説明

濾過素子およびその製造方法、および水処理装置

濾過素子およびその製造方法、および水処理装置を提供する。濾過素子は透水性支持体(1)と有機質濾過膜(2)を含み、前記透水性支持体(1)の表面に有機性材料層(3)を有し、前記有機質濾過膜(2)は前記有機性材料層(3)の表面を被覆し、かつ前記有機性材料層(3)と結合し、前記有機質濾過膜(2)の孔径が0.0015μm〜20μmである。濾過素子の製造方法は、透水性支持体(1)の表面に有機性材料層(3)を形成する工程、有機質濾過膜(2)材料を有機溶媒に溶解し、1%〜10%の膜液を調製する工程、および透水性支持体(1)に前記膜液を塗布し、有機性材料層(3)上に有機質濾過膜(2)を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過素子およびその製造方法に関する。特に廃水処理に用いる有機質膜バイオリアクターの濾過素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜バイオリアクターは、生化学反応セル部と膜分離部から構成される。その特徴として、処理された水は水質が良好で、再利用に適する;占有面積が比較的小さく、環境への適応性が高い;装置が高度に自動化されており、運転管理が容易であることなどが挙げられる。膜バイオリアクターの応用は次第に発展してきており、数万トンから数十万トン容量の都市廃水処理工場が建設されている。膜バイオリアクターの個数もますます増加していて、数千個にのぼる膜バイオリアクターが世界中の多くの国や地域で稼動している。
【0003】
膜分離部に用いる膜材料は、有機質膜と無機質膜に分けられ、無機質膜として、主に金属膜、合金膜、セラミック膜、ガラス膜、ゼオライト膜、分子篩膜などが挙げられる。無機質膜は、化学安定性がよく、耐酸性、耐塩基性、耐有機溶剤性に優れ、機械強度が大きく、使用寿命が長く、逆洗することができ、耐微生物性が強く、微生物と反応せず、耐熱性に優れ、孔径分布が狭く、分離効率が高いなどの多くの利点を有している。現在商品化されている無機質膜は主にセラミック膜であり、形状は主に平板状、管状とマルチチャンネル状の3つである。しかし、無機質セラミック膜の加工は複雑で、加工が難しいため、価格が高く、平方メートルあたりの製造コストが4000〜10000人民元である。さらに無機質セラミック膜で濾過する際、生化学部と膜分離部との間でやや大きな循環流量を必要とするため、比較的出力の大きい循環ポンプを必要とし、結果的に、無機質セラミック膜の運転コストは相対的に高くなる。そのため、その利用は主に、油水の分離、特定化学物質原料例えば二酸化チタンの回収、石油化学廃水処理において沈殿した重金属の除去、ラテックス廃水からのラテックスの回収に限られている。セラミック膜の膜バイオリアクターにおける応用はまだ実験室の研究段階に留まっており、2004年に、膜分離市場の世界販売額は100億米ドルに達したが、無機質膜の市場シェアはわずか12%であった。
【0004】
公知の膜バイオリアクターの多くは有機質膜を利用している。有機質膜バイオリアクターの関連情報は下記の文献に記述されている。「高大林、ポール(Pall)の各種膜技術の比較、清華大学、膜水処理検討会、2005年、第228ページ;Norit, X−flow recycling of wastewater, International Symposium on Membrane Technologies for Water and Wastewater Treatment, Tsing Hua university, China, 2005, pp105−108;鄭祥ら、膜バイオリアクターの技術経済分析、給水排水、2002年、28(3)、ページ105〜108。」
通常、膜バイオリアクターは、布や繊維管に有機質濾過膜材料を塗布してなる。有機質濾過膜材料は一般的に石油化学材料や高分子であるが、布や繊維管の強度は比較的弱いため、有機質膜バイオリアクターの強度が低く、膜の破裂が発生する可能性があり、特に中空繊維膜の膜繊維が破断しやすく、一部の膜繊維は使用開始後のわずか数ヶ月の内に膜繊維の破断が発生する。一度膜繊維が破断すると、処理された水の水質が悪くなる。膜質が処理効率に影響を与えるようになると、膜素子の交換が必要になり、この場合、廃水処理システムの運行も停止しなければならないし、交換の作業負荷やコストも大きい。特に比較的大型の膜バイオリアクターにとって、膜交換はさらに複雑であり、それに伴う影響もさらに重大である。有機質膜の原材料は石油化学製品であるため、膜交換すると、再生不可能な石油資源を大量に消費するに等しい。石油不足が深刻になるにつれ、この問題も深刻になっていく。さらに、交換された廃棄膜は処理が難しく、有機産業廃棄物なり、二次的な環境汚染および新しい環境負荷をもたらす。有機質膜の偶発的な損傷は防げたとしても、定期的な膜交換に伴う経済的および環境的問題は多大である。膜バイオリアクターの応用の拡大、特に大型の都市廃水処理工場への利用の拡大に伴い、この問題はさらに厳しくなる。したがって、有機質膜バイオリアクターにとって、膜強度が低く、使用寿命が短いことは、膜バイオリアクターの大型化と普及を阻害する要因となり、重要な技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、廃水処理における有機質膜の強度が低く、使用寿命が短く、無機質膜の製造コストが高く、運転エネルギー消費が高いといった、現在の排水処理に係る問題点を解消するために、濾過素子およびその製造方法、前記濾過素子を含む水処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明では、透水性支持体と有機質濾過膜とを含む濾過素子であって、前記透水性支持体はその表面に有機性材料層を有し、前記有機質濾過膜は前記有機性材料層の表面を被覆し、かつ前記有機性材料層と結合しており、前記有機質濾過膜の孔径が0.0015μm〜20μmである濾過素子を提供する。
【0007】
前記透水性支持体は骨材と前記骨材を被覆するバインダーを含んでもよく、前記骨材は、石英砂(珪砂)、セラミック又はガラスビーズであってもよい。
【0008】
前記バインダーは有機系バインダーであってもよく、かつ有機系バインダーは前記透水性支持体の表面に前記有機性材料層を形成する;または前記バインダーは無機系バインダーであってもよく、前記透水性支持体の表面に前記有機性材料が塗布されて前記有機性材料層を形成してもよく;前記透水性支持体は2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層は有機系バインダーであってもよく、かつ有機系バインダーは前記透水性支持体の表面に前記有機性材料層を形成する。
【0009】
前記有機質濾過膜の主成分は有機質濾過膜材料であってもよく、前記有機質濾過膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテート、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0010】
前記有機質濾過膜材料は、親水性基を有してもよく、前記親水性基は、ヒドロキシ基、ラクタム基またはスルホン基であってもよい。
【0011】
前記有機性材料層は、前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合して1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製し、前記溶液を前記透水性支持体に塗布することで、形成してもよい。
【0012】
前記透水性支持体は、その内部にチャンバーを、その表面に出水口を有してもよく、前記チャンバーが前記出水口と連通する。
【0013】
前記チャンバーの数が1つであってもよく、前記透水性支持体の強度を向上するために前記チャンバー内に支持点を設けてもよい。
【0014】
前記チャンバーの数は複数であってもよい。前記チャンバーは柱状体形状であり、前記透水性支持体に沿って平行に配列されてもよく、前記透水性支持体の強度を向上するために隣接する2つチャンバーの間の各々に隔壁を設けてもよく、かつ各チャンバーに対応する位置に出水口をそれぞれ設ける、または前記複数のチャンバーが相互に連通し、共同で前記出水口と連通する。
【0015】
前記透水性支持体は複数のチャンバーの端面に対応する側壁に集水空間を有しもよく、前記複数のチャンバーは前記集水空間において相互に連通する、または前記隣接するチャンバーの間にある隔壁に空洞を有し、前記空洞により前記複数のチャンバーが相互に連通する。
【0016】
前記透水性支持体は、長方体形状または立方体形状であってもよい。または、前記透水性支持体は、波型構造を有してもよく、その波型形状の片側の谷部が、当該片側に対面するもう一方側の対応する山部と繋がって、前記複数のチャンバーが画成される。
【0017】
前記有機性材料層は有機系バインダー層であってもよく、前記有機系バインダーは親水性樹脂系バインダーであってもよく、前記親水性樹脂系バインダーは、エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。前記エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂の分子側鎖に親水性のカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩、ヒドロキシル基を含有してもよく、または主鎖に非イオン型親水性セグメントを含有する。
【0018】
前記有機溶剤は、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、エチレングリコールまたはエチレングリコールフェニルエーテルであってもよい。
【0019】
また、本発明は、濾過素子の製造方法を提供する。この製造方法は、透水性支持体の表面に有機性材料層を形成する工程;および前記有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布するまたは吹き付けることより有機性材料層の表面に有機質濾過膜を形成する、または有機性材料層の表面に有機質濾過膜を貼付する工程を含み、前記有機質濾過膜の孔径が0.0015μm〜20μmである。
【0020】
前記透水性支持体は骨材と前記骨材を被覆するバインダーを含んでもよく、前記透水性支持体の骨材は、石英砂(珪砂)、セラミック又はガラスビーズであってもよい。
【0021】
前記バインダーは有機系バインダーであってもよく、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する;または前記バインダーが無機系バインダーであってもよく、前記透水性支持体の表面上に有機性材料が塗布されて前記有機性材料層を形成してもよく;または前記透水性支持体が2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層のバインダーが有機系バインダーであってもよく、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する。
【0022】
前記の製造方法は、前記有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布するまたは吹き付ける工程の前に、前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合して1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製する工程をさらに含んでもよい。
【0023】
前記透水性支持体は、その内部にチャンバーを、その表面に出水口を有してもよく、前記チャンバーが前記出水口と連通する。
【0024】
また、本発明は、濾過装置を含む水処理装置であって、前記濾過装置が上記の濾過素子を含む、水処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の濾過素子および水処理装置は、現在の膜バイオリアクターの欠点、例えば、有機質膜の強度が低い、使用寿命が比較的短い、従来の無機セラミック膜を使用した場合に製造コストが高く、運転エネルギー消費が高く、運転コストが高い、といった欠点を解決、克服する。本発明において膜バイオリアクターにおける膜材料は天然の、安価なおよび環境に優しい材料を十分に利用できて、膜バイオリアクターの寿命を大きく延ばし(公知の有機質膜バイオリアクターの最長寿命よりも長く)、その結果、水処理、廃水処理および廃水再生回収分野において、膜バイオリアクターをより実用化、より普及化、より大型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の濾過素子を示す略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る濾過素子を示す略図である。
【図3】図2に示される濾過素子の形状の第一実施例を示す略図である。
【図4】図2に示される濾過素子の形状の第二実施例を示す断面図である。
【図5】図2に示される濾過素子の形状の第三実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の濾過素子の構造および材料について図面を参照しながらさらに説明する。
【0028】
図1は本発明の濾過素子を示す略図である。図1に示すように、本発明の濾過素子は濾過層とライニング部から構成される。濾過層が有機質濾過膜2であり、ライニング部が透水性支持体1である。前記透水性支持体1はその表面に有機性材料層3を有し、前記有機質濾過膜2は有機性材料層3の表面を覆い、かつ結合する。有機質濾過膜は有機性材料層と適切な結合が出来るので、有機質濾過膜2は、有機性材料層3の助けを受けて、透水性支持体1と強く一体化できる。
【0029】
前記有機質濾過膜の主成分は有機質濾過膜材料であり、前記有機質濾過膜材料は親水性材料であってもよい。前記有機質濾過膜材料は、ヒドロキシ基、ラクタム基またはスルホン基などの親水性基を有してもよい。より具体的には、前記有機質濾過膜材料は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースアセテート、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。さらに、前記有機質濾過膜2の孔径が微細かつ均一であり、その孔径が0.0015μm〜20μmの範囲である。透水性支持体1の孔径は約50〜200μmの範囲であるので、不可逆的膜ファウリングを有効に低減できる。
【0030】
本発明において、前記有機性材料層3は有機系バインダー層であってもよい。前記有機系バインダーは親水性樹脂系バインダーであり、前記親水性樹脂系バインダーは、エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。前記エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂の分子側鎖に親水性のカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩、ヒドロキシル基を含有してもよく、または主鎖に非イオン型親水性セグメントを含有する。
【0031】
前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合して1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製し、前記溶液を前記透水性支持体1に塗布するまたは吹き付けることで、前記透水性支持体1の表面の有機性材料層3に前記有機質濾過膜2が被覆されるように前記有機質濾過膜2を形成してもよいし、または有機性材料層3の表面に有機質濾過膜を直接に貼り付けることで前記有機質濾過膜2を形成してもよい。
【0032】
ここで、前記有機溶剤は、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ホルムアミド、エチレングリコールまたは2−フェノキシエタノールであってもよい。
【0033】
また、前記透水性支持体は骨材と前記骨材を覆うバインダーを含む。前記骨材は、石英砂(珪砂)、セラミックまたはガラスビーズであってもよい。
【0034】
さらに、前記バインダーは有機系バインダーであってもよく、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面に前記有機性材料層を形成する。または前記バインダーは無機系バインダーであってもよく、前記透水性支持体の表面に有機性材料が直接に塗布されて、または吹き付けられて前記有機性材料層を形成する;または前記透水性支持体が2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層のバインダーが有機系バインダーであってもよく、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する。ここで、骨材が有機系バインダーで覆われ、有機系バインダーにより形成された有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布すると、前記透水性支持体の強度が大きく向上する。
【0035】
図2は本発明の一実施形態に係る濾過素子を示す略図である。図3は図2に示される濾過素子の内部形状を示す略図である。図2および図3に示すように、透水性支持体は長方体形状または立方体形状であり、前記透水性支持体1はチャンバーを有し、前記チャンバー内に透水性支持体の強度を向上するための支持点4を設けて、前記透水性支持体1に出水口5を有し、前記チャンバーが前記出水口と連通する。透水性支持体の表面に有機性材料層3を有し、前記有機質濾過膜2は前記有機性材料層3の表面を覆い、廃水を濾過する。そして、廃水は濾過素子のチャンバーに入る前に有機質濾過膜2及び透水性支持体1を通過してその結果、濾過素子のチャンバー内に浄水が得られる。廃水中の種々な不純物、汚濁物は濾過素子の有機質濾過膜2により阻止され、さらにチャンバー内の浄水は出水口5より出てもよい。
【0036】
また、図4および図5に示すように、透水性支持体1は複数のチャンバーを有してもよい。前記チャンバーは柱状体形状であり、前記透水性支持体に沿って平行に配列され、透水性支持体の強度を向上するために隣接する2つのチャンバーの間に隔壁を設けられ、さらに隔壁の存在により濾過素子の強度を効果的に向上できる。ここで、各チャンバーに対応する位置に出水口をそれぞれに設ける;または複数のチャンバーが相互に連通し、共同で前記出水口と連通する。例えば複数チャンバー端面の側壁に集水空間(図示せず)を設けて、前記複数チャンバーが前記集水空間で相互に連通する;または前記隣接するチャンバー間にある隔壁に穴(図示せず)を設けて、前記穴により前記複数チャンバーを相互に連通する。あるいは、前記透水性支持体は、図5に示すように、長方体形状または立方体形状であってもよく、または前記透水性支持体は、図4に示すように、波型構造を有し、その波型構造の片側の谷部が、当該片側に対面するもう一方側の対応する山部と繋がって、複数のチャンバーを画成し、複数チャンバー間の隔壁を構成する。さらに、波型構造の反対部位の谷部が対応する山部と繋がることにより、透水性支持体の強度が向上し、このようにして、図3に示される支持点としての役目をはたし、透水性支持体の強度がより向上し、よって、濾過素子の性能がより改善される。
【0037】
また、上記の図面は本発明の濾過素子の実施形態に過ぎず、本発明の濾過素子は上記の特定の形状に限定されない。透水性支持体は、上記の形状に加えて、様々な外観の要求を満足するように、球体、楕円球体などの他の形状でもよい。
【0038】
本発明の濾過素子の製造方法は、石英砂(珪砂)、セラミックまたはガラスビーズからバインダーの助けを受けて透水性支持体1を形成する工程、透水性支持体1の表面に有機性材料層3を形成する工程を含む。有機性材料層の形成工程において、有機系バインダーを用いる場合には、前記有機系バインダーが前記透水性支持体の表面に前記有機性材料層を形成する;または無機系バインダーを用いる場合には、有機性材料を前記透水性支持体の表面上に塗布、吹き付けまたはロール塗布して、前記有機性材料層を形成する;または前記透水性支持体を2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層のバインダーが有機系バインダーであり、前記有機系バインダーが前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する。さらに、塗布、吹き付け、ロール塗布または直接貼り付けにより、有機性材料層の上に有機質濾過膜材料が被覆される工程を含んでも良い。より具体的には、有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布、吹き付けまたはロール塗布して、有機性材料層の表面に有機質濾過膜を形成することができる。または有機性材料層の表面に有機質濾過膜を貼り付けて、有機質濾過膜と有機性材料層とを結合させることができ、かつ有機質濾過膜の孔径が0.0015μm〜20μmである。有機系バインダーで覆われた骨材を使用し、かつ有機系バインダーからなる有機性材料層の表面に有機質濾過膜を形成する場合に、前記透水性支持体の強度が大きく向上する。
【0039】
また、有機性材料としては有機系バインダーが好ましく、前記有機系バインダーは好ましくは親水性樹脂系バインダーである。前記親水性系樹脂バインダーとしては、エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。前記エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂の分子側鎖に親水性のカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩、ヒドロキシル基を含有する、または主鎖に非イオン型親水性セグメントを含有する。さらに、前記有機質濾過膜材料が親水性材料である。前記親水材料は、ヒドロキシ基、ラクタム基およびスルホン基などの親水基を含有することができる。より具体的には、前記有機質濾過膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテート、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種とすることができる。かつ前記有機質濾過膜2の孔径が0.0015μm〜20μmの範囲である。ここで、有機性材料層3の表面に有機質濾過膜材料をコーティングする工程は、前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合し、1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製する工程、および前記膜溶液を前記透水性支持体1に塗布、吹き付けまたはロール塗布して、透水性支持体1表面の有機性材料層3を有機質濾過膜2で覆う工程を含む。ここで、前記有機溶剤は、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、エチレングリコールまたは2−フェノキシエタノールである。
【0040】
さらに、下記の工程を含んでもよい:前記透水性支持体の内部にチャンバーが形成され、前記チャンバー内に透水性支持体1の強度を向上するための支持点4が形成され、かつ前記透水性支持体1上に出水口5が設置され、前記チャンバーが前記出水口と連通する。ここで、前記透水性支持体1の表面に有機性材料を直接に塗布、吹き付けまたはロール塗布して有機性材料層3を形成し、かつ有機性材料層3の表面に前記有機質濾過膜2を形成する。
【0041】
透水性支持体は図4および図5に示されるようなその他の形状であってもよい。前記透水性支持体1内の前記チャンバーは複数であってもよく、前記チャンバーが柱状体形状であり、かつ前記透水性支持体に沿って平行に配列され、かつ透水性支持体の強度を向上するために隣接する2つのチャンバーの間に隔壁を設けてもよい。ここに、各チャンバーに対応する位置に出水口をそれぞれ設ける、または複数チャンバーが相互に連通し、かつ共同で前記出水口と連通する。例えば複数チャンバーの端面の側壁に集水空間を設けて、前記複数のチャンバーが前記集水空間にて相互に連通する、または隣接するチャンバーの間の隔壁に穴を形成し、前記穴により複数チャンバーを相互に連通する。ここで、前記透水性支持体は図5に示されるような長方体形状または立方体形状であってもよい。または前記透水性支持体は図4に示されるような波型構造を有し、前記波型形状の対面する谷部と山部はそれぞれ繋がり、複数チャンバーを画成し、複数チャンバー間の隔壁を構成する。
【0042】
さらに、本発明の濾過素子は、種々の水処理装置(例えば、湖沼、河川、都市用水、農業用水用の水処理装置、水浄化装置又はシステム)の濾過装置に用いてもよい。すなわち、前記水処理装置の濾過装置は本発明の濾過素子を一つまたは複数含むことができ、本発明の濾過素子の助けを受けて廃水処理、廃水の再生および水浄化処理を行う。本発明の濾過素子を利用は、本発明の請求項の保護範囲に含まれる。
【0043】
本発明はその他の様々な実施形態も含んでよく、当業者であれば本発明に基づいて各種の改変および変形を行いうるが、しかし、これらの改変および変形は本発明の請求項の保護範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の濾過素子において、透水性支持体は有機質濾過膜と結合して、透水性支持体の表面に有機性材料層が形成されることで、有機質濾過膜と有機性材料層との堅固な結合によって有機質濾過膜は透水性支持体の表面に被覆される。透水性支持体の強度が高く、有機質濾過膜と有機性材料層との結合が堅固であるので、現在の膜バイオリアクターに係る問題点、例えば、有機質膜の強度が低い、寿命が短い、従来の無機質セラミック膜の製造コストが高く、運転のエネルギー消費が激しく、費用が高いというといった問題点が解決、克服される。結果として、不可逆的膜ファウリングを効果的に低減し、膜バイオリアクターにおける有機質濾過膜は、天然の、安価なおよび環境に優しい材料を十分に利用できて、膜バイオリアクターの寿命を大きく延ばし、公知の最長寿命5〜10年よりもずっと長く、水処理、廃水処理および廃水再生回収分野において、膜バイオリアクターをより実用化、より普及化、より大型化することが可能である。
【0045】
従来のセラミック膜の価格(平方メートルあたりの4000〜10000人民元)と比べて、被覆鋳物砂板型膜の価格は安く、平方メートルあたりが約100〜300人民元であり、かつクロスフロー濾過を利用しないため、エネルギー消費量が低い。
本発明は、多くの利点を有し、例えば、透水度が高く、強度が高く、寿命が比較的長く、耐酸性、耐アルカリ性である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・透水性支持体、2・・・有機質濾過膜、3・・・有機性材料層、4・・・支持点、5・・・出水口、6・・・柱状体形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性支持体と有機質濾過膜とを含む濾過素子であって、
前記透水性支持体はその表面に有機性材料層を有し、
前記有機質濾過膜は前記有機性材料層の表面を被覆し、かつ前記有機性材料層と結合しており、
前記有機質濾過膜の孔径が0.0015μm〜20μmである、濾過素子。
【請求項2】
前記透水性支持体は骨材と前記骨材を被覆するバインダーとを含む、請求項1記載の濾過素子。
【請求項3】
前記透水性支持体の骨材は、石英砂(珪砂)、セラミック又はガラスビーズである、請求項2記載の濾過素子。
【請求項4】
前記バインダーが有機系バインダーであり、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する;または
前記バインダーが無機系バインダーであり、前記透水性支持体の表面上に有機性材料が塗布されて前記有機性材料層を形成する;または
前記透水性支持体が2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層のバインダーが有機系バインダーであり、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する、請求項2記載の濾過素子。
【請求項5】
前記有機質濾過膜の主成分は有機質濾過膜材料であり、前記有機質濾過膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテート、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1記載の濾過素子。
【請求項6】
前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合して1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製し、前記溶液を前記透水性支持体に塗布することで、前記有機性材料層が形成される、請求項5記載の濾過素子。
【請求項7】
前記透水性支持体は、その内部にチャンバーを、その表面に出水口を有し、かつ
前記チャンバーが前記出水口と連通する、請求項1記載の濾過素子。
【請求項8】
前記チャンバーの数が1つであり、かつ
前記透水性支持体の強度を向上するために前記チャンバー内に支持点が設けられている、請求項7記載の濾過素子。
【請求項9】
前記チャンバーの数が複数であり、
前記チャンバーが柱状体形状であり、前記透水性支持体に沿って平行に配列され、
前記透水性支持体の強度を向上するために隣接する2つのチャンバーの間の各々に隔壁を設けられており、かつ
各チャンバーに対応する位置に出水口をそれぞれに設ける、または前記複数のチャンバーが相互に連通し、共同で前記出水口と連通する、請求項7記載の濾過素子。
【請求項10】
前記透水性支持体は複数のチャンバーの端面に対応する側壁に集水空間を有しており、かつ前記複数のチャンバーは前記集水空間において相互に連通する;または
前記隣接するチャンバーの間にある隔壁に空洞を有し、前記空洞により前記複数のチャンバーが相互に連通する、請求項9記載の濾過素子。
【請求項11】
前記透水性支持体が、長方体形状または立方体形状である請求項7〜10のいずれか一項記載の濾過素子。
【請求項12】
前記透水性支持体は、波型構造を有しており、その波型構造の片側の谷部が、当該片側に対面するもう一方側の対応する山部と繋がって、前記複数のチャンバーが画成される、請求項7〜10のいずれか一項記載の濾過素子。
【請求項13】
前記有機性材料層が有機系バインダー層であり、前記有機系バインダーは親水性樹脂系バインダーであり、前記親水性樹脂系バインダーは、エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂の分子側鎖に親水性のカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩、ヒドロキシル基を含有する、または主鎖に非イオン型親水性セグメントを含有する請求項1〜10のいずれか一項記載の濾過素子。
【請求項14】
前記有機質濾過膜材料は、親水性基を有し、前記親水性基は、ヒドロキシ基、ラクタム基またはスルホン基である請求項5または請求項6記載の濾過素子。
【請求項15】
前記有機溶剤は、ジメチルアセトアミド、ホルムアミド、エチレングリコールまたはエチレングリコールフェニルエーテルである、請求項6記載の濾過素子。
【請求項16】
透水性支持体の表面に有機性材料層を形成する工程;および、
前記有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布するまたは吹き付けることより有機性材料層の表面に有機質濾過膜を形成する、または有機性材料層の表面に有機質濾過膜を貼付する工程
を含む濾過素子の製造方法であって、前記有機質濾過膜の孔径が0.0015μm〜20μmであることを特徴とする濾過素子の製造方法。
【請求項17】
前記透水性支持体は骨材と前記骨材を被覆するバインダーとを含む、請求項16記載の濾過素子の製造方法。
【請求項18】
前記透水性支持体の骨材は、石英砂(珪砂)、セラミック又はガラスビーズである、請求項17記載の濾過素子の製造方法。
【請求項19】
前記バインダーが有機系バインダーであり、前記有機系バインダーが前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する;または
前記バインダーが無機系バインダーであり、前記透水性支持体の表面上に有機性材料が塗布されて、前記有機性材料層を形成する;または
前記透水性支持体が2層構造を有し、その内の一層のバインダーが無機系バインダーであり、もう一層のバインダーが有機系バインダーであり、前記有機系バインダーは前記透水性支持体の表面上に前記有機性材料層を形成する、請求項17記載の濾過素子の製造方法。
【請求項20】
前記有機性材料層の表面に有機質濾過膜材料を塗布するまたは吹き付ける工程の前に、前記有機質濾過膜材料を有機溶剤と混合して1〜10%の有機質濾過膜溶液を調製する工程をさらに含む、請求項16記載の濾過素子の製造方法。
【請求項21】
前記透水性支持体が、その内部にチャンバーを、その表面に出水口を有し、前記チャンバーが前記出水口と連通する、請求項16〜20のいずれか一項記載の濾過素子の製造方法。
【請求項22】
前記有機性材料層が有機系バインダー層であり、前記有機系バインダーは親水性樹脂系バインダーであり、前記親水性樹脂系バインダーは、エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記エポキシ樹脂、ポリウレタンとポリアクリル酸樹脂の分子側鎖に親水性のカルボン酸塩、スルホン酸塩、アンモニウム塩、ヒドロキシル基を含有する、または主鎖に非イオン型親水性セグメントを含有する、請求項16〜20のいずれか一項記載の濾過素子の製造方法。
【請求項23】
前記有機質濾過膜材料は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテート、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項16〜20のいずれか一項記載の濾過素子の製造方法。
【請求項24】
濾過装置を含む水処理装置であって、前記濾過装置が請求項1〜10のいずれか一項記載の濾過素子を含む、水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509756(P2012−509756A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536725(P2011−536725)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001275
【国際公開番号】WO2010/060269
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(509088192)北京仁▲創▼科技集▲団▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】