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潜像印刷物
説明

潜像印刷物

【課題】 本発明は、真偽判別機能を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等の貴重印刷物の分野において、特に、観察角度を変えることによって出現する潜像画像が、さらに異なる画像に変化する効果を付与した潜像印刷物に関する。
【解決手段】 入射する光の角度の変化に応じて、2つの異なる潜像画像がチェンジする効果を有する潜像印刷物であり、2つの潜像画像は、1本の画線の右側面に施された切れ込みで一つの潜像画像、左側面に施された切れ込みでもう一つの潜像画像が形成されて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真偽判別機能を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等の貴重印刷物の分野において、特に、観察角度を変えることによって出現する潜像画像が、さらに異なる画像に変化する効果を付与した潜像印刷物に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキ又は塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって一般的な印刷方法で形成可能であって、ホログラムと同様な画像変化を実現した偽造防止用印刷物が出現している。
【0004】
この中でも、単色刷りで形成可能なコストパフォーマンスに優れた印刷物であって、画線角度や画線高さの異なる盛り上がりを有する画線によって印刷画像を形成することで、印刷物が光を強く反射した正反射光下の観察において、二つ以上の潜像画像がチェンジして観察される効果を有する偽造防止用印刷物がある。
【0005】
本出願人は、盛り上がりのある万線状の画線によって、それぞれ異なる角度で形成されたメッセージ画線と背景画線を含んだ第一の画像と第二の画像が、短冊状に分割されて形成されて成る情報担持体であって、入射する光の角度に応じて全く別の情報に変化する情報担持体に係る発明を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、本出願人は、高光沢インキによって形成した凸形状の光沢凸形状画線群を、画線幅方向に対してn個以上(nは2以上の整数)の領域に分割し、それぞれの領域に高さの異なる段差を設けることで、入射する光の角度の変化によって、同一の場所に複数の異なる潜像を発現させる潜像印刷物に係る発明を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−280114号公報
【特許文献2】特許第4682283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の印刷物は、その画線構成が複雑であり、画線設計上の多くの制約や注意点があった。例えば、特許文献1の印刷物を形成する最も効果的な印刷方式であるスクリーン印刷では、紗と感光性樹脂に焼き付けられた画線が干渉することで、版面上でモアレが発生する。このモアレは、スクリーン印刷物上に濃淡として現れることから、画線角度は紗の角度と干渉しない値に設計する必要がある。特許文献1の技術のように一つの印刷領域の中に4つの異なる角度の画線を形成する場合、それぞれの画線が紗と角度が近い値にならないように画線設計にあたっては細心の注意を払う必要があった。また、細心の注意を払って印刷物を作製したとしても、目視で視認されてしまうモアレが発生する場合があった。
【0009】
一般的に、本発明、特許文献1及び特許文献2に記載の印刷物のように、入射した光を盛り上がりのある画線が反射して潜像画像を可視化する技術においては、入射した光を反射する画線表面は、画線の盛り上がりの頂点を中心にして片側2分の1の表面だけであり、出現する一つの画像の解像度は2分の1となるのが通例である。例えば、印刷物に右側から光が入射した場合、画線の盛り上がりを中心にして画線表面の右側のみが光を反射し、画線表面の左側は光を反射しないため、一つの画像の解像度は2分の1となる。しかし、特許文献1に記載の技術では、さらにこれに加えて、短冊状に二つの画像が交互に配置されていることから、解像度がさらに2分の1に間引かれ、合計の潜像画像の解像度は4分の1にまで低下する。そのために、表現可能な画像は低解像度の単純な画像に限定されるという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の印刷物は、潜像画像を表現する段差の安定した形成が難しく、実際の製造においては再現性に乏しいという問題があった。例えば、特許文献2の技術をスクリーン印刷で形成する場合、段差の領域だけ周囲より網点面積率を数十パーセント下げ、版面を通って用紙に転移するインキの量を少なくすることで段差を形成する。しかし、そもそもスクリーン印刷とは、基本的に画線の「有り」か「無し」かによって2値画線を形成するのに適した印刷方式であることから、網点面積率に応じた微妙な高さを再現することには適していない。よって、印刷環境や使用する印刷材料等の諸因子のわずかな変化によって、段差の高さが大きく左右され、安定した品質を維持することが困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、入射する光の角度の変化に応じて2つの異なる画像がチェンジする効果を有する印刷物であって、高い解像度の画像も再現可能であって、作製も容易であり、かつ、再現性も高い潜像印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における潜像印刷物は、基材の少なくとも一部に、印刷画像を備え、印刷画像は、第一の有意情報を含む第一の画像及び第二の有意情報を含む第二の画像を有し、第一の画像は、第一の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、複数の第一の画線は、第一の背景画線及び所定の角度を有する第一の切れ込みが形成されている第一の潜像画線の組合せから成る第一の画線を少なくとも有して成り、第二の画像は、第二の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、複数の第二の画線は、第二の背景画線及び所定の角度を有する第二の切れ込みが形成されている第二の潜像画線の組合せから成る第二の画線を少なくとも有して成り、第一の画線及び第二の画線は、盛り上がり、かつ、明暗フリップフロップ性を有し、第一の画線と第二の画線は、第一の切れ込みと第二の切れ込みが、同じ位置に配置されないように隣接して成り、第一の切れ込みの方向から光が入射した場合には、第一の潜像画線と第一の背景画線の反射光量の差により第一の有意情報が視認でき、第二の切れ込みの方向から光が入射した場合には、第二の潜像画線と第二の背景画線の反射光量の差により第二の有意情報が視認できることを特徴とする。
【0013】
本発明における潜像印刷物は、基材の少なくとも一部に、印刷画像を備え、印刷画像は、第一の有意情報を含む第一の画像、第二の有意情報を含む第二の画像及び中心画像を有し、第一の画像は、第一の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、複数の第一の画線は、第一の背景画線及び所定の角度を有する第一の切れ込みが形成されている第一の潜像画線の組合せから成る第一の画線を少なくとも有して成り、中心画像は、中心画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置して成り、第二の画像は、第二の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、複数の第二の画線は、第二の背景画線及び所定の角度を有する第二の切れ込みが形成されている第二の潜像画線の組合せから成る第二の画線を少なくとも有して成り、第一の画線、第二の画線及び中心画線は、盛り上がり、かつ、明暗フリップフロップ性を有し、第一の画線と第二の画線で、中心画線を挟んで隣接して成り、第一の切れ込みの方向から光が入射した場合には、第一の潜像画線と第一の背景画線の反射光量の差により第一の有意情報が視認でき、第二の切れ込みの方向から光が入射した場合には、第二の潜像画線と第二の背景画線の反射光量の差により第二の有意情報が視認できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の潜像印刷物は、入射する光の角度の変化に応じて、2つの異なる画像がチェンジする効果を有する。2つの画像は1本の画線の右側面と左側面に施された小さな切れ込みによって形成される。この画線構成はチェンジングを発現させる画線構成としては極めてシンプルであり、かつ、画線設計上の制約事項も少ないために、容易に画線を設計できる。例えば、本発明の潜像印刷物は基本的には画線の種類が1種類であり、モアレ発生の懸念がほとんどない。よって、画線角度や画線ピッチは設計者がほぼ自由に決定できる。
【0015】
本発明の潜像印刷物では、特許文献1に記載の技術のように二つの画像を短冊状に交互に配置する必要はないために、デザインに関する制約、特に解像度に関する制約が少なく、複雑な画像を表現することができる。加えて、二つの画像を形成する切れ込みの画線ピッチを細かく設計することで、より複雑な画像の表現にも対応できる。
【0016】
本技術では特許文献2よりも容易に製造することができる。本発明は、1本の画線の右側面と左側面に施された小さな切れ込みによって2つの画像が形成される。この切れ込み自体は、画線や画素を形成しない単純な非画線を設けることで形成することができ(いわゆる画線や画素の「有り」か「なし」かの違いで潜像画像を形成できる)、従来の技術のように画線高さを部分的に制御する必要がなく、容易に、安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態における本発明の潜像印刷物を示す説明図である。
【図2】実施の形態における印刷画像の説明図である。
【図3】実施の形態における第一の潜像画像と、第一の潜像画像を拡大した説明図である。
【図4】実施の形態における中心画像と、中心画像を拡大した説明図である。
【図5】実施の形態における第二の潜像画像と、第二の潜像画像を拡大した説明図である。
【図6】実施の形態における印刷画像の画線構成の拡大図である。
【図7】実施の形態における印刷画像の画線構成を拡大して斜め方向から視認した図である。
【図8】実施の形態における印刷画像の画線構成の拡大図である。
【図9】実施の形態における効果の説明図である。
【図10】実施の形態における効果発現の原理説明図である。
【図11】実施の形態における効果発現の原理説明図である。
【図12】一実施例における潜像印刷物を示す説明図である。
【図13】一実施例における印刷画像の説明図である。
【図14】一実施例における第一の潜像画像と、第一の潜像画像を拡大した説明図である。
【図15】一実施例における中心画像と、中心画像を拡大した説明図である。
【図16】一実施例における第二の潜像画像と、第二の潜像画像を拡大した説明図である。
【図17】一実施例における印刷画像の画線構成の拡大図である。
【図18】一実施例における効果の説明図である。
【図19】一実施例における潜像印刷物を示す説明図である。
【図20】一実施例における印刷画像の説明図である。
【図21】一実施例における第一の潜像画像と、第一の潜像画像を拡大した説明図である。
【図22】一実施例における中心画像と、中心画像を拡大した説明図である。
【図23】一実施例における第二の潜像画像と、第二の潜像画像を拡大した説明図である。
【図24】一実施例における印刷画像の画線構成の拡大図である。
【図25】一実施例における効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図1から図11までを用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0019】
図1に、本発明の潜像印刷物(1)を示す。潜像印刷物(1)は、基材(2)上に印刷画像(3)が形成されている。基材は、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等、特に限定はされない。ただし、基材の材質は、平滑性の高い材質が望ましく、具体的にはベック平滑度で100秒以上であることが望ましい。平滑度の低い基材を使用した場合、基材の凹凸に影響されて盛り上がりを有する画線の高さが安定せず、正反射時の潜像出現の効果が低く成りうるため注意が必要である。
【0020】
印刷画像(3)は、図2に示すように、第一の画像(4)と第二の画像(6)の2つの異なる画像を有している。また、印刷画像(3)は、さらに中心画像(5)を有していてもよい。本実施の形態においては、印刷画像(3)が、第一の画像(4)、中心画像(5)及び第二の画像(6)を有している場合について以下に説明する。
【0021】
本実施の形態において、第一の画像(4)と第二の画像(6)は、それぞれ後述する第一の潜像画線から形成される第一の有意情報であるアルファベットの「A」の文字と、同じく後述する第二の潜像画線から構成される第二の有意情報であるアルファベットの「B」の文字を有する。本発明は、ある画像から、異なる画像へと変化する、いわゆるチェンジング効果を特徴とする技術であるから、少なくとも第一の有意情報と第二の有意情報は異なる情報である必要がある。
【0022】
図3に示すように、第一の画像(4)は、第一の画線(7)が、ピッチ(P1)で画線方向と直交する方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る。第一の画線(7)は、第一の有意情報である「A」の文字を表す第一の潜像画線(9)と、その周辺に隣接あるいは近接する第一の背景画線(8)から成る。第一の潜像画線(9)は、画線幅(W2)の画線が、画線方向にピッチ(P2)で幅(W3)おきに、所定の角度を有する第一の切れ込み(10)が形成された分断線で構成されて成り、第一の背景画線(8)は、画線幅(W1)の連続した画線によって構成されて成る。
【0023】
なお、本発明における画線の「画線幅」とは、図3においてS1方向、つまり画線が配置される方向における幅のことであり、「幅」とは、S1方向に直行する方向、つまり、図中の画線方向における幅のことをいう。
【0024】
第一の画像(4)は、複数の第一の画線(7)によって形成されているが、複数ある第一の画線(7)のうち、少なくとも第一の背景画線(8)及び第一の潜像画線(9)の組合せから成る第一の画線(7)を有している。また、複数ある第一の画線(7)のうち、第一の背景画線(8)のみから成る第一の画線(7)及び第一の潜像画線(9)からのみ成る第一の画線(7)が存在しても良い。
【0025】
ただし、第一の背景画線(8)のみから成る第一の画線(7)及び第一の潜像画線(9)からのみ成る第一の画線(7)だけで第一の画像(4)を形成した場合、第一の有意情報としての画像となり得ないため、必ず、第一の背景画線(8)及び第一の潜像画線(9)の組合せから成る第一の画線(7)を有している必要がある。
【0026】
図4に示すように、中心画像(5)は、画線幅(W4)の中心画線(11)がピッチ(P1)で図中S1方向に連続して配置されて成る。中心画像(5)は有意情報を有さず、単一の画線の集合によって、フラットな階調を構成して成る。
【0027】
図5に示すように、第二の画像(6)は、第二の画線(12)がピッチ(P1)で画線方向と直交する方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る。第二の画線(12)は、第二の有意情報である「B」の文字を表す第二の潜像画線(14)と、その周辺に隣接あるいは近接する第二の背景画線(13)から成る。第二の潜像画線(14)は、画線幅(W6)の画線が、画線方向にピッチ(P3)で幅(W7)おきに、所定の角度を有する第二の切れ込み(15)が形成された分断線で構成されて成り、第二の背景画線(13)は画線幅(W5)の連続した画線によって構成されて成る。
【0028】
第一の潜像画線(9)に形成される第一の切れ込み(10)の角度及び第二の潜像画線(14)に形成される第二の切れ込み(15)の角度については、図中の画線方向を0度とし、S1方向を90度とすると、15度〜165度の範囲の角度で形成することが望ましい。
【0029】
切れ込み(10、15)の角度15度より小さく、165度より大きい場合、画線方向に対して切れ込み(10、15)の角度の差が小さくなりすぎるため、一定方向から光が入った場合に、切れ込みがある潜像画線(9、14)と切れ込みのない背景画線(8、13)の間で、反射光量に大きな差が生じず、それぞれの有意情報が視認しづらくなるため望ましくない。最も反射光量に大きな差を生じさせることができる切れ込み(10、15)の角度は、90度である。また、第一の切れ込み(10)の角度及び第二の切れ込み(15)の角度は、同じでも異なっていても良い。
【0030】
また、第一の切れ込み(10)及び第二の切れ込み(15)を形成する間隔、つまり、ピッチ(P2)及びピッチ(P3)は、潜像印刷物(1)の形成方法で再現できる画線の再現性の範囲内で形成するのであれば、可能な限り小さくすることが望ましい。切れ込みの数が増えれば増えるほど、潜像画線(9、14)と背景画線(8、13)との間で反射光量に大きな差を生じさせることができるため、有意情報の視認性を高めることができるためである。
【0031】
具体的なピッチの範囲については、形成に用いる印刷方式に依存するが、仮にスクリーン印刷方式で形成するのであれば、ピッチは0.05mmから2mmの範囲で形成することが望ましい。0.05mm以下のピッチでは画線の再現性が低下するか、あるいは画線同士がつながってしまうため望ましくなく、2mmを超えるピッチでは粗すぎて有意情報の解像度が低くなることから望ましくない。幅(W3、W7)については、ピッチをわずかに下回る値であればよい。
【0032】
図6に、第一の画線(7)、中心画線(11)及び第二の画線(12)を合成した印刷画線(16)を示す。中心画線(11)の一側面と第一の画線(7)は隙間なく隣接して配置され、中心画線(11)の他側面と第二の画線(12)も隙間なく隣接して配置されて成る。以上の構成の印刷画線(16)が、図中S1方向にピッチ(P1)で連続して配置されることで、印刷画像(3)が形成されて成る。以上のような画線構成の印刷画線(16)を高光沢な盛り上がりのある画線で形成することで、本発明の印刷画像(3)を形成できる。
【0033】
図7に、印刷画線(16)を拡大し、斜め方向から見た図を示す。これまでの説明では、印刷画像(3)を3つの画像(第一の画像 (4)、中心画像(5)、第二の画像(6))に分け、印刷画像(3)を構成する印刷画線(16)も3つの画線(第一の画線(7)、中心画線(11)、第二の画線(12))に分けて説明したが、印刷画像(3)や印刷画線(16)の中に別々に3つの画像や3つの画線が存在する必要があるわけではない。複雑な印刷画像(3)や印刷画線(16)の構造を明瞭に説明するために、便宜上3つに分けて説明したが、本質的には印刷画像(3)は2つの有意情報を有し、印刷画線(16)は画線の左右両肩の別々の切れ込み(10、15)によって2つの有意情報を表現していることが要件となる。
【0034】
また、中心画線(11)は、画線の両肩の切れ込み(10、15)が画線中央で接触して繋がらないための役目を果たしているが、図8に示すように、前述したとおり印刷画像(3)は、第一の画像(4)及び第二の画像(6)のみで構成してもよい。
【0035】
ただし、この場合、画線両肩に施された第一の切れ込み(10)と第二の切れ込み(15)の画線方向の位相をずらし、第一の切れ込み(10)と第二の切れ込み(15)が接触しないようにする必要がある。切れ込み同士が画線中心で繋がってしまった場合には、正反射光下で出現する2つの有意情報がお互いに重なりあって出現してしまうため、避けなければならない。
【0036】
続いて、本発明の効果とその効果発現の原理について、図9から図11までを用いて説明する。
【0037】
図9は、本発明の効果を表した図である。図9(a)に示すように、印刷画像(3)に対して左に位置する光源(17a)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合、第一の有意情報である「A」の文字のみが反射光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現する。
【0038】
また、図9(b)に示すように、印刷画像(3)に対して右に位置する光源(17b)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合、第二の有意情報である「B」の文字のみが光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現する。
【0039】
なお、本明細書中でいう「ポジ」とは有意情報が弱く光を反射して濃く見え、周囲が強く光を反射して淡く見える状態とし、「ネガ」とは有意情報が強く光を反射して淡く見え、周囲が弱く光を反射して濃く見える状態とする。
【0040】
以上のように、本発明の潜像印刷物(1)に光を入射させた場合、入射する光の角度に応じて第一の有意情報から第二の有意情報へ(あるいは逆へ)と、観察できる情報が変化する効果が生じることに加え、それぞれの有意情報はネガポジが反転する効果も有しており、ホログラムのような多彩な画像変化を生じる。
【0041】
以下に、前述した画像変化が生じる原理について説明する。図10は、図9(a)のように、左に位置する光源(17a)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合の1本の印刷画線(16)の拡大図を示している。左から光が入射した場合、盛り上がりのある画線である印刷画線(16)は、盛り上がりの頂点となる画線の中心を基準として画線の左半分の画線、すなわち第一の画線(7)のみが光を反射する。このとき、右半分の第二の画線(12)は影になり、光が入射せず、光を反射することはできないため、第二の有意情報である「B」の文字は可視化されない。
【0042】
光を反射する第一の画線(7)の左側面の領域には連続した画線で形成された第一の背景画線の左側面(8a)と第一の切れ込み(10)を有した分断線で形成された第一の潜像画線の左側面(9a)とが存在する。第一の背景画線の左側面(8a)と第一の潜像画線の左側面(9a)とは、第一の切れ込み(10)の有無の違いによって光を反射する画線表面の面積が異なることから、反射光量の強弱が生じる。
【0043】
具体的には、第一の背景画線の左側面(8a)は連続した画線で構成されていることから、第一の切れ込み(10)を有した第一の潜像画線の左側面(9a)よりも光を反射する面積が大きいため、第一の潜像画線の左側面(9a)よりも強く光り、逆に第一の潜像画線の左側面(9a)は弱く光る。この場合、光の強弱によって、第一の有意情報である「A」を表している第一の潜像画線(9)は暗く、その周囲の円を表している第一の背景画線(8)は明るい状態となり、第一の有意情報である「A」の文字のみがポジの状態で出現する。
【0044】
先の説明は、左に位置する光源(17a)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合の効果であったが、光源の位置が直交方向からわずかに変化した光源(17a´)から光が入射した場合、第一の潜像画線の切れ込みの上端部(9a´)が最も強く光を反射する。この場合、前述した説明と光の強弱が逆となり、第一の有意情報である「A」を表している第一の潜像画線(9)は明るく、その周囲の円を表している第一の背景画線(8)は暗い状態となり、第一の有意情報である「A」の文字がネガの状態で出現する。以上のように、入射する光の角度によってネガポジが反転する効果が生じる。
【0045】
一方、右に位置する光源(17b)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合について、図11を用いて説明する。図11は、光源(17b)から印刷画線(16)に直交する光が入射した場合の1本の印刷画線(16)の拡大図を示している。右から光が入射した場合、盛り上がりのある画線である印刷画線(16)は、画線の中心を基準として画線の右半分の画線、すなわち第二の画線(12)のみが光を反射する。このとき、左半分の第一の画線(7)は影になり、光が入射せず、光を反射することはできないため、第一の有意情報である「A」の文字は可視化されない。
【0046】
光を反射する第二の画線(12)の右側面の領域には、連続した画線で形成された第二の背景画線の右側面(13a)と第二の切れ込み(15)を有した分断線で形成された第二の潜像画線の右側面(14a)とが存在する。第二の背景画線の右側面(13a)と第二の潜像画線の右側面(14a)とは、第二の切れ込み(15)の有無の違いによって光を反射する画線表面の面積が異なることから、反射光量の強弱が生じる。
【0047】
具体的には、第二の背景画線の右側面(13a)は連続した画線で構成されていることから、第二の切れ込み(15)を有した第二の潜像画線の右側面(14a)よりも光を反射する面積が大きいため、第二の潜像画線の右側面(14a)よりも強く光り、逆に第二の潜像画線の右側面(14a)は弱く光る。この場合、第二の潜像画線(14)は第二の有意情報である「B」を表し、第二の背景画線(13)はその周囲の円を表しているため、第二の有意情報である「B」の文字のみが光の強弱によってポジの状態で出現する。なお、ネガポジが反転する原理については第一の有意情報である「A」で説明したので割愛する。
【0048】
以上の原理によって、本発明の潜像印刷物(1)に光を入射させた場合、入射する光の角度に応じて観察できる有意情報が変化し、ネガポジ反転する効果が生じる。
【0049】
本発明の印刷画線(16)の画線の盛り上がり高さに関しては、使用する材料や製造方法によっても左右される。仮に、印刷画線(16)を印刷ではなく、基材自体をコート紙や金属、プラスティックのように高い光沢を有し、表面平滑性も良好な材料を用いて機械加工によって形成した場合、すなわち切削加工やプレス加工、レーザ加工等によって基材から直接印刷画像(3)に相当する画像を形成した場合には、画線の高さは1μm以下でもその効果を発揮する。
【0050】
ただし、印刷画像(3)を用紙上にインキを用いた印刷によって形成する場合には、画線の高さは少なくとも2μm程度必要である。この場合、フレキソ印刷方式やグラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、凹版印刷方式、インクジェット方式等で形成することが望ましい。ただし、盛り上がりのある画線を形成できる印刷方式であれば、これに限定されない。
【0051】
なお、オフセット印刷方式の膜厚は約1μmであるから、オフセット印刷方式で本実施の形態における潜像印刷物を形成することは困難であるが、特開2007−229967号公報や再公表W095/09372号公報の記載の技術のように、オフセット印刷方式で後刷りのインキをはじく特性を有する画線を形成した後、ロールコーター等を用いてグロスニスをベタ引きすることで、オフセット印刷方式で形成した画線以外の部分にグロスニスがはじかれ、盛り上がりのある画線を形成する、といった技術を用いればオフセット印刷機とロールコーターのコンビネーションで印刷物を形成することも可能である。
【0052】
印刷画像(3)を形成する材料としては、光沢を有する材料を用いる必要がある。低光沢な材料では入射した光を反射する効果が低く、本発明の効果が低下するため望ましくない。画線が高い光沢を有することで、画線に光が入射した場合に、画線の明度が上昇することで有意情報が可視化される原理であるため、少なくとも明暗フリップフロップ性を備えることが必須である。
【0053】
明暗フリップフロップ性とは、拡散反射光が支配的な観察角度(受光角度0度近傍)から正反射光が支配的な観察角度(受光角度45度近傍)にかけて、色調はほとんど変化せず、明度のみが変化する特性のことである。
【0054】
印刷画像(3)を形成する材料としては、紙や金属やプラスティックを基材として用いて基材自体を加工して形成しても良いし、基材上に高光沢なインキを用いて印刷して形成してもよい。一般にフレキソやグラビア、スクリーン印刷のインキにワニスやメジュームとして用いられる基本的な樹脂成分は高い光沢を有しているから、顔料を混合させずにワニスやメジュームをそのまま用いて印刷画像(3)を形成してもよい。また、高光沢なワニスやメジュームに着色顔料や金属顔料を混合することでより有意情報の視認性を向上させることができる
【0055】
仮に、高光沢なインキを用いて印刷で本発明の潜像印刷物(1)を形成する場合、インキに要求される具体的な光学特性としては、インキを一般的なコート紙上に画線面積率100%で印刷した場合、反射角度45°の正反射光下の明度の値が100以上であり、拡散反射光下における明度(最小明度)と反射角度45°の正反射光下における明度(最大明度)との差が50以上であることが望ましい。これを下回る反射特性しか備えないインキを用いた場合、正反射光下の反射光量が充分得られず、潜像を容易に視認できない場合があるため望ましくない。なお、本発明における「面積率」とは、一定の面積中に占める印刷された面積の割合のことである。
【0056】
本発明により高度な真偽判別性を付与したい場合は、パールインキや液晶インキ、OVI等の、カラーフリップフロップ性を有する機能性インキを用いて印刷画像(3)を形成することが望ましい。パールインキや液晶インキを用いて光輝性を有した盛り上がりのある画線を形成した場合は、入射した場合に明度だけでなく色相も変化する、いわゆるカラーフリップフロップ性を付与でき、単純な明暗フリップフロップ性を用いた印刷画像(3)よりも模倣が難しいために偽造抵抗力が高まることに加えて、意匠性も高まることから、より望ましい。
【0057】
本発明の印刷画像(3)は高光沢さえ有していれば透明であっても、着色されていても問題ない。ただし、着色された画線で形成する場合には、第一の潜像画線(9)と第一の背景画線(8)の画線面積率は等しく形成する必要があり、第二の潜像画線(14)と第二の背景画線(13)の画線面積率は等しく形成する必要がある。これらがそれぞれ異なっている場合には、強い光が入射しない環境下において、第一の有意情報及び/又は第二の有意情報が視認されてしまうためである。
【0058】
なお、着色された画線で印刷画像(3)を形成する場合、印刷画線(16)の画線幅に太細を設けて、第三の有意情報を形成することもできる。これは、強い光が入射しない環境下において視認できる画像となる。この場合、印刷画線(16)の太い画線と細い画線の画線幅の差は、1.5倍以下に留める必要がある。これ以上の画線幅の差異を設けた場合には、第三の有意情報のコントラストが強くなりすぎ、第一の有意情報か、第二の有意情報が出現する条件下でも第三の有意情報が視認され、不明瞭な画像となってしまうためである。
【0059】
真偽判別性の向上を目的として、インキ中に蛍光顔料や蛍光染料、燐光顔料等の発光顔料や発光染料、赤外線吸収材料や赤外反射材料等の機能性材料を添加しても何ら問題ない。また、サーモクロミック材料やフォトクロミック材料等の機能性材料を用いることで、より高い真偽判別性を付与することができる。
【0060】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
実施例1は、一般的な紙を基材(2−1)として、高光沢な黒インキを用いて本発明の潜像印刷物(1−1)を形成した例である。
【0062】
実施例1は、図12から図18を用いて説明する。潜像印刷物(1−1)を形成する基材(2−1)には、一般的な白色コート紙(日本製紙製)を用いた。図12に示すように、基材(2−1)上にスクリーン印刷によって印刷画像(3−1)を印刷して潜像印刷物(1−1)を形成した。
【0063】
以下の説明では、説明の便宜上、実施の形態同様に印刷画像(3−1)を3つの画像に分けて説明する。図13に示すように、印刷画像(3−1)は、第一の画像 (4−1)と第二の画像(6−1)、中心画像(5−1)を有して成る。
【0064】
実施例1において、第一の画像(4−1)と第二の画像(6−1)は、実施の形態の例と同様に、それぞれ第一の有意情報であるアルファベットの「A」の文字と、第二の有意情報であるアルファベットの「B」の文字を有する。
【0065】
図14に示すように、第一の画像(4−1)は、第一の画線(7−1)がピッチ0.6mmで画線方向と直交するS1方向に連続して配置されて成る。第一の画線(7−1)は、第一の有意情報である「A」の文字を表す第一の潜像画線(9−1)と、その周辺に隣接あるいは近接する第一の背景画線(8−1)から成る。第一の潜像画線(9−1)は、画線幅0.14mmの画線が、画線方向にピッチ0.35mmで幅0.25mmおきに第一の切れ込み(10−1)が形成された分断線で構成され、第一の背景画線(8−1)は、画線幅0.10mmの連続した画線によって構成されて成る。
【0066】
図15に示すように、中心画像(5−1)は、画線幅0.15mmの中心画線(11−1)がピッチ0.6mmで図中S1方向に連続して配置されて成る。中心画像(5−1)は有意情報を有さず、単一の画線の集合によって、フラットな階調を構成して成る。
【0067】
図16に示すように、第二の画像(6−1)は、第二の画線(12−1)がピッチ0.6mmで図中S1方向に連続して配置されて成る。第二の画線(12−1)は、第二の有意情報である「B」の文字を表す第二の潜像画線(14−1)と、その周辺に隣接あるいは近接する第二の背景画線(13−1)から成る。第二の潜像画線(14−1)は、画線幅0.14mmの画線が、画線方向にピッチ0.35mmで幅0.25mmおきに第二の切れ込み(15−1)が形成された分断線で構成され、第二の背景画線(13−1)は、画線幅0.1mmの連続した画線によって構成されて成る。
【0068】
図17に、第一の画線(7−1)、中心画線(11−1)及び第二の画線(12−1)を合成した印刷画線(16−1)を示す。第一の画線(7−1)と中心画線(11−1)は隙間無く隣接し、中心画線(11−1)と第二の画線(12−1)も隙間無く隣接して成る。以上の構成の印刷画線(16−1)が図中S1方向にピッチ0.6mmで連続して配置されることで、印刷画像(3−1)が形成されて成る。以上のような画線構成の印刷画線(16−1)を表1に示す高光沢なインキを用いて、UV乾燥方式のスクリーン印刷方式で形成した。得られた画線の盛り上がり高さは15μmであった。
【0069】
【表1】

【0070】
得られた潜像印刷物(1−1)の効果を確認した。図18は本発明の効果を表した図である。強い光が印刷画像(3−1)に直接入射しない拡散反射光下での観察では、印刷画像(3−1)は黒色で塗りつぶされた単なる円として観察される(図示せず)。図18(a)に示すように、印刷画像(3−1)に対して左に位置する光源(17a−1)から印刷画線(16−1)に直交する光を入射させた場合、第一の有意情報である「A」の文字のみが反射光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現した。また、図18(b)に示すように、印刷画像(3−1)に対して右に位置する光源(17b−1)から印刷画線(16−1)に直交する光を入射させた場合、第二の有意情報である「B」の文字のみが光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現した。
【0071】
以上のように、本発明の潜像印刷物(1−1)に光を入射させた場合、入射する光の角度に応じて第一の有意情報から第二の有意情報へと、観察できる情報が変化する効果が生じることに加え、それぞれの有意情報はネガポジが反転する効果も有していることが確認できた。
【実施例2】
【0072】
実施例2は、一般的な紙を基材(2−2)として、虹彩色パール顔料を含んだ透明なインキを用いて本発明の潜像印刷物(1−2)を形成した例である。
【0073】
実施例2は、図19から図25を用いて説明する。潜像印刷物(1−2)を形成する基材(2−2)には、実施例1と同様に一般的な白色コート紙(日本製紙製)を用いた。図19に示すように、基材(2−2)上にスクリーン印刷によって印刷画像(3−2)を印刷して潜像印刷物(1−2)を形成した。
【0074】
以下の説明では、説明の便宜上、これまで同様に印刷画像(3−2)を3つの画像に分けて説明する。図20に示すように、印刷画像(3−2)は、第一の画像 (4−2)と第二の画像(6−2)、中心画像(5−2)を有して成る。
【0075】
実施例2において、第一の画像(4−2)と第二の画像(6−2)は、実施の形態及び実施例1と同様に、それぞれ第一の有意情報であるアルファベットの「A」の文字と、第二の有意情報であるアルファベットの「B」の文字を有する。
【0076】
図21に示すように、第一の画像(4−2)は、第一の画線(7−2)がピッチ0.6mmで画線方向と直交するS1方向に連続して配置されて成る。第一の画線(7−2)は、第一の有意情報である「A」の文字を表す第一の潜像画線(9−2)と、その周辺に隣接あるいは近接する第一の背景画線(8−2)から成る。第一の潜像画線(9−2)は、画線幅0.14mmの画線が、画線方向にピッチ0.35mmで幅0.25mmおきに約60度の角度の第一の切れ込み(10−2)が形成された分断線で構成され、第一の背景画線(8−2)は、画線幅0.10mmの連続した画線によって構成されて成る。
【0077】
図22に示すように、中心画像(5−2)は、画線幅0.15mmの中心画線(11−2)がピッチ0.6mmで図中S1方向に連続して配置されて成る。中心画像(5−2)は有意情報を有さず、単一の画線の集合によって、フラットな階調を構成して成る。
【0078】
図23に示すように、第二の画像(6−2)は、第二の画線(12−2)がピッチ0.6mmで図中S1方向に連続して配置されて成る。第二の画線(12−2)は、第二の有意情報である「B」の文字を表す第二の潜像画線(14−2)と、その周辺に隣接あるいは近接する第二の背景画線(13−2)から成る。第二の潜像画線(14−2)は、画線幅0.14mmの画線が、画線方向にピッチ0.35mmで幅0.25mmおきに120度の角度の第二の切れ込み(15−2)が形成された分断線で構成され、第二の背景画線(13−2)は、画線幅0.1mmの連続した画線によって構成されて成る。
【0079】
本案件は、入射する光の角度によっては、第一の有意情報と第二の有意情報が同時に出現してチェンジングの効果が低下する観察角度範囲があり、実施例2のように、第一の切れ込み(10−2)と第二の切れ込み(15−2)の角度を変えることによって、第一の有意情報と第二の有意情報が同時に出現する観察角度範囲を狭くすることができる。
【0080】
図24に、第一の画線(7−2)、中心画線(11−2)及び第二の画線(12−2)を合成した印刷画線(16−2)を示す。第一の画線(7−2)と中心画線(11−2)は隙間無く隣接し、中心画線(11−2)と第二の画線(12−2)も隙間無く隣接して成る。以上の構成の印刷画線(16−2)が図中S1方向にピッチ0.6mmで連続して配置されることで、印刷画像(3−2)が形成されて成る。以上のような画線構成の印刷画線(16−2)を表2に示す透明なインキを用いて、UV乾燥方式のスクリーン印刷方式で形成した。得られた画線の盛り上がり高さは15μmであった。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示したインキは、光が入射しない環境下では無色透明であり、光が入射した場合にのみ金色の干渉色を呈するインキであり、無色から金色へと色相が変化するカラーフリップフロップ性に優れたインキである。盛り上がりのある画線に光を反射する顔料を用いて高いカラーフリップフロップ性を得るためには、盛り上がりのある画線の表面に顔料が揃って配向していることが望ましく、このような状態は一般にリーフィングと呼ばれる。優れたリーフィング効果を得る方法としては、例えば特開2001−106937号公報に記載の技術のように顔料に撥水及ぶ撥油性を付与する方法がある。表2に示した虹彩色パール顔料にはあらかじめこの処理を施した。
【0083】
得られた潜像印刷物(1−2)の効果を確認した。図25は本発明の効果を表した図である。強い光が印刷画像(3−2)に直接入射しない拡散反射光下での観察では、印刷画像は無色透明であり目視できない(図示せず)。図25(a)に示すように、印刷画像(3−2)に対して左に位置する光源(17a−2)から印刷画線(16−2)に直交する光を入射させた場合、第一の有意情報である「A」の文字のみが虹彩色パール顔料の干渉色である金色の反射光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現した。また、図25(b)に示すように、印刷画像(3−2)に対して右に位置する光源(17b−2)から印刷画線(16−2)に直交する光を入射させた場合、第二の有意情報である「B」の文字のみが金色の反射光の強弱によってポジ、あるいはネガで出現した。
【0084】
以上のように、本発明の潜像印刷物(1−2)に光を入射させた場合、入射する光の角度に応じて第一の有意情報から第二の有意情報へと、観察できる情報が変化する効果が生じることに加え、それぞれの有意情報はネガポジが反転する効果も有していることが確認できた。また、高いパール効果によって鮮やかな色相変化の効果も付与されていることも確認できた。
【符号の説明】
【0085】
1、1−1、1−2 潜像印刷物
2、2−1、2−2 基材
3、3−1、3−2 印刷画像
4、4−1、4−2 第一の画像
5、5−1、5−2 中心画像
6、6−1、6−2 第二の画像
7、7−1、7−2 第一の画線
8、8−1、8−2 第一の背景画線
9、9−1、9−2 第一の潜像画線
10、10−1、10−2 第一の切れ込み
11、11−1、11−2 中心画線
12、12−1、12−2 第二の画線
13、13−1、13−2 第二の背景画線
14、14−1、14−2 第二の潜像画線
15、15−1、15−2 第二の切れ込み
16、16−1、16−2 印刷画線
17a、17b、17a−1、17b−1、17a−2、17b−2 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、印刷画像を備え、
前記印刷画像は、第一の有意情報を含む第一の画像及び第二の有意情報を含む第二の画像を有し、
前記第一の画像は、第一の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、
前記複数の第一の画線は、第一の背景画線及び所定の角度を有する第一の切れ込みが形成されている第一の潜像画線の組合せから成る前記第一の画線を少なくとも有して成り、
前記第二の画像は、第二の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、
前記複数の第二の画線は、第二の背景画線及び所定の角度を有する第二の切れ込みが形成されている第二の潜像画線の組合せから成る前記第二の画線を少なくとも有して成り、
前記第一の画線及び前記第二の画線は、盛り上がり、かつ、明暗フリップフロップ性を有し、
前記第一の画線と前記第二の画線は、前記第一の切れ込みと前記第二の切れ込みが、同じ位置に配置されないように隣接して成り、
前記第一の切れ込みの方向から光が入射した場合には、前記第一の潜像画線と前記第一の背景画線の反射光量の差により前記第一の有意情報が視認でき、前記第二の切れ込みの方向から光が入射した場合には、前記第二の潜像画線と前記第二の背景画線の反射光量の差により前記第二の有意情報が視認できることを特徴とする潜像印刷物。
【請求項2】
基材の少なくとも一部に、印刷画像を備え、
前記印刷画像は、第一の有意情報を含む第一の画像、第二の有意情報を含む第二の画像及び中心画像を有し、
前記第一の画像は、第一の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、
前記複数の第一の画線は、第一の背景画線及び所定の角度を有する第一の切れ込みが形成されている第一の潜像画線の組合せから成る前記第一の画線を少なくとも有して成り、
前記中心画像は、中心画線が前記第一のピッチで前記第一の方向に複数配置して成り、
前記第二の画像は、第二の画線が第一のピッチで第一の方向に複数配置されて成り、
前記複数の第二の画線は、第二の背景画線及び所定の角度を有する第二の切れ込みが形成されている第二の潜像画線の組合せから成る前記第二の画線を少なくとも有して成り、
前記第一の画線、前記第二の画線及び中心画線は、盛り上がり、かつ、明暗フリップフロップ性を有し、
前記第一の画線と前記第二の画線で、前記中心画線を挟んで隣接して成り、
前記第一の切れ込みの方向から光が入射した場合には、前記第一の潜像画線と前記第一の背景画線の反射光量の差により前記第一の有意情報が視認でき、前記第二の切れ込みの方向から光が入射した場合には、前記第二の潜像画線と前記第二の背景画線の反射光量の差により前記第二の有意情報が視認できることを特徴とする潜像印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−91165(P2013−91165A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232620(P2011−232620)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】