説明

澱粉系塗料組成物

【課題】一液型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を形成することのできる澱粉系塗料組成物及びこの澱粉系塗料組成物を塗装した塗装物品を提供する。
【解決手段】澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、並びにポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを、又はこれらと芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体及び所望によりその他のラジカル重合性不飽和単量体からなる混合物をラジカル重合反応させて得られる樹脂とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含む澱粉系塗料組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉系塗料組成物に関する。本発明は、特に、天然物由来であって生分解性を有する澱粉を利用した、一液型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を形成することのできる澱粉系塗料組成物、及びこの澱粉系塗料組成物を塗装した塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理性の向上やCO放出量の削減などの、地球環境に対する影響低減の視点から、環境負荷の少ない天然物由来で生分解性を有する原料を積極的に利用することが求められている。
そのような天然物由来の代表的な材料として、多糖類である澱粉、あるいはアセチル化澱粉などの変性澱粉が、従来、食品工業、製紙工業で用いられてきたが、近年は生分解性プラスチックの原料としてそれらの澱粉を用いて、食品容器、包装材、緩衝材シート、農業用フィルム、使い捨てオムツなどの幅広い分野で製品化がされてきている。
【0003】
各種加工を施し、本来の構造や物性の一部を変化させた澱粉を化工澱粉というが、澱粉を工業製品原料として利用するために、澱粉の改質とともに、化工澱粉に関する様々な改良が積み重ねられてきた。澱粉の基本構造はα−D−グルコースが1,4−結合により直鎖状に連結したアミロースと分枝構造を有するアミロペクチンの混合物であり、構造中に水酸基を持つことを利用したエステル化、エーテル化等の変性が1960年代になされた。
【0004】
また、澱粉又は変性澱粉の水酸基の少なくとも一部がイソシアネート化合物との反応によってウレタン化されたウレタン化澱粉が提案されている(特許文献1参照)。
また、澱粉又は変性澱粉、糖みつ、多糖類系農業廃棄物及び植物油の水酸基含有変性体から選ばれる少なくとも1種の植物成分の有機溶媒溶液にポリイソシアネートを反応させることによる生分解性ポリウレタンの製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、これに関連してポリイソシアネートにより水酸基含有アクリル樹脂と澱粉とを結合させることも提案されている(特許文献3参照)。
これはいわば澱粉樹脂とアクリル樹脂とをポリイソシアネートを介して間接的にグラフトさせるものであるが、澱粉又は変性澱粉に不飽和モノマーをラジカルグラフト重合させてグラフト澱粉を直接製造する方法は幾つかの文献に開示されている(非特許文献1、特許文献4〜9参照)。
その他、澱粉と他の生分解性樹脂を組み合わせた例として、澱粉または変性澱粉とセルロース誘導体を組み合わせたポリマーブレンドを成型材料として用いる発明が開示されている(特許文献10、11参照)。
【0006】
これらの文献からも明らかなように、種々のポリマーを組み合わせ、結合させ、もしくはグラフトさせた澱粉系樹脂自体は公知である。しかし、これらの従来技術では、いずれも、澱粉系樹脂の用途として構造材料、射出成型材料、シート等が想定されており、塗料としての用途は開示されていない。
【0007】
澱粉系樹脂を用いた塗料に関しては、澱粉系樹脂と澱粉分子中に含まれる少なくとも1個の水酸基と相補的に反応する官能基を有する硬化剤との混合物からなる硬化型澱粉組成物を反応硬化型塗料として用いることが開示されている(特許文献12参照)。
また、(A)変性澱粉および(B)重合性不飽和モノマーの共重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下の分散樹脂水分散体、およびそれを含む水性塗料組成物を反応硬化型塗料として用いることが開示されている(特許文献13参照)。
【0008】
しかし、これらの従来の澱粉系塗料技術は反応硬化型塗料に関するものであり、貯蔵安定性に優れ、かつ、乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を形成できる一液ラッカー型の澱粉系塗料はこれまで存在しなかった。
【特許文献1】特開平5−43649号公報
【特許文献2】特開平5−186556号公報
【特許文献3】特開平6−65349号公報
【特許文献4】米国特許第3425971号明細書
【特許文献5】米国特許第3981100号明細書
【特許文献6】特開昭54−120698号公報
【特許文献7】特開昭55−90518号公報
【特許文献8】特開昭56−167746号公報
【特許文献9】特開平8−239402号公報
【特許文献10】特開平6−207047号公報
【特許文献11】特開平8−231762号公報
【特許文献12】特開2004−224887号公報
【特許文献13】特開2006−52338号公報
【非特許文献1】J.C.Arthur,Jr.;Advan.Macromol.Chem.;“Graft Polymerization onto Polysaccharide”;2:1−87(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、天然物由来であって生分解性を有する澱粉を利用し、一液型塗料として貯蔵安定性に優れ、しかも乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を形成することのできる澱粉系塗料組成物、及びこの澱粉系塗料組成物を塗装した塗装物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解消するために鋭意検討した結果、特定組成の澱粉系樹脂組成物を使用することによりかかる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、次の事項からなる。
【0011】
1.澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、並びにポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【0012】
2.澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、並びに下記のビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物。
ビニル共重合体樹脂(C):ラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)の合計質量に対して、芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体1〜90質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜50質量%及びその他のラジカル重合性不飽和単量体0〜98質量%からなる混合物をラジカル重合反応させて得られる樹脂
【0013】
3.多価アルコール(b2)が、アルキレンジオール(b21)、3価以上のアルカンポリオール(b22)、エーテルポリオール(b23)及びポリエステルポリオール(b24)から選ばれる少なくとも1種である、上記1又は2に記載の澱粉系塗料組成物。
4.澱粉系塗料組成物が、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散されているものである、上記1〜3のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【0014】
5.さらに天然物由来樹脂を含む、上記1〜4のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
6.天然物由来樹脂が、ニトロセルロース及び/又はセルロース変性物である、上記5に記載の澱粉系塗料組成物。
7.さらにワックスを含む、上記1〜6のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
8.上記1〜7のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物が塗装された塗装物品。
【発明の効果】
【0015】
本発明の澱粉系塗料組成物は、貯蔵安定性に優れ、さらに乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を形成することができる。この澱粉系塗料組成物は、一液型であり、そのためポットライフを気にすることがないことから作業性に優れ、天然物由来で生分解性を有する原材料を用いていることから製品のライフサイクルに関わる総CO排出量が少なく、環境汚染を低減できる。
さらに一液型塗料であることから、焼付け工程に関してエネルギーやCO排出量の削減が可能である。
この澱粉系塗料組成物は、天然物由来の高分子材料である澱粉を利用しているので安定供給が可能であり、塗料のほかに、成型剤、インク、接着剤等の分野において幅広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい形態について詳しく説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0017】
澱粉系塗料組成物(1)
澱粉系塗料組成物(1)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、並びにポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物である。
【0018】
澱粉系塗料組成物(2)
澱粉系塗料組成物(2)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、並びにビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物である。
【0019】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)
本発明に有用な澱粉としては、コーンスターチ、ハイアミローススターチ、小麦澱粉、米澱粉などの穀類の未変性澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの芋類の未変性澱粉、及びそれらの澱粉のエステル化、エーテル化、酸化、酸処理化もしくはデキストリン化された澱粉置換誘導体などが挙げられる。これらは、単独で又は複数を併用して使用できる。
【0020】
本発明に有用な変性澱粉には、澱粉又は澱粉分解物に、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などをエステル結合及び/又はエーテル結合を介して結合させてなる変性澱粉が包含される。ここで、澱粉分解物としては、澱粉に酵素、酸又は酸化剤で低分子量化処理を施したものが挙げられる。
【0021】
澱粉又は澱粉分解物は、数平均分子量が1,000〜2,000,000、さらに好ましくは5,000〜500,000、特に3,000〜100,000の範囲内にあることが、造膜性などの点から好ましい。
なお本明細書において、数平均分子量は、JIS K0124-83に準じて、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー株式会社製)を用い、40℃で流速1.0ml/分の条件下に、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレン換算の検量線から計算により求めたものをいう。
【0022】
変性澱粉の変性方法としては、例えば、エステル化変性が挙げられ、好ましい変性基としては炭素数2〜18のアシル基が挙げられる。変性は炭素数2〜18の有機酸を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることにより行うことができる。
変性澱粉の変性程度は、置換度で0.5〜2.8の範囲内が好ましく、特に1.0〜2.5の範囲内が好ましい。置換度が0.5未満では、後述のラジカル重合性不飽和モノマーとの相溶性が不十分となり、形成塗膜の仕上り性等が不十分になることがある。他方、置換度が2.8を超えると、生分解性が低下することがある。
【0023】
また、変性澱粉は、澱粉の分解温度(約350℃)以下にガラス転移点を有し、熱可塑性を有しかつ生分解性も有しているように変性の程度が調節されていることが望ましく、したがって変性に使用する置換基の炭素数が多い場合には低変性レベルに、例えば、置換基が炭素数18のステアリル基である場合にはエステル置換度が0.1〜1.8の範囲内にあることが好ましく、また置換基の炭素数が少ない場合には高変性レベルに、例えば、置換基が炭素数2のアセチル基である場合にはエステル置換度が1.5〜2.8の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
なお、置換度は、澱粉を構成する単糖単位1個あたりの変性剤により置換された水酸基の平均個数であり、例えば、置換度3は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基が全て変性剤により置換されていることを意味し、置換度1は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基のうちの1個だけが変性剤により置換されていることを意味する。
【0025】
変性澱粉の例としては、50%以上のアミロース含量をもつ無水の澱粉を非プロトン性溶媒中でエステル化試薬と混合して澱粉とエステル化試薬の間で反応させることにより得られる疎水性の生分解性澱粉エステル生成物(特表平8−502552号公報参照)、ビニルエステルをエステル化試薬として用いて変性された澱粉エステルであって、該ビニルエステルとしてエステル基の炭素数が2〜18のものを用い、非水有機溶媒中でエステル化触媒を使用して澱粉と反応させて得られる澱粉エステル(特開平8−188601号公報参照)、エステル化とともにポリビニルエステルのグラフト化がされている澱粉(特開平8−239402号公報及び特開平8−301994号公報参照)、ポリエステルグラフト鎖を澱粉分子上に有し、該グラフト鎖末端及び澱粉直結の水酸基の一部又は全てがエステル基により封鎖されているポリエステルグラフト重合澱粉と、該ポリエステルグラフト鎖と同一の構成成分を有し、末端水酸基の一部または全部がエステル基により封鎖されている独立ポリエステルとが均一混合されてなるポリエステルグラフト重合澱粉アロイ(特開平9−31308号公報参照)等を挙げることができる。
【0026】
さらには、同一澱粉分子の反応性水酸基の水素を炭素数2〜4の短鎖アシル基及び炭素数6〜18の長鎖アシル基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉エステル(特開2000−159801号公報参照)、同一澱粉分子の反応性水酸基を炭素数2〜4の短鎖炭化水素含有基及び炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉置換誘導体(特開2000−159802号公報参照)等が挙げられる。これらの変性澱粉は、澱粉を母体としているため生分解性であり、特に溶剤への溶解性や相溶性に優れる。
【0027】
イソシアネート基を有する生成物(B)
イソシアネート基を有する生成物(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得ることができる。
ポリイソシアネート化合物(b1)は、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナト)メチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3−(2’−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが、硬度、付着性、耐衝撃性の面から特に好ましい。
【0028】
ポリイソシアネート化合物(b1)の市販品の例としては、「バーノックD−750、D−800、DN−950、DN−970もしくは15−455」(以上、大日本インキ化学工業(株)製品)、「デスモジュールL、N、HLもしくはN3390」(ドイツ国バイエル社製品)、「タケネートD−102、D−170HN、D−202、D−110もしくはD−123N」(武田薬品工業(株)製品)、「コロネートEH、L、HLもしくは203」(日本ポリウレタン工業(株)製品)又は「デュラネート24A−90CX」(旭化成工業(株)製品)等が挙げられる。
【0029】
多価アルコール(b2)としては、アルキレンジオール(b21)、3価以上のアルカンポリオール(b22)、エーテルポリオール(b23)及びポリエステルポリオール(b24)及びその他のポリオールを挙げることができる。
アルキレンジオール(b21)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類が挙げられる。
3価以上のアルカンポリオール(b22)としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグリコシド、ソルビトール等の4価以上のアルキレンポリオール類が挙げられる。
【0030】
エーテルポリオール(b23)としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドの開環付加反応によって製造されるもの、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、スクロース、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオール(b24)としては、例えば、有機ジカルボン酸又はその無水物と有機ジオール成分との、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。具体的には、アジピン酸とエチレングリコールの縮合物、アジピン酸とネオペンチルグリコールの縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0031】
ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数が2〜44、特に4〜36の脂肪族系、脂環式又は芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらのジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。また、有機ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどが挙げられ、これらは場合によりトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のポリオールの少量と併用されてもよい。
【0032】
以上に述べた多価アルコール(b2)のうちでは、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルなどが挙げられ、耐衝撃性及び耐屈曲性の観点からも好適である。上記ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)との反応は、有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等、中で行うことができる。ここで、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)の反応割合として、ポリイソシアネート化合物(b1)に基づくNCO基のモル数に対する多価アルコール(b2)に基づくOH基のモル数がNCO基/OH基=1/0.4〜0.95、好ましくは1/0.5〜0.9であって、フリーのイソシアネートを残存させるように、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを混合し、適宜に、例えば、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の、触媒を加えて、攪拌下に、約50℃〜約200℃、好ましくは60〜150℃程度の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間程度反応させることによって、イソシアネート基を有する生成物(B)の溶液を製造できる。得られたイソシアネート基を有する生成物(B)のNCO価は、5〜250mgNCO/g、特に7〜200mgNCO/gの範囲であるのが好ましい。
【0033】
ビニル共重合体樹脂(C)
ビニル共重合体樹脂(C)は、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)を、有機溶剤及び重合開始剤の存在下にラジカル重合反応させて得ることができる。
ラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)が、該混合物(c)の合計質量に対して、芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは10〜85質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%及びその他のラジカル重合性不飽和単量体0〜98質量%、好ましくは2〜95質量%、さらに好ましくは5〜90質量%からなるラジカル重合性不飽和単量体の混合物である場合に、仕上り性、付着性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れた塗膜を形成することができる。
【0034】
芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの、アルキル基の炭素数が2〜8の、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルラクトン変性物(ダイセル化学(株)製の商品名「プラクセルF」シリーズ)などが挙げられる。なかでも、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル及びアクリル酸4−ヒドロキシブチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが、澱粉及び/又は変性澱粉(A)やイソシアネート基を有する生成物(B)との相溶性を向上させて、塗料安定性を確保する観点から、特に好ましい。
【0035】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和単量体、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−、i−もしくはt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−、i−もしくはt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系単量体を挙げることができ、またこれらの重合性不飽和単量体は脂肪酸変性重合性不飽和単量体を含むこともできる。
【0036】
脂肪酸変性重合性不飽和単量体には、脂肪酸由来の炭化水素鎖の末端に重合性不飽和基を有する重合性不飽和単量体が包含される。脂肪酸変性重合性不飽和単量体としては、例えば、脂肪酸をエポキシ基含有重合性不飽和単量体又は水酸基含有重合性不飽和単量体と反応させることにより得られるものを挙げることができる。
【0037】
脂肪酸としては、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸及び不乾性油脂肪酸が挙げられ、乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられ、また不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、これらの脂肪酸は、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等と併用することもできる。
【0038】
脂肪酸変性重合性不飽和単量体を製造するために上記脂肪酸と反応させることのできる単量体としてはエポキシ基を含有する重合性不飽和単量体が好適であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0039】
ビニル共重合体樹脂(C)の調製は、例えば、上記したラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)を重合開始剤の存在下に、有機溶剤中で、ラジカル重合反応させることにより容易に行うことができ、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)と重合開始剤の混合物を均一に滴下して、例えば、60〜200℃、好ましくは80〜180℃の反応温度にて約30分〜6時間、好ましくは1〜5時間反応させることによって目的の生成物を得ることができる。
上記の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
得られたビニル共重合体樹脂(C)は、水酸基価が5〜400mgKOH/g、重量平均分子量が3,000〜100,000、特に5,000〜20,000の範囲内にあるのが好ましい。
上記のようにして製造されるビニル共重合体樹脂(C)は、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散されてなる澱粉系塗料のバインダーとして好適に使用できる。
【0041】
澱粉系塗料組成物(1)の製造
澱粉系塗料組成物(1)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、並びにポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして用いて製造される。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)との配合割合は、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。
【0042】
好ましくは、澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)の合計固形分質量を基準にして、澱粉及び/又は変性澱粉(A)を50〜99質量%、より好ましくは60〜98質量%及びイソシアネート基を有する生成物(B)を1〜50質量%、より好ましくは2〜40質量%の範囲の量で、有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等、中で混合し、適宜にモノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を加え、攪拌下に約50℃〜約200℃、より好ましくは60〜150℃程度の温度で、30分間〜10時間、より好ましくは1〜5時間程度、付加反応させることによって、澱粉系塗料組成物(1)に用いる樹脂組成物を得ることができる。得られた樹脂組成物の数平均分子量は、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。このようにして製造される樹脂組成物は、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散させてなる澱粉系塗料のバインダーとして好適に使用できる。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)の量が50質量%未満であると天然物由来成分が少なくなり、一方99質量%を超えると塗膜の耐薬品性が低下することがある。また、イソシアネート基を有する生成物(B)の量が1質量%未満であると塗膜の耐薬品性が低下することがあり、一方50質量%を超えると天然物由来成分が少なくなり、樹脂の溶剤溶解性が低下することがある。
【0043】
澱粉系塗料組成物(2)の製造
澱粉系塗料組成物(2)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、並びにビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして用いて製造される。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、イソシアネート基を有する生成物(B)と及びビニル共重合体樹脂(C)との配合割合は、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。
【0044】
好ましくは、澱粉及び/又は変性澱粉(A)、イソシアネート基を有する生成物(B)及びビニル共重合体樹脂(C)の合計固形分重量を基準にして、澱粉及び/又は変性澱粉(A)を60〜99重量%、より好ましくは65〜95重量%、イソシアネート基を有する生成物(B)を1〜39重量%、より好ましくは2〜33重量%及びビニル共重合体樹脂(C)を1〜39重量%、より好ましくは2〜33重量%の範囲の量で、澱粉系塗料組成物(1)の製造に関して上記したものと同様の有機溶剤中で混合し、適宜にモノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の錫触媒を加え、攪拌下に約50℃〜約200℃、より好ましくは60〜150℃程度の温度で、30分間〜10時間、より好ましくは1〜5時間程度反応させることによって、澱粉系樹脂組成物(2)に用いる樹脂組成物を得ることができる。得られた樹脂組成物の数平均分子量は、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。このようにして製造される樹脂組成物は、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散させてなる澱粉系塗料のバインダーとして好適に使用できる。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)の量が50質量%未満であると天然物由来成分が少なくなり、一方99質量%を超えると塗膜の耐薬品性、付着性が低下することがある。イソシアネート基を有する生成物(B)の量が1質量%未満であるとワニスの貯蔵安定性、塗膜の耐薬品性が劣ることがあり、一方50質量%を超えると天然物由来成分が少なくなり、樹脂の溶剤溶解性が低下することがある。また、ビニル共重合体樹脂(C)の量が1質量%未満であると塗膜の付着性、耐薬品性が低下することがあり、一方50質量%を超えると天然物由来成分が少なくなる。
【0045】
なお、澱粉系塗料組成物(1)に用いる樹脂組成物、または澱粉系塗料組成物(2)に用いる樹脂組成物は、粉体塗料、水性塗料、有機溶剤型塗料などの従来から公知の塗料系に用いることができる。なかでも、有機溶剤型塗料としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系有機溶剤を単独でもしくは2種以上組合せて反応溶剤や希釈溶剤として使用し、該樹脂を溶解もしくは分散させて、澱粉系塗料組成物とすることができる。
【0046】
天然物由来樹脂
本発明の澱粉系塗料組成物(1)又は澱粉系塗料組成物(2)には、必要に応じて、その他の天然物由来樹脂が配合されてもよい。澱粉系樹脂以外の天然物由来樹脂の例としては、植物性繊維もしくはセルロース樹脂や、ポリ乳酸に代表されるポリヒドロキシカルボン酸、ポリカプロラクタム、変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。また、ポリカプロラクトンに代表される脂肪族ポリエステルも生分解性を有する。
ここに挙げたもの以外にも、生分解性を持つ多くの樹脂が知られている。本発明においては、溶剤に可溶性である天然物由来樹脂であれば用いることができるけれども、なかでもセルロース由来の樹脂が好適である。
【0047】
本発明においては、上記澱粉系塗料組成物(1)又は澱粉系塗料組成物(2)は、これにニトロセルロース及び/又はセルロースアセテートブチレートを少量添加することにより、一液型ラッカー塗料として用いた時の塗膜の乾燥性が良くなり、表面硬度が高くなることが見出された。
また、ポリヒドロキシカルボン酸、特にポリ乳酸にも表面硬度を高める効果が認められるが、この場合には塗膜が脆くなる傾向があり、セルロース由来の樹脂のほうが得られる塗膜性能のバランスがよく、使い易い。
【0048】
本発明に好適に使用することのできるニトロセルロースとしては、工業用硝化綿BNC−HIG−2(商品名、仏国ベルジュラックNC社製)、工業用硝化綿RS1−4(商品名、韓国CNC社製)、スワンセルHM1−4(商品名、株式会社協鮮洋行製)、セルノバBTH1−4(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられ、セルロースアセテートブチレートとしては、CAB381−0.1、CAB381−0.5、CAB381−2、CAB531−1、CAB551−0.01、CAB551−0.2(全て商品名、米国イーストマンケミカルプロダクツ社製)等が挙げられる。
【0049】
これらの天然物由来樹脂の配合量は、バインダーである澱粉及び/又は変性澱粉(A)と生成物(B)、又はバインダーである澱粉及び/又は変性澱粉(A)と生成物(B)及びビニル共重合体樹脂(C)の固形分合計量を100質量部としたときに、50質量部以下、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜35質量部であるのが、澱粉系塗料組成物の乾燥性や得られる塗膜の耐擦り傷性及び耐溶剤性を良好に保持する観点からも好ましい。
【0050】
本発明の澱粉系塗料組成物(1)又は澱粉系塗料組成物(2)には、必要に応じて有機着色剤、天然色素、無機顔料及び光輝材を使用することができる。有機着色剤としては、厚生省令第37号で定められているものが挙げられる。例えば、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色203号(レーキレッドC)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色205号(リソールレッド)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色221号(トルイジンレッド)、赤色228号(パーマトンレッド)、だいだい色203号(パーマネントオレンジ)、だいだい色204号(ベンチジンオレンジG)、黄色205(ベンチジンエローG)、赤色404号(ブリリアントファストスカーレット)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、だいだい色401号(ハンザオレンジ)、黄色401号(ハンザエロー)、青色404号(フタロシアニンブルー)などが挙げられる。
【0051】
天然色素としては、カロチノイド系ではカロチン、カロチナール、カプサンチン、リコピン、ビキシン、クロシン、カンタキサンチン、アナトーなど、フラボノイド系ではシソニン、ラファニン、エノシアニンなどのようなアントシアニジン類、サフロールイエロー、ベニバナなどのようなカルコン類、ルチン、クエルセチンなどのようなフラボノール類、カカオ色素のようなフラボン類など、フラビン系ではリボフラビンなど、キノン系ではラッカイン酸、カルミン酸(コチニール)、ケルメス酸、アリザリンなどのようなアントラキノン類、シコニン、アルカニン、エキノクロームなどのようなナフトキノン類など、ポリフィリン系ではクロロフィル、血色素など、ジケトン系ではクルクミン(ターメリック)など、ベタシアニジン系ではベタニンなどが挙げられる。
【0052】
無機顔料としては、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸マグネシウム、重質炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミンなどが挙げられる。
光輝材とは塗膜にキラキラとした光輝感または光干渉性を付与するりん片状顔料であり、その例としてはりん片状のアルミニウム、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化オキシビスマス、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆シリカ、酸化鉄被覆アルミナ、ガラスフレーク、着色ガラスフレーク、蒸着ガラスフレークホログラムフィルムなどが挙げられる。これらの光輝材の大きさは長手方向が1〜30μm、厚さが0.001〜1μmであるのが好ましい。
有機顔料、天然色素、無機顔料及び光輝材の配合割合は、使用される用途や要求される性能に応じて適宜決定すればよいが、通常、澱粉系樹脂組成物100質量部当たり、0.001〜400質量部、好ましくは0.01〜200質量部の範囲である。
【0053】
さらに、澱粉系塗料組成物(1)又は澱粉系塗料組成物(2)には、必要に応じて従来から公知の架橋剤、可塑剤、紫外線安定剤、金属ドライヤー、流動性調整剤、ハジキ防止剤、垂れ止め防止剤、酸化防止剤、艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、硬化促進剤、擦り傷防止剤、消泡剤等を添加することができる。
【0054】
本発明の塗装物品は、基材表面に上記本発明の澱粉系塗料組成物を塗装して得られる。澱粉系塗料組成物を塗装する基材としては、特に制限はなく、例えば、金属、プラスチック、ガラス、陶器、コンクリート、紙、繊維、木材、植物、岩、砂などが挙げられる。
上記澱粉系塗料組成物(1)または澱粉系塗料組成物(2)として液状のものは、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(非静電塗装、静電塗装など)、カーテンフロー塗装、スクリーン印刷、凸版印刷などにより塗装または印刷を行うことができる。
【0055】
塗装後の塗膜は、100〜200℃で30秒〜120分間、好ましくは110〜150℃で20〜90分間で焼付け乾燥することもできる。また、100℃未満の温度で1〜40分間乾燥を行った後に常温(50℃以下)で10時間以上放置し、あるいは常温(50℃以下)で1〜7日間放置することにより、塗膜中の水や有機溶剤が揮散して塗膜が連続塗膜を形成する。塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、乾燥膜厚として、一般には、平均約1〜200μm、好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特にことわらない限り、「質量部」及び「質量%」である。
【0057】
変性澱粉(A)の製造
製造例1 変性澱粉No.1の製造例
ハイアミロースコーンスターチ(日本コーンスターチ社製、水酸基価500mgKOH/g)25部をジメチルスルホキシド(DMSO)200部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させる。この溶液に重炭酸ナトリウム20部を触媒として添加し、90℃を維持してラウリン酸ビニル17部を添加し、その温度で1時間反応させた。次に、さらに酢酸ビニル37部を添加して、同じく80℃で1時間反応させる。その後、反応液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して粉砕を行い、濾過・脱水乾燥して、変性澱粉No.1を調製した。
【0058】
イソシアネート基を有する生成物(B)の製造
製造例2 ポリウレタン樹脂溶液No.1の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管及び滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート377部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合して80℃まで昇温した。次いで、1,4−ブタンジオール123部を3時間かけて滴下し、滴下終了後80℃で30分間熟成して、樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液No.1を調製した。
得られたポリウレタン樹脂No.1のNCO価は、55mgNCO/gであった。
【0059】
製造例3 ポリウレタン樹脂溶液No.2の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管及び滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート325部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合して80℃まで昇温した。次いで、トリエチレングリコール117部を3時間かけて滴下し、滴下終了後80℃で30分間熟成して、樹脂固形分80%のポリウレタン樹脂溶液No.2を調製した。
得られたポリウレタン樹脂No.2のNCO価は、57mgNCO/gであった。
【0060】
ビニル共重合体樹脂(C)の製造
製造例4 アクリル樹脂溶液No.1の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管及び滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン333部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合して100℃まで昇温した。次いで、下記の混合物No.1溶液を4時間かけて滴下し、滴下終了後100℃で1時間熟成して、樹脂固形分60%のアクリル樹脂溶液No.1を得た。
得られたアクリル樹脂の水酸基価は、86mgKOH/gであった。
混合物No.1
スチレン 200部
メタクリル酸メチル 150部
アクリル酸n−ブチル 50部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 100部
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 25部
【0061】
比較製造例1〜4
表1に示す配合組成とした以外は製造例4と同様にして、ビニル共重合体組成物溶液No.2〜No.5を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
澱粉系樹脂の製造
製造例5 澱粉系樹脂No.1の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管及び冷却管を備えた1Lの反応容器に酢酸ブチル595部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉No.1の180部を反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉No.1が完全に溶解するまで攪拌した。
次に、製造例2で得たポリウレタン樹脂溶液No.1を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃で6時間反応を行って、固形分25%の澱粉系樹脂No.1溶液を得た。
得られた澱粉系樹脂No.1溶液のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0064】
製造例6〜8 澱粉系樹脂No.2〜No.4の製造例
表2に示す配合組成とした以外は製造例5と同様にして、澱粉系樹脂No.2〜No.4溶液を得た。
得られた樹脂の特性を併せて表2に示す。
【0065】
製造例9 澱粉系樹脂No.5の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管及び冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル581.5部、製造例4で得たビニル共重合体樹脂溶液No.1を33.4部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉No.1の160部を攪拌下に反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉No.1を完全に溶解させた。次に、製造例2で得たポリウレタン樹脂溶液No.1を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃で6時間反応させて、固形分25%の澱粉系樹脂No.5溶液を得た。
得られた澱粉系樹脂No.5のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0066】
製造例10〜12 澱粉系樹脂No.6〜No.8の製造例
表2に示す配合組成とした以外は製造例5と同様にして、澱粉系樹脂No.6〜No.8溶液を得た。
得られた樹脂の特性を併せて表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
比較製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル600部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉No.1の200部を反応容器中の酢酸ブチルに溶解しながら仕込み、その後100℃に昇温し、100℃で1時間攪拌溶解して、固形分25%の澱粉系樹脂No.9溶液を得た。
【0069】
比較製造例6
温度計、サーモスタット、攪拌器、冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル573.4部、製造例4で得たアクリル樹脂溶液No.1を66.6部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉No.1の160部を反応容器中の酢酸ブチルに溶解しながら仕込み、その後100℃に昇温し、100℃で1時間攪拌溶解して、固形分25%の澱粉系樹脂No.10溶液を得た。
【0070】
比較製造例7〜10
表3に示す配合組成とした以外は実施例5と同様にして、澱粉系樹脂No.11〜No.14溶液を得た。
【0071】
【表3】

【0072】
澱粉系塗料組成物(1)の製造
実施例1 澱粉系塗料No.1の製造例
製造例5で得た澱粉系樹脂No.1溶液を400部(固形分100部)、アルペーストFX−7640NS(注1)46部(固形分23部)、ハイコンク黒(注2)3部(固形分3部)、サイリシア446(注3)1.5部(固形分1.5部)及びメチルエチルケトン59.5部を加え、攪拌機により十分に混合して、固形分25%の澱粉系塗料No.1を得た。
【0073】
実施例2〜9 澱粉系塗料No.2〜No.9の製造例
表4に示す配合組成とした以外は実施例1と同様にして、澱粉系塗料No.2〜No.9を得た。
【0074】
【表4】

【0075】
澱粉系塗料組成物(2)の製造
実施例10 澱粉系塗料No.10の製造例
製造例9で得た澱粉系樹脂No.5溶液を400部(固形分100部)、アルペーストFX−7640NS(注1)46部(固形分23部)、ハイコンク黒(注2)3部、サイリシア446(注3)1.5部(固形分1.5部)及びメチルエチルケトン59.5部を加え、攪拌機により十分に混合して、固形分25%の澱粉系塗料No.10を得た。
【0076】
実施例11〜18 澱粉系塗料No.11〜No.18の製造例
表5に示す配合組成とした以外は実施例10と同様にして、澱粉系塗料No.11〜No.18を得た。
【0077】
【表5】

【0078】
(注1)アルペースト−7640NS:東洋アルミニウム社製、商品名、アルミニウムペースト
(注2)ハイコンク黒:横浜化成株式会社製、溶剤型塗料用着色剤
(注3)サイリシア446:富士シシリア化学株式会社製、含水無定形二酸化ケイ素(艶消し剤)
(注4)ハイフラットF−713:株式会社岐阜セラック製造所製、ポリエチレンワックスのミネラルターペン懸濁溶液
(注5)TFW−3000F:株式会社セイシン企業製、微粉フッ素パウダーワックス
(注6)工業用硝化綿BNC−HIG−2:フランスベルジュラックNC社製、ニトロセルロースのプロパノール湿潤物を酢酸エチルに溶解したもの
(注7)CAB551−0.2:イーストマンケミカルプロダクツ社製セルロースアセテートブチラートを酢酸エチルに溶解したもの
【0079】
比較例1 澱粉系塗料No.19の製造例
比較製造例5で得た澱粉系樹脂No.9溶液を260部(固形分65部)、タケネートD−170HN(注8)35部(固形分35部)、アルペーストFX−7640NS(注1)46部(固形分23部)、ハイコンク黒(注2)3部、サイリシア446(注3)1.5部(固形分1.5部)、ジブチル錫ラウレート0.01部(固形分0.01部)及びメチルエチルケトン164.5部を加え、攪拌機により十分に混合して、固形分25%の澱粉系塗料No.19を得た。
(注8)タケネートD−170HN:武田薬品社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
【0080】
比較例2〜6 澱粉系塗料No.20〜No.24の製造例
表6の配合内容とする以外は、比較例1と同様にして、澱粉系塗料No.20〜No.24を得た。
【0081】
【表6】

【0082】
試験板の作成
実施例1〜18で得た澱粉系塗料No.1〜No.18及び比較例1〜6で得た澱粉系塗料No.19〜No.24を用いて、ノリル板SE1−701(日本ジーイープラスチック社製、商品名、変性ポリフェニレンエーテル)に、乾燥膜厚が8μmとなるようにスプレー塗装した。次に、電気熱風乾燥機を用いて60℃で30分間強制乾燥し、次いで室温(20℃)で7日間乾燥を行って試験板No.1〜No.24を得た。
上記の試験板No.1〜No.24を下記の試験方法の条件に従って試験に供した。実施例の結果を表7及び表8に、比較例の結果を表9に示す。
【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
試験方法
貯蔵安定性
密閉された1Lのガラス容器に各澱粉系塗料を貯蔵し、30℃で24時間貯蔵後の状態を下記の基準で評価した。
○:塗料のゲル化及び相分離のいずれも認められない
△:塗料のゲル化及び相分離の少なくともいずれかが認められる
×:塗料のゲル化及び相分離のいずれかが著しく認められる
【0087】
乾燥性
塗料をノリル板SE1−701(商品名、日本ジーイープラスチック社製、変性ポリフェニレンエーテル)に、乾燥膜厚が8μmとなるようにスプレー塗装し、電気熱風乾燥機を用いて60℃で30分間強制乾燥した後に、直ちに塗板を室温まで冷やし、表面の指触乾燥性を下記の基準で評価した。
◎:塗膜は硬くすべすべしており爪で押しても痕はつかない
○:塗膜は弾力があるが爪で押しても痕はつかない
△:塗膜は弾力があり爪で押すと痕がつく
×:塗膜に粘着感が残り爪で押すと痕がつき指の腹で押すと指紋痕がつく
【0088】
仕上り性
各試験板の塗面外観を目視により、下記の基準で評価した。
○:良好な仕上り性である
△:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1種の仕上り性の低下が見られる
×:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1種の仕上り性の低下が著しい
【0089】
鉛筆硬度
JIS K5600−5−4(1999)に準じて、試験塗板面に対して約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。試験箇所を変えてこの操作を5回繰り返して塗膜が破れなかった場合のもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
【0090】
耐擦り傷性
市販の名刺を塗膜に押し当てて20往復こすった後、どの程度傷がついたかを、目視により、下記の基準で判定した。
◎:全く傷がつかない
○:ほとんど傷がつかず、近づかないと(5cmくらい)傷がわからない
△:うすく擦り傷がつく
×:擦り傷の程度がひどい
【0091】
付着性
JIS K5600−5−6(1990)に準じて、塗膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その表面に粘着テープを貼着し、急激に剥した後に塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。
◎:残存個数/全体個数=100個/100個
○:残存個数/全体個数=99個/100個
△:残存個数/全体個数=90個〜98個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個
【0092】
耐アルカリ性
試験板の塗膜表面に1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗面をガーゼで拭き取り、外観を目視により、下記の基準で評価した。
○:塗膜表面の異常が全くない
△:塗膜表面の変色(白化)が認められる
×:塗膜表面の変色(白化)が著しい
【0093】
耐溶剤性
各試験板の塗膜上にろ紙を2枚並べて置き、各ろ紙上にスポイトで78%エタノールと2%ホルマリンをそれぞれ滴下してろ紙を湿らせた。このスポイトによる滴下を1時間間隔で5回行い、その後2時間経過後にろ紙を除いた表面を目視により、下記の基準で評価した。
◎:フクレやハガレなどの異常が全くない
○:フクレ又はハガレなどの異常が殆どなく問題にならないレベル
△:目視で軽度なフクレやハガレなどの異常が見つかる
×:塗膜が溶けてしまう
【0094】
耐候性
各複層被膜の光沢を、JIS H8602 5.12(1992)に準拠(水スプレー時間12分間、ブラックパネル温度60℃)し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して測定して、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。
◎:光沢保持率が80%を割る時間が300時間を超える
○:光沢保持率が80%を割る時間が200時間以上かつ300時間未満
△:光沢保持率が80%を割る時間が100時間以上かつ200時間未満
×:光沢保持率が80%を割る時間が100時間未満
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、貯蔵安定性に優れた塗料組成物を提供し、またこの組成物によって乾燥性、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐アルカリ性、耐溶剤性及び耐候性に優れた塗膜を提供することができるので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、並びにポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物。
【請求項2】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)を反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、並びに下記のビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる樹脂組成物をバインダーとして含むことを特徴とする澱粉系塗料組成物。
ビニル共重合体樹脂(C):ラジカル重合性不飽和単量体の混合物(c)の合計質量に対して、芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体1〜90質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜50質量%及びその他のラジカル重合性不飽和単量体0〜98質量%からなる混合物をラジカル重合反応させて得られる樹脂
【請求項3】
多価アルコール(b2)が、アルキレンジオール(b21)、3価以上のアルキレンポリオール(b22)、エーテルポリオール(b23)及びポリエステルポリオール(b24)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項4】
澱粉系塗料組成物が、有機溶剤系溶媒に溶解もしくは分散されているものである、請求項1〜3のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項5】
さらに天然物由来樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項6】
天然物由来樹脂が、ニトロセルロース及び/又はセルロース変性物である、請求項5に記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項7】
さらにワックスを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の澱粉系塗料組成物が塗装された塗装物品。

【公開番号】特開2008−13744(P2008−13744A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340180(P2006−340180)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】