説明

潤滑流動繊維押出

高分子繊維を押し出すための方法およびシステムが開示される。押出工程は、好ましくは潤滑剤がダイオリフィスを通過するときにポリマー溶融ストリームを包み込むように、ポリマー溶融ストリームとは別に、潤滑剤を押出ダイの各オリフィスに配送することを含むのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー繊維の押出加工および装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維形成方法および装置は、通常、高分子材料をオリフィスから押し出すことを含む。典型的な繊維押出工程の速度、圧力および温度は、経済的要求と高分子材料の物理特性との間の妥協を表す。例えば、高分子材料の分子量は、溶融粘度および高分子材料性能の両方に直接関係している。残念ながら、高分子材料性能の改善は、通常、分子量の増大と、それに対応する比較的高い溶融粘度とに関係している。溶融粘度が高いほど、通常、遅くて経済的に実行可能性の低い工程がもたらされる。
【0003】
より高分子量のポリマーの高溶融粘度に対処するために、従来の工程は、高分子材料の溶融粘度を低下させようとして、比較的高温での加工に頼ることがある。しかしながら、工程温度は通常、高温における高分子材料の分解により制限され得る。工程温度の増大と併せて、工程速度を改善するために、工程圧力、すなわちポリマーが押し出される圧力も増大され得る。しかしながら、工程圧力は、繊維の押出に使用される装置によって制限され得る。結果として、従来の工程における加工速度は、通常、上述した因子により制約される。
【0004】
上述した問題を考慮すると、繊維製造のための溶融ポリマーの押出における従来の手法は、高分子材料の分子量を低下させて、経済的に実行可能な加工速度を達成することである。分子量の低下は、それに対応して、押し出された高分子繊維の材料特性の妥協をもたらす。
【0005】
従来の押出繊維の材料特性における妥協に対して少なくとも部分的に対処するために、繊維強度は、繊維の高分子材料を配向させることによって改善され得る。配向は、繊維が押出ダイを出た後に繊維を引っ張る、または伸長することによって付与される。結果として、繊維として使用される高分子材料は、通常、高分子材料がダイを出る半溶融状態においてかなりの引張応力保持能力(tensile stress carrying capability)がなければならない(そうでないと、繊維は引っ張られたときに、ただ破断するだけであろう)。このような特性は、従来、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびポリアミドなどの半結晶性ポリマーにおいて得ることができる。従って、従来の繊維押出工程は、ほんの限られた数の高分子材料により実施することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高分子繊維を押し出すための方法およびシステムを提供する。押出工程は、好ましくは潤滑剤がダイオリフィスを通過するときにポリマー溶融ストリームを包み込むように、ポリマー溶融ストリームとは別に、潤滑剤を押出ダイの各オリフィスに配送することを含むのが好ましい。高分子繊維押出工程においてポリマー溶融ストリームとは別に配送される潤滑剤の使用は、多数の潜在的な利点を提供することができる。
【0007】
例えば、別に配送される潤滑剤の使用は、引っ張ることをしなくても、配向した高分子繊維を提供することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、配向した高分子繊維を得るために、繊維がダイを出た後に繊維を引っ張る、または伸長することは必要ないであろう。押出後に引っ張られなければ、高分子繊維は、ダイを出た後の半溶融状態においてあまり引張応力保持能力を示す必要はない。代わりに、本発明の潤滑式押出方法は、ある場合には、高分子材料が好ましくはダイを出る前に配向されるように、ダイの中を移動する際に高分子材料に配向を付与することができる。
【0008】
配向を付与するために引っ張るまたは伸長する必要性を低減またはなくすことの1つの潜在的な利点は、高分子繊維を押し出すための高分子材料の候補が著しく拡大され、他の方法では押出繊維として使用されないかもしれない高分子材料も含むことが可能なことである。また、提唱される方法によって、異相ポリマーも押し出して配向繊維にすることができる。「鞘/芯」または「海島(islands−in−the−sea)」または「パイ(pie)」または「中空パイ(hollow pie)」などの複合繊維構造も本発明に適合する。
【0009】
本発明の方法の潜在的な利点としては、例えば、比較的低い圧力で多数の高分子繊維を同時に押出可能なことがある。比較的低い圧力は、装置および工程コストの点でコスト削減をもたらすことができる。
【0010】
本発明の目的では、「繊維」(およびその変化した形)という用語は、その幅に対して実質的に連続的な長さ、例えばその幅の少なくとも1000倍の長さを有する細長い糸のような構造またはフィラメントを意味する。本発明の繊維の幅は、好ましくは、5ミリメートル以下、好ましくは2ミリメートル以下、さらにより好ましくは1ミリメートル以下の最大寸法に制限され得る。
【0011】
本発明の繊維は、一成分繊維、二成分またはコンジュゲート繊維(便宜上、「二成分」という用語は、2つの成分からなる繊維および2つよりも多い成分からなる繊維を意味するために使用されることが多い)、および二成分繊維の繊維セクション、すなわち二成分繊維の断面の一部を占め、そして二成分繊維の長さ全体に及ぶセクションであり得る。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態のもう1つの潜在的な利点は、低メルトフローインデックス(MFI)を有するポリマーを押出可能なことに見出すことができる。従来の高分子繊維押出工程では、押出ポリマーのMFIは、約35以上である。本発明の方法を用いると、高分子繊維の押出は、MFIが30以下、ある場合には10以下、他の場合には1以下、そして更に他の場合には0.1以下であるポリマーを用いて達成することができる。本発明より前は、繊維を形成するために、このように高分子量(低MFI)のポリマーの押出加工は、通常、溶媒を用いてポリマーを溶解させ、それによりその粘度を低下させて実施された。この方法は、高分子ポリマーを溶解させ、次にそれを除去する(廃棄または再生利用を含む)という困難を伴う。低メルトフローインデックスポリマーの例としては、ミシガン州ワイアンドットのBASFコーポレーション(BASF Corporation)から入手可能なルーラン(LURAN)S757(ASA、8.0MFI)、テキサス州ヒューストンのハンツマン・ポリマーズ(Huntsman Polymers)から入手可能なP4G2Z−026(PP、1.0MFI)、オハイオ州エイボンレイクのポリワン・コーポレーション(PolyOne Corporation)から入手可能なFR PE152(HDPE、0.1MFI)、テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカル(ExxonMobil Chemical)から入手可能な7960.13(HDPE、0.06MFI)、テキサス州ヒューストンのエクソンモービル・ケミカルから入手可能なエンゲージ(ENGAGE)8100(ULDPE、1.0MFI)が挙げられる。
【0013】
本発明のいくつかの方法のもう1つの潜在的な利点には、達成可能な比較的高い質量流量が含まれ得る。例えば、本発明の方法を用いて、10グラム/分以上、ある場合には100グラム/分以上、その他の場合には400グラム/分以上の速度で高分子材料を押し出して繊維にすることが可能であろう。これらの質量流量は、0.2平方ミリメートル(mm2)以下の面積を有するオリフィスによって達成することができる。
【0014】
本発明のいくつかの方法の更にもう1つの潜在的な利点には、例えば、強度を高める、あるいは他の有利な機械特性や光学特性などを提供することができる分子レベルの配向を含む高分子繊維を押出可能であることが含まれ得る。高分子繊維がアモルファスポリマーで構成される場合、アモルファス高分子繊維は、任意で、剛性または規則性のアモルファスポリマー相または配向されたアモルファスポリマー相の部分(すなわち、繊維内の分子鎖が、繊維軸にほぼ沿って様々な程度で位置合わせされている部分)を含むと特徴付けることができる。
【0015】
配向高分子繊維は既知であるが、配向は、従来、繊維がダイオリフィスを出るときに繊維を引っ張る、または延伸することによって達成される。しかしながら、多くのポリマーは、溶融または半溶融状態での押出の直後に、破断することなく引っ張るのに十分な機械強度を持たないので、押出後に引っ張ることができない。しかしながら、本発明の方法では、高分子材料はオリフィスを出る前にダイの中で配向され得るので、配向を達成するために高分子繊維を延伸する必要性をなくすことができる。結果として、商業的に実現可能な工程において、従来は押出および延伸することができなかったポリマーを用いて配向繊維を押し出すことができる。
【0016】
本発明のいくつかの方法では、潤滑剤、ダイ、または潤滑剤およびダイの両方の温度を制御して、配向がダイの外側での緩和のために損失されない、あるいは大きく減少されないように、高分子材料を急冷するのが好ましいであろう。ある場合には、少なくともひとつには、例えば蒸発により高分子材料を急冷するその能力に基づいて、潤滑剤を選択することができる。
【0017】
1つの態様では、本発明は、ダイ内に位置するオリフィスにポリマー溶融ストリームを通過させることであって、前記オリフィスが、入口、出口、および入口から出口まで延在する内部表面を有し、前記オリフィスが半双曲線状(semi−hyperbolic)の収束オリフィスであり、前記ポリマー溶融ストリームが入口でオリフィスに入り、出口でオリフィスから出ることと、前記ポリマー溶融ストリームとは別に、潤滑剤をオリフィスに配送することであって、前記潤滑剤がオリフィスの入口で導入されることと、前記ポリマー溶融ストリームがオリフィスの出口を出た後、ポリマー溶融ストリームを含む繊維を捕集することとによる、高分子繊維の製造方法を提供する。
【0018】
もう1つの態様では、本発明は、ダイのオリフィスにポリマー溶融ストリームを通過させることであって、前記オリフィスが、入口、出口、および入口から出口まで延在する内部表面を有し、前記オリフィスが半双曲線状(semi−hyperbolic)の収束オリフィスであり、前記ポリマー溶融ストリームが入口でオリフィスに入り、出口でオリフィスから出て、前記ポリマー溶融ストリームがバルクポリマーを含み、前記バルクポリマーがポリマー溶融ストリームの大部分であり、前記バルクポリマーが、ASTM D1238でポリマーに対して指定された条件で測定したときに1以下のメルトフローインデックスを有するポリマーから本質的になることと、前記ポリマー溶融ストリームとは別に潤滑剤をオリフィスに配送することと、前記ポリマー溶融ストリームがオリフィスの出口を出た後、バルクポリマーを含む繊維を捕集することとによる、高分子繊維の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の方法、システム、および物品の様々な実施形態のこれらおよびその他の特徴および利点は、本発明の様々な例示的実施形態に関連して以下に説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の例示的実施形態の以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付図面の図が参照され、本発明が実施され得る特定の実施形態が実例として示されている。その他の実施形態が用いられてもよく、本発明の範囲から逸脱することなく構造変化を成し得ることは理解されるはずである。
【0021】
上述したように、本発明は、潤滑流動押出工程(lubricated flow extrusion process)により高分子繊維を製造するための方法およびシステムを提供する。また本発明は、このようなシステムおよび方法を用いて製造され得る高分子繊維も含むことができる。
【0022】
本発明の方法は、好ましくは、1つまたは複数のオリフィスを有するダイからポリマー溶融ストリームを押し出すことを含む。潤滑剤は、好ましくは、潤滑剤がダイを通過するときに結果的にポリマー溶融ストリームの外側表面のまわりに優先的に位置するようにして、ポリマー溶融ストリームとは別にダイに配送される。潤滑剤は別のポリマーでもよいし、あるいは、例えば鉱油などの別の材料でもよい。潤滑剤の粘度は、潤滑されるポリマーの粘度よりも実質的に低い(潤滑されるポリマーが押し出される条件下で)のが好ましいであろう。いくつかの典型的なダイおよびそこから押し出すことができる繊維は、以下に記載される。
【0023】
本発明の方法およびシステムにおいて潤滑剤を用いることの1つの潜在的な利点は、従来のポリマー繊維押出工程に対して、繊維を製造可能なプロセスウィンドウを広くできることである。図1は、この潜在的な利点を説明するための無次元のグラフを描く。ポリマー溶融ストリームの流量はx軸に沿って右側に移動すると増大し、そして潤滑剤の流量はy軸に沿って上方に移動すると増大する。破線(x軸の最も近くに描かれる)と、実線(破線の上方にある)との間の領域は、ポリマー溶融ストリームおよび潤滑剤の流量が互いに関して定常状態に保持され得る領域を示す。定常状態の流れの特徴は、好ましくは、ポリマー溶融ストリームと潤滑剤との両方について定常の圧力である。更に、定常状態の流れは、好ましくは、潤滑剤および/またはポリマー溶融ストリームについて比較的低い圧力で生じ得る。
【0024】
実線よりも上の領域(実線の破線とは反対側)は、過剰の潤滑剤が、ダイを通るポリマー溶融ストリームの流れを脈動させ得る領域を示す。ある場合には、脈動は、ポリマー溶融ストリームの流れを遮断し、そしてダイから出る繊維を中断または終了させるのに十分強い。
【0025】
破線よりも下の領域(すなわち、破線とx軸の間)は、潤滑剤の流れが失速またはゼロになる条件を示す。このような状況では、ポリマー溶融ストリームの流れはもはや潤滑されず、ポリマー溶融ストリームおよび潤滑剤の圧力は、通常、急速に上昇する。例えば、ポリマー溶融ストリームの圧力は、このような条件下では数秒のうちに、200psi(1.3×106Pa)から2400psi(1.4×107Pa)に上昇し得る。この領域は、ポリマーの質量流量が主に高い操作圧力により制限される慣用の非潤滑繊維形成ダイの従来の操作ウィンドウと考えられるであろう。
【0026】
図1に示される広いプロセスウィンドウは、好ましくは、オリフィスが結果的にポリマーの本質的に純粋な伸長流動をもたらすように収束するダイを用いて提供され得る。そうするために、ダイオリフィスは、本明細書において説明されるように、その長さに沿って(すなわち、第1のポリマーが流動する方向)半双曲線状の収束プロファイルを有することが好ましいであろう。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施形態の潜在的な利点の中には、通常は高分子繊維に押し出されない高分子材料の高分子繊維を製造できることがある。メルトフローインデックスは、ポリマーの溶融粘度に関して共通の業界用語である。米国材料試験協会(ASTM)は、試験方法(ASTM D1238)を含む。この試験方法は、特定のポリマーのタイプを測定するために使用すべき負荷および温度を指定する。本明細書中の使用では、メルトフローインデックス値は、所与のポリマータイプに対してASTM D1238で指定される条件において得られるはずである。メルトインデックス試験の一般的な原理は、上部のプランジャと、シリンダの底部に位置する小さいキャピラリまたはオリフィスとを有するシリンダ中で、試験すべきポリマーを加熱することを含む。熱的に平衡になると、所定の重量がプランジャにかけられ、押出物は捕集され、所定時間に対して秤量される。より高いメルトインデックス値は、通常、より高い流量およびより低い粘度に関連し、その両方とも、より低い分子量を示し得る。反対に低いメルトインデックス値は、通常、より低い流量およびより高い粘度に関連し、その両方とも、より高い分子量のポリマーを示し得る。
【0028】
従来の高分子繊維押出工程では、押出ポリマーのMFIは、約35以上である。本発明の方法を用いると、押出高分子繊維を形成するために使用されるポリマー溶融ストリームは1つまたは複数のポリマーを含むことができ、1つまたは複数のポリマーの全てが、30以下、ある場合には10以下、他の場合には1以下、そして更に他の場合には0.1以下のMFIを示す。いくつかの実施形態では、ポリマー溶融ストリームは、好ましくは30以下、ある場合には10以下、他の場合には1以下、そして更に他の場合には0.1以下のMFIを示す1つのポリマーから本質的になり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマー溶融ストリームは、ポリマー溶融ストリームの体積の少なくとも大部分を形成するバルクポリマーを含むと特徴付けることができる。ある場合には、バルクポリマーは、ポリマー溶融ストリームの体積の60%以上を形成するのが好ましいこともあるし、あるいは他の場合には、バルクポリマーは、ポリマー溶融ストリームの体積の75%以上を形成するのが好ましいこともある。これらの場合、体積は、ポリマー溶融ストリームがダイのオリフィスに配送されるときに決定される。
【0030】
バルクポリマーは、好ましくは、30以下、ある場合には10以下、他の場合には1以下、そして更に他の場合には0.1以下のMFIを示し得る。バルクポリマーを含むと特徴付けられる実施形態では、ポリマー溶融ストリームは、バルクポリマーに加えて1つまたは複数の第2のポリマーを含むことができる。様々な実施形態において、第2のポリマーは、好ましくは、30以下、ある場合には10以下、他の場合には1以下、そして更に他の場合には0.1以下のMFIを示し得る。
【0031】
低MFIポリマーであり、本発明に関連して繊維に押し出すことができるポリマーのいくつかの例としては、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)ゴム、高分子量ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS、AES、ポリイミド、ノルボルネン、Z/Nおよびメタロセンコポリマー(EAA、EMAA、EMMAなど)、ポリフェニレンスルフィド、アイオノマー、ポリエステル、ポリアミド、ならびに誘導体(例えば、PPS、PPO PPE)が挙げられる。
【0032】
本発明に適合し得る低MFIポリマーの他の例は、慣用の「ガラス状」ポリマーである。本明細書中で使用される「ガラス状」という用語は、材料の高密度、レオロジー、光学、および誘電性の変化の特徴があるガラス転移温度(Tg)を示す高密度のランダムなモルホロジーについての慣用の使用と同じである。ガラス状ポリマーの例としてはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明に適合し得る低MFIポリマーの更に他の例は、慣用の「ゴム状」ポリマーである。「ゴム状」という用語は、慣用の命名において使用されるものと同じであり、著しい絡み合い形成をして、長い緩和時間を有する材料をもたらすのに十分な分子量を有するランダムな高分子材料である。「ゴム状」ポリマーの例としては、ポリウレタン、超低密度ポリエチレン、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン系ブロックコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、EPDMゴム、およびこれらの類似体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
また本発明を使用して、アモルファスポリマーを押し出して繊維にすることも可能である。本明細書における使用では、「アモルファスポリマー」は、ASTM D3418に従って示差走査熱量計において加熱されるときに、通常は明確な融点または一次転移の欠如によって示される結晶度を少ししか持たないか、全く持たないポリマーである。
【0035】
更に他の実施形態では、本発明の潜在的な利点は、ポリマー溶融ストリームおよび潤滑剤として多相ポリマーを用いて高分子繊維を押出可能なことに見出すことができる。多相ポリマーとは、例えば独自の別々の領域に融合する異なる種で構成される有機高分子を意味し得る。領域のそれぞれは、ガラス転移温度(Tg)、重量密度、光学密度などのそれ自体の明確な特性を有する。多相ポリマーのこのような特性の1つは、別々の高分子相が、温度に対して異なるレオロジー応答を示すことである。より具体的には、押出工程温度におけるその溶融粘度は明確に異なり得る。いくつかの多相ポリマーの例は、例えば、米国特許第4,444,841号明細書(ウィーラー(Wheeler))、米国特許第4,202,948号明細書(ピースコー(Peascoe))、および米国特許第5,306,548号明細書(ザブロキ(Zabrocki)ら)に開示され得る。
【0036】
本明細書における使用では、「多相」とは、非混和性モノマーのコポリマーを含む高分子の配列を指す。存在するコポリマーが非相溶性であるために、材料の同じ塊の中に明確に異なる相または「ドメイン」が存在し得る。本発明に係る多相ポリマー繊維の押出において使用するのに適切であり得る熱可塑性ポリマーの例としては、以下の種類:ポリエーテル、ポリエステル、またはポリアミドの多相ポリマーと、配向されたシンジオタクチックのポリスチレン、スチレンおよびアクリロニトリルの混合物がグラフトされたエチレン−プロピレン−非共役ジエン三元コポリマー(アクリロニトリルEPDMスチレンまたは「AES」としても知られる)を含むエチレン−プロピレン−ジエンモノマーのポリマー(「EPDM」)と、「ASA」またはアクリレート−スチレン−アクリロニトリルコポリマーとしても知られる、スチレンおよびアクリロニトリルまたはその誘導体(例えば、アルファ−メチルスチレンおよびメタクリロニトリル)がグラフトされた架橋アクリレートゴム基質(例えば、ブチルアクリレート)を含むもの、ならびに「ABS」またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとしても知られる、スチレンまたはアクリロニトリルまたはその誘導体(例えば、アルファ−メチルスチレンおよびメタクリロニトリル)がグラフトされたブタジエンまたはブタジエンおよびスチレンのコポリマーまたはアクリロニトリルの基質を含むものなどのグラフトゴム組成物、そして通常やはり「ABS」ポリマーと称される抽出可能なスチレン−アクリロニトリルコポリマー(すなわち、非グラフト化コポリマー)を含むスチレン−アクリロニトリル(「SAN」)コポリマーと、これらの組み合わせまたはブレンドとからの材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における使用では、「コポリマー」という用語は、ターポリマーやテトラポリマーなども含むと理解されるべきである。
【0037】
多相ポリマー繊維の押出において使用され得るポリマーのいくつかの例は、上記でAES、ASA、およびABSと称された多相コポリマー樹脂(すなわち、多相スチレン系熱可塑性コポリマー)、ならびにこれらの組み合わせまたはブレンドのスチレン系の種類に見出すことができる。このようなポリマーは、米国特許第4,444,841号明細書(ウィーラー(Wheeler))、米国特許第4,202,948号明細書(ピースコー(Peascoe))、および米国特許第5,306,548号明細書(ザブロキ(Zabrocki)ら)において開示される。ブレンドは、各層が異なる樹脂である多相繊維の形態でもよいし、次に押し出されて単一の繊維になるポリマーの物理的なブレンドでもよい。例えば、ASAおよび/またはAES樹脂は、ABS上に共押出することができる。
【0038】
異なる相は加工に対して非常に異なるレオロジー応答を有するので、多相ポリマー系は、繊維加工における大きな課題を提供し得る。例えば、結果は、多相ポリマーの引張応答の悪さであり得る。異なる相の異なるレオロジー応答は、押出繊維の延伸または引っ張りを含む従来の繊維形成工程における延伸応答に広い変化を起こし得る。多くの場合、多数のポリマー相の存在は、延伸工程の引張応力に耐えるためには不十分な結合力を示し、繊維を破断または破裂させる。
【0039】
本発明において、多相ポリマーの押出に関連し得る独自の課題は、繊維の形成中に材料がどのようにして配向されるかに基づいて対処することができる。本発明と関連して、多相ポリマー材料は、ポリマー材料を配向させるためにダイオリフィスを通って圧迫または「押圧」される(引っ張りまたは延伸とは対照的に)のが好ましいかもしれない。結果として、本発明は、破砕の可能性を実質的に低減することができる。
【0040】
本発明に係る方法において使用することができるいくつかの多相ポリマーは、多相AESおよびASA樹脂、ならびにこれらの組み合わせまたはブレンドである。市販のAESおよびASA樹脂はまたはこれらの組み合わせとしては、例えば、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)から商品名ロベル(ROVEL)、ドイツ連邦共和国ルートヴィヒスハッフェンのBASF社(BASF Aktiengesellschaft)から商品名ロラン(LORAN)S757および797、コネチカット州スプリングフィールドのバイエル・プラスチックス(Bayer Plastics)から商品名セントレックス(CENTREX)833および401、ニューヨーク州セルカークのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(General Electric Company)から商品名ジーロイ(GELOY)、日本国東京の日立化成工業株式会社(Hitachi Chemical Company)から商品名ビタックス(VITAX)で入手可能なものが挙げられる。いくつかの市販のAESおよび/またはASA材料はABSがブレンドされていると考えられる。市販のSAN樹脂は、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカルから商品名タイリル(TYRIL)で入手可能なものを含む。市販のABS樹脂は、マサチューセッツ州ピッツフィールドのゼネラル・エレクトリック(General Electric)からサイオラク(CYOLAC)GPX3800などの商品名サイオラク(CYOLAC)で入手可能なものを含む。
【0041】
多相ポリマー繊維は、1つまたは複数の上記で挙げた材料と、1つまたは複数の他の熱可塑性ポリマーとのブレンドから調製することもできる。上記の柔軟な材料とブレンドすることができるこのような熱可塑性ポリマーの例としては、以下の種類:二軸配向ポリエーテル、二軸配向ポリエステル、二軸配向ポリアミド、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロース、セルロース(アセタート−コ−ブチラート)、硝酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリ(クロロフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)などのフルオロポリマー、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(アミノカプロン酸)、ポリ(ヘキサメチレンジアミン−コ−アジピン酸)、ポリ(アミド−コ−イミド)、およびポリ(エステル−コ−イミド)などのポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(メチルペンテン)などのポリオレフィン、脂肪族および芳香族ポリウレタン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリ(フェニレンスルフィド)、アタクチックポリ(スチレン)、キャストシンジオタクチックポリスチレン、ポリスルホン、シリコーンポリアミドおよびシリコーンポリカーボネートなどのシリコーン変性ポリマー(すなわち、少重量パーセント(10重量パーセント未満)のシリコーンを含有するポリマー)、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.duPont de Nemours)から商品名サーリン(SURLYN)−8920およびサーリン(SURLYN)−9910で入手可能なナトリウムまたは亜鉛イオンを有するポリ(エチレン−コ−メタクリル酸)などのアイオノマーエチレンコポリマー、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)およびポリ(エチレン−コ−メタクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−マレイン酸)、およびポリ(エチレン−コ−フマル酸)などの酸官能性ポリエチレンコポリマー、ペルフルオロポリ(エチレンテレフタレート)などのフッ素変性ポリマー、そしてポリイミドおよびアクリルポリマーブレンド、ならびにポリ(メチルメタクリレート)およびフルオロポリマーブレンドなどの上記ポリマーの混合物からの材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明に関連して使用されるポリマー組成物はその他の成分を含むことができ、例えば、UV安定剤、ニューヨーク州アーズリーのチバ−ガイギー社(Ciba−Geigy Corp.)から商品名イルガノックス(IRGANOX)で入手可能なものなどの酸化防止剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、ニュージャージー州ホボケンのヘンケル社(Henkel Corp.)から商品名ロキシル(LOXIL)G−715またはロキシル(LOXIL)G−40、またはノースカロライナ州シャルロッテのヘキスト・セラニーズ社(Hoechst Celanese Corp.)からワックス(WAX)Eで入手可能な脂肪酸エステルなどの離型剤、顔料および染料などの着色剤も、ポリマー組成物中に取り込むことができる。着色剤の例としては、デラウェア州ウィルミントンのデュポン・ドゥ・ヌムール(DuPont de Nemours)から商品名R960で入手可能なルチルTiO2顔料、酸化鉄顔料、カーボンブラック、硫化カドミウム、および銅フタロシアニンが挙げられる。多くの場合、上記で特定したポリマーは、これらの添加剤の1つまたは複数、特に顔料および安定剤を含んで市販されている。通常、このような添加剤は、所望の特性を付与する量で使用される。好ましくは、添加剤は、ポリマー組成物の総重量を基準として約0.02〜20重量%、より好ましくは約0.2〜10重量%の量で使用される。
【0043】
本発明の少なくともいくつかの実施形態のもう1つの潜在的な利点は、ポリマー溶融ストリームを比較的低い温度で押出可能なことである。例えば、半結晶性ポリマーの場合、ダイの各オリフィスの入口から押し込まれるときのポリマー溶融ストリームの平均温度が、ポリマー溶融ストリームの溶融加工温度よりも10℃以下の温度だけ高い範囲内であるときに、ポリマー溶融ストリームを押し出すことが可能であり得る。いくつかの実施形態では、ポリマー溶融ストリームがオリフィスの出口から出る前に、ポリマー溶融ストリームの平均温度は、好ましくは、ポリマー溶融ストリームの溶融加工温度であるか、あるいはそれよりも低い。
【0044】
理論により束縛されることは望まないが、本発明は、押出中にポリマーを加工するために潤滑剤特性の優性に依存し、ポリマー粘度は、応力(圧力および温度)応答における比較的小さい因子になり得ると理論付けられる。更に、潤滑剤の存在は、ダイ内でのポリマーの「急冷(quenching)」(例えば、結晶またはガラスの「ガラス化(vitrification)」形成)を可能にし得る。ダイ内急冷の潜在的な利点は、例えば、押出物の配向の保持および寸法精度を含むことができる。
【0045】
本明細書における使用では、ポリマー溶融ストリームの「溶融加工温度」は、ポリマー溶融ストリームがダイのオリフィスを1秒以下の時間内に通過できる最低温度である。ある場合には、溶融加工温度は、ポリマー溶融ストリームがアモルファスであればガラス転移温度またはそれよりわずかに高い温度でよいし、あるいはポリマー溶融ストリームが結晶性または半結晶性であれば融解温度またはそれよりわずかに高い温度でよい。ポリマー溶融ストリームが、1つまたは複数の結晶性ポリマーおよび1つまたは複数の半結晶性ポリマーのいずれかまたは両方とブレンドされた1つまたは複数のアモルファスポリマーを含む場合には、溶融加工温度はアモルファスポリマーの最低のガラス転移温度または結晶性および半結晶性ポリマーの最低の融解温度のうちの低いほうである。
【0046】
本発明に従ってダイで使用することができる1つの典型的なダイオリフィスは、図2の断面図に描かれており、ダイプレート10および相補的なダイプレートカバー12が断面図で描かれている。ダイプレート10およびダイプレートカバー12は、ダイプレート10のオリフィス22と流体連通するポリマー配送通路20を画定する。ダイプレートカバー12に形成されたポリマー配送通路20の部分は開口部16で終わり、ポリマー溶融ストリームは、開口部14を通って、ダイプレート10内に形成されたポリマー配送通路20の部分に入る。描かれる実施形態では、ダイプレートカバー12の開口部16は、通常、ダイプレート10の開口部14と同じ大きさである。
【0047】
図3はオリフィス22の拡大図を描いており、オリフィス22の半径を示す参照文字「r」と、オリフィス22の軸11に沿った長さを示す「z」とが付け加えられている。ダイプレート10に形成されるオリフィス22は、好ましくは、断面積(軸11を横断して測定)が入口24の断面積よりも小さいように収束し得る。本明細書中で説明されるように、ダイオリフィス22の形状は、ポリマー溶融ストリームの伸長ひずみ速度がオリフィス22の長さに沿って(すなわち、軸11に沿って)一定であるように設計されるのが好ましいであろう。
【0048】
本明細書において説明されるように、ダイオリフィスは、収束する半双曲線状プロファイルを有するのが好ましいであろう。「半双曲線状(semi−hyperbolic)」形状の定義は、体積流量、チャネル面積および流体速度の間の基礎的な関係から始まる。オリフィス22の説明に関連して円筒座標が使用されるが、本発明に関連して使用されるダイオリフィスが円筒形のプロファイルを有さなくてもよいことは理解されるべきである。
【0049】
軸11に沿ってオリフィス22を通る流れは、軸11に沿った各位置で、以下の式によって説明することができる。
Q=V*A (1)
式中、Qは、オリフィスを通る体積流量の尺度であり、Vは、オリフィスを通る流速であり、そしてAは、軸11に沿って選択された位置におけるオリフィス22の断面積である。
【0050】
式(1)は速度について再整理して解くことができ、以下の式が得られる。
V=Q/A (2)
【0051】
収束オリフィスの断面積は、オリフィスのチャネルの長さに沿って変化するので、以下の式を使用して、式(2)の変量間の様々な関係を説明することができる。
dVz/dz=(−Q/A2)(dA/dz) (3)
【0052】
式(3)において、オリフィスの長さの下方への位置の変化に対する速度の変化の式は、流体の伸長流動(ε)も定義する。定常または一定の伸長流動は、収束オリフィスを通る流れの好ましい結果であり得る。結果として、オリフィスの断面積は、オリフィスを通る一定の伸長流動をもたらすように変化するのが好ましいであろう。定常または一定の伸長流動を定義する式は、次式のように表すことができる。
dVz/dz=ε=一定 (4)
【0053】
オリフィスの長さの下方への位置の変化に対する面積の変化を置き換えることができ、一定または定常の伸長流動をもたらし得る式は、次のように表すことができる。
f(r,z)=一定=r2z (5)
【0054】
式(5)の式の一般的な形は、以下であり得る。
f(r,z)=C1+C22z (6)
【0055】
式(6)を用いて、本発明に関連して使用されるオリフィス22の形状を決定することができる。オリフィスの形状を設計するために、オリフィス22の出口26の直径の幾何学的制約が決定される(出口直径は、オリフィス22から押し出される繊維サイズを示すという理解と共に)のが好ましいであろう。あるいは、オリフィス22の入口24の直径が使用されてもよい。
【0056】
オリフィス22の入口24または出口26のうちの一方の半径(従って、対応する面積)が選択されると、選択される所望の伸長ひずみを選択することによって他方も決定され、次に他方の半径(すなわち、入口24または出口26の半径)は、好ましくは、オリフィス22を通過する流体(すなわち、ポリマー溶融ストリーム)が受ける所望の伸長ひずみを選択することによって決定され得る。
【0057】
この値、すなわち伸長ひずみは、時折「ヘンキーひずみ(Hencky Strain)」と呼ばれることもある。ヘンキーひずみは、伸長されている材料の伸長ひずみまたは工学ひずみに基づく。以下に与えられる式は、チャネル、例えば本発明のオリフィスを通過する際の流体のヘンキーひずみを説明する。
流体のヘンキーひずみ=ln(ro2/rz2)=ln(Ao/Az) (7)
オリフィスを通過する流体が受ける所望のヘンキーひずみの選択は、上記のように、オリフィスの他方の端部の半径(および、それに従って面積)を固定または設定する。最後に残った設計の特徴は、潤滑にすべきオリフィスの長さを定めることである。オリフィス22の長さ(図3の「z」)が選択され、入口24および出口の半径/面積が既知であれば、式6は、オリフィス22の長さの下方(「z」方向に沿って)への位置の変化に対する半径(面積)の変化について遡及して、定数C1およびC2を得ることができる。以下の式は、「z」次元に沿った各位置におけるオリフィスの半径(rz)を提供する。
z=[((z)(es−1)+長さ)/(r入口2*長さ)]-1/2 (8)
式中、zは、オリフィスの入口から測定されるz方向の長手軸に沿った位置であり、e=(r入口2/(r出口2、s=ヘンキーひずみ、r入口はオリフィスへの入口における半径、r出口はオリフィスの出口における半径であり、そして長さは、オリフィスの入口から出口までのz方向のオリフィスの全体の長さである。ヘンキーひずみおよび関連の原理の説明については、C.W.マコスコ(Macosko)の「レオロジー−原理、測定、および用途(Rheology−Principles,Measurements and Applications)」、285〜336頁(ウィリー−VCH社(Wiley−VCH Inc.)、ニューヨーク、第1版、1994年)が参照されるであろう。
【0058】
図2に戻って、ダイプレート10は、ダイプレート10とダイプレートカバー12との間に形成される潤滑剤プレナム32と流体連通する潤滑剤通路30も含む。ダイプレート10およびダイプレートカバー12は、好ましくは、潤滑剤通路30を通って潤滑剤プレナム32内に入った潤滑剤が、スロット36から開口部14を通ってポリマー配送通路20内に入るように間隙34を定義する。そのように、潤滑剤は、ポリマー溶融ストリームとは別にオリフィス22に配送され得る。
【0059】
スロット36は、好ましくは、ポリマー配送通路20の周囲のまわりに延在することができる。スロット36は、好ましくは、ポリマー配送通路20の周囲のまわりに連続的でも不連続的でもよい。間隙34およびスロット36を形成するダイプレート10とダイプレートカバー12との間の間隔は、ポリマー溶融ストリームがポリマー配送通路20を通過するときの圧力、ポリマー溶融ストリームおよび潤滑剤の相対速度などの様々な因子に基づいて調整することができる。ある場合には、スロット36は、間隙34を形成する2つの粗化(例えば、サンドブラスト処理、研磨など)表面(あるいは、1つの粗化表面および対向する平滑表面)の界面によって形成される開口部の形態でもよい。
【0060】
図4は、ダイプレートカバー12が取り外されたダイプレート10の平面図である。多数の開口部14、ポリマー配送通路20、ダイオリフィス22、および潤滑剤プレナム32が描かれている。描かれているポリマー配送通路20は、一定の断面積(図2の軸11を横断して測定される)を有し、描かれている実施形態では円筒形である。しかしながら、ポリマー配送通路20および関連のダイオリフィス22は、例えば、矩形、長円形、楕円形、三角形、正方形などの適切などんな断面形状を有してもよいことは理解されるべきである。
【0061】
潤滑剤プレナム32は、図4において見られるように、潤滑剤がポリマー配送通路20の周囲のまわりに配送されるようにポリマー配送通路20の周囲のまわりに延在するのが好ましいであろう。そうすることによって、潤滑剤は、ポリマー配送通路20を通過して、ダイオリフィス22に入るときに、好ましくは、ポリマー溶融ストリームの周囲のまわりに層を形成する。描かれている実施形態では、プレナム32は、図4に示されるようにダイプレート10の外側縁部まで延在する潤滑剤通路30によって供給される。
【0062】
プレナム32のそれぞれは、図4に示されるように独立した潤滑剤通路30によって供給されるのが好ましいであろう。プレナム32のそれぞれ(およびその関連のダイオリフィス22)に独立的に供給することにより、様々な工程変量の制御を得ることができる。これらの変量は、例えば、潤滑剤の圧力、潤滑剤の流量、潤滑剤の温度、潤滑剤の組成(すなわち、異なる潤滑剤が異なるオリフィス22に供給され得る)などを含むことができる。
【0063】
しかしながら、代案として、いくつかのシステムでは、主プレナムは、潤滑剤通路30のそれぞれに潤滑剤を供給し、次に、オリフィス22と関連するプレナム32のそれぞれに潤滑剤を供給するために使用されるのが好ましいこともある。このようなシステムでは、潤滑剤の各オリフィスへの配送は、好ましくは、全てのオリフィスの間で平衡に保持され得る。
【0064】
図5は、本発明と関連して使用することができる1つのシステム90の概略図である。システム90は、好ましくは、ポリマーを押出機96に配送するポリマー源92および94を含むことができる。2つのポリマー源が描かれているが、いくつかのシステムでは1つのポリマー源だけが提供されてもよいことは理解されるべきである。更に、他のシステムは、3つ以上のポリマー源を含んでもよい。更に、単一の押出機96だけが描かれているが、システム90が、本発明に従って所望のポリマーをダイ98へ配送することができる任意の押出システムまたは装置を含んでもよいことは理解されるべきである。
【0065】
システム90は、更に、本発明の原理に従って潤滑剤をダイに配送するためにダイ98に操作可能に取り付けられた潤滑剤装置97を含む。ある場合には、潤滑剤装置97は、潤滑剤ポリマー源および押出装置の形態でもよい。
【0066】
また、システム90と関連して、ダイ98から押し出されている2本の繊維40が描かれている。2本の繊維40が描かれているが、いくつかのシステムでは1本だけの繊維が製造されてもよく、他のシステムは3本以上のポリマー繊維を同時に製造してもよいことは理解されるべきである。
【0067】
図6は、本発明と関連して使用することができるダイオリフィスのもう1つの典型的な実施形態を描いている。図6には装置の一部だけが描かれており、ダイオリフィス122の入口114と、ダイプレート110およびダイプレートカバー112間の間隙134を通る潤滑剤の配送との潜在的な関係を説明する。描かれた装置では、ポリマー溶融ストリームとは別に配送される潤滑剤は、オリフィス122の入口116において、間隙134を通って導入される。ポリマー溶融ストリーム自体は、ダイプレートカバー112のポリマー配送通路120を通って、ダイオリフィス122の入口116に配送される。
【0068】
図6の典型的な装置において描かれるもう1つの任意的な関係は、ポリマー配送通路120から入口114内に通じる開口部116のサイズと比較したときの、ダイオリフィス122の入口114の相対的なサイズである。開口部116の断面積は、ダイオリフィス122への入口114の断面積よりも小さいほうが好ましいであろう。本明細書中における使用では、開口部の「断面積」は、長手軸111(好ましくは、ポリマー溶融ストリームがポリマー配送通路およびダイオリフィス122を通って移動する方向)を略横断する平面において決定される。
【0069】
図7は、本発明と関連して使用することができる更にもう1つの潜在的な装置を描く。図7は、ダイプレート210よりも上でとられた1つのダイオリフィス222の拡大平面図(図4で見られるのと同様の視界)である。ダイオリフィス222への入口216は、ダイオリフィス222の出口226と共に描かれている。図7に描かれる設計と、これまでの図面に描かれる設計との間の1つの違いは、潤滑剤が、チャネル234a、234b、および234cの端部に形成される多数の開口部を通って、ダイオリフィス222に配送されることである。これは、上記の実施形態においてダイプレートとダイプレートカバーとの間の間隙によって形成される連続スロットと対照的である。潤滑剤を配送するための3つの開口部が描かれているが、このような開口部が、わずか2つおよび3つよりも多く提供されてもよいことは理解されるべきである。
【0070】
図8は、本発明に係るダイの出口26からのポリマー溶融ストリーム40および潤滑剤42の流れを描いている。ポリマー溶融ストリーム40および潤滑剤42が断面で示されており、ポリマー溶融ストリーム40の外側表面41上の潤滑剤42が描かれている。潤滑剤は、潤滑剤42がポリマー溶融ストリーム40とダイオリフィスの内部表面23との間に配置されるように、外側表面41の全体に提供されるのが好ましいであろう。
【0071】
潤滑剤42は、ポリマー溶融ストリーム40がオリフィス出口26を出た後、ポリマー溶融ストリーム40の外側表面41上に描かれているが、ある場合には、潤滑剤42は、ポリマー溶融ストリーム40および潤滑剤42がダイの出口26を出るとき、または出た直後にポリマー溶融ストリーム40の外側表面41から除去されてもよいことは理解されるべきである。
【0072】
潤滑剤42の除去は能動的でも受動的でもいずれでもよい。潤滑剤42の受動的な除去は、例えば、蒸発、重力、または吸着剤を含むことができる。例えば、ある場合には、潤滑剤42および/またはポリマー溶融ストリーム40の温度は、ダイ出口26を出た後に更なる措置を行わなくても潤滑剤42を蒸発させるのに十分高温であり得る。他の場合には、潤滑剤は、例えば、水または別の溶媒、エアジェットなどを用いて、ポリマー溶融ストリーム40から能動的に除去され得る。
【0073】
潤滑剤42の組成によっては、潤滑剤42の一部は、ポリマー溶融ストリーム40の外側表面41に残り得る。例えば、ある場合には、潤滑剤42は、1つまたは複数のキャリアおよび1つまたは複数の他の成分など、2つ以上の成分の組成物でもよい。キャリアは例えば溶媒(水、鉱油など)でよく、これは、能動的または受動的に除去されて、1つまたは複数の他の成分がポリマー溶融ストリーム40の外側表面41の所定位置に残される。
【0074】
その他の状況では、潤滑剤42は、ポリマー溶融ストリーム40の外側表面41上に保持され得る。例えば、潤滑剤42は、押出中に潤滑剤としての役割を果たせるようにポリマー溶融ストリーム40の粘度に対して十分に低い粘度を有するポリマーでもよい。潤滑剤としての役割も果たすことができる潜在的に適切なポリマーの例としては、例えば、ポリビニルアルコール、高メルトフローインデックスポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0075】
潤滑剤42がポリマー溶融ストリーム40の表面41から除去されるかどうかにかかわらず、潤滑剤42は、ポリマー溶融ストリーム40が冷却される速度を上昇させるための急冷剤の機能を果たすことができる。このような急冷効果は、ポリマー溶融ストリーム40内の配向などのポリマー溶融ストリーム40における特定の所望の構造を保持するのに役立つことができる。急冷を補助するために、例えば、急冷工程を促進するのに十分低い温度で潤滑剤42をダイオリフィスに提供することが望ましいであろう。他の場合には、いくつかの潤滑剤を用いて提供され得る蒸発冷却は、ポリマー溶融ストリーム40の急冷を高めるために頼りになり得る。例えば、潤滑剤42として使用される鉱油は、ダイを出た後、ポリプロピレン(ポリマー溶融ストリーム)の表面から蒸発するときにポリプロピレン繊維を急冷する働きをすることができる。
【0076】
本発明は、好ましくは、潤滑剤材料と押出ポリマーとの粘度の差異に依存し得る。例えば40:1またはそれより高い、あるいは50:1またはそれより高いポリマー対潤滑剤の粘度比は、好ましくは、本発明の方法と関連して使用すべき潤滑剤の選択において大きな因子であり得る。潤滑剤の化学的性質は、そのレオロジー挙動の次であり得る。この説明において、SAE20重量油、ホワイトパラフィン油、およびポリジメチルシロキサン(PDMS)流体などの材料は全て、潜在的に適切な潤滑剤材料の例である。以下の一覧は、潤滑剤の候補に対する限定を意図しない。すなわち、本発明と関連して、潤滑剤として他の材料が使用されてもよい。
【0077】
無機または合成油の非限定的な例としては、鉱油、ペトロラタム、直鎖および分枝鎖炭化水素(およびその誘導体)、液体パラフィンおよび低融点固形パラフィンワックス、グリセロールの脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、炭化水素ワックス、モンタンワックス、アミドワックス、モノステアリン酸グリセロールなどが挙げられる。
【0078】
多くの種類の油およびその脂肪酸誘導体も、本発明と関連して適切な潤滑剤であり得る。オレイン酸、リノール酸、およびラウリン酸など、油の脂肪酸誘導体を使用することができるが、これらに限定されない。オレアミド、オレイン酸プロピルおよびオレイルアルコールなど、油の置換脂肪酸誘導体も使用することができるが、これらに限定されない(このような材料の揮発度は、押出前に蒸発しないようにあまり高くないのが好ましいであろう)。いくつかの潜在的に適切な植物油の例としては、アプリコットカーネル油、アボカド油、バオバブ油、クロフサスグリ油、カレンデュラ・オフィシナリス油、カンナビス・サティヴァ油、カノーラ油、ダイフウシノキ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ハイブリッドサンフラワー油、水素化ココナッツ油、水素化綿実油、水素化パーム核油、ホホバ油、キウイシード油、ククイナッツ油、マカダミアナッツ油、マンゴーシード油、メドウフォームシード油、メキシカンポピー油、オリーブ油、パーム核油、部分水素化大豆油、ピーチカーネル油、ピーナッツ油、ピーカン油、ピスタチオナッツ油、パンプキンシード油、キヌア油、菜種油、ライスブラン油、サフラワー油、サザンカ油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバターフルーツ油、シシムブリウム・イリオ油、大豆油、サンフラワーシード油、くるみ油、および小麦胚芽油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
他の潜在的に適切な潤滑剤材料としては、例えば、へキサン酸、カプリル酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸を含む飽和脂肪族酸、オレイン酸およびエルカ酸を含む不飽和脂肪族酸、安息香酸、フェニルステアリン酸、ポリステアリン酸およびキシリルベヘン酸を含む芳香族酸、ならびに6、9、および11個の炭素の平均鎖長の分枝状カルボン酸、トールオイル酸およびロジン酸を含むその他の酸と、1−オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、1−デカノール、1−ドデカノール、トリデシルアルコール、セチルアルコールおよび1−ヘプタデカノールを含む第1級飽和アルコール、ウンデシレニルアルコールおよびオレイルアルコールを含む第1級不飽和アルコール、2−オクタノール、2−ウンデカノール、ジノニルカルビノールおよびジウンデシルカルビノールを含む第2級アルコール、ならびに1−フェニルエタノール、1−フェニル−1−ペンタノール、ノニルフェニル、フェニルステアリルアルコールおよび1−ナフトールを含む芳香族アルコールとが挙げられる。その他の潜在的に有用なヒドロキシル含有化合物としては、オレイルアルコールのポリオキシエチレンエーテルおよび約400の数平均分子量を有するポリプロピレングリコールがある。また更に潜在的に有用な液体としては、4,t−ブチルシクロヘキサノールおよびメタノールなどの環状アルコール、サリチルアルデヒドを含むアルデヒド、オクチルアミン、テトラデシルアミンおよびヘキサデシルアミンなどの第1級アミン、ビス−(1−エチル−3−メチルペンチル)アミンなどの第2級アミン、ならびにN−ラウリルジエタノールアミン、N−タロウジエタノール−アミン、N−ステアリルジエタノールアミンおよびN−ココジエタノールアミンを含むエトキシ化アミンが挙げられる。
【0080】
更なる潜在的に有用な潤滑剤材料としては、N−sec−ブチルアニリン、ドデシルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N−エチル−o−トルイジン、ジフェニルアミンおよびアミノジフェニルメタンなどの芳香族アミン、N−エルシル−1,3−プロパンジアミンおよび1,8−ジアミノ−p−メタンを含むジアミン、分枝状テトラミンおよびシクロデシルアミンを含むその他のアミン、ココアミド、水素化タロウアミド、オクタデシルアミド、エルシアミド(eruciamide)、N,N−ジエチルトルアミドおよびN−トリメチロプロパン(trimethylopropane)ステアルアミドを含むアミド、カプリル酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロプロピル(isopropropyl)、ステアリン酸メチル、ステアリン酸イソブチルおよびステアリン酸トリデシルを含む飽和脂肪族エステル、アクリル酸ステアリル、ウンデシレン酸ブチルおよびオレイン酸ブチルを含む不飽和エステル、ステアリン酸ブトキシエチルおよびオレイン酸ブトキシエチルを含むアルコキシエステル、ステアリン酸ビニルフェニル、ステアリン酸イソブチルフェニル、ステアリン酸トリデシルフェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、ラウリン酸フェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルおよび酢酸ベンジルを含む芳香族エステル、ならびにジステアリン酸ジメチルフェニレン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−イソ−オクチル、アジピン酸ジカプリル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ−イソ−オクチル、セバシン酸ジカプリルおよびマレイン酸ジオクチルを含むジエステルが挙げられる。更に他の潜在的に有用な潤滑剤材料としては、ポリエチレングリコール(好ましくは、約400の数平均分子量を有し得る)のジフェニルステアレリン酸エステルを含むポリエチレングリコールエステル、ヒマシ油(トリグリセリド)、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、ジステアリン酸グリコール、ジオレイン酸グリセロールおよびモノフェニルステアリン酸トリメチロールプロパンを含むポリヒドロキシル酸エステル、ジフェニルエーテルおよびベンジルエーテルを含むエーテル、ヘキサクロロシクロペンタジエン、オクタブロモビフェニル、デカブロモジフェニルオキシドおよび4−ブロモジフェニルエーテルを含むハロゲン化化合物、1−ノネン、2−ノネン、2−ウンデセン、2−ヘプタデセン、2−ノナデセン、3−エイコセン、9−ノナデセン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタンおよびトランス−スチルベンを含む炭化水素、2−ヘプタノン、メチルノニルケトン、6−ウンデカノン、メチルウンデシルケトン、6−トリデカノン、8−ペンタデカノン、11−ペンタデカノン、2−ヘプタデカノン、8−ヘプタデカノン、メチルヘプタデシルケトン、ジノニルケトンおよびジステアリルケトンを含む脂肪族ケトン、アセトフェノンおよびベンゾフェノンを含む芳香族ケトン、ならびにキサントンを含む他のケトンが挙げられる。また更に潜在的に有用な潤滑剤としては、リン酸トリキシレニルを含むリン化合物、ポリシロキサン、ミュゲ・ヒヤシンス(Muget hyacinth)(アン・メリゲナーブラー社(An Merigenaebler,Inc))、テルピネオール・プライム(Terpineol Prime)No.1(ジボーダン−デラワンナ社(Givaudan−Delawanna,Inc))、バス・オイル・フレグランス#5864K(インターナショナル・フレーバー&フレグランス社(International Flavor & Fragrance,Inc))、ホスクレア(Phosclere)P315C(オルガノホスファイト)、ホスクレア(Phosclere)P576(オルガノホスファイト)、スチレン化ノニルフェノール、キノリンおよびキナリジンが挙げられる。
【0081】
牛脚油、ニームシード油、PEG−5水素化ヒマシ油、PEG−40水素化ヒマシ油、PEG−20水素化ヒマシ油のイソステアリン酸エステル、PEG−40水素化ヒマシ油のイソステアリン酸エステル、PEG−40水素化ヒマシ油のラウリン酸エステル、PEG−50水素化ヒマシ油のラウリン酸エステル、PEG−5水素化ヒマシ油のトリイソステアリン酸エステル、PEG−20水素化ヒマシ油のトリイソステアリン酸エステル、PEG−40水素化ヒマシ油のトリイソステアリン酸エステル、PEG−50水素化ヒマシ油のトリイソステアリン酸エステル、PEG−40ホホバ油、PEG−7オリーブ油、PPG−3水素化ヒマシ油、PPG−12−PEG−65ラノリン油、水素化ミンク油、水素化オリーブ油、ラノリン油、マレイン化大豆油、マスクローズ油、カシューナッツ油、ヒマシ油、ドッグローズヒップ油、エミュー油、月見草油、およびアマナズナ(gold of pleasure)油など、乳化剤の性質を有する油も潤滑剤材料として潜在的に使用することができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0082】
試験方法
質量流量:
基本的な重量法によって質量流量を測定した。予め秤量したアルミニウムトレイ内に、出てくる押出物を80秒間捕獲した。総重量とトレイの重量との差をグラムで測定し、表1にグラム/分で報告する。
【0083】
メルトフローインデックス(MFI):
ASTM D1238に従い、所与のポリマータイプに対して指定される条件でポリマーのメルトフローインデックスを測定した。
【0084】
実施例1
図5に示されるものと同様の装置を用いて高分子繊維を製造した。図6に示されるように単一のオリフィスダイを使用した。ダイオリフィスは円形であり、1.68mmの入口直径と、0.76mmの出口直径と、12.7mmの長さと、以下の式で定義される半双曲線形状とを有していた。
z=[0.00140625/((0.625*z)+0.0625)]^0.5 (9)
式中、zは、入口から測定されるオリフィスの軸に沿った位置であり、rzは、位置zにおける半径である。
【0085】
177℃〜232℃〜246℃のバレル温度プロファイルと、19.1RPMに設定したインラインのゼニス(ZENITH)ギアポンプ(1.6立方センチメートル/回転(cc/rev))とを用いて、3.175cmシングルスクリュー押出機(30:1のL/D)によりポリプロピレンホモポリマー(フィナプロ(FINAPRO)5660、9.0MFI、テキサス州ヒューストンのアトフィナ・ペトロケミカル社(Atofina Petrochemical Co.))を押し出した。ダイ温度および溶融温度は、約220℃であった。30RPMに設定した第2のゼニス(ZENITH)ギアポンプ(0.16cc/rev)を用いて、シェブロン(Chevron)のスーパーラ(SUPERLA)白色鉱油#31を潤滑剤としてダイの入口に供給した。
【0086】
溶融ポリマーの圧力およびそれに対応する押出物の質量流量は、以下の表1に示される。ポリマーの圧力変換器は、ポリマーをダイに導入する地点において、ダイの真上のフィードブロック内に配置した。潤滑剤の圧力変換器は、ダイへの導入よりも前の潤滑剤配送フィードラインに配置した。潤滑剤を使用せずに、対照サンプルも実行した。
【0087】
実施例2
図2に描かれるものと同様のダイを使用したこと以外は実施例1と同様にして、高分子繊維を製造した。ダイオリフィスは円形プロファイルを有し、6.35mmの入口直径と、0.76mmの出口直径と、10.16mmの長さと、本明細書中に記載される式(8)で定義される半双曲線形状とを有した。
【0088】
潤滑剤を用いた場合、および用いなかった場合に、溶融ポリマーの圧力および押出物の質量流量は、以下の表1に示される。
【0089】
実施例3
図2に示されるようなダイを使用したこと以外は実施例1と同様にして、高分子繊維を製造した。ダイオリフィスは円形プロファイルを有し、6.35mmの入口直径と、0.51mmの出口直径と、12.7mmの長さと、式(8)で定義される半双曲線形状とを有した。
【0090】
ポリウレタン(PS440−200、ユタ州ソルトレークシティのハンツマン・ケミカル(Huntsman Chemical))を用いて、繊維を形成した。177℃〜232℃〜246℃のバレル温度プロファイルと、19.1RPMに設定したインラインのゼニス(ZENITH)ギアポンプ(1.6cc/rev)とを用いて、3.81cmシングルスクリュー押出機(30:1のL/D)によりポリマーを配送した。ダイ温度および溶融温度は、約215℃であった。それぞれ99RPMおよび77RPMで駆動される連続した2つのギアポンプによって、シェブロン(Chevron)のスーパーラ(SUPERLA)白色鉱油#31を潤滑剤としてダイの入口に供給した。溶融ポリマーの圧力および押出物の質量流量は、以下の表1に示される。潤滑剤を使用せずに、対照サンプルも実行した。
【0091】
【表1】

【0092】
表1は、同様の溶融圧力では、本発明の方法を用いて実質的により高い質量流量を得ることができ(実施例1)、同様の質量流量では、著しく低い圧力でポリマーを押出可能である(実施例2)ことを示す。実施例3において分かるように、本発明の方法を用いると、溶融圧力は著しく低下され、同時に質量流量は実質的に増大され得る。
【0093】
本明細書および特許請求の範囲における使用では、単数形(「a」「and」および「the」)は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限りは、複数の指示物を含む。従って、例えば、「繊維(a fiber)」への言及は複数の繊維を含み、そして「オリフィス(the orifice)」への言及は、1つまたは複数のオリフィスおよび当業者に知られているその等価物を包含し得る。
【0094】
本発明の例示的実施形態が説明され、そして本発明の範囲内の可能な変形が参照された。本発明におけるこれらおよび他の変形および変更は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかであろう。そして本発明は、本明細書において説明される例示的実施形態に限定されないことは理解されるべきである。従って、本発明は、特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る方法のプロセスウィンドウを説明する概略図である。
【図2】本発明に関連して使用することができる1つの典型的なダイの一部の拡大断面図である。
【図3】図2のダイのオリフィスの拡大図である。
【図4】本発明に関連して使用することができる1つの典型的な押出ダイプレートの一部の平面図である。
【図5】本発明に係るダイを含む1つのシステムの概略図である。
【図6】本発明に関連して使用することができるもう1つの押出装置の拡大断面図である。
【図7】本発明に関連して使用することができるもう1つの典型的なダイオリフィスおよび潤滑チャネルの拡大平面図である。
【図8】本発明の方法に従ってダイオリフィスを出る1つの典型的な高分子繊維の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイ内に位置するオリフィスにポリマー溶融ストリームを通過させることであって、前記オリフィスが、入口、出口、および前記入口から前記出口まで延在する内部表面を含み、前記オリフィスが半双曲線状(semi−hyperbolic)の収束オリフィスを含み、前記ポリマー溶融ストリームが前記入口でオリフィスに入り、前記出口でオリフィスから出ることと、
前記ポリマー溶融ストリームとは別に、潤滑剤を前記オリフィスに配送することであって、前記潤滑剤が前記オリフィスの入口で導入されることと、
前記ポリマー溶融ストリームが前記オリフィスの出口を出た後、前記ポリマー溶融ストリームを含む繊維を捕集することと、
を含む高分子繊維の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマー溶融ストリームが、前記オリフィスの入口の断面積よりも小さい断面積を有する開口部を通って前記オリフィスの入口に配送される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑剤の配送が、前記オリフィスの入口のまわりに形成された連続スロットを通る潤滑剤の配送を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維が実質的に潤滑剤を含まないように、前記ポリマー溶融ストリームが前記オリフィスの出口を出た後、前記潤滑剤が、前記ポリマー溶融ストリームから蒸発する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑剤が前記オリフィスの入口に配送されるときに2つ以上の成分を含み、更に、前記ポリマー溶融ストリームが前記オリフィスの出口を出た後、1つまたは複数の成分が前記ポリマー溶融ストリームから蒸発し、1つまたは複数の成分が繊維上に残存する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー溶融ストリームが1つまたは複数のポリマーを含み、前記1つまたは複数のポリマーの全てが、前記1つまたは複数のポリマーに対して指定される条件で測定したときに10以下のメルトフローインデックスを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー溶融ストリームが1つのポリマーから本質的になり、前記1つのポリマーに対して指定される条件で測定したときに10以下のメルトフローインデックスを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オリフィスが0.5mm2の断面積を有する出口を含み、そして前記ポリマー溶融ストリームが30メガパスカル以下の圧力で前記オリフィスの入口に配送されるときに、前記ポリマー溶融ストリームが、10グラム/分以上の質量流量で前記オリフィスを通過する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイが複数のオリフィスを含み、前記方法が、前記複数のオリフィスの各オリフィスに、潤滑剤を独立して配送することを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のオリフィス間の潤滑剤の流れを平衡に保持することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維の捕集が、繊維を引っ張ることを含み、前記繊維が、引っ張りの間に伸長される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記オリフィスの入口に入る前記ポリマー溶融ストリームの平均温度が、前記ポリマー溶融ストリームの溶融加工温度よりも10℃以下の温度だけ高い範囲内である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー溶融ストリームが前記オリフィスの出口から出る前に、前記ポリマー溶融ストリームの平均温度が、前記ポリマー溶融ストリームの溶融加工温度であるか、あるいはそれより低い、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー溶融ストリームが、1つまたは複数のアモルファスポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー溶融ストリームが、1つまたは複数のアモルファスポリマーから本質的になる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー溶融ストリームが、多相ポリマー溶融ストリームを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー溶融ストリームが、多相ポリマー溶融ストリームから本質的になる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−500468(P2008−500468A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527280(P2007−527280)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/015835
【国際公開番号】WO2005/116308
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】