説明

滑剤塗布装置

【課題】滑剤の飛散による周囲の汚染を防止しつつ、所定量の滑剤を安定して塗布することができ、生産性が良く、かつ、伝送特性の良好な光ファイバケーブルが得られる滑剤塗布装置を提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線ユニット18を順次挿通させる入口側目板34と出口側目板36との間に跨って、複数本の光ファイバ心線ユニット18の全体を包覆する覆い46と、この覆いの、入口側目板34近傍部に連結され、滑剤を、出口側目板36側に向ってうずまき状に旋回するように送り込む滑剤供給管42と、覆い46に連結され、覆い46内に残留した滑剤を外部に排出する滑剤排出管44と、滑剤供給管42に連結され、滑剤を、滑剤供給管42を通じて覆い46内に圧送供給する滑剤圧送機50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ファイバケーブルの製造に適用される滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から図3に示すような光ファイバケーブル14が知られている。この光ファイバケーブル14は、5枚程度の光ファイバテープ心線16を、図4に示すように積層してなる光ファイバ心線ユニット18と、中心にテンションメンバ20を有すると共に外周面に複数本の溝22を有する線状のスペーサ24とを備えている。そして、複数本の光ファイバ心線ユニット18をスペーサ24の溝22に挿入し、この上に、押え巻き26を巻いた後、外被28で覆ってなるものである。光ファイバテープ心線16は、図4に示すように、例えば4本の光ファイバ30を並べて、UV樹脂32により4本の光ファイバ30をテープ状に一体化したものである。
【0003】
このように構成された光ファイバケーブル14は、所定の光伝送特性を維持するために、集合時の光ファイバテープ心線16の歪を安定化すると共に、曲げられた際にスペーサ24の溝22内において光ファイバテープ心線16が座屈せずにスムーズに長手方向に移動できるようにする必要がある。
このために、この光ファイバケーブル14を製造する装置には、複数本の光ファイバ心線ユニット18の集合時に、複数枚の各光ファイバテープ心線16に滑剤を塗布する滑剤塗布装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5に、従来の滑剤塗布装置を設置した光ファイバケーブル製造装置を示している。
この光ファイバケーブル製造装置は、複数本の光ファイバ心線ユニット18を順次挿通させる入口側目板34及び出口側目板36と、複数本の光ファイバ心線ユニット18をスペーサ24の溝22に挿入する集合ダイス38とを備えている。
【0005】
従来の滑剤塗布装置では、図5に示すように、入口側目板34の背面に、複数本の光ファイバ心線ユニット18を包覆する箱形の覆い40が配置され、この覆い40の上部に滑剤供給管42が連結され、その真下に滑剤排出管44が連結されている。滑剤供給管42から送出された滑剤は、光ファイバ心線ユニット18の各光ファイバテープ心線16の表面に塗布され、降下した分は滑剤排出管44から排出される。
【特許文献1】特開2003−344737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来の滑剤塗布装置には、次のような解決すべき課題があった。
複数本の光ファイバ心線ユニット18が通過する覆い40の端面の開口が大きいため、滑剤が矢印41(図5)で示すようにその大きな開口から外部に漏れて周囲に飛散する。このため周囲のクリーン度が低下し、環境面で好ましくないという課題がある。
【0007】
また、滑剤が滑剤供給管42とその真下の滑剤排出管44との間の上下方向にのみ流動するため、集合直前の光ファイバテープ心線16の位置によっては、滑剤が付き易い部分と付きにくい部分が生じ、長手方向に亘って滑剤の塗布状態にむらが生じ易いという課題があった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、滑剤の飛散による周囲の汚染を防止しつつ、所定量の滑剤を安定して均一塗布することができ、生産性が良く、かつ、伝送特性の良好な光ファイバケーブルが得られる滑剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
複数本の光ファイバ心線ユニットを順次挿通させる入口側目板と出口側目板との間に跨って設けられ、上記複数本の光ファイバ心線ユニットの全体を包覆する覆いと、上記覆いの、上記入口側目板近傍部に連結され、滑剤を、上記出口側目板側に向ってうずまき状に旋回するように送り込む滑剤供給管と、上記覆いに連結され、上記覆い内に残留した滑剤を外部に排出する滑剤排出管と、上記滑剤供給管に連結され、上記滑剤を、上記滑剤供給管を通じて上記覆い内に圧送供給する滑剤圧送機とを備えたことを特徴とする滑剤塗布装置。
【0010】
積層される前の複数枚の各光ファイバテープ心線の表面に、滑剤を均一に塗布することができる。また、覆いの外部に滑剤が漏れることが殆どないため、周囲のクリーン度が維持される。
【0011】
〈構成2〉
構成1に記載の滑剤塗布装置において、上記覆いは、円筒状で、かつ上記出口側目板に向って先細りに形成されていることを特徴とする滑剤塗布装置。
【0012】
覆いが円筒状で、かつ出口側目板に向って先細りに形成されていることにより、滑剤供給管から圧送された滑剤が覆い内でうずまき状に旋回し易くなり、各光ファイバテープ心線の表面に均一かつ効率的に塗布される。
【0013】
〈構成3〉
構成1に記載の滑剤塗布装置において、上記滑剤供給管は、上記覆いの内周面の接線方向で、かつ上記出口側目板側に向くように傾斜していることを特徴とする滑剤塗布装置。
【0014】
滑剤が覆い内で、さらにうずまき状に旋回し易くなり、塗布効率が向上する。
【0015】
〈構成4〉
構成1に記載の滑剤塗布装置において、上記滑剤排出管は、上記出口側目板の近傍部に配設され、上記覆い内を吸引する吸引ポンプが接続されていることを特徴とする滑剤塗布装置。
【0016】
吸引ポンプの吸引作用により、覆い内における滑剤の流動が促進され、光ファイバテープ心線の表面への塗布がさらに効率的に行われる。
【0017】
〈構成5〉
構成1に記載の滑剤塗布装置において、上記入口側目板又は上記出口側目板は、上記光ファイバ心線ユニットの横断面とほぼ同形でかつ僅かに大きいユニット挿通孔を複数備えたものであることを特徴とする滑剤塗布装置。
【0018】
滑剤が出口側目板の孔から外部に漏れるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1の滑剤塗布装置を示す説明図で、図5と同一部分には同一符号を付している。
図1において、この滑剤塗布装置は、光ファイバケーブルの製造装置に設置されるもので、光ファイバケーブルを構成する複数本の光ファイバ心線ユニット18の全体を包覆する覆い46を備えている。光ファイバ心線ユニット18は、図4に示すように、4ないし5枚の光ファイバテープ心線16を積層したものである。この光ファイバ心線ユニット18の複数本が集合ダイス38を介してスペーサ24の外周面に設けた複数の溝22にそれぞれ挿入され、図3に示す光ファイバケーブル14が構成される。
【0021】
覆い46は、横向きの円筒状をなし、かつ出口側目板36に向って先細りに形成され、入口側目板34と出口側目板36との間に跨って設けられている。覆い46の両端面は、入口側目板34と出口側目板36の各側面にそれぞれ当接している。
【0022】
覆い46の入口側目板34近傍部には滑剤供給管42が連結されている。滑剤供給管42は、覆い46の内周面の接線方向で、かつ出口側目板側に向くように傾斜している。滑剤供給管42には、滑剤を覆い46内に圧送供給する滑剤圧送機50が連結されている。
滑剤としては、重なり合う光ファイバテープ心線16どうしのすべりを良くするもので、例えば、粉状タルク、窒化ホウ素が良好に用いられる。
【0023】
覆い46の出口側目板36近傍部には滑剤排出管44が連結されている。滑剤排出管44は、覆い46内に残留した滑剤を外部に排出するもので、出口側目板36の近傍部に連結されている。滑剤排出管44には、覆い46内を吸引する吸引ポンプ52が接続されている。
【0024】
上記した滑剤塗布装置において、滑剤は、滑剤供給管42から覆い46の内側へ接線方向に圧送され、出口側目板36側に向ってうずまき状に旋回流動し滑剤排出管44に向って誘導される。このとき、吸引ポンプ52による吸引作用で滑剤の流動が促進される。このため、滑剤は積層される直前の各光ファイバテープ心線16の表面に、より均一かつ効率的に塗布されるようになる。
【0025】
図2は、入口側目板34を示す側面図である。
図2に示すように、入口側目板34は、中心に、テンションメンバを有する線状のスペーサ24を挿通させるスペーサ挿通孔54が設けられ、その周囲に、光ファイバ心線ユニット18を挿通させる複数のユニット挿通孔56が所定間隔で設けられている。ユニット挿通孔56は、光ファイバ心線ユニット18の本数に応じて設けられ、かつその光ファイバ心線ユニット18の横断面とほぼ同形で、かつ僅かに大きめに形成されている。
【0026】
出口側目板36は、入口側目板34とほぼ同じように形成されているが、集合ダイス38に近いため、入口側目板34と比較して、各ユニット挿通孔56がスペーサ挿通孔54の近く配置され、かつ各間隔が接近したものとなっている。
【0027】
入口側目板34及び出口側目板36のスペーサ挿通孔54がスペーサ24により塞がれ、同様にユニット挿通孔56が光ファイバ心線ユニット18により塞がれることから、滑剤が外部に漏れることが殆どない。
【0028】
以上、本発明の滑剤塗布装置によれば、滑剤が覆い内でうずまき状に旋回して各光ファイバテープ心線の表面に均一に塗布され、また、滑剤が覆いの外部に漏れることが殆どなく周囲のクリーン度が維持され、生産性が良く、伝送特性の良好な光ファイバケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の滑剤塗布装置を示す説明図。
【図2】実施例1に適用される入口側目板を示す側面図。
【図3】スペーサに複数本の光ファイバ心線ユニットを挿入してなる光ファイバケーブルを示す横断面図。
【図4】同光ファイバ心線ユニットを示す横断面図。
【図5】従来の滑剤塗布装置を示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
14 光ファイバケーブル
16 光ファイバテープ心線
18 光ファイバ心線ユニット
34 入口側目板
36 出口側目板
38 集合ダイス
42 滑剤供給管
44 滑剤排出管
46 覆い
48 滑剤の流れ
50 滑剤圧送機
52 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線ユニットを順次挿通させる入口側目板と出口側目板との間に跨って設けられ、前記複数本の光ファイバ心線ユニットの全体を包覆する覆いと、
前記覆いの、前記入口側目板近傍部に連結され、滑剤を、前記出口側目板側に向ってうずまき状に旋回するように送り込む滑剤供給管と、
前記覆いに連結され、前記覆い内に残留した滑剤を外部に排出する滑剤排出管と、
前記滑剤供給管に連結され、前記滑剤を、前記滑剤供給管を通じて前記覆い内に圧送供給する滑剤圧送機とを備えたことを特徴とする滑剤塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の滑剤塗布装置において、
前記覆いは、円筒状で、かつ前記出口側目板に向って先細りに形成されていることを特徴とする滑剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1に記載の滑剤塗布装置において、
前記滑剤供給管は、前記覆いの内周面の接線方向で、かつ前記出口側目板側に向くように傾斜していることを特徴とする滑剤塗布装置。
【請求項4】
請求項1に記載の滑剤塗布装置において、
前記滑剤排出管は、前記出口側目板の近傍部に配設され、前記覆い内を吸引する吸引ポンプが接続されていることを特徴とする滑剤塗布装置。
【請求項5】
請求項1に記載の滑剤塗布装置において、
前記入口側目板又は前記出口側目板は、前記光ファイバ心線ユニットの横断面とほぼ同形でかつ僅かに大きいユニット挿通孔を複数備えたものであることを特徴とする滑剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−171135(P2006−171135A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360706(P2004−360706)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】