説明

濾過器

【課題】濾過対象の流体に含まれる貝・藻類・微生物・菌などの生物が本体容器に固着することを防止するための実用的な手段を備えた濾過器を提供する。
【解決手段】円筒状の本体容器1と、この本体容器1内に本体容器1と同軸に設けられ、流体に含まれる異物を除去する筒状の濾過エレメント2と、本体容器1に取り付けられ、濾過対象の流体を導入する流入管3と、本体容器1に取り付けられ、濾過エレメント2により濾過された流体を流出する流出管6と、本体容器1の軸方向端部に取り付けられる容器蓋4とを備えた濾過器であって、本体容器1を亜鉛及び/又はアルミニウムを主成分とする金属で溶融メッキした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の本体容器と、この本体容器内に本体容器と同軸に設けられ、流体に含まれる異物を除去する筒状の濾過エレメントと、本体容器に取り付けられ、濾過対象の流体を導入する流入管と、本体容器に取り付けられ、濾過エレメントにより濾過された流体を流出する流出管と、本体容器の軸方向端部に取り付けられる容器蓋とを備えた濾過器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所における冷却水、水力発電用に用いる水、造水機、養殖漁業設備、産業分野での製鉄・化学・製紙プラントにおける工業用水、農業用水、上下水処理において、河川、湖沼、工業用水、海水などから取水した水を使用するに際して、水や海水から種々の異物を除去する必要がある。この目的で濾過器が使用されている。これら用水中から除去されるべき異物である固形物は種々のものがあり、魚・貝・藻なども含まれる。
【0003】
かかる濾過器の基本的構造は、円筒状の本体容器と、この内部に設けられる濾過エレメント (フィルター) を備え、本体容器に水や海水等の流体を導入し、この流体に含まれる異物を濾過エレメントにより除去する。異物が除去された流体は、流出管から送り出され冷却水、再循環水として種々の目的に利用される。異物は、流入された流体と共に、適宜のタイミングで異物排出管(ドレイン管)から排出された後処分される。この目的の濾過器の1種に旋回渦型濾過器がある。かかる濾過器としては、例えば、下記特許文献1に開示されるものが知られている。
【0004】
特許文献1は、円筒状の本体容器と、本体容器内に設けられる濾過エレメントと、本体容器に対して接線方向から液体を導入する流入管と、濾過エレメントにより異物が濾過された液体を流出する流出管を備えた濾過器を開示している。流入管から導入される流体は旋回流を形成し、固形物(異物)を遠心力で分離濃縮して水と共に本体容器外へ排出させるものである。また、旋回流を形成することで、濾過エレメントのフィルターに付着する異物を剥離効果で自己洗浄させる効果も有している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−230264号公報
【特許文献2】特開2004−141830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように濾過器により種々の固形物、例えば、木片・砂などのほかに取水した水中に生息する魚・貝・藻・くらげ・虫などを除去する必要があり、これにより、水が使用される機器の機械的な損傷を防止するものである。また、水中には濾過の対象ではないが微小生物・菌類も生息しており濾過器内に流入する。例えば、イガイ・コケムシ・珪藻などの生物と腐敗菌・硫黄酸化菌・鉄細菌などがスライム状で濾過器の本体容器内壁面や隙間などに固着し、濾過器内で成長して増殖することがある。
【0007】
これらの生物が繁殖した場合の第1の問題点は有害な微生物が生息することがあり、特に嫌気性細菌は有害な毒性物質を放出する。第2の問題点は、貝類や藻類の着生により濾過器内での流体抵抗が増大して圧力損失が増大し、その結果、処理水量の減少やポンプの電力損失が増大することである。特に旋回流型の濾過器において、旋回抵抗が増大して水流の乱れが大きくなり、固形物の遠心力による濃縮効果が低下して、濾過エレメントのフィルターの目詰まりや圧力損失の増大が発生する。さらに第3の問題点は、隙間部分(本体容器と容器蓋との隙間など)に微生物・菌類が固着・生育し、特に生物から分泌される硫化物は金属の不動態膜を破壊し、急速に腐食が進行することで濾過器の寿命が短くなることである。
【0008】
特に、本体容器の容器蓋付近は、水のよどみと円筒筒端面であるため、応力集中の影響とも相まって腐食しやすい状態となる。濾過器は、定期的に点検と保守を行なっているが、これらの細菌を含む生物は環境面の悪臭だけでなく、健康と安全面においても好ましくない。
【0009】
これらの生物や微生物対策として、水中に薬剤を注入し、これらの生物や微生物を殺菌あるいは不活性化する方法が従来使用されてきた。しかし、かかる薬剤を使用するのは環境保護の点で好ましくなく、薬剤を使用しない方法が要求される。生物の濾過器への付着対策として、金属表面をシリコン・フッ素樹脂コーティングする方向があるが、摩耗など耐久性不足の点で濾過器に適用することは実用的ではない。
【0010】
また、銅・銀・モリブデン金属は抗菌性・生物忌避性を有し、生物や微生物の固着を防止することはできるが、実際には表面に薄膜形成処理を行うことになるため、耐久性・コストの点で本体容器に対して適用することは実用的ではない。
【0011】
そのほかに、生物や微生物の固着を防止する技術として、特許文献2に開示されるように、水中に電流を通じる方法も大型施設において実用化されている。しかし、その使用態様が不適切であれば金属の水素脆化の危険性があるため好ましくない。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、濾過対象の流体に含まれる貝・藻類・微生物・菌などの生物が本体容器に固着することを防止するための実用的な手段を備えた濾過器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る濾過器は、
円筒状の本体容器と、
この本体容器内に本体容器と同軸に設けられ、流体に含まれる異物を除去する筒状の濾過エレメントと、
本体容器に取り付けられ、濾過対象の流体を導入する流入管と、
本体容器に取り付けられ、濾過エレメントにより濾過された流体を流出する流出管と、
本体容器の軸方向端部に取り付けられる容器蓋とを備えた濾過器であって、
本体容器を亜鉛及び/又はアルミニウムを主成分とする金属で溶融メッキしたことを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成による濾過器の作用・効果を説明する。円筒状の本体容器の内部には、異物が含まれる流体を濾過する濾過エレメントが設けられている。例えば、濾過エレメントは筒状であり、その軸は本体容器の軸と同軸となるように設けられる。濾過対象の流体を導入する流入管が設けられ、濾過エレメントにより濾過された流体は流出管から流出する。本体容器の軸方向端部には、容器蓋が取り付けられる。そして、本体容器は亜鉛及び/又はアルミニウムを主成分とする金属で溶融メッキされている。この溶融メッキを行うことによる作用・効果について以下詳細に説明する。
【0015】
貝・藻類などの水中生物は細菌類と共生している場合が多く、これらの生物は、金属表面に付着する炭酸カルシウムや、炭酸マグネシウムなどの無機質表面に対する適合性を有しており、その部分に付着して繁殖することになる。炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの付着メカニズムを以下説明する。
【0016】
河川水や海水中には、カルシウム・マグネシウムは炭酸塩・炭酸水素・水酸化塩として二酸化炭素と共に水中に安定溶解している。この水中の二酸化炭素は、取水後における水の輸送過程や旋回流型濾過器内において気体として脱気され気化放散し、PHが上昇して水あるいは海水がアルカリ側に変化する。このアルカリ側への変化により、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが濾過器の本体容器内壁面である鉄表面に析出し結晶化する。かかる結晶化は鉄表面で生じやすく、その結果、金属表面には生物や微生物が好む炭酸カルシウム層や炭酸マグネシウム層が形成され、生物や微生物が固着して繁殖する。これらの生物などと共生する菌類も同様に繁殖する。
【0017】
そこで、本体容器を亜鉛及び/又はアルミニウムを主成分とする金属で溶融メッキすることにより、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの沈着を防止することができ、水中の生物や微生物が内壁面に固着して繁殖することを防止することができる。ちなみに、溶融メッキ以外のメッキ方法としては、金属溶射、電気メッキ、無電解メッキ、CVDが知られているが、金属溶射は鉄との密着性が不十分であり、使用中に剥離が生じる。電気メッキ、無電解メッキ、CVDはメッキ厚さが薄く、耐久性不足で実用的ではない。以上のように、本発明の構成によれば、濾過対象の流体に含まれる貝・藻類・微生物・菌などの生物が本体容器に固着することを防止するための実用的な手段を備えた濾過器を提供することができる。
【0018】
本発明において、本体容器の前記軸方向端部に形成されるフランジ面を前記容器蓋の取り付け用の第1面とし、フランジ面の内径側に段差部を形成して容器蓋裏面から離間した第2面を形成し、この第2面と容器蓋裏面の間に形成される空間にシール部材を配置したことが好ましい。
【0019】
円筒状の本体容器の軸方向端部にはフランジが設けられ、このフランジ面に容器蓋が取り付けられる。この容器蓋と本体容器とを結合する部分から流体が漏れないようにシールを行う必要がある。シールを行なう場合、通常は、フランジ面に凹部(溝部)を形成し、この凹部にシール部材を取り付け、容器蓋を取り付けるときにシール部材を圧縮することでシールを行なう。このシール部を凹部で形成すると、流体の滞留により嫌気性菌が増殖し流体を汚染する問題や嫌気性菌の分泌物質による腐食によりシール部分のシール機能が低下する。そこで、フランジ面を容器蓋の取り付けのための第1面とし、フランジ面の内径側に段差部を形成し、容器蓋裏面から離間した第2面を別に形成する。シール部材は、この第2面と容器蓋裏面で挟持することで取り付けられる。段差部を形成することで、流体が滞留することがなく、本体容器内部に連通し前述の問題を抑制することができる。
【0020】
本発明において、容器蓋裏面に第2面の方向に突出する突出部を形成し、前記段差部と突出部により前記空間を形成したことが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば空間を閉じた状態としシール機能を増大させることができる。また、本体容器側は段差部が形成されているため、シール空間は本体容器内部と連通し流体が滞留しにくくなっている。これにより、流体が滞留することによる問題点を解決することができる。
【0022】
本発明において、本体容器の前記軸方向端部に形成されるフランジ面と、容器蓋裏面の間に挟持されるガスケットが取り付けられ、このガスケットの内径側にガスケットと一体化されたシール部材が配置されることが好ましい。
【0023】
この構成によると、ガスケットをフランジ面と容器蓋裏面の間で挟持することでシール機能を発揮する。さらに、ガスケットの内径側にはシール部材が一体化されて配置される。これにより、確実にシールを行なうことができる。また、シール部には凹部がなく、流体が滞留することがない。従って、腐食によるシール機能の低下の問題を抑制することができる。
【0024】
本発明において、溶融メッキ金属と同じ材料あるいは電気化学的電位が溶融メッキ金属よりも低い金属塊を濾過エレメントと電気的に結合したことが好ましい。
【0025】
本体容器に溶融メッキを行い、かつ、濾過エレメントを金属で製作した場合、両者は異種金属となり水中で電池を形成することがある。この電位を生物や微生物は忌避するため、腐敗菌などの増殖防止には好適であるが、卑金属である亜鉛やアルミニウムの消耗という別の問題点が発生する。そこで、防食用として、上記の金属塊を濾過エレメントと電気的に結合した状態で取り付けることで、金属塊の方を消耗させ、溶融メッキ金属の消耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る濾過器の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
<構成>
図1は、第1実施形態に係る濾過器の構成を示す図である。図1(a)は平面図(軸線に垂直な方向の断面図を含む)であり(b)は側面図(軸線方向に沿った断面図を含む)であり(c)はシール部の部分拡大断面図である。なお拡大断面図では、本体容器と容器蓋とを少し離した状態で図示しており、この点は他の実施形態も同様な図示方法を採用している。
【0028】
本体容器1は円筒状に形成されており、容器軸は垂直になるように設置される。本体容器1の上端部にはフランジ1aが形成されており、容器蓋4が多数のボルト8により取り付けられる。本体容器1の下端部には底板1bが取り付けられる。本体容器1は好ましくはSS400のような鋼製である。
【0029】
本体容器1の内部には、本体容器1と同軸に濾過エレメント2が取り付けられる。濾過エレメント2はSUS304のようなステンレス鋼製であり、逆円錐形の2層重ね構造を有している。すなわち、円錐外側は平織金網であり、内側は開口径が金網よりも大きく板厚が網線径よりも大きなパンチング板であり、金網の機械的補強の役割を果たしている。濾過エレメント2の上端側には、穴のない円筒部2aが溶接固定され、下端側には、同じく穴のない円筒部2bが溶接固定される。さらに、上端側の円筒部2aが取り付け部2cにより、本体容器1の内壁面に取り付けられている。
【0030】
本体容器1の上端側近傍には、流入管3が設けられる。流入管3は、本体容器1の円周壁面に対して接線方向に設けられ、濾過対象の水などの流体が流入される。接線方向から流体を導入することで旋回流が形成され、遠心力の作用により本体容器1の壁面側に異物を濃縮させる作用と、濾過エレメント2の表面に付着した異物を剥離除去する作用を行う。また、旋回流により本体容器1や濾過エレメント2への貝類の着床や水の滞留による菌の増殖を抑制することができる。
【0031】
本体容器1の底板1bには流出管6が下向きに取り付けられている。この流出管6の入口部の内径部に濾過エレメント2の下端側円筒部2bが挿入される。また、本体容器1の下端側には、本体容器1の円周壁面に対して接線方向にドレイン管7が取り付けられる。流入管3から導入された流体に含まれる固形の高比重異物は、本体容器1の内壁面に沿って旋回しながら沈降し、本体容器1のドレイン管7の位置まで移動すると、流体と共に本体容器1外に排出される。流入管3から導入された流体は、旋回流の作用及び濾過エレメント2を通過することで異物が除去された状態で、流出管6から排出される。
【0032】
濾過エレメント2の下部には、円周方向に等間隔で3箇所に邪魔板5が取り付けられている。この邪魔板5により乱流を発生させることができ、濾過エレメント2下部における生物や微生物の付着を防止することができる。さらに、この邪魔板5には、犠牲亜鉛陽極9(金属塊)が取り付けられ、後述する本体容器1の亜鉛溶融メッキの減耗を抑制することができる。
【0033】
図1(c)にシール部の構成を示す。本体容器1の上端側にはフランジ1aが一体形成され、フランジ1aの上面は容器蓋4の裏面4aが当接する第1面1cである。また、フランジ1aの内径側には段差部が形成され、第1面1cよりも低い位置にある第2面1dが形成される。また、容器蓋4の中央部には下方に突出する突出部4bが形成され、この突出部4bと段差部により形成される閉じた空間にOリング10(シール部材に相当)が配置される。突出部4bの突出高さは、第2面とほぼ同じであり、その外径は、本体容器1の内径寸法よりも少し大きい程度に設定されている。
【0034】
Oリング10は加硫EPDMエラストマーであり、Oリング10が配置される空間はOリング10の断面積の約2倍程度となっている。Oリング10が配置される空間は閉じているが、本体容器1の内部と連通した状態となっている。従って、この空間に水が滞留しにくい構造となっており、菌の増殖などによるOリング10の腐食を防止する。
【0035】
<本体容器の溶融メッキ>
この濾過器では、本体容器1の表面が亜鉛溶融メッキされる。この溶融メッキを行なうときの条件を説明すると、まず、本体容器1の鋼表面をブラスト処理し、ついで、水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、65℃)で20分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、塩化亜鉛アンモニウム水溶液(30%、60℃)で乾式法フラックス処理する。次に、亜鉛99%純度460℃の溶融亜鉛槽に10分間浸漬し、亜鉛溶融メッキを施した後、冷却した。メッキ厚は、ツエター層と合金層であるデルタ層の合計で150μmであった。
【0036】
本体容器1を亜鉛溶融メッキすることにより、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの沈着を防止することができ、水中の生物や微生物が内壁面に固着して繁殖することを防止することができる。また、犠牲亜鉛陽極9を配置することで、メッキした亜鉛の消耗を防止することができる。
【0037】
実際に、この濾過器を下水道用廃熱源利用のヒートポンプ熱交換設備に用いて、濾過器内での雑菌とスライム増殖・付着とを抑制することができた。
【0038】
<第2実施形態>
<構成>
次に、第2実施形態に係る濾過器を図2により説明する。第1実施形態と同じ機能をする部分には同じ図番を付している。第1実施形態と異なる点を中心に説明する。この点は、第3実施形態以降についても同じである。
【0039】
本体容器1の底板1bに流入管3が取り付けられており、底部から流体が導入される。本体容器1の高さ方向のほぼ中央部に流出管6が取り付けられている。流出管6は本体容器1の外表面に垂直な方向に取り付けられる。本体容器1は、SS400などの鋼製である。
【0040】
濾過エレメント2は円筒状であり、円筒表面に多数の穴が形成される。流入管3から導入された導入された流体は、濾過エレメント2の内部から外部へと流通し、濾過された流体は流出管6から排出される。除去された異物は、濾過エレメント2内の表面に付着するため、この異物の除去は濾過エレメント2を本体容器1から取り出すことで行なうことができる。濾過エレメント2はポリプロピレン製の筒状体として構成される。本体容器1の底板1bに支持板2dが位置しており、さらにこの支持板2dに対して、中心軸に配置されるボルト2mが結合される。濾過エレメント2の上端部は天板2nにより閉塞されており。この天板2nを介してボルト2mによる結合がなされる。支持板2dは、図2(a)にも示すように、平面視で矩形形状であり、流入管3から流体が導入する空間が確保されている。
【0041】
容器蓋4の突出部4bの中央には犠牲アルミ陽極9が取り付けられる。
【0042】
シール部の構成を図2(c)に示すが、第1実施形態と同じように段差部が形成されており、閉じた空間内にシール部材10が配置される。シール部材10は、天然ゴム製であり外側10aが凸円、内側10bが凹円のリング状シール材として構成されている。突出部4bと段差部の間に形成される空間は、シール部材10の径方向寸法の約1.5倍程度の大きさとなっている。
【0043】
<本体容器の溶融メッキ>
本体容器1の表面は次の方法によりアルミ亜鉛合金で溶融メッキされる。まず、メッキ前処理として、ブラスト処理を行い、ついで水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、65℃)で20分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、フッ化アルミニウムとフッ化カリウム各々50%組成の溶融塩で湿式法フラックス処理後、アルミニウム55%亜鉛45%組成の600℃の溶融合金浴に浸漬してメッキした。
【0044】
実際に、この濾過器を農業用散水設備に用いて、濾過器内でのスライムの生成を防止することができた。
【0045】
<第3実施形態>
<構成>
次に、第3実施形態に係る濾過器を図3により説明する。この濾過器は、本体容器1内壁面の接線方向に配置された流入管3、本体容器1の下端側に設けられた流出管6、本体容器1の底部に接線方向に配置されたドレイン管7を備えている。従って、流入管3から導入された流体は旋回流を形成する。本体容器1は、SS400などの鋼製である。流入管3の流入部には、偏向板11が取り付けられており、導入された流体を本体容器1の内壁面に沿った方向に流れを偏向させる。これにより、より旋回流を生じやすいようにすることができる。
【0046】
濾過エレメント2は逆円錐台形であり、材質がSUS316などのステンレス鋼であり、パンチング穴が表面に多数形成される。濾過エレメント2の上端側には、同じくSUS316のリング板2eが溶接固定される。このリング板2eの外周縁部が、本体容器1と容器蓋4の間に挟持されることで、濾過エレメント2が取り付けられる(図3(c)参照)。濾過エレメント2の下端側には、流出管6の端部6aが挿入されている。
【0047】
シール部の構成を図3(c)に示すが、これまでの実施形態と同じように、本体容器1のフランジ1aに段差部が形成されている。また、濾過エレメント2と一体化されたリング板2eが第2面1dと容器蓋4の裏面で挟持される。かかる構成により、段差部において閉じた空間が形成され、シール部材10が配置される。このシール部材10は、ニトリルゴム(NBR)製であり、断面形状が横長の楕円形状に形成されたリング状シール材として形成される。シール部材10の断面積は、これが配置される空間の断面積の2.5倍とした。
【0048】
図示されていないが、溶融メッキしたアルミニウムの消耗を抑制するために、濾過エレメント2の下部に犠牲アルミニウム陽極を設置することが好ましい。
【0049】
<本体容器の溶融メッキ>
本体容器1の表面は次の方法によりアルミニウム溶融メッキされる。まず、メッキ前処理として、ブラスト処理を行い、ついで水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、70℃)で10分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、フッ化アルミニウムとフッ化カリウム各々50%組成の溶融塩で湿式法フラックス処理後、純度99%の溶融アルミニウム(690℃)の槽に10分間浸漬した後、冷却した。メッキ厚は110μmであった。
【0050】
実際に、この濾過器を漁業用の海水処理設備に用いて、濾過器内での雑菌の増殖と貝類の付着を抑制することができた。
【0051】
<第4実施形態>
<構成>
次に、第4実施形態に係る濾過器を図4により説明する。この実施形態はこれまで説明した実施形態とは異なり、横置きタイプである。すなわち、本体容器1と濾過エレメント2はその軸方向が水平になるように設置される。本体容器1は、SS400などの鋼製である。流入管3とドレイン管7は共に本体容器1に対して接線方向に設けられる。流入管3は本体容器1の上方に取り付けられ、ドレイン管7は下方に取り付けられる。流入管6は、本体容器1の左側端部に取り付けられる。
【0052】
濾過エレメント2には、多数の穴が形成された円筒形の本体部2fと穴が形成されない円錐台形の偏向部2gが一体形成されている。従って、流入管3から導入された流体は、まず偏向部2gに衝突することで、本体容器1の軸方向に沿って旋回流が形成され、遠心力により濃縮された異物は旋回しながらドレイン管7の方向に移動し、ドレイン管7から流体と共に排出される。また、濾過された流体は濾過エレメント2の内部を通過して流出管6から排出される。濾過エレメント2は、本体容器1と同じSS400などの鋼製である。
【0053】
シール部の構成を図4(c)により説明する。本体容器1のフランジ1aと容器蓋4の裏面でガスケット12を挟持する。ガスケット12は、SUS304製のリング板であり、その内径側にシール部材10が一体成型される。シール部材10は、径方向外側10cが断面円形であり、径方向内側は厚さが薄くなっており、ガスケット12の内径側を挟持(被覆)する形で成型されている。シール部材10は、ポリオール型ポリウレタンにより製作される。
【0054】
<本体容器と濾過エレメントの溶融メッキ>
本実施形態では、本体容器1と濾過エレメント2の両方が亜鉛とアルミニウムの合金で溶融メッキされる。まず、メッキ前処理として、ブラスト処理を行い、ついで水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、70℃)で40分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、塩化亜鉛アンモニウム水溶液(30%、60℃)で乾式法フラックス処理を行う。
【0055】
次に、本体容器1は溶融亜鉛浴(亜鉛90%、アルミニウム10%、500℃)の合金浴に30分浸漬し、溶融亜鉛メッキを施した後、冷却した。濾過エレメント2は、次に、本体容器1は溶融亜鉛浴(亜鉛90%、アルミニウム10%、500℃)の合金浴に20分浸漬し、溶融亜鉛メッキを施した後、冷却した。メッキ厚は夫々110μmであった。
【0056】
実際に、この濾過器を製紙用の工業水再循環処理設備に用いて、濾過器内での雑菌の増殖と付着を抑制することができた。
【0057】
<第5実施形態>
<構成>
次に、第5実施形態に係る濾過器を図5により説明する。この濾過器は、本体容器1内壁面の接線方向に配置された流入管3、本体容器1の下端側に設けられた流出管6、本体容器1の底部に接線方向に配置されたドレイン管7を備えている。従って、流入管3から導入された流体は旋回流を形成する。本体容器1は、SUS304などのステンレス鋼製である。
【0058】
次に、濾過エレメント2の構成を説明する。この濾過エレメント2は、他の実施形態とは異なり、第1円板20と第2円板21とが交互に多数積層されて構成される。第1円板20と第2円板21の詳細については図5Aに示される。第1円板20と第2円板21は、僅かの隙間が形成された状態で積層されており、その隙間は水は通過させるが異物が通過させないような設定となっている。第1円板20は、リング部20aと結合部20bにより構成され、結合部20bを第1揺動軸24が貫通しており、これにより、全ての第1円板20が結合され一体的に揺動可能となっている。第2円板21は第1円板20と同じ形状であるが位相が180゜ずれた状態で配置される。第2円板21もリング部21aと結合部21bにより構成され、結合部21bは第2揺動軸25が貫通している。第1・第2円板20,21は、例えば、H3130PBSP(りん青銅)のプレス加工により製作される。
【0059】
濾過エレメント2及び本体容器1の中心には、中空軸22が設けられており、この中空軸22の下端部には支持板23が連結されている。中空軸22と第1・第2揺動軸24,25とは支持板23により支持されている。中空軸22には多数の小孔が形成されており、洗浄するときは中空軸22の上方側から洗浄水を注入すると、多数の小孔から洗浄水を噴出させることができる。
【0060】
第1・第2揺動軸24,25は、夫々アクチュエータと接続されており、第1・第2揺動軸24,25を揺動駆動させることができる。これにより、第1・第2円板20,21も揺動する。第1・第2揺動軸24,25の下端部は、前述の支持板23に設けられた軸受により回転自在に支持されている。第1・第2揺動軸24,25の上端部も、容器蓋4に設けられた軸受により回転自在に軸支されている。
【0061】
図5A(a)は定常位置であり、(b)(c)は揺動した状態を示している。このように各円板20,21を揺動させることで、円板20,21の間に形成される隙間に付着した異物を除去させることができる。各円板20,21の揺動角度は、適宜決めることができるが、第1円板20のリング部20aと、第2円板21のリング部21aの重なり状態を維持できる範囲(図5A(b)(c)の軸方向視において、リング部20aとリング部2aに隙間が生じない範囲)で揺動させればよい。
【0062】
シール部の構成を図5(c)により説明する。本体容器1のフランジ1aと容器蓋4の裏面でガスケット12を挟持する。ガスケット12は、SUS304製のリング板であり、その内径側にシール部材10が一体成型される。シール部材10は、断面円形であり、ガスケット12の内径側を挟持(被覆)する形で成型されている。シール部材10は、水素添加NBRゴムにより製作される。
【0063】
<本体容器の溶融メッキ>
本実施形態では、本体容器1は溶融亜鉛銅合金によりメッキされる。まず、メッキ前処理として、ブラスト処理を行い、ついで水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、65℃)で20分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、塩化亜鉛アンモニウム水溶液(30%、60℃)で乾式法フラックス処理を行う。
【0064】
次に、亜鉛地金と黄銅を溶融槽に亜鉛95%、銅5%組成となるように溶解した510℃の合金槽に10分浸漬し、溶融亜鉛メッキを施した後、冷却した。メッキ厚は130μmであった。
【0065】
実際に、この濾過器を下水処理設備に用いて、濾過器内での雑菌の増殖と付着を抑制することができた。
【0066】
<第6実施形態>
<構成>
次に、第6実施形態に係る濾過器を図5により説明する。この濾過器は、縦置き設置され、本体容器1の下端側に流入管3が設けられ、上端側に流出管6が設けられる。流入管3も流出管6も本体容器1の接線方向に取り付けられる。本体容器1は、SS400などの鋼製である。
【0067】
濾過エレメント2は円筒状に形成され、ポリエステル基布にポリプロピレン繊維を植え込んだカットパイル長さ15mmの濾布を機械強度確保のためにSUS304ステンレス鋼のパンチング板の円筒内側に固定して製作されている。濾過エレメント2の上端部にはドーナツ状の円板2hが溶接固定され、この円板2hが容器蓋4とフランジ1aにより挟持される。濾過エレメント2の下端部は、本体容器1の内壁面から突出した張り出し部1eに嵌合されることで取り付けられる。従って、濾過エレメント2の下部側は、本体容器1内部と直接連通している。
【0068】
本体容器1の流入管3よりもさらに下方に第1排出管70が設けられ、高比重の異物が排出される。本体容器1の最上部(容器蓋4の中央)には第2排出管71が設けられ、低比重の異物が排出される。
【0069】
この構成によると、流入管3から導入された流体は、濾過エレメント2の内部から外部を通過して流出管6から濾過された流体が排出される。流入管3から導入された流体は、旋回流を形成し、流体に含まれる高比重異物は遠心力により本体容器1の内壁面に移動して旋回しながら底板1b方向に移動する。沈降した異物は、流体と共に渦順方向に設けられた第1排出管70から排出される。
【0070】
一方、低比重異物は渦の中心側に集まる傾向がある。すなわち、旋回流の渦の中心では竜巻状の渦糸が発生しており、低比重異物はこの渦糸の流れに乗って、上部に設けられた第2排出管71から排出される。
【0071】
異物が除去された流体は濾過エレメント2を通過し流出管6より排出される。流出管6は、渦旋回順方向に配置されており、そのため濾過エレメント2の外側でも旋回流を持続している。この旋回により、濾過エレメント2の各部を通過する単位面積当たりの流量を均等にすることができる。また、濾過エレメント2の外側の旋回流により、本体容器1内壁面への雑菌や貝類などを多く含むスライムの増殖や付着を防止することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の濾過器において、濾過器に流体を導入する手前で流体に空気あるいは不活性ガスを微量注入し、流体中に含まれる臭気性ガスなどの脱気と浮遊分離法による軽比重異物の排出を併せて行なうことができる。
【0073】
濾過エレメント2の繊維間に異物が充満した場合は、流出管6から逆に洗浄水を流入(逆洗)すればよい。この際、使用時とは逆方向の渦旋回方向となるため、カットパイルされた繊維が使用時とは逆方向になびくため、繊維間に詰まった異物が効率よく洗浄される。
【0074】
次にシール部の構成を図6(c)により説明する。シール部において、濾過エレメント2の円板2hを挟持する点と、シール部材10の形状以外は第1実施形態と同じである。シール部材10は、断面ダンベル状のガスケットであり、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)により製作される。
【0075】
<本体容器の溶融メッキ>
本実施形態では、本体容器1は亜鉛とアルミニウムの合金で溶融メッキされる。まず、メッキ前処理として、ブラスト処理を行い、ついで水酸化ナトリウムとオルト珪酸ソーダ(10%水溶液)で脱脂し、次にアルカリ分を水洗し、塩酸(10%、65℃)で20分酸洗し、再度水洗して酸を除去した後、塩化亜鉛アンモニウム水溶液(30%、60℃)で乾式法フラックス処理を行う。
【0076】
次に、亜鉛とアルミニウムの合金(三井金属鉱業製品SPZ合金)の480℃の溶融亜鉛槽に10分浸漬し、溶融アルミニウム亜鉛メッキを施した後、冷却した。メッキ厚は130μmであった。
【0077】
実際に、この濾過器を上水道処理設備に用いて、濾過器内での雑菌の増殖と付着を抑制することができた。
【0078】
<別実施形態>
本実施形態について6つの実施形態を説明してきたが、さらに種々の実施形態を採用することができる。また、各実施形態において採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【0079】
本体容器1、流入管3、流出管6、異物排出管7、濾過エレメント2の材質については、本実施形態で説明した材料以外の種々の材料を選択することができる。
【0080】
本発明に係る濾過器で濾過対象となる流体は水に限定されるものではなく、他の流体にも当然適用できるものである。また、本実施形態では、すべて横置きと縦置きに設置された濾過器を説明しているが、本発明の濾過器としては、いずれかに限定されるものではない。
【0081】
本体容器1の上部に、濾過器の運転前に滞留している空気などの気体、及び運転中に流体に同伴される空気などの気体を排出するための空気抜き管及び弁を設けることが好ましい。ドレイン管7、排出管70,71から異物を排出させるタイミングについては、適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【図2】第2実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【図3】第3実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【図4】第4実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【図5】第5実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【図5A】濾過エレメントの詳細を示す図
【図6】第6実施形態に係る濾過器の構成を示す図
【符号の説明】
【0083】
1 本体容器
1a フランジ
1b 底板
1c 第1面
1d 第2面
2 濾過エレメント
3 流入管
4 容器蓋
4a 裏面
4b 突出部
6 流出管
7 ドレイン管
10 シール部材
12 ガスケット
20 第1円板
21 第2円板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体容器と、
この本体容器内に本体容器と同軸に設けられ、流体に含まれる異物を除去する筒状の濾過エレメントと、
本体容器に取り付けられ、濾過対象の流体を導入する流入管と、
本体容器に取り付けられ、濾過エレメントにより濾過された流体を流出する流出管と、
本体容器の軸方向端部に取り付けられる容器蓋とを備えた濾過器であって、
本体容器を亜鉛及び/又はアルミニウムを主成分とする金属で溶融メッキしたことを特徴とする濾過器。
【請求項2】
本体容器の前記軸方向端部に形成されるフランジ面を前記容器蓋の取り付け用の第1面とし、フランジ面の内径側に段差部を形成して容器蓋裏面から離間した第2面を形成し、この第2面と容器蓋裏面の間に形成される空間にシール部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の濾過器。
【請求項3】
容器蓋裏面に第2面の方向に突出する突出部を形成し、前記段差部と突出部により前記空間を形成したことを特徴とする請求項2に記載の濾過器。
【請求項4】
本体容器の前記軸方向端部に形成されるフランジ面と、容器蓋裏面の間に挟持されるガスケットが取り付けられ、このガスケットの内径側にガスケットと一体化されたシール部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の濾過器。
【請求項5】
溶融メッキ金属と同じ材料あるいは電気化学的電位が溶融メッキ金属よりも低い金属塊を濾過エレメントと電気的に結合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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