説明

溶融炉における排ガス脱硝方法および溶融炉における排ガス脱硝装置

【課題】二次燃焼部から外部に排出されるNOxの量をより確実に低減することのできる燃焼処理設備における排ガス脱硝方法を提供する。
【解決手段】二次燃焼部2c内に二次空気を供給する二次空気供給工程と、二次燃焼部2cのうち二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、溶融炉2から二次燃焼部2cに導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素濃度検出工程と、二次燃焼部2cのうち前記一酸化炭素の濃度が検出される部分よりも下流の部分に還元剤を供給する還元剤供給工程と、二次燃焼部2cに供給する還元剤の量を決定する還元剤量決定工程とを実施し、還元剤量決定工程では、一酸化炭素濃度検出工程で検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づき、前記還元剤の量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を燃焼処理する処理装置から排出された排ガスが燃焼処理される溶融炉において前記排ガスを脱硝処理するための方法およびこの排ガスを脱硝するための手段が設けられた排ガス脱硝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処理システム等では、被処理物である廃棄物をガス化炉等の処理装置において燃焼処理した後、その処理物を溶融炉でさらに燃焼処理することが行われている。具体的には、溶融炉の上流側に設けられた溶融部において処理物中の灰分をスラグ化するとともに処理物中の排ガスを燃焼処理し、さらに溶融部から排出された排ガスを溶融炉の下流側に設けられた二次燃焼部にて燃焼処理することが行われている。また、前記二次燃焼部内に還元剤を投入することで二次燃焼部内において排ガス中のNOxを還元処理すなわち脱硝処理して、二次燃焼部から外部に排出される排ガス中のNOxを低減することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排ガスに空気を供給して内側で排ガスを燃焼させる二次燃焼部に還元剤としてアンモニアや尿素を供給して、排ガス中のNOxを低減する方法が開示されている。この方法では、前記空気が供給される領域内の酸素濃度を検出して、この検出値に基づいて二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度を予測し、この予測値に基づいて二次燃焼部に供給する還元剤の量が決定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−192406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の方法では、二次燃焼部内のうち空気が供給される領域内の酸素濃度の検出値に基づいて還元剤の量が決定されており、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガスの酸素濃度が0%の場合は前記酸素濃度の検出値は空気中の酸素濃度すなわち一定値となり、一定の量の還元剤が二次燃焼部内に供給される。
【0006】
ところが、前記溶融部から二次燃焼部に導入される排ガスの酸素濃度が同じ0%であっても二次燃焼部から排出されるNOx量が異なり、前記従来の方法では二次燃焼部から排出されるNOxを十分に低減できない場合がある。
【0007】
これに対して、例えば、二次燃焼部の下流においてこの二次燃焼部から排出された排ガスのNOxの濃度を検出して前記還元剤の量を補正する方法が考えられる。しかしながら、溶融炉の温度変化等に応じて二次燃焼部に導入される排ガスの成分等は変動する。そのため、二次燃焼部から排出されたNOxの濃度に応じて還元剤の量を補正する前記方法では、この排ガスの成分等の変動に追従できずNOxを十分に低減できないおそれがある。また、還元剤を余分に供給する方法が考えられるが、この場合には、二次燃焼部から外部に排出される排ガス中にアンモニア等が残存して白煙等を発生させるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、二次燃焼部に適切な量の還元剤を供給して二次燃焼部から外部に排出されるNOxの量をより確実に低減することのできる溶融炉における排ガス脱硝方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者等は、複数の溶融炉において、前記二次燃焼部内に還元剤が供給されない場合においてこの二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度と当該二次燃焼部から排出される排ガス中のその他の成分の濃度等との相関について鋭意研究した結果、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記非脱硝時NOx濃度とが高い相関関係にあることを見出した。特に、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガス中の酸素濃度が0%となる場合であっても、一酸化炭素の濃度は正の値であって前記NOx濃度に対応した値を示すことを見出した。この知見に基づき、本発明は、被処理物を燃焼処理する処理装置から排出された被溶融物と排ガスとが導入されて内側で当該被溶融物が溶融するとともに前記排ガスが燃焼する溶融部と、当該溶融部の下流に設けられるとともにこの溶融部から排出された排ガスが導入されて内側で当該排ガスが燃焼する二次燃焼部とを有する溶融炉において前記排ガスを脱硝処理するための溶融炉における排ガス脱硝方法であって、前記二次燃焼部内に前記排ガスを燃焼させるための二次空気を供給する二次空気供給工程と、前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素濃度検出工程と、前記二次燃焼部のうち前記排ガス中の一酸化炭素の濃度が検出される部分よりも下流の部分に、前記排ガスを脱硝するための還元剤を供給する還元剤供給工程と、前記還元剤供給工程において前記二次燃焼部に供給する還元剤の量を決定する還元剤量決定工程とを含み、前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された前記排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて前記還元剤の量が決定されており、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この一酸化炭素の濃度から予測可能な、前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されていることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝方法を提供する(請求項1)。
【0010】
この方法によれば、二次燃焼部から外部に排出されるNOxの排出量をより確実に低減することができる。すなわち、この方法では、前記二次燃焼部内に還元剤が供給されない場合においてこの二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度すなわち前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガスに含まれるNOxと前記二次燃焼部内で生成するNOxとからなるNOxの濃度である前記非脱硝時NOx濃度と相関の高い前記溶融炉から二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて前記還元剤の量が決定されており、この溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガスに含まれるNOxと前記二次燃焼部内で生成するNOxとからなるNOxの濃度に応じたより過不足ない適切な量の還元剤が供給されるため、二次燃焼部から排出される排ガス中に還元剤が残存することなく二次燃焼部から外部へのNOxの排出量を低減することができる。特に、前記溶融炉では、前記溶融部でのNOxの生成をより少なく抑えるべく溶融部内の酸素濃度を低く制御する場合がある。そして、この場合には、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガスの酸素濃度が0%になる場合があるが、この場合においても、前記非脱硝時NOx濃度に応じた適切な量の還元剤を供給することができる。また、前記一酸化炭素濃度は還元剤が供給される部分よりも上流の部分において検出されており、二次燃焼部に導入された排ガスの成分が変化した場合にもその変化に応じた適切な量の還元剤が供給される。
【0011】
また、本発明者等は、前記非脱硝時NOx濃度は、溶融炉から二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度が所定の基準濃度よりも低い場合には、この一酸化炭素濃度が高くなるほど低くなり、前記一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この一酸化炭素濃度が高くなるほど高くなることを見出した。従って、本発明において、前記非脱硝時NOx濃度が最小値となるときの前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素濃度を基準濃度として予め設定しておき、前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が前記基準濃度よりも低い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど低く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定するとともに、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された排ガス中の一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど高く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定するのが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、本発明において、前記二次燃焼部から排出される排ガスの流量を検出する流量検出工程を含み、前記還元剤量決定工程では、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記流量検出工程で検出された前記排ガスの流量とから予測可能な前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの量に基づき、前記還元剤の量を決定されるのが好ましい(請求項3)。
【0013】
このようにすれば、排ガス中の一酸化炭素の濃度から予測可能な前記非脱硝時NOx濃度が一定である一方排ガスの流量が異なることで前記二次燃焼部内に還元剤が供給されない場合においてこの二次燃焼部から排出されるNOxの量が異なる場合においても、この二次燃焼部内のNOxの量に応じたより適切な量の還元剤が供給されるため、過剰な還元剤を供給することなく二次燃焼部から外部に排出されるNOxの排出量をより確実に低減することができる。
【0014】
また、本発明において、前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の酸素の濃度を検出する酸素濃度検出工程を含み、前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度が0%の場合は、前記酸素濃度検出工程で検出された前記排ガス中の酸素の濃度に基づいて前記還元剤の量が決定されており、この酸素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この酸素の濃度から予測可能な前記非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このようにすれば、前記溶融部において一酸化炭素が生成されないような酸素過剰な雰囲気で燃焼が行なわれた場合であっても、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガスに残存する酸素の濃度に応じて適切な量の還元剤を供給することができる。すなわち、この方法によれば、溶融部において、一酸化炭素が生成されないような酸素過剰な雰囲気で燃焼が行なわれる場合と、酸素が残存しないような酸素不足の雰囲気で燃焼が行なわれる場合のいずれにおいても過剰な還元剤を供給することなくNOxの排出量をより確実に低減することができる。
【0016】
また、本発明は、被処理物を燃焼処理する処理装置から排出された被溶融物と排ガスとが導入されて内側で当該被溶融物が溶融するとともに前記排ガスが燃焼する溶融部と、前記溶融部の下流に設けられるとともにこの溶融部から排出された排ガスが導入されて内側で当該排ガスが燃焼する二次燃焼部とを備えた溶融炉における排ガス脱硝装置であって、前記二次燃焼部内に前記排ガスを燃焼させるための二次空気を供給する二次空気供給手段と、前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素濃度検出手段と、前記二次燃焼部のうちの前記一酸化炭素濃度検出手段によって排ガス中の一酸化炭素の濃度が検出される部分よりも下流の部分に、前記排ガスを脱硝するための還元剤を供給する還元剤供給手段と、前記二次燃焼部に供給する前記還元剤の量を決定する還元剤量決定手段とを備え、前記還元剤量決定手段は、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて前記還元剤の量を決定し、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この一酸化炭素の濃度から予測可能な、前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されていることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝装置を提供する(請求項5)。
【0017】
この装置によれば、前記二次燃焼部内に還元剤が供給されない場合においてこの二次燃焼部から排出されるNOxの濃度すなわち溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガスに含まれるNOxと前記二次燃焼部内で生成するNOxとからなるNOxの濃度である前記非脱硝時NOx濃度と相関の高い前記溶融部から二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて還元剤の量が決定されており、二次燃焼部内の排ガス中のNOxの濃度に応じてより過不足ない適切な量の還元剤が供給される。そのため、二次燃焼部から排出される排ガス中に還元剤が残存することなく外部へのNOxの排出量を低減することができる。また、前記一酸化炭素濃度は還元剤が供給される部分よりも上流の部分において検出されており、二次燃焼部に導入された排ガスの成分が変化した場合にもその変化に応じた適切な量の還元剤が供給される。
【0018】
前述のように、前記非脱硝時NOx濃度は、溶融部から二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度が所定の基準濃度よりも低い場合には、この一酸化炭素濃度が高くなるほど低くなり、前記一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この一酸化炭素濃度が高くなるほど高くなることが分かっている。そこで、前記装置において、前記還元剤量決定手段は、前記非脱硝時NOx濃度が最小値となるときの前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素濃度を基準濃度として予め記憶しており、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が前記基準濃度よりも低い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど低く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定するとともに、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された排ガス中の一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど高く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定するのが好ましい(請求項6)。
【0019】
前記装置において、前記還元剤量決定手段の具体的構成としては、前記還元剤量決定手段が、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に対するこの一酸化炭素濃度から予測可能な前記被脱硝時NOx濃度に基づいて設定された前記還元剤の量のマップを予め記憶しており、当該マップから前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された一酸化炭素の濃度に対応する前記還元剤の量を抽出して、当該抽出された還元剤の量を前記二次燃焼部に供給する前記還元剤の量として決定するものが挙げられる(請求項7)。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、二次燃焼部から外部に排出されるNOxの排出量をより確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス脱硝方法が適用される廃棄物処理システムの全体構成を示した図である。
【図2】図1に示す溶融炉付近の構成図である。
【図3】二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度と二次燃焼後排ガス中のNOx濃度との関係を示す図である。
【図4】二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度と二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のNOx濃度との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る排ガス脱硝方法において還元剤の量を算出する手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る溶融炉2を備える廃棄物処理システム10の全体構成を示した概略図である。ここでは、廃棄物処理システム10が、廃棄物を燃焼処理する処理装置として流動床式ガス化炉1を備え、前記溶融炉2がこの流動床式ガス化炉1の下流に設けられている場合、すなわち、流動床式ガス化溶融炉を構成している場合について説明する。
【0024】
まず、この廃棄物処理システム10における廃棄物の処理要領について説明する。
【0025】
この廃棄物処理システム10は、前記流動床式ガス化炉1と、溶融炉2と、廃熱ボイラー3と、排ガス減温塔4と、集じん器5と、煙突7とを有している。
【0026】
産業廃棄物や都市ごみ等の廃棄物は、まず流動床式ガス化炉1に投入される。この流動床式ガス化炉1では、例えば空気比が0.2〜0.4の条件で前記廃棄物の部分燃焼が行われ、砂層等からなる流動層の温度を450℃〜650℃に維持した熱分解すなわちガス化が行われる。この流動床式ガス化炉1で発生した熱分解ガスは、前記溶融炉2に導かれる。一方、前記廃棄物のうち不燃物は炉床下部より抜き出され、非鉄金属、鉄分等にそれぞれ分離されて、再利用されるべくこの廃棄物処理システム10の外部に搬送される。
【0027】
前記溶融炉2では前記熱分解ガスがさらに燃焼される。この溶融炉2は、図2に示すように、溶融部2aと、二次燃焼室(二次燃焼部)2bとを有している。前記溶融部2aは、前記流動床式ガス化炉1につながっている。前記二次燃焼室2bは、前記溶融部2aの下流に設けられており、前記廃熱ボイラー3につながっている。
【0028】
前記溶融部2a内には、旋回流が形成されているとともに、一次空気供給装置(不図示)により一次空気が供給されている。この溶融部2a内では、前記一次空気との接触により前記熱分解ガスが燃焼する。この溶融部2aでは、例えば、トータル空気比0.8〜1.2の条件下で約1300℃の高温燃焼が行われる。
【0029】
前記溶融部2aでの燃焼過程において、前記熱分解ガス中の灰分は溶融され、溶融炉2内にはスラグが生成する。この生成したスラグは、前記溶融部2aの下部に形成さシュート2c内に導出されて、このシュート2c内を流下してスラグ冷却装置に案内される。
【0030】
前記灰分が分離された後に前記溶融部2aから排出された熱分解ガス(以下溶融部燃焼後排ガスという)は前記二次燃焼室2bに導入される。この二次燃焼室2b内には、二次空気供給装置(二次空気供給手段)11から二次空気が供給されている。この二次燃焼室2b内では、前記二次空気との接触により前記溶融部燃焼後排ガス中の未燃物の完全燃焼が行われる。
【0031】
このようにして溶融炉2では前記流動床式ガス化炉1から排出された熱分解ガスの燃焼処理が行われ、この溶融炉2からは高温のガスが排出される。この溶融炉2より詳細には前記二次燃焼室2bから排出された高温のガスは、前記廃熱ボイラー3に導入されて、この廃熱ボイラー3にてその廃熱が回収される。廃熱ボイラー3から排出されたガスは前記排ガス減温塔4にて冷却された後、集塵器5で除塵された後、煙突7から排出される。
【0032】
ここで、前記流動床式ガス化炉1および溶融炉2での燃焼時には、NOxが生成する。そのため、この廃棄物処理システム10では、溶融炉2内に還元剤を供給して二次燃焼部2b内でNOxを還元処理する、すなわち、排ガスを脱硝処理する無触媒脱硝が行われている。
【0033】
次に、この脱硝処理を行うための構成およびこの脱硝処理の手順について説明する。
【0034】
廃棄物処理システム10は、前記排ガスを脱硝するための排ガス脱硝装置として、還元剤供給装置(還元剤供給手段)12と、CO濃度計(一酸化炭素濃度検出手段)14と、温度計16と、流量計18と、演算装置(還元剤量決定手段)20とを有している。
【0035】
前記還元剤供給装置12は、溶融炉2の前記二次燃焼室2bに前記還元剤としてのアンモニアあるいは尿素を供給するためのものである。この還元剤供給装置12は、制御弁12aを介して二次燃焼室2bに接続されている。本実施形態では、この還元供給装置12は、前記二次空気供給装置11と二次燃焼室2bとの接続部分すなわち二次空気供給装置11二次空気供給装置11により二次燃焼室2b内に二次空気が供給される部分よりも下流側に接続されている。
【0036】
前記CO濃度計14は、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される溶融部燃焼後排ガス中のCO(一酸化炭素)濃度を検出するためのものである。このCO濃度計14は、前記二次燃焼室2bのうちの前記還元剤が供給される部分および前記二次空気が供給される部分よりも上流側に設けられており、この部分を通過する二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度を検出する。このCO濃度計14で計測された値は、前記演算装置20に送信される。このCO濃度計14は、前記溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度を計測できるものであればどのようなものであってもよいが、応答性が高く高温のガス中のCO濃度を精度良く計測できるものとして、半導体レーザーを光源としてCOの吸収スペクトルを測定する計測計が挙げられる。
【0037】
前記温度計16は、前記二次燃焼室2b内の温度を計測するためのものである。この温度計16は、前記二次燃焼室2bのうちの前記二次空気が供給される部分よりも下流側に設けられており、二次燃焼室2b内の燃焼温度を計測する。この温度計16で計測された値は、前記演算装置20に送信される。
【0038】
前記流量計18は、前記二次燃焼室2bから排出された排ガス(以下二次燃焼後排ガスという)の流量を計測するためのものである。この流量計18は、前記集じん器5の下流に設けられており、この部分を通過する前記二次燃焼後排ガスの流量を計測する。この流量計18で計測された値は、前記演算装置20に送信される。
【0039】
前記演算装置20は、前記還元剤供給装置12により二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を算出する部分である。この演算装置20では、前記CO濃度計14で計測された前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガスのCO濃度と、前記流量計18で計測された二次燃焼室2bから排出される二次燃焼後排ガスの流量と、前記温度計16で計測された二次燃焼室2b内の温度とに基づいて、前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOxの量すなわち溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOxの合計NOx量を予測し、この予測したNOx量に基づいて前記還元剤の量を算出する。この演算装置20で算出された値は前記制御弁駆動装置40に送信される。前記制御弁駆動装置40は、前記還元剤供給装置12から二次燃焼室2bに供給される還元剤の量が前記算出値となるように前記制御弁12aの開度を変更する。
【0040】
ここで、前記二次燃焼室2bに還元剤を供給してNOxを還元処理することは従来より行われている。また、この二次燃焼室2b内のNOx量を予測して、この予測したNOx量に基づいて前記二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を算出することも行われている。
【0041】
例えば、特開2006−192406号公報には、二次燃焼室2bに還元剤を供給してNOxを還元処理する方法であって、二次燃焼室2bにおいて二次空気が供給される領域内の酸素濃度を検出して、この検出した酸素濃度に基づいて二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOx量を予測する方法が開示されている。この方法を用いれば、ある運転条件では、この二次燃焼室2bから排出されるNOx量が高い精度で予測されて適切な量の還元剤を二次燃焼室2bに供給することができ、NOxの排出量を十分に小さく抑えることができる。しかしながら、本発明者らは、所定の運転条件、具体的には、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中の酸素濃度が0%となる運転条件では、前記方法を用いても二次燃焼室2bから外部に排出されるNOxを十分に還元処理できないことに気づいた。すなわち、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される溶融部燃焼後排ガス中の酸素濃度が同じ0%であるにも関わらず二次燃焼室2bから排出される二次燃焼後排ガス中のNOx量が大きく異なる場合があることに気づいた。
【0042】
この問題について、本発明者らは、鋭意研究の結果、図3に示すように、二次燃焼室2b内において溶融部燃焼後排ガスが還元剤が供給されない状態で二次空気の供給を受けて二次燃焼した場合においてこの二次燃焼室2bから排出される二次燃焼後排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度と、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCOの濃度との相関が非常に高いことを見出した。特に、排ガス中の酸素濃度が0%となる運転条件においても、この二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度は前記非脱硝時NOx濃度と対応して変化しており、このCO濃度に基づいて前記非脱硝時NOx濃度すなわち溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOxとからなるNOxの濃度の予測が可能であることを見出した。具体的には、図3に示すように、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCOの濃度が基準値X_CO以下となる運転条件では、非脱硝時NOx濃度はCO濃度の増加に略比例して減少する。一方、CO濃度が基準値X_CO以上となる条件では、非脱硝時NOx濃度はCO濃度に略比例して増加することを見出した。前記基準値X_COはたとえば2%である。なお、この図3は、異なる2つの施設(A施設、B施設)においてそれぞれ各濃度を計測した結果を示しており、前記二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度とNOx濃度との相関関係は施設によらず一定となる。
【0043】
ここで、図4に、溶融部2aから二次燃焼室2b側に排出された二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のNOx濃度を計測して、この二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のNOx濃度と二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度との関係を調べた結果を示す。この図4に示されるように、二次燃焼前のNOx濃度は、二次燃焼前のCO濃度が前記基準値X_COより高い条件においても低い条件においても、CO濃度の増加とともに減少している。これに対して、前述のように、二次燃焼後のNOx濃度は、二次燃焼前のCO濃度が基準値X_COより高い場合には、CO濃度の増加とともに増加している。
【0044】
このことから、前記二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度が前記基準値X_COよりも高い条件では、二次燃焼により二次燃焼室2b内でサーマルNOxが多く発生していると考えられる。すなわち、二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度が前記基準値X_COより高く溶融部2aから二次燃焼室2b側に排出された排ガス中の酸素濃度が非常に小さい運転条件では、溶融部2a内にて酸素不足の雰囲気での燃焼が行われてCOに代表される未燃ガスが二次燃焼室2b内に多く導入されており、二次燃焼室2b内でこの未燃ガスが燃焼することで燃焼温度が高温となりサーマルNOxが多量に発生していると考えられる。そして、この未燃ガス量すなわちCO濃度の増加に伴ってサーマルNOxが増加していると考えられる。
【0045】
一方、前記二次燃焼前のCO濃度が前記基準値X_COより低く溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される溶融部燃焼後排ガス中の酸素濃度がある程度高い運転条件では、溶融部2a内にて酸素過剰の雰囲気での燃焼が行われて二次燃焼室2bに導入される未燃ガスの量が小さく抑えられており、二次燃焼室2b内でのサーマルNOxの発生量が小さく抑えられる一方、溶融部2a内にて熱分解ガスに含まれる窒素が過剰な酸素によって酸化されることによりこの溶融部2a内でNOxが多量に発生すると考えられる。そして、この酸素濃度の増加ひいては溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度の減少に伴ってNOxが増加していると考えられる。
【0046】
以上の研究結果より、本廃棄物処理システム10では、前述のように、前記CO濃度計14が前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCOの濃度を計測する。そして、前記演算装置20が、この溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCOの濃度に基づいて前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOx量を予測し、この予測したNOx量に基づいて二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を決定する。
【0047】
前記演算装置20が前記還元剤の供給量を決定する具体的手順を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
まず、演算装置20は、ステップS1にて、前記CO濃度計14で計測された前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度を読み込む。また、ステップS2にて、前記流量計18で計測された二次燃焼室2bから排出される二次燃焼後排ガスの流量を読み込む。さらに、ステップS3にて、前記温度計16で計測された二次燃焼室2b内の温度を読み込む。
【0049】
次に、ステップS4にて、前記ステップS1で読み込んだCO濃度の値に基づき前記非脱硝時NOx濃度すなわち前記溶融部2aで生成されたNOxと二次燃焼室2b内で生成されたサーマルNOxとからなるNOxの濃度を予測する。具体的には、演算装置20に、予め設定したCO濃度に対する非脱硝時NOx濃度のマップを記憶させておき、このマップから前記読み込んだCO濃度に対する非脱硝時NOx濃度の値を抽出する。このマップは、図3の実線で示すマップであって、CO濃度が基準値X_CO以下の領域ではCO濃度の増加に略比例して非脱硝時NOx濃度は減少し、CO濃度が基準値X_COより高い領域ではCO濃度の増加に略比例して非脱硝時NOx濃度が増加するように設定されている。従って、ステップS4では、前記CO濃度が基準値X_CO以下の場合は、CO濃度が高くなるほど低い非脱硝時NOx濃度が予測され、CO濃度が基準値X_CPより高い場合は、CO濃度が高くなるほど高い非脱硝時NOx濃度が予測される。
【0050】
次に、ステップS5にて、前記ステップS2で読み込んだ排ガスの流量と前記ステップS4で予測した非脱硝時NOx濃度とに基づき、前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOxの量すなわち溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOxの合計NOx量を予測する。具体的には、排ガスの流量とNOx濃度とを積算してNOx量を算出する。
【0051】
次に、ステップS6にて、前記ステップS3で読み込んだ二次燃焼室2b内の温度に基づき前記ステップS5で予測したNOx量を補正する。前記溶融部2aで生成するNOx量および二次燃焼室2bで生成するNOx量は、それぞれ溶融部2a、二次燃焼室2b内の燃焼温度によって変化する。そのため、これら燃焼温度によって前記ステップS5で予測したNOx量を補正すればNOx量の予測精度をより高めることができる。ここで、溶融部2a内の温度は二次燃焼室2b内の燃焼温度と相関が高い。そこで、本実施形態では、このステップS6にて,前記ステップS3で読み込んだ二次燃焼室2b内の温度に基づいて前記NOx量を補正することで、燃焼温度によって変化する溶融部2a内で生成するNOx量および二次燃焼室2bで生成するNOx量の合計NOx量をより精度良く算出する。具体的には、演算装置20に、予め設定した二次燃焼室2b内の温度と二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガスのCO濃度とに対する前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOx量の補正値のマップを記憶させておき、このマップから前記ステップS1で読込んだCO濃度およびステップS3で読込んだ二次燃焼室2b内の温度に応じた補正値を抽出して、前記ステップS5で算出した予測NOx量を補正する。
【0052】
次に、ステップS7にて、前記ステップS6で算出された予測NOx量と前記ステップS3で読み込んだ二次燃焼室2b内の温度とに基づき二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を決定する。ここで、還元剤の還元率すなわち還元剤の全供給量に対してNOxの還元に有効に用いられる還元剤量の割合は、二次燃焼室2b内の燃焼温度に応じて変化する。そこで、本実施形態では、二次燃焼室2b内の燃焼温度からこの燃焼温度時の還元率を算出するとともに、前記予測NOx量のうち所定量を還元するために必要な還元剤の必要量を算出し、この必要量と前記還元率とに基づき還元剤の全供給量を算出する。具体的には、演算装置20に、予め設定した二次燃焼室2b内の温度と還元率とのマップと、NOx量とこのNOx量を還元処理するのに必要な還元剤の必要量のマップを記憶させておき、これらマップから抽出した還元率と必要量とに基づき予測NOx量に応じた還元剤の供給量を算出する。
【0053】
以上のように、本廃棄物処理システム10では、溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOxとからなり前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度と相関の高い溶融部2aから二次燃焼室2b内に導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度を計測してこのCO濃度に基づいて前記非脱硝時NOx濃度を予測しており、この非脱硝時NOx濃度を精度良く予測することができる。そして、この非脱硝時NOx濃度に基づいて還元剤の量を決定しており、溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOxとを還元処理するのに過不足のない適切な量の還元剤を二次燃焼室2b内に供給することができ、二次燃焼室2bすなわち溶融炉2から排出されるNOxを確実に低減することができる。
【0054】
ここで、前述のように、溶融部2aから二次燃焼室2b内に導入される二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中の酸素濃度が0%より高い場合には、この酸素濃度と非脱硝時NOx濃度とは高い相関関係を維持している。そのため、前記二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガスのCO濃度が0%となり前記二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガスの酸素濃度が0%より高い場合には、この酸素濃度に基づいて前記非脱硝時NOx濃度を予測してもよい。この場合には、前記CO濃度計14に加えて、前記二次燃焼室2bのうちの前記還元剤が供給される部分および前記二次空気が供給される部分よりも上流に、この部分を通過する二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中の酸素濃度を検出するための酸素濃度計を設ける。そして、前記演算装置20に、予め設定したこの二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガスの酸素濃度に対する非脱硝時NOx濃度のマップを記憶させておき、このマップから前記検出された酸素濃度の値に応じたNOx濃度の値を抽出し、このNOx濃度に基づいて溶融部燃焼後排ガス中のNOxと二次燃焼室2b内での燃焼により生成するNOx量ひいては二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を決定する。
【0055】
また、前記流量計18およびこの流量計18で計測された二次燃焼後排ガスの流量に基づいて前記二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOx量を予測する前記ステップS5の演算は省略可能である。例えば、二次燃焼室2bから排出される二次燃焼後排ガスの流量がほぼ一定の場合には、前記非脱硝時NOx濃度から還元剤の量を直接決定してもよい。具体的には、演算装置20に、予め設定した前記非脱硝時NOx濃度とこの非脱硝時NOx濃度に対応した還元剤の量のマップを記憶させておく。そして、前記ステップS6にて、二次燃焼室2b内の温度に基づき前記非脱硝時NOx濃度を補正した後、前記マップから予測NOx濃度に応じた還元剤の量を抽出する。
【0056】
また、前記温度計16およびこの温度計16で計測された二次燃焼室2b内の温度に基づいてNOx量を補正する前記ステップS6の演算は省略可能である。
【0057】
また、前記溶融部2aから二次燃焼室2bに導入された二次燃焼前の溶融部燃焼後排ガス中のCO濃度に基づいて前記非脱硝時NOx濃度を予測する前記ステップS4の演算は省略可能である。すなわち、非脱硝時NOx濃度を予測せずに、前記CO濃度から二次燃焼室2bに供給する還元剤の量を直接決定してもよい。この場合には、前記演算装置20に、前記CO濃度に対する単位排ガス流量あたりの還元剤の量をマップ等で記憶させておき、検出された前記CO濃度に基づきこの単位排ガス流量あたりの還元剤の量を算出した後、この単位排ガス流量あたりの還元剤の量と排ガス流量を積算して、二次燃焼室2bに供給する還元算の量を算出する方法が挙げられる。
【0058】
また、前記溶融炉2の上流に設けられる処理装置は、前記流動床式ガス化炉1に限らず、溶融炉2に所定の熱分解ガスを供給する燃焼設備であればよい。
【0059】
また、前記集じん器5の下流にこの部分を通過する排ガスすなわち二次燃焼後排ガス中のNOx濃度を測定可能なNOx濃度計を設けておき、このNOx濃度計で測定した二次燃焼後排ガス中のNOx濃度を用いて二次燃焼室2b内に供給する還元剤の量を補正するようにしてもよい。例えば、この二次燃焼後排ガス中のNOx濃度が所定値以上の場合は前記ステップS7で算出した還元剤量を増量する。このようにすれば、予測した非脱硝時NOx濃度と実際の濃度とが一時的に異なった場合でも外部に排出されるNOx量をより確実に少なく抑えることができる。なお、この場合において、前記所定値は、還元剤の供給量が多くなりすぎてNOxの還元に利用されずに残存した還元剤が無化アンモニアとなり白煙が生じるのをより確実に回避するべく、0以上の値、例えば50ppmに設定されるのが好ましい。
【0060】
また、前記実施形態では、無触媒脱硝が行われる場合について説明したが、前記集じん器5の下流に脱硝触媒を備えた脱硝装置を別途設け、この集じん器5の下流においてこの部分を通過する二次燃焼後排ガスを加温した後、この脱硝装置において脱硝処理するようにしてもよい。なお、この場合には、前記二次燃焼室2b内に供給する還元剤とは別に脱硝装置の上流で還元剤を供給する。
【0061】
また、前記実施形態では、集じん器5の下流に設けられた前記流量計18を用いて、二次燃焼後排ガスの流量を計測し、前記予測された非脱硝時NOx濃度とこの計測値に基づいて、二次燃焼室2b内に還元剤が供給されない場合において二次燃焼室2bから排出されるNOxの量を予測する場合について説明した。ここで、前記予測される非脱硝時NOx濃度は、二次燃焼室2bにて二次燃焼後に存在するNOxの濃度すなわち二次燃焼室2bの出口での濃度である。そのため、前記二次燃焼室2bから前記流量計18までの間、例えば、前記集じん器5において、空気や水等が前記二次燃焼後排ガス中に供給される場合には、前記流量計18からこれら供給された空気や水等を減算する補正を行い、この補正後の値と前記予測された非脱硝時NOx濃度とに基づいて前記NOxの量を予測するのが好ましい。具体的には、前記流量計18で計測された値に対して一定の補正係数を乗じて前記流量計18の値を補正する方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
1 流動床式ガス化炉(処理装置)
2 溶融炉
2a 溶融部
2b 二次燃焼部
10 廃棄物処理システム
11 二次空気供給装置(二次空気供給手段)
12 還元剤供給装置(還元剤供給手段)
14 CO濃度計(一酸化炭素濃度検出手段)
16 温度計
18 流量計
20 演算装置(還元剤量決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を燃焼処理する処理装置から排出された被溶融物と排ガスとが導入されて内側で当該被溶融物が溶融するとともに前記排ガスが燃焼する溶融部と、当該溶融部の下流に設けられるとともにこの溶融部から排出された排ガスが導入されて内側で当該排ガスが燃焼する二次燃焼部とを有する溶融炉において前記排ガスを脱硝処理するための溶融炉における排ガス脱硝方法であって、
前記二次燃焼部内に前記排ガスを燃焼させるための二次空気を供給する二次空気供給工程と、
前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素濃度検出工程と、
前記二次燃焼部のうち前記排ガス中の一酸化炭素の濃度が検出される部分よりも下流の部分に、前記排ガスを脱硝するための還元剤を供給する還元剤供給工程と、
前記還元剤供給工程において前記二次燃焼部に供給する還元剤の量を決定する還元剤量決定工程とを含み、
前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された前記排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて前記還元剤の量が決定されており、
前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この一酸化炭素の濃度から予測可能な、前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されていることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融炉における排ガス脱硝方法であって、
前記非脱硝時NOx濃度が最小値となるときの前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素濃度を基準濃度として予め設定しておき、
前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が前記基準濃度よりも低い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど低く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量が決定されるとともに、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された排ガス中の一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど高く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量が決定されることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の溶融炉における排ガス脱硝方法であって、
前記二次燃焼部から排出される排ガスの流量を検出する流量検出工程を含み、
前記還元剤量決定工程では、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記流量検出工程で検出された前記排ガスの流量とから予測可能な前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの量に基づき、前記還元剤の量が決定されることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の溶融炉における排ガス脱硝方法であって、
前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の酸素の濃度を検出する酸素濃度検出工程を含み、
前記還元剤量決定工程では、前記一酸化炭素濃度検出工程で検出された前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度が0%の場合は、前記酸素濃度検出工程で検出された前記排ガス中の酸素の濃度に基づいて前記還元剤の量が決定されており、この酸素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この酸素の濃度から予測可能な前記非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されていることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝方法。
【請求項5】
被処理物を燃焼処理する処理装置から排出された被溶融物と排ガスとが導入されて内側で当該被溶融物が溶融するとともに前記排ガスが燃焼する溶融部と、前記溶融部の下流に設けられるとともにこの溶融部から排出された排ガスが導入されて内側で当該排ガスが燃焼する二次燃焼部とを備えた溶融炉における排ガス脱硝装置であって、
前記二次燃焼部内に前記排ガスを燃焼させるための二次空気を供給する二次空気供給手段と、
前記二次燃焼部のうち前記二次空気が供給される部分よりも上流の部分において、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度を検出する一酸化炭素濃度検出手段と、
前記二次燃焼部のうちの前記一酸化炭素濃度検出手段によって排ガス中の一酸化炭素の濃度が検出される部分よりも下流の部分に、前記排ガスを脱硝するための還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記二次燃焼部に供給する前記還元剤の量を決定する還元剤量決定手段とを備え、
前記還元剤量決定手段は、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に基づいて前記還元剤の量を決定し、
前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度と前記還元剤の量との関係は、この一酸化炭素の濃度から予測可能な、前記二次燃焼部内に前記還元剤が供給されない場合において当該二次燃焼部から排出される排ガス中のNOxの濃度である非脱硝時NOx濃度に基づいて設定されていることを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝装置。
【請求項6】
請求項5に記載の溶融炉における排ガス脱硝装置であって、
前記還元剤量決定手段は、前記非脱硝時NOx濃度が最小値となるときの前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素濃度を基準濃度として予め記憶しており、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が前記基準濃度よりも低い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど低く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定するとともに、前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された排ガス中の一酸化炭素濃度が前記基準濃度よりも高い場合には、この検出された排ガス中の一酸化炭素の濃度が高いほど高く予測される前記非脱硝時NOx濃度に基づき、前記還元剤の量を決定することを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の溶融炉における排ガス脱硝装置であって、
前記還元剤量決定手段は、前記溶融部から前記二次燃焼部に導入される排ガス中の一酸化炭素の濃度に対するこの一酸化炭素濃度から予測可能な前記被脱硝時NOx濃度に基づいて設定された前記還元剤の量のマップを予め記憶しており、当該マップから前記一酸化炭素濃度検出手段によって検出された一酸化炭素の濃度に対応する前記還元剤の量を抽出して、当該抽出された還元剤の量を前記二次燃焼部に供給する前記還元剤の量として決定することを特徴とする溶融炉における排ガス脱硝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183292(P2011−183292A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50363(P2010−50363)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】