説明

漏電遮断器

【課題】漏電遮断器に搭載する零相変流器とその貫通一次導体の撚り線,およびその周辺部品の組立,配線性を改善して製品のコスト低減化,信頼性向上を図る。
【解決手段】多極形の漏電遮断器で、零相変流器5の貫通一次導体として各極の過電流引外し装置5と負荷側端子14との間に可撓性の撚り線15を配線したものにおいて、零相変流器5およびその貫通一次導体の撚り線15をモールド樹脂製のユニット組立フレーム18に組み付けて遮断器の本体ケースに組み込むようにし、ここでユニット組立フレーム18には、極間バリア部18a、配線保持ガイド18b,18c、配線保持片18d,18eを設けて零相変流器を貫通する一次導体の撚り線15を所定の配線経路に沿わせて保持し、さらにスナップフィット18f,庇状のリブ片18gを設けて零相変流器5を定位置に位置決め保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧配電系統に適用する漏電遮断器に関し、詳しくは漏電遮断器に搭載した零相変流器とその周辺部品とのアッセンブリーの組立構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記の漏電遮断器は、配線用遮断器と同様な過電流保護機能部品に加えて、主回路を一次導体として主回路の不平衡電流を検出する零相変流器、零相変流器の二次出力レベルから地絡事故の発生を検知する漏電検出回路、および漏電検出回路の出力信号を受けて遮断器をトリップ動作させるトリップコイルユニットの漏電保護機能部品を遮断器の本体ケースに搭載している。
次に、漏電遮断器(三相回路用の3極形漏電遮断器)の回路図を図9に、漏電遮断器の従来における組立構造を図10,図11に示す。図9において、1はR,S,T相の主回路、2は主回路接点、3は主回路接点の開閉機構、4は主回路1の過負荷,短絡電流を検出して開閉機構3をトリップさせる熱動/電磁式の過電流引外し装置である。また、5は主回路1を一次導体として主回路の不平衡電流を検出する零相変流器(貫通形零相変流器)、6は零相変流器5の二次出力レベルから地絡発生を検知する漏電検出回路(IC回路)、7は漏電検出回路6からの出力信号を受けて開閉機構3をトリップさせるトリップコイルユニット、8は主回路1から漏電検出回路6に給電する電源回路(整流回路)、9は電源回路8と主回路1との間に介装した耐圧試験用スイッチ(漏電遮断器の耐圧試験を実施する際には、このスイッチを断路して漏電検出回路6に耐圧試験電圧が印加されるのを防ぐ)である。
【0003】
次に、前記した漏電遮断器の従来構造,およびその組立手順を図10,図11で説明する。まず図10において、10はモールド樹脂成形品になる遮断器の本体ケース(ケースカバーは不図示)であり、この本体ケース10の内部には図9で述べた各機能部品が図示のようにレイアウトして組み込まれている。なお、11は操作ハンドル、12は消弧室、13は電源側端子、14は負荷側端子である。
前記の本体ケース10はその内部が相間隔壁で左右に並ぶ三つの室に仕切られており、ケースの前後端部には主回路のR,S,T相に対応する各極の電源側端子13,負荷側端子14が左右に並び、この端子の間に電源側から消弧室12,主回路接点2,開閉機構3,過電流引外し装置4が順に並んで収容配置されている。また、過電流引外し装置4と負荷側端子14との間には、相間隔壁を横切って零相変流器5,および漏電検出回路6と電源回路8(図9参照)のプリント板をケースに収容した組立体が介装配置され、トリップコイルユニット7は操作ハンドル11の側方に並べて本体ケース10の上部側に配置されている。さらに、零相変流器5を貫通する各相の一次導体は次記のように過電流引外し装置4と負荷側端子14との間に配線されている。
ここで、定格電流が30A以下である一般配線用の漏電遮断器では、零相変流器5の一次導体として絶縁保護被覆を施した撚り線(銅線)15が使用され、R,S,T相に対応する3本の撚り線15が零相変流器5を貫通してその前後に並ぶ負荷側端子14,過電流引外し装置4の接続端子4aに半田接合されている。一方、漏電検出回路6,電源回路8はそのプリント板をケースに収容して零相変流器5の上に重なるように配置している。また、零相変流器5の本体から引出した二次出力線5bは漏電検出回路6のプリント板に接続し、さらに過電流引外し装置4の端子と電源回路8との間には電源線16を配線して主回路1の相間電圧を漏電検出回路6に給電するようにしている。なお、5cは零相変流器5に巻装した漏電テスト用コイルの信号線で、この信号線5cはトリップコイルユニット7の組立体に付属する漏電テストスイッチを経て主回路1の相間に接続される。
【0004】
上記構成の漏電遮断器について、零相変流器5,およびその貫通一次導体に接続した過電流引外し装置4,負荷側端子14の各部品は次記のような作業手順で組立てられる。まず、図11で示すように零相変流器5の一次導体としてR,S,T相に対応する3本の撚り線15を零相変流器5の貫通穴に通した上で、この撚り線15の両端に過電流引外し装置4,および負荷側端子14を半田接合して集約したアッセンブリー(assembly)を仮組立てしておく。また、零相変流器5の二次出力線5bは捻架(twist)して電磁誘導ノイズを低減する。さらに撚り線15は絶縁テープ(例えば、テフロン(登録商標)テープ)を巻き付けるか、あるいは可撓性の絶縁チューブを被覆して絶縁保護しておく。また、漏電検出回路6,電源回路8はプリント板をケースに収容して組立てておく。なお、図11に示した零相変流器5を中心とするアッセンブリーの仮組立体では、零相変流器5の貫通穴に通した可撓性の撚り線15の両端に過電流引外し装置4,負荷側端子14が接続されているだけで、各部品は相対的に自由に動ける状態にある。
そして、漏電遮断器の製品組立工程では、遮断器の本体ケース10にR,S,T相に対応する3極分の主回路接点2,開閉機構3,消弧室12,電源側端子13、および操作ハンドル11の各部品を先に組み込んでおく。次に、図11の状態に仮組立した零相変流器を中心とするアッセンブリーを上方から本体ケース10に挿入した後に、過電流引外し装置4,負荷側端子14の各部品を個々に本体ケース10の内部の所定位置に固定する。さらに、零相変流器5を貫通した一次導体の撚り線15,零相変流器5の二次出力線5b,信号線5cがそれぞれ所定の配線経路に沿って延在するように各導線を手作業で整える。次いで、漏電検出回路6,電源回路8の収容ケース(図11参照)を上方から零相変流器5の上に跨がるように挿入して本体ケース10に支持し、さらにトリップコイルユニット7を操作ハンドル11の側方に組み込む。この組立段階で次に零相変流器5の二次出力線5b,信号線5c,電源線16を漏電検出回路6,電源回路8のプリント板に半田接合し、さらに漏電検出回路6とトリップコイルユニット7との間には信号線17を配線して図10の状態に組立て、最後に本体ケース10にケースカバー(不図示)を取付けて漏電遮断器の製品が完成する。
【0005】
なお、上記した漏電遮断器の基本的な組立構造は、例えば特許第3890350号公報(特許文献1)にも開示されている。また、特許文献1には、零相変流器(貫通形零相変流器)の貫通穴内部に極間絶縁バリアの部品を付設し、この極間絶縁バリアを介して零相変流器を貫通する三相分の一次導体(バー導体)の相互間を絶縁隔離して支持するようにした構成が開示されている。
【特許文献1】特許第3890350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、先記した従来構造の漏電遮断器では、その本体ケースに零相変流器およびその貫通一次導体に接続する部品を組み込む際の作業性に次記のような課題がある。
すなわち、図11で述べたように従来の組立構造では、零相変流器5に通した一次導体の撚り線15に過電流引外し装置4および負荷側端子14を接続したアッセンブリーの仮組立体を本体ケース10に挿入し、各部品を個々に本体ケース内部の所定位置に固定した上で、さらに撚り線15,二次出力線5b,信号線5cなどの各導線については、所定の配線経路に沿うよう手作業により整えた上で、後から本体ケース10に挿入セットした漏電検出回路6,電源回路8との間で二次出力線,信号線などを半田付けするようにしている。
この場合に、定格電流が30A以下である一般配線用の漏電遮断器は、その本体ケース10の外形サイズ(例えば、横幅75mm,長さ130mm)が小さく、かつケース内部には各種機能部品が殆ど隙間なく並んで搭載されていることから、前記したアッセンブリーの組立作業スペースは極めて狭い。そのために、実際の製品組立工程では作業員がピンセットなどを使って前記の各導線を1本ずつ所定の配線経路に沿うように整えているが、その作業には手間と時間がかかり、この部品の組立,配線を行う作業員の労務費が製品コストを押し上げる要因となっている。
【0007】
また、零相変流器5を貫通する一次導体の撚り線15などの各導線にはあらかじめ絶縁チューブを被せるか,絶縁テープを巻き付けて絶縁保護しているが、絶縁チューブは軟質で傷付き易いために配線作業中に他の金属部品の角で擦られたりすると、チューブが破れるおそれがある。また、導線に絶縁テープ(例えば、テフロン(登録商標)テープ)を巻き付けると導線自身が曲り難くなって配線作業に手間がかかる問題もある。
なお、特許文献1に開示されている絶縁バリアを零相変流器の内側に付設して貫通一次導体の相互間を隔離させることは絶縁確保の面で有効であるが、先記のように貫通一次導体に可撓性のある撚り線15を用いた小容量の漏電遮断器では、本体ケースの内部に組み込んだ状態で零相変流器5から前後に延在する撚り線15および二次出力線,信号線などを1本ずつ手作業で整える面倒な作業が必要となる。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、零相変流器に貫通一次導体,周辺部品を組み合せて集合化したアッセンブリーを遮断器の本体ケースに組み込む際の組立作業性を改善して製品コストの低減化,信頼性向上が図れるように組立構造を改良した漏電遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、本体ケース内に主回路接点の開閉機構、過電流引外し装置、および零相変流器に漏電検出回路,トリップコイルユニットを組み合わせた漏電引外し部を搭載した多極形の漏電遮断器であり、前記零相変流器の一次導体として、零相変流器を貫通して主回路の各相に対応する極の過電流引外し装置と負荷側端子との間に撚り線を引き回し配線したものにおいて、
前記零相変流器およびその一次導体をモールド樹脂製のユニット組立フレームに組み付けて前記本体ケースに搭載するようにするとともに、前記ユニット組立フレームには、零相変流器を貫通する一次導体の相互間を隔離して各極の撚り線を所定の配線経路に沿わせて保持する保持部、および零相変流器を所定位置に位置決め保持する掛止部を設け(請求項1)、具体的には次記のような態様で構成する。
(1)前記ユニット組立フレームには、負荷側に突き出して零相変流器の貫通穴に通した各極の撚り線の相互間を絶縁隔離する極間バリア部と、該極間バリア部に連ねてユニット組立フレームの左右側縁との間の配線経路に布設して撚り線を保持する配線保持ガイドとで構成する(請求項2)。
(2)前記ユニット組立フレームに、その配線保持ガイドの上に這わせて引き回し配線した撚り線の脱落を防止する配線保持片を設ける(請求項3)。
(3)前記ユニット組立フレームに設けた零相変流器の掛止部を、零相変流器の本体外周に突設した脚部に係合して零相変流器の本体を支持する片持ち梁のスナップフィット(snap-fits)と、変流器本体を上方から押え込む庇状のリブ片とで構成する(請求項4)。
(4)また、前記の撚り線には可撓性の絶縁チューブ,もしくは絶縁テープを被覆して絶縁保護する(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、零相変流器,および零相変流器を貫通する一次導体の撚り線をモールド樹脂製のユニット組立フレームに組み付けて零相変流器のユニットを構成することにより、ユニット組立フレームを基準にして零相変流器を所定位置に位置決め保持するとともに、零相変流器を貫通した各極の撚り線を互いに絶縁隔離した上で、所定の配線経路に沿って引き回し保持することができる。
これにより、前記の零相変流器ユニットに過電流引外し装置,および負荷側端子を組み合わせてその貫通一次導体の撚り線に接続したアッセンブリーを遮断器の本体ケースに組み込むことにより、従来の組立構造と比べてアッセンブリーの各部品を本体ケース内部の所定位置に取付ける作業の工数,手間を大幅に削減できる。また、零相変流器を貫通した一次導体の撚り線は所定の配線経路に沿って組立フレームの保持部に保持されているので後からずれたりすることがない。これにより、製品の組立工程では本体ケース内部の狭いスペースで配線を1本ずつ手作業により整える手間のかかる作業も不要となるので、この作業に費やす時間を短縮して製品コストを低減できる。
一方、前記のユニット組立フレームには、負荷側に突き出して零相変流器の貫通穴に嵌入する極間バリア部と、該極間バリア部に連ねてフレームの左右側縁に延在する配線保持ガイドとを設けたことにより、零相変流器を貫通する撚り線の相互間を安全に絶縁隔離できるとともに、零相変流器を貫通してから背後の過電流引外し装置まで引き回す各極の撚り線をその配線経路に沿って位置決め保持することができる。また、この極間バリア部は零相変流器の位置決めガイドとしても機能する。
【0010】
さらに、零相変流器をユニット組立フレームに保持する手段として、ユニット組立フレームに片持ち梁のスナップフィット,および庇状のリブ片を設けたことにより、零相変流器の貫通穴を先記の極間バリア部に合わせて前方から押し込むだけの簡単なワンタッチ操作で零相変流器を所定位置に掛止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1(a)は3極形漏電遮断器に搭載する零相変流器を中心としてこれに過電流引外し装置,負荷側端子を組み合わせたアッセンブリー組立体を前方斜め上方から見た斜視図、(b)は(a)の分解斜視図、図2は図1(a)のアッセンブリー組立体を斜め下方から見た斜視図、図3は図1(a)から零相変流器を除いた状態を表す斜視図、図4は図1のアッセンブリー組立体に漏電検出回路,電源回路,トリップコイルユニット,および耐電圧テストスイッチなどの各部品を組み合わせて集合化した漏電引外し部の斜視図、図5は図4の漏電引外し部を一括して遮断器の本体ケースに搭載する直前の状態を表す図、図6は図5に対応する漏電遮断器の組立後の状態図である。また、図7,図8は三相4線式の4極形漏電遮断器に適用する実施例で、図7は零相変流器に過電流引外し装置,負荷側端子を組み合わせたアッセンブリー組立体の斜視図、図8は図7から零相変流器を除いた状態の斜視図であり、図示実施例の図中で図10,図11に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
まず、3極形漏電遮断器に搭載する零相変流器のユニットに過電流引外し装置,負荷側端子などの周辺部品を組み合わせたアッセンブリー、およびこのアッセンブリーの組立体を遮断器の本体ケースへ組込む作業手順を図1〜図6に基づいて説明する。すなわち、この実施例では、モールド樹脂成形品で作られたユニット組立フレーム18を新たな部品として用意する。そして、このユニット組立フレーム18に、零相変流器5、各極の過電流引外し装置4および負荷側端子14を組み合わせて撚り線15の両端にロー付け接合したものを零相変流器に貫通させ、図1〜図3に示すような零相変流器を中心とするアッセンブリーとして組立てる。なお、前記撚り線15にはあらかじめ絶縁チューブを被せるか,あるいは絶縁テープ(例えば、テフロン(登録商標)テープ)を巻き付けて絶縁保護しておく。
また、遮断器の本体ケースに組み込む以前の段階で、前記した零相変流器のアッセンブリーには、図4で示すようにユニット組立フレーム18の左右両側に耐電圧テストスイッチ9、漏電検出回路6,電源回路8のプリント板を収容した組立ケース19、およびトリップコイルユニット7を組み合わせ、その相互間を配線して集合化しておく。そして、漏電遮断器の製品組立工程では、図4のアッセンブリーを図5のように一括して遮断器の本体ケース10に挿入セットし、個々の部品をケース内部の所定位置に固定することで図6に示す漏電遮断器の組立構造が完成する。
【0013】
次に、前記したユニット組立フレーム18、および該ユニット組立フレーム18に組み付ける零相変流器5,およびその貫通一次導体の撚り線15の支持構造について説明する。すなわち、ユニット組立フレーム18は、図1(b)の分解図で示すように枠の外郭が略角形になるモールド樹脂成形品で作られたもので、そのユニット組立フレームには次記のように零相変流器5を所定位置に組み付け保持する掛止部と、零相変流器5を貫通して各極の過電流引外し装置4と負荷側端子14との間に引き回し配線する撚り線15を所定の配線経路に保持する保持部とがフレームと一体に形成されている。
ここで、前記保持部として、ユニット組立フレーム18の内側中央部位には零相変流器5の貫通穴に向けて前方へ突き出すように逆U字形の極間バリア部18aを形成し、さらにこの極間バリア部18aに連ねてフレームの左右外枠との間には上面が配線通路となる棚状の配線保持ガイド18b,18cが一体に形成されている。また、ユニット組立フレーム18には、前記配線保持ガイド18b,18cの配線通路に向けて突き出すリブ状の配線保持片18d,18eを設け、この配線保持片で配線保持ガイドの上に這わせて引き回した撚り線15が脱落するのを防止している。
一方、零相変流器5を所定位置に組み付け保持する掛止部として、ユニット組立フレーム18には下枠から前方に突き出した左右一対の片持ち梁のスナップフィット18fと、上枠から前方へ張り出した庇状のリブ片18gが一体に形成されている。ここで、スナップフィット18fはその片持ち梁の先端に係合突起が設けてあり、前方から零相変流器5を押し込むと零相変流器の本体周面にあらかじめ形成しておいたタブ状の脚片5d(図2参照)が前記スナップフィット18fのアーム上に嵌まり込んで結合される。また、同時に零相変流器5の頂部が前記の庇状のリブ片18gによって上方から押え込まれ、これにより零相変流器5が定位置に掛止保持されることになる。
【0014】
次に、図1(a)に示したアッセンブリー組立体の組立手順について説明する。まず、あらかじめR,S,T相に対応してそれぞれ所定の長さ寸法に裁断し、絶縁チューブを取付けた撚り線15を用意し、その両端に過電流引外し装置4の端子4a,および負荷側端子14をロー付け接合しておく。次に、撚り線15を直線状に伸ばしたまま、その先端に接続したR相,T相の負荷側端子14を零相変流器5の背後側から貫通穴に通した上で、撚り線15を図1(b)で示すように折り曲げておく。続いて零相変流器5の背後にユニット組立フレーム18を重ね、該ユニット組立フレーム18から前方に突き出した極間絶縁バリア部18aを零相変流器5の貫通穴に嵌入する。この状態で、次に零相変流器5の貫通穴に通してその背後側に延在するR相,T相の撚り線15をそれぞれユニット組立フレーム18に形成した極間絶縁バリア部18aおよび配線保持ガイド18bの板面に沿わせ、さらに途中箇所を配線保持片18d,18eの内側に押し込んで撚り線15が配線保持ガイド18b,18cから脱落しないように保持させる。なお、このように零相変流器5を貫通した撚り線15をユニット組立フレーム18に保持することで、撚り線15の絶縁処理には巻き付け作業の面倒な絶縁テープの代わりに、被着作業が簡単な絶縁チューブでも支障なく安全に対応できる。
【0015】
次に、零相変流器5の本体5aを前方から押込み、その外周面上の下部側に突出形成したタブ状の脚片5d(図2参照)をユニット組立フレーム18に設けたスナップフィット18fに結合するとともに、零相変流器5の本体5aの頂部をユニット組立フレーム18の上部側に設けた庇状のリブ片18gで押え込む。これで、零相変流器5がユニット組立フレーム18に対して所定位置に組み付け保持されることになる。なお、ユニット組立フレーム18の前面に零相変流器5を組み付けると、前記の配線保持ガイド18b,18cが零相変流器5の本体5aで塞がれるので、この配線保持ガイドの上に這わせて保持した撚り線15が簡単に外れないように保持できる。
続いてS相の撚り線15に接続した負荷側端子15をユニット組立フレーム18の背後から零相変流器5の貫通穴に通し、この位置で撚り線15の途中箇所をユニット組立フレーム18に形成した極間絶縁バリア18aのU字溝内に嵌め込み、先に取り付けたR相,T相の撚り線15との間を隔離した状態に保持する。これで図1(a),図2に示したアッセンブリーの組立体が構成されることになる。なお、図3は前記のアッセンブリー組立体から零相変流器を外した状態を表した図で、この図から各相の撚り線15がどのような経路を辿って配線されているかが理解される。
【0016】
上記したアッセンブリーの組立構造では、零相変流器5を貫通してその背後に引き出したR,S,T各相の撚り線15はそれぞれ所定の配線経路に沿ってユニット組立フレーム18の保持部に保持されている。したがって、ユニット組立フレーム18の背後に並べて各相の撚り線15の先端に接続した過電流引外し装置4も自ずと定位置に位置決めされることになる。
また、図1,図2に示した零相変流器のアッセンブリー組立体に対し、図4のように漏電検出回路6,電源回路8の組立体,耐圧テスト用スイッチ9,およびトリップコイルユニット7の漏電保護機能部品を組み合わせ、その部品の相互間で零相変流器5の二次出力線,信号線などの配線処理を施すことにより、漏電遮断器の本体ケースに組み込む以前の段階で図4に示す漏電引外し部のアッセンブリーを組立,保管しておくことができる。
そして、漏電遮断器の製品組立工程では、前記した漏電引外し部のアッセンブリー組立体を図5のように一括して遮断器の本体ケース10に組み込むことにより、従来構造(図10,図11参照)のように本体ケース内部の狭い作業スペースで行う個々の部品の位置決め,導線の配線経路を整える作業工数を削減して組立性が向上する。これにより、製品の組立に費やす作業時間を大幅に短縮してコストを低減できる。
【実施例2】
【0017】
次に、三相4線式回路に適用する4極形漏電遮断器に搭載する零相変流器のアッセンブリーを図7,図8に示す。すなわち、この実施例では先記の実施例1で述べたユニット組立フレーム18を共通部品として、これに零相変流器5、およびR,S,T相、および三相4線式回路に対応して追加したN相(中性線)の貫通一次導体の撚り線15を組み付け、さらに各極の過電流引外し装置4,負荷側端子14に組み合わせて零相変流器5を中心とするアッセンブリー組立体を構成する。ここで、N相の撚り線15は図示のように零相変流器5を貫通して引き回し、その配線経路の途中箇所をユニット組立フレーム18の凹所18h(図8参照)に押し込んでフレーム枠に保持させる。なお、図示してないが遮断器の本体ケースには三相4線式回路の4極仕様に合わせてR,S,T,およびN相に対応する各極の部品を収納する四つの室が左右に並んで画成されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係わる3極形漏電遮断器に搭載する零相変流器のユニット組立構造図で、(a)は零相変流器を中心としてこれに過電流引外し装置,負荷側端子を組み合わせたアッセンブリー組立体を前方斜め上方から見た斜視図、(b)は(a)の分解斜視図
【図2】図1(a)のアッセンブリー組立体を斜め下方から見た斜視図
【図3】図1(a)のアッセンブリーから零相変流器を除いた状態を表す斜視図
【図4】図1の零相変流器アッセンブリーに漏電検出回路,電源回路,トリップコイルユニット,および耐電圧テストスイッチの各部品を組み合わせて集合化した漏電引外し部の構成図
【図5】図4に示したアッセンブリーを遮断器の本体ケースに搭載する直前の状態を表す図
【図6】図5に対応する漏電遮断器の組立後の状態図
【図7】三相4線式の4極形漏電遮断器に適用する第2の実施例に係わる零相変流器のアッセンブリー組立体の構成斜視図
【図8】図8は図7から零相変流器を除いた状態を表す斜視図
【図9】三相回路に適用する3極形漏電遮断器の回路図
【図10】図9の漏電遮断器の従来における組立構造を表す斜視図
【図11】図10の漏電遮断器に搭載する零相変流器のユニット組立構成図
【符号の説明】
【0019】
1 主回路
2 主回路接点
3 開閉機構
4 過電流引外し装置
5 零相変流器
5a 変流器本体
5b 二次出力線
5d 脚片
6 漏電検出回路
7 トリップコイルユニット
8 電源回路
9 耐圧テスト用スイッチ
10 本体ケース
11 操作ハンドル
12 消弧室
13 電源側端子
14 負荷側端子
15 撚り線(零相変流器の貫通一次導体)
18 ユニット組立フレーム
18a 極間絶縁バリア部
18b,18c 配線保持ガイド
18d,18e 配線保持片
18f スナップフィット
18g 庇状リブ片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に主回路接点の開閉機構、過電流引外し装置、および零相変流器に漏電検出回路,トリップコイルユニットを組合せた漏電引外し部を搭載した多極形の漏電遮断器であり、前記零相変流器の一次導体として、零相変流器を貫通して主回路の各相に対応する極の過電流引外し装置と負荷側端子との間に撚り線を引き回し配線したものにおいて、
前記零相変流器およびその一次導体をモールド樹脂製のユニット組立フレームに組み付けて前記本体ケースに搭載するようにするとともに、前記ユニット組立フレームに、零相変流器を貫通する一次導体の相互間を隔離して各極の撚り線を所定の配線経路に沿わせて保持する保持部、および零相変流器を所定位置に位置決め保持する掛止部を設けたことを特徴とする漏電遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の漏電遮断器において、ユニット組立フレームが、負荷側に突き出して零相変流器の貫通穴に通した各極の撚り線の相互間を隔離する極間バリア部と、該極間バリア部に連ねてユニット組立フレームの左右側縁との間の配線経路に布設した配線保持ガイドとからなることを特徴とする漏電遮断器。
【請求項3】
請求項2に記載の漏電遮断器において、ユニット組立フレームに、その配線保持ガイドの上に這わせて引き回し配線した撚り線の脱落を防止する配線保持片を設けたことを特徴とする漏電遮断器。
【請求項4】
請求項1に記載の漏電遮断器において、ユニット組立フレームに設けた掛止部が、零相変流器の本体外周に突設した脚部に係合して零相変流器の本体を支持する片持ち梁のスナップフィットと、変流器本体を上方から押え込む庇状のリブ片からなることを特徴とする漏電遮断器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の漏電遮断器において、一次導体の撚り線に可撓性の絶縁チューブ,もしくは絶縁テープを被覆して絶縁保護したことを特徴とする漏電遮断器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−9793(P2009−9793A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169159(P2007−169159)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)
【Fターム(参考)】