説明

濾材及びこの濾材を用いた濾過ユニット

【課題】粒子状汚染物質や粉塵などが発生する施設内の空気を清浄化する際に使用し、空気中の粉塵や粒子状汚染物質などの捕集効率が高く、またそれらの捕集量を高めて交換サイクルの長い濾材を提供すると共に、この濾材を使用した濾過フィルタを併せて提供する。
【解決手段】空気中の粒子状汚染物質や粉塵などを捕集して清浄化する濾過ユニット10は、通気壁面部17を有する周囲壁面15a〜15dに取り付けた濾材30を備えている。この濾材30は、不燃性又は難燃性の繊維、又は不燃性若しくは難燃性処理をした織布、不織布で形成された第1濾材層31と、この第1濾材層31の表面に積層された第2濾材層32とから構成され、第1濾材層31が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ第2濾材層32が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、第2濾材層31が第1濾材層32より密な構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾材及びこの濾材を用いた濾過ユニットに関し、さらに詳細には、例えば、粒子状汚染物質を含む排気ガスが放出される車検場や整備工場内、粉塵が発生する各種の工場内、或いは塵埃の多い室内の空気を外部に排出する際に空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、又は塵埃を捕集して清浄化するのに最適な濾材及びこの濾材を用いた濾過ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車検場や整備工場などでは、検査車両から出る排気ガス中の窒素酸化物の濃度検査や、消音器の消音効果検査、或いはアイドリング調整などを含むエンジン整備を行っている。このような検査や整備は、自動車のエンジンを駆動させた状態で行われるため、車検場や整備工場内の空気は排気ガスで汚染される。また、トンネルの掘削現場、建設中の建造物内、又は鉄工所や製材所などでも大量の粉塵や塵埃が発生し、それが密閉された作業現場内に漂うことから該作業現場内の環境を悪化させる。
【0003】
かかる車検場、整備工場、又は作業現場(以下、単に粉塵等発生施設、という)内の環境改善対策として、これらの粉塵発生施設の多くでは、空気清浄化システムが導入されており、このシステムにより該粉塵発生施設内の空気は除塵装置などを介して大気に放出され、これにより粉塵発生施設内の環境改善が図られると共に粒子状汚染物質、粉塵、又は塵埃の大気中への放出も防止している。このような空気浄化システムで使用される除塵装置には濾材が組み込まれ、この濾材で空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、又は塵埃が捕集されている。
【0004】
一般に、この種の除塵装置は、濾材で捕集した粉塵、塵埃、又は粒子状汚染物質を該除塵装置内で濾材から取り除くことができる払い落とし機構を備えるタイプと、定期的に濾材を交換するタイプとがある。これらのうち、定期的に濾材を交換するタイプの除塵装置では、粉塵、塵埃、又は粒子状汚染物質の保持量(捕集量)が大きく、しかも耐久性の高い濾材の使用が求められる。従来、作業環境改善のために使用される除塵装置には、ジグザグ状に折り畳んだフィルタ(特許文献1及び特許文献2)の使用が一般的である。特許文献1及び特許文献2に記載されているフィルタのようにこれをジグザグ状に折り畳む理由は、フィルタを比較的に小さなスペースに納め、かつ多量の風量を処理するためそれに比例した濾過面積を得るためである。
【特許文献1】特開2003−024732号公報
【特許文献2】特開2006−043669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の濾材では、上述したようにフィルタをジグザグ状に折り畳んでケースなどに納めるため、ほとんどのフィルタは薄く形成されている。その結果、従来のこの種のフィルタは、粉塵、塵埃、又は粒子状物質などの捕集量が低いことからフィルタの交換サイクルが短く、しかも捕集効率も低いため、粉塵発生施設内の環境改善や大気への放出空気の清浄化度があまりよくない、という問題があった。
【0006】
この発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、粒子状汚染物質や粉塵などが発生する施設内の空気を清浄化する際に使用し、空気中に含まれる粉塵、塵埃、又は粒子状汚染物質の捕集効率が高く、更にそれらの捕集量を高めて交換サイクルの長い濾材を提供すると共に、この濾材を使用した濾過フィルタを併せて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した技術的課題を解決するために本発明は以下のように構成されている。すなわち、本発明は、空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、及び塵埃を捕集して清浄化する濾過ユニットに用いる濾材であり、その特徴とするところは、不燃性又は難燃性の繊維で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層された第2濾材層とから構成され、前記第1濾材層が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ前記第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、前記第2濾材層が前記第1濾材層より密な構造で形成されていることにある。
【0008】
本発明の濾材は、前述した必須の構成要素からなるが、その構成要素が具体的に以下のような場合であってもよい。その具体的構成とは、前記第1濾材層及び前記第2濾材層が、ガラス繊維、ロックウール、及び不燃性処理又は難燃性処理をした織布若しくは不織布のいずれかで構成されている。
【0009】
さらに、本発明の濾材では、前記第1濾材層の目付けが15kg/m〜30kg/mの範囲であり、前記第2濾材層の目付けが40kg/m〜90kg/mの範囲であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、及び塵埃を捕集して清浄化する濾過ユニットであり、その特徴とするところは、メッシュ状素材で形成された剛性のある壁面と、内部の空間部と外部とを連通する開口部とを備える中空の支持枠体と、この支持枠体の前記壁面に取り付けられた濾材とから構成され、前記濾材が、不燃性又は難燃性の繊維で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層された第2濾材層とから構成され、前記第1濾材層が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ前記第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、前記第2濾材層が前記第1濾材層より密な構造で形成され、粒子状汚染物質、粉塵又は塵埃を含む気体が前記支持枠体の外部からその内部空間部へ或いは前記支持枠体の前記内部空間部から外部へ前記濾材のみを通過して流れるように、前記濾材が前記支持枠体に取り付けられていることにある。
【0011】
本発明の濾過ユニットは、前述した必須の構成要素からなるが、その構成要素が具体的に以下のような場合であってもよい。その具体的構成とは、前記第1濾材層及び前記第2濾材層が、ガラス繊維、ロックウール、及び不燃性処理又は難燃性処理をした織布若しくは不織布のいずれかで構成されている。
【0012】
また、本発明の濾過ユニットでは、前記第1濾材層の目付けが15kg/m〜30kg/mの範囲であり、前記第2濾材層の目付けが40kg/m〜90kg/mの範囲である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の濾材は、不燃性又は難燃性の繊維で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層された第2濾材層とから構成され、第1濾材層が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、第2濾材層が第1濾材より密な構造で形成されていることから、空気中の粉塵、塵埃、又は粒子状汚染物質などを効率よく捕集でき、しかもそれらの捕集量も大きい。そのため、本発明の濾材は、濾過ユニットのフィルタとして用いると、濾材の交換サイクルが長くため非常に経済的であり、さらに空気の清浄化度も高めることができる。
【0014】
また、本発明の濾材では、第1濾材層及び第2濾材層が、ガラス繊維、ロックウール、及び不燃性処理又は難燃性処理をした織布若しくは不織布のいずれかで構成されているので、耐火性能及び耐熱性能も非常に高く、そのため自動車の排気ガス、溶接又は溶断作業における溶接又は溶断ヒューム(溶接作業などで発生した金属蒸気が凝集して微細な粒子となったもの)など高温の空気に含まれる粒子状汚染物質や粉塵などの捕集もでき、このような空気の清浄化にも利用することができる。
【0015】
さらに、本発明の濾材では、第1濾材層の目付けが15kg/m〜30kg/mの範囲であり、第2濾材層の目付けが40kg/m〜90kg/mの範囲とすることとにより、空気中に含まれる粒子状汚染物質や粉塵などの捕集効果がより高まり、清浄度を高めることができる。
【0016】
また、本発明の濾過ユニットによると、濾材による空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、及び塵埃の捕集量が大きいことから濾材の頻繁な交換作業が必要なく、交換作業の労力を従来の濾過ユニットに比べて格段に軽減することができる。また、濾材が耐火性及び耐熱性であるため、この濾過ユニットを、例えば、自動車の排気管出口にパイプで接続し、排気管から出る温度の高い排気ガスを濾過ユニットに引き込んで直接浄化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る濾材及びこの濾材を用いた濾過ユニットを添付の図に示された好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る1つの濾過ユニット10Aを示す斜視図、図2は、濾材20の一部を拡大して示す部分的な断面図である。この濾過ユニット10Aは、支持枠本体11に懸架板12を取り付けてなる支持枠体13と、この支持枠体13の支持枠本体11に装着された濾材30とから構成されている。
【0018】
支持枠本体11は、上部に長方形状の開口部14を形成し、この開口部14の開口面に平行な任意の切断面における形状も開口部14とほぼ同じ大きさの長方形状をした箱形であり、従って、この支持枠本体11は、周方向に4つの平坦な壁面15a,15b,15c,15dを備えると共に、開口部14に対向する底部にも平坦な壁面(底壁)15eを備えている。支持枠本体11は、図1から明らかなように相対向する一対の壁面15a,15bの面積が、他の相対向する一対の壁面15c,15dのそれより大きく、開口部14と底壁15eとの間隔が長い縦長の直方体である。
【0019】
懸架板12は、所定の厚みと剛性を備える板状の基板で形成されている。この懸架板12は、支持枠本体11における開口部14の形状に相似し、かつ開口部14より大きな長方形状を呈している。この懸架板12は、その中央部に開口12aを備え、この開口12aは、支持枠本体11の開口部14と同じ形状と大きさで形成されている。懸架板12は、その開口12aが支持枠本体11の開口部14に整合するように懸架板12の裏面を支持枠本体11における開口部14の端面に当接させ、溶接などの手段により該支持枠本体11に固定されている。また、懸架板12は、その表面にコ字型をした2つのハンドル12bを備え、これら2つのハンドル12bは、懸架板12を形成する基板の長手方向両端側近傍に並行に取り付けられている。さらに、懸架板12は、その表面に形成された複数のビス穴12cを備え、これらビス穴12cは、懸架板12を形成する基板の長手方向に延びる側縁12d,12eに沿い、かつ相互に間隔をあけている。
【0020】
ところで、支持枠本体11における周囲壁面15a〜15dは、該支持枠本体11の上部である開口部14近傍の周囲壁面部を平坦な表面の鋼板で形成した濾材保持用の固定部16と、この固定部16を除いた部分を比較的に剛性のある金網などのメッシュ状素材で形成した通気壁面部17の一部とによって形成されている。濾材保持用の固定部16は、後述する濾材30の口部30aを文字通り固定する部分である。また、通気壁面部17は、支持枠本体11の内部空間18から外部へ向かって、或いはその逆方向に空気が通り抜ける空気通過部である。なお、この実施形態に係る濾過ユニット10Aにおける通気壁面部17とは、前述したように周囲壁面15a〜15dにおいて固定部16を除いた部分と、底壁15eとで構成されている。このように支持枠本体11の底壁15eも金網のようなメッシュ状素材で形成することにより通気壁面部17に含ませることができるが、底壁15eを後述するように平坦な表面の鋼板で形成する場合もあるので、通気壁面部17の構成要素に含まないこともある。なお、底壁15eを鋼板で形成すると、周囲壁面15a〜15dの一部として金網などのメッシュ状素材で形成されている通気壁面部17の剛性をより一層高めることができる。この通気壁面部17は、金網の他、細い鋼棒で形成した格子体でもよく、また、鋼板に無数の穴を形成したポーラス板で形成することもできる。
【0021】
支持枠本体11に取り付けられる濾材30は、図2にその一部が拡大されて示されているように、金属繊維、ガラス繊維、或いはロックウールなどの不燃性繊維、又は不燃性処理或いは難燃性処理をした織布又は不織布などで形成された第1濾材層31と、同様にガラス繊維やロックウールなどの不燃性繊維、又は不燃性処理或いは難燃性処理をした織布又は不織布などで形成され、第1濾材層31の表面に積層された第2濾材層32とから構成されている。第1濾材層31は、その厚さが20.0mm〜60.0mmの範囲である。第1濾材層31の厚さが20.0mm以下であると汚染粒子などの捕集量が低下し、また60.0mmを越えると捕集量は向上しても第1濾材層31に及ぼされる面圧が高くなり過ぎて処理風量が低下すると共に濾材30の全体厚さも厚くなり過ぎ、大型化する。そのため、第1濾材層31の厚さは、好ましくは40mm前後が最適である。また、第2濾材層32は、その厚みが5.0mm〜25.0mmの範囲である。第2濾材層32の厚さが5.0mm以下であると汚染粒子などの捕集量が低下し、また25.0mmを越えると捕集量は向上しても第2濾材層32に及ぼされる面圧が高くなり過ぎて処理風量が低下すると共に濾材30の全体厚さも厚くなり過ぎ、大型化する。そのため、第2濾材層32の厚さは、好ましくは15mm前後が最適である。
【0022】
第2濾材層32は、第1濾材層31に比較して密な構造に形成されている。具体的には、第1濾材層31の目付けは、15kg/m〜30kg/mの範囲である。第1濾材層31の目付が15kg/m以下であると汚染粒子などの捕集量が低下し、また30kg/mを越えると捕集量は向上しても第1濾材層31に及ぼされる面圧が高くなり過ぎて処理風量が低下する。また、第2濾材層32の目付けは、40kg/m〜90kg/mの範囲である。第2濾材層32の目付が40kg/m以下であると汚染粒子などの捕集量が低下し、また90kg/mを越えると捕集量は向上しても第2濾材層32に及ぼされる面圧が高くなり過ぎて処理風量が低下する。これらのことから、第1濾材層31の目付は、24kg/m前後が好ましく、また、第2濾材層32の目付は、80kg/m前後が好ましい。
【0023】
このように第1濾材層31の表面に重なる第2濾材層32は、第1濾材層31に比べて密な構造で形成されている。このような濾材30は、図3に示されるようにそれぞれ第1濾材層31と第2濾材層32とを独立して形成し、それぞれを重ね合わせるか、或いは図4に示されるように第1濾材層31を基材としてその表面に金属繊維、ガラス繊維、或いはロックウールなどの不燃性繊維を吹き付け、第2濾材層32を堆積させる方法により作ることができる。
【0024】
このような濾材30は、支持枠本体11に取り付けて使用される。その取り付け方法の一例として、濾材30は、図1から明らかなように第1濾材層31が外層、第2濾材層32が内層となるように袋状に形成され、その口部30aからその内部に前述した支持枠本体11の底部側を挿入するようにして支持枠体13における支持枠本体11を包囲する。袋状濾材30の支持枠体13への固定方法としては、図5(a)に示されるように袋状濾材30の内部に支持枠本体11をその底部側から相対的に挿入して支持枠本体11の通気壁面部17を実質的に覆い、濾材30の口部30a近傍を支持枠本体11の固定部16に位置決めする。次いで、この固定部16の表面に対向する袋状濾材30の口部30a外側から帯状の押さえ板19を当て、この押さえ板19をビス20で固定部16の鋼板に止める。これにより、袋状濾材30の口部30a付近は、その全周に亘って押さえ板19と固定部16とに強圧され、その結果、濾材30は、固定部16の外周面に対して密着した状態で支持枠本体11に取り付けられる。
【0025】
袋状濾材30を支持枠体13に固定する別な方法としては、図6に示されるように、下面にフランジ状の上部囲い枠21を立設した懸架板12を用いる。この上部囲い枠21は、支持枠本体11の開口部14が嵌合する開口12aの各内縁部から所定の間隔を開けた外側に、支持枠本体11の固定部16にほぼ対面する垂下長さで形成されている。袋状濾材30が、前述したようにして支持枠本体11に被せられるとき、濾材30の口部30aは、上部囲い枠21と固定板16との間の間隔部に押し込まれる。次いで、袋状濾材30の口部30aにおける外周面に沿って楔状押さえ部材22を間隔部に圧入し、これにより袋状濾材30の口部30aは楔状押さえ部材22により支持枠本体11の固定部16に圧接されて取り付けられる。
【0026】
前述した濾材30は、これを袋状に形成し、その口部30aからその内部に支持枠本体11を相対的に挿入して支持枠体13に取り付けるようにしたものであったが、この発明では、濾材30を袋状にする必要はなく、1枚のシート状に形成してこれを支持枠本体11の周囲壁面15a〜15dに巻き付けるようにして取り付けてもよい。図5(b)には、このようなシート状の濾材30を支持枠本体11に取り付けた状態が示されている。図5(b)に示される支持枠本体11は、前述したように懸架板12の下面にフランジ状の上部囲い枠21を立設すると同時にこの支持枠本体11の底部側にも下部囲い枠23を設けた構成とされている。
【0027】
更に具体的に説明すると、濾材30がシート状である場合、袋状に形成された濾材30のように支持枠本体11の底壁15eを覆うことはできないので、該底壁15eは鋼板などで空気の流通が不能なように閉め切られる。そして、その際、鋼板などから形成された底壁15eの周縁部は、周囲壁面15a〜15dの縁部を越えて外側に突出し、その端部には下部囲い枠23が上部囲い枠22と同じように立設される。そして、シート状の濾材30は、第1濾材層31が外側に位置するように支持枠本体11における通気壁面部17を含む周囲壁面15a〜15dに巻き付けられる。周囲壁面15a〜15dに巻き付けられた濾材30の上端部30bは、上部囲い枠21と固定板16との間の間隔部に押し込まれ、また、下端部30cは下部囲い枠23と周囲壁面15a〜15dとの間の間隔部に押し込まれる。次いで、濾材30の上下端部30b,30cにおける外周面に沿って楔状押さえ部材22,24がそれぞれの間隔部に圧入され、これにより濾材30の上下端部30b,30cは楔状押さえ部材22,24により支持枠本体11の固定部16及び周囲壁面15a〜15dに圧接されて取り付けられる。なお、シート状の濾材30を支持枠本体11の周囲壁面15a〜15dに巻き付けたとき、周方向の両端部どうしは隙間を形成しないように密着して合わせられ、適宜の手段で接続される。
【0028】
このようにして形成された濾過ユニット10Aは、その複数が、ケーシング31の中にセットされ、空気中の粉塵、粒子状汚染物質、及び塵埃などを捕集して空気を清浄化する除塵装置35として構成される。図6には、この除塵装置35の一例が示されている。図6に示される除塵装置35では、4つの濾過ユニット10が、ケーシング36内にセットされている。このケーシング36は、図7に示されるような上部開放のケーシング本体36aと、この開放部に緊密に被せて密閉するカバー36bとから構成されている。ケーシング本体36aは、底壁37及び4つの側壁38とからなり、隣接する側壁38どうし、及び底壁37と各側壁38とがそれぞれ直交する箱形を呈している。ケーシング本体36aの内部には、所定広さの収容室39が形成され、この収容室39には、その平面形状に整合する形状の棚板40がその各端縁部をケーシング本体36aの各側壁38内面に溶接などにより固定されて設置され、これにより収納室39内は、棚板40により上部室39aと下部室39bとに区分されている。
【0029】
棚板40には、濾材30を取り付けた濾過ユニット10Aの支持枠本体11が挿入可能な大きさと形状の4つの開口40aが並行に形成されている。各濾過ユニット10Aは、懸架板12の上部に取り付けられているハンドル12bを持って棚板40の各開口40aから支持枠本体11が挿入され、懸架板12の周辺部が棚板40の上に乗せられて懸架される。これにより、濾過ユニット10Aの大部分は、下部室39b内に位置する。懸架板12は、それに形成されているビス穴12cを利用して棚板40にビス止めされ、濾過ユニット10Aが棚板40にしっかりと固定される。なお、懸架板12を棚板40に乗せて固定するとき、それらの間に環状のパッキングなどを介在させて懸架板12と棚板40との合わせ面間に隙間ができないようにすることも好ましい。図6に示される除塵装置35では、ケーシング本体36aの収容室39にセットされている4つの濾過ユニット10が、下面にフランジ状の上部囲い枠21を立設した懸架板12を用いた支持枠本体11に袋状濾材30を被せ、その口部30aを楔状押さえ部材22により支持枠本体11の固定部16に圧接して取り付けたものを使用している。
【0030】
このようにして各濾過ユニット10Aがケーシング本体36aの収容室39にセットされると、ケーシング本体36aの上部室39aと下部室39bとは、支持枠本体11に装着された袋状濾材30を介してのみ連通する。ケーシング本体36a内に濾過ユニット10Aがセットされると、ケーシング本体36aの開放部にはカバー36bが被せられ、これよりケーシング36の上部室39aが密閉される。ケーシング36のカバー36bには上部室39aに連通する接続用の管路部41aが形成され、またケーシング本体36aの底壁37にも、下部室39bに連通する接続用の管路部41bが形成されている。
【0031】
このように構成された除塵装置35によると、粒子状汚染物質を含む自動車などの排気ガス、粉塵や塵埃を含む空気(以下、単に汚染空気、と称する)は、図6に矢印42で示されるように管路部41bからケーシング36の下部室39bに導入される。ケーシング36の下部室39bに導入された汚染空気は、各濾過ユニット10の濾材30を形成している外側の第1濾材層31及び内側の第2濾材層32を通過して支持枠本体11の内部に入る。そのとき、汚染空気中の粒子状汚染物質、粉塵、又は塵埃は、濾材30の第1濾材層31及び第2濾材層32で順次捕集されるので、支持枠本体11の内部空間部18にはこれら粒子状汚染物質、粉塵、又は塵埃が除去された清浄な空気が入る。次いで、清浄化された空気は、支持枠本体11の上部の開口部14からケーシング36の上部室39aに流出し、その後、矢印43で示されるように管路部41aを通って大気に放出される。ケーシング36の内部への汚染空気の導入は、管路部41a,41bのいずれかに送気ポンプ(図示せず)を接続することで行うことができる。このような除塵装置35は、前述したように自動車車検場、自動車整備工場、製材所、或いは鉄工所などに設置し、作業空間全体の換気システムにおける一要素として用いることができる。
【実施例1】
【0032】
除塵装置35は、図6に示す構造のものを用いた。すなわち、ケーシング36の内部に濾過ユニット10を4列並べて設置した。濾材30は、4つの全表面積が2mで、空気の面速が2m/sである。
濾材30における第1濾材層31はグラスウールで形成され、厚さが25mm、目付が32Kg/mである。また、濾材30における第2濾材層32は、ロックウールで形成され、厚さが25.0mm、目付が40Kg/mである。
除塵装置35を構成する濾過ユニット10は、図1に示されるように箱形の支持枠本体11に袋状の濾材30を被せ、その口部30aを支持枠本体11の固定部16に楔状の押さえ部材22により固定した。使用した除塵装置35では、汚染空気が図6に示す除塵装置35と同様にケーシング本体36aの管路部41bからケーシング36内部に導入され、支持枠本体11の内部から濾材30を通過して浄化され、清浄化された空気がカバー36bの管路部41aから外部に放出するようにした。従って、支持枠本体11に取り付けられる袋状の濾材30は、第1濾材層31が外側に、第2濾材層32が内側に位置するように形成されている。
【0033】
排気ガス浄化装置を備えていない2トンディーゼルトラックからの排気ガスを周辺の作業場空気と共に上述の除塵装置35に導入して浄化能力を調べたところ、排気ガス中の黒煙の捕集率が、88〜99%であった。
また、自動車車検場においてこの除塵装置35を使用したところ、濾材30の交換が必要となるまでに、約700回以上の車検を行うことができた。
【0034】
前述した実施形態の濾過ユニット10Aでは、支持枠本体11の通気壁面部17に濾材30を取り付け、汚染空気を支持枠本体11の外側から内部空間部18に通過させて汚染空気中に含まれる粉塵、塵埃、或いは粒子状汚染物質を捕集するようにしたものであったが、汚染空気を管路部41aから除塵装置35へ導入し、支持枠本体11の内部空間部18から通気壁面部17を介してその外側に通過させ、濾材30で汚染空気中に含まれる粉塵、塵埃、或いは粒子状汚染物質を捕集するようにしてもよい。その場合、濾材30は、汚染空気の上流側に第1濾材層31が位置し、かつ下流側に第2濾材層32が位置するように構成される。
【0035】
また、汚染空気を支持枠本体11の内部空間部18から通気壁面部17を介してその外側に通過させ、濾材30で汚染空気中に含まれる粉塵、塵埃、或いは粒子状汚染物質を捕集する場合、濾材30に掛かる面圧により濾材30自体が外側に膨れる。濾材30が膨れると、これを構成している第1濾材層31及び第2濾材層32の繊維間隙間、即ち目が開くため、汚染粒子が通過し易くなり捕集が低下するばかりでなく、隣接して設置された濾過ユニットの濾材30と重なり合って通気面の縮小を招くことになる。そのため、濾材30の膨らみを防止する手段を施すことが好ましい。濾材30の膨らみを防止する手段としては、(1)濾材30の外周囲にワイヤーを巻き付ける、(2)濾材30の外周囲を金網などのメッシュ状素材で包囲する、又は(3)濾材30の外周囲をパンチングメタルのような多孔板で包囲する手段を挙げることができる。図8は、濾材30の外周囲をメッシュ状素材である箱形の金網体33により包囲した濾過ユニット10Bを示している。具体的に、この濾過ユニット10Bにおける金網体33は、支持枠本体11の4つの周囲壁面15a〜15dに対応する濾材30の側面と、支持枠本体11の底壁15eに対応する濾材30の底面とを備え、これらの側面と底面で濾材30の外側を覆っている。この金網体33は、濾材30の外側から外れないようにその上端部をネジ止め、溶接などの適当な手段で懸架板12の下面の適所に固定しておくことが望ましい。
【0036】
このような濾材30の膨らみを防止する手段は、必ず必要になるというものではなく、例えば、除塵装置に吸い込む単位時間当たりの汚染空気量によってその設置が決定される。すなわち、単位時間当たりの処理風量が多くなると、濾材30の通気面に及ぼされる面圧が高くなって濾材30の膨らみが大きくなるので、処理風量との関係で膨らみ防止手段を設けるか否かが判断される。言い換えれば、除塵装置の性能を高める場合には膨らみ防止手段が必要となり、またその性能を抑えれば、あえて膨らみ防止手段を取り付ける必要もない。なお、この実施形態のように汚染空気を支持枠本体11の内部空間部18から通気壁面部17を介してその外側に通過させ、濾材30で汚染空気中に含まれる粉塵、塵埃、或いは粒子状汚染物質を捕集する場合、濾材30の内側に位置する第1濾材層31での捕集量が大きいことから、所定期間経過後に濾材30を交換する際、捕集された粉塵、塵埃、或いは粒子状汚染物質が周辺に飛散し難い、という利点がある。
【0037】
以上説明したように、本発明の濾材によれば、不燃性又は難燃性の繊維で形成され、又は不燃性若しく難燃性処理をした織布又は不織布で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層され、この第1濾材層と同様に不燃性又は難燃性の繊維で形成され、又は不燃性若しく難燃性処理をした織布又は不織布で形成された第2濾材層とから構成され、第1濾材層が、20.0mm〜40.0mmの厚さを有し、かつ第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、第2濾材層が第1濾材層より密な構造で形成されていることから、0.3μm粒子の捕集性能を有し、その結果、空気中の粉塵、花粉等を含む塵埃、又は粒子状汚染物質を含む排気ガスの黒煙などを効率よく捕集でき、しかもそれらの捕集量も大きい。そのため、本発明の濾材では、濾過ユニットのフィルタとして用いると、濾材の交換サイクルが長くなることから非常に経済的であり、さらに空気の清浄化率を高めることもできる。
【0038】
また、本発明の濾過ユニットによれば、濾材による空気中の粉塵、花粉等を含む塵埃、又は粒子状汚染物質を含む排気ガスの黒煙などの捕集量が大きいことから濾材の頻繁な交換作業や管理の必要がなく、交換作業や管理に要する労力を従来の濾過ユニットに比べて格段に軽減することができる。また、濾材が耐火性及び耐熱性であるため、この濾過ユニットを、例えば、自動車の排気管出口に耐熱性のホースで接続し、排気管から出る温度の高い排気ガスを濾過ユニットに引き込んで直接浄化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過ユニットを概略的に示す斜視図。
【図2】図1に示される濾過ユニットに用いる濾材の一部を拡大して示す部分的な断面図。
【図3】濾材の形成方法の一例を示す部分的な斜視図。
【図4】濾材の形成方法の別な例を示す部分的な斜視図。
【図5】袋状の濾材とシート状の濾材をそれぞれ支持枠本体に取り付けた状態の濾過ユニットを示す断面図。
【図6】複数の濾過ユニットをケーシング内にセットした除塵装置を概略的に示す断面図。
【図7】除塵装置におけるケーシングのケーシング本体を示す斜視図。
【図8】濾材の膨らみを防止する手段を備えた濾過ユニットを示す斜視図。
【符号の説明】
【0040】
10A,10B 濾過ユニット
11 支持枠本体
12 懸架板
13 支持枠体
14 開口部
15a〜15d 支持枠本体の周囲壁面
15e 支持枠本体の底壁
16 固定部
17 通気壁面部
30 濾材
31 第1濾材層
32 第2濾材層
35 除塵装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、及び塵埃を捕集して清浄化する濾過ユニットに用いる濾材において、
不燃性又は難燃性の繊維で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層された第2濾材層とから構成され、前記第1濾材層が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ前記第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、前記第2濾材層が前記第1濾材層より密な構造で形成されていることを特徴とする濾材。
【請求項2】
前記第1濾材層及び前記第2濾材層が、ガラス繊維、ロックウール、及び不燃性処理又は難燃性処理をした織布若しくは不織布のいずれかで構成されている請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記第1濾材層は、目付けが15kg/m〜30kg/mの範囲であり、前記第2濾材層は、目付けが40kg/m〜90kg/mの範囲である請求項1又は2に記載の濾材。
【請求項4】
空気中に含まれる粒子状汚染物質、粉塵、及び塵埃を捕集して清浄化する濾過ユニットにおいて、
メッシュ状素材で形成された剛性のある壁面と、内部の空間部と外部とを連通する開口部とを備える中空の支持枠体と、この支持枠体の前記壁面に取り付けられた濾材とから構成され、
前記濾材が、不燃性又は難燃性の繊維で形成された第1濾材層と、この第1濾材層の表面に積層された第2濾材層とから構成され、前記第1濾材層が、20.0mm〜60.0mmの厚さを有し、かつ前記第2濾材層が、5.0mm〜25.0mmの厚さを有し、前記第2濾材層が前記第1濾材層より密な構造で形成され、粒子状汚染物質、粉塵又は塵埃を含む気体が前記支持枠体の外部からその内部空間部へ或いは前記支持枠体の前記内部空間部から外部へ前記濾材のみを通過して流れるように、前記濾材が前記支持枠体に取り付けられていることを特徴とする濾過エレメント。
【請求項5】
前記第1濾材層及び前記第2濾材層が、ガラス繊維、ロックウール、及び不燃性処理又は難燃性処理をした織布若しくは不織布のいずれかで構成されている請求項4に記載の濾過ユニット。
【請求項6】
前記第1濾材層は、目付けが15kg/m〜30kg/mの範囲であり、前記第2濾材層は、目付けが40kg/m〜90kg/mの範囲である請求項4又は5に記載の濾過ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−226242(P2009−226242A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71215(P2008−71215)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000153100)株式会社日本環境調査研究所 (30)
【Fターム(参考)】