溶融混練物、樹脂成形物及びその製造方法
【課題】ナノレベルのフィラーを、エラストマーや樹脂中に均一に分散させた新規な溶融混練方法及び溶融混練方法で得られる溶融混練物及びその新規な溶融混練物を成形することにより得られる樹脂成形物による樹脂成形物の提供。
【解決手段】フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部の端部に設けられた投入部から投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練したエラストマー若しくは樹脂を、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの孔を通り、後端に移行再循環を行う。
【解決手段】フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部の端部に設けられた投入部から投入し、前記スクリューの回転数は600rpmから3000rpm、せん断速度は900から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練したエラストマー若しくは樹脂を、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの孔を通り、後端に移行再循環を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の溶融混練方法及びゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の溶融混練物、その溶融混練物からなる成形加工物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土などのナノレベルのフィラーを均一に分散させる溶融混練物の製造方法及びその製造方法により得られる溶融混練物、並びにその溶融混練物を成形することにより得られる樹脂成形物を製造することの試みは既になされている。しかしながら、得られる樹脂成形物の特性を調べてみると、期待するほどではなく、必ずしも満足する結果を得ていない。
【0003】
室温でゴム弾性を示す高分子物質であるエラストマーやゴムは、自動車内装部品、建築部材、包装及び容器などの材料、医療用部品などの各分野わたり、広範な産業分野において使われている。本来、エラストマー及びゴムは低い弾性率、高い破断伸び等の性質を有している。フィラー及び強化繊維をエラストマーやゴムに添加してフィラーや強化繊維による特性を、エラストマー及びゴムに付与すると共に、エラストマー及びゴムが有していない特性である、高弾性率のエラストマーやゴムを作製することができるとされている。
このように両者を混合することにより、機能を十分に発揮させ、本来有していない新たな特性を付与することができる結果、産業界の多様なニーズに対応できるので、その都度、幅広いエラストマー性能の中から適切な数値のものが選択することが行われる。
一方、熱可塑性樹又は熱硬化性樹脂は本来高い弾性率、低い破断伸びが特徴を有している。フィラーを加えて機能を発揮させて熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の特性を生かして、フィラーなどの特性を有する樹脂複合体が製造されてきた。
【0004】
これらの場合に、フィラーなどの充填剤を、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に添加してフィラーなどを均一かつナノレベルで分布させることが重要であると指摘されている。しかしながら、均一に分散することは技術的に困難を伴うものである。特に、ナノレベルのフィラーにあっては技術的に困難を伴うとされる。
ナノサイズレベルのフィラー、例えばカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、通常の方法では、この凝集力を解くのは困難である。
【0005】
例えばカーボンナノチューブを具体例に従来の方法を検討してみる。
ナノレベルにあることで知られる、カーボンナノチューブは凝集することを防ぐことが最重要視され、この凝集を防ぐことができた後に、安定した分散液を製造した後、この分散液ごと高分子材料マトリックスに混合し分散することが行われてきた。以下に具体例を挙げる。
溶液中のカーボンナノチューブとポリマー組成物を物理的に混合する方法(非特許文献1 Appl Phys Lett 1999;75;1329など)、又は溶融状態のポリマー組成物中に溶解させる方法(非特許文献2 Chems Phys Lett2000;330;219など)ことが行なわれてきた。樹脂中にフィラーを添加する場合には当然樹脂等を溶融状態として、フィラーを添加して混練押出し機等を用いて混練することなど知られている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの混合物中にカーボンナノチューブを混入分散した素材で半導電性遮蔽板を形成する際にカーボンナノチューブの配合に関して慣用の押出機を用いる(特許文献1 米国特許第4,857,600号明細書、特許文献2 米国特許第5,575,965号明細書)。樹脂又はエラストマーを主成分とする樹脂成形物において、ナノスケールのカーボンナノチューブを含有すること、前記樹脂が熱可塑性樹脂 である場合、メルトインデックス(MI)を特定し、エラストマーの場合は、ウイリアムズ可塑度を特定する(特許文献3 特開2005-088767号公報、特許文献4 特開2004―338327号公報、特許文献5 特開2005−314019号公報)などが知られている。
しかしながら、前記したように、ナノサイズレベルのフィラー、具体的にはカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物等は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、前記の方法では、この凝集力を解くのはことが困難である点は解決されておらず、問題の根本的な解決は行われていない。
【0006】
上記の方法では的確に解決できないので、さらに、これらナノサイズレベルのフィラーをエラストマー又は樹脂に分散させるには、通常は界面活性剤を添加するか、もしくはフィラーを化学的に修飾してフィラーと樹脂との親和性を高める必要があり、このような方法も既に提案されている。
【0007】
カーボンナノチューブの分散液を調整する方法については、種々の手段が知られている。
(1)分散手段として超音波を用いてカーボンナノチューブを分散すること(非特許文献3 Langumuir2004;20;10367)が知られている。又、ピレン分子が強い相互作用によってカーボンナノチューブ表面上に吸着することを利用して、ピレン分子にアンモニウムイオンを含有する置換基を導入し、これを単層カーボンナノチューブとともに水中で超音波処理し、単層カーボンナノチューブに非共有結合的に吸着させることにより水溶性の単層カーボンナノチューブを製造する方法(非特許文献4 Chem.Lett.,638(2002)がある。
(2)酸処理によってカーボンナノチューブの表面に親水性の官能基を導入することによって各種溶媒への分散性を向上させ、分散液をポリマー溶液と混合することによってコンポジット化する方法が知られている。例えば、単層カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理する分散する方法(非特許文献5 Science,280,1253(1998)、単層カーボンナノチューブは、その両末端が開いており、カルボン酸基等の含酸素官能基で終端されていることに着目し、カルボン酸基を酸塩化物にした後、アミン化合物と反応させ長鎖アルキル基を導入し、溶媒に可溶化する方法(非特許文献6 Science,282,95(1998)がある。
(3)界面活性剤やカーボンナノチューブに吸着する特定のポリマーによってCNTをコーティングして各種溶媒に分散する方法(非特許文献7 Nano Lett 2003;3;269)がある。
これらは、強酸中で処理を実施するため、操作が煩雑となり、その分散化の効果も十分とはいえないし、長鎖アルキル基を導入する場合などでは、カーボンナノチューブのグラフェンシート構造の損傷やカーボンナノチューブ自体の特性に影響を与えるなどの問題点が指摘されている。
【0008】
導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)を含有し、さらに必要に応じて高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)、コロイダルシリカ(h)を含むカーボンナノチューブ含有組成物、該組成物からなる塗膜を有する複合体及びそれらの製造方法が知られている(特許文献6 特開2005−97499号公報、特許文献7特開平7−102112号公報)。この方法では溶媒を用いること、シランカップリング剤を用いることにより均一化を図ることが特徴であるが、添加成分も多く、操作が煩雑になることは避けることができない。ポリイミドなどの高分子化合物に対して、極めて優れた特性が得られることが期待できとされているが、カーボンナノチューブを用いたナノコンポジットは上述した利点を有するにもかかわらず、カーボンナノチューブ相互の凝集力(ファンデルワールスの力)によって、カーボンナノチューブが束状及び縄状になってしまうため、カーボンナノチューブを樹脂に均一に分散させることは極めて困難であることが知られている。特に、カーボンナノチューブの原子レベルでの滑らかな表面が基材に対する親和性を低下する要因となっている。
【0009】
ポリイミドは、一般的に溶剤に溶解することが困難であり、ナノコンポジットとして利用する際、ナノ粒子を混合、分散させることが困難である。ブロック共重合により製造されたポリイミドが溶剤に可溶である点に着目し、ブロック共重合ポリイミドとカーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をアミド系極性有機溶媒、特に、NMP(Nメチルピロリドン)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)に分散させた溶液を混合すること、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とカーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をアミド系極性有機溶媒、特に、NMP(Nメチルピロリドン)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)に分散させた溶液を混合することによって、カーボンナノチューブが分散したポリアミック酸溶液を得、次いで脱水することによってカーボンナノチューブが均一に分散したポリイミドを得る(特許文献8 特開2006−124613号公報)。この場合においても、煩雑な処理を必要とする点では同じである。
結局この場合においても問題の解決にはなっていないことがわかる。
【0010】
本発明者らは前記の問題点を見たときに、ナノサイズレベルのフィラー、例えばカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物等は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強いので、この凝集力を解く方法を得ること以外に問題点の解決策はなく、この問題を解決することは喫緊の課題となっている。
【特許文献1】米国特許第4,857,600号明細書
【特許文献2】米国特許第5,575,965号明細書
【特許文献3】特開2005−88767号公報
【特許文献4】特開2004−338327号公報
【特許文献5】特開2005−314019号公報
【特許文献6】特開2005−97499号公報
【特許文献7】特開平7−102112号公報
【特許文献8】米国特許5,502,143号明細書
【特許文献9】特開2006−124613号公報
【非特許文献1】Appl Phys Lett 1999;75;1329
【非特許文献2】Chem Phys Lett 2000;330;219
【非特許文献3】Langumuir2004;20;10367
【非特許文献4】Chem.Lett.,638(2002)
【非特許文献5】Science,280,1253(1998)
【非特許文献6】Science,282,95(1998)
【非特許文献7】Nano Lett 2003;3;269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題を解決するための課題は、ナノレベルの大きさの充填剤であるフィラー、具体的には、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンブラック、粘土微粒子、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物のフィラーに、従来では知られていなかった物理的にせん断流動場を付与するだけで、界面活性剤を添加することなく、あるいはフィラーを事前に化学的に修飾することなく、多様な樹脂系であるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を溶融状態とし、カーボンナノチューブ等のナノサイズレベルのフィラーを混合し混練する新規な方法を提供するものである。
この課題を解決するに当たっては、従来の技術を分析し以下のように対処することが有効であるという結論に達した。
エラストマーや樹脂中にフィラーをナノレベルで均一に分散させるには主に2つの要因を排除することが必要となる。
このためには、以下の二つの問題点の解決に成功することが必要となる。
(1)樹脂とフィラー間での親和性、相互作用を高める。(2)フィラー同士の凝集を防ぐ。
前記(1)及び(2)の個々の点について以下に考察する。
(1)を解決する解決策としては、化学的手法により樹脂もしくはフィラーのどちらか一方もしくは両方を修飾し、両者の相互作用力を高める方法が有効であると考えられる。例えば、フィラーに反応性の高い官能基を部分的に結合させることにより、結合させた点が活性点となり樹脂中の官能基との相互作用が著しく改善することができる。しかしながら、この解決策では実用材料においては、その効果の点で均一に分散させることは無理であり、限界が生じる結果、これによって解決を図ること自体に無理があることがわかる。
一方、(2)を解決する解決策としては化学的に凝集を抑制するために、凝集抑制剤を添加することにより解決することが一般的である。単に、凝集抑制剤を添加することでは、最終の解決しようとする課題である、エラストマーや樹脂中にナノレベルのフィラーを均一に分散させることは不可能であることがわかる。
前記2つの操作により従来の方法を適用してそれぞれ個別に解決していたのでは、樹脂中にフィラーをナノレベルで均一に分散させることは不可能であるという結論に達した。
むしろ、(2)の操作で目標とするフィラー同士の凝集は避けられないものとして捉え、その凝集力に優る有効な処理手段の場を外部要因により作りだして処理することが必要であると考える。むしろ、外部要因により高せん断流動状態を作り出すことが最善の方法であるという結論に達した。
高せん断流動状態を作り出すことにより、フィラー同士の凝集を抑えるだけでなく、せん断流動場によりフィラーの剥離、孤立化を図ることができ、さらにはその処理の場において樹脂とフィラーとの相互作用を働かせることができることも可能となる。すなわち、この方法を採用すれば、結果として(1)と(2)の点につき、同時に解決し、樹脂中でナノレベルのフィラーを均一に分散させることが可能となる。
このようなナノ分散化による処理手段による得られる組成物は、その構造に由来して、性能・機能の飛躍的向上を図ることが実現され、結果として新規な材料が開発されるという結論に達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明者らは、前記課題について鋭意研究し、ナノレベルの大きさの充填剤であるフィラー、具体的には単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物等のフィラーをエラストマーや樹脂中に均一に分散させることについて前記の従来の方法を回避して新しい方法や手段について検討した。そして、ついに以下の知見を得るに至った。
(2)ナノレベルの大きさの充填剤である前記のフィラー(本発明では多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を代表に用いて説明する)をエラストマーや樹脂中に均一に分散させる場合には、エラストマーや樹脂を溶融混練の状態に維持すること、すなわち、フィラーからなる充填剤とエラストマーや樹脂を、原料投入部16を経て、シリンダー18、フィードバック型スクリュー20、加熱部を備えた溶融混練部12に供給し、エラストマーや樹脂を溶融して、前記スクリューの回転数;1000rpmから3000rpm、せん断速度;1500から4500sec−1の条件下で、前記充填剤と混練し、次に前記エラストマー、樹脂及び充填剤からなる混合物をスクリューの後端から先端に送り、前記スクリューの先端の間隙32に閉じ込めた後、前記間隙32から前記スクリューの真ん中に設けられている孔44を経て後端に戻し、再びスクリューの先端に送る再循環操作を一定時間行う(図1、図2)。溶融混練中のエラストマーや樹脂中に充填剤であるフィラーを含有する状態の混合物に対して有効なせん断速度を付与することができ、充填剤を溶融状態のエラストマーや樹脂中に充填剤であるフィラーを均一に分散させることができる結果、前記課題を解決することができることを見出した。
(3)溶融混練部はシールを備えた溶融混練部であり、試料投入口から試料を投入する試料投入部から接続し、前記スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔;0.5から5mm、スクリューの内部に設けられている孔内径;1mmから5mm、好ましくは2mmから3mmを有しており、スクリューの回転数;1000rpmから3000rpm、せん断速度;1500から4500sec−1、加熱温度;室温又は被溶融混練樹脂温度より高い温度の条件下で、かつ前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環を一定時間行って前記充填剤と樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法を用いることにより、最適な、せん断速度を付与して樹脂混練物を製造して前記課題を解決することができることを見出した。
(4)そして、前記溶融混練法に引続いて得られる溶融混練物をT-ダイを通すことにより成形加工する成形加工方法及び成形加工して得られる成形加工物を得ることができることを見出した。
(5)前記充填剤の含有量は樹脂100重量%に対して、0.01−30.0重量%である場合が有効であることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶融混練方法によれば、フィラーからなる充填剤を、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している溶融混練方法であり、この溶融混練方法によれば、フィラーからなる充填剤をゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している溶融混練物を得ることができる。
又、溶融混練法に引き続きT-ダイを用いて成形加工することによりフィラーからなる充填剤をゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している成形加工物を得ることができる。
ゴムやエラストマーの場合には、柔軟性、ゴム弾性、変形回復など本来のエラストマーとしての優れた性質を示す一方、充填剤のフィラーの特性を十分に発揮させて高い弾性率、破断強さ等の機械的性能や電気伝導度が飛躍的に向上し、エラストマーとしてフィルム、シート、チューブを含む各種部品及び部材、例えば、柔軟なホース、リング、シール材として広く使用できる製品を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂では自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、充填剤のフィラーの特性を十分に発揮させや特性を有する材料が可能となり、振動吸収材、免振材料として弾性率等の機械的性能や電気伝導度が飛躍的に向上したことを特徴とする電気的特性が良好な材料を完成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の溶融混練方法及び溶融混練方法により得られる溶融混練物は以下の通りである。
図1は、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明の装置の全体図である。
図2は、本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューを説明する図である。
図3は、本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部に間隙を説明する図である。
【0015】
溶融混練物製造装置10は、原料物質であるフィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の原料供給部16、溶融混練部12及び成形部14から構成されている。
溶融混練部12は、シリンダー18中にフィードバック型スクリュー20を有している。フィードバック型スクリュー20はシリンダー18中にシャフト24を介して設置されている。シャフト24はベアリング22を介してフィードバック型スクリュー20と連絡さている。又、シリンダー18にはシリンダーの外側に沿って樹脂を溶融させるためのヒーター26が設けられている。シャフト24が位置する場所と反対側の端にはシリンダー18に溶融混練部12と成形部14の間をシールするためのシール28が設けられている。又、シリンダー18には、間隙32を調節するための調節手段30がフィードバック型スクリュー20のチップ末端表面29とシール表面28の間に設置されている。間隙32は、0.5mmから5mmの範囲で調節することが可能である(図2、3)。
成形装置14は、押出部ヒーター35及びフィルムを製造するためのTダイ34を有している。Tダイ34は、Tダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後末端部加熱ヒーター38を有している。押出されたフィルムはTダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後部末端加熱ヒーター38の間に形成された排出口40を通過する。成形部及びTダイ前部末端部加熱ヒータ内には温度測定のために熱電対42が挿入されている。その測定結果は制御装置(図示せず)に送られ、溶融混練部12及びTダイの温度調製を行う。
スクリュー20内部には、内部直径が1mm〜5mm、好ましくは2mm〜3mmの間の内部直径を有する内部孔44を有している。フィードバック型スクリュー20のL/D比(L:長さ、D:直径)は1.78である。スクリューの回転速度は、1000rpmから3000rpmの範囲に調整されているスクリューの回転速度は、1500〜4500sec−1の範囲内に調整できる。シリンダー内の温度は溶融しようとする樹脂により変化する。
スクリューは円筒内で樹脂を溶融するのに十分な構造となっている。図2には内部フィードバック型スクリューの構造46が示されている。内部フィードバック型スクリューの構造46中には、スクリュー背後部48から供給される樹脂がスクリューによりスクリュー前部50に移行される。溶融樹脂は前部表面29とシール表面31の間に形成される間隙32内に閉じ込められる。樹脂はスクリューの中央部に設けられている横方向の孔44を経て、異なる方向に向いた孔を通り、スクリュー背後部48を経て、再びスクリューの前方向50に向かう。
せん断溶融に要する時間は、内部フィードバック型スクリューの構造46中を循環するために要する時間により変更可能である。樹脂がせん断される程度は、スクリュー後部末端と、スクリュー後部末端とスクリュー内部に直径につながるシール表面の間に形成される間隙を変更することにより可能となる。樹脂をせん断する程度は、間隙を狭くすること、孔の直径を狭くすることにより上昇させることができる。間隙とスクリューの孔の内径については樹脂の粘度の点から最適なものとすることが必要である。シリンダー内に含まれる樹脂を溶融混練するために必要な時間は1分から8分である。
【0016】
本発明の溶融混練法は以下の通りである。
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、原料投入部16から投入し、スクリュー20を備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部12に供給する。フィードバック型スクリュー20の作用により前方に送られる。
前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練したエラストマー若しくは樹脂を、スクリューの後端から先端に送る。スクリューの先端の間隙32に閉じ込めた後、前記間隙32からスクリューの中心部に設けられている孔44を通りスクリューの後端に移行させる。間隙32は、0.5mmから5mmの範囲で調節することが可能である(図2、3)。
フィラーからなる充填剤は溶融されているエラストマー若しくは樹脂中に均一に分散された状態で、スクリューの中央部に設けられている横方向の孔44を通り、スクリュー後端部に閉じ込められ、スクリュー背後部48を経て再び前記スクリューによりスクリュー前部50に再循環移行される。
1分から8分間の繰り返し循環を行い、フィラーからなる充填剤を溶融されているエラストマー若しくは樹脂中により均一に分散された状態とする。
【0017】
溶融加熱温度は室温又は被溶融混練樹脂温度より高い温度条件下に設定する。被溶融混練樹脂の溶融温度が室温より低い場合には、溶融加熱温度を室温に設定する。又、被溶融混練樹脂の溶融温度が室温より高い場合には溶融加熱温度を被溶融混練樹脂の溶融温度に設定する。
【0018】
スクリューの回転数が1000rpm未満であり、せん断速度は1500sec−1未満の場合には溶融混練操作が十分に行われず満足する結果を得ることができない。一方、スクリューの回転数は3000rpmを超えて、せん断速度が4500sec−1を超える処理を行っても溶融混練の状態を観察しても格別の結果を得ることができない。以上の結果から、スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に行うことが重要である。スクリューの形状については試料をフィードバックさせるための孔がある以外は通常用いられている形状のものが用いられる。
【0019】
1分から8分間の循環操作を繰り返し、フィラーからなる充填剤を溶融されているエラストマー若しくは樹脂中により均一に分散された状態として、間隙28より、成形装置14に取り出す。この場合には、バルブ(図示せず)を開くことにより成形装置14に取り出す。
押出部ヒーター35及びフィルムを製造するためのTダイ34を有している。Tダイ34は、Tダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後末端部加熱ヒーター38を有している。押出されたフィルムはTダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後部末端加熱ヒーター38の間に形成された排出口40を経て取り出す。成形部及びTダイ前部末端部加熱ヒータ内には温度測定のために熱電対42が挿入されている。その測定結果は制御装置(図示せず)に送られ、溶融混練部12及びTダイの温度調製を行う。
【0020】
処理対象物の一方は、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を挙げることができる。
エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に対して要求される特性としては、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は加熱により均一に溶融混練した状態を保つことができることである。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂 (例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレン共重合体樹脂 )、ポリアミド系樹脂 (例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体)、ポリエステル系樹脂 (例えば、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリエステル共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル)、ポリエーテル系樹脂 (例えばポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))、ポリニトリル系樹脂 (例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体)、ポリメタクリレート系樹脂 (例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル)、ポリビニル系樹脂 (例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、セルロース系樹脂 (例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂 (例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE))、イミド系樹脂 (例えば芳香族ポリイミド(PI))、ポリアセタールなどを用いることができる。
これらはいずれもよく知られており、市販品を購入して使用することができる。
実施例では、ポリビニリデンフロライド(PVDF)及びポリ乳酸を用いて具体的に説明している。PVDFは優れた化学的耐性、機械的性能を有するので、化学物質やガス等に曝される環境下において使われる材料として欠かせないものである。同じく、ポリ乳酸にしても天然物から合成され、特異な分解性を有することから注目されている。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族炭化水素ポリマー(ポリ-p-フェニレン、ポリ-p-キシレン)、芳香族複素環状ポリマー(ポリヒダントイン、ポリパラバン酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン)、熱硬化型耐熱性ポリマー(スチリルピリジン系樹脂、シナート系樹脂)を挙げることができる。
加熱により均一の溶融物を得る場合には、熱可塑性樹脂と同様に加熱することにより均一の溶融物をえることができる。
上記樹脂はいずれも汎用の公知物質であり、使用するに際しては市販品を購入して使用することができる。
したがって、PVDFやポリ乳酸の具体例が示されていることにより、その他の熱可塑性樹脂に対しても同様に適用でき、同様に良好な結果を得ることができる。上記樹脂はいずれも汎用の公知物質であり、使用するに際しては市販品を購入して使用することができる。
【0023】
エラストマー及びゴムとしては、ジエン系ゴムおよびその水素添加物(たとえばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR)、オレフィン系ゴム(たとえばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、EPMなどのエチレンプロピレンゴム)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、IIR、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー)、含ハロゲンゴム(たとえばBr−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、CR、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコンゴム(たとえばメチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム)、含イオウゴム(たとえばポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(たとえばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エラストマー (たとえばスチレン系エラストマー 、オレフィン系エラストマー 、エステル系エラストマー 、ウレタン系エラストマー 、ポリアミド系エラストマー )などを挙げることができる。
実施例では、エラストマーは極性基を持たない無極性のエラストマーである、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(SBBS)、ポリ(スチレン-ブタジェン-スチレン)(SBS)、又はエチレンプロピレンゴムの中からなどにより具体的に説明している。他のエラストマーについても同様に行うことができる。上記エラストマーはいずれも公知物質であり購入して使用することができる。SBBS、SBS等は熱可塑性エラストマーなので、天然ゴムのように架橋させる必要が無く、通常の樹脂のように成形加工が容易でありながら、ゴム状弾性に優れた物質である。
エラストマー及びゴムに対しては均一に溶融した状態となること、そして、
混練した状態を保つものである。
この実施例の場合と同様に他のエラストマーやゴムの場合についても同様に行うことができる。
【0024】
処理対象物の他の一方は、フィラーからなる充填剤である。
フィラーからなる充填剤は、ナノサイズレベルのフィラー、具体的にはカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物である。これらは一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、もともと相互につながりあう状態で存在し、通常の方法では、この凝集力を解くのは困難とされてきた。
溶融した状態のエラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂中に、相互につながりをもっている状態でフィラーからなる充填剤を送り込み、従来では知られていなかった物理的にせん断流動場を付与するこいとにより、フィラーからなる充填剤が本来相互につながりあう性質を排除して、できるだけ単一のフィラーの状態に戻した状態としたうえで、均一に溶融したエラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂中に単一のフィラーの状態とされたフィラーが均一に分散された溶融混練された状態とするものである。フィラーが均一に分散された溶融根連された状態でフィラーが有する固有の特性を付与できる結果となる。
【0025】
フィラーからなる充填剤には、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土微粒子(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物を挙げることができる。
【0026】
カーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が含まれる。
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、炭素原子だけでできた蜂の巣(ハニカム構造のネットが円筒状の丸まったシームレスの管である。この炭素原子の単原子層のハニカムネットはグラフェンと呼ばれる炭素六角網面であり、直径が1〜2mmの円筒に丸まった中空の管(チューブ)である。炭素電極間のアーク放電法、炭素のレーザー蒸発法及び炭化水素ガスの熱分解法により製造される。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、外径が5〜50nmで、その中心空洞は直径3〜10mmである。そのうち、層数が最も少ないものが、二層ナノチューブ(DCNT)である。アーク放電を使って鉄、ニッケル、コバルト及び硫黄を触媒として水素ガス雰囲気で製造することができる。又、化学気相成長法によっても製造可能である。直径は3〜5nmであり、二層のグラフェン間の間隔は0.39nmである。
二層を超える多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は二層を超える数層から数十層のグラフェンを有している。メタン、アセチレン、一酸化炭素などの炭素含有ガスを熱分解し、鉄、ニッケル、鉄モリブデンなどの触媒の存在下に、酸化マグネシウム微粒子、アルミナ微粒子、耐熱性ゼオライトからなる担体の表面に析出させることができる。引張強度、熱容量、熱伝導率などで良好な結果を得る事ができ、コンポジットへの利用が期待されている(「斉藤弥八著「カーボンナノチューブの材料科学入門」株式会社コロナ社2005年3月22日発行1〜20頁、37〜55頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0027】
カーボンフアイバーは有機高分子繊維(セルロース系、ポリアクリルニトリル系)を800〜3000℃の一連の段階的加熱処理によりもとの繊維形状を保った炭化するか、又は紡糸したピッチ(ピッチ系)を熱処理することによって得られる。プラスチックに添加してコンポジットとし、引張強度を高めることができる(株式会社化学同人1989年発行化学大辞典1377頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0028】
カーボンブラック(CB)は、天然ガスや炭化水素ガスの気相熱分解や不完全燃焼によって得られる。ゴムの補強用充填剤や炭素材料の原料、印刷インクなどに用いることができる(株式会社化学同人1989年発行化学大辞典1377頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0029】
粘土微粒子は、層状ケイ酸塩(layer silicate)を意味する。フィロケイ酸塩(phyllosilicate)とも言われる。Si或いはAlを4個の酸素が囲んだ四面体が、3つの頂点を隣の四面体と共有することにより、2次元的に拡がった構造単位(四面体シート)を形成している層状構造をもった珪酸塩の一群。Mg、Alなど6個の酸素ないしOHが囲んだ八面体の2次元的なつながりである八面体シートも重要な構成要素となる。層面に平行なへき開が完全であり、一般に板状又は薄片状の形態である。化学的には、Al、Mg、Fe、アルカリなどの含水珪酸塩である(粘土の事典 株式会社朝倉書店1985年7月20日発行225頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。結晶性層状珪酸塩としては、プリフィード(商標名、株式会社トクヤマ。無水の結晶性層状ケイ酸ナトリウム)があり、多機能ビルダーとしてとして知られている。無水の結晶性層状ケイ酸ナトリウムである。層状の結晶構造を持っており、この層の間に水の硬度成分Ca++やMg++などを効果的に取り込むことができる。
ポリアミド樹脂に層状珪酸塩を分散させるポリアミド複合材料層状珪酸塩が知られている(特公平7−47644号公報)。粘土微粒子を用いたナノコンポジット材料については、有機化処理したモンモリロナイト存在下で、ナイロンのモノマー(ε-カプロラクタム)を開環重合させることにより得られたナイロン6/モンモリロナイト系ナノコンポジットこの粘土微粒子を用いたナノコンポジット材料については、有機化処理したモンモリロナイト存在下で、ナイロンのモノマー(ε-カプロラクタム)を開環重合させることにより得られたナイロン6/モンモリロナイト系ナノコンポジット(米国特許第4739007号、特開昭60-217396号公報、特開昭61-95780号公報、特開平11-310643号公報、特開2000-136308号公報)がある。いずれもの場合にも均一分散について触れているが、格別物理的な強制力を働かせていないので満足する結果は得ていないものと言わざるを得ない。
【0030】
シリカ粒子は、合成シリカを意味し、二酸化珪素の粒子が集まって、連続的に網の目のような微細な孔を形成している。この微細な孔の内側に、水蒸気などの各種物質を吸着することもできる。シリカの製法には大きく分けて2つの方法がある。 珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う。シリカの製法には大きく2つの方法がある。(1)珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う方法(湿式法)、及び(2)高温気相反応によりシリカの析出を行う方法(乾式法)である。
シリカ微粒子は、シリカ粒子の凝集性を調整した超微粒子であり、シャープな粒度分布を持ち、良好な分散性を示す。各種塗料の艶消し剤、インキ、改質剤、レーザー表面処理剤、特殊ゴム(補強剤他)、樹脂(アンチブロッキング剤)など多くの利用方法が知られている(株式会社東ソー(商品名)のE-200A,E-220A,K-500,E-1009,E-1011,E-1030,E-150J,E-170,E-200,E-220などがある。)。
トクシール(商標名 株式会社トクヤマ)は極微細 (約2nm) な単粒子が紐状につながり、これがさらに絡み合い3次元の網目構造 (ストラクチャー) となったものが凝集したものである。湿式シリカの真比重は2.0g/cm3ですが、網目構造のため内部に空隙をたくさん持ち、外観上はふわふわとした軽い白色の粉末となっている。
シリカゾルが各種原料物質の被覆剤として知られている(特開2004−136164号公報)。ナノレベルの粒径を持つシリカ微粒子を使い、樹脂に分散させることにより透明性を保持したまま耐熱性等の機械的性能を向上させることが期待される。
【0031】
籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)を用いることができる。籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物は無機化合物と有機化合物の長所を兼ね備えている三次元の籠状構造を有する新規フィラーであり、かつその籠状の三次元構造中には溶解性を高めるための非反応性基(例えば、メチル基、イソブチル基、イソオクチル基等のアルキル基やフェニル基)や重合もしくはグラフト用の官能基(例えば、アミノプロピル基、エポキシ基、ハロゲン基、チオール基、アクリル基等)がシリコン原子に結合しているので、それらの官能基を種々選ぶことにより、樹脂やゴム等に微視的分散させれば、それら既存の材料の機械特性、耐熱性、光学特性、ガス透過性、難燃性、耐薬品性等が飛躍的に向上することが期待されている。
籠上ポリシルセスキオキサン(POSS)は種々な籠型ポリシルセスキオキサンな化合物が知れている。一例を示すと以下の通りである(特開2006−285017号公報)。
【化1】
(式中、R1〜R9すべて同時に又はそれぞれ独立に、メタクリル基、エポキシ基、メチル基、フルオロアルキル基、CF3(CF2)n−R10を意味する。ここで、R10は炭素数1ないし12個の非置換または置換二価炭化水素基を意味し、nは0〜10の整数を意味する。)
籠型ポリシルセスキオキサンの合成は以下の通りである。
上記一般式(1)で示される籠型ポリシルセスキオキサンの合成に使用されるアルコキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
ここで、アルコキシシランを適宜選択することにより、得られる籠型ポリシルセスキオキサンを変更することができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをなどである。
【0032】
これらの充填剤の大きさは、一般に、数nmから数10nmの範囲のものが採用される。これらのものはいずれも公知物質であり、市販品である。
【0033】
前記の方法で得られた充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる溶融混練物を更に成形加工することにより樹脂成形物を得ることができる。エラストマーの場合には弾性率が著しく改善することができる。
樹脂成形物の形状にはロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つをあげることができる。フィルム、シート、チューブを含むいろいろな部品、部材として、柔軟なホース、リング、シール材として使われる。さらに、自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、機構部品として、また、振動吸収材、免振材料として、電気伝導性を有する材料として期待することができる。
【0034】
本発明で得られるエラストマー成形物は、SBBSマトリックスとした場合には、直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散しているものを得ることができる。前記樹脂成形物は、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その弾性率がSBBS単体(12.5 MPa)の1.5〜3.6倍であることが確認された。
【0035】
本発明で得られる成形加工物は、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−3(S/cm)以上である成形加工物である。
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散している成形加工物である。
成形加工物は、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−1(S/cm)以上である成形加工物である。
【0036】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。樹脂成形物の構造、物性測定は、以下の方法で行った。
【0037】
走査型電子顕微鏡(SEM)による構造評価について
試験片を10分間、液体窒素中に浸せきした後、破断した。破断面を金蒸着した後に、フィリップス社製走査型電子顕微鏡(SEM(XL−20SEM)を用いて、10kVの加速電圧で観察した。試験片中にフィラーからなる充填剤が均一に分散されているかどうかを観察することができる。
【0038】
引張特性について
樹脂成形物を成形したシートをカッターで打ち抜いて、ダンベル状試験片とした。引張特性の試験は、ASTM D638に規定された方法に準拠して行った。応力−ひずみ曲線は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンUTM−300)を用いて測定した。本試験は、20℃、相対湿度50%の雰囲気で、クロスヘッド速度500mm/min.で行った。
【0039】
弾性回復率の評価について
弾性回復率の試験は、上記の引張試験機を用いて、20℃で、クロスヘッド速度10mm/minで行った。本試験では、200%ひずみまで到達させた後、応力がゼロになるまでひずみを戻すことによって行った。弾性回復率は、該ひずみ回復実験から得られ、応力がゼロになる時の残留ひずみから定義される。
【0040】
以下に実施例により本発明の内容を説明する。本発明の内容をより詳細に説明する。本発明はこの具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(1)エラストマーと充填物からなる複合材料の場合
原材料は以下のものを用いた。
エラストマーとして、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(以後、SBBSとも言う。)を用いた。:スチレン/ブタジエン/ブタジエン/スチレン共重合体からなるペレットである。旭化成株式会社(日本)製 N503;重量平均分子量(Mw)40000g/mol、スチレン含有量:30重量%であった。
充填物として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いた。
MWCNTはCNT Co.,Ltd製(Korea)。直径10−40nm。長さ5−20μm。高純度(約95%)であり、多層カーボンナノチューブをそのまま用いた。
【0042】
(2)前処理
混練に先立って、エラストマー(SBBS)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を、80℃(真空下)で、少なくとも12時間乾燥した。SBBSのペレット100重量部とMWCNTの3重量部を、株式会社井元製作所(日本)製の高せん断成形加工機HSE3000miniに投入し、200℃、スクリュー回転速度300rpm、1000rpm、2000rpmで、それぞれ4分間、溶融混練した。
得られたブレンド物を粉砕した後、200℃で、熱プレス成形して、シートを得た。得られたブレンド組成物には、SBBSをマトリックスとして、MWCNTの粒子が、回転速度に依存してSBBS中に分散している。さらに、得られたシートの表面は、光沢のある、優れた表面を呈していることを確認した。
【0043】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジットの断面走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。
図からも明らかなように、スクリュー回転数300rpmでは、5から50μmの凝集が観察された(図4(a))。300rpmは通常の押出機の回転数を超えていることを申し添える。
スクリュー回転数1000rpmで作製された試料では、数μmレベルまでMWCNTの凝集物が小さくなっているのが分かる(図4(b))。
スクリュー回転数2000rpmで作製された試料では、凝集構造が見えなくなり、ほぼ孤立した分子に相当する20〜50nmのMWCNT粒子となっている状態が観察された(図4(c)、低倍率)。20〜50nmはMWCNTの直径に相当する。
スクリュー回転数2000rpmで作製された試料について高倍率の状態を観察したものである(図4(d)、高倍率))。
高せん断成形加工機HSE3000miniを用いることにより、従来MWCNTの微視的分散状態を実現するのが困難であった、樹脂中へのナノ分散を実現し、確認することができた。
【0044】
図5は光学顕微鏡により観察した結果を示している。
MWNT/SBBSコンポジットのトルエン溶液をフイルム状に成形した結果である。各々(a)300rpm、(b)1000rpm、(c)2000rpmにより回転処理した結果である。
【0045】
図6はローレンツ修正したSAXSのプロフィルである。(a)は純粋なもの、(b)は1000rpmのもの、(c)は2000rpmのものである。
図7は2000rpmで得られたコンポジットのTEM写真である。黒点は分散状態にあるCNTを示している。
【0046】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を図8に示す。この図では、SBBS単体(曲線a)とスクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジット;(b)300rpm,(c)1000rpm,(d)2000rpmを示している。第4図からも明らかなように、図で示したSEM観察の結果と良く対応しており、MWCNTが数十μmに凝集した構造(300rpm)では、SBBS単体の破断伸びの半分程度しかなく、数μmレベルまでMWCNTの凝集物が小さくなっている構造(1000rpm)であっても、SBBS単体の破断伸びの70%程度しか発現しないことが分かった。
しかしながら、ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体に匹敵する破断伸びが観察された。
さらには、図8で顕著だったのは、応力-ひずみ曲線における最初の立ち上がりカーブのところで見積もられる弾性率が、MWCNTの分散性に比例して大きく改善される点であった。これら機械的性質については、表1にまとめて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるように、MWCNTの分散性に比例して弾性率が改善され、ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体に比し、弾性率が2倍以上に改善されていることが分かった。また、この場合、破断強さも23%増加していることが示された。即ち、SBBS/MWCNT(3%)系ナノコンポジットの機械的性質としては、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させることにより、SBBSのエラストマーとしての性質(機械的破断伸び等の)を維持しながら、弾性率等を2倍以上に改善できることが分かった。
【0049】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を図9に示す。
図において回復ひずみは応力がゼロとなるところでの残留ひずみが小さい程、優れたエラストマーであることを意味する。図8における破断伸びの挙動と同様に、ここでも同じ傾向を示し、MWCNTの分散性に比例して残留ひずみが次第に小さくなることが示された。残留ひずみの各々の数値については、表1の最も右の欄に示した。ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体のそれ(20.34%)に匹敵する残留ひずみ(22.63%)となることが示された。
【実施例2】
【0050】
実施例1と同様の装置、手順で、SBBSのペレット100重量部に対してMWCNT重量部を1.5〜6.0%まで変えてスクリュー回転速度2000rpmで、それぞれ4分間、溶融混練した。得られたブレンド物を粉砕した後、200℃で、熱プレス成形して、シートを得た。得られたブレンド組成物には、SBBSをマトリックスとして、MWCNTの粒子が、微視的に分散している。さらに、得られたシートの表面は、光沢のある、優れた表面を呈している。
【0051】
実施例2において、MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を図10に示す。この図からも明らかなように、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させても、その機械的性質としての破断伸びはMWCNTの添加量とともに減少してしまうことが分かった。
一方、弾性率は添加量に比例して増加することも分かった(表2参照)。
図8では、(a)SBBS単体,(b)1.5重量%MWCNTを含む場合,(c)3.0重量%MWCNTを含む場合,(d)6.0重量%MWCNTを含む場合を各々表す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2からも明らかなように、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させると、その機械的性質としての破断伸びはMWCNTの添加量とともに減少し、弾性率は添加量に比例して単純に増加していくことが分かった。 また、破断強さに関してはMWCNTの少量添加(1.5%)により26.81MPaまで一気に上がるが、その後MWCNTの添加量とともに減少し、6%添加でほぼSBBS単体と同じ値になることが分かった。
【0054】
実施例2において、MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を図11に示す。図において回復ひずみは応力がゼロとなるところでの残留ひずみが小さい程、優れたエラストマーであることを意味する。ここでは、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させているので、ナノ分散性を反映し、MWCNT添加量に依存しない、優れた回復弾性率が観測された。図11では、(a)SBBS単体、(b)1.5wt%MWCNTを含む場合、(c)3.0wt%MWCNTを含む場合、(d)6.0wt%MWCNTを含む場合を表す。
【0055】
本発明で得られる新規な樹脂成形物では、エラストマーの優れた性能を保持したまま、少量のMWCNT添加により、容易に弾性率等の機械的性質が改善された新規な高弾性率エラストマーを与えるので、フィルム、シート、チューブを含むいろいろな部品、部材として、柔軟なホース、リング、シール材として使われる。さらに、自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、機構部品として、また、振動吸収材、免振材料としての用途が広がり、産業上の利用可能性が高いものである。
【実施例3】
【0056】
試料物質
ポリビニリデンフロライド(PVDF)(クレハ化学工業株式会社製,KF850)を使用前に24時間80℃の条件下に真空炉内で乾燥させた。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)はAldrich社製のものを用いた。炭素のCVD法により製造されたものであり、純度は95%以上であった。外径は10−20nm、内径は5−10nmであった。酸化開始温度はTGAにより計測して552.8℃、かさ密度2.1g/cm3。
溶融混練装置の条件
前記再循環させるフィードバック型スクリュー20を使用して溶融混練装置を使用した。L/D比は1.78であった。スクリューの回転速度は1000rpm、対応するせん断速度は1470s−1であった。間隙は1 mm 、生成物はTダイより取り出す。
試料調整
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の化学的処理は行わない。PVDF/MWCNTコンポジットを、220℃4分間処理を行い製造した。乾燥したフレークを220℃で1分間4tの条件下にプレスして、導電性を測定するために0.1mmの厚さのものと、レオロジー特性を測定するために0.5mmの厚さのものを得た。比較例として通常の押し出し機を用いて100rpm、対応するせん断速度50s−1であった。
レオロジー測定結果を表1に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
2重量%MWCNTを含有するPVDF複合体の液体窒素により冷却している状態の横断面断口の構造を示すSEM写真を図12に示した。
図12(a)及び(b)は、高剪断力下に製造した複合体のSEM写真である。
図12(c)及び(d)は、低剪断力下に製造した複合体のSEM写真である。
図12に見られる、輝いて見える点及び線は破壊されたMWCNTに対応するものであることを意味している。
図12(a)及び(b)は、高剪断力下に凝集することなく、PVDFのマトリックス中にMWCNTが分散されていることがわかる。
図12(b)では、個々のナノチューブの初期の直径が30−50nmに対応するナノチューブの直径が40nmであることを示している。そして、ナノチューブはPDF中で一つのナノチューブが分離されているように、完全に剥げ落ちている状態を示している。
図12(c)及び(d)では凝集している状態を観察することができる。図12(d)では、ナノチューブが分散されることなく集中して存在していることが分かる。
【0059】
図13は、MWCNTの含有量に対する導電率の関係を示している。図13の上の図は、体積導電率を示しており、図13の下の図は表面導電率を示している。aは高剪断力により得られる場合の結果を示している。bは低剪断力により得られる場合の結果を示している。体積導電率を示す図13の場合には、MWCNTの含有量が1.2重量%(4.9×10−14S/cm)の場合から徐々に上昇し、1.9重量%(2.5×10−2S/cm)の場合まで上昇する。この点を過ぎると、格段に上昇することはなくなる。同様の傾向は表面導電率の場合にも見ることができる。表面導電率の場合には、MWCNTの含有量が1.5重量%を超える場合に上昇が見られ、2.5重量%まで上昇する。
【0060】
図14は、MWCNTの含有量を変化させたときの振動数と動的弾性率の関係を示している。
図14の上の図aは、高剪断力により得られた場合の結果を示している。図14の下の図bは、低剪断力により得られる場合の結果を示している。
低振動数ではPVDF連鎖は完全に緩和されており、G´〜ω2によって近似される典型的なホモポリマーに類似した末端の特性を示す。しかしながら、ナノチューブの含有量が〜1重量%までの高剪断力により得られた場合や、〜2重量%までの低剪断力により得られた場合では、この末端の態様は消滅し、低振動数でのωに関するG´依存性は低い。かくして、コンポジット内での大きな尺度の高分子による緩和は、ナノチューブが存在すると抑制される。
高い振動数でのレオロジーに関する作用についてナノチューブによる効果は比較的に弱い。このことはPVDFの連鎖について短い範囲内でのダイナミックスについては影響を与えることはないことを意味している。
図15は、0.5rad/sの固定振動数としたときのPVDF/MWCNTコンポジットの動的弾性率とナノチューブの含有量の関係を示したものである。
図15上の図(a)は、高剪断力により得られた場合の結果を示している。図15の下の図bは、低剪断力により得られる場合の結果を示している。差込図は、G´と減少した質量の関係をLOG−LOGプロットしたものである。
15(a)の結果によると、含有量が0.8から1.2重量%のときに物質構造の急激な変化を表す急激な上昇が見られる。G´の急激な変化はPVDF/MWCNTの高剪断率の製法によるコンポジットはナノチューブがポリマーの動きを邪魔する結果となり、レオロジーの関係が崩れことに到達する。
G´∝ (m−mc)β
G´は動的弾性率、mはMWCNTの質量成分、mcはレオロジーがしみ出しするときの閾値を表す。βは臨界的な指数である。
差込図は、動的弾性率が固定されたときにはナノチューブ含有量がG´の付加量の低下はMWCNTコンポジット中にあることを示している。
図16は、初期のMWCNT及び(a)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の高剪断力により得られた場合、(b)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の低剪断力により得られる場合の各ラマンスペクトルを示している。
コンポジット中のMWCNTsの振動数は、初期のMWCNTの振動数より10−1cmだけ上方に向かって移動している。
図17は、(a)PVDFの場合のみ、(b)2重量%のMWCNTを含有する場合のMWCNT及びPVDFのコンポジット及び(c)高剪断力により得られた場合、(d)低剪断力により得られた場合のC−H振動に関するラマンスペクトルを示している。
【実施例4】
【0061】
試料物質
ポリ乳酸(PLLA)(分子量1.7×105g/mol、D体含有量1.2%)を使用前に24時間80℃の条件下に真空炉内で乾燥させた。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は日機装株式会社製のものを用いた。炭素のCVD法により製造されたものであり、純度は95%以上であった。外径は10−20nm、内径は5−10nmであった。
溶融混練装置の条件
前記再循環させるフィードバック型スクリュー20を使用して溶融混練装置を使用した。L/D比は1.78であった。スクリューの回転速度は1000rpm、対応するせん断速度は1470s−1であった。間隙は1 mm、生成物はTダイより取り出す。
試料調整
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の化学的処理は行わない。PLLA/MWCNTコンポジットを、190℃4分間処理を行い製造した。乾燥したフレークを190℃で1分間4tの条件下にプレスして、導電性を測定するために0.1mmの厚さのものを得た。比較例として通常の押し出し機を用いて100rpm、対応するせん断速度50s−1であった。
【0062】
図18は、MWCNTの含有量に対する体積導電率の関係を示している。緑のプロットは高剪断力により得られる場合の結果を示しており、その閾値は極めて小さく、0.6重量%である。また、赤のデータは低剪断力により得られる場合の結果を示している。体積導電率を示す図18の場合には、MWCNTの含有量が0.5重量%を超えると急激に導電率が上昇し、2重量%(10−1S/cm)の場合まで上昇する。この点を過ぎると、格段に上昇することはなくなる。しかしながら、赤の低剪断力により得られる場合の試料の傾向は、閾値が大きく(1重量%)。表面電導率の場合には、MWCNTの含有量が0.8重量%を超える場合に上昇が見られ、2重量%まで上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】エラストマーや樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明の装置の全体図。
【図2】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリュー及び溶融混練物の再循環を説明する詳細な図。
【図3】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部にある間隙を説明する図である。
【図4】スクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジットの断面走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。(a)300rpmで得られたもの、(b)1000rpmで得られたもの、(c)2000rpmにより得られたもの。
【図5】光学顕微鏡により観察したMWNT/SBBSコンポジットのトルエン溶液をフィルム状に成形した結果である。(a)300rpm、(b)1000rpm、(c)2000rpmにより回転処理した結果である。
【図6】ローレンツ修正したSAXSのプロフィルである。(a)は純粋なもの、(b)は1000rpmのもの、(c)は2000rpmのものである。
【図7】2000rpmで得られたコンポジットのTEM写真である。
【図8】スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を示す図である。
【図9】スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を示す図である。
【図10】MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を示す図である。
【図11】MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を示す図である。
【図12】2重量%MWCNTを含有するPVDF複合体の液体窒素により冷却している状態の横断面断口の構造を示すSEM写真である。
【図13】MWCNTの含有量に対する電気伝導度の関係を示す図である。
【図14】MWCNTの含有量を変化させたときの振動数と動的弾性率の関係を示す図である。
【図15】0.5rad/sの固定振動数としたときのPVDF/MWCNTコンポジットの動的弾性率とナノチューブの含有量の関係を示す図である。
【図16】MWCNT及び(a)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の高剪断力により得られた場合、(b)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の低剪断力により得られる場合の各ラマンスペクトルを示す図である。
【図17】(a)PVDFの場合のみ、(b)2重量%のMWCNTを含有する場合のMWCNT及びPVDFのコンポジット及び(c)高剪断力により得られた場合、(d)低剪断力により得られた場合のC−H振動に関するラマンスペクトルを示す図である。
【図18】MWCNTの含有量に対する電気伝導度の関係を示す図である。高せん断成形加工した試料(スクリュー回転数:1000 rpm)と低せん断成形加工した試料(100 rpm)とを比較して示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10:溶融混練物製造装置
12:溶融混練部
14:成形部
16:原料供給部
18:シリンダー
20:フィードバック型スクリュー
22:ベアリング
24:シャフト
26:ヒーター
28:シール
30:間隙を調節するための調節手段
32:間隙
35:ヒーター
36:Tダイ前部末端部加熱ヒーター
38:Tダイ背後部末端加熱ヒーター
40:排出口
42:熱電対
44:孔
46:内部フィードバック型スクリューの構造
48:スクリュー背後部
50:スクリュー前部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の溶融混練方法及びゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の溶融混練物、その溶融混練物からなる成形加工物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土などのナノレベルのフィラーを均一に分散させる溶融混練物の製造方法及びその製造方法により得られる溶融混練物、並びにその溶融混練物を成形することにより得られる樹脂成形物を製造することの試みは既になされている。しかしながら、得られる樹脂成形物の特性を調べてみると、期待するほどではなく、必ずしも満足する結果を得ていない。
【0003】
室温でゴム弾性を示す高分子物質であるエラストマーやゴムは、自動車内装部品、建築部材、包装及び容器などの材料、医療用部品などの各分野わたり、広範な産業分野において使われている。本来、エラストマー及びゴムは低い弾性率、高い破断伸び等の性質を有している。フィラー及び強化繊維をエラストマーやゴムに添加してフィラーや強化繊維による特性を、エラストマー及びゴムに付与すると共に、エラストマー及びゴムが有していない特性である、高弾性率のエラストマーやゴムを作製することができるとされている。
このように両者を混合することにより、機能を十分に発揮させ、本来有していない新たな特性を付与することができる結果、産業界の多様なニーズに対応できるので、その都度、幅広いエラストマー性能の中から適切な数値のものが選択することが行われる。
一方、熱可塑性樹又は熱硬化性樹脂は本来高い弾性率、低い破断伸びが特徴を有している。フィラーを加えて機能を発揮させて熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の特性を生かして、フィラーなどの特性を有する樹脂複合体が製造されてきた。
【0004】
これらの場合に、フィラーなどの充填剤を、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に添加してフィラーなどを均一かつナノレベルで分布させることが重要であると指摘されている。しかしながら、均一に分散することは技術的に困難を伴うものである。特に、ナノレベルのフィラーにあっては技術的に困難を伴うとされる。
ナノサイズレベルのフィラー、例えばカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、通常の方法では、この凝集力を解くのは困難である。
【0005】
例えばカーボンナノチューブを具体例に従来の方法を検討してみる。
ナノレベルにあることで知られる、カーボンナノチューブは凝集することを防ぐことが最重要視され、この凝集を防ぐことができた後に、安定した分散液を製造した後、この分散液ごと高分子材料マトリックスに混合し分散することが行われてきた。以下に具体例を挙げる。
溶液中のカーボンナノチューブとポリマー組成物を物理的に混合する方法(非特許文献1 Appl Phys Lett 1999;75;1329など)、又は溶融状態のポリマー組成物中に溶解させる方法(非特許文献2 Chems Phys Lett2000;330;219など)ことが行なわれてきた。樹脂中にフィラーを添加する場合には当然樹脂等を溶融状態として、フィラーを添加して混練押出し機等を用いて混練することなど知られている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの混合物中にカーボンナノチューブを混入分散した素材で半導電性遮蔽板を形成する際にカーボンナノチューブの配合に関して慣用の押出機を用いる(特許文献1 米国特許第4,857,600号明細書、特許文献2 米国特許第5,575,965号明細書)。樹脂又はエラストマーを主成分とする樹脂成形物において、ナノスケールのカーボンナノチューブを含有すること、前記樹脂が熱可塑性樹脂 である場合、メルトインデックス(MI)を特定し、エラストマーの場合は、ウイリアムズ可塑度を特定する(特許文献3 特開2005-088767号公報、特許文献4 特開2004―338327号公報、特許文献5 特開2005−314019号公報)などが知られている。
しかしながら、前記したように、ナノサイズレベルのフィラー、具体的にはカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物等は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、前記の方法では、この凝集力を解くのはことが困難である点は解決されておらず、問題の根本的な解決は行われていない。
【0006】
上記の方法では的確に解決できないので、さらに、これらナノサイズレベルのフィラーをエラストマー又は樹脂に分散させるには、通常は界面活性剤を添加するか、もしくはフィラーを化学的に修飾してフィラーと樹脂との親和性を高める必要があり、このような方法も既に提案されている。
【0007】
カーボンナノチューブの分散液を調整する方法については、種々の手段が知られている。
(1)分散手段として超音波を用いてカーボンナノチューブを分散すること(非特許文献3 Langumuir2004;20;10367)が知られている。又、ピレン分子が強い相互作用によってカーボンナノチューブ表面上に吸着することを利用して、ピレン分子にアンモニウムイオンを含有する置換基を導入し、これを単層カーボンナノチューブとともに水中で超音波処理し、単層カーボンナノチューブに非共有結合的に吸着させることにより水溶性の単層カーボンナノチューブを製造する方法(非特許文献4 Chem.Lett.,638(2002)がある。
(2)酸処理によってカーボンナノチューブの表面に親水性の官能基を導入することによって各種溶媒への分散性を向上させ、分散液をポリマー溶液と混合することによってコンポジット化する方法が知られている。例えば、単層カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理する分散する方法(非特許文献5 Science,280,1253(1998)、単層カーボンナノチューブは、その両末端が開いており、カルボン酸基等の含酸素官能基で終端されていることに着目し、カルボン酸基を酸塩化物にした後、アミン化合物と反応させ長鎖アルキル基を導入し、溶媒に可溶化する方法(非特許文献6 Science,282,95(1998)がある。
(3)界面活性剤やカーボンナノチューブに吸着する特定のポリマーによってCNTをコーティングして各種溶媒に分散する方法(非特許文献7 Nano Lett 2003;3;269)がある。
これらは、強酸中で処理を実施するため、操作が煩雑となり、その分散化の効果も十分とはいえないし、長鎖アルキル基を導入する場合などでは、カーボンナノチューブのグラフェンシート構造の損傷やカーボンナノチューブ自体の特性に影響を与えるなどの問題点が指摘されている。
【0008】
導電性ポリマー(a)、溶媒(b)、カーボンナノチューブ(c)を含有し、さらに必要に応じて高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)、コロイダルシリカ(h)を含むカーボンナノチューブ含有組成物、該組成物からなる塗膜を有する複合体及びそれらの製造方法が知られている(特許文献6 特開2005−97499号公報、特許文献7特開平7−102112号公報)。この方法では溶媒を用いること、シランカップリング剤を用いることにより均一化を図ることが特徴であるが、添加成分も多く、操作が煩雑になることは避けることができない。ポリイミドなどの高分子化合物に対して、極めて優れた特性が得られることが期待できとされているが、カーボンナノチューブを用いたナノコンポジットは上述した利点を有するにもかかわらず、カーボンナノチューブ相互の凝集力(ファンデルワールスの力)によって、カーボンナノチューブが束状及び縄状になってしまうため、カーボンナノチューブを樹脂に均一に分散させることは極めて困難であることが知られている。特に、カーボンナノチューブの原子レベルでの滑らかな表面が基材に対する親和性を低下する要因となっている。
【0009】
ポリイミドは、一般的に溶剤に溶解することが困難であり、ナノコンポジットとして利用する際、ナノ粒子を混合、分散させることが困難である。ブロック共重合により製造されたポリイミドが溶剤に可溶である点に着目し、ブロック共重合ポリイミドとカーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をアミド系極性有機溶媒、特に、NMP(Nメチルピロリドン)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)に分散させた溶液を混合すること、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とカーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をアミド系極性有機溶媒、特に、NMP(Nメチルピロリドン)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)に分散させた溶液を混合することによって、カーボンナノチューブが分散したポリアミック酸溶液を得、次いで脱水することによってカーボンナノチューブが均一に分散したポリイミドを得る(特許文献8 特開2006−124613号公報)。この場合においても、煩雑な処理を必要とする点では同じである。
結局この場合においても問題の解決にはなっていないことがわかる。
【0010】
本発明者らは前記の問題点を見たときに、ナノサイズレベルのフィラー、例えばカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物等は一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強いので、この凝集力を解く方法を得ること以外に問題点の解決策はなく、この問題を解決することは喫緊の課題となっている。
【特許文献1】米国特許第4,857,600号明細書
【特許文献2】米国特許第5,575,965号明細書
【特許文献3】特開2005−88767号公報
【特許文献4】特開2004−338327号公報
【特許文献5】特開2005−314019号公報
【特許文献6】特開2005−97499号公報
【特許文献7】特開平7−102112号公報
【特許文献8】米国特許5,502,143号明細書
【特許文献9】特開2006−124613号公報
【非特許文献1】Appl Phys Lett 1999;75;1329
【非特許文献2】Chem Phys Lett 2000;330;219
【非特許文献3】Langumuir2004;20;10367
【非特許文献4】Chem.Lett.,638(2002)
【非特許文献5】Science,280,1253(1998)
【非特許文献6】Science,282,95(1998)
【非特許文献7】Nano Lett 2003;3;269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題を解決するための課題は、ナノレベルの大きさの充填剤であるフィラー、具体的には、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンブラック、粘土微粒子、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物のフィラーに、従来では知られていなかった物理的にせん断流動場を付与するだけで、界面活性剤を添加することなく、あるいはフィラーを事前に化学的に修飾することなく、多様な樹脂系であるゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を溶融状態とし、カーボンナノチューブ等のナノサイズレベルのフィラーを混合し混練する新規な方法を提供するものである。
この課題を解決するに当たっては、従来の技術を分析し以下のように対処することが有効であるという結論に達した。
エラストマーや樹脂中にフィラーをナノレベルで均一に分散させるには主に2つの要因を排除することが必要となる。
このためには、以下の二つの問題点の解決に成功することが必要となる。
(1)樹脂とフィラー間での親和性、相互作用を高める。(2)フィラー同士の凝集を防ぐ。
前記(1)及び(2)の個々の点について以下に考察する。
(1)を解決する解決策としては、化学的手法により樹脂もしくはフィラーのどちらか一方もしくは両方を修飾し、両者の相互作用力を高める方法が有効であると考えられる。例えば、フィラーに反応性の高い官能基を部分的に結合させることにより、結合させた点が活性点となり樹脂中の官能基との相互作用が著しく改善することができる。しかしながら、この解決策では実用材料においては、その効果の点で均一に分散させることは無理であり、限界が生じる結果、これによって解決を図ること自体に無理があることがわかる。
一方、(2)を解決する解決策としては化学的に凝集を抑制するために、凝集抑制剤を添加することにより解決することが一般的である。単に、凝集抑制剤を添加することでは、最終の解決しようとする課題である、エラストマーや樹脂中にナノレベルのフィラーを均一に分散させることは不可能であることがわかる。
前記2つの操作により従来の方法を適用してそれぞれ個別に解決していたのでは、樹脂中にフィラーをナノレベルで均一に分散させることは不可能であるという結論に達した。
むしろ、(2)の操作で目標とするフィラー同士の凝集は避けられないものとして捉え、その凝集力に優る有効な処理手段の場を外部要因により作りだして処理することが必要であると考える。むしろ、外部要因により高せん断流動状態を作り出すことが最善の方法であるという結論に達した。
高せん断流動状態を作り出すことにより、フィラー同士の凝集を抑えるだけでなく、せん断流動場によりフィラーの剥離、孤立化を図ることができ、さらにはその処理の場において樹脂とフィラーとの相互作用を働かせることができることも可能となる。すなわち、この方法を採用すれば、結果として(1)と(2)の点につき、同時に解決し、樹脂中でナノレベルのフィラーを均一に分散させることが可能となる。
このようなナノ分散化による処理手段による得られる組成物は、その構造に由来して、性能・機能の飛躍的向上を図ることが実現され、結果として新規な材料が開発されるという結論に達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明者らは、前記課題について鋭意研究し、ナノレベルの大きさの充填剤であるフィラー、具体的には単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物等のフィラーをエラストマーや樹脂中に均一に分散させることについて前記の従来の方法を回避して新しい方法や手段について検討した。そして、ついに以下の知見を得るに至った。
(2)ナノレベルの大きさの充填剤である前記のフィラー(本発明では多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を代表に用いて説明する)をエラストマーや樹脂中に均一に分散させる場合には、エラストマーや樹脂を溶融混練の状態に維持すること、すなわち、フィラーからなる充填剤とエラストマーや樹脂を、原料投入部16を経て、シリンダー18、フィードバック型スクリュー20、加熱部を備えた溶融混練部12に供給し、エラストマーや樹脂を溶融して、前記スクリューの回転数;1000rpmから3000rpm、せん断速度;1500から4500sec−1の条件下で、前記充填剤と混練し、次に前記エラストマー、樹脂及び充填剤からなる混合物をスクリューの後端から先端に送り、前記スクリューの先端の間隙32に閉じ込めた後、前記間隙32から前記スクリューの真ん中に設けられている孔44を経て後端に戻し、再びスクリューの先端に送る再循環操作を一定時間行う(図1、図2)。溶融混練中のエラストマーや樹脂中に充填剤であるフィラーを含有する状態の混合物に対して有効なせん断速度を付与することができ、充填剤を溶融状態のエラストマーや樹脂中に充填剤であるフィラーを均一に分散させることができる結果、前記課題を解決することができることを見出した。
(3)溶融混練部はシールを備えた溶融混練部であり、試料投入口から試料を投入する試料投入部から接続し、前記スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔;0.5から5mm、スクリューの内部に設けられている孔内径;1mmから5mm、好ましくは2mmから3mmを有しており、スクリューの回転数;1000rpmから3000rpm、せん断速度;1500から4500sec−1、加熱温度;室温又は被溶融混練樹脂温度より高い温度の条件下で、かつ前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環を一定時間行って前記充填剤と樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法を用いることにより、最適な、せん断速度を付与して樹脂混練物を製造して前記課題を解決することができることを見出した。
(4)そして、前記溶融混練法に引続いて得られる溶融混練物をT-ダイを通すことにより成形加工する成形加工方法及び成形加工して得られる成形加工物を得ることができることを見出した。
(5)前記充填剤の含有量は樹脂100重量%に対して、0.01−30.0重量%である場合が有効であることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶融混練方法によれば、フィラーからなる充填剤を、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している溶融混練方法であり、この溶融混練方法によれば、フィラーからなる充填剤をゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している溶融混練物を得ることができる。
又、溶融混練法に引き続きT-ダイを用いて成形加工することによりフィラーからなる充填剤をゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に均一に分散している成形加工物を得ることができる。
ゴムやエラストマーの場合には、柔軟性、ゴム弾性、変形回復など本来のエラストマーとしての優れた性質を示す一方、充填剤のフィラーの特性を十分に発揮させて高い弾性率、破断強さ等の機械的性能や電気伝導度が飛躍的に向上し、エラストマーとしてフィルム、シート、チューブを含む各種部品及び部材、例えば、柔軟なホース、リング、シール材として広く使用できる製品を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂では自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、充填剤のフィラーの特性を十分に発揮させや特性を有する材料が可能となり、振動吸収材、免振材料として弾性率等の機械的性能や電気伝導度が飛躍的に向上したことを特徴とする電気的特性が良好な材料を完成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の溶融混練方法及び溶融混練方法により得られる溶融混練物は以下の通りである。
図1は、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明の装置の全体図である。
図2は、本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューを説明する図である。
図3は、本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部に間隙を説明する図である。
【0015】
溶融混練物製造装置10は、原料物質であるフィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の原料供給部16、溶融混練部12及び成形部14から構成されている。
溶融混練部12は、シリンダー18中にフィードバック型スクリュー20を有している。フィードバック型スクリュー20はシリンダー18中にシャフト24を介して設置されている。シャフト24はベアリング22を介してフィードバック型スクリュー20と連絡さている。又、シリンダー18にはシリンダーの外側に沿って樹脂を溶融させるためのヒーター26が設けられている。シャフト24が位置する場所と反対側の端にはシリンダー18に溶融混練部12と成形部14の間をシールするためのシール28が設けられている。又、シリンダー18には、間隙32を調節するための調節手段30がフィードバック型スクリュー20のチップ末端表面29とシール表面28の間に設置されている。間隙32は、0.5mmから5mmの範囲で調節することが可能である(図2、3)。
成形装置14は、押出部ヒーター35及びフィルムを製造するためのTダイ34を有している。Tダイ34は、Tダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後末端部加熱ヒーター38を有している。押出されたフィルムはTダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後部末端加熱ヒーター38の間に形成された排出口40を通過する。成形部及びTダイ前部末端部加熱ヒータ内には温度測定のために熱電対42が挿入されている。その測定結果は制御装置(図示せず)に送られ、溶融混練部12及びTダイの温度調製を行う。
スクリュー20内部には、内部直径が1mm〜5mm、好ましくは2mm〜3mmの間の内部直径を有する内部孔44を有している。フィードバック型スクリュー20のL/D比(L:長さ、D:直径)は1.78である。スクリューの回転速度は、1000rpmから3000rpmの範囲に調整されているスクリューの回転速度は、1500〜4500sec−1の範囲内に調整できる。シリンダー内の温度は溶融しようとする樹脂により変化する。
スクリューは円筒内で樹脂を溶融するのに十分な構造となっている。図2には内部フィードバック型スクリューの構造46が示されている。内部フィードバック型スクリューの構造46中には、スクリュー背後部48から供給される樹脂がスクリューによりスクリュー前部50に移行される。溶融樹脂は前部表面29とシール表面31の間に形成される間隙32内に閉じ込められる。樹脂はスクリューの中央部に設けられている横方向の孔44を経て、異なる方向に向いた孔を通り、スクリュー背後部48を経て、再びスクリューの前方向50に向かう。
せん断溶融に要する時間は、内部フィードバック型スクリューの構造46中を循環するために要する時間により変更可能である。樹脂がせん断される程度は、スクリュー後部末端と、スクリュー後部末端とスクリュー内部に直径につながるシール表面の間に形成される間隙を変更することにより可能となる。樹脂をせん断する程度は、間隙を狭くすること、孔の直径を狭くすることにより上昇させることができる。間隙とスクリューの孔の内径については樹脂の粘度の点から最適なものとすることが必要である。シリンダー内に含まれる樹脂を溶融混練するために必要な時間は1分から8分である。
【0016】
本発明の溶融混練法は以下の通りである。
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、原料投入部16から投入し、スクリュー20を備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部12に供給する。フィードバック型スクリュー20の作用により前方に送られる。
前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して得られる溶融混練したエラストマー若しくは樹脂を、スクリューの後端から先端に送る。スクリューの先端の間隙32に閉じ込めた後、前記間隙32からスクリューの中心部に設けられている孔44を通りスクリューの後端に移行させる。間隙32は、0.5mmから5mmの範囲で調節することが可能である(図2、3)。
フィラーからなる充填剤は溶融されているエラストマー若しくは樹脂中に均一に分散された状態で、スクリューの中央部に設けられている横方向の孔44を通り、スクリュー後端部に閉じ込められ、スクリュー背後部48を経て再び前記スクリューによりスクリュー前部50に再循環移行される。
1分から8分間の繰り返し循環を行い、フィラーからなる充填剤を溶融されているエラストマー若しくは樹脂中により均一に分散された状態とする。
【0017】
溶融加熱温度は室温又は被溶融混練樹脂温度より高い温度条件下に設定する。被溶融混練樹脂の溶融温度が室温より低い場合には、溶融加熱温度を室温に設定する。又、被溶融混練樹脂の溶融温度が室温より高い場合には溶融加熱温度を被溶融混練樹脂の溶融温度に設定する。
【0018】
スクリューの回転数が1000rpm未満であり、せん断速度は1500sec−1未満の場合には溶融混練操作が十分に行われず満足する結果を得ることができない。一方、スクリューの回転数は3000rpmを超えて、せん断速度が4500sec−1を超える処理を行っても溶融混練の状態を観察しても格別の結果を得ることができない。以上の結果から、スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に行うことが重要である。スクリューの形状については試料をフィードバックさせるための孔がある以外は通常用いられている形状のものが用いられる。
【0019】
1分から8分間の循環操作を繰り返し、フィラーからなる充填剤を溶融されているエラストマー若しくは樹脂中により均一に分散された状態として、間隙28より、成形装置14に取り出す。この場合には、バルブ(図示せず)を開くことにより成形装置14に取り出す。
押出部ヒーター35及びフィルムを製造するためのTダイ34を有している。Tダイ34は、Tダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後末端部加熱ヒーター38を有している。押出されたフィルムはTダイ前部末端部加熱ヒーター36及びTダイ背後部末端加熱ヒーター38の間に形成された排出口40を経て取り出す。成形部及びTダイ前部末端部加熱ヒータ内には温度測定のために熱電対42が挿入されている。その測定結果は制御装置(図示せず)に送られ、溶融混練部12及びTダイの温度調製を行う。
【0020】
処理対象物の一方は、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を挙げることができる。
エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に対して要求される特性としては、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は加熱により均一に溶融混練した状態を保つことができることである。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂 (例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレン共重合体樹脂 )、ポリアミド系樹脂 (例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体)、ポリエステル系樹脂 (例えば、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリエステル共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル)、ポリエーテル系樹脂 (例えばポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))、ポリニトリル系樹脂 (例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体)、ポリメタクリレート系樹脂 (例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル)、ポリビニル系樹脂 (例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、セルロース系樹脂 (例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂 (例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE))、イミド系樹脂 (例えば芳香族ポリイミド(PI))、ポリアセタールなどを用いることができる。
これらはいずれもよく知られており、市販品を購入して使用することができる。
実施例では、ポリビニリデンフロライド(PVDF)及びポリ乳酸を用いて具体的に説明している。PVDFは優れた化学的耐性、機械的性能を有するので、化学物質やガス等に曝される環境下において使われる材料として欠かせないものである。同じく、ポリ乳酸にしても天然物から合成され、特異な分解性を有することから注目されている。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、芳香族炭化水素ポリマー(ポリ-p-フェニレン、ポリ-p-キシレン)、芳香族複素環状ポリマー(ポリヒダントイン、ポリパラバン酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン)、熱硬化型耐熱性ポリマー(スチリルピリジン系樹脂、シナート系樹脂)を挙げることができる。
加熱により均一の溶融物を得る場合には、熱可塑性樹脂と同様に加熱することにより均一の溶融物をえることができる。
上記樹脂はいずれも汎用の公知物質であり、使用するに際しては市販品を購入して使用することができる。
したがって、PVDFやポリ乳酸の具体例が示されていることにより、その他の熱可塑性樹脂に対しても同様に適用でき、同様に良好な結果を得ることができる。上記樹脂はいずれも汎用の公知物質であり、使用するに際しては市販品を購入して使用することができる。
【0023】
エラストマー及びゴムとしては、ジエン系ゴムおよびその水素添加物(たとえばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR)、オレフィン系ゴム(たとえばエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、EPMなどのエチレンプロピレンゴム)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、IIR、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー)、含ハロゲンゴム(たとえばBr−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、CR、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコンゴム(たとえばメチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム)、含イオウゴム(たとえばポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(たとえばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エラストマー (たとえばスチレン系エラストマー 、オレフィン系エラストマー 、エステル系エラストマー 、ウレタン系エラストマー 、ポリアミド系エラストマー )などを挙げることができる。
実施例では、エラストマーは極性基を持たない無極性のエラストマーである、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(SBBS)、ポリ(スチレン-ブタジェン-スチレン)(SBS)、又はエチレンプロピレンゴムの中からなどにより具体的に説明している。他のエラストマーについても同様に行うことができる。上記エラストマーはいずれも公知物質であり購入して使用することができる。SBBS、SBS等は熱可塑性エラストマーなので、天然ゴムのように架橋させる必要が無く、通常の樹脂のように成形加工が容易でありながら、ゴム状弾性に優れた物質である。
エラストマー及びゴムに対しては均一に溶融した状態となること、そして、
混練した状態を保つものである。
この実施例の場合と同様に他のエラストマーやゴムの場合についても同様に行うことができる。
【0024】
処理対象物の他の一方は、フィラーからなる充填剤である。
フィラーからなる充填剤は、ナノサイズレベルのフィラー、具体的にはカーボンナノチューブや粘土(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン化合物である。これらは一次粒子としての粒径や空隙率が小さいために、フィラー同士の凝集力が極めて強く、もともと相互につながりあう状態で存在し、通常の方法では、この凝集力を解くのは困難とされてきた。
溶融した状態のエラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂中に、相互につながりをもっている状態でフィラーからなる充填剤を送り込み、従来では知られていなかった物理的にせん断流動場を付与するこいとにより、フィラーからなる充填剤が本来相互につながりあう性質を排除して、できるだけ単一のフィラーの状態に戻した状態としたうえで、均一に溶融したエラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂中に単一のフィラーの状態とされたフィラーが均一に分散された溶融混練された状態とするものである。フィラーが均一に分散された溶融根連された状態でフィラーが有する固有の特性を付与できる結果となる。
【0025】
フィラーからなる充填剤には、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー(CF)、カーボンブラック(CB)、粘土微粒子(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物を挙げることができる。
【0026】
カーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が含まれる。
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、炭素原子だけでできた蜂の巣(ハニカム構造のネットが円筒状の丸まったシームレスの管である。この炭素原子の単原子層のハニカムネットはグラフェンと呼ばれる炭素六角網面であり、直径が1〜2mmの円筒に丸まった中空の管(チューブ)である。炭素電極間のアーク放電法、炭素のレーザー蒸発法及び炭化水素ガスの熱分解法により製造される。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、外径が5〜50nmで、その中心空洞は直径3〜10mmである。そのうち、層数が最も少ないものが、二層ナノチューブ(DCNT)である。アーク放電を使って鉄、ニッケル、コバルト及び硫黄を触媒として水素ガス雰囲気で製造することができる。又、化学気相成長法によっても製造可能である。直径は3〜5nmであり、二層のグラフェン間の間隔は0.39nmである。
二層を超える多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は二層を超える数層から数十層のグラフェンを有している。メタン、アセチレン、一酸化炭素などの炭素含有ガスを熱分解し、鉄、ニッケル、鉄モリブデンなどの触媒の存在下に、酸化マグネシウム微粒子、アルミナ微粒子、耐熱性ゼオライトからなる担体の表面に析出させることができる。引張強度、熱容量、熱伝導率などで良好な結果を得る事ができ、コンポジットへの利用が期待されている(「斉藤弥八著「カーボンナノチューブの材料科学入門」株式会社コロナ社2005年3月22日発行1〜20頁、37〜55頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0027】
カーボンフアイバーは有機高分子繊維(セルロース系、ポリアクリルニトリル系)を800〜3000℃の一連の段階的加熱処理によりもとの繊維形状を保った炭化するか、又は紡糸したピッチ(ピッチ系)を熱処理することによって得られる。プラスチックに添加してコンポジットとし、引張強度を高めることができる(株式会社化学同人1989年発行化学大辞典1377頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0028】
カーボンブラック(CB)は、天然ガスや炭化水素ガスの気相熱分解や不完全燃焼によって得られる。ゴムの補強用充填剤や炭素材料の原料、印刷インクなどに用いることができる(株式会社化学同人1989年発行化学大辞典1377頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。
【0029】
粘土微粒子は、層状ケイ酸塩(layer silicate)を意味する。フィロケイ酸塩(phyllosilicate)とも言われる。Si或いはAlを4個の酸素が囲んだ四面体が、3つの頂点を隣の四面体と共有することにより、2次元的に拡がった構造単位(四面体シート)を形成している層状構造をもった珪酸塩の一群。Mg、Alなど6個の酸素ないしOHが囲んだ八面体の2次元的なつながりである八面体シートも重要な構成要素となる。層面に平行なへき開が完全であり、一般に板状又は薄片状の形態である。化学的には、Al、Mg、Fe、アルカリなどの含水珪酸塩である(粘土の事典 株式会社朝倉書店1985年7月20日発行225頁)。
いずれも公知のものであり購入して利用することができる。結晶性層状珪酸塩としては、プリフィード(商標名、株式会社トクヤマ。無水の結晶性層状ケイ酸ナトリウム)があり、多機能ビルダーとしてとして知られている。無水の結晶性層状ケイ酸ナトリウムである。層状の結晶構造を持っており、この層の間に水の硬度成分Ca++やMg++などを効果的に取り込むことができる。
ポリアミド樹脂に層状珪酸塩を分散させるポリアミド複合材料層状珪酸塩が知られている(特公平7−47644号公報)。粘土微粒子を用いたナノコンポジット材料については、有機化処理したモンモリロナイト存在下で、ナイロンのモノマー(ε-カプロラクタム)を開環重合させることにより得られたナイロン6/モンモリロナイト系ナノコンポジットこの粘土微粒子を用いたナノコンポジット材料については、有機化処理したモンモリロナイト存在下で、ナイロンのモノマー(ε-カプロラクタム)を開環重合させることにより得られたナイロン6/モンモリロナイト系ナノコンポジット(米国特許第4739007号、特開昭60-217396号公報、特開昭61-95780号公報、特開平11-310643号公報、特開2000-136308号公報)がある。いずれもの場合にも均一分散について触れているが、格別物理的な強制力を働かせていないので満足する結果は得ていないものと言わざるを得ない。
【0030】
シリカ粒子は、合成シリカを意味し、二酸化珪素の粒子が集まって、連続的に網の目のような微細な孔を形成している。この微細な孔の内側に、水蒸気などの各種物質を吸着することもできる。シリカの製法には大きく分けて2つの方法がある。 珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う。シリカの製法には大きく2つの方法がある。(1)珪酸ソーダ水溶液の酸又はアルカリ金属塩による中和、分解反応によりシリカの析出を行う方法(湿式法)、及び(2)高温気相反応によりシリカの析出を行う方法(乾式法)である。
シリカ微粒子は、シリカ粒子の凝集性を調整した超微粒子であり、シャープな粒度分布を持ち、良好な分散性を示す。各種塗料の艶消し剤、インキ、改質剤、レーザー表面処理剤、特殊ゴム(補強剤他)、樹脂(アンチブロッキング剤)など多くの利用方法が知られている(株式会社東ソー(商品名)のE-200A,E-220A,K-500,E-1009,E-1011,E-1030,E-150J,E-170,E-200,E-220などがある。)。
トクシール(商標名 株式会社トクヤマ)は極微細 (約2nm) な単粒子が紐状につながり、これがさらに絡み合い3次元の網目構造 (ストラクチャー) となったものが凝集したものである。湿式シリカの真比重は2.0g/cm3ですが、網目構造のため内部に空隙をたくさん持ち、外観上はふわふわとした軽い白色の粉末となっている。
シリカゾルが各種原料物質の被覆剤として知られている(特開2004−136164号公報)。ナノレベルの粒径を持つシリカ微粒子を使い、樹脂に分散させることにより透明性を保持したまま耐熱性等の機械的性能を向上させることが期待される。
【0031】
籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)を用いることができる。籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物は無機化合物と有機化合物の長所を兼ね備えている三次元の籠状構造を有する新規フィラーであり、かつその籠状の三次元構造中には溶解性を高めるための非反応性基(例えば、メチル基、イソブチル基、イソオクチル基等のアルキル基やフェニル基)や重合もしくはグラフト用の官能基(例えば、アミノプロピル基、エポキシ基、ハロゲン基、チオール基、アクリル基等)がシリコン原子に結合しているので、それらの官能基を種々選ぶことにより、樹脂やゴム等に微視的分散させれば、それら既存の材料の機械特性、耐熱性、光学特性、ガス透過性、難燃性、耐薬品性等が飛躍的に向上することが期待されている。
籠上ポリシルセスキオキサン(POSS)は種々な籠型ポリシルセスキオキサンな化合物が知れている。一例を示すと以下の通りである(特開2006−285017号公報)。
【化1】
(式中、R1〜R9すべて同時に又はそれぞれ独立に、メタクリル基、エポキシ基、メチル基、フルオロアルキル基、CF3(CF2)n−R10を意味する。ここで、R10は炭素数1ないし12個の非置換または置換二価炭化水素基を意味し、nは0〜10の整数を意味する。)
籠型ポリシルセスキオキサンの合成は以下の通りである。
上記一般式(1)で示される籠型ポリシルセスキオキサンの合成に使用されるアルコキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
ここで、アルコキシシランを適宜選択することにより、得られる籠型ポリシルセスキオキサンを変更することができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをなどである。
【0032】
これらの充填剤の大きさは、一般に、数nmから数10nmの範囲のものが採用される。これらのものはいずれも公知物質であり、市販品である。
【0033】
前記の方法で得られた充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる溶融混練物を更に成形加工することにより樹脂成形物を得ることができる。エラストマーの場合には弾性率が著しく改善することができる。
樹脂成形物の形状にはロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つをあげることができる。フィルム、シート、チューブを含むいろいろな部品、部材として、柔軟なホース、リング、シール材として使われる。さらに、自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、機構部品として、また、振動吸収材、免振材料として、電気伝導性を有する材料として期待することができる。
【0034】
本発明で得られるエラストマー成形物は、SBBSマトリックスとした場合には、直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散しているものを得ることができる。前記樹脂成形物は、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その弾性率がSBBS単体(12.5 MPa)の1.5〜3.6倍であることが確認された。
【0035】
本発明で得られる成形加工物は、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−3(S/cm)以上である成形加工物である。
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散している成形加工物である。
成形加工物は、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−1(S/cm)以上である成形加工物である。
【0036】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。樹脂成形物の構造、物性測定は、以下の方法で行った。
【0037】
走査型電子顕微鏡(SEM)による構造評価について
試験片を10分間、液体窒素中に浸せきした後、破断した。破断面を金蒸着した後に、フィリップス社製走査型電子顕微鏡(SEM(XL−20SEM)を用いて、10kVの加速電圧で観察した。試験片中にフィラーからなる充填剤が均一に分散されているかどうかを観察することができる。
【0038】
引張特性について
樹脂成形物を成形したシートをカッターで打ち抜いて、ダンベル状試験片とした。引張特性の試験は、ASTM D638に規定された方法に準拠して行った。応力−ひずみ曲線は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンUTM−300)を用いて測定した。本試験は、20℃、相対湿度50%の雰囲気で、クロスヘッド速度500mm/min.で行った。
【0039】
弾性回復率の評価について
弾性回復率の試験は、上記の引張試験機を用いて、20℃で、クロスヘッド速度10mm/minで行った。本試験では、200%ひずみまで到達させた後、応力がゼロになるまでひずみを戻すことによって行った。弾性回復率は、該ひずみ回復実験から得られ、応力がゼロになる時の残留ひずみから定義される。
【0040】
以下に実施例により本発明の内容を説明する。本発明の内容をより詳細に説明する。本発明はこの具体例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(1)エラストマーと充填物からなる複合材料の場合
原材料は以下のものを用いた。
エラストマーとして、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(以後、SBBSとも言う。)を用いた。:スチレン/ブタジエン/ブタジエン/スチレン共重合体からなるペレットである。旭化成株式会社(日本)製 N503;重量平均分子量(Mw)40000g/mol、スチレン含有量:30重量%であった。
充填物として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いた。
MWCNTはCNT Co.,Ltd製(Korea)。直径10−40nm。長さ5−20μm。高純度(約95%)であり、多層カーボンナノチューブをそのまま用いた。
【0042】
(2)前処理
混練に先立って、エラストマー(SBBS)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を、80℃(真空下)で、少なくとも12時間乾燥した。SBBSのペレット100重量部とMWCNTの3重量部を、株式会社井元製作所(日本)製の高せん断成形加工機HSE3000miniに投入し、200℃、スクリュー回転速度300rpm、1000rpm、2000rpmで、それぞれ4分間、溶融混練した。
得られたブレンド物を粉砕した後、200℃で、熱プレス成形して、シートを得た。得られたブレンド組成物には、SBBSをマトリックスとして、MWCNTの粒子が、回転速度に依存してSBBS中に分散している。さらに、得られたシートの表面は、光沢のある、優れた表面を呈していることを確認した。
【0043】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジットの断面走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。
図からも明らかなように、スクリュー回転数300rpmでは、5から50μmの凝集が観察された(図4(a))。300rpmは通常の押出機の回転数を超えていることを申し添える。
スクリュー回転数1000rpmで作製された試料では、数μmレベルまでMWCNTの凝集物が小さくなっているのが分かる(図4(b))。
スクリュー回転数2000rpmで作製された試料では、凝集構造が見えなくなり、ほぼ孤立した分子に相当する20〜50nmのMWCNT粒子となっている状態が観察された(図4(c)、低倍率)。20〜50nmはMWCNTの直径に相当する。
スクリュー回転数2000rpmで作製された試料について高倍率の状態を観察したものである(図4(d)、高倍率))。
高せん断成形加工機HSE3000miniを用いることにより、従来MWCNTの微視的分散状態を実現するのが困難であった、樹脂中へのナノ分散を実現し、確認することができた。
【0044】
図5は光学顕微鏡により観察した結果を示している。
MWNT/SBBSコンポジットのトルエン溶液をフイルム状に成形した結果である。各々(a)300rpm、(b)1000rpm、(c)2000rpmにより回転処理した結果である。
【0045】
図6はローレンツ修正したSAXSのプロフィルである。(a)は純粋なもの、(b)は1000rpmのもの、(c)は2000rpmのものである。
図7は2000rpmで得られたコンポジットのTEM写真である。黒点は分散状態にあるCNTを示している。
【0046】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を図8に示す。この図では、SBBS単体(曲線a)とスクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジット;(b)300rpm,(c)1000rpm,(d)2000rpmを示している。第4図からも明らかなように、図で示したSEM観察の結果と良く対応しており、MWCNTが数十μmに凝集した構造(300rpm)では、SBBS単体の破断伸びの半分程度しかなく、数μmレベルまでMWCNTの凝集物が小さくなっている構造(1000rpm)であっても、SBBS単体の破断伸びの70%程度しか発現しないことが分かった。
しかしながら、ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体に匹敵する破断伸びが観察された。
さらには、図8で顕著だったのは、応力-ひずみ曲線における最初の立ち上がりカーブのところで見積もられる弾性率が、MWCNTの分散性に比例して大きく改善される点であった。これら機械的性質については、表1にまとめて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるように、MWCNTの分散性に比例して弾性率が改善され、ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体に比し、弾性率が2倍以上に改善されていることが分かった。また、この場合、破断強さも23%増加していることが示された。即ち、SBBS/MWCNT(3%)系ナノコンポジットの機械的性質としては、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させることにより、SBBSのエラストマーとしての性質(機械的破断伸び等の)を維持しながら、弾性率等を2倍以上に改善できることが分かった。
【0049】
実施例1において、スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を図9に示す。
図において回復ひずみは応力がゼロとなるところでの残留ひずみが小さい程、優れたエラストマーであることを意味する。図8における破断伸びの挙動と同様に、ここでも同じ傾向を示し、MWCNTの分散性に比例して残留ひずみが次第に小さくなることが示された。残留ひずみの各々の数値については、表1の最も右の欄に示した。ほぼ孤立したMWCNT分子となって微視的分散している2000rpmの場合には、SBBS単体のそれ(20.34%)に匹敵する残留ひずみ(22.63%)となることが示された。
【実施例2】
【0050】
実施例1と同様の装置、手順で、SBBSのペレット100重量部に対してMWCNT重量部を1.5〜6.0%まで変えてスクリュー回転速度2000rpmで、それぞれ4分間、溶融混練した。得られたブレンド物を粉砕した後、200℃で、熱プレス成形して、シートを得た。得られたブレンド組成物には、SBBSをマトリックスとして、MWCNTの粒子が、微視的に分散している。さらに、得られたシートの表面は、光沢のある、優れた表面を呈している。
【0051】
実施例2において、MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を図10に示す。この図からも明らかなように、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させても、その機械的性質としての破断伸びはMWCNTの添加量とともに減少してしまうことが分かった。
一方、弾性率は添加量に比例して増加することも分かった(表2参照)。
図8では、(a)SBBS単体,(b)1.5重量%MWCNTを含む場合,(c)3.0重量%MWCNTを含む場合,(d)6.0重量%MWCNTを含む場合を各々表す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2からも明らかなように、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させると、その機械的性質としての破断伸びはMWCNTの添加量とともに減少し、弾性率は添加量に比例して単純に増加していくことが分かった。 また、破断強さに関してはMWCNTの少量添加(1.5%)により26.81MPaまで一気に上がるが、その後MWCNTの添加量とともに減少し、6%添加でほぼSBBS単体と同じ値になることが分かった。
【0054】
実施例2において、MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を図11に示す。図において回復ひずみは応力がゼロとなるところでの残留ひずみが小さい程、優れたエラストマーであることを意味する。ここでは、スクリュー回転速度2000rpmでMWCNTをナノ分散させているので、ナノ分散性を反映し、MWCNT添加量に依存しない、優れた回復弾性率が観測された。図11では、(a)SBBS単体、(b)1.5wt%MWCNTを含む場合、(c)3.0wt%MWCNTを含む場合、(d)6.0wt%MWCNTを含む場合を表す。
【0055】
本発明で得られる新規な樹脂成形物では、エラストマーの優れた性能を保持したまま、少量のMWCNT添加により、容易に弾性率等の機械的性質が改善された新規な高弾性率エラストマーを与えるので、フィルム、シート、チューブを含むいろいろな部品、部材として、柔軟なホース、リング、シール材として使われる。さらに、自動車部品や、電気電子分野を含む様々な分野で、機構部品として、また、振動吸収材、免振材料としての用途が広がり、産業上の利用可能性が高いものである。
【実施例3】
【0056】
試料物質
ポリビニリデンフロライド(PVDF)(クレハ化学工業株式会社製,KF850)を使用前に24時間80℃の条件下に真空炉内で乾燥させた。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)はAldrich社製のものを用いた。炭素のCVD法により製造されたものであり、純度は95%以上であった。外径は10−20nm、内径は5−10nmであった。酸化開始温度はTGAにより計測して552.8℃、かさ密度2.1g/cm3。
溶融混練装置の条件
前記再循環させるフィードバック型スクリュー20を使用して溶融混練装置を使用した。L/D比は1.78であった。スクリューの回転速度は1000rpm、対応するせん断速度は1470s−1であった。間隙は1 mm 、生成物はTダイより取り出す。
試料調整
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の化学的処理は行わない。PVDF/MWCNTコンポジットを、220℃4分間処理を行い製造した。乾燥したフレークを220℃で1分間4tの条件下にプレスして、導電性を測定するために0.1mmの厚さのものと、レオロジー特性を測定するために0.5mmの厚さのものを得た。比較例として通常の押し出し機を用いて100rpm、対応するせん断速度50s−1であった。
レオロジー測定結果を表1に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
2重量%MWCNTを含有するPVDF複合体の液体窒素により冷却している状態の横断面断口の構造を示すSEM写真を図12に示した。
図12(a)及び(b)は、高剪断力下に製造した複合体のSEM写真である。
図12(c)及び(d)は、低剪断力下に製造した複合体のSEM写真である。
図12に見られる、輝いて見える点及び線は破壊されたMWCNTに対応するものであることを意味している。
図12(a)及び(b)は、高剪断力下に凝集することなく、PVDFのマトリックス中にMWCNTが分散されていることがわかる。
図12(b)では、個々のナノチューブの初期の直径が30−50nmに対応するナノチューブの直径が40nmであることを示している。そして、ナノチューブはPDF中で一つのナノチューブが分離されているように、完全に剥げ落ちている状態を示している。
図12(c)及び(d)では凝集している状態を観察することができる。図12(d)では、ナノチューブが分散されることなく集中して存在していることが分かる。
【0059】
図13は、MWCNTの含有量に対する導電率の関係を示している。図13の上の図は、体積導電率を示しており、図13の下の図は表面導電率を示している。aは高剪断力により得られる場合の結果を示している。bは低剪断力により得られる場合の結果を示している。体積導電率を示す図13の場合には、MWCNTの含有量が1.2重量%(4.9×10−14S/cm)の場合から徐々に上昇し、1.9重量%(2.5×10−2S/cm)の場合まで上昇する。この点を過ぎると、格段に上昇することはなくなる。同様の傾向は表面導電率の場合にも見ることができる。表面導電率の場合には、MWCNTの含有量が1.5重量%を超える場合に上昇が見られ、2.5重量%まで上昇する。
【0060】
図14は、MWCNTの含有量を変化させたときの振動数と動的弾性率の関係を示している。
図14の上の図aは、高剪断力により得られた場合の結果を示している。図14の下の図bは、低剪断力により得られる場合の結果を示している。
低振動数ではPVDF連鎖は完全に緩和されており、G´〜ω2によって近似される典型的なホモポリマーに類似した末端の特性を示す。しかしながら、ナノチューブの含有量が〜1重量%までの高剪断力により得られた場合や、〜2重量%までの低剪断力により得られた場合では、この末端の態様は消滅し、低振動数でのωに関するG´依存性は低い。かくして、コンポジット内での大きな尺度の高分子による緩和は、ナノチューブが存在すると抑制される。
高い振動数でのレオロジーに関する作用についてナノチューブによる効果は比較的に弱い。このことはPVDFの連鎖について短い範囲内でのダイナミックスについては影響を与えることはないことを意味している。
図15は、0.5rad/sの固定振動数としたときのPVDF/MWCNTコンポジットの動的弾性率とナノチューブの含有量の関係を示したものである。
図15上の図(a)は、高剪断力により得られた場合の結果を示している。図15の下の図bは、低剪断力により得られる場合の結果を示している。差込図は、G´と減少した質量の関係をLOG−LOGプロットしたものである。
15(a)の結果によると、含有量が0.8から1.2重量%のときに物質構造の急激な変化を表す急激な上昇が見られる。G´の急激な変化はPVDF/MWCNTの高剪断率の製法によるコンポジットはナノチューブがポリマーの動きを邪魔する結果となり、レオロジーの関係が崩れことに到達する。
G´∝ (m−mc)β
G´は動的弾性率、mはMWCNTの質量成分、mcはレオロジーがしみ出しするときの閾値を表す。βは臨界的な指数である。
差込図は、動的弾性率が固定されたときにはナノチューブ含有量がG´の付加量の低下はMWCNTコンポジット中にあることを示している。
図16は、初期のMWCNT及び(a)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の高剪断力により得られた場合、(b)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の低剪断力により得られる場合の各ラマンスペクトルを示している。
コンポジット中のMWCNTsの振動数は、初期のMWCNTの振動数より10−1cmだけ上方に向かって移動している。
図17は、(a)PVDFの場合のみ、(b)2重量%のMWCNTを含有する場合のMWCNT及びPVDFのコンポジット及び(c)高剪断力により得られた場合、(d)低剪断力により得られた場合のC−H振動に関するラマンスペクトルを示している。
【実施例4】
【0061】
試料物質
ポリ乳酸(PLLA)(分子量1.7×105g/mol、D体含有量1.2%)を使用前に24時間80℃の条件下に真空炉内で乾燥させた。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は日機装株式会社製のものを用いた。炭素のCVD法により製造されたものであり、純度は95%以上であった。外径は10−20nm、内径は5−10nmであった。
溶融混練装置の条件
前記再循環させるフィードバック型スクリュー20を使用して溶融混練装置を使用した。L/D比は1.78であった。スクリューの回転速度は1000rpm、対応するせん断速度は1470s−1であった。間隙は1 mm、生成物はTダイより取り出す。
試料調整
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の化学的処理は行わない。PLLA/MWCNTコンポジットを、190℃4分間処理を行い製造した。乾燥したフレークを190℃で1分間4tの条件下にプレスして、導電性を測定するために0.1mmの厚さのものを得た。比較例として通常の押し出し機を用いて100rpm、対応するせん断速度50s−1であった。
【0062】
図18は、MWCNTの含有量に対する体積導電率の関係を示している。緑のプロットは高剪断力により得られる場合の結果を示しており、その閾値は極めて小さく、0.6重量%である。また、赤のデータは低剪断力により得られる場合の結果を示している。体積導電率を示す図18の場合には、MWCNTの含有量が0.5重量%を超えると急激に導電率が上昇し、2重量%(10−1S/cm)の場合まで上昇する。この点を過ぎると、格段に上昇することはなくなる。しかしながら、赤の低剪断力により得られる場合の試料の傾向は、閾値が大きく(1重量%)。表面電導率の場合には、MWCNTの含有量が0.8重量%を超える場合に上昇が見られ、2重量%まで上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】エラストマーや樹脂中にナノレベルのフィラーからなる充填物を均一に分散させた溶融混練物及び成形物を製造する本発明の装置の全体図。
【図2】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリュー及び溶融混練物の再循環を説明する詳細な図。
【図3】本発明の溶融混練部のフィードバック型スクリューの前端部にある間隙を説明する図である。
【図4】スクリュー回転数を変えて作製したSBBS/MWCNT(3%)系コンポジットの断面走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。(a)300rpmで得られたもの、(b)1000rpmで得られたもの、(c)2000rpmにより得られたもの。
【図5】光学顕微鏡により観察したMWNT/SBBSコンポジットのトルエン溶液をフィルム状に成形した結果である。(a)300rpm、(b)1000rpm、(c)2000rpmにより回転処理した結果である。
【図6】ローレンツ修正したSAXSのプロフィルである。(a)は純粋なもの、(b)は1000rpmのもの、(c)は2000rpmのものである。
【図7】2000rpmで得られたコンポジットのTEM写真である。
【図8】スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を示す図である。
【図9】スクリュー回転数を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を示す図である。
【図10】MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の応力-ひずみ曲線を示す図である。
【図11】MWCNT重量部添加量を変えて作製した樹脂成形物の回復ひずみ曲線を示す図である。
【図12】2重量%MWCNTを含有するPVDF複合体の液体窒素により冷却している状態の横断面断口の構造を示すSEM写真である。
【図13】MWCNTの含有量に対する電気伝導度の関係を示す図である。
【図14】MWCNTの含有量を変化させたときの振動数と動的弾性率の関係を示す図である。
【図15】0.5rad/sの固定振動数としたときのPVDF/MWCNTコンポジットの動的弾性率とナノチューブの含有量の関係を示す図である。
【図16】MWCNT及び(a)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の高剪断力により得られた場合、(b)2重量%MWCNTを含むPVDFコンポジット中の低剪断力により得られる場合の各ラマンスペクトルを示す図である。
【図17】(a)PVDFの場合のみ、(b)2重量%のMWCNTを含有する場合のMWCNT及びPVDFのコンポジット及び(c)高剪断力により得られた場合、(d)低剪断力により得られた場合のC−H振動に関するラマンスペクトルを示す図である。
【図18】MWCNTの含有量に対する電気伝導度の関係を示す図である。高せん断成形加工した試料(スクリュー回転数:1000 rpm)と低せん断成形加工した試料(100 rpm)とを比較して示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10:溶融混練物製造装置
12:溶融混練部
14:成形部
16:原料供給部
18:シリンダー
20:フィードバック型スクリュー
22:ベアリング
24:シャフト
26:ヒーター
28:シール
30:間隙を調節するための調節手段
32:間隙
35:ヒーター
36:Tダイ前部末端部加熱ヒーター
38:Tダイ背後部末端加熱ヒーター
40:排出口
42:熱電対
44:孔
46:内部フィードバック型スクリューの構造
48:スクリュー背後部
50:スクリュー前部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂(熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂)を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部から投入し、溶融したエラストマー若しくは樹脂並びにフィラーからなる充填剤を、前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して混練して、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端に設けた間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環により一定時間の循環処理を行うことを特徴とする充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項2】
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部及びシール部を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部から投入し、加熱温度は室温又は前記エラストマー若しくは樹脂の融点より高い温度条件下に溶融したエラストマー若しくは樹脂並びにフィラーからなる充填剤を、前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して混練してスクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端面と該先端面に対向して配置されているシール面との間隔は0.5から5mmのスクリューの先端に設けた間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた、孔内径が1mmから5mmの孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環により一定時間の循環処理を行うことを特徴とする充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項3】
前記充填剤の使用量はエラストマー若しくは樹脂100重量%に対して、0.01−30.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項4】
前記エラストマーは、極性基を持たない無極性のエラストマーである、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(SBBS)、ポリ(スチレン-ブタジェン-スチレン)(SBS)、又はエチレン-プロピレンゴムのいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項5】
前記樹脂はポリビニリデンフロライド(PVDF)やポリ乳酸(PLLA)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項6】
前記充填剤は単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンブラック、粘土微粒子(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物等から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項7】
前記充填剤が多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることを特徴とする請求項6記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法で得られることを特徴とする溶融混練物。
【請求項9】
請求項8記載の溶融混練物を引き続きT-ダイ等を通すことにより成形加工して得られることを特徴とするフィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる成形加工物。
【請求項10】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる成形加工物は、ロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つであることを特徴とする成形加工物。
【請求項11】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項12】
前記請求項10記載の成形加工物は、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その弾性率がSBBS単体(12.5 MPa)の1.5〜3.6倍であることを特徴とする成形加工物。
【請求項13】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項14】
前記請求項10記載の成形加工物は、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−3(S/cm)以上であることを特徴とする成形加工物。
【請求項15】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項16】
前記請求項10記載の成形加工物は、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−1(S/cm)以上であることを特徴とする成形加工物。
【請求項1】
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂(熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂)を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部から投入し、溶融したエラストマー若しくは樹脂並びにフィラーからなる充填剤を、前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して混練して、スクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端に設けた間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環により一定時間の循環処理を行うことを特徴とする充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項2】
フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂を、スクリューを備えたシリンダーに加熱部及びシール部を有する溶融混練部の端部に設けられた原料投入部から投入し、加熱温度は室温又は前記エラストマー若しくは樹脂の融点より高い温度条件下に溶融したエラストマー若しくは樹脂並びにフィラーからなる充填剤を、前記スクリューの回転数は1000rpmから3000rpm、せん断速度は1500から4500sec−1の条件下に処理して混練してスクリューの後端から先端に送り、スクリューの先端面と該先端面に対向して配置されているシール面との間隔は0.5から5mmのスクリューの先端に設けた間隙に閉じ込めた後、前記間隙から前記スクリューの中心部に設けた、孔内径が1mmから5mmの孔を通してスクリューの後端に移行させ、再び前記スクリューによる処理を行う再循環により一定時間の循環処理を行うことを特徴とする充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項3】
前記充填剤の使用量はエラストマー若しくは樹脂100重量%に対して、0.01−30.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項4】
前記エラストマーは、極性基を持たない無極性のエラストマーである、ポリ(スチレン-b-ブタジェン-co-ブチレン-b-スチレン)(SBBS)、ポリ(スチレン-ブタジェン-スチレン)(SBS)、又はエチレン-プロピレンゴムのいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項5】
前記樹脂はポリビニリデンフロライド(PVDF)やポリ乳酸(PLLA)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項6】
前記充填剤は単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンブラック、粘土微粒子(層状ケイ酸塩)、シリカ微粒子、籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)化合物等から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項7】
前記充填剤が多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることを特徴とする請求項6記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂の溶融混練方法で得られることを特徴とする溶融混練物。
【請求項9】
請求項8記載の溶融混練物を引き続きT-ダイ等を通すことにより成形加工して得られることを特徴とするフィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる成形加工物。
【請求項10】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマー若しくは樹脂からなる成形加工物は、ロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つであることを特徴とする成形加工物。
【請求項11】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項12】
前記請求項10記載の成形加工物は、SBBSマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その弾性率がSBBS単体(12.5 MPa)の1.5〜3.6倍であることを特徴とする成形加工物。
【請求項13】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項14】
前記請求項10記載の成形加工物は、PVDFマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−3(S/cm)以上であることを特徴とする成形加工物。
【請求項15】
前記フィラーからなる充填剤並びにエラストマーは、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立した多層カーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする請求項10記載の成形加工物。
【請求項16】
前記請求項10記載の成形加工物は、PLLAマトリックス中に直径10nmから40nmサイズの孤立したMWCNTが均一に分散し、かつ、その体積導電率が2重量%添加で10−1(S/cm)以上であることを特徴とする成形加工物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−266577(P2008−266577A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25964(P2008−25964)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)第56回(2007年)高分子討論会高分子学会予稿集に掲載されている「3Pc041高せん断成形加工によるCNTのポリマーへの均一分散」 (2)http://www.elsevier.com/locate/carbonの2007年(平成19年)8月6日に公開され、Carbon45(2007)2234−2340に記載の、論文のタイトル Ultrahigh−shear Processing for the preparation of polymer/carbon nanotube composites
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)第56回(2007年)高分子討論会高分子学会予稿集に掲載されている「3Pc041高せん断成形加工によるCNTのポリマーへの均一分散」 (2)http://www.elsevier.com/locate/carbonの2007年(平成19年)8月6日に公開され、Carbon45(2007)2234−2340に記載の、論文のタイトル Ultrahigh−shear Processing for the preparation of polymer/carbon nanotube composites
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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