説明

溶解筒への金属材料の自動給送方法

【課題】溶解筒への金属材料の給送を保持容器内の溶湯レベルの検出と金属材料の溶解時間の計時とから制御して成形サイクルに対応した自動給送を可能となす。
【解決手段】金属材料の溶解筒への供給を、保持容器内の溶湯レベルの検出と金属材料の溶解時間の計時とから制御して自動化する。溶湯レベルが予め設定した基準レベル以下ではレベルセンサーOFF、基準レベル以上ではONとして、供給をレベルセンサーOFFで許容する。供給された金属材料の全溶融時間を供給時点からタイマー計時して計時完了まで次の供給を規制する。計時完了後の溶湯レベルがレベルセンサーONのときには、溶湯レベルがレベルセンサーOFFになるまで供給を待機する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶解筒に金属材料を自動給送する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒状の金属材料の溶解と溶湯の貯留保持とを分けて行う金属成形機としては、射出加熱筒の溶体保持室の上に保温貯留筒を立設し、その保温貯留筒の筒体上端に横設した加熱筒により金属材料を溶解して、溶体を保温貯留筒と溶体保持室とに貯留し、射出ロッドにより溶体を1ショツトずつ射出するものがある。また金属成形機の加熱保持筒の上に溶解筒を設置し、その溶解筒により棒状の金属材料を溶解して溶湯を加熱保持筒に蓄え、射出プランジャにより加熱保持筒から1ショツトずつ射出するものもある。
【特許文献1】特開2005−40807号公報
【特許文献2】特開2006−890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記金属成形機における溶湯の貯留保持量は、成形サイクルによる時間当たりの溶湯の消費量から決められ、その貯留保持量を金属材料の溶解により溶湯を供給して一定の範囲に維持している。また消費量は溶湯のショット数をカウントして決める場合と、注入ガスの圧力差や溶湯レベルの検出により行う場合とがあるが、その何れにおいても溶湯の供給は金属材料を溶解して行われるものであるから、溶解時間を考慮して溶解筒への金属材料の給送を行う必要がある。
【0004】
また溶湯の消費速度は、成形サイクルタイムによって異なるので、これに対応した貯留保持量を維持する必要があり、必然的に金属材料の給送時間の間隔にも長短の差が生ずるようになる。したがって、金属材料の給送を自動化するには、成形サイクルに対応した貯留保持量が不足なく維持できる金属材料の給送制御が必要となる。
【0005】
この発明は上記事情から考えられたものであって、その目的は、溶湯の保持容器内の溶湯レベルの検出と金属材料(例えば棒状やインゴット)の溶解時間の計時とから金属材料の溶解筒への給送を制御して、成形サイクルに対応した金属材料の給送が行い得る新たな自動給送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的によるこの発明は、金属材料を溶解筒により溶解して溶湯を保持容器に貯留保持し、その保持容器から金属成形機に給湯するにあたり、上記金属材料の溶解筒への給送を、保持容器内の溶湯レベルの検出と金属材料の溶解時間の計時とから制御して自動化し、溶湯レベルが予め設定した基準レベル以下ではレベルセンサーOFF、基準レベル以上ではONとして、給送をレベルセンサーOFFで許容し、給送された金属材料の全溶融時間を給送完了時点からタイマー計時して計時完了まで次の給送を規制し、計時完了後の溶湯レベルがレベルセンサーONのときには、溶湯レベルがレベルセンサーOFFになるまで給送を待機する、というものである。
【0007】
また上記自動給送の始動前に、上記基準レベルより上に設定した上位レベルまで溶湯を余剰に貯留保持し、レベルセンサーONの状態で自動給送を始動する、というものであり、上記金属材料は、マグネシウム基合金の棒状材料からなる、というものである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成では、溶解筒内の金属材料が溶解し終わって空の状態にあっても、保持容器内の溶湯レベルが基準レベル以上では、次回の金属材料の給送は行われないので溶湯の過剰供給が起こらず、成形時間の経過に伴い溶湯の貯留保持量が増して保持容器外へ溢れによるような危険も生じないことから、金属材料の給送と溶湯の貯留保持とを自動化しても安全に行うことができる。
【0009】
また金属材料の給送間隔が溶湯の時間当たりの消費量に応じて自動的に変わるので、成形サイクルに対応した溶湯の貯留保持と給湯が行え、製品によって成形サイクルがハイサイクルに変更されても、それに対応した給送間隔で金属材料の溶解筒への給送と溶湯の貯留保持とを行うことができることから、サイクル変更に際して自動給送装置の制御変更を行う必要もなく、常に成形サイクルに対応した材料給送と溶湯の貯留保持とが行え、ハイサイクル成形であっても成形途中で給湯不足を来すようなこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、射出シリンダ1の上にマグネシウム基合金などの棒状の金属材料(以下棒状材料という)を溶解して貯留保持する材料溶解保持装置2を備えた金属成形機の1例を示すものである。
【0011】
上記材料溶解保持装置2は、下端の流出口を射出シリンダ1の前面の供給口11に接続した溶湯M1 の保持容器21と、蓋部材22に並行に立設した棒状材料Mの溶解筒23,23と、蓋部材22から下向きに保持容器内に設けた溶湯のレベル検出用のセンサー24とからなる。この材料溶解保持装置2ではマグネシウム基合金などの金属の棒状材料Mを、溶解筒23,23により溶解し、その溶解により生じた溶湯M1 を溶解筒23に貯留することなく重力により保持容器21に流出させて貯留保持することができ、その保持容器21から射出シリンダ内に給湯した溶湯M1 が、射出プランジャ12の前進により図示しない金型に射出充填されて金属製品に成形される。
【0012】
上記保持容器21と溶解筒23,23は、それぞれの外周囲にバンドヒータ25,26を備え、そのバンドヒータ25,26により保持容器21と溶解筒23,23の両方が液相線温度以上の温度に加熱され、溶解筒23,23では棒状材料Mの溶解が、また保持容器21では貯留した溶湯M1 の温度が保持される。
【0013】
上記溶解筒23,23への棒状材料Mの給送は、図示しない自動給送装置によりストックヤードから2本ずつ2回に分けて溶解筒23,23の筒体上に運んだのち、筒体上端の開口から加熱されている筒体内に同時に落とし入れて行われる。筒体内に収容された棒状材料Mは既に加熱されている筒体からの輻射熱により加熱されて昇温し、液相線温度に達した外周囲から徐々に溶解して下端開口から保持容器21に流出し、最終的には4本の棒状材料M,Mの全部が溶湯M1 となって保持容器21に貯留され、湯温が液相線温度以上の温度に保持される。
【0014】
溶解筒23による加熱溶解では、筒体内に収容した2本を同時に加熱溶解する場合でも、上下の棒状材料Mの加熱に差がなく、同一条件での加熱となることから、棒状材料Mの1本当たりの全溶解時間と変わらない。この全溶解時間は一定なのに対し、成形ごとの溶湯の消費量は製品重量が同一であっても成形サイクル(成形回数/時間)の長短により増減することから、自動給送による溶解筒23,23への棒状材料Mの給送は、保持容器21における溶湯M1 の貯留保持量が消費量と常にバランスして、成形サイクルに適応した貯留保持量を維持するように制御する必要がある。
【0015】
そこで、棒状材料Mの質量及び全溶解時間と時間当たりの溶湯消費量とから、予め保持容器21内の溶湯レベルに基準レベルLoを設定し、その基準レベルLoに上記レベルセンサー24の検出端を位置させて、溶湯レベルが基準レベル以下か又は以上かを常時検出できるようにし、溶湯レベルが基準レベル以下ではレベルセンサーOFFで給送を許容し、基準レベル以上ではレベルセンサーONで給送を規制するように設定して、棒状材料Mの全溶解時間の計時との関連により溶解筒23,23への棒状材料Mの給送を制御する。
【0016】
また自動給送の始動前に、手動により棒状材料Mを溶解筒23,23に供給して溶解し、基準レベルLoより上の予め設定した上位レベルL1 まで溶湯M1 を余剰に貯留保持する。この上位レベルL1 までの余剰量は自動給送が開始された時のレベルセンサーONを維持するかぶり深さを保証する分量でよく、その上位レベルL1 までの溶湯M1 の貯留保持を完了したのち、手動による供給を自動給送に切換えて、成形作業を開始する。
【0017】
図3は、自動給送の工程を説明するフローチャートで、自動給送の開始時には、手動によるときの溶湯が上位レベルまで貯留保時されていて、溶湯レベルはレベルセンサーONの状態にあることから、溶解筒が空の状態でも棒状材料の給送は行われず、自動給送は待機となっている。
【0018】
この待機状態において、レベルセンサーによる溶湯レベルの検出が繰り返され、レベルセンサーOFFの確認(Yes,No)が行われる。成形時間の経過に伴う溶湯の消費により溶湯レベルが低下して基準レベル以下なると、これまでのレベルセンサーONがOFFとなり、その確認(Yes)により棒状材料の自動給送が開始されて、両方の溶解筒23,23に2本ずつ2回に分けて棒状材料が投入される。給送完了の確認(Yes,No)が行われて確認(Yes)となるとタイマーによる棒状材料の全溶解時間の計時が開始される。
【0019】
計時完了の確認(Yes,No)が繰り返されて完了が確認(Yes)されると、次に自動給送の停止か否かの確認(Yes,No)が行われ、(Yes)では自動給送停止となり、(No)ではレベルセンサーOFFの確認(Yes,No)に戻って、レベルセンサーOFFが(No)のときには(Yes)になるまで棒状材料の自動給送は待機となる。レベルセンサーOFFが(Yes)になると新たな棒状材料の給送に移行する。
【0020】
上記のように溶解筒への棒状材料の自動給送を、保持容器内の溶湯レベルの検出と棒状材料の全溶解時間の計時とから制御すると、溶湯レベルが基準レベル以下でも、棒状材料の全溶融時間の計時が完了していなければ新たな給送は行えないので、棒状材料を溶解筒により溶解して溶湯を保持容器に貯留保持する場合であっても、材料給送間隔が一定時間に制御されることから、溶湯の過剰供給による保持容器外への溶湯の溢れが防止される。
【0021】
また材料給送間隔は、棒状材料の全溶解時間にレベルセンサーがONからOFFになるまでの時間(消費時間)を加算した時間となるので、成形サイクルの変更により溶湯の時間当たりの消費量が変わると、それに応じて材料給送間隔の時間も自動的に変わることから、常に成形サイクルに対応した材料給送と溶湯の貯留保持とが行え、ハイサイクル成形であっても成形途中で給湯不足を来すようなこともない。
【0022】
以下にマグネシウム基合金(AZ91D)による棒状材料の給送について、その具体例を示す。
丸棒材料
長さ:300mm、 直径:60mm、 質量:1.5kg
1回の給送本数:4、 総質量:6.0kg、 製品重量:50gr
溶解温度:595℃以上、 全溶解時間:1000秒(供給能力6g/秒) 保持容器内の貯留保持量
自動運転時の溶湯量 :12kg
基準レベルの溶湯量 : 9kg
【0023】
成形サイクル:15秒 給送間隔:28分31秒 タイムラグ:90秒
経過時間 貯留保持量(kg) 給送溶解 タイマー計時
自動開始時 12.0 待機
900秒後 9.0 開始
990秒後 8.7 待機 開始
1990秒後 11.4 待機
2710秒後 9.0 開始
2800秒後 8.7 待機 開始
【0024】
成形サイクル:10秒 給送間隔:18分30秒 タイムラグ:90秒
経過時間 貯留保持量(kg) 給送溶解 タイマー計時
自動開始時 12.0 待機
600秒後 9.0 開始
690秒後 8.6 待機 開始
1690秒後 9.6 待機
1810秒後 9.0 開始
1900秒後 8.6 待機 開始
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係わる金属材料の自動給送方法を実施し得る射出シリンダ上に材料溶解保持装置を備えた金属成形機の要部縦断側面図である。
【図2】同上の材料溶解保持装置の縦断正面図である。
【図3】この発明に係わる金属材料の自動給送方法のフローチャートによる説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 射出シリンダ
2 材料溶解保持装置
21 保持容器
22 蓋部材
23 溶解筒
24 レベルセンサー
25,26 バンドヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を溶解筒により溶解して溶湯を保持容器に貯留保持し、その保持容器から金属成形機に給湯するにあたり、
上記金属材料の溶解筒への給送を、保持容器内の溶湯レベルの検出と金属材料の溶解時間の計時とから制御して自動化し、
溶湯レベルが予め設定した基準レベル以下ではレベルセンサーOFF、基準レベル以上ではONとして、給送をレベルセンサーOFFで許容し、
給送された金属材料の全溶融時間を供給完了時点からタイマー計時して計時完了まで次の給送を規制し、
計時完了後の溶湯レベルがレベルセンサーONのときには、溶湯レベルがレベルセンサーOFFになるまで給送を待機することを特徴とする溶解筒への金属材料の自動給送方法。
【請求項2】
上記自動給送の始動前に、上記基準レベルより上に設定した上位レベルまで溶湯を余剰に貯留保持し、レベルセンサーONの状態で自動給送を始動することを特徴とする溶解筒への金属材料の自動給送方法。
【請求項3】
上記金属材料は、マグネシウム基合金の棒状材料からなることを特徴とする請求項1記載の溶解筒への金属材料の自動給送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202177(P2009−202177A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44639(P2008−44639)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)