関する。また、本発明は、本発明による粒子混合物を含む研磨工具、及び、本発明による粒子混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨工具は、通常、研磨工具を構成するセラミック粒子が形成される方法によって以下のように分類される。
(1)遊離砥粒(支持体なしで溶射または懸濁で使用される)、
(2)被覆砥粒(織物または紙タイプの支持体上においてその粒子は数層に積層される)、
(3)固定砥粒(円形の研磨砥石、研磨棒などの形態)。
後者の場合、研磨粒子は、有機結合剤またはガラス質結合剤(この場合、本質的に珪酸塩酸化物からなる結合剤)でプレスされる。これらの粒子は、それ自身が良好な研磨の機械的特性(特に、強靭性)を有しなければならず、結合剤との良好な機械的結合(界面の強度)を提供しなければならない。現在、広範な用途と被覆性能を可能にする様々な種類の研磨粒子がある。溶融合成酸化物粒子は、特に優れた品質と製造コストの折衷案を提供する。
【0003】
本願の詳細な説明において、別途示されない限り、粒子の全組成は、粒子の総重量に基づいて重量%で示される。
【0004】
溶融粒子の分野で、アルミナ及びジルコニアに基づいた材料はUS−A−3181939で知られている。これらの粒子は、一般に、0から10%の添加剤を有する10から60%のジルコニアと残部であるアルミナとからなる。実際には、市販の製品のジルコニア含有量は25%前後か、あるいは、US−A−3891408に記載されているように、アルミナ/ジルコニア共晶混合物のジルコニアの含有量である約42%前後であり、通常、35から50%である。この特許は、その共晶混合物に類似する生成物が用途によってはアルミナ粒子よりも良い性能を有することを示しており、もし、それらが共晶体で急速に凝固するのであれば、層間または繊維間の空間は、4000Å未満である(凝固先端に対して垂直に配向された共晶体を有する)。この特有なタイプの構造体は、グリットの使用期間中に最大限要求される機械強度と、切断表面の良好な再生に必要な微小破壊との間に優れた折衷案を提供する。
【0005】
添加剤として、酸化イットリウムが知られており、US−A−4457767によれば2%まで添加され、特許されたDE−C1−4306966によれば10%まで添加されている。これらの添加剤は、アルミナ/ジルコニア粒子の研磨力を改善する。酸化マグネシウムも考えられる添加剤であるが、若干の含有量で、その存在は、コランダムが消失するまでアルミナを有するスピネルの形態に導き、それによって機械的性能が乏しくなる。
【0006】
US−A−4457767に記載される粒子の例を通じて、NZPlus(登録商標)としてSaint−Gobain(フランス)から販売される粒子について言及する。典型的に、これらの粒子は、39%のジルコニアと、0.8%のYと、0.5%未満の不純物と、残部であるアルミナとを含む。これらの粒子の混合物は、特にステンレス鋼上において、被覆砥粒、または、動作中に高速の材料除去を有する有機結合剤を有する研磨性砥石(荒削り、スカイビングなど)に使用される。
【0007】
同様に、含有量が10から60%のZrO+HfOと、含有量が38から90%のAlとを有する粒子がFR2787106から知られている。これらの溶融アルミナ/酸化ジルコニウム粒子は、還元雰囲気(特に、炉内に炭素源、すなわち、石油コークス、ピッチまたは石炭の添加物を有する)で原料(可変純度を有する)を溶融することによって製造される。その後、溶融材料は、US−A−3993119に示されるように、例えば、薄膜金属プレート間でその液体を冷却する装置によって微細な配向構造の形成に有利に働くために好ましくは急速に冷却される。その冷却された材料は、例えば、ロールミルを用いて粉砕され、その後、選別され、グリットサイズ区分または正確な標準(例えば、FEPA標準)に適合するグリットに分類される。したがって、製造された粒子は、小型(コンパクト)であり、ほとんど縮小されない。それらは、良好な機械特性を有し、有利にはガラス状の結合剤を有する砥石で用いられることができる。
【0008】
しかしながら、ステンレス鋼、または、より一般的には高硬度の高炭素鋼上である特定の低圧粉砕条件下において、従来技術の粒子は、劣った研磨性能を示し、特に、炭素鋼の磨耗で未熟な磨耗性を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、改善された研磨特性を有する溶融アルミナ/ジルコニア研磨粒子の混合物に対する要求がある。本発明の目的は、この要求に応えることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、重量%で以下の化学組成を有する溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物によって達成される。
ZrO+HfO:40〜45.5%、
Al :46〜58%、
添加剤 :0〜10%、
SiO :0.8%未満、
不純物 :1.2%未満。
【0011】
この粒子の混合物は、異物を含む粒子の含有量が2%未満であり、その混合物のあらゆる粒子の断面で測定されるノジュール濃度が、少なくとも50%、好ましくは80%、より好ましくは90%において、500ノジュール/mmを超えることは注目すべきである。
【0012】
今まで、粒子の混合物の特性は、特にこれらの粒子の化学組成を修正することによって改善された。例えば、ジルコニア/アルミナ共晶に近づくように化学組成を選択することによって(US3891408)、US4035162、EP595081またはUS4216429に記載されるようにジルコニア安定剤や他の化合物を付加することによって、酸化還元状態を代表として原料中の不純物含有量や粒子中の残余の炭素含有量を変更することによって(US5567214)改善された。本発明による粒子の組成は、例えば、FR2787106で知られている。
【0013】
初めて本発明者は、溶融アルミナ/ジルコニア粒子の研磨特性が、異物を含む混合物の粒子の含有量とその粒子のノジュールの量とに依存することを観測した。特に、600から3500ノジュール/mmのノジュール濃度は、その粒子の研磨特性を改善するために有利であることが分かり、異物を含む混合物の粒子の含有量は2%未満に定められる。
【0014】
好ましくは、本発明による粒子の混合物は、以下の特徴を有する。
(1)そのノジュール濃度は、600ノジュール/mmを超え、より好ましく900ノジュール/mmを超える。
(2)そのノジュール濃度は、2500ノジュール/mm未満であり、好ましくは2000ノジュール/mm未満であり、より好ましくは1500ノジュール/mm未満である。
(3)その混合物は、異物を含む粒子の含有量が多くても1.5%である。
(4)その添加剤は、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ネオジム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、及び、他の希土類の化合物、または、それらの混合物からなる群から選択される。
(5)重量%で以下の化学組成である。
:0.1〜1.2%、及び/又は、
TiO :0.1〜3%、及び/又は、
SiO :0.4%未満、及び/又は、
ZrO+HfO:42〜44%。
(6)プライマリージルコニアを含む粒子の含有量は、20〜45%である。
(7)プライマリーコランダムを含む粒子の含有量は、0〜20%である。
(8)500から600μmの大きさを有する前記混合物の粒子によって形成されたサブアセンブリは、異物を含む粒子の含有量が2%未満であり、好ましくは1.5%未満であり、及び/又は、プライマリージルコニアを含む粒子の含有量が20〜45%であり、及び/又は、プライマリーコランダムを含む粒子の含有量が0〜20%である。
(9)好ましくは、本発明による混合物の粒子は、グリット12からグリット220の大きさを有し、より好ましくは、グリット16からグリット80の大きさを有する。それによって、その研磨性能が改善される。
【0015】
本発明は、フレキシブルな基材上に結合剤によって結合され、又は、層として積層され、及び、結合剤によって保持される研磨粒子の混合物を含む研磨工具に関し、前記混合物は、本発明によるものである。
【0016】
最後に、本発明は、本発明による粒子の混合物を製造する方法に関し、
(a)原料を混合する段階と、
(b)溶融液体が得られるまで前記混合原料を溶融する段階と、
(c)固体塊が得られるまで前記溶融液体を急冷することによって前記溶融液体を冷却する段階であって、好ましくは、前記溶融液体が3分間未満で完全に固化するように急冷する段階と、
(d)前記固体塊を粉砕して粒子混合物を得る段階、及び、任意に前記混合物のグリットサイズ分類を得る段階と、を連続的に含み、
前記原料は、前記混合物の粒子が本発明による混合物の粒子の原料に従う化学組成を有するように選択される。
【0017】
この方法は、本発明による粒子の混合物を得るために最終選別段階を含むという点で注目すべきである。
【0018】
好ましくは、前記粉砕段階後に、FEPA標準に従ったグリット12からグリット220の大きさ、より好ましくはグリット16からグリット80の大きさを有する粒子が選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明を読み、本発明による混合物の粒子の表面の写真を示す添付された図1から4を見ることによって明らかになるであろう。それらの図では、ノジュール、異物(インクルージョン)、プライマリーコランダム結晶、及び、プライマリージルコニア樹枝状結晶がそれぞれ囲まれている。
【0020】
本発明による混合物の粒子の酸化物含有量は、最も安定な酸化物の形態で表され、この分野の標準的な慣習に従う、対応する化学組成の各々における総含有量に関連する。従って、亜酸化物、任意に窒化物、酸窒化物、炭化物、炭酸化物、炭窒化物、または、上記元素の金属種でさえも含まれる。
【0021】
全ての他の化合物、特に、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭酸化物、炭窒化物、及び、ナトリウム及び他のアルカリ金属の金属種、鉄、シリコン、バナジウム及びクロムからなる群の一部を形成する化合物は、“不純物”と見なされる。生来2%未満の含有量でジルコニア源内に存在する酸化ハフニウムは、不純物として見なさない。残留炭素は、“C”として表現されるが、本発明による混合物の粒子の組成の不純物の一部を形成する。
【0022】
“添加剤”という用語には、溶融アルミナ/ジルコニア粒子の製造で通常使用される添加剤が含まれ、特に、ジルコニア安定剤、特には、酸化イットリウム及び酸化チタンが含まれる。酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び、希土類の他の酸化物、特に、酸化ネオジムだけではなく、ランタン、セリウム、ジスプロシウム及びエルビウムの酸化物も含まれる。“添加剤”という用語には、前述の種類の混合物も含まれる。
【0023】
本発明による溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物は、共晶構造の形成を促進するために40から45.5%の含有量のZrO+HfOを有する。
【0024】
好ましくは、本発明による混合物の粒子のジルコニアは、単斜晶形態を失って正方晶の同素形で主に存在する。
【0025】
“ノジュール”という用語は、金属タイプ(主に、Al、Zr、または、ZrSi)の欠陥または炭化物タイプ(ZrC、AlC)の欠陥を示し、そのサイズは10μmを超えない。ノジュールは、実質的に球形で分離した粒子(互いに分離している)の形態で主に存在する。ノジュール濃度とは、粒子の断面の面積の平方ミリメートル当りのノジュールの数である。
【0026】
“異物(インクルージョン)”という用語は、炭化物タイプの欠陥を示し、それは主にZrCからなり、そのサイズは10μmより大きい。異物は、主に細長い形態で存在し、互いに接触している連続した又はクラスタ状の炭化物粒子からなる。異物を含む粒子の含有量とは、少なくとも1つの異物を含む粒子の数の割合である。
【0027】
ノジュールの“大きさ”または異物の“大きさ”は、研磨された部分の観察平面で測定される最も長い寸法と定義される。
【0028】
“プライマリージルコニア”という用語は、通常、樹枝状形態のあらゆる欠陥を示し、その起源はジルコニアである。プライマリージルコニアを含む粒子の含有量は、パーセント(%)で表されが、研磨部分の問題となる粒子の総数に対するプライマリージルコニアを有する粒子の数の比で与えられる。
【0029】
“プライマリーコランダム”という用語は、通常、アルミニウム起源の樹枝状またはプレデントリック形態のあらゆる欠陥を示す。図3に示されるように、顕微鏡でプライマリーコランダムはダークグレーで現れる。プライマリーコランダムを含む粒子の含有量は、パーセント(%)で表されが、研磨部分の問題となる粒子の総数に対するプライマリーコランダムを有する粒子の数の比で与えられる。
【0030】
図4に示されるように、顕微鏡でプライマリージルコニアはライトグレーで現れる。プライマリージルコニアを含む粒子の含有量、プライマリーコランダムを含む粒子の含有量、異物を含む粒子の含有量、及び、ノジュールの濃度は、好ましくは、25mmの直径で500から600μm(グリット36の主要なスライス)の間のサイズを有し、透過性のある有機樹脂に組み込まれた混合物の研磨粒子によって形成される円筒状のアセンブリの研磨断面で決定される。
【0031】
本発明による混合物の粒子は、溶融アルミナ/ジルコニア粒子を製造するための通常の方法によって製造され、それには最終の選別段階が付加される。
【0032】
通常の方法は、一般に、原料を混合する段階、アーク炉で溶融する段階、その溶融液を急速冷却する段階、粉砕する段階、及び、グリットサイズ区分に従う任意の分類段階を含む。
【0033】
溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物の特性は、溶融液の熱挙動に依存し、それ自身は処理パラメータに依存するだけではなく、炉の配置やその周囲環境(燃焼排ガス収集、材料など)にも大いに依存する。従って、処理パラメータの値は、これらの段階の最後に本発明による粒子の混合物を得ることができるように、使用する炉、使用する原料などに従って決定される。このパラメータは、例えば、以下に例として使用される処理値を用いても良い。
【0034】
従って、従来の処理の最終段階の後に、得られる粒子のアセンブリの異物を含む粒子の含有量と粒子のノジュール濃度は、サンプリングによって測定されなければならない。本発明による混合物の特徴を有する粒子の混合物は、その後、選別される。
【0035】
異なるパラメータを有する通常の処理によって得られる様々な混合物を混合することによって本発明による混合物を製造することも可能である。
【0036】
研磨性能における効果は、500ノジュール/mmを超えるノジュール濃度を有する粒子の割合が高くなればなるほど、より顕著である。
【0037】
好ましくは、この割合は、パーセントで少なくとも50%であり、より好ましくは80%であり、さらに好ましくは90%である。より好ましくは、その混合物の粒子の実質的に全て(少なくとも99%)が、そのようなノジュール濃度を有する。経済的理由で、又は、他の利点を得るために、本発明の粒子の混合物が得られるまで、数種の混合物を混合することが好ましい。
【0038】
限定されない次の例は、本発明を例示するために与えられる。
【0039】
参照的な粒子の混合物は、還元条件で製造され、上述されたNZPlus(登録商標)という名称で販売されている溶融アルミナ/ジルコニア粒子に基づいている。
【0040】
例として与えられた生成物は、以下の原料から製造された。
(1)0.3%未満の水酸化ナトリウムを有するアンダーカルシンベイヤー(登録商標)アルミナ(undercalcined Bayer alumina)、
(2)98%を超える含有量を有するジルコニア+ハフニアを有するジルコニア粉末、
(3)石油コークス、
(4)アルミニウム金属のチップ。
【0041】
酸化イットリウムは、添加剤として使用され、98%を超える酸化イットリウムを含む純粋な材料として供給された。
【0042】
その生成物は、以下の段階を含む、この分野の当業者によく知られた通常の方法によって調製された。
(1)原料を混合する段階、
(2)直径0.8mの炉管を用いて、105から150Vの電圧、2200から2500Aの電流、2.2から2.8kWh/kgの供給される特定の電力の印加で、黒鉛電極を有するエルータイプ(Heroult type)の単相アーク炉で溶融する段階。
炉の状態に依存して、最少量である0.5%(最大3%)の石油コークスと約0.5から5.5%のアルミニウムチップが、生成された組成物に導入された。その後、溶融液体は、US−A−3993119で与えられるような、薄い金属プレート間でその液体を一体成型する装置を用いて急速に冷却された。その後、その粒子は粉砕され、それらのグリットサイズによって分類され、グリット12からグリット220のグリットサイズ、すなわち、45μmから2.8mmのサイズを有する粒子が保持された。
【0043】
得られた粒子は、蛍光X線によって化学的に特徴付けられた。全ての化学的な分析データは、表2に与えられる。不純物(残余の炭素を除いて)の含有量は、0.3から0.8%である。残部は、アルミナの含有量に相当する。
【0044】
ノジュールの濃度、異物を含む粒子の含有量、プライマリージルコニアを含む粒子の含有量及びプライマリーコランダムを含む含有量は、写真の視覚的な解析によっても測定される。写真(図1から4)は、ビジログ(登録商標)ソフトウエア(Visilog software)を備える画像解析部に接続されるリーチャー(登録商標)電子顕微鏡(Reichert microscope)を用いて得られた。測定は、透明な有機樹脂に埋め込まれた研磨粒子からなる直径25mmの研磨断面で行われた。その粒子は、500から600μmのサイズを有する研磨断面に含まれている。
【0045】
顕微鏡で撮られた写真で、ノジュールは非常に明るいライトグレーとして現れる(図1参照)。
【0046】
ノジュール濃度を評価するために、その顕微鏡は200倍に設定された。その後、ノジュールの存在の兆候となる10μm以下のサイズを有する明るくて白いスポットの数が数えられた。観測された領域におけるノジュールの数をその面積で割ることによって、粒子の研磨部分の面積の平方ミリメートル当りのノジュールの数が得られる。その計算は、その粒子の研磨部分の2つの他の領域で繰り返し行われた。3つの測定の平均を所定の試料におけるノジュール濃度とした。
【0047】
異物は、顕微鏡で非常に明るいライトグレーで現れる(図2の写真を参照)。
【0048】
異物を含む粒子の含有量を評価するために、顕微鏡は50倍にセットされた。少なくとも1つの視認可能な異物を有している粒子の数は、表示された画像内で数えられた。計数は、直径25mmの研磨断面の全領域にわたって実行された。10μmを超える炭化物起源の少なくとも1つの明るいスポットがその粒子内で観測されるとき、粒子は、異物を有すると見なした。異物を有する粒子の含有量は、計数された粒子の数に対する少なくとも1つの異物を有する粒子の数の比によって与えられた。
【0049】
プライマリーコランダムを含む粒子の含有量を評価するために、顕微鏡は100倍に設定された。1つ又は他の領域の合計100個の粒子が計数されるまで、プライマリーコランダムの樹脂状結晶を有する粒子の数と、プライマリーコランダムを含まない粒子の数とが計数された。少なくとも1つのプライマリーコランダムの樹脂状結晶がその粒子内に観測されると、粒子はプライマリーコランダムを有すると見なした。プライマリーコランダムを含む粒子の含有量は、計数された粒子の総数に対するプライマリーコランダムを有する粒子の数の割合でパーセントで与えられる。
【0050】
プライマリージルコニアを含む粒子の含有量を評価するために、顕微鏡は100倍に設定された。1つ又は他の領域の100個の粒子が計数されるまで、プライマリージルコニアの樹脂状結晶を有する粒子の数と、プライマリージルコニアを含まない粒子の数とが計数された。少なくとも1つのプライマリージルコニアの樹脂状結晶がその粒子内に観測されると、粒子はプライマリージルコニアを有すると見なした。プライマリージルコニアを含む粒子の含有量は、計数された粒子の総数に対するプライマリージルコニアを有する粒子の数の割合でパーセントで与えられる。
【0051】
その粒子の機械的特性を実証するために、以下の試験が実行された。
【0052】
(試験A):研磨力の決定
試験Aの目的は、スチール製の粉砕ジャーの材料を引き裂くために試験された粒子の性能を決定することである。
【0053】
その試験の前に、粒子の混合物は、破片を分離し、この試験に有用なFEPA標準に従うF24粒子(グリット24)を表す710/850μmの破片を隔離するために、この分野で標準的なロタップ(登録商標)タイプ(ROTAP type)の振動篩で選別された。
【0054】
分配された破片は、粉砕による不純物の兆候を示す金属の鉄を抽出するために、磁気分離を用いて脱鉄動作を経た。それから、それは150℃で15分間オーブン処理に晒され、その後、デシケータで冷却された。化学分析のために粉末を粉砕するために一般に用いられるT100型のAUREC(登録商標)ロータリーミル(T100 type AUREC rotary mill)がその試験のために使用された。この粉砕機は、6つのバネを有する懸濁(サスペンション)と、試験された粒子を含む中空の円筒ジャー上に配置され、パレットと自由にスライド可能なリングが設定された。スチール(Z160 C12等級)から作られている円筒状の粉砕ジャーは、高さ50mm、内径139mmを有していた。そのパレットは、Z200C12等級のスチールから作られている中実の円筒(直径75mm、高さ45mm)であり、1546グラムであった。その円筒状のリング(内外径が95/120mm、高さ45mm)は、同じ等級(Z200C12)のスチールから作られており、1464グラムであった。
【0055】
試料に対する試験Aは、以下の段階を含む。
(1)そのジャーは、圧縮空気で清浄された。
(2)問題となるグリットサイズ分布で試験される25グラムの生成物のバッチは、リングと粉砕ジャーのパレットとの間に導入された。AUREC(登録商標)粉砕機(AUREC mill)が始動され、150秒間、公称速度(1400rpm)で回転した。粒子は、そのパレットとリングの衝撃によってのみストレスを受けた。その後、その粉末と粒子は、鉄成分を解析するために粉砕ジャーからブラシ(番号50)を用いて取り出された。
(3)粉砕後、試験された試料の鉄の含有量の割合が測定された。この鉄は、粉砕中にその混合物の粒子によって引き剥がされたスチールからのものである。研磨力(試験A)は、パーセントで与えられるが、参照的な粒子の混合物によって引き剥がされた鉄の含有量の割合に対する鉄の含有量の割合の比に相当する。試験Aでの高い値は、その粒子が高い研磨力を有することを示す。
【0056】
(試験B):衝撃力の決定
試験Bの目的は、スチール製の粉砕ジャー内でストレスを受けた後、所定のグリットサイズの分布スライス、すなわち、710から850μmの残っている粒子の破片を決定することであり、これは、その粒子の機械的な強度の動的評価を構成する。
【0057】
試験Bにおける試料は、試験Aの場合のように調製された。
【0058】
従って、試料における試験Bは、以下の段階を含む。
(1)そのジャーは、圧縮空気で清浄された。
(2)問題となるグリットサイズ分布で試験される25グラムの生成物のバッチは、リングと粉砕ジャーのパレットとの間に導入された。AUREC(登録商標)粉砕機(AUREC mill)が始動され、5秒間、公称速度(1400rpm)で回転した。その後、その粉末と粒子は、鉄成分を解析するために粉砕ジャーからブラシ(番号50)を用いて取り出された。従って、その生成物は、直径200ミリの一連のスクリーンで以下の篩T1を用いて12分間選別された。
【0059】
【表1】

【0060】
“T1+T2”は、第1の2つの篩のオーバーサイズの合計を重量で示す(例えば、710/850μmのスライスの場合には、710μm+425μm)。衝撃力の値(テストB)は、パーセントで与えられるが、参照試料の“T1+T2”値に比べた試験された試料の“T1+T2”の値に相当する。高い値は、粒子の良好な衝撃強度に対応する。
【0061】
試験A及びBの結果が同一方向において常に変化しないということは当業者には知られている。特に、試験Aでは、生成される粒子の性能に関連する研磨力が評価される。従って、その粒子は、ある“脆性”を有しなければならない。対照的に、段階Bでは、マクロ破砕に対する粒子の抵抗が測定される。これらの2つの測定値が相反していることは明らかに理解されるであろう。従って、良好な粒子は、試験Aと試験Bとにおいて良好な妥協点を有する粒子である。この理由で、試験A及びBの結果A及びBの平均値Cは、表2に与えられる。因子Cが参照値の110%を超える場合、その粒子は、特に従来技術の粒子に対して改善されたと見なされる。
【0062】
【表2】

【0063】
表2において、“nd”は“決定されなかった”ことを意味する。
【0064】
もし、表2のデータが研磨力(試験A)に関して分類される場合、690から2240ノジュール/mmのノジュール濃度が好都合なこの基準において特に有利であることは明らかである。好ましくは、ノジュール濃度は500より大きく、より好ましくは、600より大きく、さらに好ましくは、900ノジュール/mmより大きく2500未満であり、好ましくは1500ノジュール/mm未満である。異物を含む混合物の粒子の含有量は、好ましくは1.5%未満である。
【0065】
もし、表2のデータが衝撃力(試験B)の関数として分類される場合、高いノジュール濃度は、好都合なこの基準に対して特に有利であることは明らかであり、異物を含む粒子の含有量が2%未満のままであることが提供される。好ましくは、衝撃力を向上させるために、そのノジュール濃度は、950ノジュール/mmより大きく、より好ましくは、1000ノジュール/mmより大きい。
【0066】
上記の試験は、グリットの性能がこの構造物に関係しているということを示す。 定められたノジュール濃度(好ましくは600から3500/mm)に関連する異物を含む粒子の低含有量は、改善された特徴を有する粒子の混合物を得ることを可能にすることが見られる。
【0067】
42から44%のジルコニアの割合を有する粒子が最も好ましい。それは、これが純粋な共晶混合物に近い構造の形成に有利にはたらくからである。0から20%の混合物のプライマリーコランダムを含む粒子の含有量、20%より多い、好ましくは30から80%である、さらに好ましくは30から50%である混合物のプライマリージルコニアを含む粒子の含有量が好ましい。
【0068】
あらゆる理論的な議論によって縛り付けられることを望むことなく、各々の研磨粒子が、Al/ZrO共晶混合物の成長の先端部に沿って配向され、結晶粒界、より具体的には“セル粒界”と呼ばれる粒界で分離された共晶混合物セルからなるので、ノジュールの存在は、破砕の大きさが減少されることを可能にするということがあり得る。共融混合物セル内のノジュールのようなミクロ欠陥の存在は、破砕が好ましくはセル粒界では起こらなく、存在する共晶混合物セル内でも優先的に起こらないことを意味する。従って、グリットのムラは微細であり、その粒子がより低い力の階級で規則的に微小破壊する。これは、磨耗によってそれらの摩耗性を限定する一方で、それらの切断端部の継続的な再生によってそれらの研磨力を改善することを可能にする。
【0069】
もちろん、本発明は、記述された実施形態に限定されるものではなく、実施形態は限定されない説明的な実施例として提供されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ノジュールを示す顕微鏡写真である。
【図2】異物を示す顕微鏡写真である。
【図3】プライマリーコランダムを示す顕微鏡写真である。
【図4】プライマリージルコニアを示す顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計が100重量%になるように以下の化学組成を有する溶融アルミナ/ジルコニア粒子の混合物であって、
前記混合物は、異物を含む粒子の含有量が2%未満であり、
前記混合物のあらゆる粒子の断面で測定されるノジュール濃度は、少なくとも全体の50%において500ノジュール/mmを超えることを特徴とする混合物。
ZrO+HfO:40〜45.5%、
Al :46〜58%、
添加剤 :0〜10%、
SiO :0.8%未満、
不純物 :1.2%未満。
【請求項2】
前記混合物のあらゆる粒子の断面で測定される前記ノジュール濃度は、少なくとも全体の90%において500ノジュール/mmを超えることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記ノジュール濃度は、900ノジュール/mmを超えることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記ノジュール濃度は、2000ノジュール/mmを超えることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
前記混合物は、前記異物を含む粒子の含有量が多くても1.5%であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記添加剤は、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ネオジム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、及び、他の希土類の化合物、または、それらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の混合物。
【請求項7】
重量%で以下の化学組成であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の混合物。
:0.1〜1.2%、及び/又は、
TiO :0.1〜3%、及び/又は、
SiO :0.4%未満、及び/又は、
ZrO+HfO:42〜44%。
【請求項8】
プライマリージルコニアを含む粒子の含有量は、20〜45%であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の混合物。
【請求項9】
プライマリーコランダムを含む粒子の含有量は、0〜20%であることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の混合物。
【請求項10】
500から600μmの大きさを有する前記混合物の粒子によって形成されたサブアセンブリは、異物を含む粒子の含有量が2%未満であり、及び/又は、プライマリージルコニアを含む粒子の含有量が20〜45%であり、及び/又は、プライマリーコランダムを含む粒子の含有量が0〜20%であることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の混合物。
【請求項11】
前記粒子は、FEPA標準に従って、グリット12からグリット220の大きさ、すなわち、45μmから2.8mmの大きさを有することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の混合物。
【請求項12】
フレキシブルな基材上に結合剤によって結合され、又は、層として積層され、及び、結合剤によって保持される研磨粒子の混合物を含む研磨工具であって、
前記混合物は、請求項1から11の何れか一項に記載の混合物であることを特徴とする研磨工具。
【請求項13】
粒子混合物を製造する方法であって、
(a)原料を混合する段階と、
(b)溶融液体が得られるまで前記混合原料を溶融する段階と、
(c)固体塊が得られるまで前記溶融液体を急冷することによって前記溶融液体を冷却する段階と、
(d)前記固体塊を粉砕して粒子混合物を得る段階、及び、任意に前記混合物のグリットサイズ分類を得る段階と、を連続的に含み、
前記原料は、重量%で以下のような化学組成を有する前記混合物の粒子から選択され、
請求項1から11の何れか一項による粒子混合物を得るために最終選別段階を含む、粒子混合物の製造方法。
ZrO+HfO:40〜45.5%、
Al :46〜58%、
添加剤 :0〜10%、
SiO :0.8%未満、
不純物 :1.2%未満。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−503437(P2008−503437A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517364(P2007−517364)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001587
【国際公開番号】WO2006/010823
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(506426269)サン−ゴベン・セントル・ドゥ・レシェルシェ・エ・デチュード・ユーロペアン (42)
【Fターム(参考)】