説明

潤滑油・切削油の磁性体除去装置

【構成】 オイルタンクの油面に、非磁性体の支持筒体をその下端部が没入した状態で略垂直に設置し、この支持筒体内に磁石を配置するとともにこの磁石を駆動源によって支持筒体の内壁面に沿って上下方向に進退可能とし、支持筒体の前記油面から突出した部分にブラケットを介してスクレーパ板を揺動可能に設置し、このスクレーパ板は揺動中心は支持筒体の外壁面よりも離れているとともその上端が揺動中心の上方において支持筒体の外壁面に鋭角状態でもたれかかっている切削油・潤滑油の磁性体除去装置である。
【発明の効果】オイルタンク内の切削油・潤滑油に混入している切粉を自動的な作業によって除去することができるため、従来のように、切粉等の磁性体を取り除くにあたって手作業によるヘラ等を移動は不要となり、この結果、切削油に混入する切粉等の磁性体の除去作業を能率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は潤滑油・切削油の磁性体除去装置に関し、潤滑油や・切削油に混入する切粉等の磁性体を除去する場合に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の磁性体除去装置は、非磁性体からなる切削油流路の裏面に磁石を配置したものであり、この切削油流路に切削油を通過させることよって混入する切粉(磁性体のもの、以下同じ)をその表面に吸着させることによって除去し、送油ポンプの詰まりや刃物の磨耗を防止していた。
【0003】
【特許文献1】特開平05−138066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来における磁性体(切粉)除去装置にあっては、切削油流路に吸着した切粉を取り除くにあたって、切削油流路面に沿ってヘラ等を移動させることにより切り粉を掻き寄せなければならないため、作業に手間がかかり、この結果、切削油に混入する切粉の除去作業を能率良く行うことができないという不都合を有した。
【0005】
この発明の課題はこの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を達成するために、発明者は鋭意研究し、この発明を完成した。
この発明に係る切削油・潤滑油の磁性体除去装置においては、オイルタンクの油面に、非磁性体の支持筒体をその下端部が没入した状態で略垂直に設置し、この支持筒体内に磁石を配置するとともにこの磁石を駆動源によって前記支持筒体の内壁面に沿って上下方向に進退可能とし、
前記支持筒体の前記油面から突出した部分にブラケットを介してスクレーパ板を揺動可能に設置し、このスクレーパ板は揺動中心は前記支持筒体の外壁面よりも離れているとともその上端が前記揺動中心の上方において前記支持筒体の外壁面に鋭角状態でもたれかかっているものである。
【0007】
なお、この場合、前記支持筒体と前記スクレーパ板の間に磁気シールド部材を配置することもできる。
【0008】
また、前記スクレーパ板の上端縁はナイフエッジであり、その先端縁は前記支持筒体の外壁面に隙間無く接するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る切削油・潤滑油の磁性体除去装置は上記のように構成されているため、即ち、オイルタンクの油面に、非磁性体の支持筒体をその下端部が没入した状態で略垂直に設置し、この支持筒体内に磁石を配置するとともにこの磁石を駆動源によって前記支持筒体の内壁面に沿って上下方向に進退可能とし、
前記支持筒体の前記油面から突出した部分にブラケットを介してスクレーパ板を揺動可能に設置し、このスクレーパ板は揺動中心は前記支持筒体の外壁面よりも離れているとともその上端が前記揺動中心の上方において前記支持筒体の外壁面に鋭角状態でもたれかかっているため、
前記駆動源によって前記磁石を前記支持筒体の下部に配置すれば、前記オイルタンク内の切削油・潤滑油に混入している切粉は、この磁石の磁力によって前記支持筒体の外壁面に吸着される。この状態で、前記駆動源を作動させて前記磁石を上方に移動させれば、吸着された切粉は磁石の移動に従って、支持筒体の外壁面を上方に移動する。そして、支持筒体の外壁面に接触しているスクレーパ板の上端縁を押し上げることによって揺動させ(図5の仮想線の図を参照のこと)、この支持筒体の外壁面に接触しているスクレーパ板の上端縁を通過する。この状態で、前記駆動源を作動させて、前記磁石を下方に移動させれば、吸着された切粉は磁石の移動に従って下方に移動し、支持筒体の外壁面に接触しているスクレーパ板の上端縁によってはぎ取られ、スクレーパ板の表面を滑りながら落下する。吸着された切粉がはぎ取られた磁石は、そのまま、支持筒体内を下方へ移動し、オイルタンク内に配置される。そして、再度切粉の吸着が開始される。
【0010】
よって、この切削油・潤滑油の磁性体除去装置を使用すれば、オイルタンク内の切削油・潤滑油に混入している切粉を自動的な作業によって除去することができるため、従来のように、切粉を取り除くにあたって手作業によるヘラ等を移動は不要となり、この結果、切削油に混入する切粉の除去作業を能率を向上させることができる。
【0011】
なお、この場合、前記支持筒体と前記スクレーパ板の間に磁気シールド部材を配置すれば、前記支持筒体内の磁石の磁力を、スクレーパ板の表面に及ぼすことはないため、このスクレーパ板によって剥離された切粉は滑らかに落下することができる。
【0012】
また、前記スクレーパ板の上端縁はナイフエッジであり、その先端縁は前記支持筒体の外壁面に隙間無く接するようにすれば、前記吸着した切粉をはぎ取りが滑らかに行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る切削油・潤滑油の磁性体除去装置は、オイルタンクの油面に、非磁性体の支持筒体をその下端部が没入した状態で略垂直に設置する。この支持筒体内に磁石を配置するとともにこの磁石を駆動源によって前記支持筒体の内壁面に沿って上下方向に進退可能とする。前記支持筒体の前記油面から突出した部分にブラケットを介してスクレーパ板を揺動可能に設置する。このスクレーパ板は揺動中心は前記支持筒体の外壁面よりも離れているとともその上端が前記揺動中心の上方において前記支持筒体の外壁面に鋭角状態でもたれかかっている、ことに最も主要な特徴を有する。
【実施例】
【0014】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1はこの発明に係る切削油・潤滑油の磁性体除去装置の使用状態図、図2はこの磁性体除去装置の斜視図、図3は図1における III部拡大図、図4は図3におけるIV矢視図、図5は図4におけるV-V 線断面図、図6は図4における部分断面図である。
【0016】
図1において、Tはオイルタンクであり、切削油・潤滑油10が詰められている。この切削油・潤滑油10は切削機械の切削油として、又は、潤滑油として循環使用されている。
【0017】
Aは切粉除去装置(この発明の「磁性体除去装置」に相当する)であり、前記オイルタンクTに略垂直に設置されている。この切粉除去装置Aはその下端部が切削油・潤滑油10の油面に没入した状態でオイルタンクTの天板11に固定されている。
【0018】
20はピストンシリンダ機構(この発明の「駆動源」に相当する)であり、この切粉除去装置Aの上部に設置されている。このピストンシリンダ機構20は空気圧によって作動し、この切粉除去装置Aを作動させるものである。21は方向切り換え弁(電磁弁)、Pは空気ポンプ,Mはこの空気ポンプを作動させるモーターである。
【0019】
図2〜図6に基づいてこの切粉除去装置Aを詳述する。
【0020】
30は支持筒体であり、ステンレス等の非磁性体によって形成されている。この支持筒体は上下方向に配置され、その横断面が長方形状をしている。
【0021】
図5及び図6において、31は進退ロッドであり、前記支持筒体30の軸心にそって配置されている。この進退ロッド31は前記ピストンシリンダ機構20によって上下動する。32は水平金具であり、前記進退ロッド31の下端にナット止めされている。この水平金具32はステンレス等の非磁性体によって形成されている。33,33 は磁石ステーであり、前記水平金具32にボルト・ナット止めされている。この磁石ステー33,33 は鉄等の磁性体で形成され、略垂直方向に延びている。この一対の磁石ステー33,33 の間に所定間隔を維持できるように非磁性体のスペーサ34,34 がビス止めされている。
【0022】
35,35 は永久磁石であり,前記磁石ステー33,33 に磁力によって吸着されている。この永久磁石35,35 の表面は前記支持筒体30の内壁面に近傍に位置し、前記支持筒体30の外壁面までその磁力を及ぼしている。
【0023】
この永久磁石35,35 は前記ピストンシリンダ機構20によって前記支持筒体30の内壁面に沿って上下動する。
【0024】
図2〜図6において、41は下ステーであり、垂直片部411 と水平片部412 とから構成され、その垂直片部411 を介して前記支持筒体30の外壁面の下部にビス止めされている。この水平片部412 は前記垂直片部411 よりも幅方向に広く、後記上ステー43,後記シールド筒60及び後記切粉受け箱70を載置する。
【0025】
43は上ステーであり、垂直片部431 と水平片部432 とから構成され、その水平片部432 を前記下ステー41の水平片部412 に載置固定した状態で、その垂直片部431 を前記支持筒体30の外壁面の上部にビス止めしている。この垂直片部431 は上部が両幅方向に広がって突出部45,45 を形成している。この突出部45,45,における前記支持筒体30から離れた位置に透孔46,46,…が形成されている。この透孔46,46,…の機能は後記する。
【0026】
なお、上記下ステー41および上ステー43はステンレス等の非磁性体によって形成され、前記支持筒体30の両側におのおの設置されている。
【0027】
次に、50,50 はスクレーパ板であり、前記一対の上ステー41における突出部45,45 の間に配置されている。このスクレーパ板50はステンレス等の非磁性体によって前記略長方形状に形成され、その両側縁には垂直板51,51 が折り曲げ形成されている。52は揺動軸であり、前記スクレーパ板50の下端縁に沿って固定されている。この揺動軸52の両端部を前記突出部(上ステー43の)45,45 の透孔46,46 に貫通させることによって、前記スクレーパ板50は揺動することができる。この状態で、このスクレーパ板50の上端縁は前記前記支持筒体30の外壁面に鋭角状態でもたれかかっている(図5の状態を参照のこと)。なお、このスクレーパ板50の上端縁はナイフエッジであり、その先端縁は前記支持筒体30の外壁面に隙間無く接している。
【0028】
また、53,53,…はストッパピンであり、前記突出部(上ステー43の)45,45 における透孔46,46 の上方に突設されている。このストッパピン53,53,…は前記スクレーパ板50が必要以上に揺動(前記支持筒体30と反対方向に)しないようにするものである。
【0029】
次に、60は鉄等の磁性体で形成されたシールド筒(この発明の「シールド部材」に相当する)である。このシールド筒60はシールド板61,61 と連結板62,62 とから構成され、前記上ステー43の水平片部432 に載置された状態で、前記支持筒体30に僅かな空間を介して外嵌めされている。このとき、前記シールド板61,61 は前記永久磁石35,35 の対面する側に配置され、永久磁石35,35 が最も下降したときの前記水平板32の位置から前記スクレーパ板50の略中間部の裏側にまで延びている(図5を参照のこと)。このシールド板61,61 は前記永久磁石35,35 の磁力が外部まで及ぶのを遮蔽している。
【0030】
70,70 は切粉受け箱であり、前記下ステー41の水平片部412 に載置されている。この切粉受け箱70,70 は前記スクレーパ板50の下端縁の下方に開口している。スクレーパ板50の上端縁によってはぎ取られた切粉等の磁性体Fがスクレーパ板50を滑り、この磁性体受箱(切粉受け箱)70,70 内に落下収容される。
【0031】
このように構成される切粉除去装置Aの作動を説明する。
【0032】
自動運転するために、コントローラーにおいて、永久磁石35,35 が最下端に位置している状態を1時間(自由に設定することができる)(下降開始からの時間)、上昇に要する時間を30秒(自由に設定することができる)に設定する。
【0033】
この状態で、スタートスイッチを入れると、自動運転を表示する作動ランプが点灯する。そして、方向切り換え弁21が上昇の方向にセットされ,ピストンシリンダ機構20に加圧空気が送りこまれる。すると、永久磁石35,35 は一端最上端まで上昇し、30秒経過すると方向切り換え弁21が下降の方向にセットされる。
【0034】
方向切り換え弁21が下降の方向にセットされピストンシリンダ機構20に加圧空気が送りこまれると、永久磁石35,35 は最下端まで下降し、切削油・潤滑油中に埋没している。このときに、切削油・潤滑油中の切粉等の磁性体Fが永久磁石35,35 によって前記支持筒体30の外壁面に吸着される。
【0035】
この状態で、下降開始から1時間が経過すると、方向切り換え弁21が上昇の方向にセットされピストンシリンダ機構20に加圧空気が送りこまれる。すると、永久磁石35,35 は支持筒体30の外壁面に切粉等の磁性体Fを吸着したまま上昇しはじめる。すなわち、吸着された切粉等の磁性体Fは永久磁石35,35 の移動に従って、支持筒体30の外壁面を上方に移動する。そして、スクレーパ板50の上端縁の位置に達したときに、この吸着している切粉等の磁性体Fはその上端縁を押し上げることによってスクレーパ板50を揺動させ(図5の仮想線の図を参照のこと)、この支持筒体30の外壁面に接触しているスクレーパ板50の上端縁を通過する。そして、永久磁石35,35 が最上端まで上昇する。
【0036】
この状態で、上昇開始から30秒経過すると、方向切り換え弁21が下降の方向にセットされピストンシリンダ機構20に加圧空気が送りこまれる。すると、永久磁石35,35 は支持筒体30の外壁面に切粉等の磁性体Fを吸着したまま下降しはじめる。すなわち、吸着された切粉等の磁性体Fは永久磁石35,35 の移動に従って、支持筒体30の外壁面を下方に移動する。そして、スクレーパ板50の上端縁の位置に達したときに、この吸着している切粉等の磁性体Fはその上端縁によってはぎ取られ、スクレーパ板50の表面を滑りながら切粉受け箱70,70 内に落下収容される。吸着された切粉等の磁性体Fがはぎ取られた永久磁石35,35 は、そのまま、支持筒体30内を下方へ移動し、オイルタンクT内に配置される。そして、再度切粉等の磁性体Fの吸着が開始される。この作業が自動的に繰り返される。
【0037】
なお、自動運転の代わりに、コントローラーの上昇のスイッチを操作して永久磁石35,35 を上昇させて、下降のスイッチを操作するまでは最上端の状態を維持させ、また、下降のスイッチを操作して永久磁石35,35 を下降させ、上昇のスイッチを操作するまでは最下端の状態を維持させることもできる。
【0038】
この実施例では、前記駆動源として、ピストンシリンダ機構を採用したが、この発明はこの機構に限られるものではなく、ボールネジ機構、ラックピニオン機構等の従来存在する上下動を可能とする全ての機構を含むものである
【産業上の利用可能性】
【0039】
この切削油・潤滑油の磁性体除去装置を使用すれば、オイルタンク内の切削油・潤滑油に混入している切粉等の磁性体を自動的な作業によって除去することができるため、従来のように、切粉を取り除くにあたって手作業によるヘラ等を移動は不要となる。このため、切削油に混入する切粉の除去作業を能率を向上させる際に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1はこの発明に係る切削油・潤滑油の磁性体除去装置の使用状態図である。
【図2】図2はこの磁性体除去装置の斜視図である。
【図3】図3は図1における III部拡大図である。
【図4】図4は図3におけるIV矢視図である。
【図5】図5は図4におけるV-V 線断面図である。
【図6】図6は図4における部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A … 切粉除去装置(磁性体除去装置)
F … 切粉(磁性体)
T … オイルタンク
10 … 切削油・潤滑油
11 … 天板(オイルタンクの)
20 … ピストンシリンダ機構(駆動源)
21 … 方向切り換え弁(電磁弁)
30 … 支持筒体
31 … 進退ロッド
32 … 水平金具
33 … 磁石ステー
34 … スペーサ
35 … 永久磁石
41 … 下ステー
411 … 垂直片部(下ステーの)
412 … 水平片部(下ステーの)
43 … 上ステー 431 … 垂直片部(上ステーの)
432 … 水平片部(上ステーの)
45 … 突出部(上ステーの)
46 … 透孔
50 … スクレーパ板
51 … 垂直板
52 … 揺動軸
53 … ストッパピン
60 … シールド筒(シールド部材)
61 … シールド板
62 … 連結板
70 … 切粉受け箱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルタンクの油面に、非磁性体の支持筒体をその下端部が没入した状態で略垂直に設置し、この支持筒体内に磁石を配置するとともにこの磁石を駆動源によって前記支持筒体の内壁面に沿って上下方向に進退可能とし、
前記支持筒体の前記油面から突出した部分にブラケットを介してスクレーパ板を揺動可能に設置し、このスクレーパ板は揺動中心は前記支持筒体の外壁面よりも離れているとともその上端が前記揺動中心の上方において前記支持筒体の外壁面に鋭角状態でもたれかかっていることを特徴とする潤滑油・切削油の磁性体除去装置。
【請求項2】
請求項1の潤滑油・切削油の切粉除去装置において、前記支持筒体と前記スクレーパ板の間に磁気シールド部材が配置されていることを特徴とする潤滑油・切削油の磁性体除去装置。
【請求項3】
請求項1の潤滑油・切削油の切粉除去装置において、前記スクレーパ板の上端縁はナイフエッジであり、その先端縁は前記支持筒体の外壁面に隙間無く接していることを特徴とする潤滑油・切削油の磁性体除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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