説明

滅菌放射線を用いた治療用流体の病原体不活性化のためのデバイスおよび方法

【課題】低い放射線浸入度を有する高い光学密度の流体を均一に照射する際に極めて有効な、連続的なフローデバイスおよび方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、放射線量の均一性およびデバイス内の流体の狭い滞留時間の分布を示しつつ、連続的なフローの配置で滅菌放射線を用いて治療用流体中の病原体を不活性化するためのデバイスおよび方法に関する。デバイス10は、管12内に配置された同心円の円筒形ローターを有する放射線透過性の円筒形の管12を備え、それによってそれらの間に細い間隙16を提供する。流体出口26を有する頂部プレート18および流体入口24を有するを有する底部プレート20は、円筒形の管12をシールする。入口24および出口26は、両方とも細い間隙と流体連通している。ローターシャフト36は、円筒形のローター14を通じて軸方向に配置されており、そしてモーター30に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ヒト血漿における種々の病原体(例えば、ウイルス)を不活性化するための、滅菌放射線を用いた生物学的流体の処理に関する。特に、本発明は、放射線量の均一性を示しながら、連続的なフローの配置で滅菌放射線を用いて治療用流体中の病原体を不活性化するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
輸血および輸液医学分野において、有益な流体が、治療目的で患者に導入される。これらの流体の多くは、生物起源の流体(例えば、血液、血漿、または血液もしくは血漿の種々のフラクション)である。例えば、血液の凝固を促進し生命を脅かす出血を防ぐ血漿タンパク質第VIII因子が、この第VIII因子を欠く血友病患者の止血を維持するために用いられる。別の例は、血漿由来免疫グロブリンである。これは、患者の免疫性防御を強化および補充するために用いられる。ドナーの血液が保有する病原体(例えば、ウイルスおよび他の微生物)によるこのような流体の汚染は、患者の健康にとって有害であり得、そして患者の死さえも引き起こし得る。従って、これらの流体が患者に導入される前に、これらの病原体を実質的に消滅させる方法が実施されなければならず、一方でこの病原体不活性化プロセスの間、有用な流体成分の変性を最小限に抑えなければならない。
【0003】
病原体を不活性化するための既存の方法として、脂質で覆われているウイルスを不活性化するための界面活性剤処理、熱処理、および種々のウイルス性物質を無害にするための化学処理ならびに光化学処理が挙げられる。いくつかの光化学処理法は、米国特許第5,683,661号、同第5,854,967号、同第5,972,593号、およびそれらに引用されている参考文献に記載されている。しかし、これらの方法は、大容量で連続的な処理の適用(例えば、第VIII因子または免疫グロブリンの製造用の生産ライン)の助けとほとんどならない傾向がある。これらの方法はまた、高価でもある。
【0004】
短い紫外(UV)の波長の形態での滅菌放射線、γ線または電子線(β)照射は、広範な病原体の不活性化に有効であることが見出された。滅菌放射線プロセスの使用は、代表的に化学処理よりも経済的である。滅菌放射線は、病原体の遺伝的な核酸(DNA)の結合を切断し得る電磁放射線と定義される。代表的に核酸は、処理されたタンパク質産物よりも滅菌放射線による損傷に対する感受性がずっと大きい。
【0005】
特許文献1は、紫外線を用いた生物学的流体のバッチ処理のための装置について記載している。しかし、開示されたこのバッチ処理法は、空間的に不均等な様式での流体の照射を引き起こす。さらに開示された無作為で無秩序な攪拌プロセスが、種々の流体成分に対する広範な照射時間の原因となる。この不均等な照射は、一貫性のない放射線量の原因となり得、非効果的な病原体の除去(照射不足)または有益な生物学的物質に対する損傷(過剰照射)を引き起こし得る。
【0006】
生物学的流体の照射のための連続的なフロープロセスは、バッチ処理よりも有効であり、そして大容量の生産の助けとなる。一貫した滅菌放射線照射場を伴う連続的なフロープロセスにおいて、流体の移行時間、滞留時間は、流体によって受け取られた放射線量に直接的に関連する。従って、連続的なフロー処理プロセスは、流体要素の滞留時間の分布が、可能な限り狭いことを必要とする。バッチプロセスとの類似性から、短い滞留時間の分布は、不充分な不活性化線量の放射の原因となり、そして長い滞留時間の分布は、有益な生物学的物質の効能の損傷および減少の原因となり得る。
【0007】
現在の連続的なフロー法は、チャネルにおける流体フローに関する。このような流体フローに対して放物線状の速度プロフィールが存在する。このプロフィールにおいて、チャネルの中央の流体は、最大速度で移動し、そしてチャネル壁に近い流体は、ほとんど静止状態を維持する。従って、滞留時間は、中央での最大速度に対しては最も短く、そして中央から半径方向外側へ移動するフロープロフィールの連続部分に対して増加する。乱流または機械的な攪拌の非存在下でにおいて、チャネル壁付近の流体量は、極めて長い滞留時間を有する。従って、このチャネル壁付近の体積流量は、放射線への過剰照射の危険を伴う。さらに、特定のチャネル壁が、放射線源の近位側にある場合、生物学的流体の極めて重篤な過剰照射が生じ得る。
【0008】
滞留時間の分布に加えて、種々の生物学的流体への滅菌放射線の浸入度もまた、流体の一貫した放射線量を制御する因子である。特定の生物学的流体の光学密度に依存して、流体への滅菌放射線の透過は、極めて浅くなり得る。このことは、低度または中程度のエネルギーで加速された電子かまたは短い波長のUV線の場合において、特にあてはまる。例えば、200Kevの電子の水への浸入度は、0.5mm(20mils)よりも小さい。同様に250nmの波長のUV線は、約75ミクロン(約3mils)の浸入度のヒト血漿において強度の半分を失う。従って、比較的薄い流体フロー通路が、流体に対するより均一な放射線量を提供することに関して有利であり得る。
【0009】
国際出願番号第PCT/GB97/01454号は、円筒形の流体通路内に配置された、液体の混合を容易にするための静的なミキサーを利用するUV照射装置を記載している。この装置はまた、流体温度を制御するための熱交換器を組み込み、照射時の局在化した加熱を防止する。この局在化した加熱は、その称するところでは、物質の不溶性粒子の形成の原因となる。これらの粒子は病原体をUV線から遮蔽し得る。従って、’01454号特許出願は、これらの粒子が形成する可能性を減少させるために、熱交換器を提供している。しかし、この装置は、流体の滞留時間分布の制御よりも流体温度の制御に焦点を合わせている。静的なミキサーの存在は流動抵抗を増加させ、そして流体の滞留時間の分布に対する深刻な逆効果を有し、また流体フローの圧力水頭を有意に増加させ、それによってこのデバイスが大容量のスループットの助けとほとんどならない。さらに、スクリューチャネル間で形成される深いチャネルが、流体の混合にも関わらず、流体の不均等な放射線量の助けとなる。この装置は、浅い浸入度に起因する不均等量の照射を扱うための制御された方法を提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,133,932号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、低い放射線浸入度を有する高い光学密度の流体を均一に照射する際に極めて有効な、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することは、本発明の目的である。
【0012】
高い光学密度を有する流体に対するより均一な放射線照射を促進する流体の制御および予想可能な混合を用いた、滅菌放射線による生物学的流体の病原体不活性化のための連続的なフローデバイスおよび方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0013】
流体フローにおける最小限の圧力低下を伴う流体の放射状の混合を提供する連続的なフローデバイスおよび方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0014】
デバイス内の流体の均一で狭い滞留時間の分布を提供することによって、放射線照射に対するさらに別の制御を提供する、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することもまた、本発明の目的である。
【0015】
最小限の空気/流体界面を有することによって、流体中のタンパク質分解を最小限に抑える、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0016】
剪断応力および高タンパク質流体生成物の剪断誘導性分解を最小限に抑える、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0017】
拡張性があり、従って生産ラインを製造する助けとなる大容量のスループットが可能である、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0018】
経済的で費用効果のある連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0019】
種々の異なる放射線源に適合可能である連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0020】
洗浄の容易さを可能にする連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
バリデーション、すなわち、科学的な原理を通じた有効性、再現性および信頼性の実証が可能である、連続的なフローデバイスおよび方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0022】
これらおよび他の目的は、本明細書の説明および図面を検討した後に容易に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の要旨)
本発明は、放射線量の均一性およびこのデバイス内の流体の滞留時間の狭い分布を示す連続的なフローの通路の配置における滅菌放射線を用いた生物学的流体中の病原体を不活性化するためのデバイスおよび方法を提供する。このデバイスはまた、二次流れの生成を通じた制御された予測可能な流体の回転を提供する。この回転は、流体の放射線照射の制御に寄与する。このデバイスは、高い光学密度を有する流体に放射線量の均一性を提供することに関して特に有効である。
【0024】
このデバイスは、管(tube)内に配置された同心性の円筒形ローターを有する放射線透過性の円筒形の管を備え、これによって、それらの間に比較的細い間隙を提供する。頂部(top plate)プレートおよび底部プレート(bottom plate)は、この管をシールする。頂部プレートおよび底部プレートは、タイロッド(tie rod)で共に保持される。底部プレートは、管とローターとの間の細い間隙と流体連通した流体入口(fluid inlet)を有する。頂部プレートは、同様に管とローターとの間の間隙と流体連通した流体出口(fluid outlet)を有する。底部プレートは、基盤(base)に固定されており、基盤は、ドライブコントローラおよびドライブシャフトを有するモーターを備える。ローターシャフトは、円筒形のローターを通じて軸方向に配置されており、そして底部プレート上のローター開口部を通って延びている。このローターシャフトはまた、基盤上の開口部を通って延びており、そしてこのモーターのドライブシャフト上のローターシャフトギアおよびモーターギアを介して、モーターと機械的に連結されている。
【0025】
ポンプまたは他の手段は、底部プレートの入口から頂部プレートの出口への、このデバイスを通過する流体のフローを提供する。流体がこのデバイスを通って上方向へ流れるとき、放射線源は、管を通じて流体を滅菌照射する。放射線源は、特定の流体に対して最適な波長で、滅菌UV線を提供する。管とローターとの間の間隙は、流体フロー中での最小限の圧力降下を伴う高流量の流体を提供するために設計されている。流体が流れるとき、モーターはローターを駆動し、テイラー渦(vortex)の形態で流体中に二次流れを与え、この二次流れが、管により近い流体とローターにより近い流体とを交換する。このテイラー渦(vortex)により引き起こされる制御される予測可能な混合は、このデバイスを通じて流れる流体の均一な放射線量を提供する。このデバイスはまた、デバイス内の流体の滞留時間の狭い分布を示す。
【0026】
別の実施形態において、このデバイスは、放射線透過性の平坦な頂部表面を有する相対的に平坦で剛性の流体チャンバー、内部底部表面ならびに流体入口および流体出口を備える。このチャンバーは、流体入口から外向きに突出している角度付けられた側表面を有し、そしてこの側表面は、入口を通って流れる流体のためのディフューザー(diffuser)を形成している。このチャンバーの出口はまた、角度付けられた側表面で構成されており、出口での圧力水頭を減少させ得る。放射線源は、チャンバーの頂部表面に隣接して提供される。カスケード上部表面(cascading upper surface)を有するカスケード基盤(cascading base)は、流体チャンバー内の内部底部表面上に配置される。このカスケード上部表面は、流体チャンバーを通って流れるときに、流体に対するカスケード効果を生成する複数のハンプ(hump)を有する。流体がチャンバーを通って流れるとき、流体の薄膜が各ハンプに覆い被さり、そして高透明度のプレートを通過する放射線に曝される。カスケード基盤の幾何学は、ウズ(eddy)形成の形態で流体中に二次流れを与える。このウズ(eddy)形成は、流体の制御された予測可能な混合を提供し、流体の均一な放射線照射を保証する。
【0027】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
【0028】
(項目1) 流体中の病原体を不活性化するためのデバイスであって、以下:
流体フロー中の流体と流体連通している放射線透過性容器;
該容器内に配置されたミキサーであって、該流体の制御された予測可能な混合を提供するミキサー;および
該容器から固定された距離に配置された放射線源であって、ここで、該放射線源が、該容器を通って移動する該流体を照射する、放射線源
を備える、デバイス。
【0029】
(項目2) 上記放射線透過性容器が、石英から作製される、項目1に記載のデバイス。
【0030】
(項目3) 上記放射線透過性容器が、ポリ(メチルペンテン)から作製される、項目1に記載のデバイス。
【0031】
(項目4) 上記放射線源が、紫外線源である、項目1に記載のデバイス。
【0032】
(項目5) 上記放射線源が、電離紫外線レーザーである、項目1に記載のデバイス。
【0033】
(項目6) 上記電離紫外線レーザーが、パルスレーザーである、項目5に記載のデバイス。
【0034】
(項目7) 上記電離紫外線レーザーが、およそ240nmと260nmとの間の紫外光放射を生じる、項目5に記載のデバイス。
【0035】
(項目8) 項目7に記載のデバイスであって、上記紫外光放射のエネルギーが、0.1Jよりも大きい、デバイス。
【0036】
(項目9) 流体中の病原体を不活性化するためのデバイスであって、以下:
流体フロー中の流体と流体連通している放射線透過性容器;
該容器内に配置されたミキサーであって、該ミキサーと該容器との間に間隙を形成し、ここで、該ミキサーが、該間隙を通って移動する該流体フロー内に二次流れを与える、ミキサー;および
該容器から固定された距離に配置された滅菌紫外線源であって、該間隙を通って移動する該流体を照射する、紫外線源
を備える、デバイス。
【0037】
(項目10) 上記ミキサーが、回転シリンダーを備える、項目9に記載のデバイス。
【0038】
(項目11) 上記ミキサーが、カスケード表面を備える、項目9に記載のデバイス。
【0039】
(項目12) 上記二次流れが、テイラー渦(vortex)である、項目9に記載のデバイス。
【0040】
(項目13) 上記二次流れが、幾何学的に誘導されるウズ(eddy)形態である、項目9に記載のデバイス。
【0041】
(項目14) 上記滅菌紫外線源が、紫外線レーザーである、項目9に記載のデバイス。
【0042】
(項目15) 上記紫外線レーザーが、およそ240nmと260nmとの間の紫外光放射を生じる、項目14に記載のデバイス。
【0043】
(項目16) 上記紫外光放射のエネルギーが、0.1Jよりも大きい、項目15に記載のデバイス。
【0044】
(項目17) 流体中の病原体を不活性化するためのデバイスであって、以下:
内部表面、流体入口、流体出口を有するシールされた放射線透過性の中空のシリンダーであって、該流体入口および該流体出口が流体フロー中の流体と流体連通している、放射線透過性の中空のシリンダー;
該シリンダー内に同心的に配置されている円筒形ローターであって、これによって該ローターと該中空シリンダーの内部表面との間に間隙を形成する、円筒形ローター;
該円筒形ローターに連結されたローターシャフト;
該ローターシャフトに機械的に連結され、そして該シリンダー内で該ローターの回転を与え得るモーターであって、ここで、該ローターの回転が、該間隙を通って移動する該流体フロー内にテイラー渦(vortex)を与える、モーター;および
該間隙を通って移動する該流体を照射する、該シリンダーから固定された距離に配置された滅菌放射線源
を備える、デバイス。
【0045】
(項目18) 上記シリンダーが、垂直位置にある、項目17に記載のデバイス。
【0046】
(項目19) 上記シリンダーが、水平位置にある、項目17に記載のデバイス。
【0047】
(項目20) 上記シリンダーが、頂部プレートおよび底部プレートでシールされる、項目17に記載のデバイス。
【0048】
(項目21) 項目20に記載のデバイスであって、上記流体出口が上記頂部プレートを通過し、そして上記流体入口が上記底部プレートを通過する、デバイス。
【0049】
(項目22) 上記ローターが、およそ毎分0回転と毎分200回転との間の速度で回転する、項目17に記載のデバイス。
【0050】
(項目23) 上記ローターが、およそ毎分0回転と毎分100回転との間の速度で回転する、項目17に記載のデバイス。
【0051】
(項目24) 上記ローターが、およそ毎分50回転と毎分100回転との間の速度で回転する、項目17に記載のデバイス。
【0052】
(項目25) 上記ローターが、該ローター上に放射線反射コーティングを有する、項目17に記載のデバイス。
【0053】
(項目26) 上記ローターが、放射線反射物質から作製される、項目17に記載のデバイス。
【0054】
(項目27) 流体中の病原体を不活性化するためのデバイスであって、以下:
流体フロー中の流体と流体連通している放射線透過性容器であって、該容器が、該容器の流体通路を通って移動する該流体フロー中に二次流れを与えるカスケード表面を備える流体通路を規定する、放射線透過性容器;および
該容器から固定された距離に配置された滅菌放射線源であって、該容器の流体通路を通って移動する該流体を照射する、放射線源
を備える、デバイス。
【0055】
(項目28) 上記滅菌放射線源が、紫外線レーザーである、項目27に記載のデバイス。
【0056】
(項目29) 上記紫外線レーザーが、パルスレーザーである、項目28に記載のデバイス。
【0057】
(項目30) 上記滅菌放射線源が、およそ240nmと260nmとの間の紫外光放射を生じる、項目27に記載のデバイス。
【0058】
(項目31) 上記紫外光放射のエネルギーが、0.1Jよりも大きい、項目30に記載のデバイス。
【0059】
(項目32) 上記容器が、平坦な頂面を有する長方形型を有する、項目27に記載のデバイス。
【0060】
(項目33) 上記平坦な頂面が石英から作製される、項目32に記載のデバイス。
【0061】
(項目34) 上記平坦な頂面が、ポリ(メチルペンテン)である、項目32に記載のデバイス。
【0062】
(項目35) 上記容器の上記カスケード表面が、放射線反射物質でコーティングされている、項目27に記載のデバイス。
【0063】
(項目36) 上記容器の上記カスケード表面が、放射線反射物質から作製される、項目27に記載のデバイス。
【0064】
(項目37) 連続的なフローの配置で滅菌放射線によって流体中の病原体を不活性化するための方法であって、以下の工程:
連続的な流体フロー中の流体のための流体通路を形成する工程;
該流体通路内の該流体の二次流れを与える工程;および
該流体通路内の該流体を照射する工程、
を包含する、方法。
【0065】
(項目38) 項目37に記載の方法であって、上記与えられた二次流れが、該流体フローの細い流体通路内でのテイラー渦(vortex)である、方法。
【0066】
(項目39) 項目37に記載の方法であって、上記与えられた二次流れが、幾何学的に誘導されるウズ(eddy)形態である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本明細書に記載される、滅菌放射線を用いて治療用流体中の病原体を不活性化するためのデバイスの断面側面立体図である。
【図2】図2は、図1に示されるデバイスの上面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態の部分的な断面側面図である。
【図4】図4は、図3に示されるデバイスの部分的な断面上面図であり、デバイスの入口に隣接する角度付けられた側表面を示す。
【図5】図5は、200nmと350nmとの間のUV波長での、42倍希釈されたヒト血漿の紫外線吸収率を表わすグラフである。
【図6】図6は、20、40、および100の吸光度での光の強度を浸入度の関数として表わすグラフである。
【図7】図7は、図1および図2に示されるデバイスの流体チャンバー内に配置されたローターの種々のRPMにて、デバイスを通って流れる流体に対する滞留時間の分布を示すグラフである。
【図8】図8は、所定の流量での、図1および図2で示されたデバイス内の流体の滞留時間の80%を算出する方法を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
(発明の詳細な説明)
本発明は、添付の図面を参照して本明細書後半で完全に記載され、その中で特定の実施形態が示されているが、一方で当業者が本明細書に記載される発明を改変し得るがなお本発明の所望の結果を達成し得ることが最初から理解される。従って、以下の説明は、適切な分野の当業者に向けられた広範な参考となる開示であって、本発明の限定ではないと理解されるべきである。図1および図2を参照すると、デバイス10は、デバイス10を通って流れる流体を均一に照射するために提供される。このデバイス10は、管12内に配置された同心円の円筒形ローターを有する放射線透過性の円筒形の管12を備え、それによってそれらの間に細い間隙16を提供する。円筒形の管12は、特定の流体を滅菌するために用いられる放射線のタイプに対して高度に透明である。好ましくは、この円筒形の管12は、溶融石英またはポリ(メチルペンテン)から作製される。頂部プレート18および底部プレート20は、円筒形の管12をシールする。頂部プレート18および底部プレート20は、1つ以上のタイロッド22を用いて共に保持される。底部プレート20は、円筒形の管12とローター14との間の細い間隙16と流体連通した流体入口24を備える。頂部プレート18は、同様に円筒形の管12とローター14との間の薄い間隙16と流体連通した流体出口26を備える。流体のフロー方向は、図1における矢印AおよびBにより示される。しかし、流体入口24および流体出口26は、円筒形の管12の任意の位置で提供される。頂部プレート18および底部プレート20は、シリンダーと頂部プレート18ならびにシリンダーと底部プレート20との間の液密シールを提供するように設計される。圧縮型のシールを提供するのに適切な硬度(durometer)を有するo−リング、グロメット(grommet)または他の形態の材料(示されていない)が、シールを提供するために用いられ得る。
【0069】
底部プレート20は、基盤28に固定されており、基盤は、ドライブコントローラ30およびドライブシャフト34を有するモーター32を備える。ローターシャフト36は、円筒形のローター14を通じて軸方向に配置されており、そして底部プレート20のローター開口部38を通って伸びている。ローターシール39は、ローターシャフト36の周囲およびローター開口部38内に同心円状に配置されている。ローターシール39は、流体が円筒形の管12から漏れるのを防ぐ。ローターシャフト36はまた、基盤28上の開口部40を通って延びており、そしてこのモーター32のドライブシャフト34上のローターシャフトギア42およびモーターギア44を介して、モーター32と機械的に連結されている。あるいは、モーター32は、ローターシャフト36に直接的に連結されている。この構成において、モーター32は、直立位置(upright position)に取りつけられており、そしてローターシャフト36とインラインである。
【0070】
ポンプ(示されていない)または他の手段は、底部プレート20の入口24から頂部プレート18の出口26への、このデバイス10を通過する流体のフローを提供する。流体がこのデバイス10の円筒形の管12を通って上方向へ流れるとき、放射線源(示されていない)は、円筒形の管12を通じて流体を照射(矢印Cにより示される)する。あるいは、流体入口24および流体出口26は、管12上の任意の位置に提供され、任意の方向の流体フローを提供し得る。円筒形の管12とローター14との間の間隙16は、デバイス10を通過する流体の高流量および最小限の圧力低下の助けとなる比較的細い流体通路を提供する。流体が流れるとき、モーター30はローター14を駆動し、テイラー渦(vortex)の形態で流体に二次流れを与え、この二次流れが、円筒形の管12により近い流体とローター14により近い流体とを交換する。流体通路とテイラー渦(vortex)により引き起こされる混合との組合せは、デバイス10内の流体の滞留時間の狭い分布を提供する。
【0071】
デバイス10のローター14は、UV反射物質(例えば、金属酸化物)でコーティングされるかまたはUV反射物質をプリントされており、流体の均一な放射線照射を提供することに関してさらなる助けとなる。好ましくは、このコーティングは、酸化マグネシウムかまたは酸化チタンである。さらに、光ファイバー技術が、このデバイス10のローター14に組み込まれて、放射線源からの管12を通じた放射線と共に、ローターからの放射線を提供する。この配置は、流体フローの2つの側からの流体の照射を提供する。
【0072】
図3は、デバイス110の形態の別の実施形態を示す。デバイス110は、内部に流体チャンバー113を規定する、相対的に平坦で剛性な流体チャンバーハウジング112を備える。この流体チャンバーハウジング112は、放射線透過性の平坦な頂部表面114、流体入口116および流体出口118を有する。このチャンバー113は、流体入口116から外向きに突出している、角度付けられた側表面120および122を有し、そして図4に示すように、入口116を通って流れる流体のためのディフューザー124を形成している。このチャンバーハウジング112の出口118はまた、角度付けられた側表面で構成されており、出口116での圧力水頭を減少させ得る。流体チャンバーハウジング112の平坦な頂部表面114は、特定の流体を滅菌するための用いられる放射線のタイプに対して高度に透明である材料から作製される。カスケード基盤126は、流体チャンバー113の底部を含む。カスケード基盤126は、流体チャンバー113内に配置されたカスケード上部表面128を有する。このカスケード上部表面128は、流体チャンバー113を通って流れるときに、流体に対するカスケード効果を生成する複数のハンプ130を有する。
【0073】
流体がチャンバー113を通って流れるとき、流体の薄膜が各ハンプ130に覆い被さり、そして高透明度の頂部表面114を通過する放射線(図3において矢印Cにより示される)に曝される。カスケード基盤126は、ウズ(eddy)形成の形態で流体中に二次流れを与える。このウズ(eddy)形成は、流体の制御された予測可能な混合を提供し、流体チャンバー113内の流体の均一な放射線照射を保証する。
【0074】
カスケード基盤126は、種々の一般に入手可能なプラスチック(例えば、ABS、改質アクリル樹脂および改質PET)から射出成形され得る。これらの樹脂はまた、UV照射に対して高度な反射性を有する色素(例えば、無機酸化物)とブレンドされ得る。あるいは、カスケード上部表面128は、UV反射物質(例えば、金属酸化物)でコーティングされるかまたはプリントされ、流体の均一な放射線照射を提供することに関してさらなる助けとなる。好ましくは、このコーティングは、酸化マグネシウムまたは酸化チタンである。
【0075】
流体を滅菌するために用いられる放射線源は、好ましくは紫外線(UV)源(例えば、電離UVレーザーまたはパルスレーザー)である。しかし、γ線または電子(β)線もまた用いられ得る。滅菌放射線のタイプは、滅菌される特定の流体に基き変化し得る。滅菌放射線のこれらのタイプの全ては、広範な病原体に対して有効であることが見出されている。図5で示されるグラフは、UV線に対する波長の範囲にわたるヒト血漿の吸収性を表わす。好ましくは、240nmと250nmとの間の波長を有するUV線が、ヒト血漿を処理するために用いられる。
【0076】
多くの生物学的流体への滅菌放射線の浸入度は、極めて浅い。図6は、20、40、および100の吸光度(absorbance)での光の強度を浸入度の関数として表わすグラスを示す。250nmの波長でのUV線は、約0.15mm(6mils)の浸入度のヒト血漿において強度の半分を失う。このことは、流体中での(特に、流体チャンバー壁での)非均一な放射線量の分布をもたらし得る。デバイス10により流体中に与えられるテイラー渦(vortex)およびデバイス110のカスケード基盤126により与えられるウズ(eddy)形形成は、この効果を実質的に最小化し、それによってより均一な流体の放射線照射を提供する。従って、これらのデバイスは、高い光学密度を有する流体に均一な放射線量を提供することに関して特に有効である。
【0077】
デバイス10内の流体の滞留時間の分布における減少は、以下の実施例により実証される。
【実施例】
【0078】
(実施例)
少量の青色色素溶液を、流体流がデバイスに侵入するときに流体流に注入した。この青色色素を用いて、デバイス内の流体の滞留時間を分光光度計を使用して測定した。流体流がデバイスの流体出口を通って出るときに流体流の吸光度を、時間の関数としてモニターした。吸光度を、データ取得システムに備え付けられたフロースルー分光光度計を用いてモニターした。特別な注入弁(injector valve)を用いて、反復ごとに同量の色素が用いられることを保証した。グリセロール−水溶液を用いて、血漿の流動抵抗(4℃にて約3cp)をシミュレートした。測定されたグリセロール−水溶液の流動抵抗は、2.77cpであった。この実験に関して、流量は、102ml/分であり、そしてローターとシリンダーとの間の間隙は、0.1088インチであった。吸光度の読み出しを、0.5秒ごとに行った。
【0079】
図7に示されるグラフは、この実験の結果を図示し、この結果を表1において表にする。
【0080】
【表1】

【0081】
収集された吸光度−時間のデータを、以下のように分析した。正規化された分布A(t)を、以下の式を用いて生分布R(t)からまず算出した。
【0082】
【数1】

【0083】
ここで、Δtは、吸光度の読み出し間の時間である。次いで平均滞留時間μを以下のように算出した。
【0084】
【数2】

【0085】
標準偏差は、A(t)の二次モーメントの平方根:
【0086】
【数3】

【0087】
として本明細書中で定義される。歪度の係数(分布の非対称性の尺度)は、以下のように定義される。
【0088】
【数4】

【0089】
ここで、mは、A(t)の三次モーメントである。
【0090】
【数5】

【0091】
テイラー渦(vortex)が存在するか否かを決定するテイラー数は、以下から与えられる。
【0092】
【数6】

【0093】
ここで、ωはローターの角速度であり、gは間隙であり、ηは管半径に対するローター半径の比であり、そしてνは流体の動粘性率である。渦(vortex)は、1724以上のテイラー数で存在する。
【0094】
図7のグラフの上部にあるバーは、流量102ml/分でのデバイス10内の流体の滞留時間の80%を表わす。これらの時間の決定方法は、図8に例示目的で図示されている。図8に示される曲線は、図7で示された50rpmの曲線である。この例は、デバイスのローターが0rpmと100rpmとの間で作動した場合に、最も短い滞留時間の分布が達成されたことを証明する。
【0095】
特定の実施形態が説明および記載されているが、多くの改変が、本発明の精神から大きく逸脱することなく想到され、そして保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−98222(P2011−98222A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−25482(P2011−25482)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【分割の表示】特願2001−554721(P2001−554721)の分割
【原出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】