説明

澱粉含有飲料の製造方法

【課題】良好なとろみやボディ感を有し、ヌメリが低減され、のどごしが良好であり、且つ常温で1日間静置しても澱粉に由来される沈殿が生じない澱粉含有飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】加熱膨潤度が10〜40となる膨潤が抑制された澱粉を原材料に添加し、65〜95℃になるまで加熱混合した後、ミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、マスコロイダー、マイルダーなどの攪拌機械によって澱粉粒を崩壊せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なとろみやボディ感を有し、ヌメリが低減され、のどごしが良好であり、且つ常温で1日間静置しても澱粉に由来される沈殿が生じない澱粉含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料においてとろみやボディ感は嗜好性を決定する重要な要素の一つであり、例えば、ネクタータイプの果汁飲料においては、適度なとろみやボディ感が求められている。更に、果汁飲料においては、とろみやボディ感を付与することで飲料の果汁感を好ましく向上させることができるため、味質を維持しつつ果汁の添加量を抑えることが可能となり、製造コストの削減、果汁成分の褐変防止による安定性の向上、果汁成分の焦げ付き防止による製造効率の向上といった効果が見込まれる。
【0003】
しかしながら、飲料のとろみやボディ感は、種々の原因により損なわれる場合がある。例えば、飲料中のカロリーを低減させることを目的に、高甘味度甘味料を使用して糖質の添加量を少なくした場合、糖質に比べて高甘味度甘味料の添加量は非常に微量となるため、糖質に由来するとろみやボディ感が低下してしまう。また、ホット飲料においては、冷蔵飲料に比べてとろみやボディ感が失われることも知られている。
【0004】
糖質によって飲料のとろみやボディ感を付与させ難い場合には、増粘剤を用いることもある。増粘剤としては、一般的にキサンタンガムやペクチンなどの増粘多糖類が用いられるが、ヌメリ、のどごしの悪さ、糸曳き感、べたつきなどが発生し、食感において問題があった。
【0005】
増粘多糖類以外の増粘剤としては、澱粉が挙げられる。澱粉は、飲料に自然なとろみやボディ感を付与することができる。さらに、澱粉は増粘多糖類に比べて比較的安価な素材であることが知られており、安定的な供給が可能であることから、市場価格の変動も起こり難い。
【0006】
例えば、α化澱粉を用いることで、とろみがあり、のどごしのよい果汁飲料が得られることが示されている(特許文献1)。また、α化リン酸架橋澱粉、糖アルコール及び水溶性食物繊維を含む嚥下補助剤が示されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、飲料に澱粉を使用した場合、飲料を静置保存している際に澱粉粒が沈降分離してしまい、不自然な外観となるという大きな問題があり、比較的透明性の高い飲料への使用が困難であった。
【0008】
一方で、飲料に粘度を付与するために膨潤が抑制された澱粉を加熱し混合した後、均質化処理を加える技術も広く知られている。例えば、膨潤が抑制された澱粉を加え加熱混合した後、均質化処理を施すホワイトソースが示されている (特許文献3、特許文献4)。
【0009】
例えば、膨潤が抑制された澱粉を加え加熱混合した後、均質化処理を施す上がけソースの製造方法が示されている (特許文献5)。例えば、膨潤が抑制された澱粉を加え加熱混合した後、均質化処理を施す食品組成物が示されている (特許文献6)。
【0010】
しかしながら、上記技術はいずれも食品の粘度低下を防ぐことを目的としており、澱粉粒を崩壊させない程度の加熱混合及び均質化処理を行う技術に関するものである。
【0011】
したがって、後述するように、機械処理によって澱粉粒を崩壊せしめることを目的とした本技術とは、意図する目的が全く異なるものである。さらに、上記いずれの技術も、澱粉粒の沈降分離が問題となる飲料に関する技術ではなく、澱粉粒の沈降分離に関しては何ら記載されていない。
【0012】
また、膨潤が抑制された澱粉を加えて加熱混合した後に均質化処理を施す食品の製造方法が示されている(特許文献7)。
【0013】
しかしながら、当該技術は粘度低下が生じないように澱粉粒が崩壊しない程度の加熱混合及び均質化処理を行うものであり、その実施例においてココア飲料の沈殿層に関する記載があるが、これはココア粒子の沈澱に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−187259号
【特許文献2】特開2002−51729号
【特許文献3】特開2008−307016号
【特許文献4】特開平10−327822号
【特許文献5】特開昭56−124344号
【特許文献6】特開2004−267160号
【特許文献7】特開2009−89669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、良好なとろみやボディ感を有し、ヌメリが低減され、のどごしが良好であり、且つ常温で1日間静置しても澱粉の沈降分離が生じない澱粉含有飲料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題を解決するために鋭意検討を行った結果、意外にも膨潤を抑制した澱粉を加熱混合した後、機械処理により澱粉粒を崩壊せしめることにより、とろみやボディ感を維持したまま澱粉の沈降分離を発生しない飲料が製造可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
本発明は、加熱膨潤度が10〜40である膨潤が抑制された澱粉を原材料に添加し、65〜95℃になるまで加熱混合した後、機械処理によって澱粉粒を崩壊せしめることを特徴とする飲料の製造方法である。
【0018】
本発明においては、使用する澱粉が、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉から選ばれる一種以上であることが好ましい。更に、本発明においては、使用する澱粉が、コーンスターチ、タピオカ、米澱粉から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、良好なとろみやボディ感を有し、ヌメリが低減され、のどごしが良好であり、且つ常温で1日間静置しても澱粉の沈降分離が生じない澱粉含有飲料を提供することができる。また、本発明により、果汁の添加量を低減することで飲料の褐変を防ぎ、果汁の焦げ付きを防止し、さらに製造コストを削減しつつ果汁感を維持した果汁飲料を提供することができる。更に、本発明により、高甘味度甘味料を添加することで飲料のカロリーを抑えつつ、とろみやボディ感を付与した飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
澱粉は、水存在下での加熱時に吸水して粒が膨潤し、その膨潤が物理的限界に達すると粒が崩壊する。崩壊が進むと粒は細分化され、やがて完全に消失する。架橋処理などの膨潤抑制が施された澱粉は、粒の膨潤が抑制されるため、加熱するだけでは粒の崩壊が起こり難い。ところが、加熱した澱粉に強力なせん断力や圧力を与えるような機械処理を施すことで、澱粉粒の膨潤を促進させ、更には澱粉粒を崩壊せしめるに至らせることができる。
【0021】
本発明によれば、加熱膨潤度が10〜40である膨潤が抑制された澱粉を原材料に添加し、65〜95℃になるまで加熱混合した後、機械処理によって澱粉粒を崩壊せしめることで、良好なとろみやボディ感を有し、ヌメリが低減され、且つ常温で1日間静置しても澱粉に由来する沈殿が生じない飲料を得ることができる。
【0022】
本発明の対象とする飲料としては、澱粉を含有した飲料であればいずれでもよく、例えば、果汁飲料、ネクター、コーヒー飲料、乳飲料、豆乳飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ゼリー飲料、フルーツスープ、コーンスープ、御汁粉などが挙げられる。飲料を提供する形態としては、冷蔵飲料でもよく、60℃前後に保温したホット飲料でもよい。
【0023】
本発明に用いる膨潤が抑制された澱粉は、加熱膨潤度が10〜40であることが好ましく、加熱膨潤度が15〜30であることがより好ましい。加熱膨潤度が10未満になると、機械処理を施した際に澱粉粒を十分に崩壊せしめることができなくなるため、飲料の沈澱分離が生じてしまう。一方、加熱膨潤度が40を超えると、機械処理を施した際に澱粉粒を十分に崩壊せしめることはできるが、飲料にヌメリが生じ易くなり、のどごしが悪化するという問題がある。
【0024】
なお、本発明において、澱粉の加熱膨潤度とは、以下の方法によって定量される値を意味する。すなわち、乾燥物質量1.0gの澱粉試料を水100mlに分散し、沸騰水中で時々攪拌しながら30分間加熱後、30℃に冷却する。次いで、この糊液を遠心分離(3000rpm、10分間)して糊層と上澄液層に分け、糊層の質量を測定してこれをAとする。次いで、質量測定した糊層を105℃で乾固した後、再び質量を測定してこれをBとし、A/Bの値を加熱膨潤度とする。
【0025】
本発明における加熱条件としては、澱粉を含む原材料が65〜95℃になるまで行うことが好ましい。更に、原材料の温度が均一になるよう、目的とする温度に到達させた後に、その温度を維持し続けてもよい。到達させる温度が65℃未満である場合、機械処理を施した際に澱粉粒を十分に崩壊せしめることができなくなるため、飲料の沈澱分離が生じてしまう。一方、到達させる温度が95℃を超える場合、機械処理を施した際に澱粉粒を十分に崩壊せしめることはできるが、目的とするとろみやボディ感やのどごしが低下し易くなるという問題がある。
【0026】
本発明でいう機械処理とは、ミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、マスコロイダー、マイルダーなどの攪拌機械によって澱粉含有飲料に強力なせん断力や圧力を与える処理を意味する。したがって、本発明における機械処理としては、ミキサー処理、ホモミキサー処理、ホモジナイザー処理、コロイドミル処理、マスコロイダー処理、マイルダー処理などが挙げられるが、澱粉粒を十分に崩壊せしめることができるならば、使用する機器及びその使用条件は特に限定されるものではない。また、機械処理を実施する際の原材料の温度は、加熱が維持されたままでもよく、加熱が維持されていなくてもよく、冷却されていてもよく、特に限定されるものではない。
【0027】
澱粉含有飲料において澱粉粒が崩壊しているかどうかは、以下の方法によって定性的に確認することができる。すなわち、澱粉含有飲料をよく攪拌した後にスライドガラスに数滴取り、これにヨウ素溶液を数滴添加して混合した後、カバーガラスを乗せ、カバーガラス周辺の水分を拭き取って観察試料とする。この観察試料を、光学顕微鏡を用いて観察し、澱粉粒の有無を確認する。観察試料がヨウ素溶液で染色されるにも関わらず、澱粉粒がほとんど観察できない場合は、澱粉粒が崩壊していることを意味する。一方で、観察試料がヨウ素溶液で染色され、且つ一般的な澱粉粒の形状を確認することができる場合は、澱粉粒が崩壊していないことを意味する。
【0028】
澱粉含有飲料における澱粉粒の沈澱は、以下の方法によって定性的に確認することができる。すなわち、澱粉含有澱粉をよく撹拌した後に300mlスクリュー瓶に200ml分注し、25℃で1日間静置した後、澱粉が沈降分離していないかを目視にて確認する。
【0029】
本発明に用いる膨潤が抑制された澱粉として、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉から選ばれる一種以上が挙げられる。更に、これらの澱粉に酸処理、アルカリ処理、α化、漂白処理、酵素処理、加熱処理、湿熱処理、油脂加工、微粉砕処理などの物理加工を組み合わせることができるが、これらは特に限定されるものではない。
【0030】
本発明に用いる膨潤が抑制された澱粉の原料としては、コーンスターチ、タピオカ、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、サゴ澱粉などが挙げられ、これらの一種または二種以上を組み合わせてもよい。この中でも、コーンスターチ、タピオカ、米澱粉を用いることが好ましく、コーンスターチ、タピオカのいずれか一種以上を用いることがより好ましい。
【0031】
なお、いずれの澱粉においても、ウルチ種、ワキシー種、モチ種、ハイアミロース種のように、育種的手法もしくは遺伝子工学的手法において改良された品種が存在するが、これらは特に限定されるものではない。例えば、コーンスターチにおいては、一般的なウルチ種のコーンスターチに加え、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ホワイト種コーンスターチ、イエロー種コーンスターチなどが挙げられる。
【0032】
本発明に用いる膨潤が抑制された澱粉の添加率は、すべての原材料に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくはすべての原材料に対して0.3〜3質量%である。膨潤が抑制された澱粉の添加率が0.1質量%未満となる場合には、とろみやボディ感を十分に付与することができず、10質量%を超える場合には、澱粉に由来する独特の風味や穀物臭が顕著になるため、いずれも好ましくない。
【0033】
本発明に用いる飲料の原材料としては、果汁、甘味料、乳、乳成分、香料などが挙げられる。果汁としては、例えば、アップル果汁、ピーチ果汁、オレンジ果汁、ブドウ果汁、イチゴ果汁などが挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、グラニュー糖、スクロース、グルコース、マルトース、異性化糖、マルトオリゴ糖、澱粉分解水飴、還元水飴、高甘味度甘味料などが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア、カンゾウ、ソーマチン、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、フェニルアラニン化合物などが挙げられる。
【0034】
上記原材料の他に必要に応じて保存料、酸味料、pH調整剤、乳化剤、増粘多糖類などを添加してもよく、これら澱粉以外の原材料は特に限定されるものではない。
【0035】
本発明における澱粉含有飲料の製造工程において、機械処理を施した後に加熱殺菌処理を行ってもよい。一般的な加熱殺菌は、直接加熱殺菌と間接加熱殺菌が挙げられるが、商品の形態に合わせていずれを行ってもよい。直接加熱殺菌とは、食品そのものを直接加熱して殺菌することで、食品を容器に無菌充填する場合の前処理として広く用いられている。間接加熱殺菌とは、主に缶、瓶、レトルトパウチなどの容器に包装した食品を加熱殺菌する方法である。加熱殺菌の温度及び時間は特に限定されるものではない。
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の各試験例で使用した澱粉試料は、下記表1に示した澱粉試料から選択して使用した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示した澱粉試料の詳細を以下に示した。澱粉試料1には、Asia Modified Starch Co.,Ltd.製のNeovis T−300を用いた。澱粉試料2には、Asia Modified Starch Co.,Ltd.製のMR−300を用いた。澱粉試料3には、日本食品化工株式会社製の日食ネオビスC−6を用いた。澱粉試料4には、Asia Modified Starch Co.,Ltd.製のCLEARTEXT SD−3を用いた。澱粉試料5には、日本食品化工株式会社製の日食ネオビスC−60を用いた。澱粉試料6には、Asia Modified Starch Co.,Ltd.製のNeovis G−800を用いた。澱粉試料7には、日本食品化工株式会社製の日食MT−80を用いた。澱粉試料8には、日本食品化工株式会社製の日食MT−50を用いた。澱粉試料9には、日本食品化工株式会社製の日食MT−01Bを用いた。澱粉試料10には、Asia Modified Starch Co.,Ltd.製のTapioca Starchを用いた。澱粉試料11には、日本食品化工株式会社製の日食ワキシースターチAZを用いた。
【0039】
(試験例1)
表2の配合でホットタイプのアップル果汁飲料を製造した。なお、比較例1−1においては、澱粉試料を使用せず、水の配合量を86.20部とした。すべての原材料を加熱混合し、混合物の温度を75℃に到達させた後、攪拌しながらその温度を10分間維持した。次いで、直ちにホモミキサーを用いて5000rpm・2分間の機械処理を混合物に施した。これらをガラス瓶に充填し、95℃で5分間の加熱殺菌を行った後、60℃で2週間保存した。
【0040】
【表2】

【0041】
得られたホットタイプのアップル果汁飲料について、光学顕微鏡を用いた澱粉粒の有無の確認、25℃で1日間静置した後の澱粉の沈殿分離の有無の確認、官能検査による食感の評価を実施した。官能検査においては、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしの観点から、非常に優れていれば「◎」、好ましければ「○」、やや劣れば「△」、非常に劣れば「×」として採点した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3に示すように、加熱膨潤度が10〜40である澱粉試料を使用して得られた実施例1−1〜1−7は、澱粉粒が崩壊しており、常温で1日間静置しても澱粉に由来される沈降分離がなく、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしにおいて良好な食感を有していた。
【0044】
(試験例2)
表4の配合でカロリーオフタイプのピーチ果汁飲料を製造した。すべての原材料を加熱混合し、混合物の温度を目標とする温度に到達させた後、攪拌しながらその温度を10分間維持した。次いで、直ちにホモミキサーを用いて5000rpm・2分間の機械処理を混合物に施した。これらをガラス瓶に充填し、95℃で5分間の加熱殺菌を行った後、5℃で2週間保存した。
【0045】
【表4】

【0046】
得られたカロリーオフタイプのピーチ果汁飲料について、光学顕微鏡を用いた澱粉粒の有無の確認、25℃で1日間静置した後の澱粉の沈殿分離の有無の確認、官能検査による食感の評価を実施した。官能検査においては、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしの観点から、非常に優れていれば「◎」、好ましければ「○」、やや劣れば「△」、非常に劣れば「×」として採点した。結果を表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
表5に示すように、65〜95℃になるまで加熱混合した実施例2−1〜2−12は、澱粉粒が崩壊しており、常温で1日間静置しても澱粉に由来される沈降分離がなく、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしにおいて良好な食感を有していた。
【0049】
(試験例3)
表6の配合でフルーツスープを製造した。すべての原材料を加熱混合し、混合物の温度を80℃に到達させた後、60℃になるまで加熱せずに攪拌し続けた。次いで、実施例3−1〜3−3においては、ホモミキサーを用いて、6000rpm・5分間の機械処理を混合物に施した。一方、比較例3−1〜3−3においては、機械処理を実施しなかった。これらをガラス瓶に充填し、95℃で5分間の加熱殺菌を行った後、5℃で2週間保存した。
【0050】
【表6】

【0051】
得られたフルーツスープについて、光学顕微鏡を用いた澱粉粒の有無の確認、25℃で1日間静置した後の澱粉の沈殿分離の有無の確認、官能検査による食感の評価を実施した。官能検査においては、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしの観点から、非常に優れていれば「◎」、好ましければ「○」、やや劣れば「△」、非常に劣れば「×」として採点した。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】

【0053】
表7に示すように、機械処理を施した実施例3−1〜3−1は、澱粉粒が崩壊しており、常温で1日間静置しても澱粉に由来される沈降分離がなく、とろみ、ボディ感、ヌメリの少なさ、のどごしにおいて良好な食感を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱膨潤度が10〜40となる膨潤が抑制された澱粉を原材料に添加し、65〜95℃になるまで加熱混合した後、機械処理によって澱粉粒を崩壊せしめることを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の澱粉が、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉から選ばれる一種以上である請求項1に記載の飲料の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の澱粉が、コーンスターチ、タピオカ、米澱粉から選ばれる一種以上である請求項1に記載の飲料の製造方法。

【公開番号】特開2012−130272(P2012−130272A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284085(P2010−284085)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】