漏洩同軸ケーブル
【課題】製造が容易であって、十分な機械的耐久性を有し、曲げ易く細長く曲がりくねった空間での使用が可能であり、スロットピッチを十分に長くすることができるＬＣＸを提供する。
【解決手段】外部導体４は、それぞれが金属線からなる内側編組４ａ及び外側編組４ｂが重ねられて構成されており、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部１となっている。
【解決手段】外部導体４は、それぞれが金属線からなる内側編組４ａ及び外側編組４ｂが重ねられて構成されており、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部１となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに関し、特に、外部導体に形成するスロット部の構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
漏洩同軸ケーブル（以下、「ＬＣＸ」という。）は、内部導体、絶縁体、外部導体及び外被を備えて構成され、従来より、新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり、あるいは、地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている。このようなＬＣＸにおいては、同軸内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、外部導体上に周期的なスロット部が設けられている。
【０００３】
すなわち、漏洩同軸ケーブルの外部導体には、ケーブル軸に対して一定周期毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット部が設けられている。各スロット部は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜されている。なお、各スロット部の周長の半分が使用周波数の半波長と一致したり、その半波長の整数倍となったときには、共振状態となる。この周波数を共振周波数と呼ぷ。
【０００４】
非特許文献１には、打ち抜き加工でスロット部が形成された金属テープにより外部導体を構成したＬＣＸが記載されている。
【０００５】
特許文献１には、中心導体を覆う絶縁体上に絶縁体の周長よりも幅が短い外部導体用の第１の導電性テープを長手方向に隙間が形成されるように縦添えし、その後、第１の導電性テープ上に外部導体用の第２の導電性テープを隣り合うターン間に隙間を形成しながら螺旋巻きして構成したＬＣＸが記載されている。このＬＣＸでは、第１の導電性テープの長手方向の隙間と第２の導電性テープのターン間の隙間とが重畳する部分がスロット部となっている。
【０００６】
また、特許文献２には、外部導体を金属線により構成し、この外部導体にギャップが形成されているＬＣＸが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開平９−１９８９４１号公報
【特許文献２】特開２００３−１２３５５５号公報
【非特許文献】
【０００８】
【非特許文献１】「ＬＣＸ通信システム（初版1982.8.20）」（コロナ社）第２章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
ところで、非特許文献１に記載されたＬＣＸにおいては、打ち抜き加工でスロット部が形成された１枚の金属テープをケーブル長手方向に縦添えしているため、可撓性が悪く、また、屈曲を与えると外部導体がスロット部から亀裂を生ずる虞がある。
【００１０】
特許文献１及び特許文献２に記載されたＬＣＸにおいては、スロットピッチを長くすることが困難である。すなわち、スロットピッチは、螺旋巻きの第２の導電性テープの隣り合うターン間の隙間のピッチに依存するため、スロットピッチを長くするには、螺旋巻きのピッチを長くする必要がある。実用的には、ケーブルに対する螺旋巻きの角度が１０度以下となるような長い螺旋巻きのピッチは製造が困難である。
【００１１】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、製造が容易であって、かつ、十分な機械的耐久性を有し、曲げ易く細長く曲がりくねった空間での使用が可能であり、そして、スロットピッチを十分に長くすることができるＬＣＸを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明に係る漏洩同軸ケーブルは、以下の構成を有するものである。
【００１３】
〔構成１〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、外部導体は、それぞれが金属線からなる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、内側編組のピッチと外側編組のピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１４】
構成１を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブルにおいては、外部導体は、それぞれが金属線からなりピッチが異なる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、スロット部となる編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されているので、製造が容易であり、十分な機械的耐久性及び可撓性を有し、また、スロットピッチを十分に長くすることができる。
【００１５】
すなわち、本発明は、製造が容易であって、かつ、十分な機械的耐久性を有し、曲げ易く細長く曲がりくねった空間での使用が可能であり、そして、スロットピッチを十分に長くすることができるＬＣＸを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係るＬＣＸの構成を示す平面図である。
【図２】本発明に係るＬＣＸの外部導体をなす編組の構造を示す平面図である。
【図３】本発明に係るＬＣＸの外部導体の構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【００１８】
図１は、本発明に係るＬＣＸの構成を示す平面図である。
【００１９】
本発明に係るＬＣＸは、図１に示すように、中心導体２と、この中心導体２を被覆した絶縁体３と、この絶縁体３の外側を覆う外部導体４とが同軸構造となされ、外部導体４が外被（シース）５により覆われて構成されている。
【００２０】
図２は、本発明に係るＬＣＸの外部導体をなす編組の構造を示す平面図である。
【００２１】
外部導体４は、金属線からなる編組から構成されている。編組は、図２に示すように、複数の平行な金属線と、これら金属線に交差する複数の平行な金属線とが編み合わされて構成されたものである。
【００２２】
編組をなす金属線は、絶縁体３の表面上においては、右回りに螺旋状に巻かれたものと、左回りに螺旋状に巻かれたものとが重なった状態となっている。
【００２３】
図３は、本発明に係るＬＣＸの外部導体の構造を示す平面図である。
【００２４】
外部導体４は、図３に示すように、内側編組４ａ及び外側編組４ｂが重ねられて構成されている。内側編組４ａのピッチと、外側編組４ｂのピッチとは、異なっている。
【００２５】
編組のピッチとは、以下のように定義される。すなわち、ケーブルを円筒座標系で表し、長さ方向をｚ、半径をｒ、角度をφとし、ある特定の１本の金属線に着目して、絶縁体３上に螺旋状に巻き付けられた状態を追いかけていくと、ｚは単調増加、ｒは一定の値（絶縁体３の半径）、φは０から２πまでの増加を繰り返す値（２πに達したときに０に戻る）となる。絶縁体３の周りを１回ったとき、すなわち、φが２πとなって０に戻ったときのｚの長さが、編組のピッチである。
【００２６】
なお、図１において、編組のピッチごとの隙間は表記されていないが、実際には、編組のピッチごとに隙間があり、この部分が、編組を単体で外部導体とした場合のスロット部となる。
【００２７】
この外部導体４においては、内側編組４ａ及び外側編組４ｂで、ピッチが異なっていることにより、内側編組４ａをなす金属線と外側編組４ｂをなす金属線とが重なる部分と、金属線同士がずれる部分とが周期的に繰返される。金属線同士が重なる部分では、編組密度が低くなり、金属同士がずれる部分では、編組密度が高くなる。編組密度は、絶縁体３の表面積に対する金属線が覆う面積の比である。
【００２８】
この外部導体４においては、編組密度の低い部分が、漏洩電磁界形成用の複数のスロット部１となっている。このスロット部１は、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとの差によって決まる合成ピッチで周期的に形成されている。
【００２９】
このように、このＬＣＸにおけるスロットピッチは、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとの差によって決まる合成ピッチとなっているため、編組そのもののピッチに比べて、幅広いピッチを実現することが可能となっている。また、外部導体４が編組により構成されていることにより、可撓性に優れ、繰り返し曲げにも強い構造となっている。
【００３０】
ここで、内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ等を、以下の通りとする。
Ｐ１：内側編組４ａのピッチ
Ｐ２：外側編組４ｂのピッチ
Ｃ：打数
ｐ１：内側編組４ａの局所繰り返しピッチ（金属線間の距離）
ｐ２：外側編組４ｂの局所繰り返しピッチ（金属線間の距離）
ｋ１：内側編組４ａの単位長さあたりの編組窓数
ｋ２：外側編組４ｂの単位長さあたりの編組窓数
ｋ１２：単位長さあたりの合成窓数
ｐ１２：合成ピッチ
【００３１】
窓とは、図２に示すように、金属線が存在しない部分である。局所繰り返しピッチとは、一つの窓のケーブル長手方向の両端部間の距離（金属線間の距離）である。
【００３２】
内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ差による合成ピッチｐ１２は、以下の式で示される。
ｐ１＝２Ｐ１／Ｃ
ｐ２＝２Ｐ２／Ｃ
ｋ１＝１／ｐ１＝Ｃ／２Ｐ１
ｋ２＝１／ｐ２＝Ｃ／２Ｐ２
ｋ１２＝｜ｋ１−ｋ２｜＝（Ｃ／２）・（｜１／Ｐ１−１／Ｐ２｜）
ｐ１２＝（２／Ｃ）・｛１／（｜１／Ｐ１−１／Ｐ２｜）｝
【００３３】
編組打数を１６打とし、内側編組４ａと外側編組４ｂのピッチを２％変えたとき（Ｐ２＝Ｐ１×１．０２）の二重編組の展開図は、図３に示すものとなり、合成ピッチｐ１２は、以下のようになる。
ｐ１２＝６．３８×Ｐ１
【００３４】
このように、内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチをずらすという手法は、物理現象である「うなり」を応用したものである。内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ差は、具体的には、編組ピッチが短い側のピッチを１としたときの割合が、（６÷打数）％〜（２４０÷打数）％であることが好ましい。例えば、１２打であれば、０．５〜２０％、３６打であれば、０．１７〜６．７％となる。
【００３５】
これらの値の上限の根拠は、合成ピッチと長い側の編組ピッチが一致するところである。下限の根拠は、編組のギヤから変えられるピッチが０．５％程度であることによる。
【実施例】
【００３６】
本発明に係るＬＣＸの実施例として、以下のＬＣＸを作成した。
【００３７】
内部導体２は、外径１．８ｍｍの軟銅線とした。絶縁体３は、外径７．３ｍｍの発泡ポリエチレンとした。内側編組４ａは、軟銅線編組であり、金属線径が０．１６ｍｍ、６持×１２打で、ピッチ５６．８ｍｍのものとした。外側編組４ｂは、軟銅線編組であり、金属線径が０．１６ｍｍ、６持×１２打で、ピッチ５５．７ｍｍのものとした。シース５は、厚さ１．０ｍｍ、外径１０．８ｍｍのＰＶＣからなるものとした。
【００３８】
このＬＣＸの外部導体４におけるスロット部１のピッチ（合成ピッチ）は、４８０ｍｍとなった。
【表１】
【産業上の利用可能性】
【００３９】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに適用され、特に、外部導体に形成するスロット部の構造に適用されるものである。
【符号の説明】
【００４０】
１ スロット部
２ 中心導体
３ 絶縁体
４ 外部導体
４ａ 内側編組
４ｂ 外側編組
５ 外被（シース）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに関し、特に、外部導体に形成するスロット部の構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
漏洩同軸ケーブル（以下、「ＬＣＸ」という。）は、内部導体、絶縁体、外部導体及び外被を備えて構成され、従来より、新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり、あるいは、地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている。このようなＬＣＸにおいては、同軸内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、外部導体上に周期的なスロット部が設けられている。
【０００３】
すなわち、漏洩同軸ケーブルの外部導体には、ケーブル軸に対して一定周期毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット部が設けられている。各スロット部は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜されている。なお、各スロット部の周長の半分が使用周波数の半波長と一致したり、その半波長の整数倍となったときには、共振状態となる。この周波数を共振周波数と呼ぷ。
【０００４】
非特許文献１には、打ち抜き加工でスロット部が形成された金属テープにより外部導体を構成したＬＣＸが記載されている。
【０００５】
特許文献１には、中心導体を覆う絶縁体上に絶縁体の周長よりも幅が短い外部導体用の第１の導電性テープを長手方向に隙間が形成されるように縦添えし、その後、第１の導電性テープ上に外部導体用の第２の導電性テープを隣り合うターン間に隙間を形成しながら螺旋巻きして構成したＬＣＸが記載されている。このＬＣＸでは、第１の導電性テープの長手方向の隙間と第２の導電性テープのターン間の隙間とが重畳する部分がスロット部となっている。
【０００６】
また、特許文献２には、外部導体を金属線により構成し、この外部導体にギャップが形成されているＬＣＸが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開平９−１９８９４１号公報
【特許文献２】特開２００３−１２３５５５号公報
【非特許文献】
【０００８】
【非特許文献１】「ＬＣＸ通信システム（初版1982.8.20）」（コロナ社）第２章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
ところで、非特許文献１に記載されたＬＣＸにおいては、打ち抜き加工でスロット部が形成された１枚の金属テープをケーブル長手方向に縦添えしているため、可撓性が悪く、また、屈曲を与えると外部導体がスロット部から亀裂を生ずる虞がある。
【００１０】
特許文献１及び特許文献２に記載されたＬＣＸにおいては、スロットピッチを長くすることが困難である。すなわち、スロットピッチは、螺旋巻きの第２の導電性テープの隣り合うターン間の隙間のピッチに依存するため、スロットピッチを長くするには、螺旋巻きのピッチを長くする必要がある。実用的には、ケーブルに対する螺旋巻きの角度が１０度以下となるような長い螺旋巻きのピッチは製造が困難である。
【００１１】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、製造が容易であって、かつ、十分な機械的耐久性を有し、曲げ易く細長く曲がりくねった空間での使用が可能であり、そして、スロットピッチを十分に長くすることができるＬＣＸを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明に係る漏洩同軸ケーブルは、以下の構成を有するものである。
【００１３】
〔構成１〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、外部導体は、それぞれが金属線からなる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、内側編組のピッチと外側編組のピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【００１４】
構成１を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブルにおいては、外部導体は、それぞれが金属線からなりピッチが異なる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、スロット部となる編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されているので、製造が容易であり、十分な機械的耐久性及び可撓性を有し、また、スロットピッチを十分に長くすることができる。
【００１５】
すなわち、本発明は、製造が容易であって、かつ、十分な機械的耐久性を有し、曲げ易く細長く曲がりくねった空間での使用が可能であり、そして、スロットピッチを十分に長くすることができるＬＣＸを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係るＬＣＸの構成を示す平面図である。
【図２】本発明に係るＬＣＸの外部導体をなす編組の構造を示す平面図である。
【図３】本発明に係るＬＣＸの外部導体の構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【００１８】
図１は、本発明に係るＬＣＸの構成を示す平面図である。
【００１９】
本発明に係るＬＣＸは、図１に示すように、中心導体２と、この中心導体２を被覆した絶縁体３と、この絶縁体３の外側を覆う外部導体４とが同軸構造となされ、外部導体４が外被（シース）５により覆われて構成されている。
【００２０】
図２は、本発明に係るＬＣＸの外部導体をなす編組の構造を示す平面図である。
【００２１】
外部導体４は、金属線からなる編組から構成されている。編組は、図２に示すように、複数の平行な金属線と、これら金属線に交差する複数の平行な金属線とが編み合わされて構成されたものである。
【００２２】
編組をなす金属線は、絶縁体３の表面上においては、右回りに螺旋状に巻かれたものと、左回りに螺旋状に巻かれたものとが重なった状態となっている。
【００２３】
図３は、本発明に係るＬＣＸの外部導体の構造を示す平面図である。
【００２４】
外部導体４は、図３に示すように、内側編組４ａ及び外側編組４ｂが重ねられて構成されている。内側編組４ａのピッチと、外側編組４ｂのピッチとは、異なっている。
【００２５】
編組のピッチとは、以下のように定義される。すなわち、ケーブルを円筒座標系で表し、長さ方向をｚ、半径をｒ、角度をφとし、ある特定の１本の金属線に着目して、絶縁体３上に螺旋状に巻き付けられた状態を追いかけていくと、ｚは単調増加、ｒは一定の値（絶縁体３の半径）、φは０から２πまでの増加を繰り返す値（２πに達したときに０に戻る）となる。絶縁体３の周りを１回ったとき、すなわち、φが２πとなって０に戻ったときのｚの長さが、編組のピッチである。
【００２６】
なお、図１において、編組のピッチごとの隙間は表記されていないが、実際には、編組のピッチごとに隙間があり、この部分が、編組を単体で外部導体とした場合のスロット部となる。
【００２７】
この外部導体４においては、内側編組４ａ及び外側編組４ｂで、ピッチが異なっていることにより、内側編組４ａをなす金属線と外側編組４ｂをなす金属線とが重なる部分と、金属線同士がずれる部分とが周期的に繰返される。金属線同士が重なる部分では、編組密度が低くなり、金属同士がずれる部分では、編組密度が高くなる。編組密度は、絶縁体３の表面積に対する金属線が覆う面積の比である。
【００２８】
この外部導体４においては、編組密度の低い部分が、漏洩電磁界形成用の複数のスロット部１となっている。このスロット部１は、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとの差によって決まる合成ピッチで周期的に形成されている。
【００２９】
このように、このＬＣＸにおけるスロットピッチは、内側編組４ａのピッチと外側編組４ｂのピッチとの差によって決まる合成ピッチとなっているため、編組そのもののピッチに比べて、幅広いピッチを実現することが可能となっている。また、外部導体４が編組により構成されていることにより、可撓性に優れ、繰り返し曲げにも強い構造となっている。
【００３０】
ここで、内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ等を、以下の通りとする。
Ｐ１：内側編組４ａのピッチ
Ｐ２：外側編組４ｂのピッチ
Ｃ：打数
ｐ１：内側編組４ａの局所繰り返しピッチ（金属線間の距離）
ｐ２：外側編組４ｂの局所繰り返しピッチ（金属線間の距離）
ｋ１：内側編組４ａの単位長さあたりの編組窓数
ｋ２：外側編組４ｂの単位長さあたりの編組窓数
ｋ１２：単位長さあたりの合成窓数
ｐ１２：合成ピッチ
【００３１】
窓とは、図２に示すように、金属線が存在しない部分である。局所繰り返しピッチとは、一つの窓のケーブル長手方向の両端部間の距離（金属線間の距離）である。
【００３２】
内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ差による合成ピッチｐ１２は、以下の式で示される。
ｐ１＝２Ｐ１／Ｃ
ｐ２＝２Ｐ２／Ｃ
ｋ１＝１／ｐ１＝Ｃ／２Ｐ１
ｋ２＝１／ｐ２＝Ｃ／２Ｐ２
ｋ１２＝｜ｋ１−ｋ２｜＝（Ｃ／２）・（｜１／Ｐ１−１／Ｐ２｜）
ｐ１２＝（２／Ｃ）・｛１／（｜１／Ｐ１−１／Ｐ２｜）｝
【００３３】
編組打数を１６打とし、内側編組４ａと外側編組４ｂのピッチを２％変えたとき（Ｐ２＝Ｐ１×１．０２）の二重編組の展開図は、図３に示すものとなり、合成ピッチｐ１２は、以下のようになる。
ｐ１２＝６．３８×Ｐ１
【００３４】
このように、内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチをずらすという手法は、物理現象である「うなり」を応用したものである。内側編組４ａ及び外側編組４ｂのピッチ差は、具体的には、編組ピッチが短い側のピッチを１としたときの割合が、（６÷打数）％〜（２４０÷打数）％であることが好ましい。例えば、１２打であれば、０．５〜２０％、３６打であれば、０．１７〜６．７％となる。
【００３５】
これらの値の上限の根拠は、合成ピッチと長い側の編組ピッチが一致するところである。下限の根拠は、編組のギヤから変えられるピッチが０．５％程度であることによる。
【実施例】
【００３６】
本発明に係るＬＣＸの実施例として、以下のＬＣＸを作成した。
【００３７】
内部導体２は、外径１．８ｍｍの軟銅線とした。絶縁体３は、外径７．３ｍｍの発泡ポリエチレンとした。内側編組４ａは、軟銅線編組であり、金属線径が０．１６ｍｍ、６持×１２打で、ピッチ５６．８ｍｍのものとした。外側編組４ｂは、軟銅線編組であり、金属線径が０．１６ｍｍ、６持×１２打で、ピッチ５５．７ｍｍのものとした。シース５は、厚さ１．０ｍｍ、外径１０．８ｍｍのＰＶＣからなるものとした。
【００３８】
このＬＣＸの外部導体４におけるスロット部１のピッチ（合成ピッチ）は、４８０ｍｍとなった。
【表１】
【産業上の利用可能性】
【００３９】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに適用され、特に、外部導体に形成するスロット部の構造に適用されるものである。
【符号の説明】
【００４０】
１ スロット部
２ 中心導体
３ 絶縁体
４ 外部導体
４ａ 内側編組
４ｂ 外側編組
５ 外被（シース）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、
前記外部導体は、それぞれが金属線からなる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、内側編組のピッチと外側編組のピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部となっている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項１】
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、
前記外部導体は、それぞれが金属線からなる内側編組及び外側編組が重ねられて構成されており、内側編組のピッチと外側編組のピッチとが異なることにより、編組密度の低い部分の合成ピッチが形成されており、編組密度の低い部分がスロット部となっている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１２−１６９７７０（Ｐ２０１２−１６９７７０Ａ）
【公開日】平成２４年９月６日（２０１２．９．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２７５９２（Ｐ２０１１−２７５９２）
【出願日】平成２３年２月１０日（２０１１．２．１０）
【出願人】（０００００５１８６）株式会社フジクラ (4,463)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年９月６日（２０１２．９．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年２月１０日（２０１１．２．１０）
【出願人】（０００００５１８６）株式会社フジクラ (4,463)
【Ｆターム（参考）】
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