説明

漏斗

【課題】携帯性に優れ、組立てが容易で、かつ使用時に不安定な場所でも、手を添えなくても使える安定性が良い漏斗を提供する。
【解決手段】屈曲自在で弾性に富む薄板で、下端を切除した略扇形の主体部2と、扇形一側片に突設した係止部3、および主体部2下側の円形曲辺に突設した固定部4から成り、これら主体部2、係止部3、固定部4を一体に形成する。また、係止スリット5は、扇形をした主体部2の両辺の延長線上に位置する仮想中心点Pから伸びる線上に設る。次に、組み立てられた漏斗1の下部を容器12の口13から挿入すると、漏斗1の円錐部の外側の外周部が容器12の口13に接するのと同時に、固定部4の保持部11が、容器の肩部14内面に、たわんだ状態で加圧当接するため、漏斗1が容器12の口13と容器12の肩部14内面を挟み込み、漏斗1の位置が保持力を持って固定され、容器12に安定した状態で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屈曲弾力性のある薄板素材から成る漏斗であり、特に粉末品を他の容器に移す際に用いられる漏斗に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用途や洗剤用途などに使用される液体製品を収納した容器は、重量や体積が大きく輸送費がかさむため、この輸送費を低減するために、粉末の状態で輸送して、利用者が水などの液体にこの粉末を加え飲料用途や洗剤用途などの液体製品に戻して使用することが行われている。しかしながら、粉末や水などを口の狭いボトルなどの容器に充填する際に、それらが周囲にこぼれやすいという問題があった。
【0003】
そのためこの問題に対しては通常漏斗が使用されているが、従来知られている漏斗は円錐形の本体部とその頂点から延びる管状の部分から成る立体形状であることから、一定量の体積を有しかさばっているため、持ち歩きや輸送などの携帯性に問題があり、使用上の利便性に課題を有していた。
【0004】
そのため利用者の作業を容易にするため携帯性の優れた漏斗を粉末製品に添付することが求められている。そこで、持ち運びや収容に便利な組立式漏斗(特許文献1参照)や、平坦に折り畳むことができる中空多角錐の漏斗(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
この特許文献1に示された漏斗は、三角形片を連接させた本体部とその下部に設けた導出部から成り、本体部の係止突片と係止スリットを係合させて組み立てた組立式漏斗であり、容器の中に導出部を挿入するとともに、本体部の下部を容器の口に当接させて、容器に固定させ使用するものである。
【0006】
また特許文献2に示された漏斗は、上端に大径開口部、下端に小径開口部を備えた中空多角錐形状のもので、大径開口部および小径開口部を広げた状態で側部を容器の口部に当接させた状態で、小径開口部を容器中に挿入させ、同時に側面に形成した掛止片を容器口部の上部もしくは内側に当接させて容器に固定させ使用するものである。またこの漏斗は側面の側辺を折線として2枚重ねに折り畳み、平坦に折り畳むことが出来る構成になっている。
【0007】
しかし、これら特許文献1、特許文献2に開示された漏斗には以下に述べる課題があった。
【先行技術文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−277014号公報
【特許文献2】特開2009−286413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、特許文献1に開示された組立式漏斗においては、漏斗を容器に固定させた際に容器との接触は本体部の外面のみであり(漏斗下部の導出部は容器の中に挿入されていて容器との接触はない)極めて不安定な状態である。そのため、漏斗を使用する時は必然的に手を添えてその固定を補助することが必要なものであった。
【0010】
また特許文献2に開示された漏斗においては、その側面に形成した掛止片は環状の漏斗側面の一部に小さく突き出た1個の片状体であり、同じく環状の容器口部に対して掛止する力は極く小さなものと考えられる。そのため、詰め替え環境が外乱による振動があるなど不安定な場所では漏斗の固定が不十分なものであった。
【0011】
以上のことから両特許文献1、2に示された漏斗は、ともに使用時における容器への固定が不十分であり新たな構成が必要とされるものであった。
【0012】
また、特許文献1に示された組立式漏斗では、本体部の係止突片を係止スリットに係合させて組み立てているが、係止突片の幅は抜け防止のため係止スリットの幅より大きく作成されている。そのため係止突片を係止スリットに押し込むための努力と力、時間を必要とし、作業上の改良が望まれるものであった。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、持ち運びが容易で携帯性に優れ、組立てが容易で、かつ使用時に安定性が良く手を添えなくても使える漏斗を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の漏斗は屈曲自在で弾力性に富む薄板で、下端を切除した略扇形の主体部と、扇形一側片に突設した係止部、および主体部下側の円形曲辺に突設した固定部から成り、これら主体部、係止部、固定部を一体に形成することをビク型の打ち抜き工程だけで携帯性に優れた平面形状の漏斗を提供する。
【0015】
また、展開状態の漏斗を組立てるときに使用する係止スリットは、扇形をした主体部の両辺の延長線上に位置する中心点Pから伸びる線上に設け、係止スリットの長さLは、係止部の長さMより僅か小さくする。つまり(係止スリットの長さL)≦(係止部の長さM)の条件を満たす漏斗を提供する。
【0016】
さらに、この係止スリットの両端には係止部を挿入したときの力により係止スリットが引き裂かれることを防止するためのクラック防止部を形成した漏斗を提供する。
【0017】
次に、組み立てられた漏斗の下部を容器の口から挿入すると、漏斗の円錐部の外側の外周部が容器の口に接するのと同時に、固定部の保持部が、容器の肩部内面に、たわんだ状態で加圧当接するため、漏斗が容器の口と容器の肩部内面を挟み込み、漏斗の位置が保持力を持って固定され、容器に安定した状態で保持されることで、外からの強制振動や重力に逆う上下反転にも、容器の口からぬけ落ちない漏斗を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の漏斗はビク型の打ち抜き工程だけで携帯性に優れた平面形状の展開状態の漏斗を製作でき、製作工程が少なく、安価である。
【0019】
この漏斗の組立て方法は展開状態の漏斗を丸め、弱い力で係止部を係止スリットに差し込むだけで立体化できるので、粉末の入った袋を詰めた梱包箱に展開状態の漏斗を添付して輸送する場合に、かさばらず携帯性に優れている。
【0020】
この漏斗は容器の口と容器の肩部内面を挟み込み、漏斗の位置が保持力を持って固定されるため、容器に安定した状態で保持され、外からの強制振動や重力に逆い上下反転しても、容器の口からぬけ落ちない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明漏斗の実施形態の展開体Aの図
【図2】(A)、(B)、(C)は、本発明漏斗の実施形態を組立てる手順を示す説明図
【図3】本発明の実施形態を容器に固定した時の正面図(A)と側面図(B)
【図4】本発明の漏斗にストローを差した側面図(A)、爪楊枝を差した側面図(B)
【図5】梱包箱の蓋を開けた状態の斜視図
【図6】梱包箱の厚さを定規で測定している斜視図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面にもとづき説明する。
図1は本発明漏斗の実施形態の展開体Aであり、プラスチックシートなど屈曲自在で弾力性に富む薄板で構成すると、ビク型を使用した抜き工程のみで簡単に作成できる。例えばPETフィルムの素材での厚さ0.05mmや0.1mmは最適である。
【0023】
この展開体Aは、下端を切除した略扇形の主体部2と、主体部2の扇形一側片に突設した係止部3、および主体部2、下側の円形曲辺に突設した固定部4から成り、これら主体部2、係止部3、固定部4は一体に形成する。
【0024】
主体部2には漏斗1を組立てるときに係止部3が係止する係止スリット5が設けられる。この係止スリット5は、扇形をした主体部2の両辺の延長線上に位置する仮想中心点Pから伸びる線上に設け、その長さ5Lは係止部3Lの長さより僅か小さくする。そして係止スリット5の両端には係止部3を挿入したときの力により係止スリット5が引き裂かれることを防止するため、クラック防止部6を形成する。クラックの防止には切り欠や角部があると応力がそこに集中し、切れ始める原因になるため、円形や楕円など丸みで構成することにより応力の集中を避ける構成とする。
【0025】
係止部3は、総体先尖形状でその両方の基部にはクラック防止のための円形をした係止溝8を設け、この係止溝8間の距離3Lは、前記係止スリット5のクラック防止部6間の距離5Lと等しいか僅か大きく形成する。また係止部3の中央部位は両端にクラック防止のための円形部9を設けたスリット7を設ける。
【0026】
係止部3を主体部の係止スリット5に挿入するきに係止スリットの長さ5Lにより係止溝間の長さ3Lを縮める力を受けるが、この力を緩和するため係止部3に設けたスリット7が変形し、スリット7を境界にした左右の薄膜の微小量が重なるため、弱い挿入力で組立が可能である。
【0027】
また係止溝8は係止部3を係止スリット5に挿入したとき、クラック防止部6間の距離と等しいかそれより大きいことから強く係合して、係止部3が係止スリット5から抜けることはない。
【0028】
この係止部3の係止スリット5からの係合離脱防止は、漏斗1組立て後の漏斗1の形状破壊防止に直結することになる。
【0029】
固定部4は、基部10と両側に延びる保持部11から成る逆T字形状をしていて、基部10を主体部2からの連結部分とし保持部11を両翼に延びる延長部分としている。そして漏斗1として使用するときは、この固定部4の保持部11が容器12の肩部14の内側に強く当接していて漏斗1の固定を確実なものにする。そのため保持部11は漏斗1を固定する容器12の口13の内径より大きく作成するが、素材が屈曲弾性のあるものであるため、容器12の口から挿入する際に支障となることはない。
【0030】
図2の(A)、(B)、(C)は図1で説明した展開体Aを漏斗1に組み立てる手順を説明したものである。まず(A)で示したように一方の手の指で主体部2の上部を持ち、他方の手の指は係止部3およびその近辺を持つ。ついで円錐形を作るように主体部2の両辺を屈曲させて、(B)で示したように一方の手の指で円錐形状を保持させて状態で他方の手の指(図示せず)を使って係止部3を主体部2の係止スリット5に挿入させる。(C)は漏斗1が組み立てられた状態を示す。
【0031】
図3は漏斗1を容器12に固定したときの正面図(A)と側面図(B)である。組み立てられた漏斗1は、その下部を容器12の口13から挿入すると、漏斗1の円錐部の外側の外周部が容器12の口13に接するのと同時に、固定部4の保持部11が、容器12の肩部14内面に、たわんだ状態で加圧当接するため、漏斗1が容器12の口13と容器12の肩部14内面を挟み込むので漏斗1の位置が保持力を持って固定されるため、容器12に安定した状態で固定される。(A)の正面図では保持部11は広げた形で示され、(B)の側面図では保持部11の片方が表示されている。容器12中には、この固定部4の保持部11が肩部14内面に加圧当接していることから、外からの強制振動が与えられたり、重力に逆らい上下反転しても、漏斗1が容器12から抜け落ちることはない。
【0032】
図4は漏斗1を容器12に固定し粉末を充填するときに、容器12内の空気を排出して充填を容易にかつ迅速に行う方法を示すもので、(A)は漏斗1の円錐形部の内側から容器12内に連通管例えばストロー15を差し込んだ状態を示し、(B)は漏斗1の円錐形部の外側と容器12の口13との間に挟在物例えば爪楊枝16のようなものを差し込んだ状態を示している。この連通管や挟在物によってできる空間を通して容器12中の空気が外に排出され、粉末の充填が迅速に行われる。また、この漏斗1は液体の充填にも使用可能であることはもちろんのことである。
【0033】
図5は運送する粉末を封入した袋18数個を収納した、角2封筒に封入可能な梱包箱19の蓋裏面に、本発明漏斗の展開体Aをテープなどで貼付けたり、蓋裏面にスリットなどを設けて挟んで固定させた斜視図である。漏斗野展開体Aは極めて薄い素材から作成されているため嵩張ることはなく、梱包箱19の蓋裏面や粉末を封入した袋の上にも容易に収容でき、その場合にも展梱包箱19の厚さにほとんど影響を与えることはない。そのため、複数個の漏斗の展開体Aを一つの梱包箱19に収納することも可能である。一般に比較的厚さが薄い梱包箱19などを運送する場合には運送料を考慮してメール便が使用されるが、このメール便においては、角2封筒のサイズ以下で送るものの厚さが1cm以下か、2cm」以下か、その範囲外かで料金が異なる。
【0034】
図6はメール便で運送する梱包箱19を定規17で測定しているときの状態を示す斜視図であるが、この定規17はカタカナ「エ」の形をしており一方の隙間は1cmの間隔、他方の隙間は2cmの間隔で作成され、この定規17を使用して運送料を判定できる。これら梱包箱19は角2封筒に入れた状態で1cm以下でなくとも2cm以下であれば料金は多少高くなるが、メール便として配送が可能である。また漏斗の展開体Aは薄い素材から作成されていることから、図5で示したように梱包箱19の内部に収納するだけでなく、容器12などのラベルの一部に取り外し可能にして付設したり、好みのデザインや印刷を施して容器12や梱包箱19に取り外し可能にして取りつけても良い。
【符号の説明】
1 漏斗
2 主体部
3 係止部
4 固定部
5 係止スリット(主体部の)
6 クラック防止のための円形部(係止スリットの)
7 スリット(係止部の)
8 係止溝(係止部の)
9 クラック防止部(スリットの)
10 基部(固定部の)
11 保持部(固定部の)
12 容器
13 口(容器の)
14 肩部(容器の)
15 ストロー
16 爪楊枝などの異物
17 メール便として配送の可否を判定する定規
18 粉末の入った袋
19 梱包箱
A 漏斗の展開体
P 仮想中心点(扇形主体部の)
3L 係止溝間の長さ(係止部の)
5L 係止スリットの長さ(クラック防止部6を含む)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲自在で弾力性に富む薄板で、下端を切除し、係止スリットを設けた略扇形の主体部と、扇形一側片に突設した係止部、および主体部下側の円形曲辺に突設した固定部から成り、これら主体部、係止部、固定部を一体に平面形状として形成した展開形状を有し、前記係止部を係止スリットに係止することで組立てた漏斗。
【請求項2】
漏斗の展開体Aを組立てるときに使用する係止スリットは、扇形をした主体部の両辺の延長線上に位置する仮想中心点Pから伸びる線上に設け、係止スリットの長さLは、係止部の長さMより僅か小さくする。つまり(係止スリットの長さ5L)≦(係止溝間の長さ3L)の条件を満たす請求項1記載の漏斗。
【請求項3】
組み立てられた漏斗の下部を容器の口から挿入すると、漏斗の円錐部の外側の外周部が容器の口に接するのと同時に、固定部の保持部が、容器の肩部内面に、たわんだ状態で加圧当接するため、漏斗が容器の口と容器の肩部内面を挟み込む構造となる請求項1〜2のいづれかに記載の漏斗。
【請求項4】
係止スリット、係止溝間、係止部のスリットの各々の両端には係止部を挿入したときの力により係止スリット、係止溝間、係止部のスリットが引き裂かれることを防止するため丸みのあるクラック防止部を形成した請求項1〜3のいづれかに記載の漏斗。
【請求項5】
漏斗の展開体Aを組立てるため、係止部を係止スリットに挿入するときに係止スリットの長さ5Lにより係止溝間の長さ3Lを縮める力を受けるが、これを緩和するため係止部にスリットを変形可能に形成した請求項1〜4のいづれかに記載の漏斗。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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