説明

濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法

【課題】濾過性能を向上させることのできる濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法を得る。
【解決手段】濾過装置1は原水を通過させて濾過する濾過膜材2、3を備えている。そして、この濾過膜材2、3の膜表面2a、3aを帯電手段5によって帯電させることで、濾過膜材2、3を通過させて原水を濾過する際に、原水中の汚れ成分とともにイオン成分を除去できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濾過装置として、濾過膜を挟んで陽極と陰極とを配置し、これら陽極および陰極に電圧を印加して濾過膜表面の付着物を電気化学的に除去することにより、濾過膜の再生を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−18436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の濾過装置では、濾過膜の再生はできるが、濾過する際に原水中のイオン成分を除去することができなかった。すなわち、従来の濾過装置では、濾過性能を高めることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、濾過性能を向上させることのできる濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、原水を通過させて濾過する濾過膜材を備える濾過装置であって、前記濾過膜材の膜表面を帯電させる帯電手段を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の濾過装置において、前記濾過膜材は袋状に形成されるとともに、当該濾過膜材の内側に透過水側スペーサが配置されており、前記透過水側スペーサが、導電性材料でメッシュ状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項1または請求項2に記載の濾過装置において、前記濾過膜材は、導電性の機能を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明にあっては、請求項2または請求項3に記載の濾過装置において、前記濾過装置は、前記濾過膜材の内側に前記透過水側スペーサを配置するとともに当該濾過膜材の外側に前記給水側スペーサを配置し、袋状となった濾過膜材の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けることで形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明にあっては、水処理装置が、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の濾過装置を用いていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明にあっては、請求項5に記載の水処理装置において、前記濾過装置の外側を水密に覆うハウジングを有し、当該ハウジングに、前記濾過装置に原水を供給する原水流入口と、濾過装置で濾過された浄水を吐出する浄水吐出口と、これら原水流入口と浄水吐出口とを水密に仕切るシール部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明にあっては、請求項6に記載の水処理装置の制御方法であって、前記水処理装置は、ハウジング内に原水を供給する供給ポンプと、前記ハウジングの原水流入口を開閉する第1の開閉弁と、前記ハウジング内の水を排出する排水用の第2の開閉弁と、を備え、前記ハウジングが、当該ハウジングの浄水吐出口側が上方となるように配置されており、前記水処理装置の濾過運転時には、前記第1の開閉弁を開、第2の開閉弁を閉とするとともに、前記濾過膜材の膜表面をプラスもしくはマイナスに帯電させる一方、洗浄運転時には、原水の供給ポンプを停止するとともに、第1の開閉弁を閉とし、濾過膜材の膜表面を濾過運転時とは逆に帯電させ、その後、第2の開閉弁を開とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、帯電手段によって濾過膜材の膜表面を帯電させることができるため、濾過膜材を通過させて原水を濾過する際に、原水中のイオン成分を除去することができるようになる。すなわち、請求項1の発明によれば、濾過性能を向上させることのできる濾過装置を得ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、濾過膜材を袋状に形成するとともに、当該濾過膜材の内側にメッシュ状の透過水側スペーサを配置することで、濾過膜材を通過して濾過された浄水が濾過膜材の内側を容易に移動することができるようになる。すなわち、濾過膜材の内側全体に浄水を行き渡らせることが可能となる。ここで、透過水側スペーサを導電性材料で形成し、当該透過水側スペーサを通電させれば、濾過膜材全体を浄水を介して通電させることができる。このように、請求項2の発明によれば、濾過膜材のほぼ全面を帯電させることができ、濾過性能をより一層向上させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、濾過膜材が導電性の機能を有するので、濾過膜材の膜表面をより確実に帯電させることができるようになり、濾過性能のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、濾過装置を、濾過膜材の内側に透過水側スペーサを配置するとともに当該濾過膜材の外側に給水側スペーサを配置し、袋状となった濾過膜材の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けることで形成したため、濾過膜材の有効濾過面積を減少させることなく濾過装置を小型化することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、水処理装置が、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の濾過装置を用いているため、濾過性能を向上させることのできる水処理装置を得ることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、濾過装置の外側を、原水流入口および浄水吐出口を有するハウジングで覆うようにしたため、濾過装置をカートリッジとして用いることが可能となり、濾過装置の交換を容易に行うことができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、濾過運転時には、原水流入口を開閉する第1の開閉弁を開、ハウジング内の水を排出する排水用の第2の開閉弁を閉とし、濾過膜材の膜表面をプラスもしくはマイナスに帯電させておくことにより、原水中の汚れ成分とともにイオンを除去して浄水化し、その浄水を浄水吐出口から吐出させることができる。一方、洗浄運転時には、原水の供給ポンプを停止するとともに、第1の開閉弁を閉とし、濾過膜材の膜表面を濾過運転時とは逆に帯電させることで、濾過膜材に付着したイオン成分を電気化学的に分離させることができる。その後、第2の開閉弁を開とすると、ハウジングを浄水吐出口側が上方となるように配置しているため、ハウジング内の水が、水頭圧によって第2の開閉弁を介して排水される。このとき、濾過膜材に付着している汚れ成分とともに濾過膜材から分離したイオン成分も第2の開閉弁を介して排水されることとなる。このように、請求項7の発明によれば、濾過装置の洗浄を効率良く行うことができ、濾過膜材の再生効率を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる濾過装置の濾過膜材を展開した状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる濾過装置のの一部を破断して展開した斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる濾過装置の要部の組み立て手順を(a)〜(c)に順を追って示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる濾過装置を用いて構成した水処理装置を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示す水処理装置の濾過運転時を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、図4に示す水処理装置の洗浄運転時を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本実施形態にかかる濾過装置1は、図1に示すように、周縁部2E、3Eを接合して袋状に形成される濾過膜シート(濾過膜材)2、3と、それら濾過膜シート2、3の対向面間(袋状の濾過膜シートの内側)に、これら濾過膜シート2、3のほぼ全面に亘って挟み込まれるように配置されて、通水機能を有する導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)4と、この導電性メッシュシート4を通じて濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aを帯電させる電圧印加部(帯電手段)5と、を備えている。
【0023】
濾過膜シート2、3は、濾過機能を有する膜素材で形成されており、原水を袋状に形成された濾過膜シート2、3の外方から内方に通過させることで、原水が濾過されるようになっている。なお、本実施形態では、濾過膜シート2、3間に導電性メッシュシート4を挟み込んだ構成体を膜リーフ6と称する。
【0024】
濾過膜シート2、3は、濾過機能を有する膜素材を所望の大きさに裁断することで形成されており、膜リーフ6は、それら濾過膜シート2、3間に導電性メッシュシート4を挟み込んだ状態で、周縁部2E、3Eを接着剤や縫製もしくは熱融着などにより接合することで形成されている。したがって、導電性メッシュシート4は、濾過膜シート2、3よりも接合代分だけ小さく形成されている。
【0025】
導電性メッシュシート4としては、繊維状活性炭、金属ワイヤー、導電性樹脂ワイヤーなどの導電性材料をメッシュ状に編成することで形成されたものを用いることができる。このように、メッシュ状の導電性メッシュシート4を用いることで、袋状に形成された濾過膜シート2、3を通過して内方に流入した水は、導電性メッシュシート4を伝って濾過膜シート2、3内を容易に移動できるようにしている。
【0026】
電圧印加部5は、プラスとマイナスとの切り替え機能(図示省略)を有する電源51を備えており、後述するように、濾過装置1の原水供給口10a側と浄水吐出口7c側との間に電位差を生じさせることで、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aを帯電させるようにしている。このとき、膜表面2a、3aをプラスに帯電させた場合には、濾過膜シート2、3を通過させて原水を濾過する際に、膜表面2a、3aによって原水中のプラスイオン成分を反発させることができ、原水中のプラスイオン成分が濾過膜シート2、3を透過してしまうのが抑制されるとともに、膜表面2a、3aにマイナスイオン成分を付着させることで原水中のマイナスイオン成分を除去することが可能となる。逆に、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをマイナスに帯電させた場合には、原水中のマイナスイオンを反発させるとともにプラスイオン成分を付着させることが可能となる。
【0027】
このように、濾過膜シート2、3間に導電性メッシュシート4を挟み込んで膜リーフ6を構成した濾過装置1は、図1に示すように、膜リーフ6の一辺(開放側端部6a)に濾過膜シート2、3を接合させずに開放した開口6bが形成されており、膜リーフ6は、開口6bが中空の集水管7の内部と連通するように集水管7に取り付けられている。開口6bと集水管7との詳細な接続構造は後述するが、集水管7にはスリットまたは透孔などの開口部(本実施形態では透孔)71が形成されており、開口部71と開口6bとが水密に連通されている。そして、膜リーフ6内の浄水は、開口6bおよび開口部71を介して集水管7に流入して集められ、集水管7を伝って濾過装置1の外方に供給されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、濾過装置1は、膜リーフ6を集水管7に巻回することで略円柱状に形成されている。具体的には、袋状に形成した複数の膜リーフ6を集水管7に接着固定し、複数の膜リーフ6の互いに隣り合う膜リーフ6の間にメッシュ状の給水側スペーサ8をそれぞれ配置し、給水側スペーサ8が外側に配置された状態で膜リーフ6を集水管7に巻き付けるとともに、全体の最外周を防水性の膜9によって水密に被覆することで、濾過装置1を略円柱状に形成している。
【0029】
ここで、図3に基づいて、膜リーフ6の製造方法の概略を説明する。図3(a)〜(c)は、膜リーフ6、導電性メッシュシート4および給水側スペーサ8を集水管7の周りに巻き付ける工程を示している。
【0030】
まず、図3(a)に示すように、帯状に形成した2枚の濾過膜シート2、3の間に導電性メッシュシート4を挟んだ状態で、2枚の濾過膜シート2、3の集水管7側を除いた3辺の周縁部2E、3Eどうしを接着剤Bで袋状に貼り合わせ、図3(b)に示すように、2枚の濾過膜シート2、3および導電性メッシュシート4をプレスする。このようにして膜リーフ6を形成する。このとき、絶縁性確保のため、導電性メッシュシート4を濾過膜シート2,3の寸法よりも僅かに小さくし、導電性メッシュシート4が膜リーフ6の端部からはみ出さないようにするのが望ましい。
【0031】
一方、図3(a)に示すように、集水管7の外周には、袋状に形成した膜リーフ6の開口6bを集水管7の内部に連痛する開口部(透孔)71を集水管7の軸方向に形成しておく。そして、図3(b)に示すように、プレスした膜リーフ6の開口6bが集水管7の開口部(透孔)71を覆うように、膜リーフ6の開放側端部6aを接着する。なお、集水管7に開口部としてのスリットを軸方向に形成し、当該スリット内に膜リーフ6の開放側端部6aを嵌め込んで接着するようにしてもよい。
【0032】
そして、図3(c)に示すように、袋状となった膜リーフ6の外側に給水側スペーサ8を添えて、これらを集水管7の周りに巻き付ける。その後、上述した防水性の膜9(図2参照)で最外周を水密に被覆する。なお、図3では、1組の膜リーフ6および給水側スペーサ8を示したが、図2に示すように、それらを複数組設けて巻き付けるようにしてもよい。
【0033】
このように、膜リーフ6および給水側スペーサ8を巻回して防水性の膜9で被覆することで、濾過装置1は、図2に示すように、全体として集水管7を中心とする略円柱状に形成される。
【0034】
そして、集水管7の一端(図2中手前側)には、原水供給口10aを形成した第1の蓋体10が取り付けられるとともに、他端(図1中奥側)には、第2の蓋体11が取り付けられる。
【0035】
第1の蓋体10は、中心部に集水管7の一端を閉塞する閉塞部10bが形成されるとともに、原水供給口10aが閉塞部10bを中心として放射状に形成されている。このように、原水供給口10aを放射状に形成することで、給水側スペーサ8の一端側の全周が原水供給口10aに連通されるようにしている。
【0036】
第2の蓋体11は、中心部に集水管7の他端(浄水吐出口7c)に挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0037】
また、第1の蓋体10の外周には、濾過装置1の一端側と後述するハウジング21との間を水密に密閉するシールリング(シール部)12が嵌着されるとともに、第2の蓋体11の外周には、濾過装置1の他端側と上記ハウジング21との間を水密に密閉するシールリング(シール部)13が嵌着されている。
【0038】
かかる構成とした濾過装置1の機能は、以下のとおりである。
【0039】
まず、原水が原水供給口10aから導入されると、当該原水は一定の圧力をもって給水側スペーサ8の一端側全周に供給された後、給水側スペーサ8を伝って他端方向へと移動する。この給水側スペーサ8を伝って原水が移動する間に、原水中の不純物を除く水が濾過膜シート2、3を透過する。すると、濾過膜シート2、3を透過した透過水(浄水)は袋状となった濾過膜シート2、3内の導電性メッシュシート4を伝って集水管7内に集められ、集水管7の内側を移動して浄水吐出口7cから吐出される。なお、導電性メッシュシート4および給水側スペーサ8は、巻回された濾過膜シート2、3間に隙間を形成して流路を確保するために設けるものである。
【0040】
次に、かかる構成の濾過装置を用いた水処理装置について説明する。
【0041】
図4は、上述した濾過装置1を用いた水処理装置20を示しており、この水処理装置は、図2に示す濾過装置1の外側を、両端を第1の端板21aおよび第2の端板21bで閉止した筒状のハウジング21で水密に覆うことで形成されている。なお、図4は便宜上模式的に水処理装置を示した図であり、図2に示す濾過装置1とは細部において構成が異なる部分が存在するが、それぞれ同一符号で示す部材は同様の機能を備えるものである。
【0042】
ハウジング21は、絶縁材料で形成されており、濾過装置1に原水を供給する原水流入口22と、濾過装置1で濾過された浄水を吐出する浄水吐出口23と、を備えている。そして、これら原水流入口22と浄水吐出口23とが上述したシールリング12、13によって水密に仕切られている。
【0043】
本実施形態では、原水流入口22が第1の端板21aの中心部に設けられるとともに、浄水吐出口23が第2の端板21bの中心部に設けられており、原水流入口22および浄水吐出口23は、各端板21a、21bからそれぞれ筒状に突出して形成されている。このとき、集水管7の他端部7bが、浄水吐出口23の内周にOリング24を介して水密に嵌合されている。
【0044】
したがって、本実施形態にかかる水処理装置20は、原水流入口22からハウジング21内に導入された原水が、濾過装置1で濾過されて浄水となって集水管7に集められたのち、その集水管7を伝って浄水吐出口23から外部に吐出される。この浄水吐出口23は蛇口等に接続されており、この蛇口等を介して浄水が供給されるようになっている。
【0045】
ここで、本実施形態では、図4に示すように、前述した電圧印加部5は、一方の電極が原水流入口22に設けられた一次側通電部52に接続されるとともに、他方の電極が浄水吐出口23に設けられた二次側通電部53に接続されている。このとき、一次側通電部52および二次側通電部53に印加する電極を図示せぬ切り替え機能により入れ替えることで、濾過膜シート2、3に帯電される電荷のプラス、マイナスを変えることができる。
【0046】
このように、一次側通電部52および二次側通電部53に電圧を印加することで、ハウジング21内の水を導電体として、導電性メッシュシート4およびハウジング21内の水を介して濾過膜シート2、3が導通され、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aを帯電させることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、一次側通電部52に電圧のプラス側が印加され、二次側通電部53に電圧のマイナス側が印加されるようになっており、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをマイナスに帯電させている。このように、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをマイナスに帯電させることで、原水中の硝酸イオンやフッ素イオンなどの陰イオン成分を反発させることができ、原水中のマイナスイオン成分が濾過膜シート2、3を透過してしまうのを抑制することができる。また、膜表面2a、3aに重金属イオンなどのプラスイオン成分を付着させることで原水中のプラスイオン成分を除去することが可能となる。
【0048】
このとき、印可する電圧値を可変制御できるようにするのが好適である。このように、印可する電圧値を変えることで、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aの帯電強度を変えることができ、原水中のイオン成分の除去率を変動させることができるようになる。すなわち、濾過膜シート2、3を通過する際に除去するイオン成分の量を所望の値とすることができるようになる。
【0049】
このように、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aを帯電させることで、UF膜やMF膜のように、本来水中のイオン成分を除去できない素材で濾過膜シート2、3を形成した場合であっても、水中のイオン成分の除去が可能となる。その結果、濾過膜シート2、3の材料の選択幅が広がることになり、特殊な材料を用いて濾過膜シートを形成する必要がなくなり、安価な濾過装置1を得ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、水処理装置20は、ハウジング21の浄水吐出口23側が上方となるように、当該ハウジング21を配置している。
【0051】
また、水処理装置20は、ハウジング21内に原水を供給する供給ポンプ27と、ハウジング21の原水流入口22を開閉する第1の開閉弁25と、ハウジング21内の水を排出する排水用の第2の開閉弁26と、を備えている。本実施形態では、第2の開閉弁26は、ハウジング21の原水流入口22側の端部に接続されている。なお、第1および第2の開閉弁25、26としては、逆止弁や電動弁などを用いることができる。
【0052】
次に、この水処理装置20の制御方法について説明する。
【0053】
まず、水処理装置20は、濾過運転時には、図5に示すように、供給ポンプ27を始動させ、第1の開閉弁25を開、第2の開閉弁26を閉とし、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをマイナスに帯電させておく。こうすることで、供給ポンプ27を介して原水流入口22からハウジング21内に原水が供給され、ハウジング21内に装着された濾過装置1を通過して濾過された浄水をハウジング21の浄水吐出口23から吐出させることができる。このとき、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをマイナスに帯電させているため、原水中の汚れ成分とともにイオン成分を除去して浄水化することができ、その浄水を浄水吐出口23を介して供給することができる。
【0054】
一方、水処理装置20の洗浄運転時には、図6に示すように、原水の供給ポンプ27を停止するとともに、第1の開閉弁25を閉とし、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aを逆(この場合、プラス)に帯電させ、一定時間経過後、第2の開閉弁26を開とする。
【0055】
このとき、水処理装置20は、ハウジング21を浄水吐出口23側が上方となるように配置しているため、ハウジング21内の水が、水頭圧によって第2の開閉弁26を介して排水される。このとき、濾過膜シート2、3の膜表面2a、3aをプラスに帯電させているため、濾過膜シート2、3に付着しているプラスイオン成分を、濾過膜シート2、3から分離させることができる。そのため、濾過膜シート2、3に付着している汚れ成分とともに濾過膜シート2、3から分離したイオン成分も第2の開閉弁26を介して排水されることとなる。
【0056】
このように、水処理装置20を定期的に洗浄運転させることで、使用継続により目詰まりを起こして濾過機能が低下した膜リーフ6を洗浄して濾過膜シート2、3を再生することができ、濾過装置1の寿命を延ばすことができる。
【0057】
なお、図5および図6は、洗浄運転が可能な水処理装置20を模式的に示したものであり、第1の開閉弁25および第2の開閉弁26は、実際には、配管を介してハウジング21に接続されている。
【0058】
また、タイマーを用いて一定時間経過する度に洗浄運転を開始するように水処理装置20を制御することができる。なお、これ以外にも、原水の供給側の圧力を検知したり、浄水の濁りや導電率若しくは流量などの汚染度を検知できる手段を用いて洗浄運転を開始するように水処理装置20を制御することも可能である。
【0059】
以上の本実施形態によれば、電圧印加部(帯電手段)5によって濾過膜シート(濾過膜材)2、3の膜表面2a、3aを帯電させることができるため、濾過膜シート(濾過膜材)2、3を通過させて原水を濾過する際に、原水中のイオン成分を除去することができるようになる。すなわち、本実施形態によれば、濾過性能を向上させることのできる濾過装置1を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、濾過膜シート(濾過膜材)2、3を袋状に形成するとともに、当該濾過膜シート(濾過膜材)2、3の内側にメッシュ状の導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)4を配置することで、濾過膜シート(濾過膜材)2、3を通過して濾過された浄水が濾過膜シート(濾過膜材)2、3の内側を容易に移動することができるようになる。すなわち、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の内側全体に浄水を行き渡らせることが可能となる。ここで、本実施形態によれば、導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)4を導電性材料で形成しているため、当該導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)4を通電させれば、濾過膜シート(濾過膜材)2、3を浄水を介して通電させることができる。このように、本実施形態によれば、濾過膜シート(濾過膜材)2、3のほぼ全面を帯電させることができ、濾過装置1の濾過性能をより一層向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、濾過装置1を、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の内側に導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)4を配置するとともに当該濾過膜シート(濾過膜材)2、3の外側に給水側スペーサ8を配置し、袋状となった濾過膜シート(濾過膜材)2、3の開放側端部6aを集水管7の内部と連通するように固定した状態で当該集水管7の周りに巻き付けることで形成したため、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の有効濾過面積を減少させることなく濾過装置1を小型化することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、濾過装置1を用いて水処理装置20を形成することで、濾過性能を向上させることのできる水処理装置20を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、濾過装置1の外側を、原水流入口22および浄水吐出口23を有するハウジング21で覆うようにしたため、濾過装置1をカートリッジとして用いることが可能となり、濾過装置1の交換を容易に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、水処理装置20は、濾過運転時には、原水流入口22を開閉する第1の開閉弁25を開、ハウジング21内の水を排出する排水用の第2の開閉弁26を閉とし、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の膜表面2a、3aをマイナス(プラスもしくはマイナスのうちの一方)に帯電させておく。こうすれば、原水中のマイナスイオンを反発させて濾過膜シート(濾過膜材)2、3を通過するのを抑制するとともに、プラスイオンを濾過膜シート(濾過膜材)2、3に付着させることで原水中のイオン成分を除去することができる。そして、原水中の汚れ成分とともにイオン成分を除去して浄化した浄水を浄水吐出口23から吐出させることができるようになる。
【0065】
一方、水処理装置20は、洗浄運転時には、原水の供給ポンプ27を停止するとともに、第1の開閉弁25を閉とし、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の膜表面2a、3aをプラス(濾過運転時とは逆)に帯電させることで、濾過膜シート(濾過膜材)2、3に付着したプラスイオン成分を電気化学的に分離させることができる。その後、第2の開閉弁26を開とすると、本実施形態では、ハウジング21を浄水吐出口23側が上方となるように配置しているため、ハウジング21内の水が、水頭圧によって第2の開閉弁26を介して排水される。このとき、濾過膜シート(濾過膜材)2、3に付着している汚れ成分とともに濾過膜シート(濾過膜材)2、3から分離したプラスイオン成分も第2の開閉弁26を介して排水されることとなる。このように、本実施形態によれば、濾過装置1の洗浄を効率良く行うことができ、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の再生効率を高めることができるようになる。このように、水処理装置20を定期的に洗浄運転させることで、濾過膜シート2、3を再生することができ、濾過装置1の寿命を延ばすことができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、袋状の濾過膜シート2、3内に導電性メッシュシート4を配置し、その濾過膜シート2、3を帯電させる電圧印加部(帯電手段)5を設けることで濾過装置1を形成しているため、濾過装置1を比較的簡素な構成とすることができ、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の再生を効率良く行いつつ、濾過装置1の小型化を図ることができるようになる。
【0067】
また、単純逆洗では濾過膜シート2、3の水が通過し易い部分しか洗浄できないが、本実施形態の洗浄方法によれば、濾過膜シート2、3の全面を効率良く洗浄することができるという利点もある。
【0068】
また、本実施形態によれば、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の洗浄を水頭圧を利用して行っているため、従来のように逆洗ポンプを用いた場合に比べて、濾過膜シート(濾過膜材)2、3の劣化や破損を抑制することができるようになる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、導電性メッシュシートを用いて濾過膜材の膜表面を帯電させるようにしたものを例示したが、これに限らず、カーボン、導電性樹脂あるいは金属粉末などの導電性材料を混入させた材料で濾過膜材を形成し、濾過膜材自体が通電機能を有するようにしてもよい。こうすれば、濾過膜材が導電性の機能を有するので、濾過膜材の膜表面をより確実に帯電させることができるようになり、濾過性能のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0071】
なお、濾過膜材自体を通電させる構造としては、この他に、濾過膜材の表面に導電性のワイヤーを張る構造、濾過膜材を導電性樹脂材料で形成した構造、濾過膜材を導電性樹脂でコーティングする構造、もしくは、濾過膜材を金属材料で形成する構造などがあげられる。また、濾過膜材自体が通電機能を有する場合、濾過膜材内部の透過水側スペーサを導電性としてもよいし、導電性としなくてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第1および第2の開閉弁をそれぞれ別個に設けたものを例示したが、第1および第2の開閉弁を兼ねる三方弁を用いるようにしてもよい。こうすれば、最小限の弁構成で済むため、低価格で故障の少ない水処理装置を得ることができる。
【0073】
また、濾過膜材や透過水側スペーサ、ハウジング、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 濾過装置
2、3 濾過膜シート(濾過膜材)
2a、3a 膜表面
4 導電性メッシュシート(透過水側スペーサ)
5 電圧印加部(帯電手段)
7 集水管
12 シールリング(シール部)
13 シールリング(シール部)
20 水処理装置
21 ハウジング
22 原水流入口
23 浄水吐出口
25 第1の開閉弁
26 第2の開閉弁
27 供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を通過させて濾過する濾過膜材を備える濾過装置であって、
前記濾過膜材の膜表面を帯電させる帯電手段を備えることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記濾過膜材は袋状に形成されるとともに、当該濾過膜材の内側に透過水側スペーサが配置されており、
前記透過水側スペーサが、導電性材料でメッシュ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過膜材は、導電性の機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過装置は、前記濾過膜材の内側に前記透過水側スペーサを配置するとともに当該濾過膜材の外側に前記給水側スペーサを配置し、袋状となった濾過膜材の開放側端部を集水管の内部と連通するように固定した状態で当該集水管の周りに巻き付けることで形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の濾過装置を用いたことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
前記濾過装置の外側を水密に覆うハウジングを有し、当該ハウジングに、前記濾過装置に原水を供給する原水流入口と、濾過装置で濾過された浄水を吐出する浄水吐出口と、これら原水流入口と浄水吐出口とを水密に仕切るシール部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置の制御方法であって、
前記水処理装置は、ハウジング内に原水を供給する供給ポンプと、前記ハウジングの原水流入口を開閉する第1の開閉弁と、前記ハウジング内の水を排出する排水用の第2の開閉弁と、を備え、
前記ハウジングが、当該ハウジングの浄水吐出口側が上方となるように配置されており、
前記水処理装置の濾過運転時には、前記第1の開閉弁を開、第2の開閉弁を閉とするとともに、前記濾過膜材の膜表面をプラスもしくはマイナスに帯電させる一方、洗浄運転時には、原水の供給ポンプを停止するとともに、第1の開閉弁を閉とし、濾過膜材の膜表面を濾過運転時とは逆に帯電させ、その後、第2の開閉弁を開とすることを特徴とする水処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−92805(P2011−92805A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246181(P2009−246181)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】