説明

漏えい及び閉塞検知装置並びにその検知方法

【課題】運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供する。
【解決手段】遮へい区画内に放射性溶液を扱う複数の容器とこの容器の放射性溶液を移送する配管とが設置され、容器ごとに設置され放射性溶液の液位を検出し、検出した液位信号から容器の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換し、液量信号から単位時間あたりの液量変化量を演算し、容器ごとの単位時間あたりの液量変化量から液量減少量と液量増加量との差を演算し、液量減少量と液量増加量との差から液量減少量が液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなったときに警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性物質を扱う容器又は放射性物質を移送する配管からの放射性物質の漏えい及び配管の閉塞を検知する装置並びにその検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の使用済燃料再処理施設等の放射性溶液を扱う施設では、密閉した区画内に容器及び配管を設置して放射性溶液の移送および処理を行う。
【0003】
放射性物質を扱う容器又は放射性物質を移送する配管の溶接部の腐食などにより容器又は配管から放射性物質が漏えいする場合に備えて、容器や配管の下に漏えい液集液部を設置されている。この漏えい液集液部に収集された漏えい液をエアパージ式液位検出器で検出して警報を発生させるものがある(特許文献1参照)。また、排気ダクトに放射線検出器を設置して放射性物質の拡散を検知するものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−124886公報
【特許文献2】特開2005−98741公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した漏えい検知装置においては、漏えい箇所のある程度の特定は可能だが、同区画内に同種の放射性物質を扱う複数の容器及び配管がある場合には、漏えい箇所を特定するために複数の測定値の目視確認など時間を要するため、迅速かつ確実な処置が得られない可能性があった。
【0005】
また、上述した漏えい検知装置においては、放射性溶液を移送する配管の閉塞は検知することができない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る漏えい及び閉塞検知装置及びその検知方法は、上述した課題を解決するために、遮へい区画内に放射性溶液を扱う複数の容器とこの容器の放射性溶液を移送する配管とが設置され、前記容器ごとに設置され放射性溶液の液位を検出する第1の液位検出手段と、前記第1の液位検出手段から出力される液位信号を前記容器の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換する液量換算手段と、前記液量換算手段から出力される液量信号から単位時間あたりの液量変化量を演算する液量変化率演算手段と、前記液量変化率演算手段から出力される容器ごとの単位時間あたりの液量変化量から液量減少量と液量増加量との差を演算する液量変化率比較演算手段と、前記液量変化率比較演算手段からの液量減少量と液量増加量との差から液量減少量が液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなったときに警報を出力する漏えい閉塞量判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る漏えい及び閉塞検知装置の実施例について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第1の実施形態を示す図である。複数の放射性溶液を扱う機器が配置され、人が容易に立ち入ることが困難な遮へい区画1の中に、放射性溶液を扱う容器2及び容器3、放射性溶液を移送するための配管4A,4B,4Cが配置されている。容器2の底部に開口部を有する導圧配管5Aと容器2の気相部に開口部を有する導圧配管5Bに、5A側パージ流量計6A,5B側パージ流量計6Bよりパージ空気を供給し、容器2の液位検出器7Aにより容器2の放射性溶液の水頭圧を測定して漏えい閉塞演算器8に電気信号を出力する。同様に、容器3の底部に開口部を有する導圧配管5Cと容器3の気相部に開口部を有する導圧配管5Dに、5C側パージ流量計6C,5D側パージ流量計6Dよりパージ空気を供給し、容器3の液位検出器7Bにより容器3の放射性溶液の水頭圧を測定して漏えい閉塞演算器8に電気信号を出力する。
【0011】
漏えい閉塞演算器8に入力された容器2の放射性溶液の水頭圧信号は、容器2の液量換算器8Aにおいてあらかじめ設定された変換カーブに基づいて液位信号から容器2の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換され、容器2の液量変化率演算器8Bに入力される。容器2の液量変化率演算器8Bは、単位時間当たりの液量減少量を演算し、これを容器2及び容器3の液量変化率比較演算器8Eに出力する。
【0012】
上記と同様に、漏えい閉塞演算器8に入力された容器3の放射性溶液の水頭圧信号は、容器3の液量換算器8Cにおいて予め設定された変換カーブに基づいて液位信号から容器3の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換され、容器3の液量変化率演算器8Dに入力される。容器3の液量変化率演算器8Dは、単位時間当たりの液量増加量を演算し、これを液量変化率比較演算器8Eに出力する。
【0013】
次に、液量変化率比較演算器8Eは、容器2の単位時間当たりの液量減少量と容器3の単位時間当たりの液量増加量との差を演算し、漏えい閉塞量判定器8Fに出力する。漏えい閉塞量判定器8Fは、容器2の単位時間当たりの液量減少量が容器3の単位時間当たりの液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなった時に警報を出力し、漏えい閉塞警報表示器9に表示する。
【0014】
本実施の形態により、運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供することができる。
【0015】
(第2の実施形態)
図2は、本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態は、第1の実施形態に加え、容器2の単位時間当たりの液量減少量と容器3の単位時間当たりの液量増加量,及びこの差分を漏えい閉塞量演算結果表示器10に表示する。
【0016】
本実施の形態により、運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するためにさらに有効な情報を提供することができる。
【0017】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態の容器2の液量換算器8A及び容器3の液量換算器8Bが、液位信号を液量信号に変換する機能に加え、図示しない遮へい区画外の容器等からの受入れ及び遮へい区画外の容器への払い出し量を加減算する機能を持つものである。
【0018】
本実施の形態により、容器2から容器3への送液中に他容器からの受入れ及び/又は他容器への払い出しが行われた場合においても、運転員に漏えい又は閉塞の発生を迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供することができる。
【0019】
(第4の実施形態)
図3は、本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第4の実施形態を示す図である。第4の実施形態では、第1の実施形態の遮へい区画1内の容器2、3及び配管4A、4B、4Cの下方に漏えい液受け皿11を設置してその集液部に遮へい区画1内での漏えい液を収集する。漏えい液受け皿11の集液部に開口部を有する導圧配管5Eと遮へい区画1内に開口部を有する導圧配管5Fに、5E側パージ流量計6E,5F側パージ流量計6Fよりパージ空気を供給し、漏えい液受け皿11の集液部の液位検出器7Cにより漏えい液受け皿11の集液部の液位を測定して液量変化率判定器8Fに出力する。この情報により液量変化率判定器8Fは、容器2の単位時間当たりの液量減少量が容器3の単位時間当たりの液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなった時に、液位検出器7Cからの信号があれば漏えいの発生と判断して漏えいの警報を発し、信号がなければ閉塞の発生と判断して閉塞の警報を出力し、漏えい閉塞警報表示器9に表示する。
【0020】
本実施の形態により、運転員に漏えいと閉塞のどちらが発生したのかを含めて迅速に認識させ、その漏えい及び閉塞箇所を特定するために有効な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第1の実施形態を示す図。
【図2】本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第2の実施形態を示す図。
【図3】本発明における漏えい及び閉塞検知装置の第4の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 遮へい区画
2、3 容器
4A〜C 配管
5A〜F 導圧配管
6A〜F パージ流量計
7A〜C 液位検出器
8 漏えい閉塞演算器
9 漏えい閉塞警報表示器
10 漏えい閉塞演算結果表示器
11 漏えい液受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮へい区画内に放射性溶液を扱う複数の容器とこの容器の放射性溶液を移送する配管とが設置され、前記容器ごとに設置され放射性溶液の液位を検出する第1の液位検出手段と、
前記第1の液位検出手段から出力される液位信号を前記容器の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換する液量換算手段と、
前記液量換算手段から出力される液量信号から単位時間あたりの液量変化量を演算する液量変化率演算手段と、
前記液量変化率演算手段から出力される容器ごとの単位時間あたりの液量変化量から液量減少量と液量増加量との差を演算する液量変化率比較演算手段と、
前記液量変化率比較演算手段からの液量減少量と液量増加量との差から液量減少量が液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなったときに警報を出力する漏えい閉塞量判定手段と
を備えたことを特徴とする漏えい及び閉塞検知装置。
【請求項2】
単位時間当たりの液量減少量及び液量増加量、液量減少量と液量増加量の差分を表示する漏えい閉塞量表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の漏えい及び閉塞検知装置。
【請求項3】
前記液量変化率演算手段は、遮へい区画外からの受入れ量及び遮へい区画外への払い出し量を除いた液量変化率を演算することを特徴とする請求項1記載の漏えい及び閉塞検知装置。
【請求項4】
前記容器及び前記配管の下方に設置された漏えい液受け皿と、
前記漏えい液受け皿の液位を検出する第2の液位検出器と
を備え、
前記漏えい閉塞判定手段が、前記第2の液位検出器からの信号により漏えいと閉塞を区別して警報信号を出力することを特徴とする請求項1記載の漏えい及び閉塞検知装置。
【請求項5】
遮へい区画内に放射性溶液を扱う複数の容器とこの容器の放射性溶液を移送する配管とが設置され、前記容器ごとに設置され放射性溶液の液位を検出する第1の液位検出工程と、
前記第1の液位検出手段から出力される液位信号を前記容器の放射性溶液の液量を示す液量信号に変換する液量換算工程と、
前記液量換算手段から出力される液量信号から単位時間あたりの液量変化量を演算する液量変化率演算工程と、
前記液量変化率演算手段から出力される容器ごとの単位時間あたりの液量変化量から液量減少量と液量増加量との差を演算する液量変化率比較演算工程と、
前記液量変化率比較演算手段からの液量減少量と液量増加量との差から液量減少量が液量増加量より予め定めている設定値を超えて大きくなったときに警報を出力する漏えい閉塞量判定工程と
を備えたことを特徴とする漏えい及び閉塞検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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