説明

滴定装置

【課題】滴定試薬供給装置と撹拌装置とを有する滴定装置における撹拌装置への給電態様の簡易化、撹拌装置の配置自由度の向上、滴定装置の実質的な設置スペースの低減を可能とする滴定装置を提供する。
【解決手段】滴定装置1において、滴定試薬供給装置2は、滴定試薬8の供給を制御する制御部25と、外部から供給される電力を撹拌装置側に伝送する給電部11と、を有し、撹拌装置3は、給電部11から伝送される電力を受ける受電部12と、受電部12を介して給電部11から供給される電力を充電可能な2次電池124と、2次電池124から供給される電力で駆動可能であり被検液8を撹拌する撹拌力を発生する撹拌力発生手段33と、を有し、撹拌装置3は、給電部11と受電部12とが近接して給電部11から受電部12への送電が可能となる第1の位置と、給電部11と受電部12とが離間して給電部11から受電部12への送電が不可能となる第2の位置との間で着脱自在である構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理、石油の中和価測定などに利用される滴定に用いられる、滴定試薬供給装置と撹拌装置とを有する滴定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検液に滴定試薬を少量ずつ供給し、被検液の濃度などを測定する滴定は、化学成分の濃度を測定するために有効で、汎用性の高い分析方法であり、例えば、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理、石油の中和価測定などの様々の産業分野で利用されている。
【0003】
そして、被検液に対して滴定試薬を制御可能に供給し、被検液の化学量又は物理量変化をセンサにより検出し、滴定の終点を自動的に判別するようにした滴定装置が実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図7を参照して、従来の滴定装置の一例の概略について説明する。図7に示す滴定装置(自動滴定装置セット)1は、一例として、センサとしてpH電極を用いた、硫酸の水酸化ナトリウムによる中和滴定に適用されるものとする。
【0005】
図7に示す滴定装置1は、概略、滴定試薬を被検液に制御可能に供給する滴定試薬供給装置2と、被検液を撹拌する撹拌装置(スターラ)3と、化学量又は物理量の変化を測定するセンサ6としてのpH電極6A及び比較電極6Bと、pH電極6A及び比較電極6Bによって測定される化学量又は物理量、即ち、ここではpH(又は電位差)の変化の測定結果から滴定の終点を算出する演算処理装置4とを有する。
【0006】
撹拌装置3には、被検液8を収容する被検液容器(ビーカー等)5が載置されている。被検液容器5内には、pH電極6A及び比較電極6Bが挿入され、各電極6A、6Bは、それぞれリード線S1、S2にて演算処理装置4に接続されている。又、被検液容器5内には、後述のノズル7が挿入されている。又、被検液容器5内には、撹拌子(スターラチップ)Cが配置され、撹拌装置3が発生する撹拌力が伝達されて回転することにより被検液容器5内の被検液8を撹拌することが可能である。
【0007】
滴定試薬供給装置2は、被検液に対して所定容量毎に滴定試薬を供給するビュレット装置(自動ビュレット)20を有する。即ち、滴定試薬供給装置2は、滴定試薬供給装置本体21と、シリンジ22と、シリンジ22に嵌合したピストン23と、を備えていえる。ピストン23は、ピストン23に連結された、滴定試薬供給装置本体21内の駆動装置26により、シリンジ22内を往復動可能とされている。駆動装置26は、制御部25によって制御される。
【0008】
駆動装置26によりピストン23を駆動することにより、滴定試薬9を収容した滴定試薬容器10から、導入管L1、3方コック24、導入管L2を介して、シリンジ22に滴定試薬9が導入される。又、駆動装置26によりピストン23を駆動することにより、3方コック24、導入管L3を介して、被検液容器5内に挿入されたノズル7から滴定試薬が所定体積毎に被検液8に供給される。
【0009】
このような滴定装置1において、被検液8に滴定試薬9を少量ずつ供給し、被検液の化学量又は物理量の変化をセンサ6にて測定し、演算処理装置4で滴定の終点を求めることで、自動的に滴定分析を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−108917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の自動滴定装置セットは、典型的には、滴定試薬供給装置と、撹拌装置と、演算処理装置と、を有する。そして、これらは別々に配置されるのが一般的であった。しかしながら、このような自動滴定装置セットは、横に広がる方向にスペースを取るため、操作台上で場所をとっていた。
【0011】
又、通常、撹拌装置は電源が必要で、滴定試薬供給装置や演算処理装置、又は一般の商用電源用のコンセントから、電源コードで電力を供給する必要がある。しかしながら、電源コードを滴定装置が置かれた操作台上を引き回すと、操作台上が煩雑となると共に更に場所を取ることになる。撹拌装置を操作台上で滴定試薬供給装置や演算処理装置からある程度離れた位置に配置しようとすれば、この傾向は更に助長されることになり、自動滴定装置セットの配置の自由度が制限されていた。
【0012】
このように、従来、滴定装置は、その本体の操作台上での設置面積よりも、実質的な占有スペースが広くなり、設置スペースを多く必要としていた。
【0013】
従って、本発明の目的は、滴定試薬供給装置と撹拌装置とを有する滴定装置における撹拌装置への給電態様の簡易化、撹拌装置の配置自由度の向上、滴定装置の実質的な設置スペースの低減を可能とする滴定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る滴定装置にて達成される。要約すれば、本発明は、被検液を撹拌しながら該被検液に滴定試薬を制御可能に供給して該被検液の化学量又は物理量の変化を測定する滴定に用いられる、前記滴定試薬を前記被検液に供給する滴定試薬供給装置と、前記被検液を撹拌する撹拌装置と、を有する滴定装置において、前記滴定試薬供給装置は、前記滴定試薬の供給を制御する制御部と、外部から供給される電力を前記撹拌装置側に伝送する給電部と、を有し、前記撹拌装置は、前記給電部から伝送される電力を受ける受電部と、前記受電部を介して前記給電部から供給される電力を充電可能な2次電池と、前記2次電池から供給される電力で駆動可能であり前記被検液を撹拌する撹拌力を発生する撹拌力発生手段と、を有し、前記撹拌装置は、前記給電部と前記受電部とが近接して前記給電部から前記受電部への送電が可能となる第1の位置と、前記給電部と前記受電部とが離間して前記給電部から前記受電部への送電が不可能となる第2の位置との間で着脱自在であることを特徴とする滴定装置である。
【0015】
本発明の一実施態様によると、前記給電部は1次コイルを有し、前記受電部は2次コイルを有し、前記給電部と前記受電部とが前記1次コイル及び前記2次コイルを介して電磁的に結合することにより、前記給電部から前記受電部へと非接触で電力が伝送される。
【0016】
本発明の一実施態様によると、前記給電部及び前記受電部は、それぞれ電気的接触部としてのコネクタを有しており、それぞれのコネクタが電気的に接続することにより、前記給電部から前記受電部へ接触状態で電力が伝送される。
【0017】
本発明の一実施態様によると、前記化学量又は物理量の変化を測定するセンサによる測定結果から滴定の終点を算出する演算処理装置を有する。前記演算処理装置は、前記滴定試薬供給装置と一体的に設けられていてよい。
【0018】
本発明の一実施態様によると、前記滴定試薬供給装置は、前記被検液に対して所定容量毎に前記滴定試薬を供給するビュレット装置を有し、前記制御部は、前記ビュレット装置からの前記滴定試薬の供給を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、滴定試薬供給装置と撹拌装置とを有する滴定装置における撹拌装置への給電態様の簡易化、撹拌装置の配置自由度の向上、滴定装置の実質的な設置スペースの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る滴定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】
実施例1
[滴定装置の全体構成]
本実施例では、本発明は、図7を参照して説明したものと同様の基本構成を有する滴定装置に適用される。
【0022】
本実施例の滴定装置(自動滴定装置セット)1は、電位差滴定、光度滴定、分極滴定、電気伝導率滴定などに利用することのできる滴定装置である。より詳細には、本実施例の滴定装置1は、中和滴定、非水中和滴定、酸化還元滴定、沈殿滴定、キレート滴定、温度滴定などのあらゆる滴定に適用することができ、検出に用いるセンサとしては、pH電極、ORP電極、電導度電極、イオン電極、吸光度センサ、温度センサなど、滴定に使用できる全てのセンサを使用することができる。特に、本実施例では、滴定装置1は、センサとしてpH電極を用いた、硫酸の水酸化ナトリウムによる中和滴定に適用されるものとして説明する。
【0023】
先ず、図7を参照して滴定装置1の概略全体構成を説明すると、滴定装置1は、滴定試薬を被検液に制御可能に供給する滴定試薬供給装置2と、被検液を撹拌する撹拌装置(スターラ)3と、化学量又は物理量の変化を測定するセンサ6としてのpH電極6A及び比較電極6Bと、pH電極6A及び比較電極6Bによって測定される化学量又は物理量、即ち、ここではpH(又は電位差)の変化の測定結果から滴定の終点を算出する演算処理装置4とを有する。
【0024】
更に説明すると、撹拌装置3には、被検液8を収容する被検液容器(ビーカー等)5が載置されている。被検液容器5内には、pH電極6Aと比較電極6Bが挿入され、各電極6A、6Bは、それぞれリード線S1、S2にて演算処理装置4に接続されている。又、被検液容器5内には、後述のノズル7が挿入されている。尚、本実施例では、例えば図1に示すように、pH電極6Aと比較電極6Bとは、センサ6として一体的に構成された複合電極とされている。センサ6及びノズル7は、後述するようにこれらを保持するホルダと該ホルダを保持するスタンドとによって支持されている。又、被検液容器5内には、撹拌子(スターラチップ)Cが配置され、撹拌装置3が発生する撹拌力が伝達されて回転することにより被検液容器5内の被検液8を撹拌することが可能である。
【0025】
滴定試薬供給装置2は、被検液に対して所定容量毎に滴定試薬を供給するビュレット装置(自動ビュレット)20を有する。即ち、滴定試薬供給装置2は、滴定試薬供給装置本体(以下「供給装置本体」という)21と、シリンジ22と、シリンジ22に嵌合したピストン23と、を備えていえる。ピストン23は、ピストン23に連結された、供給装置本体21内の駆動装置26により、シリンジ22内を往復動可能とされている。駆動装置26は、制御部25によって制御される。このように、本実施例では、滴定試薬供給装置2は、被検液8に対して所定容量毎に滴定試薬9を供給するビュレット装置20を有し、制御部25は、ビュレット装置20からの滴定試薬9の供給を制御する。又、本実施例では、滴定試薬供給装置2は、演算処理装置4にケーブルS3にて接続され、滴定試薬供給装置2の制御部25には、演算処理装置本体41の内部に設けられた演算処理部(演算処理回路基板)42から制御信号が入力されるようになっている。
【0026】
シリンジ22は、滴定試薬9を収容した滴定試薬容器10に、導入管L1、3方コック24の第1、第2の弁24a、24b、導入管L2を介して接続されている。3方コック24は、制御部25によって制御される。駆動装置26によりピストン23を駆動することにより、滴定試薬容器25内の滴定試薬9は、導入管L1、3方コックの第1、第2の弁24a、24b、及び、導入管L2を介してシリンジ22内へと導入される。又、3方コック24の第3の弁24cは、導入管L3を介して、被検液容器5内に挿入されたノズル7に接続されている。
【0027】
このような滴定装置1において、被検液8に滴定試薬9を少量ずつ供給し、被検液の化学量又は物理量の変化をセンサ6にて測定し、演算処理装置4で滴定の終点を求めることで、自動的に滴定分析を行うことができる。本実施例では、演算処理装置4は、滴定の終点を求める処理を行うと共に、逐次にセンサ6から入力される測定結果に応じて滴定試薬供給装置2の駆動、より詳細には滴定試薬の供給動作を制御する制御信号を、滴定試薬供給装置2の制御部25へと送信できるようになっている。
【0028】
[撹拌装置の着脱構成]
図1及び図2は、本実施例の滴定装置1の滴定試薬供給装置2及び撹拌装置3の側面図であり、図1は滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とが近接した状態を示し、図2は滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とが離間した状態を示す。図3は、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3との近接部の内部構造を示す部分断面側面図である。尚、図1〜図3においては、上述の導入管L1、L2及びL3、リード線S1及びS2、ケーブルS3は、図示を省略している。図4は、撹拌装置3への給電構成を示すブロック図である。又、図5及び図6は、それぞれ本実施例の滴定装置1の使用状態の一例を示す斜視図であり、図5は撹拌装置3が滴定試薬供給装置2に近接して配置された状態を示し、図6は撹拌装置3が滴定試薬供給装置2から離間して配置された状態を示す。
【0029】
本実施例では、滴定試薬供給装置2は、滴定試薬の供給を制御する制御部25と、外部から供給される電力を撹拌装置3側に伝送する給電部11と、を有し、撹拌装置3は、給電部11から伝送される電力を受ける受電部12と、受電部12を介して給電部11から供給される電力を充電可能な2次電池124と、2次電池124から供給される電力で駆動可能であり被検液8を撹拌する撹拌力を発生する撹拌力発生手段33と、を有する。そして、撹拌装置3は、給電部11と受電部12とが近接して給電部11から受電部12への送電が可能となる第1の位置と、給電部11と受電部12とが離間して給電部11から受電部への送電が不可能となる第2の位置との間で着脱自在である。特に、本実施例では、給電部11は1次コイル111を有し、受電部12は2次コイル121を有し、給電部11と受電部12とが1次コイル111及び2次コイル121を介して電磁的に結合(電磁誘導)することにより、給電部11から受電部12へと非接触で電力が伝送される。以下、更に詳しく説明する。
【0030】
滴定試薬供給装置2は、全体として略長方体形状の供給装置本体(枠体)21を有する。供給装置本体21は、制御部25に対する指示を入力する入力手段及び滴定試薬供給装置2の動作状態を表示する表示手段のうち少なくとも1つを有する操作部(操作パネル)27が設けられた前面21Aを有するようにすることができる。操作部27には、入力手段としての情報入力キー、表示手段としてのLCD(液晶ディスプレイ)などが設けられている。そして、この操作部27において、滴定試薬供給装置2の動作の各種設定、動作の開始/停止の指示を行うことができる。この場合は、操作者は、通常、この前面21A側から滴定試薬供給装置2の操作を行う。本実施例では、供給装置本体21の前面21Aの幅Wは、供給装置本体21の奥行きDよりも短い。尚、供給装置本体21は、必ずしも上述のように前面21Aに操作部27を設けた構成を採る必要はなく、例えば、演算処理装置4の表示部43及び入力部45(後述)により滴定試薬供給装置2の操作を行うようにすることができる。
【0031】
供給装置本体21の上面21Dには、3方コック24及びシリンジ22が突出して設けられている。又、供給装置本体21の上面に設けられた受容部21F内に滴定試薬容器10が載置されている。又、本実施例では、供給装置本体21の背面21Cから、外部電源接続手段28として、一般の商用電源のコンセントに接続可能な電源プラグ28Bを端部に有する電源コード28Aが延在している。
【0032】
供給装置本体21の前面21Aには、供給装置本体21の底部21Eに隣接して、詳しくは後述する撹拌装置3が略嵌合して配置される嵌合部(充電ステーション部)21A1が設けられている。本実施例では、嵌合部21A1は、前面21Aの大部分を形成する平面よりも供給装置本体21の内側に向けて窪んだ凹部として形成されている。但し、そこに近接して配置される撹拌装置3側に電力を伝送する充電ステーションの形状は、本実施例のような凹形状に何ら限定されるものではなく、供給装置本体21の他の表面と同一平面状であっても、所望により突出していてもよい。
【0033】
そして、供給装置本体21の内部には、供給装置本体21の前面21Aの一部を構成する嵌合部21A1の壁面に近接して、詳しくは後述する給電部11のインターフェース部を構成する1次コイル111が配置されている。又、供給装置本体21の内部には、制御部(制御回路基板)25及び駆動装置26が設けられている。制御部25は、制御素子、演算素子、記憶素子などを有するマイクロコンピュータ、後述する給電部11の回路構成要素などが設けられている。
【0034】
一方、撹拌装置3は、全体として略長方体形状の撹拌装置本体(枠体)31を有する。撹拌装置本体31の高さは、供給装置本体21の高さよりも低く、上述の嵌合部21A1の高さと略同一である。撹拌装置本体31内には、撹拌力発生手段としてのモータ33が設けられている。モータ33は、撹拌装置制御部(制御回路基板)35に設けられたモータ制御回路36を介して供給される電力で駆動される。モータ33の原動軸には、撹拌力伝達部材として、磁石を備えた回転部材34が接続されている。被検液容器5は、撹拌装置本体31の上面31Dに載置され、被検液容器5内には強磁性体又は磁石を備えた撹拌子Cが配置される。被検液容器5を撹拌装置本体31の上面31Dの所定の位置に配置することによって、撹拌子Cは回転部材34によって磁気的に拘束される。そして、回転部材34がモータ33から伝達される回転駆動力によって回転することによって、回転部材34の回転に伴って被検液容器5内の撹拌子Cが回転し、被検液容器5内の被検液8が撹拌される。
【0035】
本実施例では、撹拌装置本体31の上面31Dには、センサ及びノズルの支持手段14を構成するスタンド14Aが固定されている。本実施例では、スタンド14Aは、撹拌装置本体31の上面31Dの1つの隅に近接して該上面31Dに取り外し可能に取り付けられている。このスタンド14Aには、センサ及びノズルの支持手段14を構成するホルダ14Bが、移動可能且つ固定可能に取り付けられている。勿論、スタンド14A及びホルダ14Bは、撹拌装置3とは別個に設けてもよい。
【0036】
又、撹拌装置本体31の前面31Aには、撹拌装置制御部35に対する指示を入力するための撹拌装置操作部32が設けられている。本実施例では、撹拌装置操作部32には、電源スイッチ、撹拌速度を任意に変更するための回動可能なツマミなどが設けられており、撹拌装置操作部32において、モータ33への電力供給のON/OFF(即ち、撹拌動作のON/OFF)、モータ33の駆動速度(即ち、撹拌速度)の変更を指示することができる。
【0037】
撹拌装置本体31は、その背面31Cを供給装置本体21の前面21Aと対向させた状態で更に近接させることで、撹拌装置本体31の背面31C側の少なくとも一部分を、供給装置本体21の前面21Aに形成された嵌合部21A1に略嵌合させることができる。この位置が、給電部11と受電部12とが近接して給電部11から受電部12への送電が可能となる撹拌装置3の第1の位置である。撹拌装置3が、この所定の第1の位置に配置された状態で、供給装置本体21の両方の側面21B、21Bと、撹拌装置本体31の両方の側面31B、31Bとは、それぞれ略同一平面となる。又、この状態で、供給装置本体21の前面21Aの一部を構成する嵌合部21A1の表面と撹拌装置本体31の背面31Cとは略平行に配置されて近接又は接触する。更に、この状態で、供給装置本体21の前面21Aと撹拌装置本体31の前面31Aとは略平行に配置される。このように、本実施例では、撹拌装置3は、上記所定の第1の位置において滴定試薬供給装置2の前面21Aの前に配置される。尚、撹拌装置3は、必ずしも滴定試薬供給装置2の前面21Aの前に配置される必要はなく、例えば、側面21B、21Bの横、或いは背面21Cの後など、状況に合わせて適した位置に配置するように設計することもできる。
【0038】
そして、撹拌装置本体31の内部には、撹拌装置本体31の背面(壁面)31Bに近接して、詳しくは後述する受電部12のインターフェース部を構成する2次コイル121が配置されている。上述のように撹拌装置3が滴定試薬供給装置2の嵌合部21A1に略嵌合した位置に配置された状態で、供給装置本体21の内部に配置された1次コイル111と、撹拌装置本体31の内部に配置された2次コイル121とが対向するようになっている。
【0039】
又、本実施例では、演算処理装置4は、演算処理装置本体(枠体)41の内部に上記演算処理部42を有し、又その前面には滴定分析の結果を表示するLCDなどとされる表示部43及び演算処理部42に対する指示を入力する操作キーなどとされる入力部45が設けられ、更に上面にはプリンタ44が設けられている。演算処理部42には、制御素子、演算素子、記憶素子などを有するマイクロコンピュータなどが設けられている。尚、本実施例では、入力部45において、滴定試薬供給装置2の動作の各種設定、動作の開始/停止の指示などを行うことができるようにする。
【0040】
このように、本実施例では、化学量又は物理量の変化を測定するセンサ6による測定結果から滴定の終点を算出する演算処理装置4は、滴定試薬供給装置2とは別個に設けられている。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、演算処理装置4は、滴定試薬供給装置2と一体的に設けられていてもよい。
【0041】
[送電構成]
次に、滴定試薬供給装置2に設けられる給電部11と、撹拌装置3に設けられる受電部12について更に詳しく説明する。
【0042】
本実施例では、滴定試薬供給装置2から撹拌装置3へと非接触にて電力伝送を行う。即ち、滴定試薬供給装置2は電力を非接触にて送電するための給電部11を有し、撹拌装置3は滴定試薬供給装置2からの電力を非接触にて受電するための受電部12を有し、給電部11から受電部12へと電磁誘導作用を利用して非接触に電力を伝送する。給電部(給電装置)11と受電部(受電装置)12とは、電磁的に結合することにより非接触で電力伝送を行う非接触電力伝送装置を構成する。給電部11は、供給装置本体21の内部に収納されている。又、受電部12は撹拌装置本体31の内部に収納されている。従って、滴定試薬供給装置2、撹拌装置3のいずれにおいても、撹拌装置3への給電のための電気的な接触部は露出していない。
【0043】
図4を参照して、滴定試薬供給装置2に設けられた給電部11は、整流回路113と、インバータ回路112と、1次コイル(送電コイル)111と、を有する。整流回路113は、上述の電源コード28A、電源プラグ28Bを介して、外部の電源として例えば一般的な商用電源に接続されている。整流回路113は、その外部の電源から供給される交流電圧を所定の直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をインバータ回路112に供給する。インバータ回路112は、整流回路113からの直流電圧から所定の周波数の交流電圧を生成し、その生成した交流電圧を1次コイル111に供給する。
【0044】
撹拌装置3に設けられた受電部12は、2次コイル(受電コイル)121と、整流回路122と、充電回路123と、2次電池124と、を有する。2次コイル121は、撹拌装置3が滴定試薬供給装置2の嵌合部21A1に略嵌合した位置に配置されている時に、給電部11の1次コイル111と接近して配置される。この状態で、1次コイル111と2次コイル121とが電磁的に結合して、給電部11から受電部12へと非接触による電力供給が可能となる。1次コイル111と2次コイル121との電磁結合により2次コイル121に誘起される交流電圧は、整流回路122に供給される。整流回路122は、2次コイル121に誘起される交流電圧を整流して直流電圧を出力する。整流回路122から出力される直流電圧は、充電回路(充電制御回路)123を介して2次電池124に供給され、2次電池124が充電される。
【0045】
撹拌装置3のモータ33は、モータ制御回路36を介して2次電池124から電力を供給される。モータ制御回路36は、上述の撹拌装置操作部32からの指示により、2次電池124からモータ33への給電を制御する。これにより、撹拌装置3が、給電部11と受電部12とが離間して給電部11から受電部12への送電が不可能となる第2の位置に配置されていても、モータ33は2次電池124からの電力で作動することができる。
【0046】
又、図4に示すように、2次電池124とモータ制御回路36との間に、電源回路125を設けることができる。これにより、2次電池124の容量が少ない又は空の場合でも、撹拌装置3が上記第1の位置に配置された時に、整流回路122から出力される直流電圧を電源回路125及びモータ制御回路36を介してモータ33へと供給することで、滴定試薬供給装置2側から撹拌装置3のモータ33へと電力を供給して、撹拌装置3を作動させることができる。但し、この電源回路125は必須ではない。
【0047】
1次コイル111及び2次コイル121の構造としては、鉄やフェライトで形成された芯を有する有芯コイルであっても、空芯コイルであってもよい。本実施例では、1次コイル111及び2次コイル121として有芯コイルを用いた。即ち、1次コイル111は、1次コイル用コア111aに巻かれており、2次コイル121は2次コイル用コア121aに巻かれている。1次コイル用コア111a、2次コイル用コア121aはいずれも棒状体で構成されており、撹拌装置3が滴定試薬供給装置2の嵌合部21A1に略嵌合した位置にある時に、1次コイル用コア111aの各端面と、2次コイル用コア121aの各端面とが対向するようになっている。空芯コイルを用いる場合には、磁界を1次コイルや2次コイルに集め易くするように、1次コイル及び2次コイルの裏側にフェライト板や磁性体シートを貼り付けてもよい。
【0048】
尚、本実施例では、撹拌装置3が、滴定試薬供給装置2の嵌合部21A1に略嵌合し、給電部11と受電部12とが近接して送電が可能な上記所定の第1の位置に配置された時に、供給装置本体21の各側面21Bと撹拌装置本体31の各側面31Bとは略同一平面となり、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とは一体感を持ったデザインになる。そのため、操作者は、撹拌装置3を容易に上記所定の第1の位置に配置することができる。従って、本実施例では、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とを位置合わせをするための特別の手段は設けなくてもよい。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、撹拌装置3と滴定試薬供給装置2との位置合わせを更に容易とするための位置決め手段として、撹拌装置3及び滴定試薬供給装置2に、互いに係合又は嵌合する突起及び/又は凹部を設けることができる。例えば、図1、図2及び図6に示すように、供給装置本体21の嵌合部21A1の表面に凹部21A2を設け、この凹部21A2に嵌合又は遊嵌する突起31C1を撹拌装置本体31の背面31Cに設けることができる。又、これらの位置決め手段を兼ねるか又はこれらの位置決め手段とは個別に、例えば圧入嵌合やスナップフィット(弾発係合)によって滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とを取り外し可能に固定する固定手段を設けてもよい。
【0049】
又、撹拌装置3の受電部12が滴定試薬供給装置2の給電部11に対して送電可能な所定の距離内に近づいたことを検知する接近検知機構を設けることができる。この接近検知機構としては、例えば撹拌装置3側に接近指示手段を設け、滴定試薬供給装置2側に撹拌装置3が滴定試薬供給装置2に対して送電可能な所定の位置に配置された時に上記接近指示手段を検知する接近検知手段を設けることができる。これにより、接近検知手段が接近指示手段を検知することによって、給電部11と受電部12とが電磁結合可能な状態であることを検知することができる。そして、接近検知手段が接近指示手段を検知している時に、インバータ回路112から1次コイル111への交流電圧の出力を指示又は許可するようにすることができる。例えば、上記接近指示手段として磁石を用い、接近検知手段として磁力検知センサを用いることができる。或いは、接近指示手段として突起を設け、接近検知手段としてこの突起によって付勢されてON/OFF状態が変化するスイッチを設けることができる。或いは、接近検知機構が、接近検知手段として、例えば1次コイル111のリアクタンスの変化から1次コイル111と2次コイル121との接近を検知するようにしてもよい。
【0050】
このように、撹拌装置3が給電部11から受電部12への送電が可能な第1の位置にあることを検知するための接近検知手段を設けることによって、撹拌装置3が給電部11と受電部12とが電磁結合不可能な第2の位置、即ち、給電部11から受電部12への送電が不可能な第2の位置にある時に、不用意に給電部12の給電動作が行われることを防止することができる。
【0051】
ところで、撹拌装置3の給電構成については、図8に示すような構成を採用することもできる。図8において図4に示すものと共通した要素には同一の符号を付している。図8に示す給電構成では、滴定試薬供給装置2に設けられた給電部11から撹拌装置3に設けられた受電部12へと、給電部11に設けられた電気的接触部としてのコネクタ114と受電部12に設けられた電気的接触部としてのコネクタ126とが電気的に接続することにより、接触状態で電力が伝送される。そのため、給電部11の整流回路113によって交流電圧から所定の直流電圧へ変換した後は、そのまま直流電圧が受電部12の充電回路123に印加されることになり、充電回路123を介して2次電池124に電力が供給され、2次電池124が充電される。そして、撹拌装置3のモータ33は、モータ制御回路36を介して2次電池124から電力を供給される。モータ制御回路36は、撹拌装置操作部32からの指示により、2次電池124からモータ33への給電を制御する。これにより、撹拌装置3が、給電部11と受電部12とが離間して給電部11から受電部12への送電が不可能となる第2の位置に配置されていても、モータ33は2次電池124からの電力で動作することができる。このように、滴定試薬供給装置2及び撹拌装置3に電気的接触部を外部に露出するように設けて、接触式にて滴定試薬供給装置2から撹拌装置3へと電力を伝送することも可能である。
【0052】
又、図8に示す給電構成においても、上述したように、電源回路125を設けることによって、2次電池124の容量が少ない又は空の場合でも、撹拌装置3が上記所定の第1の位置に配置されたときに撹拌装置3へ電力を供給することによって、作動させることができる。この時、上述したように、滴定試薬供給装置2の嵌合部21A1の表面に凹部21A2を設け、この凹部21A2に嵌合又は遊嵌する突起31C1を撹拌装置3の背面31Cに設けて、両者を嵌合させて位置決めするようにしてもよい。
【0053】
又、上記コネクタ114、126については、例えば図9に示すように、一方のコネクタ114に嵌合用の凸部114Aを設け、この凸部114Aが嵌るための凹部126Aを他方のコネクタ126に設けて、両コネクタ114、126を互いに嵌合させた時に上記凸部114A、凹部126Aが嵌り合ってロック状態を形成するようにしてもよい。これにより、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とが強固に位置決めされて、給電部11と受電部12との電気的な接触状態が安定化する。
【0054】
図5は、撹拌装置3が上記所定の第1の位置に配置された状態における使用態様を示している。本実施例によれば、この状態では、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とは一体感を持ったデザインになると共に、操作台の上で横に広がって配置されないため、滴定装置1の設置スペースを小さくするこができる。
【0055】
一方、図6は、上記第2の位置に配置された状態における使用態様を示している。このように、本実施例では、撹拌装置3を充電電源方式とすることで、撹拌装置3を滴定試薬供給装置2から離間させた状態の時の配置の自由度を大幅に向上することができる。又、撹拌装置3への給電のために電源コードを操作台上に引き回す必要がないので、撹拌装置3の給電態様の簡易化を図り、又滴定装置1の設置のために実質的に必要になる面積を更に低減することができる。
【0056】
以上、本実施例によれば、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3とを有する滴定装置1における撹拌装置3への給電態様の簡易化、撹拌装置3の配置自由度の向上、滴定装置1の実質的な設置スペースの低減が可能となる。又、特に、滴定試薬供給装置2と撹拌装置3との間で非接触にて電力伝送を行うようにすることで、撹拌装置3への給電のための電気接点を露出させることがないため、該接点の汚損による接触不良などの可能性を排除することができる。
【0057】
尚、上述の実施例では、滴定装置1は滴定試薬供給装置2が滴定試薬を所定容量毎に被検液に供給するビュレット装置を備えているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カールフィッシャー法を利用した電量滴定法による水分計に本発明を適用することもできる。即ち、当業者には周知の通り、電量滴定法では、滴定試薬は、滴定試薬供給装置が備える電流発生手段から出力される電流量に応じて、電解酸化によって滴定セル内に発生する。この場合、滴定試薬供給装置の制御部は、上記電流を制御することによって、滴定試薬の供給を制御する。勿論、本発明は、カールフィッシャー法を利用した容量滴定法による水分計にも適用することができる。このような滴定装置においても、上記実施例と同様に滴定試薬供給装置と撹拌装置とを着脱可能として、又撹拌装置を滴定試薬供給装置から供給される電力によって充電される2次電池で駆動可能とすることによって、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る滴定装置の一実施例における滴定試薬供給装置及び撹拌装置(滴定試薬供給装置と撹拌装置とが近接した状態)の側面図である。
【図2】本発明に係る滴定装置の一実施例における滴定試薬供給装置及び撹拌装置(滴定試薬供給装置と撹拌装置とが離間した状態)の側面図である。
【図3】本発明に係る滴定装置の一実施例における滴定試薬供給装置と撹拌装置との近接部の内部構造を示す部分断面側面図である。
【図4】本発明に係る滴定装置の一実施例における撹拌装置の給電構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る滴定装置の一実施例における撹拌装置が滴定試薬供給装置に近接して配置された状態での使用態様の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る滴定装置の一実施例における撹拌装置が滴定試薬供給装置から離間して配置された状態での使用態様の一例を示す斜視図である。
【図7】滴定装置の全体構成を説明するための概略構成図である。
【図8】本発明に係る滴定装置の他の実施例における撹拌装置の給電構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す給電構成におけるコネクタ間の嵌合状態の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 滴定装置(自動滴定装置セット)
2 滴定試薬供給装置
3 撹拌装置
4 演算処理装置
11 給電部
12 受電部
111 1次コイル
112 2次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液を撹拌しながら該被検液に滴定試薬を制御可能に供給して該被検液の化学量又は物理量の変化を測定する滴定に用いられる、前記滴定試薬を前記被検液に供給する滴定試薬供給装置と、前記被検液を撹拌する撹拌装置と、を有する滴定装置において、
前記滴定試薬供給装置は、前記滴定試薬の供給を制御する制御部と、外部から供給される電力を前記撹拌装置側に伝送する給電部と、を有し、
前記撹拌装置は、前記給電部から伝送される電力を受ける受電部と、前記受電部を介して前記給電部から供給される電力を充電可能な2次電池と、前記2次電池から供給される電力で駆動可能であり前記被検液を撹拌する撹拌力を発生する撹拌力発生手段と、を有し、
前記撹拌装置は、前記給電部と前記受電部とが近接して前記給電部から前記受電部への送電が可能となる第1の位置と、前記給電部と前記受電部とが離間して前記給電部から前記受電部への送電が不可能となる第2の位置との間で着脱自在であることを特徴とする滴定装置。
【請求項2】
前記給電部は1次コイルを有し、前記受電部は2次コイルを有し、前記給電部と前記受電部とが前記1次コイル及び前記2次コイルを介して電磁的に結合することにより、前記給電部から前記受電部へと非接触で電力が伝送されることを特徴とする請求項1に記載の滴定装置。
【請求項3】
前記給電部及び前記受電部は、それぞれ電気的接触部としてのコネクタを有しており、それぞれのコネクタが電気的に接続することにより、前記給電部から前記受電部へ接触状態で電力が伝送されることを特徴とする請求項1に記載の滴定装置。
【請求項4】
前記化学量又は物理量の変化を測定するセンサによる測定結果から滴定の終点を算出する演算処理装置を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の滴定装置。
【請求項5】
前記演算処理装置は、前記滴定試薬供給装置と一体的に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の滴定装置。
【請求項6】
前記滴定試薬供給装置は、前記被検液に対して所定容量毎に前記滴定試薬を供給するビュレット装置を有し、前記制御部は、前記ビュレット装置からの前記滴定試薬の供給を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の滴定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−241263(P2008−241263A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77946(P2007−77946)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】