説明

溶融紡糸エラストエステルマルチフィラメント糸

本発明は、商業的に実行可能な条件下でポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーを溶融紡糸してエラストエステルマルチフィラメント糸を製造する方法であって、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーがポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメントと、トリメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントおよび/またはテトラメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントから選択された硬セグメントとを含むポリトリメチレンエーテルエステルである方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業的に実行可能な条件下でポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーを溶融紡糸してエラストエステルマルチフィラメント糸を製造する方法であって、このポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが、ポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメントと、トリメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントおよび/またはテトラメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントから選択された硬セグメントとを含むポリトリメチレンエーテルエステルである方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「エラストエステル」という名称は、少なくとも50重量%の脂肪族ポリエーテルおよび少なくとも35重量%のポリエステルを含有する繊維の背景における米国での一般的表現である。エラストエステルは、スパンデックスのように伸縮性があり、容易に洗浄可能であり、湿った時に高温に耐えることができる。エラストエステルは、ナイロンおよびスパンデックスから製造された布地より良好に染料を保持するとともに、水着のような衣類のために重要な特性である塩素によって変色されるか、または悪影響を受ける可能性がより少ないと言われている。
【0003】
米国特許第6,562,457号明細書には、ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントと、テトラメチレンエステル硬セグメントとを含むポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが開示されている。米国特許第6,599,625号明細書には、ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントと、トリメチレンエステル硬セグメントとを含むポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが開示されている。米国特許第6,905,765号明細書には、ポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)エステル軟セグメントと、アルキレンエステル硬セグメントとを含むポリエーテルエステルエラストマーが開示されている。
【0004】
上の刊行物は、刊行物中で開示されたポリエーテルエステルが連続フィラメントまたはステープルファイバーのいずれにおいても、繊維を製造する際に有用であり、織布、メリヤス生地および不織布を調製するために本繊維を用いることが可能であることを示している。開示された繊維は、伸縮性があり、良好な耐塩素性を有し、標準ポリエステル染色条件下で染色することが可能であり、優れた強度および伸び回復特性、特に改善されたアンロード力および応力緩和を含む優れた物理的特性を有する。
【0005】
米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書は、開示されたポリマーから繊維を約1200m/分以下の速度で溶融紡糸できるとともに、約6倍以下に延伸できることを更に示している。これらの条件下で溶融紡糸できることは、スパンデックスまたはエラスタン;少なくとも85%のセグメント化ポリウレタンを含む製造された合成繊維のために用いられる溶液紡糸に比べて商業的に有利であろう。
【0006】
上述した一般的開示にもかかわらず、米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書のみが、4倍の延伸比を伴った約160m/分の速度でのモノフィラメントの溶融紡糸を例示している。これらの紡糸条件は、繊維の実際的な商業化のために遅過ぎる。商業化を成功させるには、一般に、約1200m/分より速い紡糸速度および5倍ほどに高い延伸比を必要とし、繊維がマルチフィラメントの形態を取ることを更に必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定のポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーを約1200m/分より速い紡糸速度で、そして商業的に実行可能な他の条件下で溶融紡糸して、マルチフィラメント(マルチフィラメント糸)を製造できることが今見出された。従って、本発明は、ポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメントおよびトリメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントまたはテトラメチレンジカルボキシレートエステル硬セグメントを含有するポリトリメチレンエーテルエステルポリマーを含むエラストエステル繊維を溶融紡糸するための商業的に実行可能な条件を提供する。
【0008】
本発明によると、
(a)硬セグメントと軟セグメントの組み合わせ重量を基準にしてポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメント約80〜約40重量%と、トリメチレンジカルボキシレートエステル、テトラメチレンジカルボキシレートエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された硬セグメント約20〜約60重量%とを含むポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーを提供する工程と、
(b)1つ以上の紡糸口金を通してエラストマーを押し出して、少なくとも2本のフィラメントを形成することによりエラストマーを溶融紡糸する工程と、
(c)フィラメントをマルチフィラメント糸に加工する工程と
を含むエラストエステルマルチフィラメント糸を調製する方法であって、溶融紡糸を約1200メートル/分より速い紡糸速度で行う方法が提供される。
【0009】
本発明の方法は、マルチフィラメント糸をステープルファイバーに切断する工程を更に含んでもよい。
【0010】
本発明は、上の方法によって調製されたマルチフィラメント糸およびこうして調製されたマルチフィラメント糸を含む布地にも関連する。
【0011】
得られたマルチフィラメント糸は、好ましくは、約100〜約600%の伸びおよび約0.5〜約2.5グラム/デニールの強度を有するエラストエステル糸であり、約0.5〜約20デニール/フィラメント(dpf)のフィラメントを含む。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、マルチフィラメント糸はスパン延伸(spun drawn)糸であり、延伸工程の終わりにローラで測定した時に、加工する工程が約1250〜約5000メートル/分の延伸速度でフィラメントを延伸する工程を含む。好ましくは、スパン延伸マルチフィラメントに加工する工程は、フィラメントの延伸、アニーリング、交絡および巻取工程を含む。
【0013】
もう1つの好ましい実施形態において、マルチフィラメント糸は部分延伸糸であり、紡糸速度は、好ましくは約1500メートル/分より速い。
【0014】
マルチフィラメントテクスチャー加工糸は、(a)部分延伸マルチフィラメント糸の包装を調製する工程と、(b)包装から糸を巻き出す工程と、(c)フィラメントを延伸して、延伸糸を形成する工程と、(d)延伸糸を仮撚テクスチャー加工してテクスチャー加工糸を形成する工程と、(e)糸を包装上に巻取る工程とを含む方法によって部分延伸糸から調製してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特に指示がない場合、完全に記載されたかのようにすべての目的のために参照により本明細書に援用される。
【0016】
特に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0017】
明示的に注記された場合を除き、商標は大文字で示す。
【0018】
特に指定がない限り、すべての百分率、部、比率などは重量による。
【0019】
量、濃度あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の一覧のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関係なく、あらゆる上方範囲限界または好ましい値とあらゆる下方範囲限界または好ましい値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲を本明細書で挙げる場合、別段に指定がない限り、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての整数および端数を含むことを意図している。範囲を定めるときに挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0020】
「約」という用語が一定範囲の値または終点を記載する際に用いられるとき、その開示は、関連した特定の値または特定の終点を含むと理解されるべきである。
【0021】
本明細書で用いるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されずに、こうしたプロセス、方法、物品または装置に明示的に記載されていない他の要素も固有でない他の要素も含んでもよい。更に、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、非排他的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される。Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0022】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、あくまで便宜上、および本発明の一般的意味を示すために用いられるに過ぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数が別段に意図されていることが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0023】
本明細書の材料、方法および実施例はあくまで例示であり、本明細書に記載された場合を除き、限定である意図はない。本明細書で記載された方法および材料に似ているか、または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることが可能であるが、適する方法および材料を本明細書において記載する。
【0024】
ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー
本発明において用いるためのポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは、好ましくは、
硬セグメントと軟セグメントの組み合わせ重量を基準にして
約80〜約40重量%、より好ましくは約75〜約50重量%、なおより好ましくは約70〜約60重量%のポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントおよび
約20〜約60重量%、より好ましくは約25〜約50重量%、なおより好ましくは約30〜約40重量%の硬セグメント(ポリトリメチレンエステルおよび/またはポリテトラメチレンエステル)を含有する。
【0025】
ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは、好ましくは少なくとも約0.8dl/g、より好ましくは少なくとも約1.2dl/g且つ好ましくは約2.0dl/g以下、より好ましくは約1.6dl/g以下の固有粘度を有する。
【0026】
「ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメント」および「軟セグメント」は、エステル連結を経由しての高分子エーテルグリコールと「ジカルボン酸等価物」との反応生成物を意味するように本発明と共に用いられ、ここで、軟セグメントを形成するために用いられる高分子エーテルグリコールの少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約85重量%、なおより好ましくは約95〜100重量%は、ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)である。
【0027】
「ポリトリメチレンエステル硬セグメント」、「ポリテトラメチレンエステル硬セグメント」および「硬セグメント」は、エステル連結を経由しての1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)または1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)の1種以上と1種以上のジカルボン酸等価物との反応生成物を意味するように本発明と共に用いられ、ここで、硬セグメントを形成するために用いられるジオールの約50モル%超、より好ましくは少なくとも約75モル%、なおより好ましくは少なくとも約85モル%、更により好ましくは約95〜100モル%は、1,3−プロパンジオールおよび/または1,4−ブタンジオールである。
【0028】
「ジカルボン酸等価物」は、当業者によって一般に認められるように、ジカルボン酸と、高分子グリコールおよび高分子ジオールとの反応において実質的にジカルボン酸のように機能する化合物であるジカルボン酸等価物とを意味する。ジカルボン酸に加えて、本発明の目的のためのジカルボン酸等価物には、例えば、ジカルボン酸のモノエステルおよびジエステル、ならびに酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および酸無水物などのジエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0029】
軟セグメントのための高分子エーテルグリコール
本発明の目的のためのPO3Gは、反復単位の少なくとも50%がトリメチレンエーテル単位であるオリゴマーエーテルグリコールおよび/またはポリマーエーテルグリコールである。反復単位のより好ましくは約75%〜100%、なおより好ましくは約90〜100%、更により好ましくは約99%〜100%はトリメチレンエーテル単位である。
【0030】
PO3Gは、好ましくは、1,3−プロパンジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され、よって−(CH2CH2CH2O)−連結(例えば、トリメチレンエーテル反復単位)を含有するポリマーまたはコポリマーをもたらす。
【0031】
トリメチレンエーテル単位に加えて、他のポリアルキレンエーテル反復単位などの他の単位のより少ない量が存在してもよい。この開示の文脈において、「ポリトリメチレンエーテルグリコール」という用語は、本質的に純粋の1,3−プロパンジオール、ならびに50重量%以下のコモノマーを含有するオリゴマーおよびポリマー(以下で記載されたオリゴマーおよびポリマーを含む)から製造されたPO3Gを包含する。
【0032】
PO3Gを調製するために用いられる1,3−プロパンジオールは、周知の種々の化学経路のいずれか、または生物化学的変換経路によって得てもよい。好ましい経路は、例えば、米国特許第5,015,789号明細書、米国特許第5,276,201号明細書、米国特許第5,284,979号明細書、米国特許第5,334,778号明細書、米国特許第5,364,984号明細書、米国特許第5,364,987号明細書、米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書、米国特許第5,821,092号明細書、米国特許第5,962,745号明細書、米国特許第6,140,543号明細書、米国特許第6,232,511号明細書、米国特許第6,235,948号明細書、米国特許第6,277,289号明細書、米国特許第6,297,408号明細書、米国特許第6,331,264号明細書、米国特許第6,342,646号明細書、米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225162A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書に記載されている。
【0033】
好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能な源から生物化学的に得られる(「生物誘導」)1,3−プロパンジオール)。
【0034】
特に好ましい1,3−プロパンジオール源は、再生可能な生物源を用いる発酵プロセスを経由する。再生可能な源からの出発材料の例示的な例として、トウモロコシ原料などの生物的且つ再生可能な資源から製造された原料を用いる1,3−プロパンジオール(POD)への生物化学経路は記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化できる菌株は、種:クラブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)およびラクトバシラス(Lactobacillus)の中で見出されている。前に引用した米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む幾つかの公報の中でこの技術は開示されている。米国特許第5,821,092号明細書には、特に、組換え生物を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物生産のための方法が開示されている。この方法は、1,2−プロパンジオールのための特異性を有する異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子により変換された大腸菌(E.coli)を導入している。変換された大腸菌(E.coli)は炭素源としてのグリセロールの存在下で成長し、1,3−プロパンジオールは成長した媒体から単離される。菌と酵母の両方がグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の糖質をグリセロールに転化できるので、これらの公報で開示された方法は、迅速で安価且つ環境に責任をもつ1,3−プロパンジオールモノマー源を提供する。
【0035】
上で記載され参照された方法によって製造されたような生物誘導1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された大気二酸化炭素からの炭素を含有する。かくして、本発明と関連して用いるために好ましい生物誘導1,3−プロパンジオールは、再生可能炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物誘導1,3−プロパンジオールを用いるPO3G、およびそれに基づくエラストマーは、組成物中で用いられる1,3−プロパンジオールが減り続ける化石燃料を枯渇させず、分解すると、もう一度植物による使用のために炭素を放出して大気に戻すので環境により小さい影響しか及ぼさない。従って、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似の組成物より天然で且つ小さい環境影響しか及ぼさないとして特徴付けることが可能である。
【0036】
生物誘導1,3−プロパンジオール、PO3Gおよびそれに基づくエラストマーは、石油源または化石燃料炭素から製造された類似化合物から二重炭素同位体特性評価法によって区別してもよい。この方法は、通常、化学的に同一の材料を区別し、生物圏(植物)成分の成長の源(および恐らく年)によってコポリマー中の炭素を割り当てる。同位体14Cおよび13Cは、この問題に補足情報をもたらす。放射性炭素年代測定同位体(14C)は、5730年のその核半減期により、化石(「死」)原料と生物圏(「生」)原料との間に検体炭素を割り当てることを明確に可能にする(Currie,L.A.「Source Apportionment of Atmospheric Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.1 of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc.)(1992年)3−74)。放射性炭素年代測定の基本的な仮定は、大気中の14C濃度の定常性が生物中の14Cの定常性につながることである。単離されたサンプルを取り扱うとき、サンプルの年代を関係:
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
によって概略的に導き出すことが可能である。
式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期である。AおよびA0は、それぞれサンプルと近代標準の14C比放射能である(Hsien,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992年))。しかし、1950年以来の大気圏核実験および1850年以来の化石燃料の燃焼のゆえに、14Cは第2の地球化学的時間特性を獲得した。大気CO2ひいては生きた生物圏中の14C濃度は、1960年代半ばにおける核実験のピーク時におよそ倍増した。14C濃度は、それ以来、7〜10年の近似緩和「半減期」により約1.2×10-12の定常状態宇宙線(大気)ベースライン同位体比率(14C/12C)に徐々に戻ってきた(この後者の半減期は文字通り受け取ってはならない。それどころか、核時代の開始以来の大気14Cおよび生物圏14Cの変動を追跡するために詳しい大気核投入/減衰関数を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年次年代測定を裏付けるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。加速器質量分析法(AMS)によって14Cを測定することが可能であり、結果は、「現代炭素含有率」(fM)の単位で与えられる。fMは、それぞれシュウ酸標準HOxlおよびHOxllとして知られているNational Institute of Standards and Technology(NIST)標準参照物質(SRMs)4990Bおよび4990Cによって定義される。基本的定義は、14C/12C同位体比のHOxl(AD1950に関連した)の0.95倍に関する。これは、減衰に相関した産業革命前の木材にほぼ等しい。現在の生きた生物圏(植物材料)に関しては、fM≒1.1である。
【0037】
安定炭素同位体比(13C/12C)は源の識別と指定への補足経路を提供する。所定の生物源材料の13C/12C比は、二酸化炭素が固定される時点での大気二酸化炭素の13C/12C比の結果であり、精密な代謝経路も反映する。地域的な変動も起きる。石油、C3植物(広葉樹)、C4植物(草類)および海洋カーボネートのすべては、13C/12C値および対応するδ13C値において著しい相違を示す。更に、C3植物およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として同じ植物の炭水化物成分から誘導された材料とは異なって分解する。測定の精度内で、13Cは同位体分別効果のゆえに大きな変動を示す。本発明に関してその最も著しいのは光合成メカニズムである。植物中の炭素同位体比の相違の主原因は、植物中の光合成炭素代謝、特に主たるカルボキシル化中に起きる反応、すなわち、大気CO2の初期固定の経路の相違に密接に関連する。植物化の2つの大きな種類は、「C3」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを導入する種類および「C4」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを導入する種類である。硬木および針葉樹などのC3植物は穏和な気候の地域で主流である。C3植物において、主たるCO2固定およびカルボキシル化反応は酵素リブローゼ−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを含み、最初の安定な製品は3−炭素化合物である。他方、C4植物は、熱帯の草類、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C4植物において、もう1つの酵素、ホスフェノールピルビン酸カルボキシラーゼを含む追加のカルボキシル化反応は主たるカルボキシル化反応である。最初の安定な炭素化合物は4−炭素酸であり、それは後で脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2はC3サイクルによって再び固定される。
【0038】
4植物とC3植物の両方は、13C/12C同位体比の一定範囲を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/mil(C4)および−21〜−26/mil(C3)である(Weberら,J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997年))。石炭および石油は、一般に、この後者の範囲に入る。13C測定目盛は、ピーディー矢石(PDB)石灰岩によって設定された零によって元来定義されている。ここで、値は、この材料からの千の偏差当たりの部で与えられる。「δ13C」値は、%0で略された千当たりの(mil当たりの)部であり、次の通り計算される。
【数1】

PDB標準材料(RM)が枯渇してきたので、一連の代替RMは、IAEA、USGS、NISTおよび選択された他の国際同位体試験所と協力して開発されてきた。PDBからのパーミル偏差のための表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45および46の分子イオンに関する高精度安定比質量分析法(IRMS)によってCO2に関して行われる。
【0039】
従って、生物誘導1,3−プロパンジオール、および生物誘導1,3−プロパンジオールを含む組成物は、組成物の新しさを示す、14C(fM)および二重炭素同位体特性評価法に基づいて石油誘導等価物から完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は商業目的のためにこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新」炭素同位体分布と「旧」炭素同位体分布の両方を含む製品を、「旧」材料のみから製造された製品から区別することができる。従って、本材料は、本材料の独特の分布に基づいて、および競争を決定する目的で、保存寿命を決定するために、ならびに特に環境影響を評価するために商業目的のために追跡される場合がある。
【0040】
反応体としてまたは反応体の成分として用いられる1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析によって決定したとき、好ましくは約99重量%を上回る、より好ましくは約99.9重量%を上回る純度を有する。前に引用した米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールおよび米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールから製造されたPO3Gは特に好ましい。
【0041】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは以下の特性を有する。
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL***“b*”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、なおより好ましくは約150ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度。
【0042】
PO3Gを製造するための出発材料は、所望のPO3G、出発材料の入手性、触媒、装置などに応じて異なり、そして「1,3−プロパンジオール反応体」を含む。「1,3−プロパンジオール反応体」は、1,3−プロパンジオール、ならびに好ましくは2〜9の重合度を有する1,3−プロパンジオールのオリゴマーおよびプレポリマーならびにそれらの混合物を意味する。場合によって、10%以下またはそれ以上の低分子量オリゴマーをそれらが入手できる場合に用いることが望ましい場合がある。従って、出発材料は、1,3−プロパンジオールならびにその二量体および三量体を含むことが好ましい。出発材料は、1,3−プロパンジオール反応体の重量を基準にして特に好ましくは約90重量%以上の1,3−プロパンジオール、より好ましくは99重量%以上の1,3−プロパンジオールからなる。
【0043】
PO3Gは、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書で開示されたように当該技術分野で公知の多くのプロセスを経由して製造することが可能である。好ましいプロセスは、前に引用した米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書に記載された通りである。
【0044】
上で示したように、PO3Gは、トリメチレンエーテル単位に加えて、より少量の他のポリアルキレンエーテル反復単位を含有してもよい。従って、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する際に用いるためのモノマーは、1,3−プロパンジオール反応体に加えて、約50重量%以下(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、なおより好ましくは約2重量%以下)のコモノマーポリオールを含有することが可能である。適切なコモノマーポリオールには、脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール;脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビド;ならびにポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが挙げられる。コモノマージオールの好ましい群は、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、C6〜C10ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールなど)およびイソソルビド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。1,3−プロパンジオール以外の特に好ましいジオールには、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールおよびC6〜C10ジオールが挙げられる。
【0045】
好ましい1種のPO3G含有コモノマーは、米国特許出願公開第20040030095A1号明細書に記載されたようなポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールである。好ましいポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールは、50超〜約99モル%(好ましくは約60〜約98モル%、より好ましくは約70〜約98モル%)の1,3−プロパンジオールと50以下〜約1モル%(好ましくは約40〜約2モル%、より好ましくは約30〜約2モル%)のエチレングリコールの酸触媒添加重縮合によって調製される。
【0046】
好ましくは、精製後のPO3Gは、酸触媒末端基を本質的にもたないが、約0.003〜約0.03ミリ当量/gの範囲内の非常に低レベルの不飽和末端基、主としてアリル末端基を含有してもよい。こうしたPO3Gは、以下の式(II)HO−((CH23O)m−Hおよび式(III)HO−((CH23−O)mCH2CH=CH2を有する化合物を含む(化合物から本質的になる)と考えることが可能である。
式中、mはMn(数平均分子量)が約200〜約5000の範囲内であるような範囲内にある。式(III)の化合物は、アリル末端基(好ましくは、すべての不飽和末端または末端基)が約0.003〜約0.03ミリ当量/gの範囲内で存在するような量で存在する。PO3G中の少数のアリル末端基がエラストマーの分子量を制御するために有用である一方で、例えば、繊維最終用途のために理想的に適した組成物を調製できるようにアリル末端基の数を過度に制限しない。
【0047】
本発明において用いるために好ましいPO3Gは、少なくとも約750、より好ましくは少なくとも約1000、なおより好ましくは少なくとも約2000のMnを有する。Mnは、好ましくは約5000未満、より好ましくは約4000未満、なおより好ましくは約3500未満である。PO3Gのブレンドも用いることが可能である。例えば、PO3Gは、より高い分子量のPO3Gとより低い分子量のPO3Gのブレンドを含むことが可能である。ここで、好ましくは、より高い分子量のPO3Gは、約1000〜約5,000の数平均分子量を有し、より低い分子量のPO3Gは、約200〜約950の数平均分子量を有する。ブレンドされたPO3GのMnは、好ましくは、なお上述した範囲内にある。
【0048】
本明細書において用いるために好ましいPO3Gは、好ましくは約1.0〜約2.2、より好ましくは約1.2〜約2.2、なおより好ましくは約1.5〜約2.1の多分散性(すなわち、Mw/Mn)を有する典型的に多分散性ポリマーである。多分散性は、PO3Gのブレンドを用いることにより調節することが可能である。
【0049】
本発明において用いるためのPO3Gは、好ましくは約100APHA未満、より好ましくは約50APHA未満の明度を有する。
【0050】
軟セグメントを形成するために1,3−プロパンジオールに実質的に基づくPO3Gを用いる時、以下の構造によって表される単位を含むとして軟セグメントを表すことが可能である。
【化1】

式中、Rはジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去後に残る二価基を表し、xはPO3G中のトリメチレンエーテル単位の数を表す整数である。
【0051】
ポリエーテルエステルのポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントを調製するために用いられる高分子エーテルグリコールは、PO3G以外の高分子エーテルグリコール50重量%以下も含んでよい。こうした好ましい他の高分子エーテルグリコールには、例えば、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランと3−アルキルテトラヒドロフランのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
硬セグメントのためのジオール
硬セグメントを形成するためにトリメチレングリコール/テトラメチレングリコールを用いる時、以下の構造を有する単位を含むとして硬セグメントを表すことが可能である。
【化2】

式中、nは3(トリメチレン)または4(テトラメチレン)であり、R’はジカルボン酸等価物からカルボキシル官能基を除去後に残る二価基を表す。殆どの場合、本発明において用いられるポリエーテルエステルエラストマーの軟セグメントおよび硬セグメントを調製するために用いられるジカルボン酸等価物は同じである。
【0053】
硬セグメントは、トリメチレングリコールまたはテトラメチレングリコール以外の好ましくは約400未満の分子量を有するジオール50モル%未満(好ましくは約25モル%以下、より好ましくは約15モル%以下)により調製することも可能である。他のジオールは、好ましくは脂肪族ジオールであり、非環式または環式であることが可能である。エチレングリコール、イソブチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、2−メチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルなどの約15個以下の炭素原子を有するジオールは好ましい。2〜8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールは特に好ましい。エチレングリコールは最も好ましい。2種以上の他のジオールを用いることが可能である。
【0054】
ジカルボン酸等価物
ジカルボン酸等価物は、芳香族、脂肪族または脂環式であることが可能である。この点で「芳香族ジカルボン酸等価物」は、以下で記載されたジカルボン酸等価物などの、各カルボキシル基がベンゼン環系の中の炭素原子に結合されているジカルボン酸等価物である。「脂肪族ジカルボン酸等価物」は、各カルボキシル基が完全飽和炭素原子に、またはオレフィン二重結合の一部である炭素原子に結合されているジカルボン酸等価物である。炭素原子が環中にある場合、等価物は「脂環式」である。ジカルボン酸等価物は、置換基が重合反応を妨げない限り、またはポリエーテルエステル製品の特性に悪影響を及ぼさない限り、あらゆる置換基またはそれらの組み合わせを含有することが可能である。
【0055】
ジカルボン酸およびジカルボン酸のジエステルからなる群から選択されたジカルボン酸等価物は好ましい。ジカルボン酸のジメチルエステルは、より好ましい。
【0056】
単独、または少量の脂肪族または脂環式のジカルボン酸またはジエステル入りの芳香族ジカルボン酸またはジエステルは好ましい。芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルは特に好ましい。
【0057】
本発明において有用な代表的な芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、二安息香酸、ナフタル酸;ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸などのベンゼン核を有する置換ジカルボン酸化合物;、ならびにハロ誘導体、アルコキシ誘導体またはアリール誘導体などのC1〜C10アルキル置換誘導体および他の環置換誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も存在する限り、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸も用いることが可能である。本発明において有用な代表的な脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸は、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロネート酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、2−エチルスベリン酸、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−ナフタレンジカルボン酸またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4−フランジカルボキシレートおよび1,1−シクロブタンジカルボキシレートである。前述した脂肪族ジカルボン酸のジエステル、酸ハロゲン化物および酸無水物の形態を取ったジカルボン酸等価物も本発明のポリエーテルエステルを提供するために有用である。代表的な芳香族ジエステルには、ジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、フタレートおよびナフタレートが挙げられる。
【0058】
上の中で、テレフタル酸、二安息香酸、イソフタル酸およびナフタル酸;ジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、ナフタレートおよびフタレート;ならびにそれらの混合物は好ましい。特に好ましいジカルボン酸等価物はフェニレンジカルボン酸、特にテレフタル酸およびイソフタル酸からなる群から選択されたフェニレンジカルボン酸およびフェニレンジカルボン酸のジエステル、特にジメチルエステル、ジメチルテレフタレートおよびジメチルイソフタレートの等価物である。更に、2種以上のジカルボン酸等価物を用いることが可能である。例えば、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートを少量の他のジカルボン酸等価物と共に用いることが可能である。
【0059】
好ましい実施形態において、ジカルボン酸等価物の少なくとも約70モル%(より好ましくは少なくとも約80モル%、なおより好ましくは少なくとも約90モル%、更により好ましくは約95〜100モル%)はテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートである。
【0060】
ポリエーテルエステルエラストマーの調製
本発明の紡糸方法に用いるためのポリエーテルエステルは、好ましくは、(a)ポリトリメチレンエーテルグリコール、(b)トリメチレングリコールまたはテトラメチレングリコールもしくはそれらの混合物および(c)ジカルボン酸、エステル、酸塩化物または酸無水物を提供し、反応させることにより調製される。上述した他のグリコール、ジオールなども提供し、反応させることが可能である。ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントとトリメチレンエステル硬セグメントとを含むポリエーテルエステルエラストマーの調製の手順は、米国特許第6,599,625号明細書において詳しく開示されている。ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントとテトラメチレンエステル硬セグメントとを含むポリエーテルエステルエラストマーの調製の手順は、米国特許第6,562,457号明細書において詳しく開示されている。
【0061】
添加剤
ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは、エラストマーに加えて、艶消剤、核剤、熱安定剤、増粘剤、光学ブライトナー、顔料および酸化防止剤からなる群から選択された添加剤に限定されないが、それらを含む1種以上の添加剤を含む組成物の形態を取ってもよい。例えば、二酸化チタンまたは他の顔料をポリマーに、または繊維製造において添加することが可能である。
【0062】
米国特許出願公開第2003−0083441A1号明細書および国際公開第01/034693号パンフレットに記載された添加剤を用いてポリエーテルエステルエラストマーを酸−染着性にすることも可能である。国際公開第01/034693号パンフレットの添加剤は、酸染着性組成物および酸染色された組成物の酸−染着性を促進するのに有効な量で第二アミンまたは第二アミン塩を含む。第二アミン単位は、好ましくは少なくとも約0.5モル%、より好ましくは少なくとも約1モル%の量でポリマー組成物中に存在する。第二アミン単位は、組成物の重量を基準にして好ましくは約15モル%以下、より好ましくは約10モル%以下、なおより好ましくは約5モル%以下の量でポリマー組成物中に存在する。米国特許出願公開第2003−0083441A1号明細書の添加剤は第三アミンに基づく高分子添加剤である。高分子添加剤は、(i)第二アミン単位または第二アミン塩単位を含有するトリアミンおよび(ii)1つ以上の他のモノマー単位および/またはポリマー単位から調製される。好ましい1つの高分子添加剤は、ポリイミノビスアルキレンテレフタルアミド、ポリイミノビスアルキレンイソフタルアミドおよびポリイミノビスアルキレン−1,6ナフタルアミドおよびそれらの塩からなる群から選択されたポリアミドを含む。
【0063】
米国特許第6,312,805号明細書に記載された染着性調整剤(dyeability modifiers)などの染着性調整剤を用いて本発明において有用なポリエーテルエステルをカチオンにより染着性にすることも可能である。
【0064】
フィラメントおよび糸の調製
紡糸のために、ポリマーをその融点より高い温度に加熱し、その後、約175〜約295℃、好ましくは少なくとも約200℃且つ約275℃以下、最も好ましくは約270℃以下の温度で紡糸口金、好ましくは多孔口金を通して押し出す。より高い温度は、より少ない滞留時間のために有用である。
【0065】
繊維は延伸または非延伸でもよい。繊維を延伸する時、延伸比は、少なくとも1.01、好ましくは約5以下、より好ましくは約4以下、最も好ましくは約3以下である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、「完全延伸糸」としても知られているスパン延伸糸を調製するために有利に用いられる。フィラメントの紡糸、延伸、任意にアニーリング、任意に交絡および巻取りを含むスパン延伸糸を製造する好ましい工程は、ポリ(エチレンテレフタレート)糸を調製するために用いられる工程に似ている。好ましくは、本発明の方法によって製造されたスパン延伸糸はマルチフィラメント糸である。
【0067】
本発明の利点は、同じポリエーテルエステルに対して米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書で開示されたよりも高い延伸比を用いてスパン延伸糸を調製できることである。これは、標準より低い紡糸速度を用い、その後、以前に用いられた速度で延伸することにより実行することが可能である。この方法を実行する時、破断は以前に発生したより少ない。
【0068】
(延伸工程の終わりにロールで測定された)延伸速度は、約1200m/mより速く、好ましくは少なくとも約3000m/m、より好ましくは少なくとも約3200m/mであり、そして好ましくは約8000m/m以下、より好ましくは約7000m/m以下である。本発明のもう1つの利点は、ポリ(エチレンテレフタレート)のスパン延伸糸を紡糸するために以前用いられた装置でスパン延伸糸を紡糸できることである。
【0069】
スパン延伸糸は普通は包装上に巻取り、布地を製造するために用いることが可能であるか、またはテクスチャー加工糸などの糸の他のタイプに更に加工することが可能である。
【0070】
本発明の方法をスパン延伸糸の調製のために以下で例示しているが、本発明は、部分延伸糸を調製するためにも有用である。
【0071】
ポリ(エチレンテレフタレート)フィラメントの紡糸、交絡および巻取りを含む部分延伸糸を製造する基本工程は、米国特許第6,287,688号明細書、米国特許第6,333,106号明細書および米国特許出願公開第2001−030378A1号明細書に記載されている。それらの工程または部分延伸ポリエステル糸を製造するために従来から用いられている他の工程を用いて本発明を実施することが可能である。
【0072】
部分延伸糸はマルチフィラメント糸である。(「束」としても知られている)糸は、好ましくは、少なくとも約2本、より好ましくは少なくとも約25本のフィラメントを含む。糸は、典型的には、約1〜約500、好ましくは少なくとも約20、より好ましくは少なくとも約50、なおより好ましくは約50〜約300の合計デニールを有する。
【0073】
フィラメントは、好ましくは少なくとも約0.5デニール/フィラメント(dpf)、より好ましくは少なくとも約1dpf、且つ約20以上のdpf以下、より好ましくは約7dpf以下である。典型的なフィラメントは約3〜7dpfであり、微細フィラメントは約0.5〜約2.5dpfである。
【0074】
紡糸速度は約1200メートル/分(「m/m」)より速く、約5000以上のメートル/分以下であることが可能である。紡糸速度は、好ましくは少なくとも約1500m/m、より好ましくは少なくとも約3000m/mである。紡糸速度は、最大プロセス速度として一般に定義され、本発明の場合、延伸ロール速度と考えられる。従って、本発明の利点は、同じポリエーテルエステルに対して米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書で開示された速度より速い速度で本方法を実施できることである。
【0075】
本発明の利点は、ポリ(エチレンテレフタレート)の部分延伸糸を紡糸するために以前に用いられた装置でポリエーテルエステルの部分延伸糸を紡糸できることであり、従って、紡糸速度は好ましくは約4000m/m以下、より好ましくは約3500m/m以下である。
【0076】
部分延伸糸は、普通は包装上に巻取り、布地を製造するために用いることが可能であるか、またはテクスチャー加工糸などの糸の他のタイプに更に加工することが可能である。部分延伸糸は、布地を調製するか、または更に加工する前に缶に貯蔵することも可能であるか、あるいは包装または他の貯蔵を形成せずに直接用いることが可能である。
【0077】
テクスチャー加工糸を部分延伸糸またはスパン延伸糸から調製することが可能である。主たる相違は、部分延伸糸が普通は延伸を必要とするのに対して、スパン延伸糸は既に延伸されていることである。
【0078】
米国特許第6,287,688号明細書、米国特許第6,333,106号明細書および米国特許出願公開第2001−030378A1号明細書のすべては、部分延伸糸からテクスチャー加工糸を製造する基本工程を記載している。それらの工程または部分延伸ポリエステル糸を製造するために従来から用いられた他の工程を用いて本発明を実施することが可能である。基本工程は、包装から糸を巻出す、延伸する、撚る、熱固定する、解撚する、および包装上に巻取る工程を含む。テクスチャー加工は、加撚、熱固定および仮撚テクスチャー加工として一般に知られている方法による解撚によってクリンプを付与する。仮撚テクスチャー加工は、糸およびフィラメントの過剰な破損を避けるために注意深く制御される。
【0079】
米国特許第6,287,688号明細書、米国特許第6,333,106号明細書および米国特許出願公開第2001−030378A1号明細書に記載された摩擦仮撚りのために好ましい方法は、140℃〜220℃の間の温度に部分延伸糸を加熱し、撚り挿入装置とヒータの入口との間の領域で、糸が約46度〜52度の撚り角度を有するように撚り挿入装置を用いて糸を撚り、巻取機上に糸を巻取る工程を含む。
【0080】
スパン延伸ヤーンから調製する時、本方法は、延伸を非常に低いレベル(例えば、延伸比は1.01と低くすることが可能である)に落とすことを除き同じである。
【0081】
(「束」としても知られている)これらのマルチフィラメント糸は、部分延伸糸および部分延伸糸を製造するスパン延伸糸と同じフィラメント数を含む。従って、これらのマルチフィラメント糸は、好ましくは少なくとも約2本、なおより好ましくは少なくとも約25本のフィラメントを含む。こうした糸は、典型的には約1〜500、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50、より好ましくは約50〜約300の合計デニールを有する。フィラメントは、好ましくは少なくとも約0.1dpf、より好ましくは少なくとも約0.5dpf、より好ましくは少なくとも約0.8dpf、且つ約10まで又はそれ以上のdpf、より好ましくは約5dpf以下、最も好ましくは約3dpf以下である。
【0082】
ステープルファイバーおよびステープル製品を本発明のポリエーテルエステルから調製することが可能である。好ましい1つの方法は、(a)ポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメント約80〜約40重量%とトリメチレンジカルボキシレートエステルおよびテトラメチレンジカルボキシレートエステルからなる群から選択された硬セグメント約20〜約60重量%とを含むポリトリメチレンエーテルエステルを提供する工程と、(b)約245℃〜約285℃の温度でポリトリメチレンエーテルエステルをフィラメントに溶融紡糸する工程と、(c)フィラメントをクエンチする工程と、(d)クエンチされたフィラメントを延伸する工程と、(e)約8〜約30クリンプ/インチ(約3〜約12クリンプ/cm)のクリンプレベルでメカニカル捲縮機を用いて延伸フィラメントを捲縮する工程と、(f)約50〜約120℃の温度で捲縮フィラメントを緩和する工程と、(g)好ましくは約0.2〜約6インチ(約0.5〜約15cm)の長さを有するステープルファイバーに緩和フィラメントを切断する工程とを含む。本方法の好ましい1つの実施形態において、延伸フィラメントを捲縮する前に約85℃〜約115℃でアニールする。好ましくは、アニールは加熱ロールを用いて張力下で行われる。もう1つの好ましい実施形態において、延伸フィラメントは捲縮する前にアニールされない。
【0083】
ステープルファイバーは、テキスタイル糸およびテキスタイルまたは不織布を調製する際に有用であり、繊維充填剤用途およびカーペットの製造のために用いることも可能である。
【0084】
本発明の紡糸方法は、嵩高連続フィラメント(「BCF」)糸の調製において紡糸フィードを改善するために用いることも可能である。BCF糸およびBCF糸の製造は、例えば、米国特許第5,645,782号明細書、米国特許第6,109,015号明細書、米国特許第6,113,825号明細書、米国特許第6,576,340号明細書、米国特許第6,723,799号明細書、米国特許第6,740,276号明細書および米国特許出願公開第2003−0175522A1号明細書に記載されている。BCF糸は、テキスタイルのみでなくカーペットのすべてのタイプを調製するために用いられる。本発明の組成物は、組成物の調製の紡糸速度を改善するために用いることが可能である。
【0085】
嵩高連続フィラメントを調製する際に含まれる好ましい工程は、紡糸(例えば、フィラメントを押し出し、冷却し、被覆する(スピンフィニッシュ))、約80〜約200℃および約1.1〜約5、好ましくは少なくとも約1.5且つ好ましくは約4.5以下の延伸比での単一段延伸または多段延伸(好ましくは、加熱ロール支援、加熱ピン支援または高温流体支援(例えば、蒸気または空気)による)、約120〜約200℃の温度でのアニーリング、バルキング、絡み合わせる(バルキングと共に1工程で、または後続の別個の工程において行うことが可能である)、任意に緩和および後続の使用のために包装上にフィラメントを巻取ることを含む。
【0086】
周知された技術を用いて嵩高連続フィラメント糸をカーペットに製造することが可能である。典型的には、多数の糸はオートクレーブなどの装置内で互いにケーブル撚りされ、熱固定され、その後、一次裏地にタフトされる。その後、ラテックス接着剤および二次裏地を被着させる。
【0087】
個々のフィラメントは円形であることが可能であるか、またはオクタローバル(octalobal)、デルタ(delta)、サンバースト(sunburst)(solとしても知られている)、スカロップ楕円形(scalloped oval)、トリローバル(trilobal)、テトラチャネル(tetra−channel)((カトラチャネル(quatra−channel)としても知られている)、スカラップリボン(scalloped ribbon)、リボン、星形などの他の形状を有することが可能である。個々のフィラメントは、中実、中空または多中空であることが可能である。
【0088】
単一紡糸口金を用いて異なる断面形状を有する糸束でフィラメントを調製することが可能である一方で、本発明は、好ましくは、紡糸口金からフィラメントの断面の1つのタイプを紡糸することにより実施される。
【実施例】
【0089】
本発明を例示する目的のために以下の実施例を提示する。以下の実施例は限定することを意図するものではない。すべての部、百分率などは特に指示がない限り重量による。
【0090】
固有粘度
固有粘度(IV)の測定は、ASTM法2857−70に従って行った。秤量前にポリマーのサンプルを70℃で3時間にわたり乾燥させた。m−クレゾール中の0.5%溶液を用いてサンプルを30℃で実験した。効率、正確度および精度を改善するために、AUTOVISC(登録商標)Automatic Measuring System(Cannon Instrument Company,State College,PA.,U.S.A.)自動化粘度測定システムを用いた。オペレータの代わりに高密度赤外線光ファイバー検出システムを用い、定温を提供するために通常用いられる油浴または水浴の代わりに空気浴を用いた。AUTOVISC(登録商標)は、ASTM D−445「透明液および不透明液の動粘度のための標準試験方法」(Standard Test Method For Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids)の精度仕様を超えている。
【0091】
数平均分子量
数平均分子量は、Mw〜44,000較正標準のポリ(エチレンテレフタレート)およびヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いてASTM D5296−97に準拠して計算した。
【0092】
%硬セグメント
%硬セグメントは米国特許第6,562,457号明細書に記載された通り決定した。
【0093】
繊維の強度および伸び
破断点強度、Tグラム/デニール(gpd)および%破断点伸びEはINSTRON.RTMで測定した。テスターは、アクリル接触面を装着しているSeries2712(002)Pneumatic Action Gripを備えていた。試験を3回繰り返した。結果の平均を報告する。
【0094】
強度および伸びの測定において用いた繊維に関する平均デニールを「デニール1」として報告する。
【0095】
繊維のアンロード力、応力緩和および%永久歪み
アンロード力、応力緩和および%永久歪みを測定する際に用いた繊維に関する平均デニールを「デニール2」として報告する。
【0096】
アンロード力はdN/texeffx1000で測定した。ゲージ長2インチ(5cm)の1本のフィラメントを各測定のために用いた。0〜300%の伸びサイクルを用いて別個の測定を行った。サンプルを100%/分の一定伸び速度で5回サイクルさせ、その後、5番目の伸び後に0.5分にわたり300%伸びで保持した後、アンロード力(すなわち、特定の伸びでの応力)を測定した。この最後の伸びから荷重を除く一方で、応力、すなわち、アンロード力を種々の伸びで測定した。一般様式「UPx/y」(ここで、xは繊維を5回サイクルさせた%伸びであり、yは応力、すなわちアンロード力を測定した%伸びである)を用いて、アンロード力を有効アンロード力として本明細書で報告している。
【0097】
応力緩和は、サンプルを5番目の荷重サイクルの終わりに300%伸びで保持して、30秒にわたる繊維に関する応力の%損失として測定した。
S=((F−C)*100)/F
式中、
S=応力緩和、%
F=完全伸びでの応力
C=30秒後の応力
【0098】
%永久歪みはチャート紙上に記録された応力/歪み曲線から測定した。
【0099】
実施例1
この実施例は、米国特許第6,562,457号明細書に記載されたような、ポリトリメチレンエーテルエステル軟セグメントおよびテトラメチレンエステル硬セグメントを有するポリエーテルエステルエラストマーの調製を記載している。軟セグメント対硬セグメントの72/28重量比を有するようにポリマーを設計した。ジメチルテレフタレート、1,4−ブタンジオールおよびポリトリメチレンエーテルグリコールから回分法を用いてポリマーを調製した。
【0100】
攪拌機、真空ジェットおよび蒸留缶を備えたオートクレーブ反応器に8.81kgのジメチルテレフタレート、8.94kgの1,4−ブタンジオール、数平均分子量2019の20.2kgのポリトリメチレンエーテルグリコール、22gのテトライソプロピルチタネート重合触媒および37.5gのETHANOX330酸化防止剤(Albemarle Corporation)を投入した。反応器の温度を徐々に210℃に上げ、反応器から蒸留によって約2.6kgのメタノールを回収した。反応を追加の1.5時間にわたり減圧下で250℃で更に続けて、分子量を上げた。得られたポリマーを反応器から押し出し、ペレットに変換し、その後の使用前にペレットを減圧下で80〜90℃で一晩乾燥させた。ポリマーの特性は次の通りであった。
固有粘度:1.403dL/g
Mn:31400
Mw:61200
軟セグメントのTg:−67℃
硬セグメントのTm:170℃
%硬セグメント:28%
【0101】
以下の繊維紡糸例を実施例1のポリマーで行った。
【0102】
紡糸手順
サンドフィルター紡糸パックおよび273℃で維持された多孔紡糸口金(直径0.3mmおよび毛管深さ0.56mmの孔、表1において以下で示した孔数)を通して実施例1のポリマーを押し出した。紡糸口金を出るフィラメントストリームを21℃で空気によりクエンチし、束に収束させた。以下の表に記載された表面速度を有する転送(フィード)ロールは、以下の表1に記載された速度で延伸ロール組みに、交絡ジェットに、降下ロール組みに、および巻取りに次々に糸束を送出した。糸に関する紡糸条件を表1に記載している。得られた糸の特性を表2に記載している。
【0103】
比較例1および2は、実施例2〜9のデータとの比較のために異なる2種の市販スパンデックス糸の特性を提示している。
【0104】
表1

【0105】
表2

【0106】
(表2続き)

【0107】
表1のデータは、米国特許第6,562,457号明細書および米国特許第6,599,625号明細書で報告された速度より相当に速い商業的に実行可能な速度で、用いられたポリエーテルエステルエラストマーを本発明により糸に紡糸できたことを明確に示している。更に、比較データは、本発明の方法において得られた糸が一般的なエラストエステル特性を有していたことを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硬セグメントと軟セグメントの組み合わせ重量を基準にして、ポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメント約80〜約40重量%と、トリメチレンジカルボキシレートエステル、テトラメチレンジカルボキシレートエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された硬セグメント約20〜約60重量%とを含むポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーを提供する工程と、
(b)1つ以上の紡糸口金を通して前記エラストマーを押し出して、少なくとも2本のフィラメントを形成することにより前記エラストマーを溶融紡糸する工程と、
(c)前記フィラメントをマルチフィラメント糸に加工する工程と
を含むエラストエステルマルチフィラメント糸を調製する方法であって、前記溶融紡糸を約1200メートル/分より速い紡糸速度で行う方法。
【請求項2】
前記ジカルボキシレートがテレフタレートを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリトリメチレンエーテルエステルが、約80〜約40重量%のポリトリメチレンエーテルテレフタレート軟セグメントと約20〜約60重量%のトリメチレンテレフタレート硬セグメントとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリトリメチレンエーテルエステルが、約80〜約40重量%のポリトリメチレンエーテルテレフタレート軟セグメントと約20〜約60重量%のテトラメチレンテレフタレート硬セグメントとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチフィラメント糸が、約0.5〜約20のデニール/フィラメントを有するフィラメントを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が前記フィラメントを交絡し、巻取ることを更に含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マルチフィラメント糸がスパン延伸糸であり、延伸工程の終わりにローラで測定した時に、前記加工する工程が約1250〜約5000メートル/分の延伸速度で前記フィラメントを延伸する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スパン延伸マルチフィラメントに加工する工程が、前記フィラメントの延伸、アニーリング、交絡および巻取り工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチフィラメント糸が部分延伸糸である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が前記マルチフィラメント糸をステープルファイバーに切断する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが、艶消剤、核剤、熱安定剤、増粘剤、光学ブライトナー、顔料および酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチフィラメント糸が約100〜約600%の伸びを有するエラストエステル糸である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチフィラメント糸が約0.5〜約2.5グラム/デニールの強度を有するエラストエステル糸である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリトリメチレンエーテルジカルボキシレートエステル軟セグメント約80〜約40重量%と、トリメチレンジカルボキシレートエステルおよびテトラメチレンジカルボキシレートエステルからなる群から選択された硬セグメント約20〜約60重量%とを含むポリトリメチレンエーテルエステルのフィラメントを含むマルチフィラメントテクスチャー加工糸を調製する方法であって、(a)請求項9に記載の方法によって部分延伸マルチフィラメント糸の包装を調製する工程と、(b)前記包装から前記糸を巻き出す工程と、(c)前記フィラメントを延伸して、延伸糸を形成する工程と、(d)前記延伸糸を仮撚テクスチャー加工してテクスチャー加工糸を形成する工程と、(e)前記糸を包装上に巻取る工程とを含む方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって調製されるマルチフィラメント糸。
【請求項16】
請求項15に記載のマルチフィラメント糸を含む布地。

【公表番号】特表2010−512465(P2010−512465A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540297(P2009−540297)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/025006
【国際公開番号】WO2008/070159
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】