漁獲物取扱方法及び漁獲物収容バッグ
【課題】漁船において漁獲物wを支障のない能率で魚倉内に収容できることを確保した上で、漁獲物wを踏みつぶすことなく能率的に水揚げしたり、鮮度良く衛生的に目的地まで搬送することを可能とする。
【解決手段】水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面23a及び側周面23bが網地27で形成され上面が開口23cになっている袋体23と、底面23a及び側周面23bのうち、袋体23内の水が抜け落ちるための通路となる網地27部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材24と、袋体23の側周面23bの各隅角部の上に固定された筋縄25と、該筋縄25のそれぞれから上方へ延出されており上部に吊り力を付与される吊り手棒26とを備えた漁獲物収容バッグ22に漁獲物wを収容させる。
【解決手段】水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面23a及び側周面23bが網地27で形成され上面が開口23cになっている袋体23と、底面23a及び側周面23bのうち、袋体23内の水が抜け落ちるための通路となる網地27部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材24と、袋体23の側周面23bの各隅角部の上に固定された筋縄25と、該筋縄25のそれぞれから上方へ延出されており上部に吊り力を付与される吊り手棒26とを備えた漁獲物収容バッグ22に漁獲物wを収容させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船上での漁獲物取扱方法及び該方法の実施にさいして使用される漁獲物収容バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、漁場における漁獲物は鮮度を落とさないように出来るだけ迅速に漁船の魚倉2内に搬入し冷却状態で保存し、帰港して水揚げするように取り扱われている
沖合底びき網漁船(沖底船)における漁獲物の取扱い例について詳細に説明する。
図1〜図4は既存の沖底船に係り、図1は側面視説明図、図2は平面図、図3は上甲板の下側近傍を上方から見た図、図4及び図5は一部を拡大した斜視図である。これらの図に示すように、船体1内に魚倉2が形成されている。魚倉2は内底板2a、側外板2b、2c、前隔壁2d、後隔壁2eのほか、上甲板3及び最上層甲板(船楼甲板)4からなる天井板などで周囲を囲まれている。最上層甲板4には荷揚げ口5が形成されている。
【0003】
魚倉2内は船長さ方向に沿った起立状の縦仕切壁6aと船巾方向に沿った起立状の横仕切壁6bとで多数の枡6が形成されており、縦仕切り壁6a及び横仕切り壁6bの下縁は内底板2aの上面である床面に支持されている。各枡6は例えば船長さ方向を2m、船巾方向を2m、そして高さを1.8mとなされると共に高さを魚倉2高さの全長に及ばない大きさとなされている。
【0004】
縦仕切壁6a及び横仕切壁6bの交叉位置には内底板2aに下端を固着されて起立された起立支持部材7が設けられている。そして起立支持部材7、側外板2b、2c、前隔壁2d及び後隔壁2eの相互間に縦仕切壁6a及び横仕切壁6bが形成されている。縦仕切壁6a及び横仕切壁6bは図5に示すように何れも複数の差し板8からなり、これら差し板8は起立支持部材7、側外板2b、2c、前隔壁2d及び後隔壁2eのそれぞれに固定された受け部材7aを介して抜き差しによる分解組立可能に位置決めされている。各差し板8は例えば、木板となされており、高さ30cm、厚さ4cm、長さ200cm程度となされる。
【0005】
魚倉2の後部上方には魚落とし室9が形成されている。魚落とし室9は床面2aを上甲板3で形成され、上面を傾斜板10及び最上甲板4からなる天井板で形成され、側周面を起立壁面板11で形成されている。そして、最上甲板4には油圧ハッチ12が設けられている。また魚落とし室12の横外方側の位置から魚倉2の前部に至る魚倉2内範囲で、枡6の上側となる位置には、漁獲物wを前方へ支持搬送するためのベルトコンベア13が固設されている。
14は底曳きウインチ、15は前側クレーン、16は後側クレーン、17はスリップウエイである。
【0006】
このような構造の沖底船において漁獲物wの魚倉2内への搬入は次のように実施される。
沖底船により底曳きされた底曳き網は底曳きウインチ14や後側クレーン16などでスリップウエイ17を経て船上に巻き上げられ、油圧ハッチ12の近傍に位置されるのであり、この後、底曳き網末端のチャックを開放される。これにより漁獲物wはチャックの開放された開口を通じて底曳き網外方へ落下され、予め開放作動されている油圧ハッチ12を通じて魚落とし室9内の床面9a上に導入される。
【0007】
魚落とし室9内では作業者が床面9aに溜まった漁獲物wについて種類や大小で選別したり、混獲物を選別する処理を行い、起立壁面板11の作業用開口を通じることにより、目的魚のみをベルトコンベア13の搬送始端に投入する。
【0008】
ベルトコンベア13に投入された漁獲物wは前方へ搬送され、予め位置決めされた伸縮可能な可動式の誘導傾斜樋18に達したとき、作業者により又は機械的に誘導傾斜樋18内に落下され、以後、誘導傾斜樋18に案内されて予定された枡6の上方からその内方へ落下される。
【0009】
図6は枡6内に漁獲物wが収容された状態を示す断面図である。漁獲物wを収容する予定の枡6のそれぞれの底面2aには予め2乃至3枚の平畚19を展開状態にして段重ね状に敷いておく。このさい、これら平畚19の四隅に設けられた吊り手棒19aの上部の吊り環部は枡6の四隅の起立支持部材7、前隔壁2d、後隔壁2e又は側外板2a、2bの枡6上部位置に同体状に固着されたフック部材20に順に掛け止める。したがって各枡6の平畚19上に誘導傾斜樋18から落下した漁獲物wが収容される。
【0010】
一方、荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bは、誘導傾斜樋18から漁獲物wが落下され或る程度蓄積されたとき、ベルトコンベア13の停止により誘導傾斜樋18から漁獲物wが落下するのを一時的に停止させ、この停止中に、図5に示すように該枡6A、6B内の漁獲物wの上面に2又は3枚程度の平畚19を展開状態で敷き、これら平畚19の四隅に設けられた吊り手棒19aの上部の吊り環部を先と同様にフック部材20に順に掛け止める。
【0011】
この後、再びベルトコンベア13を作動させ、誘導傾斜樋18からこれら平畚19の上に漁獲物wを落下させる。これにより、該枡6A、6Bには最下位置の平畚19上と中間高さの平畚19上の双方に漁獲物wが収容された状態となる
【0012】
漁獲物wは誘導傾斜樋18を移動させることにより各枡6C〜6Lに順に収容させるようにするが、このさい積荷による船体の傾斜が大きくならないように前後左右のバランスが得られるように実施する。また荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bへの漁獲物の収容は他の枡6C〜6Lへの漁獲物wの収容が終了した後に実行するのがよい。
【0013】
こうして魚倉2内に搬入された漁獲物wを冷却状態とするには、魚倉2内を冷却装置で冷却するか、或いは、砕片状の氷などを漁獲物wと一緒に枡6内に供給する。なお漁獲物wの搬入時には荷揚げ口5は密閉状態を維持され、油圧ハッチ12は漁獲物wの搬入終了時に閉鎖される。
【0014】
上記のように魚倉2内に搬入された漁獲物wを水揚げするさいは次のように実施される。
図7は沖底船から漁獲物wを水揚げする様子を示している。沖底船が水揚げ場に着いたとき、前側クレーン15を使用することにより、荷揚げ口5の密閉蓋を開放する。そして、先ずは荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6B内の漁獲物wを任意な一側の枡から水揚げし、次に他側の枡の水揚げをする。
【0015】
このさいの処理は、次のように行う。即ち、枡6A、6B内の中間高さ位置に敷いた平畚19のうち、最上位置のものの四隅の吊り手棒19aの吊り環部を一点に集めて前側クレーン15の吊りフック21に掛け、吊りフック21を引き上げることで最上位置の平畚19を吊り上げる。このさい、最上位置の平畚19上には該平畚19のみでは揚がり切らない量の漁獲物wが載っているので該平畚19の側縁から漁獲物wがこぼれ落ち、第2番目の高さ位置の平畚19上に載った状態となる。
【0016】
次いで第2番目以降の各平畚19を前側クレーン15で同様に引き上げる。このさい、引き上げれる1つの平畚19のみでは揚がり切らない漁獲物wが載った状態となることがある。このときは先と同様に、該平畚19上の漁獲物wが側縁からこぼれ落ち、その下側の平畚19上に載った状態となる。そして、最下位置の平畚19を引き上げるときは該平畚19のみで十分に引き上げることのできる量の漁獲物wしか載っていない状態となり、該平畚19を引き上げることで、各枡6A、6B内の漁獲物wは全て引き上げられる。
この一連の処理において平畚19の吊り手棒19aを吊りフック21に掛けるときには、作業者は枡6の内方に入って漁獲物wの上に乗った状態となる。
【0017】
荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6B内の漁獲物wの水揚げが終了した後は、他の枡6C〜6L内の漁獲物wの水揚げを行う。
【0018】
代表的に、任意な1つの枡(代表枡)6C内の漁獲物wを水揚げするときの手順を説明する。荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bにうち代表枡6Cに正対する枡6A内に別の平畚19を新たに敷いた後、代表枡6Cを形成した差し板8のうち枡6A側に存在した最上位置のものから必要枚数だけ順に取り外し、代表枡6C内の漁獲物wを先に取り外された差し板8位置を経て枡6A内の平畚19上に落下させる。枡6A内の平畚19上に収容限界量を超えない多量の漁獲物wが載った状態となったとき、この平畚19を先と同様に吊りフック21に掛けて引き上げる。このような処理を適当回数行って、代表枡6C内の漁獲物wが適当に少なくなったとき、代表枡6C内に作業者が入り、代表枡6C内の各平畚19の吊り手棒19aの吊り環部を吊りフック21に予め掛け吊された荷役用ワイヤの下端にシャックルなどを介して結合し、各平畚19を順に前側クレーン15で引き上げる。
【0019】
代表枡6C内の平畚19を引き上げるさいは、該平畚19が吊りフック21の真下に位置していないため、吊りフック21に掛け吊された荷役用ワイヤを荷揚げ口5を経て魚倉2内へ斜めに引き入れて該荷役用ワイヤの下端に該平畚19の吊り手棒19aを結合させた後、前側クレーン15に荷役用ワイヤを引き上げさせる。こうして代表枡6C内の各平畚19の引き上げが進行するに伴って、代表枡6C内の漁獲物wは順次に少なくなるが、これに合わせて、代表枡6Cを形成した差し板8のうち枡6A側のものを順に外していき、平畚19の引き上げ作業を容易化させる。代表枡6C内の各平畚19が全て引き上げられたとき、代表枡6C内の漁獲物wは全て水揚げされる。
その他の枡6内の漁獲物wの水揚げは代表枡6C内のそれと同様に又は近似して行われる。
【0020】
次に本発明に関連した他の公知文献に言及する。
特許文献1には、漁船上で漁獲物を魚倉内の枡内に搬送し収容する技術が開示されている。この技術では漁獲物は既述した沖底船の場合と同様に、枡内に直接に落下させるように取り扱われる。
【0021】
特許文献2には、漁獲物を移送用袋に収容して移送する技術が開示されている。ここで使用される移送用袋は上細り状の錐形となされているため上部開口が袋本体下部の大きさに較べて小さくなると共に、内方には水が蓄えられて、該水の中に生きた漁獲物wを収容するものであり、したがって漁船上において漁獲物を魚倉2内に能率的に収容したり、魚倉2内への漁獲物wの収容において魚倉2内のスペースを有効に利用したり、さらには漁獲物wを多量に収容して能率的に搬送する上では不向きなものとなっている。
【0022】
【特許文献1】特開平9−255138号公報
【特許文献2】特開2007−1640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
既述した沖底船における漁獲物wの取扱いでは漁獲物wが収容されている枡6内に入って作業するようになるため、作業者が漁獲物wを踏みつぶすようになることは避けられない。したがって漁獲物wは一般に加工原料(すり身やひき割りの材料)としての扱いとなる。また枡6内にバラ積みされた漁獲物wは水揚げされるさいに平畚19に収容して陸上に移動され平畚19上からトラックの荷台内などに移し替えるように取り扱われるため、鮮度良く衛生的に目的地まで搬送することが困難となる。
特許文献1に開示された技術においても上記と同様な欠点があると思われる。
【0024】
本発明はこのような実情に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、漁船において漁獲物wを支障のない能率で魚倉2内に収容できることを確保した上で、漁獲物wを踏みつぶすことなく能率的に水揚げしたり、鮮度良く衛生的に目的地まで搬送することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、本発明では、水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、底面部及び側周面のうち、袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部の上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出されて上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えた漁獲物収容バッグを使用して実施する。
【0026】
即ち、漁獲物収容バッグの複数個を、漁船の魚倉内の底面上に分解可能に形成された枡のそれぞれの内方に整列させて位置保持させ、この後、これら漁獲物収容バッグのそれぞれの開口の上方から漁獲物を落下させるように実施する。
【0027】
この発明において、複数の漁獲物収容バッグは、漁船の枡の大きさや構造が従来と変わりないものであっても、枡内に従来と同様な量の漁獲物を能率的に収容することを可能とし、また漁獲物の水揚げは漁獲物収容バッグのそれぞれを単独に吊り搬送することにより従来のクレーンの使用により能率的に実行されるようになる。また各漁獲物収容バッグはその吊り手棒がクレーンの吊りフックに直接に又は間接的に掛けられた後、該吊りフックを引き上げることにより水揚げされるようになり、また1つの漁獲物収容バッグを水揚げした後は、その存在していた魚倉2内の床面上に作業スペースが確保されるため、作業者は水揚げのために漁獲物の上に乗る必要がなくなり、漁獲物は作業者に踏みつぶされることがなくなる。水揚げした後の漁獲物収容バッグは陸上においてトラックの荷台などにそのまま載せ目的地まで搬送することが可能となる。
【0028】
またシート部材は漁獲物収容バッグ内の漁獲物が袋体の網目を通じて外方へ部分的に張り出した状態になることを阻止して、漁獲物が他物との接触により損傷するのを防止すると共に、袋体に対する漁獲物の相対移動を円滑化させて、漁獲物の摩擦による損傷を防止するほか、漁獲物収容バッグ内の漁獲物の温度上昇を抑制して該漁獲物の鮮度を維持する上で寄与するものとなる。またシート部材が袋体の一部に被着されることは漁獲物収容バッグ内の不要な水を網目を通じて外方へ漏出させることを可能となして、漁獲物収容バッグの搬送重量を軽減させるほか、漁獲物収容バッグ内の漁獲物の鮮度を維持させる上で寄与する。また筋縄及び吊り手棒はこれに作用する吊り荷重を袋体の網地へ均等化させ分散させる上で寄与する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、漁船上において漁獲物を魚倉の枡内に直接に落下させる場合と略同様の能率で魚倉内に収容することができる上に、作業者が漁獲物に触れなくても漁獲物収容バッグにより漁獲物を能率的且つ衛生的に水揚げすることができると共に、漁獲物を踏みつぶすことがなくなるのである。
【0030】
また漁獲物収容バッグに漁獲物が収容された後は、漁獲物が目的地に到達するまで人との接触を阻止できるのであり、したがって漁獲物を鮮度良く衛生的にしかも人為的な事故などを発生させることなく安全に目的地の加工業者などに届けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明の詳細を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0032】
図8は本発明の実施例で使用される漁獲物収容バッグを示す斜視図、図9は前記漁獲物収容バッグの各部を示す図、図10は前記漁獲物収容バッグの一部を展開した状態を示す説明図である。
【0033】
本実施例では、図8に示すような漁獲物収容バッグ22を使用する。
この漁獲物収容バッグ22は袋体23とシート部材24と筋縄25と吊り手棒26とを備えている。袋体23は、水平断面形状が正方形である上下向き一様断面有底筒状とされ底面23a及び側周面23bが網地27で形成され上面が開口23cとなっている。なお、吊り手棒26は棒材でもロープ、ワイヤなどでも良い。
【0034】
側周面23bは図9に示すような2種の側面パネルa1、a2からなっている。矢印方向b1で対向した2つの側面パネルa1、a1のそれぞれには方形状の網地27の上下左右の端部に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に方形状のシート部材24aが被着されている。一方、矢印方向b2で対向した2つの側面パネルa2、a2のそれぞれには上下左右の端部に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に方形状のシート部材24bが被着されており、このさいシート部材24bは下部中央位置に略3つの網目分の巾の方形状切欠c1を形成されている。
【0035】
底面23aは1つの底面パネルa3からなっている。この底面パネルa3には方形状の網地27の外周囲に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に同一大きさの2つの方形状のシート部材24c、24cが被着されている。これら2つのシート部材24c、24cは、例えば略5つの網目分の長さだけ離間される。
【0036】
2つの側面パネルa1、a1と底面パネルa3とは図10に示すように一列状に連続させた状態において、チャック28が設けられるのであり、具体的には例えば、一方のシート部材24bの方形状切欠c1から他方のシート部材24bの方形状切欠c1に至る長さ範囲の巾中央位置の1つの網目範囲内の網線を切除した後、一方の方形状切欠c1から他方の方形状切欠c1に至る全長範囲でしかも巾中央の1つの網目範囲にチャック28を縫着する。このチャック28は雌雄の係合部28aとこれら係合部28aを支持した一対の帯布28b、28bからなっている。
【0037】
網地27は一般には網線27aの直径を1.5mm〜7mmとされ、目合を20mm〜60mmとされるのであり、また図8に示す袋体23において網線27aは上下方向と水平方向へ向かうような角目使いとされる。これにより、袋体23は漁獲物wを収容して吊り手棒26を引き上げたとき、網地27が袋体23の横方向への膨らみを効果的に阻止するものとなる。
【0038】
シート部材24は樹脂材料で形成するのが強度上やコストなどの点でよいのであり、好ましくはポリエステルに塩ビ加工をしたものとする。このシート部材24は撓曲自在に形成されると共に良好な断熱性を有するものとなされ、また袋体23内の水が抜け落ちるための通路が確保されるように底面23a及び側周面23bのうち該通路となるべき網地27部分を除いた範囲に被着され、袋体の内面の50%〜95%を被った状態となっている。このさい、水が抜け落ちるための通路面積は少なくとも袋体23の内面の5%程度に決定される。
【0039】
筋縄3は網線27aよりも太くなされた単線状のもので、袋体23の側周面23bの各隅角部の外面を辿るように固定されると共に袋体23に収容される漁獲物wの重量に対応した強度を有するものとなっている。吊り手棒26は筋縄25のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力を付与されるものであって、袋体23の隅角部上端から筋縄25をそのまま延長してなる延長部分26aと、これの上端に形成された吊り環部26bとからなっている。
【0040】
漁獲物収容バッグ22の大きさはこれの使用される漁船の魚倉2内の枡6の大きさに関連して決定されるのであって、例えば、袋体23は枡6の漁獲物収容部の容積の4分の1の形状に対し5%〜20%大きな相似形に作られると共に底面23aから吊り環部26bまでの高さが魚倉2の床面2aから枡6内のフック部材20までの高さに略等しくされる。
さらに漁獲物収容バッグ22はシート部材24が存在しなくても吊り手棒、筋縄及び網地で必要な強度が確保されるものとなされており、内方に漁獲物wを収容し吊り手棒26を介して吊り上げたとき、シート部材に過大な力が作用しないものとなされている。
【0041】
次に既述の沖底船上で上記のような漁獲物収容バッグ22を使用して、魚倉2内に漁獲物wを蓄えるさいの手順の一例について説明する。
図11は漁獲物収容バッグ22を沖底船の枡6内に掛け止めた状態を示す一部省略説明図、図12は枡6内に掛け止めた漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wが収容された状態を示す斜視図である。
【0042】
魚倉2の各枡6ごとに4つの漁獲物収容バッグ22を用意し、各漁獲物収容バッグ22の吊り手棒26の吊り環部26b同士を結合ロープc1により1点で結合させる。魚倉2の各枡6の内方の床面2a上で4つの漁獲物収容バッグ22を2列に整列させ上部開口23cの縁が密接するように位置させる。このさい、各枡6の4つの仕切壁6a、6bの長さ中央に位置した2つの吊り手棒26、26の吊り環部26a同士も結合ロープc1により1点で結合させる。
【0043】
そして各枡6の四隅に位置する1つの吊り手棒26の吊り環部26bをその対応する位置の起立支持部材7の上部に設けられたフック部材20に掛け止める。これにより4つの漁獲物収容バッグ22の中央点が漁獲物収容バッグ22の自重で下がり気味となり、隣接した漁獲物収容バッグ22の開口23c同士は開口縁に作用する張力で直状となり且つ密接した状態となる。4つの漁獲物収容バッグ22の掛け止めが終了した枡6では図12に示すように複数の差し板8が受け部材7に差し込まれて、仕切り壁6a、6bが形成される。
【0044】
この状態の下で、底曳き網による漁獲物wを既述したように油圧ハッチ12から魚落とし室9を経た後、砕片状の氷などと一緒にベルトコンベア13及び可動式の誘導傾斜樋18を経て任意な1つの枡6内の中央点の上方に導き落下させる。これにより、落下された漁獲物wや氷などは自然に4つの漁獲物収容バッグ22に分散されて収容されていくのであり、このさい不均等に分散されて収容されたとしても、4つの漁獲物収容バッグ22の中央点が漁獲物wの重量などで垂れ下がっているので、多く収容された漁獲物収容バッグ22内の漁獲物wなどは重力作用により少ない漁獲物収容バッグ22の内側へ溢れ出るようになり、最終的には人為作業を要することなく4つの漁獲物収容バッグ22に略均等に収容される。
【0045】
上記したような各枡6内の漁獲物収容バッグ22の掛け止め処理は各枡6内に漁獲物wを収容させる作業の進行度合に応じて進めるのがよいのであり、このようにすることにより各枡6への漁獲物wの収容作業が能率化される。漁獲物wの収容中には作業者は主に床面2aや作業用足場の上に位置し、漁獲物wに乗ることはない。
【0046】
任意な1つの枡6内の4つの漁獲物収容バッグ22に漁獲物wなどが満杯された状態では、各漁獲物収容バッグ22の袋体23が枡6の漁獲物収容部の全体形状の4分の1の形状に対し5%〜20%大きな相似形に作られているため、該枡6の仕切壁6a、6bの内方に漁獲物wなどが隙間なく充たされた状態となり、船体の揺れに伴う荷動きが拘束されて、船体の復元性が適正に確保され、不慮の船体転覆事故などが確実に回避される。
【0047】
各枡6内への漁獲物wなどの収容順は船体傾斜が大きくならないように決定するのであり、例えば、先ず前側の3つの枡6I、6J、6Gにこの順に収容させ、次に後側の3つの枡6K、6L、6Hにこの順に収容させ、左右側の4つの枡6C、6D、6E、6Fにこの順に収容させ、最後に2つの枡6A、6Bにこの順に収容させる。
【0048】
上記した漁獲物wの収容処理において、各枡6内の複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を、吊り手棒26同士の結合処理や、各枡6に固定されたフック部材20への吊り手棒26の掛け止め処理により密接状態に保持させることは、複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を密接させる処理を簡易化させると共に、これら開口の上方から漁獲物wが投入されるとき、この漁獲物wの重量がこれら開口同士を一層確実に密接させるように作用することを可能とする。
【0049】
まら吊り手棒26同士の結合処理にさいして、吊り手棒26に形成された吊り環部26bを結合ロープc1で縛るように実施することは、複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を簡便且つ確実に密接させることを可能とするほか、漁獲物wを収容した状態で各漁獲物収容バッグ22の網地27に過度な荷重が作用するのを防止するものとなる。
【0050】
次に上記のように各漁獲物収容バッグ22内に収容された漁獲物wを水揚げするさいの手順の一例について説明する。
図13は前側クレーン15の吊りフック21で漁獲物wの収容された1つの漁獲物収容バッグ22を吊り上げた状態を示しており、図14は漁獲物wを水揚げしている沖底船を示している。漁獲物収容バッグ22を吊りフック21で吊り上げるさいは4点吊り具29を使用する。この4点吊り具29は円環部材30を備えると共にこの円環部材30の周方向4等分位置に下向き外方へ張り出したフック部材31を固定し、各フック部材31の基端部外周上部に吊り手ワイヤ32の下端を止着した構造となっている。このさい、吊り手ワイヤ32は上部に吊り環部32aを形成される。
【0051】
魚倉2内の各枡6内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるときの、各枡6の着手順は船体傾斜が大きくならないように決定するのであり、例えば、先ず荷揚げ口5の真下の2つの枡5A、5Bについてこの順に着手し、次に左右側の4つの枡6C、6D、6E、6Fについてこの順に着手し、次に前中央と後中央の2つの枡6G、6Hについてこの順に着手し、次に前左右側の2つの枡6I、6Jについてこの順に着手し、次に後左右側の2つの枡6K、6Lにこの順に着手する。
【0052】
荷揚げ口5の真下の2つの枡5A、5B内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるさいは、前側クレーン15の吊りフック21に4点吊り具29の吊り手ワイヤ32の吊り環部32aを掛け止めた状態で、この4点吊り具29を荷揚げ口5を通じて真下に降下させ、吊り上げるべき漁獲物収容バッグ22の真上に近接させる。一方では、作業者は作業用足場などに乗るなどして、4つの漁獲物収容バッグ22の吊り環部26bを結合した結合ロープc1を解き外す。
【0053】
そして、吊り上げるべき1つの漁獲物収容バッグ22の4つの吊り環部26bのそれぞれを4点吊り具29における対応するフック部材31に掛け止め、次いで前側クレーン15のフック部材21を引き上げ作動させ、荷揚げ場所に待機しているトラック33の荷台上などに吊り移動させ、その後、漁獲物収容バッグ22を4点吊り具29のフック部材31から離脱させて荷台上に積載させる。その他の漁獲物収容バッグ22も同様にしてトラック33の荷台上などに積載させる。
【0054】
その他の枡6内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるさいは、前側クレーン15で4点吊り具29を荷揚げ口5を通じて真下に降下させるだけでは4点吊り具29が吊り上げるべき漁獲物収容バッグ22の真上に近接しないため、例えば、吊りフック21から荷役用ワイヤを吊り下げ、これの下端に結合されたシャックルなどに4点吊り具29の4つの吊り環部26bを一点に集合させるように結合させた後、荷揚げ口5を通じて荷役用ワイヤ及び4点吊り具29を真下に降下させ、さらに作業者の手作業により荷役用ワイヤを斜めに引き入れた状態に保持し、4点吊り具29を吊り上げるべき1つの漁獲物収容バッグ22の真上に位置させる。この状態で、先と同様に、1つの漁獲物収容バッグ22の4つの吊り環部26bのそれぞれを4点吊り具29における対応するフック部材31に掛け、その後、前側クレーン15の吊り力により荷役用ワイヤ及び4点吊り具29を引き上げさせ、漁獲物収容バッグ22をトラック33の荷台上に吊り移動させる。トラック上では作業者がトラック33の荷台に支持された状態の漁獲物収容バッグ22を4点吊り具29から離脱させ、トラック3上に荷積みされた状態とする。この際において、複数の差し板8は受け部材7から抜き取られ、荷揚げ口5の真下の枡と当該作業を行う枡との仕切り壁6aまたは6bが除去されている。
【0055】
このような荷揚げ作業において、荷役用ワイヤを斜めに引き入れる処理が作業者の手作業によっては困難を伴うことがあるが、このようなときは魚倉2の天井面に滑車を装着し、この滑車に荷役用ワイヤを案内させた状態とし、前側クレーン15で荷役用ワイヤを引き移動させることにより漁獲物収容バッグ22を横方向へ引き出すようにしてもよい。
【0056】
また各漁獲物収容バッグ22が吊り上げられたとき、筋縄25には吊り手棒26から吊り力が付与されるが、筋縄25はこの吊り力を網地27の網線に均等化して伝達するものとなり、網地27の局部に過大な吊り力が付与されるのを阻止する。
【0057】
また各漁獲物収容バッグ22の袋体23が1つの枡6の漁獲物収容部の容積の4分の1に対し5%〜20%大きく作られているため、漁獲物収容バッグ22が前側クレーン15で吊り上げ移動されるとき、漁獲物wが枡6内に満杯にされた状態であっても、各漁獲物収容バッグ22内の漁獲物wは漁獲物収容バッグ22に対して満杯状態とはならず、荷揚げ中などに漁獲物収容バッグ22からこぼれ落ちることは防止される。
【0058】
漁獲物wの荷揚げ中には各漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wと一緒に収容された砕片状の氷が溶けてシャーベット状の氷となるが、各漁獲物収容バッグ22は底面23a及び側周面23bに、袋体23内の水が抜け落ちるための通路が形成されているため、水や微細氷片は外方へ流下し、漁獲物収容バッグ22の重量が軽減される。
【0059】
荷揚げ中やトラック33による運搬中には漁獲物収容バッグ22内で漁獲物wが揺れたり或いは網地27の目合から張り出すようになるが、シート部材24が漁獲物wと網地27との摺接を阻止すると共に漁獲物wの摺動を円滑化するため、漁獲物wの損傷が効果的に防止される。また荷揚げ中やトラック33による運搬中には外気により漁獲物wは温度上昇するが、シート部材24が断熱性を有するため、温度上昇は効果的に抑制され、漁獲物wの鮮度が維持される。
【0060】
トラック33の荷台などに水揚げされた漁獲物wは漁獲物収容バッグ22内に収容されたままであるため、作業者が荷台上で漁獲物wを踏みつけたり直接に接触することはなくなると共に漁獲物wが荷台などに直接に触れることも回避される。したがって、漁獲物wは漁船において漁獲物収容バッグ22内に収容された後は、加工業者に渡るまで、人に触れることを回避できるものとなり、HACCP(危害分析に基づく重要管理点方式)による管理が行い易くなり、漁獲から消費者の食卓に到達するまでの漁獲物wの鮮度及び安全が比較的容易に確保されるのである。
【0061】
加工業者などの最終搬送先にて、漁獲物収容バッグ22から漁獲物wを取り出すときは漁獲物収容バッグ22を吊り上げた状態でチャック28を開放するのみでよいのであり、これにより漁獲物は損傷することなく迅速に取り出される。
【0062】
上記実施例において、1つの枡6内に配置される漁獲物収容バッグ22の数は任意に変更して差し支えないのであり、また各枡6内での漁獲物収容バッグ22の掛け止めは任意に変更して差し支えない。
【0063】
特に、船首側の枡6で方形から外れた形状のものにおいては、吊り環部26bを掛け止めるフック部材20の位置や数を適当に変更し、フック部材20に吊り環部26bを掛け止めたときに、隣接した漁獲物収容バッグ22の開口23c縁を正確に密接させるようにするのがよい。
【0064】
また漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wを冷却するための砕片状の氷を収容しないで、魚倉2内を冷凍機で冷却することにより漁獲物wを冷却するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】既存の沖底船の側面視説明図である。
【図2】前記沖底船の平面図である。
【図3】前記沖底船の上甲板の下側近傍を上方から見た図である。
【図4】前記沖底船の一部を拡大した斜視図である。
【図5】前記沖底船の一部を拡大した斜視図である。
【図6】前記沖底船の枡内に漁獲物が収容された状態を示す断面図である。
【図7】沖底船から漁獲物を水揚げする様子を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例で使用される漁獲物収容バッグを示す斜視図である。
【図9】前記漁獲物収容バッグの各部を示す図である。
【図10】前記漁獲物収容バッグの一部を展開した状態を示す説明図である。
【図11】前記漁獲物収容バッグを沖底船の枡内に掛け止めた状態を示す一部省略説明図である。
【図12】前記沖底船の枡内に掛け止めた漁獲物収容バッグ内に漁獲物が収容された状態を示す斜視図である。
【図13】前記沖底船の吊りフックで漁獲物の収容された1つの漁獲物収容バッグを吊り上げた状態を示す斜視図である。
【図14】前記漁獲物収容バッグを使用して沖底船から漁獲物を水揚げする様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
2 魚倉
6 枡
20 フック部材
22 漁獲物収容バッグ
23a 底面
23b 側周面
23c 開口
23 袋体
24 シート部材
25 筋縄
26 吊り手棒
26b 吊り環部
27 網地
c1 結合ロープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船上での漁獲物取扱方法及び該方法の実施にさいして使用される漁獲物収容バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、漁場における漁獲物は鮮度を落とさないように出来るだけ迅速に漁船の魚倉2内に搬入し冷却状態で保存し、帰港して水揚げするように取り扱われている
沖合底びき網漁船(沖底船)における漁獲物の取扱い例について詳細に説明する。
図1〜図4は既存の沖底船に係り、図1は側面視説明図、図2は平面図、図3は上甲板の下側近傍を上方から見た図、図4及び図5は一部を拡大した斜視図である。これらの図に示すように、船体1内に魚倉2が形成されている。魚倉2は内底板2a、側外板2b、2c、前隔壁2d、後隔壁2eのほか、上甲板3及び最上層甲板(船楼甲板)4からなる天井板などで周囲を囲まれている。最上層甲板4には荷揚げ口5が形成されている。
【0003】
魚倉2内は船長さ方向に沿った起立状の縦仕切壁6aと船巾方向に沿った起立状の横仕切壁6bとで多数の枡6が形成されており、縦仕切り壁6a及び横仕切り壁6bの下縁は内底板2aの上面である床面に支持されている。各枡6は例えば船長さ方向を2m、船巾方向を2m、そして高さを1.8mとなされると共に高さを魚倉2高さの全長に及ばない大きさとなされている。
【0004】
縦仕切壁6a及び横仕切壁6bの交叉位置には内底板2aに下端を固着されて起立された起立支持部材7が設けられている。そして起立支持部材7、側外板2b、2c、前隔壁2d及び後隔壁2eの相互間に縦仕切壁6a及び横仕切壁6bが形成されている。縦仕切壁6a及び横仕切壁6bは図5に示すように何れも複数の差し板8からなり、これら差し板8は起立支持部材7、側外板2b、2c、前隔壁2d及び後隔壁2eのそれぞれに固定された受け部材7aを介して抜き差しによる分解組立可能に位置決めされている。各差し板8は例えば、木板となされており、高さ30cm、厚さ4cm、長さ200cm程度となされる。
【0005】
魚倉2の後部上方には魚落とし室9が形成されている。魚落とし室9は床面2aを上甲板3で形成され、上面を傾斜板10及び最上甲板4からなる天井板で形成され、側周面を起立壁面板11で形成されている。そして、最上甲板4には油圧ハッチ12が設けられている。また魚落とし室12の横外方側の位置から魚倉2の前部に至る魚倉2内範囲で、枡6の上側となる位置には、漁獲物wを前方へ支持搬送するためのベルトコンベア13が固設されている。
14は底曳きウインチ、15は前側クレーン、16は後側クレーン、17はスリップウエイである。
【0006】
このような構造の沖底船において漁獲物wの魚倉2内への搬入は次のように実施される。
沖底船により底曳きされた底曳き網は底曳きウインチ14や後側クレーン16などでスリップウエイ17を経て船上に巻き上げられ、油圧ハッチ12の近傍に位置されるのであり、この後、底曳き網末端のチャックを開放される。これにより漁獲物wはチャックの開放された開口を通じて底曳き網外方へ落下され、予め開放作動されている油圧ハッチ12を通じて魚落とし室9内の床面9a上に導入される。
【0007】
魚落とし室9内では作業者が床面9aに溜まった漁獲物wについて種類や大小で選別したり、混獲物を選別する処理を行い、起立壁面板11の作業用開口を通じることにより、目的魚のみをベルトコンベア13の搬送始端に投入する。
【0008】
ベルトコンベア13に投入された漁獲物wは前方へ搬送され、予め位置決めされた伸縮可能な可動式の誘導傾斜樋18に達したとき、作業者により又は機械的に誘導傾斜樋18内に落下され、以後、誘導傾斜樋18に案内されて予定された枡6の上方からその内方へ落下される。
【0009】
図6は枡6内に漁獲物wが収容された状態を示す断面図である。漁獲物wを収容する予定の枡6のそれぞれの底面2aには予め2乃至3枚の平畚19を展開状態にして段重ね状に敷いておく。このさい、これら平畚19の四隅に設けられた吊り手棒19aの上部の吊り環部は枡6の四隅の起立支持部材7、前隔壁2d、後隔壁2e又は側外板2a、2bの枡6上部位置に同体状に固着されたフック部材20に順に掛け止める。したがって各枡6の平畚19上に誘導傾斜樋18から落下した漁獲物wが収容される。
【0010】
一方、荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bは、誘導傾斜樋18から漁獲物wが落下され或る程度蓄積されたとき、ベルトコンベア13の停止により誘導傾斜樋18から漁獲物wが落下するのを一時的に停止させ、この停止中に、図5に示すように該枡6A、6B内の漁獲物wの上面に2又は3枚程度の平畚19を展開状態で敷き、これら平畚19の四隅に設けられた吊り手棒19aの上部の吊り環部を先と同様にフック部材20に順に掛け止める。
【0011】
この後、再びベルトコンベア13を作動させ、誘導傾斜樋18からこれら平畚19の上に漁獲物wを落下させる。これにより、該枡6A、6Bには最下位置の平畚19上と中間高さの平畚19上の双方に漁獲物wが収容された状態となる
【0012】
漁獲物wは誘導傾斜樋18を移動させることにより各枡6C〜6Lに順に収容させるようにするが、このさい積荷による船体の傾斜が大きくならないように前後左右のバランスが得られるように実施する。また荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bへの漁獲物の収容は他の枡6C〜6Lへの漁獲物wの収容が終了した後に実行するのがよい。
【0013】
こうして魚倉2内に搬入された漁獲物wを冷却状態とするには、魚倉2内を冷却装置で冷却するか、或いは、砕片状の氷などを漁獲物wと一緒に枡6内に供給する。なお漁獲物wの搬入時には荷揚げ口5は密閉状態を維持され、油圧ハッチ12は漁獲物wの搬入終了時に閉鎖される。
【0014】
上記のように魚倉2内に搬入された漁獲物wを水揚げするさいは次のように実施される。
図7は沖底船から漁獲物wを水揚げする様子を示している。沖底船が水揚げ場に着いたとき、前側クレーン15を使用することにより、荷揚げ口5の密閉蓋を開放する。そして、先ずは荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6B内の漁獲物wを任意な一側の枡から水揚げし、次に他側の枡の水揚げをする。
【0015】
このさいの処理は、次のように行う。即ち、枡6A、6B内の中間高さ位置に敷いた平畚19のうち、最上位置のものの四隅の吊り手棒19aの吊り環部を一点に集めて前側クレーン15の吊りフック21に掛け、吊りフック21を引き上げることで最上位置の平畚19を吊り上げる。このさい、最上位置の平畚19上には該平畚19のみでは揚がり切らない量の漁獲物wが載っているので該平畚19の側縁から漁獲物wがこぼれ落ち、第2番目の高さ位置の平畚19上に載った状態となる。
【0016】
次いで第2番目以降の各平畚19を前側クレーン15で同様に引き上げる。このさい、引き上げれる1つの平畚19のみでは揚がり切らない漁獲物wが載った状態となることがある。このときは先と同様に、該平畚19上の漁獲物wが側縁からこぼれ落ち、その下側の平畚19上に載った状態となる。そして、最下位置の平畚19を引き上げるときは該平畚19のみで十分に引き上げることのできる量の漁獲物wしか載っていない状態となり、該平畚19を引き上げることで、各枡6A、6B内の漁獲物wは全て引き上げられる。
この一連の処理において平畚19の吊り手棒19aを吊りフック21に掛けるときには、作業者は枡6の内方に入って漁獲物wの上に乗った状態となる。
【0017】
荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6B内の漁獲物wの水揚げが終了した後は、他の枡6C〜6L内の漁獲物wの水揚げを行う。
【0018】
代表的に、任意な1つの枡(代表枡)6C内の漁獲物wを水揚げするときの手順を説明する。荷揚げ口5の真下の2つの枡6A、6Bにうち代表枡6Cに正対する枡6A内に別の平畚19を新たに敷いた後、代表枡6Cを形成した差し板8のうち枡6A側に存在した最上位置のものから必要枚数だけ順に取り外し、代表枡6C内の漁獲物wを先に取り外された差し板8位置を経て枡6A内の平畚19上に落下させる。枡6A内の平畚19上に収容限界量を超えない多量の漁獲物wが載った状態となったとき、この平畚19を先と同様に吊りフック21に掛けて引き上げる。このような処理を適当回数行って、代表枡6C内の漁獲物wが適当に少なくなったとき、代表枡6C内に作業者が入り、代表枡6C内の各平畚19の吊り手棒19aの吊り環部を吊りフック21に予め掛け吊された荷役用ワイヤの下端にシャックルなどを介して結合し、各平畚19を順に前側クレーン15で引き上げる。
【0019】
代表枡6C内の平畚19を引き上げるさいは、該平畚19が吊りフック21の真下に位置していないため、吊りフック21に掛け吊された荷役用ワイヤを荷揚げ口5を経て魚倉2内へ斜めに引き入れて該荷役用ワイヤの下端に該平畚19の吊り手棒19aを結合させた後、前側クレーン15に荷役用ワイヤを引き上げさせる。こうして代表枡6C内の各平畚19の引き上げが進行するに伴って、代表枡6C内の漁獲物wは順次に少なくなるが、これに合わせて、代表枡6Cを形成した差し板8のうち枡6A側のものを順に外していき、平畚19の引き上げ作業を容易化させる。代表枡6C内の各平畚19が全て引き上げられたとき、代表枡6C内の漁獲物wは全て水揚げされる。
その他の枡6内の漁獲物wの水揚げは代表枡6C内のそれと同様に又は近似して行われる。
【0020】
次に本発明に関連した他の公知文献に言及する。
特許文献1には、漁船上で漁獲物を魚倉内の枡内に搬送し収容する技術が開示されている。この技術では漁獲物は既述した沖底船の場合と同様に、枡内に直接に落下させるように取り扱われる。
【0021】
特許文献2には、漁獲物を移送用袋に収容して移送する技術が開示されている。ここで使用される移送用袋は上細り状の錐形となされているため上部開口が袋本体下部の大きさに較べて小さくなると共に、内方には水が蓄えられて、該水の中に生きた漁獲物wを収容するものであり、したがって漁船上において漁獲物を魚倉2内に能率的に収容したり、魚倉2内への漁獲物wの収容において魚倉2内のスペースを有効に利用したり、さらには漁獲物wを多量に収容して能率的に搬送する上では不向きなものとなっている。
【0022】
【特許文献1】特開平9−255138号公報
【特許文献2】特開2007−1640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
既述した沖底船における漁獲物wの取扱いでは漁獲物wが収容されている枡6内に入って作業するようになるため、作業者が漁獲物wを踏みつぶすようになることは避けられない。したがって漁獲物wは一般に加工原料(すり身やひき割りの材料)としての扱いとなる。また枡6内にバラ積みされた漁獲物wは水揚げされるさいに平畚19に収容して陸上に移動され平畚19上からトラックの荷台内などに移し替えるように取り扱われるため、鮮度良く衛生的に目的地まで搬送することが困難となる。
特許文献1に開示された技術においても上記と同様な欠点があると思われる。
【0024】
本発明はこのような実情に鑑みて創案されたものであり、その目的とするところは、漁船において漁獲物wを支障のない能率で魚倉2内に収容できることを確保した上で、漁獲物wを踏みつぶすことなく能率的に水揚げしたり、鮮度良く衛生的に目的地まで搬送することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、本発明では、水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、底面部及び側周面のうち、袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部の上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出されて上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えた漁獲物収容バッグを使用して実施する。
【0026】
即ち、漁獲物収容バッグの複数個を、漁船の魚倉内の底面上に分解可能に形成された枡のそれぞれの内方に整列させて位置保持させ、この後、これら漁獲物収容バッグのそれぞれの開口の上方から漁獲物を落下させるように実施する。
【0027】
この発明において、複数の漁獲物収容バッグは、漁船の枡の大きさや構造が従来と変わりないものであっても、枡内に従来と同様な量の漁獲物を能率的に収容することを可能とし、また漁獲物の水揚げは漁獲物収容バッグのそれぞれを単独に吊り搬送することにより従来のクレーンの使用により能率的に実行されるようになる。また各漁獲物収容バッグはその吊り手棒がクレーンの吊りフックに直接に又は間接的に掛けられた後、該吊りフックを引き上げることにより水揚げされるようになり、また1つの漁獲物収容バッグを水揚げした後は、その存在していた魚倉2内の床面上に作業スペースが確保されるため、作業者は水揚げのために漁獲物の上に乗る必要がなくなり、漁獲物は作業者に踏みつぶされることがなくなる。水揚げした後の漁獲物収容バッグは陸上においてトラックの荷台などにそのまま載せ目的地まで搬送することが可能となる。
【0028】
またシート部材は漁獲物収容バッグ内の漁獲物が袋体の網目を通じて外方へ部分的に張り出した状態になることを阻止して、漁獲物が他物との接触により損傷するのを防止すると共に、袋体に対する漁獲物の相対移動を円滑化させて、漁獲物の摩擦による損傷を防止するほか、漁獲物収容バッグ内の漁獲物の温度上昇を抑制して該漁獲物の鮮度を維持する上で寄与するものとなる。またシート部材が袋体の一部に被着されることは漁獲物収容バッグ内の不要な水を網目を通じて外方へ漏出させることを可能となして、漁獲物収容バッグの搬送重量を軽減させるほか、漁獲物収容バッグ内の漁獲物の鮮度を維持させる上で寄与する。また筋縄及び吊り手棒はこれに作用する吊り荷重を袋体の網地へ均等化させ分散させる上で寄与する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、漁船上において漁獲物を魚倉の枡内に直接に落下させる場合と略同様の能率で魚倉内に収容することができる上に、作業者が漁獲物に触れなくても漁獲物収容バッグにより漁獲物を能率的且つ衛生的に水揚げすることができると共に、漁獲物を踏みつぶすことがなくなるのである。
【0030】
また漁獲物収容バッグに漁獲物が収容された後は、漁獲物が目的地に到達するまで人との接触を阻止できるのであり、したがって漁獲物を鮮度良く衛生的にしかも人為的な事故などを発生させることなく安全に目的地の加工業者などに届けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下本発明の詳細を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0032】
図8は本発明の実施例で使用される漁獲物収容バッグを示す斜視図、図9は前記漁獲物収容バッグの各部を示す図、図10は前記漁獲物収容バッグの一部を展開した状態を示す説明図である。
【0033】
本実施例では、図8に示すような漁獲物収容バッグ22を使用する。
この漁獲物収容バッグ22は袋体23とシート部材24と筋縄25と吊り手棒26とを備えている。袋体23は、水平断面形状が正方形である上下向き一様断面有底筒状とされ底面23a及び側周面23bが網地27で形成され上面が開口23cとなっている。なお、吊り手棒26は棒材でもロープ、ワイヤなどでも良い。
【0034】
側周面23bは図9に示すような2種の側面パネルa1、a2からなっている。矢印方向b1で対向した2つの側面パネルa1、a1のそれぞれには方形状の網地27の上下左右の端部に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に方形状のシート部材24aが被着されている。一方、矢印方向b2で対向した2つの側面パネルa2、a2のそれぞれには上下左右の端部に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に方形状のシート部材24bが被着されており、このさいシート部材24bは下部中央位置に略3つの網目分の巾の方形状切欠c1を形成されている。
【0035】
底面23aは1つの底面パネルa3からなっている。この底面パネルa3には方形状の網地27の外周囲に例えば略2つの網目分の巾を残した状態で網地27の内面に同一大きさの2つの方形状のシート部材24c、24cが被着されている。これら2つのシート部材24c、24cは、例えば略5つの網目分の長さだけ離間される。
【0036】
2つの側面パネルa1、a1と底面パネルa3とは図10に示すように一列状に連続させた状態において、チャック28が設けられるのであり、具体的には例えば、一方のシート部材24bの方形状切欠c1から他方のシート部材24bの方形状切欠c1に至る長さ範囲の巾中央位置の1つの網目範囲内の網線を切除した後、一方の方形状切欠c1から他方の方形状切欠c1に至る全長範囲でしかも巾中央の1つの網目範囲にチャック28を縫着する。このチャック28は雌雄の係合部28aとこれら係合部28aを支持した一対の帯布28b、28bからなっている。
【0037】
網地27は一般には網線27aの直径を1.5mm〜7mmとされ、目合を20mm〜60mmとされるのであり、また図8に示す袋体23において網線27aは上下方向と水平方向へ向かうような角目使いとされる。これにより、袋体23は漁獲物wを収容して吊り手棒26を引き上げたとき、網地27が袋体23の横方向への膨らみを効果的に阻止するものとなる。
【0038】
シート部材24は樹脂材料で形成するのが強度上やコストなどの点でよいのであり、好ましくはポリエステルに塩ビ加工をしたものとする。このシート部材24は撓曲自在に形成されると共に良好な断熱性を有するものとなされ、また袋体23内の水が抜け落ちるための通路が確保されるように底面23a及び側周面23bのうち該通路となるべき網地27部分を除いた範囲に被着され、袋体の内面の50%〜95%を被った状態となっている。このさい、水が抜け落ちるための通路面積は少なくとも袋体23の内面の5%程度に決定される。
【0039】
筋縄3は網線27aよりも太くなされた単線状のもので、袋体23の側周面23bの各隅角部の外面を辿るように固定されると共に袋体23に収容される漁獲物wの重量に対応した強度を有するものとなっている。吊り手棒26は筋縄25のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力を付与されるものであって、袋体23の隅角部上端から筋縄25をそのまま延長してなる延長部分26aと、これの上端に形成された吊り環部26bとからなっている。
【0040】
漁獲物収容バッグ22の大きさはこれの使用される漁船の魚倉2内の枡6の大きさに関連して決定されるのであって、例えば、袋体23は枡6の漁獲物収容部の容積の4分の1の形状に対し5%〜20%大きな相似形に作られると共に底面23aから吊り環部26bまでの高さが魚倉2の床面2aから枡6内のフック部材20までの高さに略等しくされる。
さらに漁獲物収容バッグ22はシート部材24が存在しなくても吊り手棒、筋縄及び網地で必要な強度が確保されるものとなされており、内方に漁獲物wを収容し吊り手棒26を介して吊り上げたとき、シート部材に過大な力が作用しないものとなされている。
【0041】
次に既述の沖底船上で上記のような漁獲物収容バッグ22を使用して、魚倉2内に漁獲物wを蓄えるさいの手順の一例について説明する。
図11は漁獲物収容バッグ22を沖底船の枡6内に掛け止めた状態を示す一部省略説明図、図12は枡6内に掛け止めた漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wが収容された状態を示す斜視図である。
【0042】
魚倉2の各枡6ごとに4つの漁獲物収容バッグ22を用意し、各漁獲物収容バッグ22の吊り手棒26の吊り環部26b同士を結合ロープc1により1点で結合させる。魚倉2の各枡6の内方の床面2a上で4つの漁獲物収容バッグ22を2列に整列させ上部開口23cの縁が密接するように位置させる。このさい、各枡6の4つの仕切壁6a、6bの長さ中央に位置した2つの吊り手棒26、26の吊り環部26a同士も結合ロープc1により1点で結合させる。
【0043】
そして各枡6の四隅に位置する1つの吊り手棒26の吊り環部26bをその対応する位置の起立支持部材7の上部に設けられたフック部材20に掛け止める。これにより4つの漁獲物収容バッグ22の中央点が漁獲物収容バッグ22の自重で下がり気味となり、隣接した漁獲物収容バッグ22の開口23c同士は開口縁に作用する張力で直状となり且つ密接した状態となる。4つの漁獲物収容バッグ22の掛け止めが終了した枡6では図12に示すように複数の差し板8が受け部材7に差し込まれて、仕切り壁6a、6bが形成される。
【0044】
この状態の下で、底曳き網による漁獲物wを既述したように油圧ハッチ12から魚落とし室9を経た後、砕片状の氷などと一緒にベルトコンベア13及び可動式の誘導傾斜樋18を経て任意な1つの枡6内の中央点の上方に導き落下させる。これにより、落下された漁獲物wや氷などは自然に4つの漁獲物収容バッグ22に分散されて収容されていくのであり、このさい不均等に分散されて収容されたとしても、4つの漁獲物収容バッグ22の中央点が漁獲物wの重量などで垂れ下がっているので、多く収容された漁獲物収容バッグ22内の漁獲物wなどは重力作用により少ない漁獲物収容バッグ22の内側へ溢れ出るようになり、最終的には人為作業を要することなく4つの漁獲物収容バッグ22に略均等に収容される。
【0045】
上記したような各枡6内の漁獲物収容バッグ22の掛け止め処理は各枡6内に漁獲物wを収容させる作業の進行度合に応じて進めるのがよいのであり、このようにすることにより各枡6への漁獲物wの収容作業が能率化される。漁獲物wの収容中には作業者は主に床面2aや作業用足場の上に位置し、漁獲物wに乗ることはない。
【0046】
任意な1つの枡6内の4つの漁獲物収容バッグ22に漁獲物wなどが満杯された状態では、各漁獲物収容バッグ22の袋体23が枡6の漁獲物収容部の全体形状の4分の1の形状に対し5%〜20%大きな相似形に作られているため、該枡6の仕切壁6a、6bの内方に漁獲物wなどが隙間なく充たされた状態となり、船体の揺れに伴う荷動きが拘束されて、船体の復元性が適正に確保され、不慮の船体転覆事故などが確実に回避される。
【0047】
各枡6内への漁獲物wなどの収容順は船体傾斜が大きくならないように決定するのであり、例えば、先ず前側の3つの枡6I、6J、6Gにこの順に収容させ、次に後側の3つの枡6K、6L、6Hにこの順に収容させ、左右側の4つの枡6C、6D、6E、6Fにこの順に収容させ、最後に2つの枡6A、6Bにこの順に収容させる。
【0048】
上記した漁獲物wの収容処理において、各枡6内の複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を、吊り手棒26同士の結合処理や、各枡6に固定されたフック部材20への吊り手棒26の掛け止め処理により密接状態に保持させることは、複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を密接させる処理を簡易化させると共に、これら開口の上方から漁獲物wが投入されるとき、この漁獲物wの重量がこれら開口同士を一層確実に密接させるように作用することを可能とする。
【0049】
まら吊り手棒26同士の結合処理にさいして、吊り手棒26に形成された吊り環部26bを結合ロープc1で縛るように実施することは、複数個の漁獲物収容バッグ22の開口同士を簡便且つ確実に密接させることを可能とするほか、漁獲物wを収容した状態で各漁獲物収容バッグ22の網地27に過度な荷重が作用するのを防止するものとなる。
【0050】
次に上記のように各漁獲物収容バッグ22内に収容された漁獲物wを水揚げするさいの手順の一例について説明する。
図13は前側クレーン15の吊りフック21で漁獲物wの収容された1つの漁獲物収容バッグ22を吊り上げた状態を示しており、図14は漁獲物wを水揚げしている沖底船を示している。漁獲物収容バッグ22を吊りフック21で吊り上げるさいは4点吊り具29を使用する。この4点吊り具29は円環部材30を備えると共にこの円環部材30の周方向4等分位置に下向き外方へ張り出したフック部材31を固定し、各フック部材31の基端部外周上部に吊り手ワイヤ32の下端を止着した構造となっている。このさい、吊り手ワイヤ32は上部に吊り環部32aを形成される。
【0051】
魚倉2内の各枡6内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるときの、各枡6の着手順は船体傾斜が大きくならないように決定するのであり、例えば、先ず荷揚げ口5の真下の2つの枡5A、5Bについてこの順に着手し、次に左右側の4つの枡6C、6D、6E、6Fについてこの順に着手し、次に前中央と後中央の2つの枡6G、6Hについてこの順に着手し、次に前左右側の2つの枡6I、6Jについてこの順に着手し、次に後左右側の2つの枡6K、6Lにこの順に着手する。
【0052】
荷揚げ口5の真下の2つの枡5A、5B内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるさいは、前側クレーン15の吊りフック21に4点吊り具29の吊り手ワイヤ32の吊り環部32aを掛け止めた状態で、この4点吊り具29を荷揚げ口5を通じて真下に降下させ、吊り上げるべき漁獲物収容バッグ22の真上に近接させる。一方では、作業者は作業用足場などに乗るなどして、4つの漁獲物収容バッグ22の吊り環部26bを結合した結合ロープc1を解き外す。
【0053】
そして、吊り上げるべき1つの漁獲物収容バッグ22の4つの吊り環部26bのそれぞれを4点吊り具29における対応するフック部材31に掛け止め、次いで前側クレーン15のフック部材21を引き上げ作動させ、荷揚げ場所に待機しているトラック33の荷台上などに吊り移動させ、その後、漁獲物収容バッグ22を4点吊り具29のフック部材31から離脱させて荷台上に積載させる。その他の漁獲物収容バッグ22も同様にしてトラック33の荷台上などに積載させる。
【0054】
その他の枡6内の漁獲物収容バッグ22を吊り上げるさいは、前側クレーン15で4点吊り具29を荷揚げ口5を通じて真下に降下させるだけでは4点吊り具29が吊り上げるべき漁獲物収容バッグ22の真上に近接しないため、例えば、吊りフック21から荷役用ワイヤを吊り下げ、これの下端に結合されたシャックルなどに4点吊り具29の4つの吊り環部26bを一点に集合させるように結合させた後、荷揚げ口5を通じて荷役用ワイヤ及び4点吊り具29を真下に降下させ、さらに作業者の手作業により荷役用ワイヤを斜めに引き入れた状態に保持し、4点吊り具29を吊り上げるべき1つの漁獲物収容バッグ22の真上に位置させる。この状態で、先と同様に、1つの漁獲物収容バッグ22の4つの吊り環部26bのそれぞれを4点吊り具29における対応するフック部材31に掛け、その後、前側クレーン15の吊り力により荷役用ワイヤ及び4点吊り具29を引き上げさせ、漁獲物収容バッグ22をトラック33の荷台上に吊り移動させる。トラック上では作業者がトラック33の荷台に支持された状態の漁獲物収容バッグ22を4点吊り具29から離脱させ、トラック3上に荷積みされた状態とする。この際において、複数の差し板8は受け部材7から抜き取られ、荷揚げ口5の真下の枡と当該作業を行う枡との仕切り壁6aまたは6bが除去されている。
【0055】
このような荷揚げ作業において、荷役用ワイヤを斜めに引き入れる処理が作業者の手作業によっては困難を伴うことがあるが、このようなときは魚倉2の天井面に滑車を装着し、この滑車に荷役用ワイヤを案内させた状態とし、前側クレーン15で荷役用ワイヤを引き移動させることにより漁獲物収容バッグ22を横方向へ引き出すようにしてもよい。
【0056】
また各漁獲物収容バッグ22が吊り上げられたとき、筋縄25には吊り手棒26から吊り力が付与されるが、筋縄25はこの吊り力を網地27の網線に均等化して伝達するものとなり、網地27の局部に過大な吊り力が付与されるのを阻止する。
【0057】
また各漁獲物収容バッグ22の袋体23が1つの枡6の漁獲物収容部の容積の4分の1に対し5%〜20%大きく作られているため、漁獲物収容バッグ22が前側クレーン15で吊り上げ移動されるとき、漁獲物wが枡6内に満杯にされた状態であっても、各漁獲物収容バッグ22内の漁獲物wは漁獲物収容バッグ22に対して満杯状態とはならず、荷揚げ中などに漁獲物収容バッグ22からこぼれ落ちることは防止される。
【0058】
漁獲物wの荷揚げ中には各漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wと一緒に収容された砕片状の氷が溶けてシャーベット状の氷となるが、各漁獲物収容バッグ22は底面23a及び側周面23bに、袋体23内の水が抜け落ちるための通路が形成されているため、水や微細氷片は外方へ流下し、漁獲物収容バッグ22の重量が軽減される。
【0059】
荷揚げ中やトラック33による運搬中には漁獲物収容バッグ22内で漁獲物wが揺れたり或いは網地27の目合から張り出すようになるが、シート部材24が漁獲物wと網地27との摺接を阻止すると共に漁獲物wの摺動を円滑化するため、漁獲物wの損傷が効果的に防止される。また荷揚げ中やトラック33による運搬中には外気により漁獲物wは温度上昇するが、シート部材24が断熱性を有するため、温度上昇は効果的に抑制され、漁獲物wの鮮度が維持される。
【0060】
トラック33の荷台などに水揚げされた漁獲物wは漁獲物収容バッグ22内に収容されたままであるため、作業者が荷台上で漁獲物wを踏みつけたり直接に接触することはなくなると共に漁獲物wが荷台などに直接に触れることも回避される。したがって、漁獲物wは漁船において漁獲物収容バッグ22内に収容された後は、加工業者に渡るまで、人に触れることを回避できるものとなり、HACCP(危害分析に基づく重要管理点方式)による管理が行い易くなり、漁獲から消費者の食卓に到達するまでの漁獲物wの鮮度及び安全が比較的容易に確保されるのである。
【0061】
加工業者などの最終搬送先にて、漁獲物収容バッグ22から漁獲物wを取り出すときは漁獲物収容バッグ22を吊り上げた状態でチャック28を開放するのみでよいのであり、これにより漁獲物は損傷することなく迅速に取り出される。
【0062】
上記実施例において、1つの枡6内に配置される漁獲物収容バッグ22の数は任意に変更して差し支えないのであり、また各枡6内での漁獲物収容バッグ22の掛け止めは任意に変更して差し支えない。
【0063】
特に、船首側の枡6で方形から外れた形状のものにおいては、吊り環部26bを掛け止めるフック部材20の位置や数を適当に変更し、フック部材20に吊り環部26bを掛け止めたときに、隣接した漁獲物収容バッグ22の開口23c縁を正確に密接させるようにするのがよい。
【0064】
また漁獲物収容バッグ22内に漁獲物wを冷却するための砕片状の氷を収容しないで、魚倉2内を冷凍機で冷却することにより漁獲物wを冷却するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】既存の沖底船の側面視説明図である。
【図2】前記沖底船の平面図である。
【図3】前記沖底船の上甲板の下側近傍を上方から見た図である。
【図4】前記沖底船の一部を拡大した斜視図である。
【図5】前記沖底船の一部を拡大した斜視図である。
【図6】前記沖底船の枡内に漁獲物が収容された状態を示す断面図である。
【図7】沖底船から漁獲物を水揚げする様子を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例で使用される漁獲物収容バッグを示す斜視図である。
【図9】前記漁獲物収容バッグの各部を示す図である。
【図10】前記漁獲物収容バッグの一部を展開した状態を示す説明図である。
【図11】前記漁獲物収容バッグを沖底船の枡内に掛け止めた状態を示す一部省略説明図である。
【図12】前記沖底船の枡内に掛け止めた漁獲物収容バッグ内に漁獲物が収容された状態を示す斜視図である。
【図13】前記沖底船の吊りフックで漁獲物の収容された1つの漁獲物収容バッグを吊り上げた状態を示す斜視図である。
【図14】前記漁獲物収容バッグを使用して沖底船から漁獲物を水揚げする様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
2 魚倉
6 枡
20 フック部材
22 漁獲物収容バッグ
23a 底面
23b 側周面
23c 開口
23 袋体
24 シート部材
25 筋縄
26 吊り手棒
26b 吊り環部
27 網地
c1 結合ロープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、該袋体の底面部及び側周面のうち、該袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えた漁獲物収容バッグの複数個を、漁船の魚倉内に分解可能に形成された枡のそれぞれの内方に整列させて位置保持させ、これら漁獲物収容バッグのそれぞれの開口の上方から漁獲物を落下させることを特徴とする漁獲物取扱方法。
【請求項2】
各枡内の複数個の漁獲物収容バッグの開口同士を、前記吊り手棒同士の結合処理や、各枡に固定されたフック部材への前記吊り手棒の掛け止め処理により密接状態に保持させることを特徴とする請求項1記載の漁獲物取扱方法。
【請求項3】
前記吊り手棒同士の結合処理にさいして、前記吊り手棒に形成された吊り環部を結合ロープで縛るように実施することを特徴とする請求項2記載の漁獲物取扱方法。
【請求項4】
各枡の内方に4個の前記漁獲物移送用バッグを2列に整列させて配置した後、各枡の上方視中央位置に漁獲物を落下させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の漁獲物取扱方法。
【請求項5】
水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、該袋体の底面部及び側周面のうち、該袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部の上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えたことを特徴とする漁獲物収容バッグ。
【請求項6】
前記シート部材が袋体の内面に被着されていることを特徴とする請求項5記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項7】
前記シート部材が漁獲物の移動を円滑化させると共に断熱性を有することを特徴とする請求項5又は6記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項8】
漁獲物の収容された袋体の吊り移動に必要とされる強度は網地及び筋縄により充足されることを特徴とする請求項5、6又は7記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項9】
網地が角目使いとされていることを特徴とする請求項5、6、7又は8記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項1】
水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、該袋体の底面部及び側周面のうち、該袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えた漁獲物収容バッグの複数個を、漁船の魚倉内に分解可能に形成された枡のそれぞれの内方に整列させて位置保持させ、これら漁獲物収容バッグのそれぞれの開口の上方から漁獲物を落下させることを特徴とする漁獲物取扱方法。
【請求項2】
各枡内の複数個の漁獲物収容バッグの開口同士を、前記吊り手棒同士の結合処理や、各枡に固定されたフック部材への前記吊り手棒の掛け止め処理により密接状態に保持させることを特徴とする請求項1記載の漁獲物取扱方法。
【請求項3】
前記吊り手棒同士の結合処理にさいして、前記吊り手棒に形成された吊り環部を結合ロープで縛るように実施することを特徴とする請求項2記載の漁獲物取扱方法。
【請求項4】
各枡の内方に4個の前記漁獲物移送用バッグを2列に整列させて配置した後、各枡の上方視中央位置に漁獲物を落下させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の漁獲物取扱方法。
【請求項5】
水平断面形状が正方形の上下向き一様断面有底筒状であり底面及び側周面が網地で形成され上面が開口になっている袋体と、該袋体の底面部及び側周面のうち、該袋体内の水が抜け落ちるための通路となる網地部分を除いた範囲に被着されている撓曲可能な複数枚のシート部材と、袋体の側周面の各隅角部の上に固定された筋縄と、該筋縄のそれぞれから上方へ延出され上部に吊り力が付与される吊り手棒とを備えたことを特徴とする漁獲物収容バッグ。
【請求項6】
前記シート部材が袋体の内面に被着されていることを特徴とする請求項5記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項7】
前記シート部材が漁獲物の移動を円滑化させると共に断熱性を有することを特徴とする請求項5又は6記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項8】
漁獲物の収容された袋体の吊り移動に必要とされる強度は網地及び筋縄により充足されることを特徴とする請求項5、6又は7記載の漁獲物収容バッグ。
【請求項9】
網地が角目使いとされていることを特徴とする請求項5、6、7又は8記載の漁獲物収容バッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−22212(P2010−22212A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183696(P2008−183696)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591018877)日東製網株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591018877)日東製網株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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