説明

演算制御装置

【課題】ホイートストンブリッジ回路とマイクロコンピュータとを備える演算制御装置において、装置全体の信頼性を高めることを目的とする。
【解決手段】マイコンのCPUは、起動スイッチがオンされることによって直流電源からマイコンおよび通電制御回路に給電されると(S210)、マイコン内の各部を初期化することで起動する(S220)。そして、切替スイッチに切替信号を出力することで、切替スイッチの各スイッチの一方をオンに動作させ、他方をオフに動作させることにより(S230)、切替抵抗部における固定抵抗体のいずれか一方を導通状態に切り替えるとともに、他方を非導通状態に切り替える(S240)。その後、スイッチング回路に作動許可信号を出力することで、通電制御回路の作動(ひいてはブリッジ回路の作動)を許可する(S250)。これにより、マイコンの起動中に、通電制御回路が作動を開始してしまうことを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出雰囲気内の環境を表す尺度を演算する演算制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・自然保護などの社会的要求から、高効率で、クリーンなエネルギー源として燃料電池の研究が活発に行われている。その中で、低温作動、高出力密度等の利点により、家庭用、車載用などのエネルギー源として固体高分子型燃料電池(PEFC)や水素内燃機関が期待されている。
【0003】
これらのシステムでは、例えば、可燃性ガスである水素を燃料としているため、ガス漏れの検知が重要な課題の一つとして挙げられている。
この種の被検出雰囲気中に存在する可燃性ガスのガス濃度を演算(検出)する演算制御装置としての可燃性ガス検出装置では、被検出雰囲気内に配置されて、可燃性ガスの濃度に応じて自身の抵抗値が変化する発熱抵抗体や、環境温度に応じて抵抗値が変化する測温抵抗体を使用するものが知られている。
【0004】
具体的には、この可燃性ガス検出装置では、発熱抵抗体の抵抗値が、所定の複数の設定温度(例えば第1設定温度,第2設定温度の二つ)に対応した抵抗値となるように、ホイートストンブリッジ回路によって制御し、その時の発熱抵抗体、測温抵抗体の両端電圧に基づく検出信号を入力し、被検出雰囲気中の温度(環境温度)、湿度、可燃性ガスのガス濃度をマイクロコンピュータによって演算している。
【0005】
なお、被検出雰囲気中の可燃性ガスのガス濃度は、例えば、第1または第2設定温度時の発熱抵抗体に対応する検出信号の信号レベル(電圧レベル)から求められ、さらには、測温抵抗体の電圧レベルに対応する環境温度と、発熱抵抗体における第1および第2設定温度時の各電圧レベルの比に対応する湿度を用いて補正される。
【0006】
また、複数の設定温度(第1設定温度,第2設定温度等)は、ホイートストンブリッジ回路内に設置された抵抗値の異なる複数の固定抵抗体の導通状態を、マイクロコンピュータによって選択的に切り替えることによって変更される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4302611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の可燃性ガス検出装置では、上記複数の固定抵抗体のいずれもが有効に動作しない状態(つまり、上記複数の固定抵抗体のいずれもが非導通状態のまま)で電源が供給されると、ホイートストンブリッジ回路が適正に作動せず、発熱抵抗体に対応する電圧レベルがガス濃度を反映しない(ひいては設定温度を反映しない)おそれがあった。また、マイクロコンピュータの起動中に検出信号が入力されてしまい、マイコン動作が不安定になる可能性があり、さらには不安定な状態でガス濃度が演算されてしまう可能性があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、ホイートストンブリッジ回路とマイクロコンピュータとを備える演算制御装置において、装置全体の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載の演算制御装置は、ホイートストンブリッジ回路とマイクロコンピュータとを備える装置である。但し、ホイートストンブリッジ回路は、被検出雰囲気に晒されるとともに自身の温度変化により抵抗値が変化する検出抵抗部と、第1固定抵抗部と、第2固定抵抗部と、外部からの指令に基づいて自身を導通状態または非導通状態に切り替え可能な第3抵抗部とからなり、上記第1固定抵抗部と上記検出抵抗部、上記第2固定抵抗部と上記第3抵抗部をそれぞれ直列接続し、各直列回路(直列接続されてなる二つの直列回路)のうち、検出抵抗部及び第3抵抗部側を基準電位に接続し、第1及び第2固定抵抗部側を電源に接続することで構成されている。
【0011】
一方、マイクロコンピュータは、上記第3抵抗部を導通状態または非導通状態に切り替える指令を出力するとともに、上記検出抵抗部の両端電圧に基づく検出信号を入力し、その検出信号に基づいて、上記検出抵抗部が晒された被検出雰囲気内の環境を表す尺度を演算するように構成されている。
【0012】
本発明では、このように構成された演算制御装置において、電源からホイートストンブリッジ回路への電源供給を制御する電源制御回路を備え、マイクロコンピュータが、その電源制御回路を介してホイートストンブリッジ回路の作動を許可する作動許可手段を有し、作動許可手段にてホイートストンブリッジ回路の作動を許可する前又はその許可と同時に、第3抵抗部を非導通状態から導通状態に切り替える指令を出力する構成にした。
【0013】
つまり、本発明の演算制御装置では、マイクロコンピュータの作動許可手段によって許可されなければ、ホイートストンブリッジ回路が作動せず、さらに作動許可手段にてホイートストンブリッジ回路の作動を許可する前又はその許可と同時に第3抵抗部を非導通状態から導通状態に切り替えるようにしたので、マイクロコンピュータの起動中に制御電圧(検出抵抗部の両端電圧に基づく検出信号)が入力されずに済むことになる。つまり、マイクロコンピュータは、ホイートストンブリッジ回路が適正に動作した状態で検出抵抗部の両端電圧に基づく検出信号を入力することができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、マイクロコンピュータの動作が不安定な状態になったり、不安定な状態でマイクロコンピュータが被検出雰囲気内の環境を表す尺度を演算したりせずに済むので、当該演算制御装置の信頼性を高めることができ、環境を表す尺度の検出精度を高められる。
【0015】
なお、本発明の演算制御装置では、上記検出抵抗部として、例えば可燃性ガスの濃度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体を用いてもよいし、環境温度によって抵抗値が変化する測温抵抗体を用いてもよい。また、上記第1固定抵抗部または第2固定抵抗部は、一つの固定抵抗体で構成されてもよいし、複数の固定抵抗体で構成されてもよい。さらには、上記第3抵抗部は、一つの固定抵抗体を有して構成されてもよいし、複数の固定抵抗体を有して構成されてもよい。
【0016】
例えば、請求項2に記載のように、第3抵抗部は、並列接続された抵抗値の異なる複数の固定抵抗体と、これらの固定抵抗体のうちいずれか一つを有効に動作させる(詳細には、各固定抵抗体に接続され、各固定抵抗体を導通状態または非導通状態に切り替え可能な少なくとも一つ以上の)切替部とを含む。この場合、マイクロコンピュータが、第3抵抗部の抵抗値を選択的に変化させるように、各固定抵抗体を導通状態または非導通状態に切り替える指令を切替部に出力することにより、第3抵抗部の抵抗値に応じて予め設定された複数の設定温度のなかから、上記検出抵抗部の温度を選択的に変化させるように本発明の演算制御装置を構成する。
【0017】
つまり、このように構成された演算制御装置では、検出抵抗部の設定温度が選択的に切り替えられる構成であっても、ホイートストンブリッジ回路を適正に動作させられる。従って、検出抵抗部の設定温度を選択的に切り替える構成のもと、検出抵抗部からの出力に基づき被測定雰囲気内の環境を表す尺度を精度よく求めることができる。
【0018】
なお、検出抵抗部は、切替部を介して第3抵抗部を構成する各固定抵抗体のいずれか一つが通電することにより発熱し、導通状態(通電状態)にある固定抵抗体に応じた設定温度まで検出抵抗部の温度が上昇することになる。このため、第3抵抗部を構成する各固定抵抗体のいずれもが非導通状態(非通電状態)になると、検出抵抗部の温度は外部環境の温度に収斂することになる。
【0019】
ここで、一般的に上記複数の設定温度は、被測定雰囲気内の環境を表す尺度を求める際にホイートストンブリッジ回路の動作が安定する温度であり、外部環境の温度に比べてはるかに高い温度となる。よって、第3抵抗部が非通電状態から通電状態に切り替わって検出抵抗部が発熱し始めた直後は、僅かではあるが上記動作が不安定な状態となり、被測定雰囲気内の環境を表す尺度の検出精度が低下する可能性がある。
【0020】
これに対しては、請求項3に記載のように、作動許可手段にてホイートストンブリッジ回路の作動を許可する前又は該許可と同時にマイクロコンピュータが出力する指令を第1切替指令とし、この第1切替指令が、検出抵抗部の温度について、複数の設定温度のなかから最も高い設定温度に対応する値となるように第3抵抗部の抵抗値を変化させる指令であるとよい。
【0021】
この場合、比較的早く検出抵抗部の温度を通電時の安定した温度に到達させることができるため、被測定雰囲気内の環境を表す尺度の検出精度をより向上することができる。
また、請求項4に記載のように、被検出雰囲気は可燃性ガスが含まれるガス雰囲気であり、マイクロコンピュータは、被検出雰囲気内の環境を表す尺度として、可燃性ガスの濃度を演算するように本発明の演算制御装置を構成することができる。
【0022】
検出抵抗部が晒される被検出雰囲気が、可燃性ガスが含まれるガス雰囲気である場合には、第3抵抗部が非導通状態のままでホイートストンブリッジ回路に電源が供給されることがあると、検出抵抗部の抵抗値が大きく上昇して当該検出抵抗部の過昇温を招き、可燃性ガスへの着火が生じるおそれがある。しかしながら、本発明の演算制御装置を適用すれば、第3抵抗部が非導通状態のままでホイートストンブリッジ回路に電源が供給されることがないため、検出抵抗部を可燃性ガスが含まれるガス雰囲気に晒した場合にも着火の危険性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】可燃性ガス検出装置の全体構成図である。
【図2】可燃性ガス検出装置の主要部となるガス検出素子の構成を示す説明図である。
【図3】ガス濃度演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】ガス濃度を求める際に、温度設定を変化させる方法、及び高温時電圧,低温時電圧,温度電圧を検出するタイミングを示す第1の説明図である。
【図5】マイコンが起動する前に通電制御回路が作動した場合に、発熱抵抗体の温度がオーバーシュートする可能性を示す説明図である。
【図6】作動開始処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】ガス濃度を求める際に、温度設定を変化させる方法、及び高温時電圧,低温時電圧,温度電圧を検出するタイミングを示す第2の説明図である。
【図8】ガス検出素子の各部の配置を例示する第1の概略図である。
【図9】ガス検出素子の各部の配置を例示する第2の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された可燃性ガス検出装置1の全体構成図である。図2は、可燃性ガス検出装置1の主要部となるガス検出素子3の構成を示す説明図であり、(a)が平面図(但し、内部構成も一部示す)、(b)が(a)におけるA−A断面図である。
【0025】
[全体構成]
可燃性ガス検出装置1は、熱伝導式のガス検出素子3を用いて、可燃性ガスの濃度を検出するものであり、例えば、燃料電池自動車の客室内に設置され、水素の漏れを検出する目的等に用いられる。
【0026】
図1に示すように、可燃性ガス検出装置1は、ガス検出素子3(図2参照)を駆動制御する制御回路5と、制御回路5の動作を制御する通電信号(作動許可信号S1)や切替信号CG1等を生成するとともに、制御回路5から得られる検出信号V1,VTに基づいて、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスのガス濃度を演算する処理(ガス濃度演算処理)等の各種処理を実行するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)7と、直流電源Vccから可燃性ガス検出装置1への電源供給経路を導通,遮断することで制御回路5,マイコン7を起動,停止する起動スイッチ9とを備えている。
【0027】
なお、制御回路5,マイコン7,起動スイッチ9は単一の回路基板上に構成され、この回路基板とは別体にガス検出素子3は構成されている。
[ガス検出素子]
次に、ガス検出素子3について説明する。
【0028】
図2に示すように、ガス検出素子3は、平板形状(平面視四角形状)の基部30を備え、基部30の一方の面(以下「表面」という)には、複数の電極31が形成され、他方の面(以下「裏面」という)には、基部30の中心付近に、基部30の一方の方向に沿って一つの凹部301が形成されている。
【0029】
なお、ガス検出素子3は、縦横ともに数mm(例えば3mm×3mm)程度の大きさであり、例えば、マイクロマシニング技術を用いて製造される。
電極31は、基部30の一方の辺(図2(a)中では下方の辺)に沿って配置された二つの電極311,312(以下「第1電極群」ともいう)と、他方の辺(図2(a)中では上方の辺)に沿って配置された二つの電極314,315(以下「第2電極群」ともいう)とからなる。これらのうち、電極312,315を、以下ではグランド電極ともいう。また、電極31を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
【0030】
基部30は、シリコン製の基板32と、基板32の一方の面に形成された絶縁層33とからなり、絶縁層33が部分的(ここではほぼ正方形)に露出するように基板32の一部を除去することで凹部301が形成されたダイアフラム構造をなしている。つまり、基部30では、絶縁層33側(基板32が除去されていない方)が基部30の表面となり、基板32側(基板32の一部が除去されている方を含む)が基部30の裏面となる。
【0031】
絶縁層33には、凹部301により基部30の裏面に露出した部位に、渦巻き状配線された線状の発熱抵抗体34が埋設されているとともに、第2電極群314,315が形成された側の基部30の一辺に沿って、温度測定に用いる測温抵抗体35が埋設されている。つまり、発熱抵抗体34は、絶縁層33にて測温抵抗体35よりも中央側の領域に配置され、測温抵抗体35は、絶縁層33の縁を形成する四辺のうちの一辺に沿った領域に配置されている。
【0032】
なお、絶縁層33は、単一の材料で形成されてもよいし、異なる材料を用いて複数層を成すように形成されてもよい。また、絶縁層33を構成する絶縁性材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)や窒化珪素(Si3N4)が用いられる。
【0033】
発熱抵抗体34は、自身の温度変化により抵抗値が変化する導電性材料からなり、また、測温抵抗体35は、電気抵抗が温度に比例して変化(本実施形態では、温度の上昇に伴って抵抗値が増大)する導電性材料からなる。但し、発熱抵抗体34および測温抵抗体35は、いずれも同じ抵抗材料、本実施形態では白金(Pt)で形成されている。
【0034】
そして、発熱抵抗体34は、発熱抵抗体34が形成された平面と同じ平面に埋設された配線36、および配線膜37を介して第1電極群311,312に接続され、測温抵抗体35は、測温抵抗体35が形成された平面と同じ平面に埋設された配線膜(図示せず)を介して第2電極群314,315に接続されている。
【0035】
なお、配線36や配線膜37を構成する材料としては、発熱抵抗体34および測温抵抗体35と同じ抵抗材料が用いられている。また、基部30の表面に形成される電極31と基部30(絶縁層33)の内部に形成される配線膜37とはコンタクトホール(接続導体)によって接続される。
【0036】
つまり、発熱抵抗体34は、一端が電極311、他端がグランド電極312と導通し、測温抵抗体35は、一端が電極314、他端がグランド電極315と導通するように接続されている。
【0037】
このように構成されたガス検出素子3は、被検出雰囲気(本実施形態では可燃性ガスが含まれるガス雰囲気)内に晒すように配置した状態で使用される。
[制御回路]
次に、制御回路5の構成について説明する。
【0038】
図1に示すように、制御回路5は、発熱抵抗体34への通電制御を行い、発熱抵抗体34の両端電圧に対応する検出信号V1を出力する通電制御回路50と、測温抵抗体35への通電を行い、被検出雰囲気の温度を表す温度検出信号VTを出力する温度調整回路80とを備えている。
【0039】
[通電制御回路]
通電制御回路50は、発熱抵抗体34を含んで構成されたブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)51と、ブリッジ回路51で検出される電位差を増幅する増幅回路53と、増幅回路53の出力に従って、ブリッジ回路51に流れる電流を増減調整する電流調整回路55と、ブリッジ回路51への電源供給を制御するスイッチング回路57とを備えている。
【0040】
スイッチング回路57は、ブリッジ回路51に直流電源Vccを供給する電源ラインと電流調整回路55の通電状態を変化させる制御ラインCL1とに接続され、マイコン7からの作動許可信号S1に従ってオン,オフ動作するトランジスタからなり、このトランジスタがオンしている所定期間、起動信号S11を制御ラインCL1に出力するように構成されている。なお、トランジスタがオンする所定期間(以下「起動期間」ともいう)は、後述する調整信号Cの出力を妨げないように予め設定されている。
【0041】
電流調整回路55は、上記電源ラインとブリッジ回路51とに接続され、制御ラインCL1を流れる信号に従って通電状態(オン抵抗)が変化するトランジスタからなる。具体的には、スイッチング回路57の出力である起動信号S11に従って、ブリッジ回路51へ電流供給を開始する。そして、ブリッジ回路51への電流供給が開始されると、増幅回路53の出力である調整信号Cに従って、調整信号Cが大きいほど、オン抵抗が大きくなって、ブリッジ回路51に流れる電流が減少し、逆に、調整信号が小さいほど、オン抵抗が小さくなって、ブリッジ回路51に流れる電流が増大するように構成されている。
【0042】
増幅回路53は、演算増幅器531と、演算増幅器531の反転入力端子および非反転入力端子のそれぞれに接続された固定抵抗体532,533と、演算増幅器531の反転入力端子と出力端子との間に並列接続された固定抵抗体534,およびコンデンサ535とによって構成された周知の差動増幅回路からなる。
【0043】
つまり、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より大きい場合に、増幅回路53の出力である調整信号Cが大きくなり(ひいては、ブリッジ回路51に流れる電流が減少し)、逆に、非反転入力端子の入力電圧が反転入力端子の入力電圧より小さい場合に、調整信号Cが小さくなる(ひいては、ブリッジ回路51に流れる電流が増大する)ように構成されている。
【0044】
ブリッジ回路51は、発熱抵抗体34および2個の固定抵抗体511,512、抵抗値を切り替え可能な切替抵抗部52からなり、固定抵抗体511と発熱抵抗体34、固定抵抗体512と切替抵抗部52をそれぞれ直列接続し、各直列回路のうち、発熱抵抗体34および切替抵抗部52側の各端部PGを接地(つまり、基準電位であるグランド電位に接続)し、固定抵抗体511,512側の各端部を電源側(電流調整回路55)に接続することで構成されている。
【0045】
そして、固定抵抗体511と発熱抵抗体34との接続点P+は、固定抵抗体532を介して演算増幅器531の非反転入力端子に接続され、固定抵抗体512と切替抵抗部52との接続点P−は、固定抵抗体533を介して演算増幅器531の反転入力端子に接続されている。さらに、接続点P+の電位を、検出信号V1としてマイコン7に供給するように構成されている。
【0046】
また、切替抵抗部52は、抵抗値の異なる2個の固定抵抗体521,522と、マイコン7からの切替信号CG1に従って、固定抵抗体521,522のいずれか一方を有効に動作させる切替スイッチ523とからなり、切替スイッチ523により切替抵抗部52の抵抗値を切り替えることで、ブリッジ回路51のバランスを変化させることができるように構成されている。
【0047】
但し、切替スイッチ523は、固定抵抗体512と各固定抵抗体521,522とをそれぞれ接続するための2つのスイッチ524,525からなり、これらの各スイッチ524,525のいずれか一方をオンに動作させるときに、他方をオフに動作させるように構成され、さらには、このオン/オフ動作を交互に切り替える際に、いずれの固体抵抗体521,522も通電しない非通電状態を経た後に切り替える構造を有したものである。
【0048】
なお、固定抵抗体521は、発熱抵抗体34が第1設定温度CH(例えば、400℃)となる抵抗値を有し、固定抵抗522は、発熱抵抗体34が第1設定温度CHより低く設定された第2設定温度CL(例えば、300℃)となる抵抗値を有する。
【0049】
このように構成された通電制御回路50では、スイッチング回路57が起動期間だけオンすることによりブリッジ回路51への通電を開始すると、増幅回路53および電流調整回路55は、接続点P+,P−間に生じる電位差がゼロになるようにブリッジ回路51に流れる電流を調整する。これにより、発熱抵抗体34の抵抗値(ひいては温度)が、切替抵抗部52によって決まる一定値(ひいては第1設定温度CHまたは第2設定温度CL)に制御される。
【0050】
具体的には、被検出雰囲気中の可燃性ガスの含有量が変化し、発熱抵抗体34が発生させる熱量より、可燃性ガスによって奪われる熱量が大きくなった場合には、発熱抵抗体34の温度が低下することによって、発熱抵抗体34の抵抗値が減少する。逆に、発熱抵抗体が発生させる熱量より、可燃性ガスによって奪われる熱量が小さくなった場合には、発熱抵抗体34の温度が上昇することによって、発熱抵抗体34の抵抗値が増大する。
【0051】
これに対して、増幅回路53および電流調整回路55は、発熱抵抗体34の抵抗値が減少すると、ブリッジ回路51に流れる電流、ひいては発熱抵抗体34が発生させる熱量を増大させ、逆に、発熱抵抗体34の抵抗値が増大すると、ブリッジ回路51に流れる電流、ひいては発熱抵抗体34が発生させる熱量を減少させることで、発熱抵抗体34の抵抗値(ひいては温度)を一定の大きさに保つ。
【0052】
つまり、接続点P+の電位を表す検出信号V1からは、発熱抵抗体34に流れる電流の大きさ、即ち、発熱抵抗体34の温度(抵抗値)を一定に保つために必要な熱量(さらには、可燃性ガスによって奪われる熱量)がわかり、その熱量はガス濃度に応じた大きさとなるため、検出信号V1から可燃性ガスのガス濃度がわかることになる。なお、詳細には、ガス濃度を算出する際に、被検出雰囲気内の湿度Hを用いて補正するが、これについては後述の「ガス濃度演算処理」にて説明する。
【0053】
[温度測定回路]
次に、温度調整回路80は、測温抵抗体35を含んで構成されたブリッジ回路(ホイー
ストーンブリッジ)81と、ブリッジ回路81から得られる電位差を増幅する増幅回路83とを備えている。
【0054】
増幅回路83は、演算増幅器831と、演算増幅器831の反転入力端子および非反転入力端子のそれぞれに接続された固定抵抗体832,833と、演算増幅器831の反転入力端子と出力端子との間に並列接続された固定抵抗体834,コンデンサ835によって構成された周知の差動増幅回路からなる。
【0055】
ブリッジ回路81は、測温抵抗体35および3個の固定抵抗体811,812,813からなり、固定抵抗体811と測温抵抗体35、固定抵抗体812と固定抵抗体813をそれぞれ直列接続し、各直列回路のうち、測温抵抗体35および固定抵抗体813側の各端部を接地し、固定抵抗体811,812側の各端部を電源に接続することで構成されている。
【0056】
そして、固定抵抗体811と測温抵抗体35との接続点P−が固定抵抗体833を介して演算増幅器531の反転入力端子に接続され、固定抵抗体812と固定抵抗体813との接続点P+が固定抵抗体832を介して演算増幅器831の非反転入力端子に接続されている。また、演算増幅器831の出力を温度検出信号VTとしてマイコン7に供給するように構成されている。
【0057】
測温抵抗体35は、ガス検出素子3が晒される被検出雰囲気(ガス雰囲気)の温度が、予め設定された基準温度の時に、温度検出信号VTが基準値となるように設定される。
そして、被検出雰囲気の温度変化に伴って、測温抵抗体35の抵抗値が変化することにより、基準温度との差に応じた電位差が生じ、この電位差を増幅したものが温度検出信号VTとして出力される。
【0058】
なお、ガス検出素子3と制御回路5との接続において、ガス検出素子3の各電極31(311,312,314,315)は、電極311が通電制御回路50の接続点P+に、電極314が温度調整回路80の接続点P−に、グランド電極312,315が制御回路5の共通のグランドラインに接続される。
【0059】
[マイコン]
マイコン7は、ガス濃度演算処理等を実行するための各種のプログラムやデータを格納する記憶装置(ROM,RAM等)、この記憶装置に記憶されたプログラムを実行するCPU、各種信号を入出力するためのIOポート、計時用タイマー等を備えた周知のものである。
【0060】
ここで、第1設定温度(400℃)の時に検出される検出信号V1の信号レベルを高温時電圧VH1、第2設定温度(300℃)時に検出される検出信号V1の信号レベルを低温時電圧VL1、温度調整回路80から読み込んだ温度検出信号VTの信号レベルを温度電圧VLというものとする。
【0061】
そして、記憶装置には、被検出雰囲気内の環境温度Tと温度電圧VTとの相関関係を表す温度換算データ、被検出雰囲気内の湿度Hと高温時電圧VH1,低温時電圧VL1,温度電圧VTとの相関関係を表す湿度換算データ、高温時電圧VH1または低温時電圧VL1と可燃性ガスのガス濃度Xとの相関関係を表す濃度換算データが少なくとも記憶されている。なお、各換算データは、具体的には、換算用マップデータや換算用計算式等からなり、実験等により得られたデータに基づいて予め作成されたものである。
【0062】
また、湿度換算データには、環境温度T(ひいては温度電圧VT)と後述する電圧比V
C(0)との相関関係を表す電圧比換算用マップデータ、後述する電圧比差ΔVCと湿度Hとの相関関係を表す湿度換算用マップデータが含まれている。さらに、濃度換算データには、温度電圧VTと後述する高温時電圧VH1(0)との相関関係を表す高温時電圧換算用マップデータ、高温時電圧VH1および湿度Hと後述する高温時電圧変化ΔVH1(H)との相関関係を表す湿度電圧変化換算用マップデータ、温度電圧VTおよび高温時電圧VH1と後述するガス感度G(VT)との相関関係を表すガス感度換算用マップデータが含まれている。
【0063】
[ガス濃度演算処理]
ここで、マイコン7のCPUが実行するガス濃度演算処理を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0064】
なお、マイコン7のCPUは、制御回路5の作動を許可する作動許可処理(後述する)を実行し、この処理の実行終了後に、ガス濃度演算処理を開始する。
本処理(ガス濃度演算処理)が実行されると、まず、S110では、通電制御回路50から低温時電圧VL1,高温時電圧VH1を取得するとともに、温度調整回路80から温度電圧VTを取得する。
【0065】
具体的には、切替信号CG1によりブリッジ回路51の抵抗値、即ち、発熱抵抗体34の設定温度を、一定時間TWの間(以下「低温測定期間」という)、第2設定温度CLに保持した後、設定を切り替えて、再び一定時間TWの間(以下「高温測定期間」という)、第1設定温度CHに保持する制御を行う(図4参照)。
【0066】
つまり、切替スイッチ523の各スイッチ524,525のオン/オフ動作を一定時間TW毎に交互に切り替えるオン/オフ制御を行うことにより、発熱抵抗体34の設定温度を第1設定温度CHと第2設定温度CLとに交互に切り替えるようにしている。
【0067】
また、これと並行して、低温測定期間中に低温時電圧VL1、高温測定期間中に高温時電圧VH1、両期間のいずれかのタイミングで温度電圧VTを検出する。なお、一定時間TWは、例えば、温度設定を切り替えた後、検出信号V1の出力が十分に安定するのに要する時間以上であればよく、10ms〜数百ms(例えば200ms)に設定される。
【0068】
そして、S120では、S110にて取得した低温時電圧VL1,高温時電圧VH1を次式(1)の入力値として、電圧比VCを算出する。
VC=VH1/VL1…(1)
また、これと並行して、S130では、S110にて取得した温度電圧VTと、電圧比換算用マップデータとに基づいて、環境温度T(ひいては温度電圧VT)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの電圧比VC(0)を算出する。
【0069】
そして、S140では、S120にて算出した電圧比VCと、S130にて算出したVC(0)とを次式(2)の入力値として、環境温度T(ひいては温度電圧VT)における電圧比差ΔVCを算出する。
【0070】
ΔVC=VC−VC(0)…(2)
次に、S150では、S140にて算出した電圧比差ΔVCと、湿度換算用マップデータとに基づいて、電圧比差ΔVCのときの湿度Hを算出する。
【0071】
また、これと並行して、S160では、S110にて取得した高温時電圧VH1,温度電圧VTと、高温時電圧換算用マップデータとに基づいて、環境温度T(ひいては温度電圧VT)においてガス濃度X、及び、湿度Hがゼロのときの高温時電圧VH1(0)を算
出する。
【0072】
続いて、S170では、S110にて取得した高温時電圧VH1、およびS150にて算出した湿度Hと、湿度電圧変化換算用マップデータとに基づいて、高温時電圧VH1のうち湿度Hによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH1(H)を算出する。
【0073】
そして、S180では、S110にて取得した高温時電圧VH1と、S160にて算出した高温時電圧VH1(0)と、S170にて算出した高温時電圧変化ΔVH1(H)とを次式(3)の入力値として、高温時電圧VH1のうち可燃性ガスによってもたらされた電圧変化分を表す高温時電圧変化ΔVH1(G)を算出する。
【0074】
ΔVH1(G)=VH1−VH1(0)−ΔVH1(H)…(3)
また、これと並行して、S190では、S110にて取得した高温時電圧VH1,温度電圧VTと、ガス感度換算用マップデータとに基づいて、高温時電圧VH1について環境温度T(ひいては温度電圧VT)毎に予め設定された可燃性ガスに対する感度(単位はガス濃度Xの逆数)を表すガス感度G(VT)を算出する。
【0075】
最後に、S200では、S180にて算出した高温時電圧変化ΔVH1(G)と、S190にて算出したガス感度G(VT)とを次式(4)の入力値として、可燃性ガスのガス濃度Xを算出し、S110に戻る。
【0076】
X=ΔVH1(G)/G(VT)…(4)
このように、本処理では、切替スイッチ523の各スイッチ524,525のオン/オフ動作を一定時間TW毎に交互に切り替えるオン/オフ制御を行うことにより、固定抵抗体512と切替抵抗部52との接続点P−から端部PG(切替抵抗部52における接地側端部)への通電経路(切替抵抗部52における通電経路)を、固定抵抗体521,522のいずれか一方側から他方側に切り替え、これにより低温時電圧VL1,高温時電圧VH1を取得する。そして、切替抵抗部52における通電経路を切り替えることで取得した低温時電圧VL1,高温時電圧VH1を用いて、被検出雰囲気中の湿度Hならびに可燃性ガスのガス濃度Xを算出するようにしている。
【0077】
ところが、切替スイッチ523は、前述のように2つのスイッチ524,525のオン/オフ動作を交互に切り替えることが可能な構造を有しているため、切替抵抗部52における通電経路を一方側から他方側に切り替える際に、いずれの経路も通電しない非通電状態の期間(タイムラグ期間)を発生させることになる。このタイムラグ期間は、一定時間TWに対して微少な時間であるため、固定抵抗体511と発熱抵抗体34との接続点P+側に大電流が回り込むことで発熱抵抗体34の温度がオーバーシュートせずに済む。しかし、たまたまタイムラグ期間中に本処理を終了した場合に、次に直流電源Vccがオンされて、マイコン7が起動する前に、通電制御回路50が作動してしまうと、タイムラグ期間が増大することにより、発熱抵抗体34の温度(ひいては検出信号V1の信号レベル)がオーバーシュートしてしまい(図5参照)、可燃性ガス検出装置1の動作が不安定になる可能性がある。
【0078】
これを防止するために、マイコン7のCPUは、直流電源Vccがオンされると、ガス濃度演算処理を開始する前に、以下の作動許可処理を行うこととした。
[作動許可処理]
すなわち、図6に示すように、マイコン7のCPUは、起動スイッチ9がオンされることによって直流電源Vccからマイコン7(および制御回路5)に給電されると(S210)、マイコン7内の各部を初期化することで起動して(S220)、作動許可処理を開始する。
【0079】
S220の処理に次いで、切替スイッチ523に切替信号CG1を出力することで、共に非通電状態(オフの状態)にある切替スイッチ523の各スイッチ524,525のうち、切替スイッチ523の各スイッチ524,525の一方をオンに動作させ、他方をオフに動作させ(S230)、これにより、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のいずれか一方(予め選択するように設定された方)を導通状態に切り替えるとともに、他方を非導通状態に切り替える(S240)。つまり、切替抵抗部52において予め選択するように設定された方の固定抵抗体を非導通状態から導通状態に切り替えることにより、その固定抵抗体を有効に動作させるようにしておく。なお、このときに切替スイッチ523に出力される切替信号CG1が第1切替指令に相当する。
【0080】
そして、スイッチング回路57に作動許可信号S1を出力することで、通電制御回路50の作動(ひいてはブリッジ回路51の作動)を許可し(S250)、本処理を終了し、前述のガス濃度演算処理を開始する。なお、S260による通電制御回路50の作動の許可により、発熱抵抗体34への通電が開始されることになる。
【0081】
[効果]
以上、説明したように、本実施形態の可燃性ガス検出装置1では、直流電源Vccがオンされると、マイコン7が起動して作動許可処理を実行することにより、通電制御回路50(および温度調整回路80)の作動が許可される。
【0082】
したがって、本実施形態の可燃性ガス検出装置1によれば、マイコン7の起動中、あるいは切替抵抗部52の固定抵抗体521,522のいずれもが非導通状態のときに、通電制御回路50が作動を開始してしまうことを防止でき、これにより、発熱抵抗体34の温度がオーバーシュートしてしまうことを防止できる。
【0083】
また、可燃性ガス検出装置1では、マイコン7が作動許可処理の実行後にガス濃度演算処理を行うので、マイコン7の起動後、且つ、切替抵抗部52の固定抵抗体521,522のいずれかが導通状態のときに、各種の制御電圧(高温時電圧VH1,低温時電圧VL1,温度電圧VT)を検出でき、これにより、マイコン7が誤った演算値を出力してしまうことを防止することができる。
【0084】
さらには、可燃性ガス検出装置1では、ガス濃度演算処理にて、高温時電圧VH1,低温時電圧VL1から湿度H、温度電圧VTから環境温度Tをそれぞれ算出し、これら湿度Hおよび環境温度Tを用いて、被検出雰囲気内のガス濃度Xを算出(補正)しているので、精度よくガス濃度Xを求めることができる。
【0085】
[特許請求の範囲との対応関係]
なお、本実施形態において、発熱抵抗体34が検出抵抗部、固定抵抗体511が第1固定抵抗体、固定抵抗体512が第2固定抵抗体、固定抵抗体521,522が第3抵抗部の固定抵抗体、スイッチング回路57が電源制御回路、作動許可処理のS250が作動許可手段、切替スイッチ523の各スイッチ524,525が切替部に相当する。
【0086】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態の可燃性ガス検出装置1は、本発明の演算制御装置の一例にすぎず、必ずしも温度調整回路80を構成要素とするまでもなく、被検出雰囲気内のガス濃度を演算することができる。
【0088】
また、上記実施形態の可燃性ガス検出装置1は、湿度を算出するために(換言すれば、ガス濃度の検出精度を上げるために)、切替抵抗部52が二つの固定抵抗体521,522のいずれか一つを有効に動作させるように構成されているが、切替抵抗部52が固定抵抗体521,522のいずれか一つだけを備え、その固定抵抗体の状態を導通状態または非導通状態に切り替えるように構成されてもよい。
【0089】
さらには、本発明の演算制御装置を、ガス濃度ではなく、被検出雰囲気内の湿度Hだけを検出対象とする湿度検出装置に適用してもよい。なお、湿度検出装置に適用する場合には、温度調整回路80が不要となる。
【0090】
また、上記実施形態の作動許可処理では、切替スイッチ523に切替信号CG1を出力(S230)した後に、ブリッジ回路51の作動を許可するための作動許可信号S1を出力(S250)しているが、これに限らず、これらの切替信号CG1と作動許可信号S1を同時に出力してもよい。この場合、作動許可処理を短縮でき、すみやかにガス濃度演算処理を開始することができる。
【0091】
また、上記実施形態の作動許可処理では、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のいずれか一方を導通状態に切り替えるとともに、他方を非導通状態に切り替えることとしているが、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のうち、始めに導通状態に切り替えられる方を予め決めておいてもよい。
【0092】
例えば、発熱抵抗体34は、切替スイッチ523の各スイッチ524,525を介して切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のいずれか一つが通電することにより発熱し、通電状態にある固定抵抗体に応じた設定温度まで発熱抵抗体34の温度が上昇することになる。このため、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のいずれもが非導通状態(非通電状態)になると、発熱抵抗体34の温度は環境温度Tに収斂することになる。
【0093】
ここで、第1設定温度(400℃)及び第2設定温度(300℃)は、可燃性ガスのガス濃度Xを求める際に通電制御回路50の動作が安定する温度であり、環境温度Tに比べてはるかに高い温度となる。よって、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のいずれか一つが非通電状態から通電状態に切り替わって発熱抵抗体34が発熱し始めた直後は、僅かではあるが上記動作が不安定な状態となり、可燃性ガスのガス濃度Xの検出精度が低下する可能性がある。
【0094】
これに対しては、作動許可処理では、図7に示すように、切替抵抗部52における固定抵抗体521,522のうち、発熱抵抗体34が高温側の設定温度である第1設定温度(400℃)となる方の固定抵抗体521を導通状態に切り替えるとともに、他方の固定抵抗体522を非導通状態に切り替えるように予め決めておくとよい。
【0095】
この場合、比較的早く発熱抵抗体34の温度を通電時の安定した温度に到達させることができるため、可燃性ガス検出装置1の起動直後の可燃性ガスのガス濃度Xの検出精度をより向上させることができる。
【0096】
ところで、上記実施形態の可燃性ガス検出装置1では、ガス検出素子3において、測温抵抗体35が絶縁層33の縁を形成する四辺のうちの一辺に沿った領域に配置されているが、これに限定されるものではなく、例えば図8に示すように、ガス検出素子3を平面視した状態で、測温抵抗体35が、絶縁層33の縁における三辺に沿った領域(発熱抵抗体34を囲う領域)に配置されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態の可燃性ガス検出装置1では、第1電極群311,312と第2電極群314,315とが基部30の表面上において互いに対向する辺に沿って配置されているが、これに限定されるものではなく、例えば図8に示すように、第1電極群311,312と第2電極群314,315とが基部30の表面の縁における同一辺に沿った領域に配置されてもよい。
【0098】
つまり、図8に示すガス検出素子3における各部の配置構成では、上記実施形態と比較して、測温抵抗体35の配置領域をより広く確保することが可能になるため、測温抵抗体35の長さを所望範囲の抵抗値が得られる長さに設計し易くなり、設計の自由度をより向上することができ、また、温度の検出精度を高めることもできる。
【0099】
また、図8に示すガス検出素子3における各部の配置構成では、第1電極群311,312および第2電極群314,315とガス検出素子3の外部に設けられた入出力回路(例えば、回路基板)との接続が容易になるため、配線構造を単純化することが可能となり、ひいては、可燃性ガス検出装置1全体の小型化を図ることができる。
【0100】
なお、ガス検出素子3における各部の配置構成は、図8に示す構成に限らず、例えば図9(a)に示すように、第1電極群311,312と第2電極群314,315とが基部30上において互いに対向する辺に沿って配置され、且つ、測温抵抗体35が基部30上の縁における三辺に沿った領域(発熱抵抗体34および第1電極群311,312を囲う領域)に配置されてもよい。
【0101】
また、ガス検出素子3における各部の配置構成は、例えば図9(b)に示すように、測温抵抗体35が基部30上の縁において連接する二辺に沿った領域(発熱抵抗体34および第1電極群311,312を囲う領域)に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…可燃性ガス検出装置、3…ガス検出素子、5…制御回路、7…マイコン、9…起動スイッチ、34…発熱抵抗体、35…測温抵抗体、50…通電制御回路、51…ブリッジ回路、52…切替抵抗部、55…電流調整回路、57…スイッチング回路、80…温度調整回路、81…ブリッジ回路、87…スイッチング回路、511,512,521,522…固定抵抗体、523…切替スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出雰囲気に晒されるとともに自身の温度変化により抵抗値が変化する検出抵抗部と、第1固定抵抗部と、第2固定抵抗部と、少なくとも一つ以上の固定抵抗体を含む第3抵抗部であって、外部からの指令に基づいて自身を導通状態または非導通状態に切り替え可能な第3抵抗部とからなり、前記第1固定抵抗部と前記検出抵抗部、前記第2固定抵抗部と前記第3抵抗部をそれぞれ直列接続し、該直列接続されてなる二つの直列回路のうち、前記検出抵抗部及び前記第3抵抗部側を基準電位に接続し、前記第1及び第2固定抵抗部側を電源に接続することで構成されたホイートストンブリッジ回路と、
前記第3抵抗部を導通状態または非導通状態に切り替える前記指令を出力するとともに、前記検出抵抗部の両端電圧に基づく検出信号を入力し、該検出信号に基づいて、前記被検出雰囲気内の環境を表す尺度を演算するマイクロコンピュータと、
を備える演算制御装置であって、
前記電源から前記ホイートストンブリッジ回路への電源供給を制御する電源制御回路を備え、
前記マイクロコンピュータは、前記電源制御回路を介して前記ホイートストンブリッジ回路の作動を許可する作動許可手段を有し、該作動許可手段にて前記ホイートストンブリッジ回路の作動を許可する前又は該許可と同時に、前記第3抵抗部を非導通状態から導通状態に切り替える前記指令を出力することを特徴とする演算制御装置。
【請求項2】
前記第3抵抗部は、並列接続された抵抗値の異なる複数の固定抵抗体と、該各固定抵抗体に接続され、該各固定抵抗体を導通状態または非導通状態に切り替え可能な少なくとも一つ以上の切替部を含み、
前記マイクロコンピュータは、前記第3抵抗部の抵抗値を選択的に変化させるように、該各固定抵抗体を導通状態または非導通状態に切り替える前記指令を前記切替部に出力することにより、前記第3抵抗部の抵抗値に応じて予め設定された複数の設定温度のなかから、前記検出抵抗部の温度を選択的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の演算制御装置。
【請求項3】
前記作動許可手段にて前記ホイートストンブリッジ回路の作動を許可する前又は該許可と同時に前記マイクロコンピュータが出力する前記指令を第1切替指令とし、
該第1切替指令は、前記検出抵抗部の温度について、前記複数の設定温度のなかから最も高い設定温度に対応する値となるように前記第3抵抗部の抵抗値を変化させる指令であることを特徴とする請求項2に記載の演算制御装置。
【請求項4】
前記被検出雰囲気は、可燃性ガスが含まれるガス雰囲気であり、
前記マイクロコンピュータは、前記被検出雰囲気内の環境を表す尺度として、前記可燃性ガスの濃度を演算することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の演算制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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