説明

演出方法、演出システム及び携帯型発光装置

【課題】 比較的簡易な方法で携帯型発光装置の発光状態を高度に制御できる演出方法及び演出システムと、それに用いる携帯型発光装置を提供する。
【解決手段】 複数の携帯型発光装置30と、携帯型発光装置30の発光状態を制御する複数の発光状態制御装置10とを含む。携帯型発光装置30の各々は、所定範囲内で無線通信が可能なICタグ40を備えていると共に、ICタグ40が受信した制御信号によってその発光状態を変更可能である。発光状態制御装置10の各々は、一定のレイアウトで会場内に配置されると共に、所定の通信可能ゾーンを有する。発光状態制御装置10の各々から送信される制御信号に基づいて、発光状態制御装置10の通信可能ゾーン内にある携帯型発光装置30の発光状態を変化させることにより、複数の通信可能ゾーン毎に固有の像を形成させ、それらの像の組み合わせによって会場の演出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演出方法、演出システム及び携帯型発光装置に関し、さらに言えば、ICタグを内蔵すると共に発光可能なペンライト、うちわ(団扇)、バッチ、帽子、ミッキーマウスの耳等の携帯型発光装置と、それを用いて、コンサートホール、球場等の会場内で所望の光学的演出効果を実現する演出方法、及びその演出方法を実現する演出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンサート、演劇等の各種イベントが開催される会場(以下、イベント会場という)では、イベントの実行の際には照明の全部または一部が消されることが多い。これは、光学的演出効果を高めるためである。他方、ステージ上で演奏される音楽に合わせて、観客席で個々の観客がペンライトを持ってゆっくり振り、演奏者と観客の一体感を高める、といったことも、従来から行われている。このように、暗くしたイベント会場や夜間の屋外ステージ等でペンライト等の携帯型発光装置を用いると、演出効果が大きい。
【0003】
携帯型発光装置の例としては、特許文献1(特開2002−315617号公報)に開示された「うちわ状発光体」がある。これは、「内部に電源を収納した柄と、害柄の一方の端部に接合された透明なほぼ板状の扇体部材と、前記扇体部材の内部に光速を入射させるように前記柄の一方の端部付近に配置した少なくとも1個のLED光源と、前記光速の一部を前記扇体面から放射する手段と、前記LED光源の近傍からの前記扇体部材の外への漏光を防止する遮光部材を備えたことを特徴とする」ものである(請求項1を参照)。このうちわ状発光体によれば、優れたかつ美麗な光演出効果が得られる、LEDの強い直接光により扇面からの繊細な光の視認が妨げられることがない、製造コストが低い、といった効果があるとされている。
【0004】
また、携帯型発光装置を用いた演出については、特許文献2(特開2002−36981号公報)に開示された「携帯発光装置による演出用発光装置及び演出方法」がある。この演出用発光装置は、複数の携帯発光装置と発光状態制御装置からなり、発光状態制御装置は各携帯発光装置に割り振られたアドレスと発光指令信号を無線で送出し、各携帯発光装置は発光状態制御装置から無線で送られてくる自己アドレスの発光指令信号に基づいて発光するようにしたものである(請求項1を参照)。また、この演出方法は、各観客席の位置に対応して前記携帯発光装置のアドレスを割り振り、各観客席に対して割り振られたアドレスの前記携帯発光装置を当該観客席の観客に携帯させ、前記発行状態画像作成手段で作成された発光状態画像と類似する携帯発光装置の発光による像を観客席に形成するようにしたものである(請求項6を参照)。
【0005】
特許文献3(特開昭62−40101号公報)は、受信機を備えた発光装置を用いる「舞台演出方法」を開示している。この舞台演出方法は、劇場やスタジアム等の観客席に、受信機を備えた発光装置を分散配置し、これら多数の発光装置を無線送信装置から送られる電波により点滅させるか或いは明度を変える、というものである(特許請求の範囲を参照)。
【0006】
他方、近年、バーコードに代えて、無線ICタグ(以下、単にICタグともいう)が、利用されるようになってきている。ICタグは、「電子荷札」とも呼ばれ、物体の識別に利用される微小な無線IC(集積回路)チップから構成されていて、自身の識別コードなどの情報が記録されており、電波または電磁波を使って管理システムと情報を送受信する能力を持っている。ICタグの大きさは、通常、数cm程度であり、メモリと無線用アンテナと通信機能が組み込まれる。その形状は、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型など様々である。その通信距離は、数mm程度から数mであるものが多い。
ICタグには、内蔵した電源(電池)で電波を受発信する「アクティブ型」と、内蔵電源を持たず、送られて来る電波で電磁誘導を起こす等によって駆動されて電波の受発信を行なう「パッシブ型」とがある。前者は、数十mの距離を隔てても通信ができるが、電池の寿命が尽きると交信できなくなり、パッシブ型よりも高価である。後者は、通信距離が数mm〜数十cm程度であるが、アクティブ型よりは遥かに安価に製造でき、また、電池切れの心配がないことから半永久的に利用可能である。
ICタグの具体的構成については、例えば特開2001−325572号公報、特開2005−208787号公報等に記載があり、公知であるから、ここでは言及しない。
【0007】
【特許文献1】特開2002−315617号公報
【特許文献2】特開2002−36981号公報
【特許文献3】特開昭62−40101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示されたうちわ状発光体を用いる演出では、うちわ状発光体自身の模様や図柄が決まっているので、多数うちわ状発光体からの発光により形成される画像が限定されてしまう、という難点がある。
上述した特許文献2に開示された演出方法では、各携帯発光装置が、発光状態制御装置から無線で送られるアドレスと発光指令信号を受信し、自己アドレスの発光指令信号に基づいて発光するので、発光指令信号を変えることにより種々の光画像を観客席に形成することが可能である。しかし、この演出方法では、各携帯発光装置毎に、換言すれば各アドレス毎に発光指令信号を一つひとつ設定する必要があり、所望の光画像を実現するのに手間がかかるという難点がある。
上述した特許文献3に開示された舞台演出方法では、受信機を備えた発光装置を観客席に分散配置し、これら多数の発光装置を無線送信装置から送られる電波により点滅させたり明度を変えたりするので、特許文献2に開示された演出方法と同様の難点がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、比較的簡易な方法で携帯型発光装置の発光状態を高度に制御できる演出方法及び演出システムと、それに用いる携帯型発光装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ある範囲(領域)毎に発光状態を変えて光のウェーブ等の複雑な動画像を容易に形成できる演出方法及び演出システムと、それらに用いる携帯型発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点では、演出方法が提供される。この演出方法は、
複数の携帯型発光装置の各々に所定範囲内で無線通信が可能なICタグを取り付けると共に、当該ICタグが受信した制御信号によってその発光状態を変更可能とし、
複数の前記携帯型発光装置の各々を会場に入った(る)観客に携帯させ、
各々が所定の通信可能ゾーンを持つ複数の発光状態制御装置を前記会場に配置し、
複数の前記発光状態制御装置の各々から送信される前記制御信号に基づいて、当該発光状態制御装置の前記通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させることにより、複数の前記通信可能ゾーン毎に固有の像を形成させ、それらの像の組み合わせによって前記会場の演出を行うことを特徴とするものである。
本発明の第1の観点による演出方法では、複数の携帯型発光装置の各々にICタグが取り付けてあるため、発光状態制御装置から各ICタグに記憶させた識別コードを用いて制御信号を個別に送信することにより、それら携帯型発光装置の発光状態を個別に変更可能である。また、複数の発光状態制御装置は、各々が所定の通信可能ゾーンを持っているので、一つの発光状態制御装置の通信可能ゾーン内にある携帯型発光装置の発光状態は、当該発光状態制御装置から送信される制御信号に応じたものになる。よって、比較的簡易な方法で携帯型発光装置の発光状態を高度に制御することができる。
【0010】
また、前記発光状態制御装置毎にその通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させるので、ある範囲(領域)毎に発光状態を変えて光のウェーブ等の複雑な動画像を容易に形成することができる。
【0011】
なお、制御信号を受信しない携帯型発光装置が生じることを防止するため、隣接する発光状態制御装置の通信可能ゾーンは重複せしめるのが好ましいが、この場合は、通信可能ゾーンの重複部分にある(すなわち二つ以上の制御信号を受信する)携帯型発光装置の発光状態を予め決めておく必要がある。例えば、受信強度の強い方の制御信号に応じた発光状態とする、あるいは、一つの制御信号を受信する場合とは異なる発光状態とする、等である。
【0012】
本発明の第1の観点による演出方法の好ましい例では、隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、受信強度の強い方の制御信号に応じた発光状態とされる。
本発明の第1の観点による演出方法の他の好ましい例では、隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、一つの制御信号を受信する場合とは異なる発光状態とされる。
【0013】
本発明の第2の観点では、演出システムが提供される。この演出システムは、
複数の携帯型発光装置と、それら携帯型発光装置の発光状態を制御する複数の発光状態制御装置とを含み、
複数の前記携帯型発光装置の各々は、所定範囲内で無線通信が可能なICタグを備えていると共に、当該ICタグが受信した制御信号によってその発光状態を変更可能であり、
複数の前記発光状態制御装置の各々は、一定のレイアウトで会場内に配置されると共に、所定の通信可能ゾーンを有しており、
複数の前記発光状態制御装置の各々から送信される前記制御信号に基づいて、当該発光状態制御装置の前記通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させることにより、複数の前記通信可能ゾーン毎に固有の像を形成させ、それらの像の組み合わせによって前記会場の演出を行うことを特徴とするものである。
本発明の第2の観点による演出システムでは、複数の携帯型発光装置の各々がICタグを備えているため、発光状態制御装置から各ICタグに記憶させた識別コードを用いて制御信号を個別に送信することにより、それら携帯型発光装置の発光状態を個別に変更可能である。また、複数の発光状態制御装置は、各々が所定の通信可能ゾーンを持っているので、一つの発光状態制御装置の通信可能ゾーン内にある携帯型発光装置の発光状態は、当該発光状態制御装置から送信される制御信号に応じたものになる。よって、比較的簡易な方法で携帯型発光装置の発光状態を高度に制御することができる。
【0014】
また、前記発光状態制御装置毎にその通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させるので、ある範囲(領域)毎に発光状態を変えて光のウェーブ等の複雑な動画像を容易に形成することができる。
【0015】
本発明の第2の観点による演出システムの好ましい例では、隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、受信強度の強い方の制御信号に応じた発光状態とされる。
本発明の第1の観点による演出方法の他の好ましい例では、隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、一つの制御信号を受信する場合とは異なる発光状態とされる。
【0016】
本発明の第3の観点では、本発明の第1の観点による演出方法または本発明の第2の観点による演出システムに使用される携帯型発光装置が提供される。この携帯型発光装置は、
光源及びその光源から送られる光によって発光する発光部を内蔵した本体部と、
前記本体部に内蔵されたICタグと、
前記光源を駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、前記ICタグを介して受信する制御信号に応じて前記光源を制御し、もって前記発光部の発光状態を制御するように構成されている
ことを特徴とするものである。
本発明の第3の観点による携帯型発光装置は、発光部とICタグを内蔵しており、しかも、制御手段によって、前記ICタグを介して受信する制御信号に応じて前記発光部の発光状態を制御することができる。このため、本発明の第1の観点による演出方法または本発明の第2の観点による演出システムに使用してそれを実現することができる。
【0017】
本発明の第3の観点による携帯型発光装置の好ましい例では、前記本体部が、前記光源から送られる光によって発光する発光体を内蔵する。
本発明の第3の観点による携帯型発光装置の他の好ましい例では、ローカルモードの動作とリモートモードの動作が可能であり、それら二つのモードは切替スイッチで切り替え可能とされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の観点による演出方法と本発明の第2の観点による演出システムによれば、比較的簡易な方法で携帯型発光装置の発光状態を高度に制御できる、ある範囲(領域)毎に発光状態を変えて光のウェーブを容易に形成できるという効果がある。
本発明の第3の観点による携帯型発光装置によれば、本発明の第1の観点による演出方法または本発明の第2の観点による演出システムを容易に実現することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0020】
(演出システムの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る演出システム1を示す概念図である。この演出システムにより、本発明の一実施形態に係る演出方法が実現される。
この演出システム1は、複数の携帯型発光装置30と、それら携帯型発光装置30の発光状態を制御する複数の発光状態制御装置10と、複数の発光状態制御装置10(ひいては演出システム1)の動作を制御する、中央制御装置としてのパーソナルコンピュータ22を備えている。図1では、簡単化のために一つの携帯型発光装置30と、その携帯型発光装置30の発光状態を制御する一つの発光状態制御装置10のみを描いている。
パーソナルコンピュータ22は、LAN(Local Area Network)ケーブル24を介してハブ21に接続されている。ハブ21は、LANケーブル23を介して発光状態制御装置10に接続されている。LANケーブル23及び24は、10/100 BASE TXの規格に沿ったものである。
【0021】
このように、複数の発光状態制御装置10とパーソナルコンピュータ22は、LANケーブル23及び24と、ハブ21と、他の同様のLANケーブル及びハブ(いずれも図示せず)とを介して、相互に接続されており、一つのLAN(特定区域内情報通信網)を構成している。
【0022】
発光状態制御装置10は、アンテナ11と、無線送信・変調部12と、エンコーダ13と、LAN−シリアル・コンバータ14と、それらに所定の電圧を供給する電源部15とを備えている。LAN−シリアル・コンバータ14は、LAN内を伝送される際のデータ伝送形式と、シリアル・インターフェースを介して伝送される際のデータ伝送形式との間で、データの内容を変えずに相互に変換する。エンコーダ13は、LAN−シリアル・コンバータ14でシリアル伝送に変換されたデータを、所定の方式にしたがって符号化する。エンコーダ13とLAN−シリアル・コンバータ14は、シリアルケーブル16を介して接続されている。無線送信・変調部12は、符号化されたデータを所定の方式にしたがって変調し、アンテナ11を介して電波を使って無線送信する。なお、図示しない発光状態制御装置10も、これと同じ構成である。
【0023】
LANを介してLAN−シリアル・コンバータ14に送られるデータは、パーソナルコンピュータ22で生成される。したがって、複数の携帯型発光装置30で所望の発光状態を実現するには、パーソナルコンピュータ22でそのような発光状態を指定するデータを生成し、そのデータをLANに接続されているすべての発光状態制御装置10に送り、それら発光状態制御装置10から各携帯型発光装置30に前記データを無線送信することになる。
【0024】
次に、携帯型発光装置30の構成について説明する。携帯型発光装置30は、アンテナ31と、無線受信・復調部32と、メモリ37と、デコーダ・LED駆動部33と、LEDユニット34と、モード・セレクタ35と、電源部36とを備えている。図示しない携帯型発光装置30も、これと同じ構成である。
【0025】
無線受信・復調部32は、無線送信されてきた前記データをアンテナ31で受信し、そして、その受信した前記データを所定の方式にしたがって復調する。デコーダ・LED駆動部33は、復調された前記データに応じてLEDユニット34を駆動する。LEDユニット34は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する三つのLED(Light-Emitting Diode、発光ダイオード)を内蔵しており、復調された前記データに応じて各種カラーの光を生成可能である。電源部36は、無線受信・復調部32とデコーダ・LED駆動部33とLEDユニット34に対して、所定の電圧を供給する。
【0026】
アンテナ31と無線受信・復調部32とメモリ37は、無線IC(Integrated Circuit、集積回路)タグ40を構成している。この無線ICタグ40は、公知のものとほぼ同じ構成である。すなわち、メモリ37には、当該携帯型発光装置30に固有の識別コードが記憶されており、その識別コードを読み出すことにより、当該携帯型発光装置30を他の携帯型発光装置30から識別することができる。そして、その無線通信機能を利用してLEDの制御信号を受信し、R、G、B三つのLEDをON・OFFしたり、発光色を変えたりすることができる。
【0027】
モード・セレクタ35は、当該携帯型発光装置30の動作モードを切り替えるためのものである。携帯型発光装置30は、その発光状態や動作をパーソナルコンピュータ22から無線で遠隔操作できる「リモート(remote)・モード」と、そのような遠隔操作はできず、当該携帯型発光装置30を携帯している人自身が操作してその発光状態や動作を制御する「ローカル(local)・モード」とを有している。このため、必要に応じて無線送信されてきた前記データに基づいてモード・セレクタ35を動かすことにより、あるいは、携帯型発光装置30に設けられたモード切替スイッチ(図示せず)を操作することにより、当該携帯型発光装置30を所望のモードで動作させることができる。
【0028】
(演出システムの動作)
次に、以上の構成を持つ演出システム1の動作、すなわち演出システム1を用いた演出方法について説明する。
複数の発光状態制御装置10は、一定のレイアウトで会場内に配置される。それらの発光状態制御装置10の各々は、所定の通信可能ゾーンを有している。例えば、図2に示すように、会場内で三つの発光状態制御装置10をある三角形の各頂点に配置し、それらの通信可能ゾーンすなわち、第1ゾーン51、第2ゾーン52及び第3ゾーン53の端部が互いに重なり合うようにする。三つの発光状態制御装置10は、LANケーブルでパーソナルコンピュータ22に接続する。通信可能距離は、内蔵されているICタグの仕様によって決まっているから、その仕様から通信可能ゾーンの大きさ(半径)は推定可能である。こうして推定した距離に基づいて各発光状態制御装置10の位置決めをすれば、第1ゾーン51、第2ゾーン52及び第3ゾーン53の端部を互いに重なり合うようにすることができる。
他方、複数の携帯型発光装置30は、一つずつ、当該会場への入場者(観客)の一人ひとりに携帯してもらう。また、携帯型発光装置30を携帯した入場者には、第1〜第3のゾーン51、52、53のいずれか一つの内部に含まれる位置に止まってもらうようにする。例えば、図3(a)に示すように、第1〜第3のゾーン51、52、53の内部に整列してもらうようにする。こうすることにより、第1ゾーン51の内部に配置された携帯型発光装置30は、第1ゾーン51の中心に配置された発光状態制御装置10によって発光状態が制御される。第2〜第3のゾーン52、53についても同様である。
【0029】
その結果、パーソナルコンピュータ22からLANを通じて各発光状態制御装置10に制御信号を送ると、その制御信号は各発光状態制御装置10からその通信可能ゾーンに無線送信される。すると、各通信可能ゾーンすなわち、第1〜第3のゾーン51、52、53の内部にある携帯型発光装置30は、その制御信号を受信してその内容に応じた発光状態になる。あるタイミングでは、例えば、図3(a)に示すように、第1ゾーン51内のすべての携帯型発光装置30は赤色に発光し、第2ゾーン52内のすべての携帯型発光装置30は青色に発光し、第3ゾーン53内のすべての携帯型発光装置30は白色に発光する。このようにして、通信可能ゾーン毎に異なる発光状態を実現することができる。
【0030】
次のタイミングでは、例えば、図3(b)に示すように、第1ゾーン51内のすべての携帯型発光装置30は白色に発光し、第2ゾーン52内のすべての携帯型発光装置30は赤色に発光し、第3ゾーン53内のすべての携帯型発光装置30は青色に発光する。
このような発光色の変化を繰り返せば、赤、青、白の三色の発光点群が通信可能ゾーン毎に切り替わることになり、その結果、三色の発光点群を第1〜第3のゾーン51、52、53の中心の周りに回転させることが可能となり、高い光学的演出効果が得られる。
【0031】
図4は、上記演出方法をコンサート会場に適用した例を示す。コンサート会場60は、一般に、前端にステージ61があり、それ以外の領域が観客席62となっている。観客席62には、多数の椅子(座席)が碁盤の目のように整列せしめられている。そこで、図4に示すように、観客席62内に九つの発光状態制御装置10を配置し、それら発光状態制御装置10をLANケーブルでパーソナルコンピュータ22に接続する。そして、それら発光状態制御装置10の通信可能ゾーンすなわち、第1ゾーン71、第2ゾーン72、第3ゾーン73、第4ゾーン74、第5ゾーン75、第6ゾーン76、第7ゾーン77、第8ゾーン78及び第9ゾーン79の端部が重なり合うようにする。こうして、第1〜第9ゾーン71〜79が、図4に示すようにレイアウトされるようにする。
【0032】
他方、複数の携帯型発光装置30は、一つずつ、コンサート会場60への入場者(聴衆)の一人ひとりに携帯してもらい、指定された(あるいは自己の希望する)座席に座ってもらう。すると、各携帯型発光装置30は、観客が着席した座席の位置に応じて、第1〜第9ゾーン71〜79のいずれかに入る。こうすることにより、第1ゾーン71の内部に配置された携帯型発光装置30は、第1ゾーン71の中心に配置された発光状態制御装置10によって発光状態が制御される。第2〜第9のゾーン72、79についても同様である。
【0033】
その結果、パーソナルコンピュータ22からLANを通じて各発光状態制御装置10に制御信号を送ると、その制御信号は各発光状態制御装置10からその通信可能ゾーンに無線送信される。すると、各通信可能ゾーンすなわち、第1〜第9のゾーン71〜79の内部にある携帯型発光装置30は、その制御信号を受信してその内容に応じた発光状態になる。
【0034】
あるタイミングでは、例えば、図4に示すように、第1ゾーン71のみに属する携帯型発光装置30は白色に発光し、第2ゾーン72のみに属する携帯型発光装置30は赤色に発光し、第3ゾーン73のみに属する携帯型発光装置30は青色に発光する。同様に、第4ゾーン74のみに属する携帯型発光装置30は青色に発光し、第5ゾーン75のみに属する携帯型発光装置30は白色に発光し、第6ゾーン76のみに属する携帯型発光装置30は赤色に発光する。第7ゾーン77のみに属する携帯型発光装置30は赤色に発光し、第8ゾーン78のみに属する携帯型発光装置30は青色に発光し、第9ゾーン79のみに属する携帯型発光装置30は白色に発光する。
【0035】
図4の例では、図3の例とは異なり、隣接する二つあるいはそれ以上のゾーンが重複しているので、重複部分の発光状態をそれ以外の部分の発光状態とは異ならせている。図4の例では、隣接する二つあるいはそれ以上のゾーンの重複部分に属する携帯型発光装置30は緑色に発光する。これは、例えば、各携帯型発光装置30を、二つあるいはそれ以上の制御信号を同時に受信した場合は緑色に発光するように設定することにより、実現することができる。なお、重複部分の発光状態は、これ以外の任意の発光状態としてもよいことは言うまでもない。例えば、同時に受信した制御信号の強度を比較し、最も強い制御信号に応じた発光状態としてもよい。
【0036】
図4の例においても、図3の例と同様に、時間の経過に応じて各発光状態制御装置10の制御信号を変えることにより、異なる発光状態の発光点群を第1〜第9のゾーン71〜79毎に変化させることが可能となり、高い光学的演出効果が得られる。
【0037】
図5は、上記演出方法を野球場に適用した例を示す。野球場80は、一般に、中央にグラウンド81があり、その周囲に観客席82が設けられている。観客席82には、多数の椅子(座席)がグラウンド81に向かって整列せしめられている。そこで、図5に示すように、観客席82内に多数の発光状態制御装置10を配置し、それら発光状態制御装置10をLANケーブルでパーソナルコンピュータ22に接続する。そして、それら発光状態制御装置10の通信可能ゾーン90をその端部が重なり合うように調整する。こうして、多数のゾーン90が、図5に示すように、観客席82に沿ってレイアウトされるようにする。
【0038】
他方、複数の携帯型発光装置30は、一つずつ、野球場80への入場者(観客)の一人ひとりに携帯してもらい、観客席82の指定された(あるいは自己の希望する)座席に座ってもらう。すると、各携帯型発光装置30は、観客が着席した座席の位置に応じて、多数のゾーン90のいずれかに入る。こうすることにより、あるゾーン90の内部に配置された携帯型発光装置30は、そのゾーン90の中心に配置された発光状態制御装置10によって発光状態が制御される。他のゾーン90についても同様である。
【0039】
その結果、パーソナルコンピュータ22からLANを通じて各発光状態制御装置10に制御信号を送ると、その制御信号は各発光状態制御装置10からその通信可能ゾーンに無線送信される。すると、各通信可能ゾーンの内部にある携帯型発光装置30は、その制御信号を受信してその内容に応じた発光状態になる。
【0040】
あるタイミングでは、例えば、ある一つのゾーン90のみに属する携帯型発光装置30が赤色に発光し、他の一つのゾーン90のみに属する携帯型発光装置30が緑色に発光し、さらに他の一つのゾーン90のみに属する携帯型発光装置30が青色に発光する。次のタイミングでは、それら三つのゾーン90の右となりのゾーン90のみに属する携帯型発光装置30が、それぞれ、赤色、緑色、青色に発光する。その次のタイミングでは、それら三つのゾーン90のさらに右となりのゾーン90のみに属する携帯型発光装置30が、それぞれ、赤色、緑色、青色に発光する。このようにして、赤色、緑色、青色の三色の発光点群が、時間の経過に応じてグラウンド81の周りを順次移動させると、観客席82に赤色、緑色、青色の三色のウェーブが形成される。したがって、野球場80において高い光学的演出効果が得られる。
【0041】
(演出システムに使用する携帯型発光装置の構成例)
図6は、上述した演出システム1に使用する携帯型発光装置30の構成例である、うちわ状発光体100を示す。この構成は、特開2002−315617号公報に開示されたものにほぼ等しい。
このうちわ状発光体100は、柄104と、その一端に接続された扇体101から構成されている。扇体101は、複数の放射骨101aと、縁部材101bと、横骨101cとから構成され、無色透明の樹脂材料でほぼ一定の厚さで一体成形され、構造上の団扇の骨格をなすと共に導光部材となっている。複数の放射骨101aは、柄104の近傍の骨集中部101dから放射状に縁部材101bまで達している。横骨101cは、複数の放射骨101aを連結している。扇体101の下端の切欠部101eには、R,G,B三色のLEDを含むLEDユニット103が内蔵されている。LEDユニット103から生成・放射される光束は、主として扇体101の内部に入射し、各放射骨101a内に導かれる。
【0042】
扇体101の下部は、LEDユニット103から生成・放射される光束が直接携帯者に向かって漏れないように、遮光部材102で覆われている。
【0043】
柄104の内部には、電源105と、無線ICタグ106が取り付けられている。電源105としては、通常、市販の電池が使用される。無線ICタグ106は、公知の構成を採用して、それにLEDユニット103の発光状態を変更可能な機能を追加することで実現可能である。
柄104の外部には、モード切替スイッチ107が取り付けられている。うちわ状発光体100の動作モードは、遠隔操作で切り替えできるが、うちわ状発光体100の動作モードをその携帯者自身の判断で切り替えできるようにしたものである。
【0044】
上述したように、本発明の一実施形態の演出システム1では、複数の携帯型発光装置30の各々がICタグ40を備えているため、発光状態制御装置10から各ICタグ40に記憶させた識別コードを用いて制御信号を個別に送信することにより、それら携帯型発光装置30の発光状態を個別に変更可能である。また、複数の発光状態制御装置10は、各々が所定の通信可能ゾーンを持っているので、一つの発光状態制御装置10の通信可能ゾーン内にある携帯型発光装置30の発光状態は、当該発光状態制御装置10から送信される制御信号に応じたものになる。よって、比較的簡易な方法で携帯型発光装置30の発光状態を高度に制御することができる。
【0045】
また、発光状態制御装置10毎にその通信可能ゾーン内にある携帯型発光装置30の発光状態を変化させるので、ある範囲(領域)毎に発光状態を変えて光のウェーブ等の複雑な動画像を容易に形成することができる。
【0046】
(変形例)
上述した実施形態は本発明を具体化した例を示すものである。したがって、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の演出方法、演出システム及び携帯型発光装置は、競技場、コンサート会場、エベント会場等の広い面積の会場で客と一体になった演出に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る演出システムを示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る演出システムにおける発光状態制御装置のレイアウトの例を示す説明図である。
【図3】図2の発光状態制御装置のレイアウトで生成される発光点群(演出効果)の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る演出システムにおける発光状態制御装置のレイアウトの他の例と、そこで生成される発光点群(演出効果)の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る演出システムにおける発光状態制御装置のレイアウトのさらに他の例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る演出システムに使用する携帯型発光装置としてのうちわ状発光体を示す正面説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 演出システム
10 発光状態制御装置
11 アンテナ
12 無線送信・変調部
13 エンコーダ
14 LAN−シリアル・コンバータ
15 電源部
16 シリアルケーブル
21 ハブ
22 パーソナルコンピュータ
23、24 LANケーブル
30 携帯型発光装置
31 アンテナ
32 無線受信・復調部
33 デコーダ・LED制御部
34 LEDユニット
35 モード・セレクタ
36 電源部
37 メモリ
40 無線ICタグ
51 第1通信可能ゾーン
52 第2通信可能ゾーン
53 第3通信可能ゾーン
60 コンサート会場
61 ステージ
62 観客席
71 第1通信可能ゾーン
72 第2通信可能ゾーン
73 第3通信可能ゾーン
74 第4通信可能ゾーン
75 第5通信可能ゾーン
76 第6通信可能ゾーン
77 第7通信可能ゾーン
78 第8通信可能ゾーン
79 第9通信可能ゾーン
80 野球場
81 グラウンド
82 観客席
90 通信可能ゾーン
100 うちわ状発光体
101a 放射骨
101b 縁部材
101c 横骨
101d 骨集中部
101e 切欠部
102 遮光部材
103 LEDユニット
104 柄
105 電源
106 無線ICタグ
107 モード切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯型発光装置の各々に所定範囲内で無線通信が可能なICタグを取り付けると共に、当該ICタグが受信した制御信号によってその発光状態を変更可能とし、
複数の前記携帯型発光装置の各々を会場に入る観客に携帯させ、
各々が所定の通信可能ゾーンを持つ複数の発光状態制御装置を前記会場に配置し、
複数の前記発光状態制御装置の各々から送信される前記制御信号に基づいて、当該発光状態制御装置の前記通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させることにより、複数の前記通信可能ゾーン毎に固有の像を形成させ、それらの像の組み合わせによって前記会場の演出を行うことを特徴とする演出方法。
【請求項2】
隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、受信強度の強い方の制御信号に応じた発光状態とされる請求項1に記載の演出方法。
【請求項3】
隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、一つの制御信号を受信する場合とは異なる発光状態とされる請求項1に記載の演出方法。
【請求項4】
複数の携帯型発光装置と、それら携帯型発光装置の発光状態を制御する複数の発光状態制御装置とを含み、
複数の前記携帯型発光装置の各々は、所定範囲内で無線通信が可能なICタグを備えていると共に、当該ICタグが受信した制御信号によってその発光状態を変更可能であり、
複数の前記発光状態制御装置の各々は、一定のレイアウトで会場内に配置されると共に、所定の通信可能ゾーンを有しており、
複数の前記発光状態制御装置の各々から送信される前記制御信号に基づいて、当該発光状態制御装置の前記通信可能ゾーン内にある前記携帯型発光装置の発光状態を変化させることにより、複数の前記通信可能ゾーン毎に固有の像を形成させ、それらの像の組み合わせによって前記会場の演出を行うことを特徴とする演出システム。
【請求項5】
隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、受信強度の強い方の制御信号に応じた発光状態とされる請求項4に記載の演出システム。
【請求項6】
隣接する前記発光状態制御装置の前記通信可能ゾーンが互いに重複せしめられており、その重複部分にある前記携帯型発光装置の発光状態が、一つの制御信号を受信する場合とは異なる発光状態とされる請求項4に記載の演出システム。
【請求項7】
光源及びその光源から送られる光によって発光する発光部を内蔵した本体部と、
前記本体部に内蔵されたICタグと、
前記光源を駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、前記ICタグを介して受信する制御信号に応じて前記光源を制御し、もって前記発光部の発光状態を制御するように構成されていることを特徴とする携帯型発光装置。
【請求項8】
前記本体部が、前記光源から送られる光によって発光する発光体を内蔵する請求項7に記載の携帯型発光装置。
【請求項9】
ローカルモードの動作とリモートモードの動作が可能であり、それら二つのモードは切替スイッチで切り替え可能とされる請求項7または請求項8に記載の携帯型発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−115412(P2007−115412A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302408(P2005−302408)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【出願人】(502247961)株式会社メディアリンク・アイ (6)
【Fターム(参考)】