説明

濾過器

【課題】本発明は、橋梁などの工事現場で発生するコンクリートの洗浄水など汚濁水を工事現場で浄化できる小型の濾過器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の濾過器は橋梁などの工事現場では足場に穴を設けて設置し、筐体の内側に網カゴを設け、その網カゴ内に濾布を構成し汚濁水により堆積した固形物を網カゴごと取り出すようにした。また濾過器筐体の底部には網カゴを外した際、作業者が転落しないような構造体を設けた工事現場に対応した小型の濾過器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などの工事で行われるコンクリート建造物を水洗浄の際発生する汚濁水を、工事現場で浄化するなどセメント含有の汚濁水の濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの工事は海や川、山間などで行われる為、工事での洗浄水など汚濁した水は現実には浄化しにくい状況である。また現場ではさまざまな工具を使用するがセメントが付着した際は作業終了後には洗浄する必要があるがセメント含有汚水の濾過装置など開発されてはいるものの現場に設置できないことも多く現場に持ち込んで設置できる小型の濾過器の開発が望まれている。
【0003】
工事による環境汚染を防ぐために、様々な検討がなされてきているが大規模な装置しか実例がないのが現状である。現状公開されている例として特許文献1を掲げる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−144816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の濁水の処理方法はトンネルやダムのように大掛かりな工事で大量に発生する汚濁水のphを中和し浄化するには有効な手段であるが、大規模な装置となっている。濁水の量も本事例ほど大規模でない場合には現場においては小型でコストも安価に浄化する濾過器の出現が望まれている。
【0006】
そこで、このような課題を解決するために本発明は、工事現場で容易に設置できる濾過器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の濾過器は、工事現場の足場などに穴をあけて設置し防水シートなどを用いて汚濁水を前記濾過器に集水し浄化して排水するので大掛かりな装置を持ち込めない工事現場でも対応できることを特徴とする濾過器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工事現場でコンクリート建造物を水で洗浄する前に集水する為のシートを設置し本濾過器をとおすことで汚濁水が濾過されるので浄化された水はそのまま排水してもよく小型で安価に工事現場に応じて合理的に使用できるものである。また水質ph中和シートを付加したものにおいては、コンクリートでアルカリ性にになった汚濁水の中和をはかることもで切る。これにより汚濁水による環境汚染防止に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の形態は、本発明は前述のように洗浄水などの汚濁水を集水するシートから本濾過器をとおして浄化するものであるが、濾過後の残留物を取り出す際に濾布を直接取り出すと強度が不足した場合、破損したりするし又作業的に取り出しにくいので網カゴの内部に濾布を設置し網カゴごと取り出すようにしている。さらにこの濾過器は高所に設置されることも少なくないので作業者の安全性の確保も重要になる。そこで網カゴを取り出した際にも人が落ちないように構造物を設けている。筐体の底に落下防止の構造物を設けるとともに筐体内部に網カゴを設けてさらにその内部に濾布を設けた濾過器である。
【0010】
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、本発明の濾過器に汚濁水を集水し濾布へ流し込む際に濾過器の筐体と濾布の間に汚濁水が漏れないように濾過器の汚濁水集水口に庇を設けたものである。尚この庇は網カゴごと濾布を取り出す際には着脱式の庇もしくは可動式の庇にする必要がある。庇をつけることで、汚濁水を漏らさず確実に濾過器に集水する濾過器である。
【0011】
本発明の第3の形態は、第1または2の形態に従属する形態であって、本発明によれば、消耗品である濾布の上流に濾布より目の粗い濾材を設け、通常高価な濾布の交換回数を減らせるようにすることでトータルのコスト低減をはかった濾過器である。
【0012】
本発明の第4の形態は、第1〜3のいずれかにの形態に従属する形態であって、工事現場ではコンクリート建造物を洗浄することが圧倒的に多くみられるので、phがアルカリ性になっている洗浄水を中和させるために中和シート(特願2004−295579 セメント排水シート及びセメント排水処理方法)を設けた濾過器である。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1の濾過器について、図面に基づいて説明をする。なお、図1は本発明の実施例1における濾過器の一部破砕斜視図、図2は濾過器の橋梁の工事現場での設置を示す概略図、図3は本発明の実施例1における濾過器を設置した縦断面図、図4は本発明の実施例1における濾過器を設置した横断面図、図5は図4の一部を拡大した図である。
【0014】
図6は本発明の実施例1における形態2の庇を示す横断面図、図7は図6の一部を拡大した図、図8は図6から網カゴを取り出す時の可動式の庇の状態を示す図である。
【0015】
図9は本発明の実施例1における形態3の濾布の上流に設けた目が粗い濾材を設けた図である。図10は実施例1における形態4のコンクリート汚濁水のphを中和する中和シートを設けた図である。
【0016】
図1において、1は濾過器の筐体で筐体1の底部にはバー2を筐体1に固定して設けている。網カゴ3はバー2の上に乗せて設置し、筐体1の集水口である上部の開口部より着脱自在となっている。また網カゴ3を取り外した際、筐体1の底部のバー2は作業者などの人が乗っても破損しない強度を有している。網カゴ3の内側には濾布4を設けている。
【0017】
図2において濾過器は工事現場に設けられた足場21に穴を開けて設置されている。建造物の洗浄部22を水で洗浄した汚濁水23aは足場21上に敷かれた防水シート24により濾過器へ集水され、浄化水23bは下方へ排出される。
【0018】
橋梁の工事は部分的に作られたものを繋ぎながら完成されていく。この繋ぎ目になる部分に汚れや異物の付着があると密着強度低下をまねくため、この工事をする前に良く洗浄される。図2の22洗浄面である。この洗浄面22は高圧水噴射などで汚れを除去する洗浄方法などで行われている。このような洗浄を行うと洗浄した汚濁水23aにはコンクリートやゴミなど異物が混ざることになる。このまま排水してしまうと環境汚染の一要因になると懸念される。そこで足場21に穴をあけ濾過器を設置し汚濁水23aを浄化するもので、足場21上には防水シート24を敷き洗浄に使われた汚濁水23aを濾過器に集水する。濾過器に効果的に集水するために防水シート24は濾過器より遠ざかるに従って持ち上げるのが望ましい。
【0019】
続いて、実施例1の濾過器詳細について簡単に説明する。濾過器の筐体1の上部に当る集水口の各辺には固定鍔1aをもうけており足場21に穴をあけて濾過器の筐体1を入れ込むだけでよく、しかも濾過器を設置時に誤って落下しないですむ。さらに取付けを強固にするために固定鍔1aに複数設けた固定穴1bに釘やネジで足場21と固定しても良い。濾過器の筐体1の底部に当る排水口にはバー2を設けている。これは足場21に穴をあけて濾過器を設置しており万一の際、作業者の落下を防止したものである。次に説明する網カゴ3の取付けだけであれば、筐体1の底部に側面から一体に曲げを設けたほうが安価あがるが前記説明のような安全性確保のためにバー2を設けたものである。
【0020】
続いて筐体1の内側には網カゴ3を設けており、この網カゴ3は筐体1の上部から取り出し可能にしている。さらに網カゴ3の内部には濾布4を設けているが汚濁水23aを浄化すると浄化水23bは下方へ排出するが、コンクリートや異物である堆積物5が濾布4に残存する。洗浄作業が終了すると、この堆積物5を筐体1から取り出すことになるが、この際濾布4だけでは堆積物5の重さで破損する恐れもあり、前記網カゴ3ごと取り出すようにしている。網カゴ3を設けず濾布4を取り出し中に破損し落下させてしまうと、海上や川の上での作業の場合、水中に堆積物5が入り回収のしようも無い。また網カゴ3ごとの取り出しであれば、万一作業者が手を滑らせてもバー2によって落下は防止される。高所での作業の可能性が多いので安全と共に堆積物5の回収について万全をはからなければならない。
【0021】
工事する橋梁の大きさや条件によって洗浄水の量は異なるが、一般的な橋の工事においては一箇所での洗浄水はおよそ100リットル使用する。異物や汚染されかたによって一概には言えないが濾過器を仮に長さ1000mm、幅400mm、深さ200mmのサイズで、およそ1〜3セット設置すれば汚濁水を浄化するに足りる。また濾布4は市販されている液体用の濾布を用いて十分にその役割を果たすが、除去できる粒子の大きさを20〜50μm以上のものを採用するのが、汚濁水23aを浄化する速さと浄化水のきれいさの兼ね合いからして望ましい結果を得られる。
【0022】
次に図6、図7に沿って濾過器の集水口端部に庇6を設けた形態2について簡単に説明する。この庇6に防水シート24が覆うように取り付けることで、濾過器の筐体1と網カゴ3の隙間から汚濁水23aが漏れるのを防止したものである。図8は網カゴ3を取り出す際に庇6を可動させた状態を示しており庇6は軸7を支点として回動自在に固定されている。庇6を覆った防水シート24がめくれないように庇6に固定するとさらに有効である。
【0023】
続いて濾過器の濾布4の上流に濾布4より目の粗い濾材8を設けた形態3について図9に沿って簡単に説明する。汚濁水23aにはコンクリート片やセメント、砂利、その他異物が含まれている。濾布4は汚濁水23aを浄化する能力を有しているが高価でもある。最終的に汚濁水23aの浄化には必要であるが、大きな固形物などを濾過するにはもっと目が粗い安価な濾材でよい。したがって、濾布4の上流側に濾布4より目の粗い安価な濾材8を設けることでトータルのコストを引き下げることができるものである。濾材8は安価な布織布などでよく、例えば濾材8は100〜1000μm以上の粒子を除去できるようにすればよい。また濾材8は濾布4の底部の内側にシート状に設けても箱型に形成するよりも僅かに性能が低下するだけなのでコストを視野に入れると有効な手段である。
【0024】
続いて、図10に沿って形態4について簡単に説明する。第4の形態は、第1〜3のいずれかにの形態に従属する形態に洗浄水を中和させるために中和シート9(特願2004−295579 セメント排水シート及びセメント排水処理方法)を設けた濾過器である。セメント排水は未処理であれば最大pH12.5くらいのアルカリ性であり、浄化してもphはあまり変化しない。そこで汚濁水23aの浄化とともに、phを中和することを付加したものである。この中和シート9は布織布に中和材をサンドイッチしており、汚濁水23aが布織布を通過する際に中和材が適量融けて中和するものである。中和シート9を用いることで形態3の濾材8を省略することも可能となり、さらに経済的なメリットが期待できるものである。なお、この中和シート9についても濾材8の場合と同様に濾布4の底部の内側にシート状に設けるだけで充分な性能が得られる。
【0025】
このように実施例1の濾過器は、工事現場に対応して設置できるようにしたので今まで困難であった工事現場での汚濁水の浄化ができるようになる。またセメントなどの工具類を洗浄した水の汚濁水の浄化にも合わせて使用できる。これにより工事現場から発生する汚濁水の浄化による環境改善をはることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、工事現場での建造物洗浄による汚濁水の浄化や、コンクリートやセメントを用いた工事や作業に使用する工具類の洗浄後の汚濁水を浄化する濾過器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1における濾過器の一部破砕斜視図。
【図2】本発明の実施例1における橋梁の工事現場を簡略した斜視図。
【図3】本発明の実施例1における濾過器の縦断面図。
【図4】本発明の実施例1における濾過器の横断面図。
【図5】図4の部分拡大図
【図6】庇を設けた濾過器の横断面図。
【図7】図6の部分拡大図。
【図8】網カゴ着脱時の庇の動きを示す断面図。
【図9】濾材8を設けた断面図。
【図10】中和シート9を設けた断面図
【符号の説明】
【0028】
1 筐体
1a 固定鍔
1b 固定穴
2 バー
3 網カゴ
4 濾布
5 堆積物
6 庇
7 庇の軸
8 濾材
9 中和シート
21 足場
22 洗浄面
23a 汚濁水
23b 浄化水
24 防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートなどを含有した汚濁水を濾過する濾過器であって、汚濁水の取り込み口と排出口を有する筐体内に前記汚濁水の取り込み口部から着脱する前記筐体内に収納される網カゴを備え網カゴの内部に沿って濾布を設け、前記筐体の排出口に前記網カゴを支える構造物を設け、且つ前記構造物で網カゴを取り外した際には人の落下を防止されたもの。
【請求項2】
前記濾過器の汚濁水取り込み口部に庇を設け、濾布を筐体の間から汚濁水が浸入を防止したことを特徴とする請求項1記載の濾過器。
【請求項3】
前記濾過器の濾布の上流に濾布より濾過する目が粗い濾材を設けてなる請求項1記載の濾過器。
【請求項4】
前記濾過器の濾布の上流に水質ph中和シートを設けてなる請求項1記載の濾過器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−305468(P2006−305468A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131681(P2005−131681)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(594088260)昭進産業株式会社 (5)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】