説明

溶融亜鉛めっき方法

【課題】 浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物において、有害なPbを含まず、しかも流動性が高く、良好なめっき皮膜を形成することが可能な溶融亜鉛めっき浴組成物を提供する。
【解決手段】 浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物及びそれを用いた溶融亜鉛めっき方法に係わり、更に詳しくはPbを含有しない溶融亜鉛めっき浴組成物及びそれを用いた溶融亜鉛めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送電鉄塔や道路施設関係の鋼材、更には建築構造物の鋼材に耐食性を付与する方法として、溶融亜鉛めっき処理が良く知られている。この溶融亜鉛めっきは、フラックス処理した鋼材をめっき浴中に浸漬し、引き上げるという簡便な浸漬法で行うことができ、鋼材の耐食性を高めるのに優れた処理である。溶融亜鉛めっき処理時に、鋼材の微小隙間内までめっき浴組成物が侵入し易くし、また引き上げる際の液切れを良くするために、めっき浴組成物にPbを微量添加してめっき浴の粘性を下げて流動性を高めている。
【0003】
従来から、鋼材や鋼板の溶融亜鉛めっき処理は、広く使用されており、例えば特許文献1には、Al0.1〜0.3重量%、Pb或いはSbの1種0.02〜0.2重量%、を含有し、さらに、Ni及びCoの1種或いは2種0.001〜0.2重量%を含有し、残部Znと不可避不純物としてFeを含有する溶融亜鉛めっき浴組成物が開示されている。また、特許文献2には、Ni、Co、Tiから選ばれた1種または2種以上合計0.001〜0.5重量%、Al0.1〜0.5重量%、Pb1重量%以下を含有し、残部Znおよび不可避不純物とする溶融亜鉛めっき浴組成物が開示されている。そして、特許文献3には、Zn以外に、Al:0.001〜4%、Ni:0.001〜3%、Pb:0.001〜1%等を含有する溶融亜鉛めっき浴組成物が開示され、更にこのめっき浴組成物にはCr:0.001〜0.05%、Cd:0.001〜3%を始めその他に多種類の元素を含有している。
【0004】
このように、長年にわたって溶融亜鉛めっき浴組成物中にPbを微量添加し、めっき処理の効率化、めっき皮膜の外観性向上を図ってきていたが、近年においては、環境問題の観点からPbの使用を規制するようになってきた。特に、2003年2月13日に、EUにおいて出されたRoHS指令がある。このRoHS指令は、EU加盟国で流通する電気・電子機器に対する特定有害物質の使用を制限するものであり、2006年7月1日以降、EUでは4つの重金属(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)と2つの臭素系難燃剤(ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の特定有害物質を許容量以上含む製品は販売できなくなる。対象範囲は、電気・電子機器等の民生品であるが、その部品として、あるいは筐体や架台として溶融亜鉛めっき処理を施した鋼材や鋼板が使用されることは十分可能性がある。
【0005】
一方、コンピュータ等の情報電子機器の分野において、その筐体や架台において電気亜鉛めっき皮膜からウィスカーが発生して、これが飛翔して電子基板に形成したマイクロ電子回路上に堆積し、回路を短絡して誤動作を起させたり、回路を破壊する等の問題が発生している。このように、従来は電気亜鉛めっきを施していた電気、電子機器において使用する部品においてもウィスカーが発生し難い溶融亜鉛めっき処理へ変更することが検討され、ますます溶融亜鉛めっき処理が注目されてきた。
【特許文献1】特開平05−098407号公報
【特許文献2】特開平08−060329号公報
【特許文献3】特許第3631710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のRoHS指令は、EU加盟国におけるものであるが、産業のグローバル化によって製品が全世界に流通するようになり日本も無視できなくなっており、それに対応することは緊急の課題である。また、日本国内でも独自の環境基準を設けている企業も増え、日本独自のより厳しい環境基準を法制定する動きもある。
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物において、有害なPbを含まず、しかも流動性が高く、良好なめっき皮膜を形成することが可能な溶融亜鉛めっき浴組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物を構成した(請求項1)。
【0009】
また、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Inが0.05〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物を構成した(請求項2)。
【0010】
更に、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、Inが0.01〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物を構成した(請求項3)。
【0011】
そして、請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて、一浴法にて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法を提供する(請求項4)。
【0012】
あるいは、二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成する溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法であって、請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき浴組成物を一浴目に使用して、鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜の下地層を形成し、それからZn−Al合金めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法を提供する(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物は、Pbを始め、RoHS指令で指定された特定有害物質を全く含有していないので環境汚染の心配がないものである。また、溶融亜鉛めっき処理時に、鋼材の微小隙間内までめっき浴組成物が侵入し易くし、また引き上げる際の液切れを良くするために、めっき浴組成物にBiを0.01〜0.08重量%又はInを0.05〜0.1重量%、あるいはBiを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%を添加しているので、従来のPbを含有した溶融亜鉛めっき浴組成物と同様な良好な流動性を有し、また鋼材の表面に施された溶融亜鉛めっき皮膜の外観性が優れ、また耐食性にも優れて総合的な皮膜性質も良好である。また、Alを0.001〜0.01重量%含有させてFe−Zn合金相の形成を抑制しているので、めっき皮膜の密着性も良好であるとともに、Alが含有しているにも係わらず、通常の塩化アンモニウムを主体としたフラックス液を使用して、めっき温度も低温にできるので、鋼材の熱変形も抑制できるのである。
【0014】
本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて、一浴法にて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成することにより、RoHS指令にも対応したPbを含有しない溶融亜鉛めっき鋼材を供給することができる。また、本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物を、二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成するための一浴目に使用することにより、耐食性に特に優れた溶融亜鉛アルミニウム合金めっき鋼材を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の詳細を実施形態に基づき更に詳しく説明する。本発明は、送電鉄塔や架空金物等の電力通信設備関係の鋼材、橋梁やガードレール、グレイチング等の道路施設関係の鋼材、鉄骨や非常階段等の建築関係の鋼材、ボディ鋼板等の自動車関係の鋼材、電気・電気機器の筐体、架台等の一般民生品用の鋼材の表面に、耐食性を高めるために亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物である。そして、本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物の特徴は、Pbを始め、RoHS指令で指定された特定有害物質を全く含有していないことである。また、本発明は、一浴によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成する場合にも、また二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成するための一浴目に使用する場合にも適用できるものである。
【0016】
本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物は、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物である。あるいは、Biの代わりに、Inを0.05〜0.1重量%添加する。あるいはBiを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%混合して添加する。
【0017】
ここで、Alは、溶融亜鉛めっき浴に鋼材を浸漬した際に、鋼材との界面に堅くて脆い性質を持つFe−Zn合金相の成長を抑制し、めっき皮膜の密着性を改善する。Alの含有量が、0.001重量%よりも少ないとFe−Zn合金相抑制効果が乏しく、また0.01重量%より多いと不めっきが発生するばかりでなく、めっき浴組成物の溶融温度が高くなってめっき温度も高く設定しなければならず、鋼材の熱応力による変形が無視できなくなる。そのため、Alの含有量を0.001〜0.01重量%とした。更に好ましくは、Alの含有量を0.001〜0.005重量%とする。
【0018】
また、Niは、溶融亜鉛めっき浴に鋼材を浸漬した際に、鋼材表面にFe−Ni合金相を形成し、Alと共にFe−Zn合金相の成長を抑制し、また合金化処理をした場合にはFe−Zn−Al−Ni4元系合金相を形成するため、めっき剥離の原因となるFe−Zn2元系合金相の形成を抑制する。Niの含有量が、0.01重量%より少ないとFe−Zn合金相抑制効果が乏しく、また0.05重量%より多いとその効果が飽和して経済的でない。そのため、Niの含有量を0.01〜0.05重量%とした。
【0019】
そして、Biは、めっき浴組成物の流動性を高めて濡れ性を向上させるとともに、不めっき抑制の効果を有し、0.01重量%より少ないとその効果が乏しく、また0.08重量%より多いとスパングルの発生や黒変等の問題が生じる。そのため、Biの含有量を0.01〜0.08重量%とした。更に好ましくは、Biの含有量を0.01〜0.05重量%とし、高価なBiの使用量を少なくする。
【0020】
また、Inは、Biと同様にめっき浴組成物の流動性を高めて濡れ性を向上させる作用を有するが、Biよりも効果は少ない。従って、Inの添加量は、Biよりも多く、0.05〜0.1重量%添加する。Inの添加量が、0.05重量%より少ないとその効果が乏しく、また0.1重量%より多いと効果が飽和する。
【0021】
尚、Biの添加量を増やすと、スパングルの大きさが大きくなるのに対し、Inの添加量を増やすとスパングルの大きさが小さくなる傾向があるので、BiとInを混合して添加することにより、更に良好な溶融亜鉛めっき皮膜が得られることになる。その場合、めっき浴組成物の流動性はBiの添加で確保しているので、In単独で使用する場合によりも添加量を少なくして、スパングルの大きさ抑制の効果を期待できれば良いのである。従って、Biを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%混合して添加するのである。
【0022】
本発明による溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて、鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成するには、先ず鋼材を脱脂、酸洗い、水洗した後、酸化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液若しくは塩化アンモニウムだけを含有する水溶液からなるフラックス液に浸漬した後、所定温度に設定した溶融亜鉛めっき浴に所定時間浸漬し、所定速度で引き上げ、空冷又は水冷し、鋼材の表面に所定厚さの溶融亜鉛めっき皮膜を形成するのである。
【実施例1】
【0023】
本発明の溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成した実施例を以下に説明し、Biを添加した効果を確認した。めっき条件は以下の表1に示している。
【0024】
【表1】

【0025】
試験鋼材は、C:0.035重量%、Si:0.01重量%、Mn:0.17重量%、P:0.012重量%の低シリコン鋼材である。
【0026】
外観とタレの検査は、図1に示すような、下端が尖った五角形状の厚さ2.3mmの前述の鋼材からなる試験片1(70mm×150mmの外形)を用いた。そして、この試験片1の外観を目視で観察した。また、タレの度合いは、図2に示すように、試験片1に付着しためっき皮膜2の略一様な厚さで形成された上部のめっき皮膜2を含む全体の厚さt1と、下端部の最も膨らんだ部分のめっき皮膜2を含む全体の厚さt2の差(t2−t1)をタレ厚さtとして評価した。
【0027】
また、浸透性の検査は、図3に示すように、前述の鋼材からなる70mm×150mm×2.3mmtの基板3の下部の片面に、下端部を余して厚さが20mm×30mm×1.0mmtのステンレス板4,4をスペーサとして両側に配置し、その上に前述の鋼材からなる70mm×30mm×2.3mmtの短板5を重ね、両側を金属製のクリップ6,6で保持した試験部材を用意した。それにより、前記基板3と短板5との間に、横幅が30mmで上下長さが30mm、間隔が前記ステンレス板4の厚さ1.0mmの隙間を形成した。そして、この隙間への溶融亜鉛めっき浴組成物の浸透性は、この隙間に浸透した亜鉛の付着率(30mm×30mmの面積に対する亜鉛付着部の面積の割合%)で評価した。
【0028】
上記試験片と試験部材によって評価した外観、タレ、浸透性の結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
この表2の結果、蒸留亜鉛1種のZnを用いた場合、Bi濃度が0%でもタレと浸透性が良好な結果が得られたが、蒸留亜鉛1種には不純物として無視できない濃度のPbが含有されているものと推測される。この点を考慮にいれて外観、タレ、浸透性を総合的に評価するとBiの濃度として0.01〜0.08重量%の範囲が好ましく、特に0.01〜0.05重量%の範囲が最適であることがわかった。
【実施例2】
【0031】
次に、亜鉛めっき浴の流動性、隙間への浸透性を高める目的でBiの代わりにInを添加した実験及びBiとInを同時に添加した実験を行った。めっき条件は表3に示している。
【0032】
【表3】

【0033】
Bi、Inを各濃度添加した時の外観(スパングルの有無)、タレ、隙間への浸透性について得られた結果を表4に示す。ここで、タレ、隙間への浸透性の検査方法は、前述と同様である。
【0034】
【表4】

【0035】
この結果、Biと同様にInも所定量添加することにより流動性は改善されることが分かった。図4〜図7にはその詳細が示されている。
【0036】
つまり、図4は、Bi濃度とスパングルの大きさの関係を示し、Bi濃度を高めると、亜鉛めっき浴の流動性は高くなる反面、スパングルの大きさが大きくなって外観性が低下する傾向があることを示している。
【0037】
図5は、BiとInをそれぞれ単独で添加した場合の濃度とタレ厚みの関係を示している。図5において、従来の溶融亜鉛めっきによる結果をPWとして比較表示している。ここで、通常は溶融亜鉛めっきにおいて、タレ厚みが0.8mmより薄いと良好なめっき皮膜が得られ、タレ厚みが0.8mmより厚いとめっき不良とされる。この結果、Biは添加濃度が0.01重量%以上になるとタレ厚みの基準を満たし、濃度の増加とともにタレ厚みが減少するが、0.08重量%程度でその効果は飽和する傾向がある。一方、Inは、添加濃度の増加につれてタレ厚みは漸減するが、0.05重量%以上にならないと、タレ厚みが0.8mmの基準を満たさない。
【0038】
次に、BiとInを同時に混合添加した場合を図6及び図7に示す。ここでは、Biの添加濃度を0.05重量%に固定し、In濃度を変化させてスパングルの大きさ(図6参照)とタレ厚み(図7参照)とを調べた。図6から、Inの添加濃度が増加するにつれてスパングルの大きさは小さくなり、外観性が向上することが分かった。また、図7から、Inの添加濃度が0〜0.1重量%の範囲では、タレ厚みは殆ど変わらないことが分かった。これは、Biを0.05重量%添加することにより、十分に流動性は高くなっており、多少のInの添加によってはその作用に大きな変化は生じないことを示している。つまり、Inの添加は、スパングルの大きさを小さくすることに主目的が置かれるので、その効果を期待できる添加濃度は、In単独で流動性を高めるために添加する濃度よりも低くて良いのである。従って、Biと同時にInを添加する場合には、Inの添加濃度を0.01〜0.1重量%とする。
【0039】
最後に、図8に塩水噴霧試験結果(JISに準拠)を示す。図8には、本発明の溶融亜鉛めっき浴(Bi:0.05重量%)を用いた一浴法による溶融亜鉛めっき皮膜(図中「ひし形」で表示)と、本発明の溶融亜鉛めっき浴(一浴、Bi:0.05重量%)を用いて形成した下地層の上に、二浴法(二浴、Bi:0.1重量%)によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜(図中「四角」で表示)と、従来の溶融亜鉛めっき皮膜(図中「三角」で表示)と、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜(図中「丸」で表示)との塩水噴霧試験結果を同時に表している。
【0040】
この結果、本発明の溶融亜鉛めっき浴を用いた一浴法による溶融亜鉛めっき皮膜の耐食性は、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の耐食性よりも優れ、また本発明の溶融亜鉛めっき浴を用いて形成した下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜の耐食性は、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜の耐食性よりも優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】外観とタレの評価用試験片の正面図である。
【図2】図1の試験片に溶融亜鉛めっき皮膜を形成した状態の断面図である。
【図3】浸透性の評価用試験部材を示し、(a)は分解斜視図、(b)はセットした状態の斜視図である。
【図4】Bi濃度とスパングルの大きさとの関係のグラフである。
【図5】Bi、In濃度とタレ厚みの関係のグラフである。
【図6】In添加濃度とスパングルの関係(Bi:0.05%添加)のグラフである。
【図7】In添加濃度とタレ厚みの関係(Bi:0.05%添加)のグラフである。
【図8】各種のめっき皮膜の塩水噴霧試験結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 試験片
2 めっき皮膜
3 基板
4 ステンレス板
5 短板
6 クリップ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜あるいは亜鉛アルミニウム合金めっき皮膜を形成するための溶融めっき方法に係わり、更に詳しくはPbを含有しない溶融亜鉛めっき方法及び溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送電鉄塔や道路施設関係の鋼材、更には建築構造物の鋼材に耐食性を付与する方法として、溶融亜鉛めっき処理が良く知られている。この溶融亜鉛めっきは、フラックス処理した鋼材をめっき浴中に浸漬し、引き上げるという簡便な浸漬法で行うことができ、鋼材の耐食性を高めるのに優れた処理である。溶融亜鉛めっき処理時に、鋼材の微小隙間内までめっき浴組成物が侵入し易くし、また引き上げる際の液切れを良くするために、めっき浴組成物にPbを微量添加してめっき浴の粘性を下げて流動性を高めている。
【0003】
従来から、鋼材や鋼板の溶融亜鉛めっき処理は、広く使用されており、例えば特許文献1には、Al0.1〜0.3重量%、Pb或いはSbの1種0.02〜0.2重量%、を含有し、さらに、Ni及びCoの1種或いは2種0.001〜0.2重量%を含有し、残部Znと不可避不純物としてFeを含有する溶融亜鉛めっき浴組成物が開示されている。また、特許文献2には、Ni、Co、Tiから選ばれた1種または2種以上合計0.001〜0.5重量%、Al0.1〜0.5重量%、Pb1重量%以下を含有し、残部Znおよび不可避不純物とする溶融亜鉛めっき浴組成物が開示されている。そして、特許文献3には、Zn以外に、Al:0.001〜4%、Ni:0.001〜3%、Pb:0.001〜1%等を含有する溶融亜鉛めっき浴組成物が開示され、更にこのめっき浴組成物にはCr:0.001〜0.05%、Cd:0.001〜3%を始めその他に多種類の元素を含有している。
【0004】
このように、長年にわたって溶融亜鉛めっき浴組成物中にPbを微量添加し、めっき処理の効率化、めっき皮膜の外観性向上を図ってきていたが、近年においては、環境問題の観点からPbの使用を規制するようになってきた。特に、2003年2月13日に、EUにおいて出されたRoHS指令がある。このRoHS指令は、EU加盟国で流通する電気・電子機器に対する特定有害物質の使用を制限するものであり、2006年7月1日以降、EUでは4つの重金属(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)と2つの臭素系難燃剤(ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の特定有害物質を許容量以上含む製品は販売できなくなる。対象範囲は、電気・電子機器等の民生品であるが、その部品として、あるいは筐体や架台として溶融亜鉛めっき処理を施した鋼材や鋼板が使用されることは十分可能性がある。
【0005】
一方、コンピュータ等の情報電子機器の分野において、その筐体や架台において電気亜鉛めっき皮膜からウィスカーが発生して、これが飛翔して電子基板に形成したマイクロ電子回路上に堆積し、回路を短絡して誤動作を起させたり、回路を破壊する等の問題が発生している。このように、従来は電気亜鉛めっきを施していた電気、電子機器において使用する部品においてもウィスカーが発生し難い溶融亜鉛めっき処理へ変更することが検討され、ますます溶融亜鉛めっき処理が注目されてきた。
【特許文献1】特開平05−098407号公報
【特許文献2】特開平08−060329号公報
【特許文献3】特許第3631710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のRoHS指令は、EU加盟国におけるものであるが、産業のグローバル化によって製品が全世界に流通するようになり日本も無視できなくなっており、それに対応することは緊急の課題である。また、日本国内でも独自の環境基準を設けている企業も増え、日本独自のより厳しい環境基準を法制定する動きもある。
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき方法において、有害なPbを含まず、しかも流動性が高く、良好なめっき皮膜を形成することが可能な溶融亜鉛めっき方法並びにそれを用いた溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法を構成した(請求項1)。
【0009】
また、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Inが0.05〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法を構成した(請求項2)。
【0010】
更に、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、Inが0.01〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法を構成した(請求項3)。
【0011】
あるいは、二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成する溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法であって、請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき方法にて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜の下地層を形成し、それからZn−Al合金めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法を提供する(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
以上にしてなる本発明の溶融亜鉛めっき方法によれば、Pbを始め、RoHS指令で指定された特定有害物質を全く含有していないので環境汚染の心配がなく、RoHS指令に対応したPbを含有しない溶融亜鉛めっき鋼材を供給することができる。また、溶融亜鉛めっき処理時に、鋼材の微小隙間内までめっき浴組成物が侵入し易くし、また引き上げる際の液切れを良くするために、めっき浴組成物にBiを0.01〜0.08重量%又はInを0.05〜0.1重量%、あるいはBiを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%を添加しているので、従来のPbを含有した溶融亜鉛めっき浴組成物と同様な良好な流動性を有し、また鋼材の表面に施された溶融亜鉛めっき皮膜の外観性が優れ、また耐食性にも優れて総合的な皮膜性質も良好である。また、Alを0.001〜0.01重量%含有させてFe−Zn合金相の形成を抑制しているので、めっき皮膜の密着性も良好であるとともに、Alが含有しているにも係わらず、通常の塩化アンモニウムを主体としたフラックス液を使用して、めっき温度も低温にできるので、鋼材の熱変形も抑制できるのである。
【0013】
また、本発明の溶融亜鉛めっき方法を、二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成するための下地層形成に使用することにより、耐食性に特に優れた溶融亜鉛アルミニウム合金めっき鋼材を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の詳細を実施形態に基づき更に詳しく説明する。本発明は、送電鉄塔や架空金物等の電力通信設備関係の鋼材、橋梁やガードレール、グレイチング等の道路施設関係の鋼材、鉄骨や非常階段等の建築関係の鋼材、ボディ鋼板等の自動車関係の鋼材、電気・電気機器の筐体、架台等の一般民生品用の鋼材の表面に、耐食性を高めるために亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき方法である。そして、本発明の溶融亜鉛めっき方法に用いるめっき浴組成物の特徴は、Pbを始め、RoHS指令で指定された特定有害物質を全く含有していないことである。また、本発明に用いるめっき浴組成物は、一浴によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成する場合にも、また二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成するための一浴目に使用する場合にも適用できるものである。
【0015】
本発明に用いる溶融亜鉛めっき浴組成物は、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物である。あるいは、Biの代わりに、Inを0.05〜0.1重量%添加する。あるいはBiを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%混合して添加する。
【0016】
ここで、Alは、溶融亜鉛めっき浴に鋼材を浸漬した際に、鋼材との界面に堅くて脆い性質を持つFe−Zn合金相の成長を抑制し、めっき皮膜の密着性を改善する。Alの含有量が、0.001重量%よりも少ないとFe−Zn合金相抑制効果が乏しく、また0.01重量%より多いと不めっきが発生する。そのため、Alの含有量を0.001〜0.01重量%とした。更に好ましくは、Alの含有量を0.001〜0.005重量%とする。
【0017】
また、Niは、溶融亜鉛めっき浴に鋼材を浸漬した際に、鋼材表面にFe−Ni合金相を形成し、Alと共にFe−Zn合金相の成長を抑制する。Niの含有量が、0.01重量%より少ないとFe−Zn合金相抑制効果が乏しく、また0.05重量%より多いとその効果が飽和して経済的でない。そのため、Niの含有量を0.01〜0.05重量%とした。
【0018】
そして、Biは、めっき浴組成物の流動性を高めて濡れ性を向上させるとともに、不めっき抑制の効果を有し、0.01重量%より少ないとその効果が乏しく、また0.08重量%より多いとスパングルの発生や黒変等の問題が生じる。そのため、Biの含有量を0.01〜0.08重量%とした。更に好ましくは、Biの含有量を0.01〜0.05重量%とし、高価なBiの使用量を少なくする。
【0019】
また、Inは、Biと同様にめっき浴組成物の流動性を高めて濡れ性を向上させる作用を有するが、Biよりも効果は少ない。従って、Inの添加量は、Biよりも多く、0.05〜0.1重量%添加する。Inの添加量が、0.05重量%より少ないとその効果が乏しく、また0.1重量%より多いと効果が飽和する。
【0020】
尚、Biの添加量を増やすと、スパングルの大きさが大きくなるのに対し、Inの添加量を増やすとスパングルの大きさが小さくなる傾向があるので、BiとInを混合して添加することにより、更に良好な溶融亜鉛めっき皮膜が得られることになる。その場合、めっき浴組成物の流動性はBiの添加で確保しているので、In単独で使用する場合によりも添加量を少なくして、スパングルの大きさ抑制の効果を期待できれば良いのである。従って、Biを0.01〜0.08重量%及びInを0.01〜0.1重量%混合して添加するのである。
【0021】
前述の溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて、鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成するには、先ず鋼材を脱脂、酸洗い、水洗した後、酸化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液若しくは塩化アンモニウムだけを含有する水溶液からなるフラックス液に浸漬した後、所定温度に設定した溶融亜鉛めっき浴に所定時間浸漬し、所定速度で引き上げ、空冷又は水冷し、鋼材の表面に所定厚さの溶融亜鉛めっき皮膜を形成するのである。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成した実施例を以下に説明し、Biを添加した効果を確認した。めっき条件は以下の表1に示している。
【0023】
【表1】

【0024】
試験鋼材は、C:0.035重量%、Si:0.01重量%、Mn:0.17重量%、P:0.012重量%の低シリコン鋼材である。
【0025】
外観とタレの検査は、図1に示すような、下端が尖った五角形状の厚さ2.3mmの前述の鋼材からなる試験片1(70mm×150mmの外形)を用いた。そして、この試験片1の外観を目視で観察した。また、タレの度合いは、図2に示すように、試験片1に付着しためっき皮膜2の略一様な厚さで形成された上部のめっき皮膜2を含む全体の厚さt1と、下端部の最も膨らんだ部分のめっき皮膜2を含む全体の厚さt2の差(t2−t1)をタレ厚さtとして評価した。
【0026】
また、浸透性の検査は、図3に示すように、前述の鋼材からなる70mm×150mm×2.3mmtの基板3の下部の片面に、下端部を余して厚さが20mm×30mm×1.0mmtのステンレス板4,4をスペーサとして両側に配置し、その上に前述の鋼材からなる70mm×30mm×2.3mmtの短板5を重ね、両側を金属製のクリップ6,6で保持した試験部材を用意した。それにより、前記基板3と短板5との間に、横幅が30mmで上下長さが30mm、間隔が前記ステンレス板4の厚さ1.0mmの隙間を形成した。そして、この隙間への溶融亜鉛めっき浴組成物の浸透性は、この隙間に浸透した亜鉛の付着率(30mm×30mmの面積に対する亜鉛付着部の面積の割合%)で評価した。
【0027】
上記試験片と試験部材によって評価した外観、タレ、浸透性の結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
この表2の結果、蒸留亜鉛1種のZnを用いた場合、Bi濃度が0%でもタレと浸透性が良好な結果が得られたが、蒸留亜鉛1種には不純物として無視できない濃度のPbが含有されているものと推測される。この点を考慮にいれて外観、タレ、浸透性を総合的に評価するとBiの濃度として0.01〜0.08重量%の範囲が好ましく、特に0.01〜0.05重量%の範囲が最適であることがわかった。
【実施例2】
【0030】
次に、亜鉛めっき浴の流動性、隙間への浸透性を高める目的でBiの代わりにInを添加した実験及びBiとInを同時に添加した実験を行った。めっき条件は表3に示している。
【0031】
【表3】

【0032】
Bi、Inを各濃度添加した時の外観(スパングルの有無)、タレ、隙間への浸透性について得られた結果を表4に示す。ここで、タレ、隙間への浸透性の検査方法は、前述と同様である。
【0033】
【表4】

【0034】
この結果、Biと同様にInも所定量添加することにより流動性は改善されることが分かった。図4〜図7にはその詳細が示されている。
【0035】
つまり、図4は、Bi濃度とスパングルの大きさの関係を示し、Bi濃度を高めると、亜鉛めっき浴の流動性は高くなる反面、スパングルの大きさが大きくなって外観性が低下する傾向があることを示している。
【0036】
図5は、BiとInをそれぞれ単独で添加した場合の濃度とタレ厚みの関係を示している。図5において、従来の溶融亜鉛めっきによる結果をPWとして比較表示している。ここで、通常は溶融亜鉛めっきにおいて、タレ厚みが0.8mmより薄いと良好なめっき皮膜が得られ、タレ厚みが0.8mmより厚いとめっき不良とされる。この結果、Biは添加濃度が0.01重量%以上になるとタレ厚みの基準を満たし、濃度の増加とともにタレ厚みが減少するが、0.08重量%程度でその効果は飽和する傾向がある。一方、Inは、添加濃度の増加につれてタレ厚みは漸減するが、0.05重量%以上にならないと、タレ厚みが0.8mmの基準を満たさない。
【0037】
次に、BiとInを同時に混合添加した場合を図6及び図7に示す。ここでは、Biの添加濃度を0.05重量%に固定し、In濃度を変化させてスパングルの大きさ(図6参照)とタレ厚み(図7参照)とを調べた。図6から、Inの添加濃度が増加するにつれてスパングルの大きさは小さくなり、外観性が向上することが分かった。また、図7から、Inの添加濃度が0〜0.1重量%の範囲では、タレ厚みは殆ど変わらないことが分かった。これは、Biを0.05重量%添加することにより、十分に流動性は高くなっており、多少のInの添加によってはその作用に大きな変化は生じないことを示している。つまり、Inの添加は、スパングルの大きさを小さくすることに主目的が置かれるので、その効果を期待できる添加濃度は、In単独で流動性を高めるために添加する濃度よりも低くて良いのである。従って、Biと同時にInを添加する場合には、Inの添加濃度を0.01〜0.1重量%とする。
【0038】
最後に、図8に塩水噴霧試験結果(JISに準拠)を示す。図8には、本発明に係る溶融亜鉛めっき浴(Bi:0.05重量%)を用いた一浴法による溶融亜鉛めっき皮膜(図中「ひし形」で表示)と、本発明に係る溶融亜鉛めっき浴(一浴、Bi:0.05重量%)を用いて形成した下地層の上に、二浴法(二浴、Bi:0.1重量%)によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜(図中「四角」で表示)と、従来の溶融亜鉛めっき皮膜(図中「三角」で表示)と、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜(図中「丸」で表示)との塩水噴霧試験結果を同時に表している。
【0039】
この結果、本発明に係る溶融亜鉛めっき浴を用いた一浴法による溶融亜鉛めっき皮膜の耐食性は、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の耐食性よりも優れ、また本発明の溶融亜鉛めっき方法によって形成した下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜の耐食性は、従来の溶融亜鉛めっき皮膜の下地層の上に、二浴法によって形成した5%Al−Zn合金めっき皮膜の耐食性よりも優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】外観とタレの評価用試験片の正面図である。
【図2】図1の試験片に溶融亜鉛めっき皮膜を形成した状態の断面図である。
【図3】浸透性の評価用試験部材を示し、(a)は分解斜視図、(b)はセットした状態の斜視図である。
【図4】Bi濃度とスパングルの大きさとの関係のグラフである。
【図5】Bi、In濃度とタレ厚みの関係のグラフである。
【図6】In添加濃度とスパングルの関係(Bi:0.05%添加)のグラフである。
【図7】In添加濃度とタレ厚みの関係(Bi:0.05%添加)のグラフである。
【図8】各種のめっき皮膜の塩水噴霧試験結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 試験片
2 めっき皮膜
3 基板
4 ステンレス板
5 短板
6 クリップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物。
【請求項2】
浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Inが0.05〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物。
【請求項3】
浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物であって、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、Inが0.01〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しないことを特徴とする溶融亜鉛めっき浴組成物。
【請求項4】
請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき浴組成物を用いて、一浴法にて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法。
【請求項5】
二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成する溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法であって、請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき浴組成物を一浴目に使用して、鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜の下地層を形成し、それからZn−Al合金めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法
【請求項2】
Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Inが0.05〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法
【請求項3】
Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、Inが0.01〜0.1重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴を用いて、浸漬法によって鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法
【請求項4】
二浴法によって鋼材表面にZn−Al合金めっき皮膜を形成する溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法であって、請求項1〜3何れかに記載の溶融亜鉛めっき方法にて鋼材の表面に溶融亜鉛めっき皮膜の下地層を形成し、それからZn−Al合金めっき皮膜を形成してなることを特徴とする溶融亜鉛アルミニウム合金めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−307316(P2006−307316A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250767(P2005−250767)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【特許番号】特許第3781055号(P3781055)
【特許公報発行日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(591257568)田中亜鉛鍍金株式会社 (5)
【Fターム(参考)】