説明

滑り性に優れた板の製造方法

【課題】商品陳列棚用等に好適に利用可能な、長期間にわたる滑り性に優れた板を提供する。
【解決手段】本発明は、平板表面に、動摩擦係数が0.3以下の凹凸模様塗膜を形成する滑り性に優れた板の製造方法において、前記凹凸模様塗膜が以下の形状を有することを特徴とする滑り性に優れた板の製造方法である。
(1)実質的に均一な深さと高さを有する凹凸模様であること。
(2)凸部間の少なくとも一部分が連結した網目構造の凹凸模様であること。
(3)凸部と凹部の高さの差が10〜500μmであること。
(4)凸部間の平均幅が500〜2000μmであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り性に優れた表面を有する板の製造方法に関し、更に詳しくは、商品陳列棚等における棚に載せた商品などの物体を持ち上げて移動させることなく、手で滑らすことにより、あるいは、棚を傾斜させることにより、容易に棚に載せた物体を移動させることが可能な、棚用として好適な板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品陳列棚に載せた商品は、模様替えや商品の一部が売れて商品スペースが生じた際、通常、商品陳列棚に載せた商品を、手で持ち上げて移動させたり、前記スペースに商品を補充したりしていた。しかしながら、手で商品を持ち上げて移動させたり、補充したりする方法は、多くの労力と時間を必要とする問題点があった。
【0003】
そこで、これら問題点を解消した棚として、多数のローラーを並列して回転自在に架設した商品陳列棚(例えば、特許文献1)が知られている。しかしながら、商品の大きさや、形状に応じて、ローラーの径を調整しないと、ローラー間で商品の引っ掛かり等が生じ、移動がスムーズにいかず、メンテナンスも必要で、コスト高となる問題点があった。さらに、冷蔵の商品陳列棚に適用した場合、ローラー間に結露による氷や、ホコリが固着しやすく、ローラーの回転に支障をきたすことがしばしば生じる問題点があった。
【0004】
また、金属板表面に、ポリオレフィン系粉末を含有する塗膜を施した滑り板(例えば、特許文献2)が知られている。しかしながら、この方法は、初期の滑り性に優れるものの、その上に載せられる物体と広く面接触して滑るため、棚上への塵の堆積による抵抗が大きくなり、塗膜が摩耗しやすく、金属板の滑り性を長期間維持することは困難であると同時にポリエチレン容器(例えば、サラダ油容器)は滑らないという問題点があった。
【0005】
従って、棚等に適用した場合に、簡便で、物体の大きさや、形状、質量にかかわらず、前述の問題点を解消した、長期間にわたる滑り性の優れた板が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−29186号公報
【特許文献2】特開2006−88563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたものであり、物体の大きさや、形状、質量にかかわらず、板に載せた物体を持ち上げることなく、容易に移動させることが可能な、長期間にわたる滑り性に優れた板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を達成するため、鋭意検討した結果、以下の板により上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明は、平板表面に、動摩擦係数が0.3以下の凹凸模様塗膜を形成する滑り性に優れた板の製造方法において、前記凹凸模様塗膜が以下の形状を有することを特徴とする滑り性に優れた板の製造方法である。
(1)実質的に均一な深さと高さを有する凹凸模様であること。
(2)凸部間の少なくとも一部分が連結した網目構造の凹凸模様であること。
(3)凸部と凹部の高さの差が10〜500μmであること。
(4)凸部間の平均幅が500〜2000μmであること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の凹凸模様塗膜が形成された板は長期間にわたり滑り性に優れ、また、塗装作業性、棚板の構成的にも複雑でないので、商品陳列棚等の各種棚に好適に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用する平板としては金属板が好ましく、金属板としては、冷延鋼板や、熱延鋼板、炭素鋼板、亜鉛メッキ等のメッキ処理を施した鋼板、ステンレス板、アルミニウム板等の各種金属平板が、特に制限なく利用できる。
【0012】
これら金属板は、必要に応じて、水洗や、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研磨、クロメート処理もしくはリン酸亜鉛処理等の前処理を施したもの、後述する凹凸模様塗膜との密着性や、金属板の耐食性等を改良するために、例えば、ポリエステル樹脂系や、エポキシ樹脂系等のプライマーを施したもの、あるいは、これら前処理とプライマーの両方を施したものであってもよい。
【0013】
本発明で使用する凹凸模様塗膜を形成する塗料としては、焼付硬化型や、あるいは、紫外線等の活性エネルギー線硬化型など各種塗料が利用できる。
【0014】
代表的な塗料の構成は、バインダー樹脂(重合により樹脂を形成するオリゴマーを含む。)と模様形成剤としてのセルロースエステル樹脂あるいはアクリル樹脂粉末とを必須成分とし、目的に応じて各種顔料、その他各種添加剤などの成分を配合したものから構成される。
【0015】
前記バインダー樹脂としては、例えば、フッ素樹脂や、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、あるいは、これらのシリコーン変性樹脂等の通常粉体塗料用として使用されている各種樹脂が挙げられる。これらバインダー樹脂は、2種以上の混合物であってもよく、必要に応じて、これら樹脂は、ポリイソシアネート、メラミン樹脂等の架橋剤や硬化促進剤と併用して使用される。
【0016】
前記セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂粉末は、形成される塗膜に滑り性を付与するために、必須成分として配合するものであり、そのためには一定の形状を有する模様を形成する必要がある。
【0017】
セルロースエステル樹脂としては、例えば、セルロース・アセテート、セルロース・アセテート・ブチレート、セルロース・アセテート・プロピオネートなどが代表的なものとして挙げられる。
【0018】
アクリル樹脂粉末としては、例えば、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの共重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの共重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸エチルの共重合体樹脂粉末などが代表的なものとして挙げられる。
【0019】
これらセルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂粉末の平均粒径は、10〜500μm、好ましくは、100〜300μmが適当である。なお、平均粒径が、前記範囲より小さいと塗膜に滑り性を付与する模様が形成されず、逆に大きすぎても適切な模様が形成されない傾向がある。
【0020】
顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニンブルー等の着色顔料や、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、カオリン、クレー等の体質顔料などが代表的なものとして挙げられる。
【0021】
添加剤としては、例えば、顔料分散剤や、レベリング剤、紫外線吸収剤、抗菌剤など、通常塗料用として使用されている各種添加剤が挙げられる。
【0022】
凹凸模様塗膜を形成する塗料は、これら成分から構成されるが、これら各成分の配合割合は、バインダー樹脂が、30〜95質量%、好ましくは、40〜90質量%が適当であり、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂粉末が、0.1〜10質量%、好ましくは、0.2〜3質量%が適当であり、顔料は、0〜60質量%が適当であり、添加剤は、0〜10質量%が適当である。
【0023】
なお、バインダー樹脂が、前記範囲より少ないと形成される凹凸模様塗膜の耐摩耗性等の物理的強度が低下する傾向にある。
【0024】
また、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂粉末が、前記範囲より少ないと模様が形成されず、滑り性が低下する傾向にあり、逆に多すぎても適切な模様が形成されず、また滑り性の向上効果が飽和してしまい、経済的でなくなる。
【0025】
本発明で使用する凹凸模様塗膜を形成する塗料は、以上説明した構成からなるものであるが、得られる凹凸模様塗膜の動的摩擦係数は、0.01〜0.15になるものが適当である。なお、動的摩擦係数は、ASTM D 1894−7B(Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheeting)に規定される方法に準拠し、測定された値である。
【0026】
凹凸塗装により金属板表面を凹凸状とすることにより、その上を滑らす物体と部分的な面接触となり、二面間に作用する凝着力が減少し、その結果、摩擦抵抗が下がり、滑り性効果が向上するとともに、摩擦によって生じる摩耗粉が、両面の滑り面上から凹部分へ逃げること、更に滑り面上に堆積する微小チリが凹部に落下することにより、長期間にわたり一定の摩擦抵抗を保つことにが可能となり滑り性を維持できる。
【0027】
凹凸模様が実質的に均一な深さと高さを有する凹凸模様であり、それにより優れた滑り性が得られる。また凸部間の少なくとも一部が部分的に連結した網目構造の凹凸模様であることによって、滑る物体を安定的に滑り方向に誘導する効果が得られる。また塗膜の凹凸の高さ(凹部と凸部の差)は、10〜500μm、好ましくは30〜100μmが適当である。凹凸高さが、前記範囲より小さいと、塗膜の摩耗が進んだ場合における前記効果が低下し、逆に大きいと、滑らす物体の形状によっては、引っ掛かりが生じ易くなり、物体が滑るのに支障をきたす頻度が多くなる。また凸部間の平均幅は、500〜2000μmである。前記範囲より小さいと、パウチ袋(洗剤詰換え容器)などの一部のポリエチレン容器で滑り性が低下し、逆に大きいと、多くの容器で滑り性が低下する。
【0028】
金属板表面には、摩擦帯電塗装機、静電塗装機、流動浸漬塗装機等の塗装機にて、前述の凹凸模様塗膜を形成する塗料を塗装する。塗装後、使用した塗料が、焼付硬化型塗料の場合には、熱風炉や、誘導加熱炉、赤外線炉等にて塗膜を焼付硬化させる。また、活性エネルギー線硬化型塗料の場合には、活性エネルギー線照射炉にて硬化させる。
【0029】
このようにして形成させた凹凸模様塗膜の膜厚は、70〜200μmが好ましい。なお、膜厚が前記範囲より薄いと、塗膜の摩耗等により滑り性効果の持続性が劣り、逆に厚すぎると、滑り性の向上効果が飽和してしまい、経済的でなくなる。
【0030】
本発明の凹凸模様塗膜が形成された板は、前述の通り、棚として好適に利用可能であるが、その他、建築内装材や、屋根材等にも利用可能である。
【0031】
棚として利用する場合には、棚に載せた商品などの物体を持ち上げて移動させることなく、手で滑らせて移動させる場合には、棚となる本発明の板を水平に取り付けるのが適当である。また、最前列にある物体の一部が取り除かれると、その位置にある後列の物体が、重力により滑り落ち、前記取り除かれ物体の後を補充させたい場合には、本発明の板を、例えば、3〜10度程度に傾斜を持たせて取り付けるのが適当である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、実施例中、「部」、「%」は、特に断らない限り、質量基準で示す。
【0033】
(参考例:粉体塗料a)
以下の成分からなる混合物をヘンシェルミキサーで予備混合した後、エクストルーダーを用いて溶融混練し、得られた混合物を冷却、固化した後、ピンミルで粉砕し、180メッシュの金網で分級し平均粒径約36μmの粉体塗料を作成した。
【0034】
ポリエステル樹脂 注1) 37.0部
エポキシ樹脂 注2) 26.0部
イミダゾール系触媒 注3) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
セルロースエステル樹脂 注5) 5.0部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0035】
注1)商品名:GV230(日本ユピカ社製)水酸基価34mgKOH/g 軟化点115℃
注2)商品名:AER6003(旭チバ社製)エポキシ当量760g/eq 軟化点97℃
注3)商品名:C17Z(四国化成社製)
注4)商品名:ポリフロー85(共栄社化学工業社製)
注5)商品名:CAB551−0.2(イーストマンケミカルプロダクツ社製)融点130〜140℃
注6)商品名:R5N(堺化学社製)
注7)商品名:MA100(三菱カーボン社製)
【0036】
塗料aの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.102である。なお、動的摩擦係数の測定は、以下の方法により測定した。
【0037】
平滑な冷延鋼板表面に塗料を、硬化膜厚100μmになるように塗装し、180℃、20分間焼付て形成した塗膜を前述のASTM D 1894−7Bに規定される方法に準拠し、HEIDON社製の表面性試験機「トライボギヤー」を用いて、10mmΦのボール圧子に100gの垂直荷重を載せ、移動速度100mm/minの条件で測定した。
【0038】
(参考例:粉体塗料b)
以下の成分からなる混合物を、粉体塗料aと同様にして作成した。
【0039】
ポリエステル樹脂 注1) 37.0部
エポキシ樹脂 注2) 26.0部
イミダゾール系触媒 注3) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
アクリル樹脂 注8) 0.2部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0040】
注8)商品名:セラフラワー967(BYK社製)融点80℃
【0041】
粉体塗料bの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.062である。なお、動的摩擦係数は、参考例:塗料aと同様にして測定した。
【0042】
(参考例:粉体塗料c)
以下の成分からなる混合物を、粉体塗料aと同様にして作成した。
【0043】
ポリエステル樹脂 注9) 37.0部
ブロックイソシアネート樹脂 注10) 26.0部
錫系触媒 注11) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
アクリル樹脂 注12) 0.5部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0044】
注9)商品名:M8230(大日本インキ化学工業社製)水酸基価35mgKOH/g 軟化点113℃
注10)商品名:B1530(デグサジャパン社製)NCO含有量15% 融点88℃
注11)商品名:スタンOMF(三共有機合成社製)
注12)商品名:NeoCryl B−725(アビシア社製) 軟化点160℃
【0045】
粉体塗料cの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.086である。なお、動的摩擦係数は、参考例:塗料aと同様にして測定した。
【0046】
(参考例:粉体塗料d)
以下の成分からなる混合物を、粉体塗料aと同様にして作成した。
【0047】
ポリエステル樹脂 注1) 37.0部
エポキシ樹脂 注2) 26.0部
イミダゾール系触媒 注3) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
アクリル樹脂 注8) 0.05部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0048】
粉体塗料dの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.215である。なお、動的摩擦係数は、参考例:塗料aと同様にして測定した。
【0049】
(参考例:粉体塗料e)
以下の成分からなる混合物を、粉体塗料aと同様にして作成した。
【0050】
ポリエステル樹脂 注1) 37.0部
エポキシ樹脂 注2) 26.0部
イミダゾール系触媒 注3) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
アクリル樹脂 注8) 12.0部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0051】
粉体塗料eの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.153である。なお、動的摩擦係数は、参考例:塗料aと同様にして測定した。
【0052】
(参考例:粉体塗料f)
以下の成分からなる混合物を、粉体塗料aと同様にして作成した。
【0053】
ポリエステル樹脂 注1) 37.0部
エポキシ樹脂 注2) 26.0部
イミダゾール系触媒 注3) 0.2部
添加剤 注4) 0.5部
酸化チタン 注6) 35.0部
カーボンブラック 注7) 0.5部
【0054】
粉体塗料fの硬化塗膜の動的摩擦係数は、0.322である。なお、動的摩擦係数は、参考例:塗料aと同様にして測定した。
【0055】
(参考例:金属板I)
板厚0.8mmの冷延鋼板(SPCC)から100mm×300mmの平滑な金属板を作成した。
【0056】
(参考例:金属板II)
板厚0.8mmの冷延鋼板(SPCC)を上下のロール型に挟み込むことによりエンボス加工を施した。エンボスは楕円形で、その高さは0.35mm、長径長さは8.3mm、短径長さは3.5mmとした。エンボス加工のピッチは長径直線方向に13.5mm毎とし、隣接する列を長径方向を6.75mm、短径方向を3.25mmずらした。平面全体の面積に占めるエンボスの凸部頂点の平坦部の面積の割合は20%である。その条件で加工されたエンボス鋼板から、楕円長径方向に300mm、短径方向に100mm寸法の切板を作成した。
【0057】
(実施例1)
金属板Iの表面に、粉体塗料aを静電塗装し、180℃で、20分間焼付け、膜厚が80μmの凹凸模様塗膜を形成した。
【0058】
(実施例2)
金属板Iの表面に、粉体塗料bを静電塗装し、180℃で、20分間焼付け、膜厚が130μmの凹凸模様塗膜を形成した。
【0059】
(実施例3)
金属板Iの表面に、粉体塗料cを静電塗装し、180℃で、20分間焼付け、膜厚が100μmの凹凸模様塗膜を形成した。
【0060】
(比較例1)
金属板Iの表面に、粉体塗料dを静電塗装し、180℃で、20分間焼付け、膜厚が100μmの凹凸模様塗膜を形成した。
【0061】
(比較例2)
金属板Iの表面に、粉体塗料eを静電塗装し、180℃で、20分間焼付け、膜厚が100μmの凹凸模様塗膜を形成した。
【0062】
(比較例3)
エンボス加工してある金属板IIの表面に、粉体塗料fを静電塗装し、180℃で20分間焼付け、膜厚が100μmの平滑な塗膜を形成した。
【0063】
得られた実施例1〜3、比較例1〜3の金属塗装板につき、滑り性を評価するため、以下の2つの方法により試験を行なった。
【0064】
<初期滑り試験>
手動式ダイヤルにより傾斜角度を調整できる傾斜角度設定機の台を8度に傾斜させて、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2、比較例3の6種類の板を1枚づつセットし、その板上に190gスチール缶、500mlアルミ缶、350ml、500ml、1000mlペットボトル、720mlガラス瓶、400mlポリエチレンパウチ袋(洗剤詰換え容器)、1,300gポリエチレン容器の8種類の容器を順次載せ、容器が板上を滑るかどうかを測定した。傾斜角度は新潟精機社製のデジタル傾斜測定計(DP−50)で測定した。測定は同じ板と容器の組合せで3回行なった。試験結果は、表1の通りであった。
【0065】
<滑り繰り返し試験>
エアーシリンダーにより台の傾斜角度を、水平と8度との間で衝撃を与えることなくゆっくりと繰り返して調整できる試験機を準備し、その試験機の台上に、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2、比較例3の6種類の板を1枚づつセットし、その板上に190gスチール缶、500mlアルミ缶、350ml、500ml、1000mlペットボトル、720mlガラス瓶、400mlポリエチレンパウチ袋(洗剤詰換え容器)、1,300gポリエチレン容器の8種類の容器を順次載せ、板上を容器が上から下まで停止することなく滑り降りる回数を測定した。容器は1,000回繰り返し毎に新しいものに交換した。試験結果は、表2の通りであった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
前記試験結果より、一定の形状を有する凹凸模様を形成する塗料a、塗料b及び塗料cで金属板Iを塗装した実施例1、実施例2及び実施例3が、初期滑り試験では全ての容器が8度以下で滑り出し、かつ滑り繰り返し試験では全ての8容器で3万回以上滑りが持続するという優れた結果が得られた。
【0069】
また、金属板Iに、塗料bよりアクリル樹脂を少なくし凹凸の細かいサテン状模様を形成する塗料dを塗装した比較例1が、ほとんどの容器において初期滑り試験及び繰り返し試験で良好な滑り性をしめしたものの、400mlポリエチレンパウチ袋(洗剤詰換え容器)、1,300gポリエチレン容器では滑り性は不良であった。
【0070】
一方、塗料bよりアクリル樹脂を多くし凹凸の波を大きく緩やかにした塗料eを、金属板Iに塗装した比較例2、及びエンボスのある金属板IIに平滑な塗膜を形成する塗料fを塗装した比較例3は、初期滑り性、繰り返し滑り性ともあまり良好な結果は得られなかった。
【0071】
【表3】

【0072】
これらの結果より、一般の平滑な面を持つ金属板表面に、一定の形状を有する凹凸模様塗膜を形成した金属板は、金属板に載せる容器の種類にかかわらず、容器を容易に移動させることが可能な、長期間にわたる滑り性に優れたものであることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板表面に、動摩擦係数が0.3以下の凹凸模様塗膜を形成する滑り性に優れた板の製造方法において、前記凹凸模様塗膜が以下の形状を有することを特徴とする滑り性に優れた板の製造方法。
(1)実質的に均一な深さと高さを有する凹凸模様であること。
(2)凸部間の少なくとも一部分が連結した網目構造の凹凸模様であること。
(3)凸部と凹部の高さの差が10〜500μmであること。
(4)凸部間の平均幅が500〜2000μmであること。
【請求項2】
前記凹凸模様塗膜が、セルロースエステル樹脂およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含有する熱硬化性粉体塗料により形成された請求項1に記載の滑り性に優れた板の製造方法。
【請求項3】
商品陳列棚用である、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の製造方法により得られた滑り性に優れた板。

【公開番号】特開2008−168177(P2008−168177A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1315(P2007−1315)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】