説明

滑剤固形物、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】本発明の目的は酸化防止剤分散滑剤の固形物の強度を改善し、ブラシ等の削り手段に対し、割れたり、削れ量が多すぎたりすることを改善することであり、該固形物を用いた画像形成装置或いは画像形成方法で発生しやすい画像流れや画像ボケを改善し、良好な電子写真画像を提供することである。
【解決手段】滑剤を主成分とするマトリックス部と滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有することを特徴とする滑剤固形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に用いられる滑剤固形物、及び該滑剤固形物を用いた画像形成装置、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置としては、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部等を周囲に有する像担持体上にトナー像を形成し、トナー像を静電的に転写材等の記録媒体に転写する画像形成装置が知られている。
【0003】
一般に、像担持体としては製造上及び装置の小型化等の利点からドラムタイプが主流であり、その表面には感光体として最近はOPC(有機光導電体)感光体が積層されたタイプが主流となっており、該ドラムの周囲に上記の帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部等が処理の順番に従って配設されている。
【0004】
帯電手段である帯電部は像担持体に所定の表面電位を付与する時に高電圧をかけてコロナ放電を起こさせるため、空気中の酸素が分解してオゾンや窒素酸化物等の放電生成物が発生する。
【0005】
高濃度のオゾンは異臭を伴い呼吸障害等が生じるなど人体に対しても有害であり、オゾンや窒素酸化物等を装置内に滞留させると、像担持体表面へのこれらオゾンや窒素酸化物の付着や蓄積により、静電画像が劣化し、トナー画像流れや帯電極の長手方向と一致した帯状の画像ぼけ等の画像欠陥が発生する。
【0006】
上記のような画像欠陥を改善するために、これまで、酸化防止剤を感光体の保護層等に含有させることが提案されている(特許文献1)。しかし、保護層等の層中に含有させた酸化防止剤では、表面に付着するオゾンや窒素酸化物の失活に対する効果には限界があり、より効果的な方法の探索が続けられていた。
【0007】
一方、感光体表面に酸化防止剤を混入したステアリン酸亜鉛等(酸化防止剤分散の滑剤)を感光体の表面に供給して、滑剤の被膜形成と共に酸化防止剤を感光体表面に供給して、感光体表面のオゾン等の窒素酸化物等の放電生成物を遮断、或いは失活させると云う方法が公開されている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、上記酸化防止剤を混入したステアリン酸亜鉛等(酸化防止剤分散の滑剤)の固形物をブラシ状の剤付与手段の接触により、削り取り、感光体表面に供給する動作を繰り返すと、該固形物の強度が小さいことから、ブラシでの削り取られる量が多すぎ、現像性やトナー画像の転写性を劣化させたり、固形物が割れて、感光体へ滑剤の供給にむらができて、画像ボケの改善等の効果が不足するという問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−58779号公報
【特許文献2】特開2004−258177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述のような従来技術の問題点を解決することであり、更に詳しくは、酸化防止剤分散滑剤の固形物の強度を改善し、ブラシ等の削り手段に対し、割れたり、削れ量が多すぎたりすることを改善することであり、該固形物を用いた画像形成装置或いは画像形成方法で発生しやすい画像流れや画像ボケを改善し、良好な電子写真画像を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、上記課題について、詳細に検討し、実験を重ねた結果、酸化防止剤分散滑剤の固形物の強度を改善するには、滑剤中の酸化防止剤の分散を偏在化させることにより、全体としての固形物の強度を強化できることを見いだし、本願発明を達成した。即ち、本願発明は以下の構成を有することにより、達成される。
【0012】
1.滑剤を主成分とするマトリックス部と滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有することを特徴とする滑剤固形物。
【0013】
2.電子写真感光体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段を備えた画像形成装置において、該電子写真感光体の表面に滑剤を付与する剤付与手段を有し、該滑剤が滑剤を主成分とするマトリックスと滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有する滑剤固形物であることを特徴とする画像形成装置。
【0014】
3.前記剤付与手段がその構成の一部にブラシを有し、該ブラシを滑剤固形物に摺刷させ、ブラシに接触している電子写真感光体に滑剤固形物の滑剤と酸化防止剤を供給する構成を有することを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0015】
4.前記2又は3に記載の画像形成装置を用い、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の改善された滑剤固形物をもちいて、電子写真感光体の表面に滑剤と酸化防止剤を供給することにより、オゾン等の窒素酸化物等の放電生成物の付着により発生する画像流れや画像ぼけが改善され、繰り返しの長期の使用に際しても、良好な電子写真画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の滑剤固形物を立体像で示した図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の画像形成装置に設置される剤付与手段を有するクリーニング手段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0019】
まず、本願発明の滑剤固形物について説明する。
【0020】
本願発明の滑剤固形物は、滑剤を主成分とするマトリックス部と滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有する。該滑剤固形物の構造を図1に例示した滑剤固形物の立体像で説明する。
【0021】
尚、上記において、主成分とするとは、その主成分の割合が、全体の90質量%以上、好ましくは、不純物を除いて、全体の成分が主成分のみであることをいう。
【0022】
図1(a)及び(b)は、滑剤固形物が滑剤を主成分とするマトリックス部(Ka)と滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部(Kb)から構成されていることを図示している。
【0023】
滑剤を主成分とするマトリックス部(Ka)は該滑剤固形物の全体の構造を形成しており、図1(a)では該(Ka)中に滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部(Kb)が規則的なジグザグ状に全領域に亘り、貫通した楕円形の穴に埋め込まれ、図1(b)では、長方形型の穴に埋め込まれた構造になっている。図1には、該滑材固形物のサイズ(縦:10mm、横:330mm、高さ:5mm)も記載されているが、このサイズは、滑材固形物を固定する剤付与手段の構造により、自由に変えられる。該(Ka)と(Kb)の体積比は1対0.01〜0.3が好ましい。また、(Kb)は(Ka)中に分割されて埋め込まれるのが好ましい。また、図1(a)及び(b)の上面の(Ka)と(Kb)の部分が剤付与手段のブラシに接する面である。
【0024】
前記(Ka)と(Kb)の体積比は滑剤固形物の断面図を顕微鏡の拡大図から作製し、表面から内部に順次作製した複数の断面図から、滑剤固形物のマトリックス部とドメイン部の立体像を、例えば、図1(a)や(b)のように作製し、マトリックス部とドメイン部の体積比を求めることができる。
【0025】
滑剤としては、感光体表面で延展して、均一な膜形成性能を有する材料が好ましく、脂肪酸金属塩が最も好ましい。該脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
【0026】
上記脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10−7以上1×10−1以下が好ましく、5×10−4以上1×10−2以下であると最も好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0027】
一方、酸化防止剤には、熱、光等により発生するラジカルを捕捉するラジカル連鎖禁止の作用を持つもの、例えばヒンダートフェノール又はヒンダートアミンの化学構造を有する化合物や過酸化物を分解する作用を持つ化学構造を有する化合物、例えばチオエーテル、ホスファイト等の化学構造を有する化合物基が挙げられる。これらの内、特にヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系酸化防止剤が高温高湿時のカブリの発生や画像ボケ防止に効果が大きい。
【0028】
滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部(Kb)を構成するには、滑剤100質量部に酸化防止剤を0.1〜50質量部(好ましくは、1〜30質量部)を混合或いは分散させることが好ましい。0.1質量部未満だと高温高湿時のカブリや画像ボケに効果がなく、50質量部より多い含有量では滑剤固形物の強度が低下し、滑剤固形物が割れたり、滑剤固形物の削れ量が不均一になったりしやすい。
【0029】
ここでヒンダードフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い。)。
【0030】
又、ヒンダードアミンは、例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
(式中のR13は水素原子又は1価の有機基、R14、R15、R16、R17はアルキル基、R18は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。)
ヒンダードフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
ヒンダードアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
有機リン化合物としては、例えば、一般式RO−P(OR)−ORで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
【0035】
有機硫黄系化合物としては、例えば、一般式R−S−Rで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
【0036】
以下に各種代表的な化合物を例示する。
【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
又、製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えば「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」以上ヒンダードフェノール系、「サノールLS2626」、「サノールLS765」「サノールLS2626」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上ヒンダードアミン系が挙げられる。
【0043】
前記(Kb)の領域、即ち、滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部(Kb)の構成物は、例えば、脂肪酸金属塩と酸化防止剤両方を混合し、70〜150℃の高温で、混練し、十分混練が行なわれた後に、該滑剤と酸化防止剤の混練物を(Kb)部の穴に入れて、冷却し、滑剤と酸化防止剤の混練物のドメイン部を形成することができる。
【0044】
該滑剤固形物を電子写真方式の画像形成装置に用いた例を以下に記載する。
【0045】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0046】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0047】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0048】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0049】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体としての用紙Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A,22B,22C,22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aに搬送され、用紙P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された用紙Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0050】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0051】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y,5M,5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y,1M,1Cに圧接する。
【0052】
二次転写ローラ5Aは、ここを用紙Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0053】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L,82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0054】
筐体8は、画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0055】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y,1M,1C,1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71,72,73,74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y,5M,5C,5K、及びクリーニング手段6Aとから成る。
【0056】
中間転写体は、ポリイミド、ポリカーボネート、PVdF等の高分子フィルムや、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加して導電化したもの等が用いられ、ドラム状、ベルト状どちらでもよいが、装置設計の自由度の観点からベルト状が好ましい。
【0057】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体の表面に滑剤固形物を供給する剤付与手段を有することを特徴とする。剤付与手段は電子写真感光体周辺の適当な位置に設置することができるが、設置空間を有効利用するには、図2記載の帯電手段、現像手段、クリーニング手段の一部を利用して、設置しても良い。以下、クリーニング手段に剤付与手段を併用した例を挙げる。
【0058】
図3は本発明の画像形成装置に用いられる剤付与手段を有するクリーニング手段の構成図である。
【0059】
該クリーニング手段は図2の6Y,6M,6C,6K等のクリーニング手段として用いられる。図3のクリーニングブレード66Aが支持部材66Bに取り付けられている。該クリーニングブレードの材質としてはゴム弾性体が用いられ、その材料としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。
【0060】
一方、支持部材66Bは板状の金属部材やプラスチック部材で構成される。金属部材としてはステンレス鋼板、アルミ板、或いは制震鋼板等が好ましい。
【0061】
本発明において、感光体表面に圧接するクリーニングブレードの先端部は、感光体の回転方向と反対方向(カウンター方向)に向けて負荷をかけた状態で圧接することが好ましい。図3に示すようにクリーニングブレードの先端部は感光体と圧接するときに、圧接面を形成することが好ましい。
【0062】
クリーニングブレードの感光体への当接荷重P、当接角θの好ましい値としては、P=5〜40N/m、θ=5〜35°である。
【0063】
当接荷重Pはクリーニングブレード66Aを感光体ドラム1に当接させたときの圧接力P′の法線方向ベクトル値である。
【0064】
又当接角θは感光体の当接点Aにおける接線Xと変形前のブレード(図面では点線で示した)とのなす角を表す。66Eは支持部材を回転可能にする回転軸であり、66Gは荷重バネを示す。
【0065】
又、前記クリーニングブレードの自由長Lは図3に示すように支持部材66Bの端部Bの位置から変形前のブレードの先端点の長さを表す。該自由長の好ましい値としてはL=6〜15mm、である。クリーニングブレードの厚さtは0.5〜10mmが好ましい。ここで、クリーニングブレードの厚さとは図3に示すように支持部材66Bの接着面に対して垂直な方向を示す。
【0066】
図3のクリーニング手段には剤付与手段を兼ねたブラシロール66Cが用いられている。該ブラシロールは感光体1に付着したトナーの除去、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーの回収機能と共に、滑剤固形物を感光体に供給する剤付与手段としての機能を有する。即ち該ブラシロールは感光体1と接触し、その接触部においては感光体と進行方向が同方向に回転し、感光体上のトナーや紙粉を除去すると共に、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーを搬送し、搬送スクリュー66Jに回収する。この間の経路はブラシロール66Cに除去手段としてのフリッカ66Iを当接させることにより、感光体1からブラシロール66Cに転移したトナー等の除去物を除去することが好ましい。更にこのフリッカに付着したトナーをスクレーパ66Dで除去し、トナーを搬送スクリュー66Jに回収する。回収されたトナーは廃棄物として外部に取り出されるか、或いはトナーリサイクル用のリサイクルパイプ(図示せず)を経由して現像器に搬送され再利用される。フリッカ66Iの材料としてはステンレス、アルミニウム等の金属管が好ましく用いられる。一方、スクレーパ66Dとしては、リン青銅板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板等の弾性板が用いられ、先端がフリッカの回転方向に対し鋭角を形成するカウンター方式で当接させるのが好ましい。
【0067】
又、滑剤固形物(ステアリン酸亜鉛等の固形素材)66Kはブラシロールにバネ荷重66Sで押圧されて取り付けられており、ブラシロールは回転しながら、該滑剤固形物を擦過して、感光体の表面に滑剤固形物を供給する。
【0068】
ブラシロール66Cとしては導電性又は半導電性体のブラシロールが用いられる。該ブラシロールの長さは、感光体ドラムの軸方向の画像形成領域をカバーできる長さを有することが好ましい。また、該ブラシロールは、感光体ドラムの軸方向に揺動する構成としてもよい。
【0069】
本発明で用いられるブラシロールのブラシ構成素材は、任意のものを用いることができるが、疎水性で、かつ誘電率が高い繊維形成性高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えばレーヨン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル酸樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。特に、好ましくはレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリプロピレンである。
【0070】
また、前記ブラシは、導電性又は反導電性のものが用いられ、構成素材にカーボン等の低抵抗物質を含有させ、任意の比抵抗に調整したものが使用できる。
【0071】
ブラシロールのブラシ毛の比抵抗は、常温常湿(温度26℃、相対湿度50%)で、長さ10cmの1本のブラシ毛の両端に500Vの電圧を印加した状態で測定して、10Ωcm〜10Ωcmの範囲内のものが好ましい。
【0072】
即ち、ブラシロールはステンレス等の芯材に10Ωcm〜10Ωcmの比抵抗を持つ導電性又は半導電性のブラシ毛を用いることが好ましい。10Ωcmよりも比抵抗が低いと、放電によるバンディング等が発生しやすくなる。また、10Ωcmよりも高いと、感光体との電位差が低くなって、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0073】
ブラシロールに用いるブラシ毛1本の太さは、5〜20デニールが好ましい。5デニールに満たないと、十分な擦過力が無いため表面付着物を除去できない。また、20デニールより大きいと、ブラシが剛直になるため感光体の表面を傷つける上に摩耗を進行させ、感光体の寿命を低下させる。
【0074】
ここでいう「デニール」とは、前記ブラシを構成するブラシ毛(繊維)の長さ9000mの質量をg(グラム)単位で測定した数値である。
【0075】
前記ブラシのブラシ毛密度は、4.5×10/cm〜2.0×10/cm(1平方センチあたりのブラシ毛数)である。4.5×10/cmに満たないと、剛直度が低く擦過力が弱い上に、擦過にムラができ、付着物を均一に除去することができない。2.0×10/cmより大きいと、剛直になって擦過力が強くなるために感光体を摩耗させ、感度低下によるカブリや傷による黒スジ等の不良画像が発生する。
【0076】
本発明で用いられるブラシロールの感光体に対する食い込み量は0.4〜1.5mmに設定されるのが好ましい。この食い込み量は、感光体ドラムとブラシロールの相対運動によって発生するブラシにかかる負荷を意味する。この負荷は、感光体ドラムから見れば、ブラシから受ける擦過力に相当し、その範囲を規定することは、感光体が適度な力で擦過されることが必要であることを意味する。
【0077】
この食い込み量とはブラシを感光体に当接したとき、ブラシ毛が感光体表面で曲がらずに、直線的に内部に進入したと仮定した時の内部への食い込み長さを云う。
【0078】
滑剤固形物が供給された感光体ではブラシによる感光体表面の擦過力が小さいため、食い込み量が、0.4mmより小さいと、トナーや紙粉などの感光体表面へのフィルミングを抑制することができず、画像上でムラなどの不良が発生する。一方、1.5mmより大きいと、ブラシによる感光体表面の擦過力が大きすぎるために、感光体の摩耗量が大きくなり、感度低下によるカブリが発生したり、感光体表面に傷が発生し、画像上にスジ故障が発生したりして問題である。
【0079】
ブラシロールに用いられるロール部の芯材としては、主としてステンレス、アルミニウム等の金属、紙、プラスチック等が用いられるが、これらにより限定されるものではない。
【0080】
本発明で用いられるブラシロールは円柱状の芯材の表面に接着層を介してブラシを設置した構成であることが好ましい。
【0081】
ブラシロールは、その当接部分が感光体の表面と同方向に移動するように回転するのが好ましい。該当接部分が逆方向に移動すると、感光体の表面に過剰なトナーが存在した場合に、ブラシロールにより除去されたトナーがこぼれて記録紙や装置を汚す場合がある。
【0082】
感光体とブラシロールとが前記のように、同方向に移動する場合に、両者の表面速度比は1対1.1〜1対2の範囲内の値であることが好ましい。ブラシロールの回転速度が感光体よりも遅いとブラシロールのトナー除去能力が低下するためにクリーニング不良が発生しやすく、感光体よりも速いとトナー除去能力が過剰となってブレードバウンディングやめくれが発生しやすくなる。
【0083】
次に、本発明に用いられる電子写真感光体について記載する。
【0084】
本発明において、感光体とは電子写真画像形成に用いられる電子写真感光体であり、中でも有機電子写真感光体(有機感光体)を用いた場合に本発明の効果が顕著に表れる。有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0085】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
【0086】
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0087】
本発明の円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真円度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0088】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ωcm以下が好ましい。
【0089】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、感光層のとの接着性改良及び電気的バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0090】
硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は0.1〜5μmが好ましい。
【0091】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0092】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0093】
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0094】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0095】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0096】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0097】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0098】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0099】
保護層
感光体の保護層として、各種樹脂層を設けることができる。特に架橋系の樹脂層を設けることにより、機械的強度の強い有機感光体を得ることができる。感光体の表面が架橋系の硬化性樹脂層で構成された感光体は、繰り返し使用での表面の摩耗量が少ないので、摩耗によるオゾン等の放電生成物の除去効果は期待できず、その分、本願発明の効果が顕著に表れる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文章中の「部」は質量部を表す。
【0101】
感光体の作製
下記の様に感光体を作製した。
【0102】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0103】
〈中間層〉
下記組成の中間層塗布液を作製した。
ポリアミド樹脂X1010(ダイセルデグサ株式会社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 1.1部
エタノール 20部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0104】
上記塗布液を用いて前記支持体上に、110℃で20分乾燥後の膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布した。
【0105】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)
20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0106】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質:CTM(下記化合物A) 150部
バインダー:ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:チバ・ジャパン社製) 6部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法を用いて、110℃で60分乾燥後膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0107】
【化7】

【0108】
〈保護層〉
正孔輸送性化合物で表面処理された酸化チタン粒子
(同一質量の下記化合物Sで表面処理された数平均一次粒径6nmの酸化チタン粒子)
100部
硬化性化合物(下記化合物Mc) 100部
イソプロピルアルコール 500部
上記成分をサンドミルを用いて10時間分散した後、
重合開始剤(下記化合物J) 30部
を加え、遮光下で混合攪拌して溶解し保護層塗布液を作製した(保存中は遮光)。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、保護層を塗布した。塗布後、室温で20分乾燥後(溶媒乾燥工程)、メタルハライドランプ(500W)を用いて100mmの位置で感光体を回転させながら1分間照射して(紫外線硬化工程)、膜厚3μmの保護層を得た。
【0109】
【化8】

【0110】
滑剤固形物Aの作製
ステアリン酸ナトリウムを水に溶解し、15質量%液を作製した。又、硫酸亜鉛を水に溶解し、25質量%液を作製した。直径6cmのタービン羽根を有する撹拌装置付きの2リットルの受け容器を用意し、タービン羽根を350rpmで回転させた。この受け容器にステアリン酸ナトリウム液を投入し、液温80℃に調整した。次に、この受け容器に80℃にした硫酸亜鉛液を30分かけて滴下した。ステアリン酸ナトリウムと硫酸亜鉛の当量比は0.98とし、金属石鹸スラリー量が500gとなるように混合した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で、10分間熟成し、反応を終結させた。次にこのようにして得られた金属石鹸スラリーを2回水洗し、続いて水を用いて洗浄した。得られたステアリン酸亜鉛金属石鹸ケーキを110℃の乾燥温度で乾燥し、含水率を1.0質量%以下に乾燥した。続いて、該乾燥させたステアリン酸亜鉛金属石鹸ケーキを高温にして流動化させ、図1(a)と同じ穴形状(短径:2.0mm、長径:4.0mmの楕円形の穴)をジグザグ状に、全領域に亘り、貫通させた穴を成形できる金型に流し込み、その後、冷却して固形化させ、金型を外して、縦、横、高さがそれぞれ10mm、330mm、5mmに成形し、図1(a)と同じ穴形状を有するステアリン酸亜鉛固形物を得た。次に、この穴の部分に図1(a)のように、滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部(Kb)を形成した。即ち、これらの穴に、下記の滑剤と酸化防止剤の混合材料を埋め込み、滑剤固形物A(Ka:Kbの比は1:0.25)を作製した。
【0111】
滑剤と酸化防止剤の混合材料は、上記と同様にして作製したステアリン酸亜鉛固形物100質量部に対し、酸化防止剤(AO−1)20質量部を混合し、温度120℃で、ステアリン酸亜鉛と酸化防止剤を30分混練した。その後、混練物を前記したステアリン酸亜鉛成形物の穴に埋め込み、冷却して、前記した図1(a)と同じ形状の滑剤固形物Aを得た。
【0112】
滑剤固形物B〜Lの作製
又、上記滑剤固形物Aの作製において、滑剤及び酸化防止剤の種類と量、及び穴形状を表1に示したように変化させ(このとき、混練時の温度を変化させてもよい)、表1に示したような滑剤固形物B〜Lを作製した。但し、滑剤固形物Kは全体の構造をステアリン酸亜鉛固形物100質量部と酸化防止剤(例示化合物AO−1)20質量部の混合物(均一混合物)のマトリックス部(Ka)のみから構成された滑剤固形物であり、滑剤固形物Lは全体の構造をステアリン酸亜鉛のマトリックス部(Ka)のみから構成された滑剤固形物である。また、図1(b)の穴形状は、縦1.5mm、横10mmの長方形の穴であり、該穴形状で形成される滑剤固形物のKa:Kbの比は1:0.15である。
【0113】
特性評価
基本的に図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500改造機(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製;600dpi、780nmの半導体レーザーの露光光を使用)に、図3の剤付与手段を有するクリーニング手段を取り付け、且つ、上記感光体を搭載し(各画像形成ユニットのクリーニング手段、感光体を同一のもので統一して)、評価を行った。剤付与手段には、図1(a)に示した滑剤固形物が固定され、該滑剤固形物は前記A〜Lの各滑剤固形物を順次入れ替え当て、評価した。また、剤付与手段のブラシロール(図3中の66C)のブラシには導電性アクリル樹脂(ブラシ毛密度(3×10/cm))を用い、食い込み量0.6mmで感光体に接触させた。
【0114】
評価項目と評価基準
(画像ボケの評価)
上記デジタル複写機bizhub PRO C6500で、環境条件30℃、80%RHでのA4紙、5万枚の画出し耐刷試験後に、直ぐに実機の主電源を停止した。停止17時間後に電源を入れ画出し可能状態になった後、直ちにA3中性紙全面にハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)とA3全面の6dot格子画像を印字した。印字画像の状態を観察し以下の評価を行った。
【0115】
◎:ハーフトーン、格子画像とも画像ボケ発生なし(良好)
○:ハーフトーン画像のみに感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下が認められる(実用上問題なし)
×:帯状の画像ボケの発生及び格子画像の欠損もしくは線幅の細りが発生(実用上問題有り)。
【0116】
(滑剤固形物の寿命)
滑剤固形物の寿命は、前記30℃、80%の環境条件での耐刷試験を続け、滑剤が感光体表面に供給できなくなった時点の耐刷枚数をカウントした。この寿命は、滑剤固形物が摩耗して、無くなってしまう場合と、割れて使用不可能になった場合を含む。
【0117】
【表1】

【0118】
本発明内の滑剤固形物A〜Jを用いた上記評価では、画像ボケの発生がなく、滑剤固形物の寿命も良好な結果が得られているが、本願発明外の滑剤固形物K又はLを用いた場合は、画像ボケが発生したり、滑剤固形物の寿命が短くなっているのが示されている。
【符号の説明】
【0119】
1Y,1M,1C,1K 感光体
2Y,2M,2C,2K 帯電手段
3Y,3M,3C,3K 露光手段
4Y,4M,4C,4K 現像手段
5A 二次転写ローラ(二次転写手段)
5Y,5M,5C,5K 一次転写ローラ(一次転写手段)
6,6A,6Y,6M,6C,6K クリーニング手段
7 無端ベルト状中間転写体ユニット
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
70 無端ベルト状中間転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑剤を主成分とするマトリックス部と滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有することを特徴とする滑剤固形物。
【請求項2】
電子写真感光体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段を備えた画像形成装置において、該電子写真感光体の表面に滑剤を付与する剤付与手段を有し、該滑剤が滑剤を主成分とするマトリックスと滑剤と酸化防止剤を混合したドメイン部を有する滑剤固形物であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記剤付与手段がその構成の一部にブラシを有し、該ブラシを滑剤固形物に摺刷させ、ブラシに接触している電子写真感光体に滑剤固形物の滑剤と酸化防止剤を供給する構成を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像形成装置を用い、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−128140(P2012−128140A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278964(P2010−278964)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】