説明

潤滑剤供給装置

【課題】潤滑剤を従来より効率良く像担持回転体に供給することができる潤滑剤供給装置を提供する。
【解決手段】均しブレード355に関し、エッジ355aが感光体ドラム31Yの回転方向Bに対してカウンター方向に当接し、下面側のエッジ355bがブラシローラ351と当接している。ブラシローラ351のブラシ毛は、均しブレード355のエッジ355bに接触すると、ブラシの回転方向Cと逆の方向に倒れ、エッジ355bから離れるとブラシ毛が撥ねて元の姿勢に復元する。このブラシ毛が撥ねるときに、ブラシ毛に付着している潤滑剤352が、感光体ドラム31Yの表面に向けて弾き飛ばされて感光体ドラム31Yの表面に付着する。うまく付着しなかったとしても閉空間内に留まり、重力の影響等により落下してブラシローラ351に再度付着し、再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置が備える潤滑剤供給装置に関し、特に像担持回転体に潤滑剤を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における像担持回転体には、(1)離型性を向上させることにより、像担持回転体から被転写部材への転写性を向上させ、またクリーニングブレードによるクリーニング性能を向上させるため、(2)像担持回転体の摩擦係数を低下させて、クリーニングブレードの当接による像担持回転体の減耗を抑制するために潤滑剤が塗布されることが多い。この潤滑剤の塗布は、一般的には、回転するブラシにステアリン酸亜鉛などを固形化した潤滑剤を押圧してブラシに潤滑剤を掻き取らせ、潤滑剤が付着したブラシを像担持回転体に接触させることで行っている。しかし、この方法では、像担持回転体に接触して撓んだブラシが撥ねて元の姿勢に復元するときに、ブラシに残存している潤滑剤が弾き飛ばされ(以下、ブラシに残存している潤滑剤について「撓んだブラシが撥ねて元の姿勢に復元するときに弾き飛ばされる」ことを、単に「ブラシに弾き飛ばされる」という。)飛散してしまうことから、潤滑剤が効率よく塗布されているとはいえない。これに対し、特許文献1に、潤滑剤の塗布効率を向上する技術が開示されている。
【0003】
図7は、特許文献1の潤滑剤塗布装置1000の概略構成を示す図である。
潤滑剤塗布装置1000は、矢印R2方向に回転するブラシローラ1002、潤滑剤1003を保持するホルダ1004、ホルダ1004を介して潤滑剤1003をブラシローラ1002に当接する方向へ付勢するスプリング1005、ブラシローラ1002で像担持回転体1001に塗布した潤滑剤1003を均して膜状にする塗布ブレード1007とを有する。なお、ブラシローラの毛は、一部のみしか示していない。
【0004】
矢印R1方向に回転する像担持回転体1001には、ブラシローラ1002が当接されている。また、像担持回転体1001には、方向R1に対して潤滑剤塗布装置1000より上流側に、クリーニングブレード1008が当接されている。ブラシローラ1002は、R1方向への回転により、潤滑剤1003を微粉状に削り取った後、像担持回転体表面1001に付着させる。そして、像担持回転体1001に付着した潤滑剤1003は、像担持回転体1001が矢印R1へ回転することで、塗布ブレード1007により膜状に塗布される。
【0005】
ブラシローラ1002のブラシの毛が像担持回転体1001に当接したものの、ブラシの毛に付着していた潤滑剤1003が像担持回転体1001に塗布されなかった場合、塗布されなかった潤滑剤1003の一部は、この当接位置を通過した後にブラシが撥ねて弾き飛ばされる。この弾き飛ばされた潤滑剤1003は、重力の影響等により、これらが滑り落ちやすくなるよう離型層1006が設けられた塗布ブレード1007の面上を移動し、位置Pに来たときにブラシローラ1002に再度付着して、像担持回転体1001表面に再塗布されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−259450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のようにブラシに弾き飛ばされて飛散した潤滑剤1003は、離型層1006上を滑らず滞留したままになって再利用されない場合があり得る。また、滞留しない場合でも、位置Pで、塗布ブレード1007とブラシローラ1002とが当接し、潤滑剤がブラシに弾き飛ばされて、例えば、矢印Qに示すような経路で流出してしまうことが考えられる。この場合には、流出した潤滑剤は全く再利用されなくなるため、潤滑剤の供給効率は低下してしまう。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、潤滑剤を従来より効率良く像担持回転体に供給することができる潤滑剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、像担持回転体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、像担持回転体の表面に接触して潤滑剤を供給するブラシローラと、ブラシローラのブラシ部に当接する当接部材とを備え、前記当接部材は、回転するブラシローラのブラシ部の毛が前記当接部材に当接して撓み、撥ねて元の姿勢に復元するときに、そのブラシ部の毛に付着していた潤滑剤が像担持回転体の表面に向けて弾き飛ばされる位置に配設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の潤滑剤供給装置は、上述の構成を備えることにより、ブラシ部と当接部材との当接位置において、ブラシ部の毛に付着していた潤滑剤の多くが弾き飛ばされて像担持回転体に付着する。よって、その後、像担持回転体とブラシローラとが回転し、ブラシ部が像担持回転体と接触するときには、多くの潤滑剤がすでに像担持回転体に供給された後なので、像担持回転体とブラシ部との接触直後にブラシが撥ねて弾き飛ばされる潤滑剤は少なく、無駄に消費される潤滑剤の量を低減することができる。従って、従来より潤滑剤の供給効率を向上することができる。また、潤滑剤を効率良く供給できるので、保持しておく潤滑剤のサイズを小さく抑えて、装置全体として省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、前記ブラシローラは、前記像担持回転体との接触位置において、前記像担持回転体の回転とはカウンタ方向に回転し、前記当接部材は、前記ブラシローラの回転方向に対し、前記像担持回転体との接触位置よりも所定量だけ上流側で前記ブラシローラのブラシ部と当接する位置に配設されることとしてもよい。
この構成によれば、像担持回転体とブラシ部との接触により潤滑剤を供給するのに先立ち、その接触位置よりも所望の距離だけ離れた位置で、予め潤滑剤を弾き飛ばして像担持回転体に付着させておくことができる。
【0012】
また、像担持回転体の表面に供給された潤滑剤を均す均しブレードを備え、前記均しブレードが、前記当接部材を兼ねていることとしてもよい。
この構成によれば、当接部材を兼ねた均しブレードによって、構成部品を増やすことなく、潤滑剤を弾き飛ばして像担持回転体に付着させ、かつ潤滑剤を均すことができる。
また、前記像担持回転体の回転軸と直交する断面において、前記像担持回転体表面と、ブラシローラのブラシ部と、均しブレードとで囲まれた空間が形成されていることとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、当接部材により弾き飛ばされる潤滑剤を閉空間に留めることができ、像担持回転体に付着しなかった潤滑剤が、再利用できない位置へと飛散して無駄に消費されるのを防ぐことができる。これにより、潤滑剤の供給効率を従来よりさらに向上することができる。
また、前記潤滑剤供給装置を備えた画像形成装置としてもよい。
【0014】
この構成によれば、画像形成装置において、潤滑剤の供給効率を従来より向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】(a)本発明の一実施形態に係る潤滑剤塗布装置の構成を示す図、(b)潤滑剤塗布装置における部分Dの拡大図である。
【図3】本発明の変形例に係る潤滑剤塗布装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の変形例に係る塗布ブレードの構成を示す図である。
【図5】潤滑材の感光体ドラムへの供給率を示す図である。
【図6】潤滑剤のブラシへの押圧力とベタ濃度の再現性との関係を示す図である。
【図7】従来技術に係る潤滑剤塗布装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1は、像担持回転体としての感光体ドラムに潤滑剤を供給する場合に、潤滑剤が付着したブラシローラを感光体ドラムに接触させることで潤滑剤を塗布するのに先立ち、ブラシローラに付着する潤滑剤を跳ね飛ばして感光体ドラムへと付着させておくことにより、潤滑剤の供給効率を向上させるものである。
【0017】
1.構成
1.1.全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタ1の全体構成を示す断面概略図である。
同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着部5を備える。プリンタ1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0018】
画像プロセス部3は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部3Y,3M,3C,3K、光学部10、中間転写ベルト11などを備えている。
作像部3Yは、像担持回転体としての感光体ドラム31Y、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラ34Y、感光体ドラム31Yに潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置35Y、感光体ドラム31Yを清掃する清掃部36Yなどを備えており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。他の作像部3M〜3Kは、作像部3Yと同様の構成であり、同図において符号は省略している。
【0019】
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
光学部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、Y〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、感光体ドラム31Y〜31Kを露光走査させる。この露光走査により、帯電器32Y〜32Kにより帯電された感光体ドラム31Y〜31K上に静電潜像が形成される。各静電潜像は、現像器33Y〜33Kにより現像されて感光体ドラム31Y〜31K上にY〜K色のトナー像が形成される。
【0020】
そして、一次転写ローラ34Y〜34Kにより作用する静電力により中間転写ベルト11上に各色のトナー像が順次転写されてフルカラーのトナー像が形成され、二次転写位置46方向に移動する。
給紙部4は、記録シートSを収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートSを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートSを二次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対44などを備えており、繰り出しローラ42が、中間転写ベルト11上のトナー像の移動タイミングに合わせて給紙部4から記録シートSを繰り出し、タイミングローラ対44が所定のタイミングで記録シートSを二次転写位置46に給送する。そして、二次転写ローラ45が、中間転写ベルト11上のトナー像を一括して記録シートS上に二次転写し、記録シートSを定着部5に搬送する。中間転写ベルト11表面に残留したトナーは、クリーニングブレード(図示せず)により掻き取り回収される。
【0021】
そして、定着部5が、加熱・加圧により記録シートS上のトナー像(未定着画像)を記録シートSに定着させる。そして、排出ローラ対71が、記録シートSを排出トレイ72上に排出する。
1.2.潤滑剤塗布装置の構成詳細
以下、潤滑剤塗布装置35Yの構成の詳細について説明する。なお、潤滑剤塗布装置35M〜Kについては、潤滑剤塗布装置35Yと同様の構成であるので説明を省略する。
【0022】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る潤滑剤塗布装置35Yとその周辺部の構成を示す図である。
潤滑剤塗布装置35Yは、感光体ドラム31Yの回転方向Bに対し清掃部36Yの下流に配設されている。
清掃部36Yは、感光体ドラム31Yの転写残トナーを清掃する。清掃が必要であるのは、上述のように、感光体ドラム31Y上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト11に静電的に転写されるのであるが、感光体ドラム31Yとトナー間には、ファンデルワールス力が働いているので、静電的に転写しきれないトナー(転写残トナー)が感光体ドラム31Yに残ってしまうことがあるためである。
【0023】
清掃部36Yは、ポリウレタンゴムをシート状に加工したクリーニングブレード361を有する。クリーニングブレード361は、エッジ部が感光体ドラム31Yに当接されており、このエッジ部で感光体ドラム31Y表面の転写残トナーを掻き取って一旦回収容器362に回収し、さらに回収スクリュー363によって清掃部36Yから不図示の廃トナーボックスに搬送され、回収される。
【0024】
潤滑剤塗布装置35Yは、感光体ドラム31Yに潤滑剤を塗布する。潤滑剤の塗布により(a)離型性が向上するため感光体ドラム31Yから被転写部材への転写性が向上し、また、クリーニングブレードによるクリーニング性能が向上し、(b)像担持体の摩擦係数が低下するため感光体ドラム31Yの減耗が抑制されて長寿命化を図ることができる
潤滑剤塗布装置35Yは、具体的には、ブラシローラ351、固形の潤滑剤352、ホルダ353、スプリング354及び均しブレード355などで構成される。
【0025】
ブラシローラ351は、ロール状のブラシであり、円柱状のローラ心棒の周面にわたってブラシ毛を植立してブラシ部を形成したものである。ブラシ毛は、3〜15デニールのポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの合成繊維で構成され、ブラシ毛の高さは2.5〜6mm程度であり、植密度は、50000〜300000本/平方インチ程度である。
潤滑剤352は、金属石鹸の粉体を溶融成型したものである。本実施の形態では、金属石鹸としてステアリン酸亜鉛を用いている。なお、固形の潤滑剤の堅さは、鉛筆硬度(JIS K5400)でBとするが、HB、F又はHであってもよい。
【0026】
ホルダ353は、潤滑剤352を保持する。スプリング354は、ホルダ353を介して潤滑剤352に対し、ブラシローラ351に当接する方向へ付勢する。付勢された固形の潤滑剤352は、回転するブラシローラ351のブラシ毛に削り取られ、ブラシ毛に付着したまま感光体ドラム31Yへと搬送される。
均しブレード355は、ポリウレタンゴムをシート状に加工したものであり、潤滑剤352を感光体ドラム31Yへと飛散させて付着させる当接部材と、感光体ドラム31Yに供給された潤滑剤を均して皮膜を形成するブレードの機能を兼ねている。
【0027】
なお、図2中の当接位置351Aは、感光体ドラム31Yとブラシローラ351とが当接する位置を示す。回転中心351Bは、ブラシローラ351の回転中心を示す。当接位置351Cは、ブラシローラ351と均しブレード355との当接位置を示す。角度Eは、当接位置351Aと回転中心351Bとを結ぶ線分と、回転中心351Bと当接位置351Cとを結ぶ線分とが成す角を表している。
【0028】
図2(b)は、図2(a)における、感光体ドラム31Y及びブラシローラ351と、均しブレード355とが当接する位置の近傍の部分Dを拡大した図である。
図2(b)に示すように、均しブレード355は、一端部の上面側のエッジ355aが感光体ドラム31Yの回転方向Bに対してカウンター方向に当接している。均しブレード355は、エッジ355aにおいて、感光体ドラム31Yに供給された潤滑剤を均して皮膜を形成する。また、均しブレード355の下面側のエッジ355bは、ブラシローラ351と当接している。ブラシローラ351のブラシ毛は、均しブレード355のエッジ355bに接触するとブラシの回転方向Cと逆の方向に倒れ、エッジ355bから離れると撥ねて元の姿勢に復元する。このブラシ毛が撥ねるときに、ブラシ毛に付着している潤滑剤352が、感光体ドラム31Yの表面に向けて弾き飛ばされて感光体ドラム31Yの表面に付着する。これにより潤滑剤352が感光体ドラム31Yに供給される。ブラシローラ351において、上述のように潤滑剤が弾き飛ばされると、その分ブラシ毛に付着する潤滑剤が減少した状態になる。以下、この付着する潤滑剤が減少している箇所を潤滑剤減少箇所という。
【0029】
ここで、感光体ドラム31Yの回転軸と直交する断面において、感光体ドラム31Yの表面と、ブラシローラ351のブラシ部分と、均しブレード355の端面355cとで囲まれた空間が形成されている。このため、潤滑剤352は、上述のように当接位置351Cで感光体ドラム31Yの表面に向けて弾き飛ばされたにも関わらず感光体ドラム31Yの表面にうまく付着しなかったとしても閉空間内に留まるので、重力の影響等により落下してブラシローラ351に再度付着し再利用される。
【0030】
また、ブラシローラ351及び感光体ドラム31Yが回転することで、潤滑剤減少箇所が当接位置351Cに相当する位置から当接位置351Aに相当する位置に至る。そして、当接位置351Aにおいて、感光体ドラム31Yと、ブラシローラ351における潤滑剤減少箇所とが接触して、潤滑剤減少箇所に残存する潤滑剤が感光体ドラム31Y表面に塗布される。
【0031】
ここで、当接位置351Aにおいて、潤滑剤減少箇所と、感光体ドラム31Yが接触しても、潤滑剤減少箇所から感光体ドラム31Yに移動せずに、ブラシローラ351側に残存する潤滑剤も存在し得る。この残存する潤滑剤が、当接位置351Aにおいてブラシに弾き飛ばされて、飛散し、無駄に消費されることも考えられる。しかしながら、上述のように、ブラシローラ351に付着している潤滑剤352の多くは、当接位置351Cにおいてブラシに弾き飛ばされることで感光体ドラム31Yに供給されており、また当接位置351Aにおいても塗布されているので、当接位置351Aにおいてブラシに弾き飛ばされ得る潤滑剤はあまり残っておらず、潤滑剤が飛散して無駄に消費される量は少なく抑えられることになる。
【0032】
ここで、潤滑剤塗布装置35Yの配設位置は、ブラシ毛により弾き飛ばされた潤滑剤352が感光体ドラム31Yに到達して付着できる範囲内であればよい。この範囲内での具体的な配設位置は当業者であれば、必要に応じて決定できる設計事項となる。このとき、均しブレード355は、ブラシローラ351の回転方向Cに対し、感光体ドラム31Yとの接触位置よりも所定量だけ上流側でブラシローラ351のブラシ部と当接することになる。この所定量は、当接位置351Cと感光体ドラム31Y表面との距離に基づき、又は、図2(a)に示す角度Eに基づき規定することができる。
【0033】
例えば、当接位置351Cと、感光体ドラム31Y表面との距離は、近いほど望ましい。近いほど潤滑剤352が感光体ドラム31Yに到達する率が高まるからである。この場合、上述の所定量も0に近いほど望ましいことになる。
また、潤滑剤352は、おおよそ図2(b)に示す、ブラシローラ351の当接位置351Cにおける仮想的な接平面Fと平行な方向Hへと弾き飛ばされると考えられる。感光体ドラム31Yの回転中心と、ブラシローラ351の回転中心351Bとを通る線が鉛直線と一致する場合であれば、図2(a)に示す角度Eは45°に近い程望ましい。跳ね飛ばされた潤滑剤が到達する距離は、角度Eが45°に近いほど長くなって、潤滑剤352が感光体ドラム31Yに到達する率が高まるからである。しかしながら、角度Eは45°に限らず、弾き飛ばされた潤滑剤352が感光体ドラム31Yに到達して付着できる範囲内で決定されればよい。なお、角度Eが45°である場合、上述の所定量はブラシローラ351の外周長の1/8になる。
【0034】
ブラシ毛により弾き飛ばされる潤滑剤352が飛翔して到達する距離は、潤滑剤の素材、大きさ、ブラシ毛の素材、硬度、長さ、ブラシローラ351の外径、回転速度、ブラシローラ351と均しブレード355との当接範囲など、さまざまなパラメータによっても変化する。また、感光体ドラム31Yの周囲には、潤滑剤塗布装置35Yの他にも、帯電器32Y、現像器33Y及び清掃部36Y等を配設するので、これらの配設位置との関係、物理的な干渉などにも配慮を要する。
【0035】
以上のように、潤滑剤塗布装置35Yの具体的な配設位置は、上述のような様々なパラメータを考慮し、また実験、シミュレーション等を用い最適な配設位置を決定することができる。
1.3.潤滑剤塗布装置の構成の変形例
(1)上述の実施形態では、均しブレード355は、潤滑剤352を感光体ドラム31Yへと飛散させて付着させる当接部材と、感光体ドラム31Yに供給された潤滑剤を均して皮膜を形成するブレードの機能を兼ねることとしていたが、これに限らない。例えば、潤滑剤供給装置は、図3に示すように、均しブレード355に代えて、当接部材356と、均しブレード355’とを備えることとしてもよい。
【0036】
この構成によれば、当接部材356の配設位置を、均しブレード355’の配設位置の影響を受けることなく独立して定めることができる。従って、画像形成装置を構成する各構成部材の配設位置の決定に柔軟性を持たせることができる。
(2)上述の実施形態では、均しブレード355は、潤滑剤352を感光体ドラム31Yへと飛散させて付着させる当接部材と、感光体ドラム31Yに供給された潤滑剤を均して皮膜を形成するブレードの機能を兼ねることとしていたが、これに限らない。例えば、図4に示すように、均しブレード355に代えて、当接部材355Yと、均しブレード355Xとを備えることとしてもよい。
【0037】
この構成によれば、当接部材355Yの配設位置を、均しブレード355Xの配設位置の影響を受けることなく独立して定めることができる。従って、画像形成装置を構成する各構成部材の配設位置の決定に柔軟性を持たせることができる。
2.潤滑剤の供給率、印刷画像の再現性の測定
(1)感光体ドラムへの潤滑剤の供給率
本構成1(図2の構成)、本構成2(図4の構成)、従来構成1(図7)及び従来構成2(図4の構成より当接部材355Yを除いたもの)のそれぞれについて、感光体ドラムへの潤滑材の供給率を測定した結果について説明する。
【0038】
本構成1、2、従来構成2では、ブラシローラは、感光体ドラムとの接触位置において感光体ドラムとカウンタ方向に回転し、従来構成1ではウイズ方向に回転している。また、ブラシローラの毛は、ポリエステル樹脂から成り、4デニールで植密度225000本/平方インチである。固形潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を固形化したものを用い、ブラシローラ351への付勢力は6N/mである。均しブレードは、ポリウレタンゴムを厚み2mm、突き出し量8mmで板金に保持したもので、感光体ドラムに対し、当接力20N/m、当接角10°(本構成1、2、従来構成2)、又は当接角45°(従来構成1)で当接している。ポリウレタンゴムには硬度70°、反発弾性20%(いずれも25℃における測定値)のものを使用した。
【0039】
図5は、本構成1、本構成2、従来構成1及び従来構成2のそれぞれについての感光体ドラムへの潤滑材の供給率を示している。
ここで、供給率は、式
供給率 = 回収量/掻き取り量
で算出している。
【0040】
また、掻き取り量は、ホルダに保持されている潤滑剤について、感光体ドラムを1000回転させたのちの潤滑剤の減少量であり、回収量は、クリーニングブレードで回収された潤滑剤の量である。
従来構成1では、供給率が55%であった。これは、ブラシに弾き飛ばされて飛散した潤滑剤がブレードの上に滞留したままになっている、若しくは潤滑剤が、ブレードとブラシの接触位置でブラシの回転方向に飛散してしまうためだと考えられる。また、従来構成2では、供給率は45%となった。これは、感光体とブラシの接触位置でブラシの回転方向に飛散してしまうためである。
【0041】
一方、本構成1、2では、供給率は、双方とも90%程度に上昇しており、供給率が従来構成に比べ大幅に改善している。
(2)ベタ濃度の印刷画像についての再現性
図6は、本構成1(以下、単に本構成という。)及び、従来構成2(以下、単に従来構成という。)のそれぞれについて、潤滑剤のブラシローラへの押圧力を変化させてベタ濃度の画像を印刷し、各ベタ画像について測定したページ内色差ΔEを示す。
【0042】
測定は、分光光度計CM2600dを用いて行った。具体的には、まず、測定対象となる画像サンプル上に、マトリックス状に30箇所(長手方向に6箇所×短手方向に5箇所)の測定ポイントを設定し、その測定ポイントそれぞれにおけるL*、a*、b*を測定した。
次いで、30箇所のうち2箇所の測定ポイントについての測定結果を総当たりで選出し、選出した両測定結果についてΔEを下式により求めた。
【0043】
ΔE=((L*−L*)−(a*−a*)−(b*−b*)1/2
ここで、一方の測定ポイントの測定結果(L*、a*、b*)を(L*、a*、b*)、他方の測定ポイントの測定結果(L*、a*、b*)を(L*、a*、b*)と表現している。
【0044】
そして、測定されたΔEのうちの最大値をその画像サンプルのΔEとしている。
潤滑剤のブラシローラへの押圧力としては、3N/m、6N/mの2種類を使用している。そして、画像評価を、耐久前の(連続印刷を行わずにベタ濃度の画像を印刷した)場合と、耐久後の(10℃×15%RHの環境で、各色5%相当の濃度の画像を連続で10万枚、20万枚、30万枚印刷した後に、ベタ濃度の画像を印刷した)場合のそれぞれについて行った。
【0045】
算出されたΔEは、その値が大きいほど画像ノイズが激しいことを示している。
図6を参照すると、従来構成では、押圧力が小さい3N/mにおいて、耐久前、耐久後(10万枚〜30万枚)のいずれにおいてもΔEが3以上になっている。また、押圧力が大きい6N/mでもΔEは3に近い値となっている。
一方で、本構成では、30万枚耐久した後でも、押圧力3N/m、6N/mともにΔEが3以下になっており、ベタ画像の再現性が高いことを示している。
【0046】
ここで、ベタ濃度の画像ノイズは、潤滑剤の塗布量に依存する。潤滑剤の塗布量が少ない場合、感光体表面の摩擦係数が上がり、トナーの離型性が悪くなるので、ベタ画像の再現性が悪くなるためである。
上記の測定結果では、本構成に関しベタ濃度の再現性は従来構成よりも高くなっており、本構成では、従来構成に比べ潤滑剤の供給率が改善したことを示している。
【0047】
以上、本発明の一実施の形態に係る本構成によれば、従来構成よりも潤滑剤の供給率を上げることができ、さらに、耐久を行った後にも潤滑剤の供給率を維持することができる。すなわち、本構成によれば、潤滑剤の量に依存する画像ノイズを改善することができる。
3.変形例
なお、本発明の潤滑剤供給装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0048】
(1)上述の画像形成装置には、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリ装置、多機能複合機などが含まれる。
(2)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の潤滑剤供給装置は、長寿命、省スペース化を要する画像形成装置に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンタ
3Y 作像部
4 給紙部
5 定着部
10 光学部
11 中間転写ベルト
13 従動ローラ
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 一次転写ローラ
35Y 潤滑剤塗布装置
36Y 清掃部
41 給紙カセット
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 二次転写ローラ
351 ブラシローラ
352 潤滑剤
353 ホルダ
355 均しブレード
356 当接部材
361 クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持回転体の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置であって、
像担持回転体の表面に接触して潤滑剤を供給するブラシローラと、
ブラシローラのブラシ部に当接する当接部材とを備え、
前記当接部材は、回転するブラシローラのブラシ部の毛が前記当接部材に当接して撓み、撥ねて元の姿勢に復元するときに、そのブラシ部の毛に付着していた潤滑剤が像担持回転体の表面に向けて弾き飛ばされる位置に配設されている
ことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記ブラシローラは、前記像担持回転体との接触位置において、前記像担持回転体の回転とはカウンタ方向に回転し、
前記当接部材は、前記ブラシローラの回転方向に対し、前記像担持回転体との接触位置よりも所定量だけ上流側で前記ブラシローラのブラシ部と当接する位置に配設される
ことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
像担持回転体の表面に供給された潤滑剤を均す均しブレードを備え、
前記均しブレードが、前記当接部材を兼ねている
ことを特徴とする請求項2記載の潤滑剤供給装置。
【請求項4】
前記像担持回転体の回転軸と直交する断面において、前記像担持回転体表面と、ブラシローラのブラシ部と、均しブレードとで囲まれた空間が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の潤滑剤供給装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189697(P2012−189697A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51732(P2011−51732)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】