説明

漏水検知システム

【課題】 循環回路に落水現象が発生したとしても誤判定することなく、熱交換器破損に起因する漏水発生を正確に検知し得る漏水検知システムを提供する。
【解決手段】 漏水検知部を構成する貯留容器内に一時貯留された熱媒体の液位が漏水検知液位レベルを超えた状態が設定時間継続(漏電電極がON状態継続)すれば、漏水発生の可能性ありと判定する(S1でYES)。循環ポンプを作動させると、漏水検知部の上流側の膨張タンクの液位が設定液位以下に変化すれば(S2,S3でYES)、落水現象発生が原因と判定して、漏水発生の可能性ありとの判定をキャンセルし(S5)、循環ポンプを作動させても、漏水検知部の上流側の膨張タンクの液位が設定液位よりも上であれば(S2,S3でNO)、交換器破損に起因する漏水発生と判定して報知する(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源側の液体と加熱対象側の液体との間で熱交換が行われる熱交換器において、両液体を隔てる内部隔壁の損傷に起因して生じるおそれのある漏水を検知する漏水検知システムに関し、特に前記熱交換器を通る回路側で生じる不具合に起因する誤判定発生のおそれを回避し得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、温水暖房システムにおいては、その循環配管が例えばPE(ポリエチレン)管のように酸素透過性の合成樹脂管により構成されているため、2階等に設置された暖房端末に対し1階に設置された熱源機から循環配管が延ばされていると、循環ポンプが停止状態では循環配管内の温水が負圧傾向となって、外部から循環配管の壁を通して酸素を吸収し、循環配管内に空気が侵入することが考えられる。このため、例えば特許文献1では、このような空気侵入を除去するために、一定時間経過毎に循環ポンプを作動させて非加熱状態の温水を循環させることで、内部の侵入空気を膨張タンクから外部に空気抜きすることが開示されている。
【0003】
又、特許文献2では、前記と同様に暖房端末である暖房床が高所に設置されている場合に、温水循環回路に介装されたタンク内の水位が所定水位に達してから高水位の警告水位に到達するまでの時間を計測し、計測した時間が予め設定した時間以内であれば、循環温水を加熱する熱交換器の隔壁が破損したか、あるいは、循環配管内に多量の空気が侵入したと判定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−61783号公報
【特許文献2】特開2004−257714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本出願人は、熱交換器にて熱の授受を受けて熱媒体を循環させる循環回路を備えたものにおいて、循環回路に介装した膨張タンクからオーバーフローした熱媒体を貯留容器に一時貯留し、この貯留容器内の液位状況を見ることで熱交換器破損に起因する漏水発生の判定を行う技術を開発している。
ところが、その循環回路が暖房回路等の空気侵入に起因していわゆる落水現象が生じる可能性のあるものであると、その落水現象の発生により膨張タンクで熱媒体が溢れてしまうおそれが考えられる。このような現象が生じると、急速なオーバーフローにより前記貯留容器内の液位も急上昇してしまい、熱交換器破損が発生していないにも拘わらず、発生したと誤判定してしまうおそれが生じることになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記の落水等が発生したとしても誤判定することなく、熱交換器破損に起因する漏水発生を正確に検知し得る漏水検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、内圧が高圧側になる一次側回路と、膨張タンクが介装されて内圧が低圧側になる二次側回路との間で両回路内の熱媒体を液−液熱交換する熱交換器を備えたシステムに適用され、前記膨張タンクからオーバーフローした熱媒体を一時貯留する漏水検知部と、この漏水検知部内で熱媒体の設定滞留状態の発生を検知することで前記熱交換器を介した両回路間における漏水発生と判定する漏水検知処理手段とを備えた漏水検知システムを対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、その作動により前記二次側回路内に侵入している空気を排除するエア抜き手段と、前記漏水検知部内に熱媒体の一時貯留が発生しかつ前記設定滞留状態の発生が検知されたとき、前記エア抜き手段を作動させることにより前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを判定し、この判定に基づいて前記漏水発生との判定結果を補正処理する漏水判定補正手段とを備えることとした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、漏水検知部内で熱媒体の設定滞留状態が発生して漏水発生と判定される事態に仮に至るような場合であっても、漏水判定補正手段によりエア抜き手段が作動されるため、前記の熱媒体の滞留状態が解消して漏水発生との判定が覆る可能性がある。すなわち、二次側回路内に空気の侵入があってそれに起因して落水現象が発生した結果、過剰なオーバーフローが生じて前記熱媒体の設定滞留状態が発生したのであれば、前記エア抜き手段の作動により二次側回路内のエア抜きが実行されて落水現象が解消されるため、前記の熱媒体の滞留状態も解消することになる。従って、エア抜き手段を作動させることにより前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを判定し、この判定に基づいて前記漏水発生との判定結果を補正処理、すなわち、漏水発生との判定をキャンセルしたり、漏水発生との判定を行わないようにしたりする補正処理を行うため、熱交換器破損による漏水発生ではないにも拘わらず漏水発生と判定されてしまうという誤判定の発生を確実に回避することが可能となり、誤判定に基づく無駄なメンテナンス作業を強いられることを回避することが可能となる。
【0009】
本発明の漏水検知システムにおいて、前記膨張タンク内に液位を検知する液位検知手段を備え、前記エア抜き手段を前記二次側回路に介装された循環ポンプにより構成し、前記漏水判定補正手段として、前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを前記液位検知手段による液位検知に基づき判定する構成とすることができる(請求項2)。このようにすることにより、エア抜き手段として特別な機器を設置することなく、循環回路であれば本来備えている循環ポンプを用いることが可能となる一方、もしも空気が侵入しているのであれば、循環ポンプの作動により膨張タンクからエア抜きされて膨張タンクの液位が低下するため、この状況の液位検知により前記の設定滞留状態が解消に向かうか否かを容易にしかも確実に判定可能となる。
【0010】
又、本発明の漏水検知システムにおいて、前記二次側回路が、暖房用熱源である熱媒体を暖房端末と前記熱交換器との間で循環供給させる暖房回路、及び/又は、太陽熱を集熱する熱媒体をソーラ集熱器と前記熱交換器との間で循環供給させる集熱回路である場合には(請求項3)、もしも、暖房端末が2階等の高所に設置されていて暖房端末又は暖房端末側の循環配管に空気溜まりが生じ易かったり、あるいは、通常は屋根に設置されているソーラー集熱器又はソーラー集熱器側の循環配管に空気溜まりが生じたりする結果、その空気溜まりに押されて落水現象が発生したとしても、漏水検知部での誤判定の発生を確実に回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明の漏水検知システムによれば、漏水検知部内で熱媒体の設定滞留状態が発生して漏水発生と判定される事態に仮に至るような場合であっても、漏水判定補正手段によりエア抜き手段を作動させるようにしているため、真に熱交換器破損に伴う漏水発生なのか、それ以外の原因である二次側回路内への空気侵入に起因して生じたものなのかを確認することができる。もしも、二次側回路内に空気の侵入があってそれに起因して落水現象が発生した結果、過剰なオーバーフローが生じて前記熱媒体の設定滞留状態が発生したのであれば、前記エア抜き手段の作動により、二次側回路内のエア抜きが実行されて落水現象が解消されるため、前記の熱媒体の滞留状態も解消することができるようになる。従って、エア抜き手段を作動させることにより前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを判定し、この判定に基づいて前記漏水発生との判定結果を補正処理、すなわち、漏水発生との判定をキャンセルしたり、漏水発生との判定を行わないようにしたりする補正処理を行うことにより、熱交換器破損による漏水発生ではないにも拘わらず漏水発生と判定されてしまうという誤判定の発生を確実に回避することができ、誤判定に基づく無駄なメンテナンス作業を強いられることを回避することができる。
【0012】
特に、請求項2によれば、前記膨張タンク内に液位を検知する液位検知手段を備え、前記エア抜き手段を前記二次側回路に介装された循環ポンプにより構成し、前記漏水判定補正手段として、前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを前記液位検知手段による液位検知に基づき判定する構成とすることで、エア抜き手段として特別な機器を設置することなく、循環回路であれば本来備えている循環ポンプを用いることができる一方、もしも空気が侵入しているのであれば、循環ポンプの作動により膨張タンクからエア抜きされて膨張タンクの液位が低下するため、この状況の液位検知により前記の設定滞留状態が解消に向かうか否かを容易にしかも確実に判定することができるようになる。
【0013】
又、請求項3によれば、前記二次側回路が、暖房用熱源である熱媒体を暖房端末と前記熱交換器との間で循環供給させる暖房回路、及び/又は、太陽熱を集熱する熱媒体をソーラ集熱器と前記熱交換器との間で循環供給させる集熱回路である場合には、もしも、暖房端末が2階等の高所に設置されていて暖房端末又は暖房端末側の循環配管に空気溜まりが生じ易かったり、あるいは、通常は屋根に設置されているソーラー集熱器又はソーラー集熱器側の循環配管に空気溜まりが生じたりする結果、その空気溜まりに押されて落水現象が発生したとしても、漏水検知部での誤判定の発生を確実に回避することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る漏水検知システムを適用した貯湯式給湯システムの例を示す模式図である。
【図2】図2(a)は図1の漏水検知システムの貯留容器の拡大断面説明図であり、図2(b)は図2(a)の部分拡大図である。
【図3】図3(a)は図2(b)の部分斜視図であり、図3(b)は図2(b)の構成に代え得る他の態様を示す図2(b)対応図である。
【図4】コントローラにおける漏水検知に係る制御構成のブロック図である。
【図5】漏水検知に係る制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る漏水検知システムRを適用した貯湯式給湯システムWを示す。この貯湯式給湯システムWは、集熱回収部1により集熱した太陽熱によって貯湯タンク2内の湯水を熱交換加熱した上で貯湯タンク2に貯湯として蓄熱し、この貯湯を給湯に利用したり、暖房回路41の暖房用熱源である熱媒体を熱交換加熱する熱源として利用したりするように構成されたものである。このような貯湯式給湯システムWと、前記漏水検知システムRとがコントローラCにより作動制御されるようになっている。
【0017】
集熱回収部1は、ソーラー集熱器11と、集熱回路12とを備えたものであり、集熱回路12には循環ポンプ13と膨張タンク14とが介装されている。そして、集熱運転が循環ポンプ13の作動により開始されると、熱媒体がソーラー集熱器11に循環供給され、ソーラー集熱器11において集熱により昇温した熱媒体が熱交換器31に循環供給され、この熱交換器31において貯湯タンク2内の湯水を液−液熱交換により加熱するようになっている。前記膨張タンク14には、液位検知手段として低水位用及び高水位用の2本の水位電極141,142が設置される一方、液位が所定液位よりも上昇したときにオーバーフローさせるためのオーバーフロー管15が接続されている。そして、集熱回路12内の熱媒体が所定量以下に減れば、コントローラCによる制御により熱媒体が自動補給されるようになっている。すなわち、水位電極141からの信号出力により膨張タンク14内の液位が低水位を下回ったことが検知されれば、熱媒体補給用の補給路16を開制御して熱媒体(例えばエチレングリコール等の不凍液)が補給され、水位電極142からの信号出力により液位が高水位(設定液位)まで回復したことが検知されれば、前記の補給が停止されるようになっている。前記オーバーフロー管15の下流端は漏水検知システムRの後述の貯留容器51まで延長されて、オーバーフローした熱媒体を貯留容器51内に流入させるようになっている。
【0018】
貯湯タンク2は、密閉式に構成されており、液−液熱交換式の熱交換器31と循環回路32により接続されている。そして、循環ポンプ30の作動により貯湯タンク2内の湯水が底部21から取り出されて循環回路32を通して液−液熱交換式の熱交換器31に循環供給され、この熱交換器31において前記ソーラー集熱器11により集熱された熱媒体により熱交換加熱された後、貯湯タンク2の頂部22に戻されるようになっている。又、貯湯タンク2の底部近傍には給水回路33の下流端が逆止弁を介して接続されており、上流端に接続された水道管等から貯湯タンク2に給水可能となっている。さらに、貯湯タンク2には給湯栓35に給湯する給湯回路36が接続されており、この給湯回路36を通して貯湯タンク2からの貯湯又は補助熱源機34からの補助加熱後の湯を用いて給湯栓35に対する給湯が行われるようになっている。この給湯回路36には、給水回路33の途中から分岐した分岐給水路37の下流端が接続されており、給湯栓35が開かれて給湯回路36から給湯される場合には、貯湯タンク2からの湯又は補助熱源機34からの補助加熱後の湯に対し、分岐給水路37からの給水を混合弁38において所定の混合比で混合することで温調した上で、給湯栓35に給湯させるようになっている。以上の動作における貯湯タンク2内の貯湯温度に応じて補助熱源機34を作動させたり、混合弁38による混合制御により温調制御したりという種々の作動制御がコントローラCにより行われるようになっている。なお、補助熱源機34は、例えば瞬間式湯沸器により構成されている。
【0019】
暖房回路41は、例えば床暖房等の外部の暖房端末40に対し暖房用熱源の熱媒体(例えばエチレングリコール等の不凍液)を循環供給するものである。この暖房回路41には、液−液熱交換式の熱交換器42と、循環ポンプ43と、膨張タンク44とが介装されている。熱交換器42には、循環回路32の熱交換器31により熱交換加熱された湯、又は、熱交換器31の下流側で補助熱源機34により補助加熱された湯が熱源として循環供給され(図1の一点鎖線の矢印参照)、これらの湯により暖房用の熱媒体が熱交換加熱されるようになっている。暖房端末40からの暖房要求がコントローラCに出力されると、循環ポンプ43が作動されて熱媒体が熱交換器42と暖房端末40との間で循環供給されることになり、熱交換器42で加熱された熱媒体が暖房端末40に供給されて放熱され、放熱により降温した熱媒体が熱交換器42に戻されて再加熱されるということを繰り返すことになる。
【0020】
膨張タンク44は、集熱回収部1の膨張タンク14と同様構成を備えている。すなわち、膨張タンク44には、液位検知手段として低水位用及び高水位用の2本の水位電極441,442が設置される一方、液位が所定液位よりも上昇したときにオーバーフローさせるためのオーバーフロー管45が接続されている。そして、暖房回路41内の熱媒体が所定量以下に減れば、コントローラCによる制御により熱媒体が自動補給されるようになっている。すなわち、水位電極441からの信号出力により膨張タンク44内の液位が低水位を下回ったことが検知されれば、熱媒体補給用の補給路46を開制御して熱媒体が補給され、水位電極442からの信号出力により液位が高水位(設定液位)まで回復したことが検知されれば、前記の補給が停止されるようになっている。前記オーバーフロー管45の下流端は漏水検知システムRの貯留容器51まで延長されて、オーバーフローした熱媒体を貯留容器51内に流入させるようになっている。
【0021】
漏水検知システムRは、前記の膨張タンク14及び/又は44においてオーバーフローしてオーバーフロー管15,45により導入される熱媒体を一時貯留する貯留容器51と、貯留容器51内に一時貯留される熱媒体の液位を検出する液位電極により構成された漏水電極52と、貯留容器51内に一時貯留された熱媒体を2通りの排出形態により排出させる排出部53とを備えている。排出部53は、図2(a),(b)及び図3(a)に示すように、貯留容器51の底壁511を上下に貫通する筒状本体531により構成され、筒状本体531には上下にそれぞれ開口し比較的大径の内径に設定された開放排出路532と、底壁511よりも僅かに上位置において筒状本体531の側面に開口して開放排出路532に連通する抑制排出路533とが形成されている。
【0022】
筒状本体531は、開放排出路532の上端開口532aが所定の上限液位レベルHLに位置するように底壁511から上方に突出した状態に配設されている。そして、開放排出路532の通水断面積は、抑制排出路533のそれよりも大流量の熱媒体の通過を許容し得る値であって、一時貯留される熱媒体がオーバーフロー管15,45から急速かつ多量に導入されて上限液位レベルHLを超えることになったとしても、その一時貯留状態の熱媒体を早期に排出し得る程度に大流量で通過させ得る値に設定されている。又、抑制排出路533の開口位置は、底壁511の上面(底面)位置でもよいが、熱媒体に含まれるかもしれない塵埃等を沈殿させて目詰まりの発生を回避するために、底壁511の上面から僅かに上位置の下限液位レベルLLから上に開口するように設定されている。
【0023】
この抑制排出路533の開口断面積は、熱交換器破損に起因する程度よりも少ない一時貯留量の熱媒体であれば、たとえオーバーフロー管15,45から導入されて漏水電極52の下端位置である漏水検知液位レベルRLを超えて漏水電極52から検知信号が出力されたとしても、早期(後述の漏水検知タイマに基づく経過時間値よりも早期)に排出し得る程度の流量(例えば50〜200mL/分)で熱媒体を排出し得るように設定されている。すなわち、貯留容器51に対しオーバーフロー管15,45から導入される熱媒体が、熱交換器破損に起因するものではなくて、例えばオーバーフロー管15,45の内表面に生じるかもしれない凝結水の発生や、膨張タンク14,44への補給路16,46からの補給の停止遅れに起因する過剰補給に起因する程度の僅かな量であれば、その熱媒体を早期に排出させることで、漏水検知と判定されないようになっている。このような排出部53を有する貯留容器51によって漏水検知部が構成されている。そして、この漏水検知部での熱媒体の一時貯留量の状況を漏水電極52により把握することで、熱交換器31及び/又は42の熱交換器破損(例えば内部隔壁の穴あき)の発生に起因する漏水が発生していることを判定し得るようにしている。つまり、熱交換器破損に起因して膨張タンク14,44がオーバーフローした結果、貯留容器51内に一時貯留されることになった熱媒体が抑制排出路533からでは排出し切らずに所定の設定時間以上にわたり漏水検知液位レベルRLよりも高い液位に維持されるという滞留状態(設定滞留状態)に至れば、熱交換器破損に起因する漏水が発生したと検知し得るようにしているのである。
【0024】
ここで、給湯栓35が閉じられて給湯回路36による給湯作動が停止している状態では、循環回路32内が給水圧に支配的となっているため、膨張タンク14,44で開放されている集熱回路12又は暖房回路41内の内圧よりも循環回路32内のそれの方が高くなる。このため、熱交換器31,42において熱交換器破損が万一発生すると、内圧の高い循環回路32内の湯水が集熱回路12又は暖房回路41内に継続的に漏水することになる。漏水が発生すると、膨張タンク14,44の液位が上昇してオーバーフローすることになり、このオーバーフローした熱媒体等がオーバーフロー管15,45を通して貯留容器51に導入されることになるのである。従って、かかる漏水発生を早期に検知することで、集熱回路及び/又は暖房回路41内の熱媒体に対し循環回路32内の湯水が混入してしまうという不具合発生を可及的に小さく抑えることができたり、熱交換器破損の発生を早期に把握してメンテナンスすることができたりするということが可能となる。
【0025】
コントローラCは図4に示すように漏水検知処理手段6を備え、この漏水検知処理手段6は漏水検知処理部61と、漏水判定補正手段としての漏水判定補正部62とを備えている。これら漏水検知処理部61及び漏水判定補正部62は、貯留容器51内の漏水電極52と、膨張タンク14,44の特に高水位用の水位電極142,442とからの信号出力に基づいて、漏水発生の可能性や、循環ポンプ13,43の作動に基づく落水発生の有無についての確認等を実行した上で、漏水発生の判定を行って報知手段としてのリモコン63に対する報知処理を行ったり、漏水発生ではなくて暖房回路41及び/又は集熱回路12に落水が発生したことに起因する偽漏水検知であることを判定して漏水判定検知の補正処理を行ったりするようになっている。
【0026】
以下、図5を参照しつつ、漏水検知処理手段6による処理を説明する。まず、漏水電極52が所定の設定時間だけON状態を継続するか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、漏水電極52からON信号が出力されれば、電子時計を用いた漏水検知タイマをスタートさせ、ON信号が設定時間の経過するまで継続すれば、ON状態継続(設定滞留状態の発生)と判定して漏水発生の可能性ありとの判定を行う(ステップS1でYES)。次に、前記の漏水電極52のON状態継続が、集熱回路12又は暖房回路41に空気侵入に起因する落水現象の発生が原因で生じたものであるか否かを確認するために、循環ポンプ13,43を所定時間作動させる(ステップS2)。この作動は循環ポンプ13,43の双方同時でも、一方ずつでも、いずれでもよい。
【0027】
もしも、暖房端末40が2階等の高所に設置されていて暖房端末40又は暖房端末40側の循環配管に空気溜まりが生じ易かったり、あるいは、通常は屋根に設置されているソーラー集熱器11又はソーラー集熱器11側の循環配管に空気溜まりが生じたりする結果、その空気溜まりに押されて落水現象が発生した場合には、大気開放状態の膨張タンク14,44に熱媒体が溢れ、それがオーバーフロー管15,45を通して貯留容器51に導入されることになる。かかる場合には、循環ポンプ13,43を作動させて熱媒体を集熱回路12又は暖房回路41に循環させることで、内部の空気が膨張タンク14,44に運ばれて外部に放出されることになる。そして、このような循環ポンプ13,43の作動による空気抜き(エア抜き)の結果、膨張タンク14,44の熱媒体の液位は適正液位まで低下して、オーバーフローは無くなる。これにより、貯留容器51へのオーバーフロー熱媒体の流入が停止されるため、熱媒体の排出に伴い、漏水電極からのON信号出力もなくなってOFFになる筈である。ここで、循環ポンプ13,43は、その作動により前記の如くエア抜きが可能となるため、それぞれエア抜き手段を構成するものである。
【0028】
そこで、次に、膨張タンク14,44の水位電極142,442からのON信号の出力が継続しているか、ON信号の出力から信号出力がOFFに変化したか、いずれであるかを判定する(ステップS3)。水位電極142,442のいずれか又は双方からON信号の出力が継続していれば(ステップS3でYES)、そのON信号出力が継続している水位電極142又は/及び442と対応する膨張タンク14又は/及び44内の熱媒体の液位が上昇してオーバーフローした結果、前記の漏水電極52のON状態が継続しているのであり、その膨張タンク14又は/及び44が属する回路(集熱回路12又は/及び暖房回路41)の熱交換器31又は/及び43において熱交換器破損(熱交換器穴あき)に起因する漏水が発生しているとの判定を確定させ、報知手段であるリモコン63に対する報知処理等を行う(ステップS4)。
【0029】
一方、ステップS3で水位電極142,442の双方がON信号の出力からOFFに変化した、あるいは、水位電極142,442の内の一方はOFFのままであるが他方がON信号の出力からOFFに変化したのであれば(ステップS3でNO)、ステップS1での漏水電極52がON状態継続していることは、集熱回路12及び/又は暖房回路41に落水現象(空気混入)が生じたことが原因であって、熱交換器破損に伴う漏水発生が原因ではないと判定し、前記の漏水発生の可能性ありとの判定をキャンセルして漏水発生との判定は行わないようにする(ステップS5)。
【0030】
以上の漏水検知処理によれば、貯留容器51内の一時貯留量がたとえ漏水電極52がONとなる漏水検知液位レベルRLよりも高い状態が継続したとしても、もしも集熱回路12及び/又は暖房回路41における落水現象が原因である場合には、循環ポンプ13,43を作動させることで、膨張タンク14,44からの空気抜きが可能となって、膨張タンク14及び/又は44からのオーバーフローが停止するため、貯留容器51内の熱媒体の液位も漏水検知液位レベルRLよりも低下して漏水電極52の出力がOFFの正常状態に終息することになる。従って、循環ポンプ13,43の作動による落水現象発生か否かの確認に基づき、貯留容器51内の熱媒体が設定滞留状態に陥ったとしても、それが熱交換器破損に起因して漏水が発生したものであるか、落水現象発生に起因して過剰なオーバーフローが発生したものであるかを確実に峻別することができる。これにより、漏水検知処理における誤判定の発生を確実に回避することができるようになり、誤判定に基づく無駄なメンテナンス作業を強いられることを回避することができる。
【0031】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態における排出部53の抑制排出路533の代わりに、図3(b)に示すような排出部53aを適用してもよい。この排出部53aは、排出路の途中に狭窄部を形成し、この狭窄部により抑制排出路533aを構成したものである。この抑制排出路533aも前記実施形態の抑制排出路533と同様な通過流量になるように絞られている。
【0032】
又、本発明の適用対象としては、少なくとも次の構成を備えるものであればよい。すなわち、液−液熱交換式の熱交換器を備え、内部隔壁に穴あき等の熱交換器破損が発生すると、内圧の高い側から低い側に熱媒体が漏水し、その漏水が流入する側の回路に循環ポンプと膨張タンクとが介装され、膨張タンクからオーバーフローした熱媒体が漏水検知システムRの貯留タンク51に導入されるように構成されていれば、本発明を適用することができる。
【0033】
さらに、前記実施形態では、回路内に空気侵入が予想されるものとして集熱回路12と、暖房回路41との2種類を挙げたが、これら以外の循環回路であっても、循環ポンプ及び膨張タンクが介装され回路内に空気侵入が予想される循環回路であれば、本発明を適用することができる。又、前記実施形態では、集熱回路12と、暖房回路41との双方を備えた貯湯式給湯システムに対し本発明を適用しているが、もちろん集熱回路12及び暖房回路41のいずれか一方を備えたシステムでもよい。
【符号の説明】
【0034】
6 漏水検知処理手段
13,43 循環ポンプ(エア抜き手段)
14,44 膨張タンク
15,45 オーバーフロー管
31,42 熱交換器
51 貯留容器(漏水検知部)
52 漏水電極
53 排出部(漏水検知部)
61 漏水検知処理部
62 漏水判定補正部(漏水判定補正手段)
142,442 水位電極(液位検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧が高圧側になる一次側回路と、膨張タンクが介装されて内圧が低圧側になる二次側回路との間で両回路内の熱媒体を液−液熱交換する熱交換器を備えたシステムに適用され、前記膨張タンクからオーバーフローした熱媒体を一時貯留する漏水検知部と、この漏水検知部内で熱媒体の設定滞留状態の発生を検知することで前記熱交換器を介した両回路間における漏水発生と判定する漏水検知処理手段とを備えた漏水検知システムであって、
その作動により前記二次側回路内に侵入している空気を排除するエア抜き手段と、
前記漏水検知部内に熱媒体の一時貯留が発生しかつ前記設定滞留状態の発生が検知されたとき、前記エア抜き手段を作動させることにより前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを判定し、この判定に基づいて前記漏水発生との判定結果を補正処理する漏水判定補正手段と、
を備えていることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の漏水検知システムであって、
前記膨張タンク内に液位を検知する液位検知手段を備え、
前記エア抜き手段は前記二次側回路に介装された循環ポンプにより構成され、
前記漏水判定補正手段は、前記設定滞留状態が解消に向かうか否かを前記液位検知手段による液位検知に基づき判定するように構成されている、漏水検知システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の漏水検知システムであって、
前記二次側回路は、暖房用熱源である熱媒体を暖房端末と前記熱交換器との間で循環供給させる暖房回路、及び/又は、太陽熱を集熱する熱媒体をソーラ集熱器と前記熱交換器との間で循環供給させる集熱回路である、漏水検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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