説明

演奏データ編集装置およびプログラム

【課題】音長の長い音と短い音が混在する演奏データを対象としてクォンタイズを行う場合において、全ての音の発音時刻を最適な位置に補正する。
【解決手段】CPUは、演奏データDMが示す各音の音長を求める。CPUは、4分音符以上の音の発音を指示するイベントEVONについては、時間軸上における8分音符1つ分の間隔TQN8をあけて離れた各点P−n(n=1,2…)と一致するように実行時刻を補正する。また、8分音符以上4分音符未満の音の発音を指示するイベントEVONについては、時間軸上における16分音符1つ分の間隔をあけて離れた各点と一致するように実行時刻を補正する。また、8分音符未満の音の発音を指示するイベントEVONについては、時間軸上における32分音符1つ分の間隔をあけて離れた各点と一致するように実行時刻を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏データを編集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器の演奏内容をMIDI(Musical
Instrument Digital Interface)などの規格に従った演奏データに変換する演奏データ編集装置が各種提案されている。この種の演奏データ編集装置には、クォンタイズと呼ばれる補正機能が搭載されている。クォンタイズは、クォンタイズ分解能として指定された間隔をあけた時間軸上の各点と一致するように演奏データにおける各音の発音時刻を補正する機能である。このクォンタイズでは、例えば、クォンタイズ分解能が8分音符とされている場合、8分音符1つ分の間隔をあけて離れた時間軸上の各点をクォンタイズ基準点とし、演奏データにおける各音の発音時刻を各々に最も近いクォンタイズ基準点と一致する時刻へと補正する。このクォンタイズを施すことにより、演奏データをより良好な演奏内容を示すものに改変することができる。クォンタイズに関わる技術を開示した文献として、例えば、特許文献1及び2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−126061号公報
【特許文献2】特開2002−162965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の演奏データ編集装置は、演奏データ内の全ての音の発音時刻をクォンタイズ分解能により決まる一定間隔のクォンタイズ基準点と一致するように一律に補正するようになっていた。このため、クォンタイズの対象となる演奏データ内に音長の長い音と短い音とが混在している場合、全ての音の発音時刻を適切な位置に補正することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、音長の長い音と短い音が混在する演奏データを対象としてクォンタイズを行う場合において、全ての音の発音時刻を最適な位置に補正できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、音の発音を指示する各イベントと前記各イベントの実行時刻とを示す演奏データを記憶する記憶手段と、前記演奏データが示す各イベントの実行時刻を一定間隔をあけて離れた時間軸上の各点であるクォンタイズ基準点と一致するかずれが小さくなるように補正する手段であって、前記各イベントにより発音が指示される音の音長に応じて前記各イベントの実行時刻の補正における前記クォンタイズ基準点の間隔を切り換えるクォンタイズ手段とを具備する演奏データ編集装置を提供する。
【0007】
この発明では、クォンタイズ手段は、演奏データ内の各イベントにより発音が指示される音の音長に応じて各イベントの実行時刻の補正におけるクォンタイズ基準点の間隔を切り換える。よって、本発明によると、音長の長い音と短い音が混在する演奏データについてクォンタイズを行う場合であっても、演奏データ内の全ての音の発音時刻を最適な位置に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である演奏データ編集装置を含む演奏システムの構成を示す図である。
【図2】同システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】同システムにおけるイベント分類処理の処理内容の一例を示す図である。
【図4】同システムにおける補正処理の処理内容の一例を示す図である。
【図5】同システムにおける補正処理の処理内容の一例を示す図である。
【図6】同システムにおける補正処理の処理内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である演奏データ編集装置10を含む演奏システムの構成を示す図である。この演奏システムは、演奏データ編集装置10と電子鍵盤楽器50をMIDIケーブル61を介して接続したものである。この演奏システムにおける演奏データ編集装置10は、例えば、パーソナルコンピュータである。この演奏データ編集装置10は、操作部21、MIDIインターフェース部22、及び制御部31を有する。操作部21は、各種操作を受け付け、操作内容を示す信号を制御部31に供給する。MIDIインターフェース部22は、当該MIDIインターフェース部22に接続された装置との間でデータを送受信する。
【0010】
制御部31は、当該演奏データ編集装置10の制御中枢としての役割を果たす装置である。制御部31は、CPU32、RAM33、ROM34、及びEEPROM35を有する。CPU32は、RAM33をワークエリアとして利用しつつ、ROM34やEEPROM35に記憶されたプログラムを実行する。ROM34には、IPL(Initial Program Loader)などが記憶されている。EEPROM35には、演奏データ編集プログラムが記憶されている。演奏データ編集プログラムは、次の2つの機能を有する。
【0011】
a1.演奏データ記憶機能
これは、電子鍵盤楽器50から音の発音及び消音を指示するノートオンイベントEVON及びノートオフイベントEVOFFと各イベントEVON及びEVOFFの実行時刻tを示すデルタタイムΔtとを含む演奏データDMを受信し、受信した演奏データDMをEEPROM35に記憶する機能である。
b1.クォンタイズ機能
これは、EEPROM35内の演奏データDMが示す各イベントEVONの実行時刻tを、一定間隔TQをあけて離れた時間軸上の各点であるクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)と一致するように補正する機能であって、各イベントEVONにより発音が指示される音の音長Lに応じて各イベントEVONの実行時刻tの補正におけるクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)の間隔TQを切り換える機能である。
【0012】
次に、本実施形態の動作を説明する。図2は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。図2に示す一連の処理のうちステップS110は、演奏データ記憶機能の働きによって実行される処理であり、ステップS120〜S140は、クォンタイズ機能の働きによって実行される処理である。図2に示す一連の処理は、操作部21により演奏の開始の指示が下されると開始される。演奏者は、演奏の開始を指示するにあたり、以下の2つの設定項目a2及びb2を設定する。
a2.テンポTMP
これは、演奏の速度を1分(60秒)当たりの拍数として示す情報である。
b2.タイムベースTB
これは、4分音符1つ分の時間をMIDIにおける時間尺度の最小単位であるティックの数として示す情報である。
【0013】
図2において、CPU32は、演奏制御処理を行う(S100)。演奏制御処理では、CPU32は、設定項目a2及びb2として設定されたテンポTMP及びタイムベースTBを次式に代入することにより1ティックの時間長TCKを求める。
TCK=60/TMP/TB…(1)
【0014】
そして、この演奏制御処理では、CPU32は、ガイド音M(メトロノームの音色を模擬した音)の発音の開始を指示するイベントEVON及び前掲式(1)により求めた時間長TCKを示すデータDTCKをMIDIインターフェース部22を介して電子鍵盤楽器50へ送信する。
【0015】
電子鍵盤楽器50は、演奏データ編集装置10からガイド音Mの発音の開始を指示するイベントEVON及びデータDTCKを受信すると、次の2つの処理を行う。第1の処理では、電子鍵盤楽器50は、データDTCKが示す時間長TCKが経過する度にティック数NumTCKをカウントアップし、カウントアップ後のティック数NumTCKがタイムベースTBに達する度にスピーカ(不図示)からガイド音Mを放音する処理を繰り返す。演奏者は、スピーカからのガイド音Mの放音が始まると、ガイド音Mが刻む拍に合わせて電子鍵盤楽器50を演奏する。第2の処理では、電子鍵盤楽器50は、演奏者が押鍵操作(鍵1−k(k=1〜88)の何れかを手指により押す操作)を行う度に、押された鍵1−kのノートナンバ♯を含むイベントEVONを生成して当該電子鍵盤楽器50のメモリに書き込み、演奏者が押鍵解除操作(押した鍵1−kから指を離す操作)を行う度に、イベントEVOFFを生成してメモリに書き込む。また、第2の処理では、電子鍵盤楽器50は、相前後して生成した2つのイベントEVON及びEVOFF(または、イベントEVOFF及びEVON)の時間間隔に相当するティック数NumTCKを求め、このティック数NumTCKを示すデルタタイムΔtをメモリ内における当該2つのイベントEVON及びEVOFF(または、イベントEVOFF及びEVON)の間に介挿する。
【0016】
また、この演奏制御処理では、操作部21の操作により演奏の終了の指示が下されると、CPU32は、ガイド音Mの発音の終了を指示するイベントEVOFFをMIDIインターフェース部22を介して電子鍵盤楽器50へ送信する。電子鍵盤楽器50は、ガイド音Mの発音の終了を指示するイベントEVOFFを受信すると、ガイド音Mの放音を終了する。そして、電子鍵盤楽器50は、当該電子鍵盤楽器50のメモリに書き込まれている一連のイベントEVON、EVOFF、及びデルタタイムΔtを含む演奏データDMを生成し、この演奏データDMを電子鍵盤楽器50に送信する処理を行う。
【0017】
演奏データ編集装置10のCPU32は、電子鍵盤楽器50から演奏データDMを受信し、この演奏データDMをEEPROM35に記憶する(S110)。CPU32は、EEPROM35に記憶した演奏データDMをRAM33に読み出し(S120)、このRAM33内の演奏データDMを処理対象としてイベント分類処理を実行する(S130)。イベント分類処理は、RAM33内の演奏データDMが示す各イベントEVONを、実行時刻tの補正を要しないイベント群GE1と実行時刻tの補正を要するイベント群GE2とに分ける処理である。このイベント分類処理では、CPU32は、演奏データDMが示す各イベントEVONのうち所定間隔よりも短い間隔を空けて連なる音の発音を指示するものをイベント群GE1とし、それ以外の音の発音を指示するものをイベント群GE2とする。
【0018】
より具体的に説明すると、図3に示すように、イベント分類処理では、CPU32は、RAM33内の演奏データDMが示す各イベントEVONとその次のイベントEVONとの間にイベントEVOFFを挟んで記された2つのデルタタイムΔtの合計値SUMΔtを、発音順が連続する2つの音の発音の間隔とする。また、演奏データDMが示す各イベントEVOFFとその次のイベントEVONとの間に記されたデルタタイムΔtを、発音順が連続する2つの音における先行音の消音から後続音の発音までの間隔とする。その上で、CPU32は、次の2つの条件a3及びb3のうち少なくとも一方を満足するイベントEVON(図3の演奏区間の例では、ノートナンバ61→ノートナンバ60→ノートナンバ61→ノートナンバ60→ノートナンバ55の一連の音の発音を指示する5つのイベントEVON)をイベント群GE1に分類し、それら以外のものをイベント群GE2に分類する。
a3.当該イベントEVONとその次のイベントEVONとの間のデルタタイムΔtの合計値SUMΔtと8分音符1つ分の間隔TQN8(TQN8=TB/2)との大小関係がSUMΔt<TQN8であること。
b3.当該イベントEVONとその前のイベントEVOFFとの間のデルタタイムΔtと16分音符1つ分の間隔TQN16(TQN16=TB/4)との大小関係がΔt<TQN16であること。
【0019】
次に、CPU32は、補正処理を実行する(S140)。この補正処理では、CPU32は、イベント群GE2に属する各イベントEVONの実行時刻tを補正対象とし、補正対象である各イベントEVONの実行時刻tをクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)と一致するように補正するとともに、各イベントEVONにより発音が指示される音の音長Lに応じて各イベントEVONの実行時刻tの補正におけるクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)の間隔TQを切り換える。
【0020】
より具体的に説明すると、CPU32は、補正対象である各イベントEVONと各々の後のイベントEVOFFとの間にデルタタイムΔtとして記されているティック数NumTCKを各イベントEVONが発音を指示する音の音長Lとする。
【0021】
そして、図4に示すように、CPU32は、補正対象である各イベントEVONのうち4分音符以上の音長Lの音の発音を指示するイベントEVON(図4の演奏区間の例では、ノートナンバ57の音の発音を指示するイベントEVON)については、時間軸(より具体的には、演奏データDMの最初のイベントEVONの実行時刻tを始点とする時間軸)上における8分音符1つ分の間隔TQN8(TQN8=TB/2)をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とし、当該イベントEVONの実行時刻tが直近のクォンタイズ基準点P−n(図4の演奏区間の例では、クォンタイズ基準点P−21)と一致するように当該イベントEVONの前後のデルタタイムΔtを書き換える。
【0022】
また、図5に示すように、CPU32は、補正対象である各イベントEVONのうち8分音符以上且つ4分音符未満の音長Lの音の発音を指示するイベントEVON(図5の演奏区間の例では、ノートナンバ54の音の発音を指示するイベントEVON)については、時間軸(より具体的には、演奏データDMの最初のイベントEVONの実行時刻tを始点とする時間軸)上における16分音符1つ分の間隔TQN16(TQN16=TB/4)をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とし、当該イベントEVONの実行時刻tが直近のクォンタイズ基準点P−n(図5の演奏区間の例では、クォンタイズ基準点P−50)と一致するように当該イベントEVONの前後のデルタタイムΔtを書き換える。
【0023】
また、図6に示すように、CPU32は、補正対象である各イベントEVONのうち8分音符未満の音長Lの音の発音を指示するイベントEVON(図6の演奏区間の例では、ノートナンバ58の音の発音を指示するイベントEVON)については、時間軸(より具体的には、演奏データDMの最初のイベントEVONの実行時刻tを始点とする時間軸)上における32分音符1つ分の間隔TQN32(TQN32=TB/8)をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とし、当該イベントEVONの実行時刻tと直近のクォンタイズ基準点P−n(図6の演奏区間の例では、クォンタイズ基準点P−80)が一致するように当該イベントEVONの前後のデルタタイムΔtを書き換える。CPU32は、以上の処理を経て内容が書き換えられた一連のイベントEVON、EVOFF、及びデルタタイムΔtをクォンタイズ済みの演奏データDM’としてEEPROM35に記憶する。
【0024】
以上が、本実施形態の構成及び動作の詳細である。本実施形態によると、次の効果が得られる。
第1に、本実施形態では、CPU32は、補正処理において、演奏データDM内の各イベントEVONにより発音が指示される音の音長Lに応じて各イベントEVONの実行時刻tの補正におけるクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)の間隔TQを切り換える。よって、本実施形態によると、音長Lの長い音と短い音が混在する演奏データDMについてクォンタイズを行う場合であっても、演奏データDM内の全ての音の発音時刻を最適な位置に補正することができる。
【0025】
第2に、本実施形態では、所定間隔よりも短い間隔を空けて連なる音の発音を指示するイベントEVONについては、実行時刻tの補正を行わないようになっている。よって、本実施形態によると、イベントEVONの時間密度が高い演奏区間がクォンタイズの対象から除かれる。従って、本実施形態によると、トレモロ演奏やトリル演奏のように、クォンタイズと馴染まないような演奏区間についてまでイベントEVONの実行時刻tが補正されてしまう、という事態の発生を防ぐことができる。
【0026】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この発明には、他にも各種の実施形態が考えられる。例えば、以下の通りである。
【0027】
(1)上記実施形態は、本発明を、パーソナルコンピュータのアプリケーションプログラムとして適用したものであった。しかし、電子鍵盤楽器50に演奏データ編集プログラムを実装し、電子鍵盤楽器50自体が鍵1−k(k=1〜88)の操作に応じた演奏データDMの生成とそのクォンタイズを行うようにしてもよい。また、演奏データ編集装置10をスマートフォンにより構成してもよい。
(2)上記実施形態では、演奏データ編集装置10と電子鍵盤楽器50はMIDIケーブル61により接続されていた。しかし、演奏データ編集装置10と電子鍵盤楽器50をブルートゥースなどの無線通信規格により接続してもよい。
(3)上記実施形態では、電子鍵盤楽器50がガイド音Mを発音した。しかし、演奏データ編集装置10のスピーカからガイド音Mを発音してもよい。
【0028】
(4)上記実施形態では、演奏データ編集装置10のCPU32は、演奏データDMに含まれる各イベントEVON及びイベントEVOFFのうちイベントEVONの実行時刻tだけを補正した。しかし、イベントEVOFFの実行時刻tを補正してもよい。この場合において、CPU32は、イベントEVOFFの実行時刻tの補正を次のようにして行うとよい。CPU32は、演奏データDMにおけるイベントEVONの実行時刻tを補正した後、デルタタイムΔtを挟んでそのイベントEVONに対応するイベントEVOFFを処理対象とする。そして、イベントEVONの実行時刻tをある時間長T’だけ前の実行時刻tに補正した場合は、対応するイベントEVOFFの実行時刻tを時間長T’だけ前の実行時刻tに補正する。また、イベントEVONの実行時刻tをある時間長T”だけ後の実行時刻tに補正した場合は、対応するイベントEVOFFの実行時刻tを時間長T”だけ後の実行時刻tに補正する。このようにすると、イベントEVONにより発音が指示された音の音長Lを、クォンタイズの前後において同じ長さにすることができる。よって、クォンタイズ後の演奏データDMの再生音を聴いた演奏者に不自然な印象を与え難くすることができる。
【0029】
(5)上記実施形態では、演奏データ編集装置10のCPU32は、補正対象である各イベントEVONの実行時刻tをクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)と一致するように補正した。しかし、補正対象である各イベントEVONの実行時刻tをクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とのずれが小さくなるように補正してもよい。例えば、イベントEVONの実行時刻tとクォンタイズ基準点P−nとのずれ幅の閾値TH1を設定し、補正対象である各イベントEVONの中から直近のクォンタイズ基準点P−nとの間の時間軸上のずれの大きさが閾値TH1より大きくなっているものを選択し、この選択したイベントEVONの実行時刻tを直近のクォンタイズ基準点P−nとのずれが閾値TH1以下になるように補正するとよい。
【0030】
また、演奏者が、クォンタイズ基準点P−nとのずれの適応強度を百分率により指定できるようにしてもよい。この実施形態では、適応強度が最大値である100%である場合、各イベントEVONの実行時刻tを直近のクォンタイズ基準点P−nと一致させる。また、適応強度が50%である場合、各イベントEVONの実行時刻tをその時刻tと直近のクォンタイズ基準点P−nの間の中点と一致させる。適応強度が0%である場合、各イベントEVONの実行時刻tの補正を行わない。
【0031】
(6)上記実施形態においては、演奏データ編集装置10のCPU32は、電子鍵盤楽器50から演奏データDMを受信し、この演奏データDMを処理対象としてイベント分類処理及び補正処理を行った。しかし、イベント分類処理及び補正処理の一方または両方の処理を演奏データ編集装置10のリクエストを受けたサーバ装置が実行するようにしてもよい。この実施形態では、サーバ装置に演奏データ編集プログラムを実装する。そして、サーバ装置は、演奏データ編集装置10から演奏データDMを受信して自装置のメモリに記憶し、このメモリ内の演奏データDMにイベント分類処理及び補正処理を施し、この処理を施した演奏データDM’を演奏データ編集装置10に返信する。
【0032】
(7)上記実施形態では、電子鍵盤楽器50は、当該電子鍵盤楽器50の演奏中に生成したイベントEVON、EVOFF、及びデルタタイムΔtをメモリ内に書き込み、演奏の終了後にメモリ内の一連のイベントEVON、EVOFF、及びデルタタイムΔtを演奏データDMとして演奏データ編集装置10に送信した。しかし、電子鍵盤楽器50は、押鍵操作や押鍵解除操作を検知する度にその操作内容に応じたイベントEVON,EVOFFを演奏データ編集装置10にリアルタイムで送信するようにしてもよい。この場合、演奏データ編集装置10は、電子鍵盤楽器50から送信されるイベントEVON,EVOFFを受信順にRAM33に記憶し、RAM33内における相前後するイベントEVON及びEVOFF(またはイベントEVOFF及びEVON)を対象とする補正処理をリアルタイムで行うようにするとよい。
【0033】
(8)上記実施形態のイベント分類処理(S130)では、CPU32は、演奏データDM内のイベントEVONが上述した2つの条件a3及びb3の一方を満足する場合にイベント群GE1に分類し、条件a3及びb3のいずれも満足しない場合にイベント群GE2に分類した。しかし、イベント群GE1とイベント群GE2の分類の条件を条件a3のみにしてもよい。この場合、条件a3を満足するものをイベント群GE1に分類し、条件a3を満足しないものをイベント群GE2にするとよい。
【0034】
(9)上記実施形態の補正処理(S140)では、時間軸上における8分音符1つ分の間隔TQN8をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とし、16分音符1つ分の間隔TQN16をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とし、32分音符1つ分の間隔TQN32をあけて離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)とした。しかし、クォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)の間隔TQの組合せはこれに限らない。間隔TQの長さは演奏のテンポや演奏レベルなどに応じて適宜設定するとよい。
【0035】
(10)上記実施形態のイベント分類処理(S130)では、演奏データDM内の各イベントEVONについて、当該イベントEVONと次のイベントEVONとの間のデルタタイムΔtの合計値SUMΔtが8分音符1つ分の間隔TQN8より小さいか、その前のイベントEVOFFとの間のデルタタイムΔtが16分音符1つ分の間隔TQN16よりも小さい場合に、当該イベントEVONを第1のイベント群GE1とした。しかし、第1のイベント群GE1に該当するか否かの判定基準として用いる間隔TQの組合せはこれに限らない。この間隔TQの長さも演奏のテンポや演奏レベルなどに応じて適宜設定するとよい。
【0036】
(11)上記実施形態の補正処理(S140)では、演奏データDMの最初のイベントEVONの実行時刻tを始点とする時間軸上における所定間隔TQずつ離れた各点をクォンタイズ基準点P−n(n=1,2…)、P−n(n=1,2…)、及びP−n(n=1,2…)とした。しかし、この時間軸の始点は演奏データDMの最初のイベントEVONの実行時刻tである必要はない。最初のイベントEVONよりも後のイベントEVONまたはEVONの実行時刻tを時間軸の始点として適宜設定できるようにするとよい。
【符号の説明】
【0037】
10…演奏データ編集装置、31…制御部、32…CPU、33…RAM、34…ROM、35…EEPROM、22…MIDIインターフェース部、50…電子鍵盤楽器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音の発音を指示する各イベントと前記各イベントの実行時刻とを示す演奏データを記憶する記憶手段と、
前記演奏データが示す各イベントの実行時刻を一定間隔をあけて離れた時間軸上の各点であるクォンタイズ基準点と一致するかずれが小さくなるように補正する手段であって、前記各イベントにより発音が指示される音の音長に応じて前記各イベントの実行時刻の補正における前記クォンタイズ基準点の間隔を切り換えるクォンタイズ手段と
を具備することを特徴とする演奏データ編集装置。
【請求項2】
前記演奏データが示す各イベントを、所定間隔よりも短い間隔を空けて連なる音の発音を指示するイベントを含む第1のイベント群とそれ以外の音の発音を指示するイベントを含む第2のイベント群とに分類する手段を有し、前記第2のイベント群に属する各イベントの実行時刻を前記補正の対象とするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の演奏データ編集装置。
【請求項3】
コンピュータに、
音の発音を指示する各イベントと前記各イベントの実行時刻とを示す演奏データを記憶する記憶手段と、
前記演奏データが示す各イベントの実行時刻を一定間隔をあけて離れた時間軸上の各点であるクォンタイズ基準点と一致するかずれが小さくなるように補正する手段であって、前記各イベントにより発音が指示される音の音長に応じて前記各イベントの実行時刻の補正における前記クォンタイズ基準点の間隔を切り換えるクォンタイズ手段と
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57844(P2013−57844A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196788(P2011−196788)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】