説明

濾過装置

【課題】本発明は、貯水室内に存する処理水の貯水量をコントロールすることができ、しかも単位時間当たりの処理水の取水量を単位時間当たりの原水の供給量以上に設定することも可能な新規な濾過装置を提供することを目的とする。
【解決手段】濾過装置本体Aと制御部Bとからなる濾過装置1であって、水量検知部10によって検知された貯水室3内に存する処理水の貯水量に応じて、制御部Bが、濾過装置本体Aにおける取水の実行/停止、処理水開閉弁71及び逆洗開閉弁91の各弁の開栓/閉栓を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過室の上部に貯水室を備え、この貯水室に蓄えた処理水によって濾過室内の濾材を逆洗する機能を備えた濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、濾過室の上部に貯水室を備え、この貯水室に蓄えた処理水によって濾材を逆洗する機能を備えた濾過装置(逆洗水自己保有型圧力濾過機)が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
図10に示す特許文献1に記載された濾過装置100においては、まず、原水用電動開閉弁161を開くことによって、原水取水管16を介して原水を濾過室14の上流部141に取水する。濾過室14の上流部141に取水された原水は、上流部141から下流部142に向けて濾材槽15を通過することによって濾過処理されて処理水となる。この処理水は、集水管18を介して貯水室13に輸送され、貯水室13において順次貯水される。
【0004】
処理水を供給するための処理水送水管17は、その一端(処理水の入り口側の開口端171)が、濾過装置100の壁面を通じて貯水室13内の上部において開放されている。これより、貯水室13内に存する処理水の水位が処理水送水管17の開口端171を超える位置に至るまで、処理水が貯水室13に貯水される。処理水送水管17の開口端171の位置を超えた分の処理水は、処理水送水管17の開口端171に流入し、処理水送水管17を介して濾過装置1外に自動的に供給される。
【0005】
又、特許文献1に記載された濾過装置100において濾材槽15を逆洗するにあたっては、原水用電動開閉弁161を閉じると共に逆洗用電動開閉弁191を開くことによって、貯水室13に貯水されていた処理水を濾過室14の下流部142に返送する。濾過室14の下流部142に返送された処理水は、下流部142から上流部141に向けて濾材槽15を通過することによって濾材槽15を逆洗する。逆洗に供された処理水は、逆洗水排水管19を介して排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000‐100794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、濾材を逆洗するためには、比較的大量の逆洗水を濾材の下部から上部に向かって一気に通過させる必要がある。
【0008】
この点につき、特許文献1に記載された濾過装置においては、処理水送水管の開口端を貯水室内の上部において開放させることによって、逆洗するに十分な量の処理水が常に貯水室に貯水されるようにしている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された濾過装置では、単位時間当たりの処理水の供給量を、単位時間当たりの原水の取水量以上に設定することができない。
【0010】
なぜなら、特許文献1に記載された濾過装置は、貯水室において貯水された処理水のうち、処理水送水管の開口端の位置を超えた分を、処理水送水管を介して濾過装置外に自動的に供給する構成であることから、貯水室に存する処理水の水位は、常に処理水送水管の開口端近辺にある。
【0011】
そのため、吸引ポンプなどを用いて強制的に処理水を供給すると、すぐに貯水室に存する処理水の水位が処理水送水管の開口端の位置より下がり、供給できなくなる。
【0012】
従って、特許文献1に記載された濾過装置において、単位時間当たりの処理水の供給量を増加させるためには、単位時間当たりの原水の取水量を多くする必要がある。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された濾過装置において、単位時間当たりの原水の取水量を多くすることによって単位時間当たりの処理水の供給量を増加させるにあたっては、濾過室及び貯水室の双方を密閉状態の圧力容器とする必要があり、剛性を確保するために素材の選択の幅が狭くなると共にコスト高となる。
【0014】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、濾過装置の上部に備えた貯水室内に存する処理水の貯水量をコントロールし、逆洗時において、十分な量の処理水によって濾材を逆洗することができる新規な濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の濾過装置は、中空の濾過槽と、濾過槽内を上部側の貯水室と下部側の濾過室とに区画する隔壁と、濾過室内を更に上部側の上部濾過室と下部側の下部濾過室に区画する濾材と、上部濾過室内に原水を取水するための原水取水管と、濾材を通過した処理水を下部濾過室から供給するための、処理水開閉弁を備えた処理水供給管と、下部濾過室の容量に対して過剰となった処理水を貯水室内に輸送する集水管と、濾過槽の壁面を通じて上部濾過室に連通すると共に上部濾過室内に向かって開口する、逆洗開閉弁を備えた逆洗水排水管と、貯水室内の貯水量を検知する水量検知部と、を具備する「濾過装置本体」に対し、水量検知部によって検知された水量に応じて、取水の実行/停止、処理水開閉弁及び逆洗開閉弁の開栓/閉栓を命令する「制御部」を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の濾過装置は、濾過装置本体において原水の取水が実行されると、原水が原水取水管を介して上部濾過室に導入され、重力によって濾材の上部から下部に向かって通過し、処理水となって下部濾過室に蓄えられる。
【0017】
なお、原水取水管を介して上部濾過室に原水を導入するための手段としては、通常ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。例えば、濾過装置本体より高所に配した貯水槽に原水を貯め、水頭圧を利用して原水取水管を介して上部濾過室に原水を導入しても良い。
【0018】
濾過装置本体において処理水開閉弁が開栓されると、下部濾過室から処理水供給管を介して処理水が供給される。
【0019】
ここで、処理水の単位時間当たりの供給量が原水の単位時間当たりの取水量より少ない場合(供給量がゼロの場合を含む)にあっては、下部濾過室の容量に対して過剰量となった処理水が、原水の供給圧によって、集水管を介して貯水室に輸送されて、貯水室内に貯水される。
【0020】
一方、処理水の単位時間当たりの供給量が原水の単位時間当たりの取水量を超える場合にあっては、貯水室に貯水された処理水が、貯水室に貯水された処理水の水位と集水管の他端の開口位置との間に生じる水頭圧によって、集水管を介して下部濾過室内に返送される。
【0021】
即ち、濾過装置本体は、下部濾過室に蓄えられた処理水に加えて、貯水室に貯水された処理水も供給できる構成としていることから、単位時間当たりの処理水の供給量が単位時間当たりの原水の取水量を超える場合にあっても、安定して処理水を供給することができる。
【0022】
なお、貯水室に貯水された処理水のうち、実質的に供給され得る処理水は、貯水室に貯水された処理水のうち、貯水室内に向かって開口する集水管の開口位置を超えて貯水された分(以下、実質的貯水分と称する。)になる。これより、本発明においては、貯水室内に向かって開口する集水管の開口位置につき、貯水室内のできるだけ下部に設定することによって、貯水室に貯水された処理水に対する実質的貯水分の割合を向上させることが好ましい。
【0023】
濾過装置本体における濾材の逆洗は、原水の取水を停止すると共に処理水開閉弁を閉栓した上で、逆洗開閉弁を開栓することによって行われる。取水の停止及び処理水開閉弁を閉栓した状態で逆洗開閉弁が開栓されると、貯水室内に貯水されていた処理水が、水頭圧によって集水管を介して下部濾過室に返送され、濾材の下部から上部に向かって通過し、逆洗水排水管を介して濾過槽外に排出される。
【0024】
本発明における濾過装置本体は、更に、貯水室内の貯水量を検知する水量検知部を具備する。そして本発明の濾過装置においては、濾過装置本体に対し、水量検知部によって検知された水量に応じて、取水の実行/停止、処理水開閉弁及び逆洗開閉弁の開栓/閉栓を命令する制御部を備えた点に最も大きな特徴を有する。
【0025】
ここで、本発明において「開栓」とは、弁が最大に開いている状態(弁の開度が最大の状態)のみを意味しているのではなく、弁が絞られて、通水量が減じられている状態も「開栓」に含まれる。一方、「閉栓」とは、弁が完全に閉じられている状態(弁の開度がゼロの状態)を意味する。従って、「開栓/閉栓」とは、弁の開度を調整することを意味する。又、既に「開栓」されている弁に対して「開栓を命令する」とは、開栓を維持する命令を与えることを意味する。同様に、既に「閉栓」されている弁に対して「閉栓を命令する」とは、閉栓を維持する命令を与えることを意味する。
【0026】
なお、原水の取水の実行/停止は、原水取水管に原水開閉弁が備えられている場合は、制御部からの取水の実行/停止命令を受けて、原水開閉弁の開栓/閉栓が行われるようにすることが好ましい。又、原水取水管に原水を導入するための手段としてポンプが用いられている場合にあっては、制御部からの取水の実行/停止命令を受けて、ポンプの稼働/停止が行われるようにしても良い。
【0027】
本発明の濾過装置において、例えば、水量検知部によって貯水室内に存する処理水の貯水量が少ないと判断された場合に、制御部が、処理水開閉弁を閉栓する旨の命令、若しくは処理水開閉弁の開度を少なくする旨の命令を与えるようにすれば、処理水の単位時間当たりの供給量に対して、原水の単位時間当たりの取水量が多くなり、優先的に貯水室内に処理水を輸送することができる。一方、水量検知部によって貯水室内に存する処理水の貯水量が多いと判断された場合に、制御部が原水の取水を停止する旨の命令を与えるようにすれば、処理水のオーバーフローを防止することができる。これによって、貯水室内に存する処理水の貯水量をコントロールすることができる。
【0028】
又、原水取水管を介して上部濾過室に原水を導入するための手段としてポンプを用いた場合にあっては、水量検知部によって貯水室内に存する処理水の貯水量が少ないと判断された際に、制御部がポンプの揚水量を増加させる旨の命令を与えれば、より速やかに貯水室内に処理水を貯水することができる。
【0029】
ところで、本発明の濾過装置は、貯水室に貯水された処理水によって、濾材を逆洗する仕組みとなっていることから、濾材を十分に逆洗するためには、逆洗開始時において、貯水室内に濾材を逆洗するに十分な量の処理水が貯水されている必要がある。
【0030】
この点につき、逆洗開始時において水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が基準貯水量未満の場合、制御部が、取水の実行、並びに処理水開閉弁及び逆洗開閉弁の閉栓を命令し、貯水室内の貯水量が基準貯水量を満たした時点で、制御部が、取水の停止、処理水開閉弁の閉栓、並びに逆洗開閉弁の開栓を命令すれば、常に十分量の処理水によって濾材を逆洗することができる。
【0031】
又、逆洗開始後、水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が最低貯水量となった時点で、制御部が、逆洗開閉弁の閉栓を命令すれば、逆洗の終了時点を設定することができると共に、不必要な処理水の消費を抑えることができる。
【0032】
特に、逆洗開始後、水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が最低貯水量となった時点で、制御部が、逆洗開閉弁の閉栓、並びに取水の実行を命令すれば、逆洗終了後、速やかに原水の取水が開始され、続く処理水の供給やその後の逆洗に備えることができる。
【0033】
ここで、「基準貯水量」及び「最低貯水量」は、基準貯水量と最低貯水量の差が濾材を逆洗するに十分な処理水の量以上となるように設定されるものであり、濾材の材質や体積、原水の水質、濾過装置の規模等に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
本発明の濾過装置において、原水の取水、処理水の供給、及び逆洗の各工程の開始は、制御部に対し各工程の開始を伝達する何らかの信号が与えられるようにすれば良い。例えば、制御部と電気的につながったスイッチを作業者が手動で操作することによって、各工程の開始を伝達する電気信号が制御部に与えられるようにしたり、タイマーによって時間を計り、一定の間隔で自動的に逆洗開始を伝達する電気信号が制御部に与えられるようにしたりする手段などを挙げることができる。
【0035】
本発明の濾過装置においては、上部濾過室の内圧を検知する圧力検知部を更に具備し、圧力検知部において設定レベル以上の圧力が検知された場合に、制御部が逆洗の開始を命令するようにすることが好ましい。
【0036】
即ち、原水を濾過することによって、濾材には徐々に目詰まりが生じ、濾材の通水性が低下していくことから、濾材の目詰まりが進むにつれ、濾材の上部に存する上部濾過室の内圧は増加する。
【0037】
これより、圧力検知部によって上部濾過室の内圧を検知し、設定レベル以上の圧力が検知された場合に、その旨の信号を受けた制御部が逆洗の開始を命令するようにすれば、濾材の逆洗が必要になった時点において、自動的に濾材を逆洗することができる。なお、設定レベルとしては、濾過装置の使用者が、濾材の種類や濾過装置の耐圧性等に応じて適宜決定すべき事項であり、特に限定されるものではない。例えば、濾過装置の使用開始時、又は、濾材の交換後における上部濾過室の内圧を基準値(=1)とし、濾過室の内圧が基準値より0.01〜0.05MPa程度増加した時点で、逆洗が開始されるように設定レベルを決定すれば良い。
【発明の効果】
【0038】
本発明の濾過装置によれば、貯水室内に存する処理水の貯水量をコントロールすることができ、逆洗時において、十分な量の処理水によって濾材を逆洗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、実施形態に係る本発明の濾過装置における濾過装置本体を示す模式図である。
【図2】図2は、濾過装置本体における、(a)原水の取水時、(b)処理水の供給時(供給量<原水取水量)、(c)処理水の供給時(供給量>原水取水量)、及び(d)逆洗時におけるそれぞれの状態を示す説明図である。
【図3】図3は、実施形態に係る本発明の濾過装置を示すブロック図である。
【図4】図4は、実施形態に係る本発明の濾過装置における処理水供給時の制御を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態に係る本発明の濾過装置における逆洗時の制御を示すフローチャートである。
【図6】図6は、原水取水開始スイッチを備えた本発明の濾過装置を示すブロック図である。
【図7】図7は、各スイッチと共に制御部が濾過装置本体に組み込まれた本発明の濾過装置を示すブロック図である。
【図8】図8は、圧力検知部からの信号を受けて逆洗を自動的に開始する本発明の濾過装置を示すブロック図である。
【図9】図9は、ポンプPの揚水量の増減を制御する本発明の濾過装置を示すブロック図である。
【図10】図10は、従来の濾過装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の濾過装置の一実施形態について説明する。なお、本発明の濾過装置は、この実施形態に限定されるものではない。
【0041】
図1に示すように、濾過装置本体Aは、中空の濾過槽2と、濾過槽2内を上部側の貯水室3と下部側の濾過室4とに区画する隔壁21と、濾過室4内を更に上部側の上部濾過室41と下部側の下部濾過室42に区画する濾材5と、上部濾過室41内に原水を取水するための原水取水管6と、濾材5を通過した処理水を下部濾過室42から供給するための、処理水開閉弁71を備えた処理水供給管7と、下部濾過室42の容量に対して過剰となった処理水を貯水室3内に輸送する集水管8と、濾過槽2の壁面を通じて上部濾過室41に連通すると共に上部濾過室41内に向かって開口する、逆洗開閉弁91を備えた逆洗水排水管9と、貯水室3内の貯水量を検知する水量検知部10(10H、10L)とを具備する。
【0042】
濾過装置本体Aは、中空円筒状の濾過槽2を本体とする。
【0043】
濾過槽2は、その内部を上下に仕切る隔壁21によって、上部側の貯水室3と下部側の濾過室4とに区画されている。
【0044】
貯水室3は、天井部に開口22が設けられており、貯水室3内外の気圧が常に等しくなるように設計されている。即ち、本実施形態における濾過装置1における貯水室3には、極端な内圧が発生することがないため、貯水室3の強度については、処理水を貯水し得る剛性があれば十分である。これより、貯水室3の外壁は、汎用プラスチックなどの比較的安価な素材を用いて形成することができる。
【0045】
一方、濾過室4は、原水の供給量、処理水の取水量及び濾材5の目詰まりの程度などによって、その内圧が変化する。このため、本実施形態においては、濾過室4を剛性の高いFRPによって形成している。又、貯水室3の内部を上下に仕切る隔壁21を、周縁部から中央部にむかってなだらかに上方に膨らむドーム形状とすると共に、濾過室4の底壁の角を丸めることによって濾過室4の耐圧性を向上している。更に、濾過室4には、濾過室4における上部濾過室41の内圧を測定する圧力検知部11が備えられている。加えて、濾過室4には、念のため濾過室4の内圧が許容レベルを超えた場合に自動的に開栓するリリーフ弁43が備えられており、濾過室4の内圧が極端に大きくならないようにしている。
【0046】
濾材5は、濾過室4内に配された濾材設置台51上に、一定の積層厚となるように敷設された砂の層である。濾材設置台51は、板状の設置台本体52に設けられた複数の貫通孔53に各々ストレーナ54を嵌合したものである。即ち、濾材設置台51は、ストレーナ54によって通水性が付与されている。
【0047】
原水取水管6は、原水開閉弁61を備えており、この原水開閉弁61が開栓されることによって、原水取水管6を介して原水が上部濾過室41内に導入される。原水の揚水は、ポンプPによって行われる。なお、本実施形態においては、上部濾過室41内で開口する原水取水管6の開口端62を上方に向けて屈曲している。これより、原水は上部濾過室41の上方に向かって吐出され、拡散しながら順次落下する。即ち、取水の際に、濾材5の一部に原水が偏ることを防止している。
【0048】
処理水供給管7は、処理水開閉弁71を備えており、この処理水開閉弁71が開栓されることによって、下部濾過室42内に蓄えられた処理水が処理水供給管7を介して供給される。
【0049】
集水管8は、隔壁21、濾材5、及び濾材設置台51を貫通して複数本立設されている。濾材設置台51を貫通して下部濾過室42内に向かって突出する集水管8の下端は、下部濾過室42の周縁に向かって屈曲されている。又、隔壁21を貫通して貯水室3内に突出させた集水管8の上端開口81の位置(高さ)は、ドーム形状の隔壁21の頂部の位置(高さ)となるように設定されている。
【0050】
逆洗水排水管9は、逆洗開閉弁91を備えている。逆洗水排水管9は、円筒状の濾過槽2の中心軸に沿って、隔壁21、濾材5、及び濾材設置台51を垂直方向に貫通すると共に下部濾過室42において水平方向に屈曲し、濾過槽2の壁面(下部濾過室42の壁面)を貫通して外部と通じている。逆洗水排水管9における隔壁21を貫通して突出する上端は閉塞されており、逆洗水排水管9における隔壁21の下面近傍付近の位置に、上部濾過室41内に向かって開口する排出口92が設けられている。貯水室3内に突出させた逆洗水排水管9の上端部分は、濾過槽2の外壁に配された空気抜き弁93と通じている。
【0051】
水量検知部10は、高水位検知部10Hと低水位検知部10Lとからなる。高水位検知部10Hは、貯水室3内における基準貯水量に相当する位置に配され、低水位検知部10Lは、貯水室3内における最低貯水量に相当する位置に配されている。基準貯水量と最低貯水量は、その水量の差が濾材5を逆洗するに十分な水量となるように決定される。なお、本実施形態においては、低水位検知部10Lの位置を空気抜き弁93の位置に合わせて配置し、この位置を基準として高水位検知部10Hの配置を決定している。
【0052】
なお、水量検知部10としては、貯水室3内に貯水された処理水の貯水量を測り得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、貯水室3内にフロートを浮かべ、貯水室3内におけるフロートの浮揚位置に応じて貯水量を測るようにしても良い。又、貯水室3内下部に水圧センサを配して、処理水の貯水量に応じて変化する水圧に応じて水量を測るようにしても良い。更に、濾過室4の容量、原水の取水量、処理水の供給量、及び逆洗に使用した処理水の量等を換算することによって、貯水室3内の貯水量を算出するようにしても良い。
【0053】
図2(a)に示すように、濾過装置本体Aにおいては、ポンプPを稼働させた上で、原水開閉弁61が開栓されることによって、原水が上部濾過室41内に導入される(この原水の単位時間当たりの取水量をXとする。)。上部濾過室41内に導入された原水は、重力によって、濾材5を上部から下部に向かって通過して濾過され、処理水となって下部濾過室42内に蓄えられる。
【0054】
この際、上部濾過室41内の上部に溜まった空気は、排出口92及び空気抜き弁93を介して順次濾過槽2外に排出される。空気抜き弁93は、排出すべき空気がなくなった時点で自動的に閉栓される仕組みとなっている。
【0055】
この状態で、処理水供給管7に備えられた処理水開閉弁71が開栓されると、下部濾過室42から処理水供給管7を介して処理水が供給される(この処理水の供給量をYとする。)。
【0056】
即ち、濾過装置本体Aにおいては、濾材5を通過して下部濾過室42において蓄えられた処理水を、下部濾過室42に連通させた処理水供給管7を介して、下部濾過室42から直接供給するができる。
【0057】
ここで、処理水の単位時間当たりの供給量Yが原水の単位時間当たりの取水量Xより少ない場合(Y<X)にあっては、図2(b)に示すように、下部濾過室42の容量に対して過剰量となった処理水が、ポンプPによる原水の導入圧によって、集水管8を介して貯水室3に輸送され、貯水される。なお、念のため濾過装置本体Aには、一端を貯水室3内上部において開口させると共に他端を濾過槽2外に通じさせたオーバーフロー管31が備えられている。もし貯水された処理水が、オーバーフロー管31の上部開口端を超えた場合には、余剰分の処理水がドレン管31を介して濾過槽2外に排出される。
【0058】
一方、処理水の単位時間当たりの供給量Yが原水の単位時間当たりの取水量Xを超える場合(Y>X)にあっては、図2(c)に示すように、貯水室3に貯水された処理水のうちの実質的貯水分が、貯水室3に貯水された処理水の水位と集水管8の上端開口81の位置との間に生じる水頭圧によって、集水管8を介して下部濾過室42内に返送される。
【0059】
即ち、濾過装置本体Aは、濾過室4より上部の位置に貯水室3を配置し、下部濾過室42の容量に対して過剰量となった処理水を貯水室3において順次貯水し、単位時間当たりの処理水の供給量が単位時間当たりの原水の取水量を超える場合には、供給量と取水量の差の分、貯水室3に貯水された処理水が集水管8を介して下部濾過室42内に返送される構成としている。これより、単位時間当たりの処理水の供給量が単位時間当たりの原水の取水量を超える場合にあっても、下部濾過室42に蓄えられた処理水及び貯水室3に貯水された処理水の内の実質的貯水分を供給し尽くすまでは、安定して処理水を得ることができる。
【0060】
又、前述の如く、濾過装置本体Aにおいては、隔壁21を貫通して貯水室3内に突出させた集水管8の上端開口81の位置(高さ)を、ドーム形状の隔壁21の頂部の位置(高さ)となるように設定している。即ち、濾過装置本体Aにおいては、集水管8の上端開口81の位置を、貯水室3内のできるだけ下部の位置(隔壁21の上面近辺)に設定することによって、貯水室3に貯水された処理水の量に対する実質的貯水分の割合を向上させ、貯水室3に貯水された処理水を無駄なく利用できるように構成している。
【0061】
図2(d)に示すように、原水開閉弁61及び処理水開閉弁71が閉じられると共に逆洗開閉弁91が開栓されると、貯水室3内に貯水された処理水が、貯水室3に貯水された処理水の水位と集水管8の上端開口81との間に生じる水頭圧によって、集水管8を介して下部濾過室42に返送される。下部濾過室42に返送された処理水は、濾材5の下部から上部に向かって通過し、逆洗水排水管9の上部に設けられた排出口92から逆洗水排水管9を介して濾過槽2外に排出される。これより、貯水室3に貯水された処理水によって、濾材5が逆洗される。
【0062】
本実施形態においては、濾材設置台51を貫通して下部濾過室42内に向かって開口する集水管8の下端を、下部濾過室42の周縁に向かって屈曲させているから、集水管8を介して下部濾過室42に返送された処理水は、下部濾過室42内において拡散する。これより、濾材5の全面にわたって偏りなく処理水が通過する。
【0063】
なお、逆洗に供された処理水は、濾材5に付着していた汚れと共に濾材5を構成する砂を上部濾過室41内に舞い上げることから、排出口92はできるだけ上部濾過室41の上部に近い位置に設けることが好ましい。又、逆洗に供された処理水が多方向から逆洗水排水管92内に導入されるように、排出口92は、逆洗水排水管9の周囲に複数設けることが好ましい。
【0064】
本実施形態に係る濾過装置1は、前記濾過装置本体Aに対し、水量検知部10によって検知された水量に応じて、原水開閉弁61、処理水開閉弁71及び逆洗開閉弁91の各弁の開栓/閉栓を命令する制御部Bを備える。
【0065】
図3のブロック図に示すように、濾過装置本体Aにおける原水開閉弁61、処理水開閉弁71及び逆洗開閉弁91の各弁の開栓/閉栓は、演算論理装置を搭載した制御部Bによって制御されている。制御部Bは、処理水供給開始スイッチC1及び逆洗開始スイッチC2と共に外部操作盤Cに配されている。貯水室3内における処理水の貯水量によって開栓/閉栓のタイミングは変わってくるが、外部操作盤Cにおける処理水供給開始スイッチC1を操作すると、制御部Bは、原水開閉弁61の開栓を命令する。この命令を受けて原水開閉弁61が開栓し、原水の取水が開始される。その一方で、制御部Bは、処理水開閉弁71の開栓を命令する。この命令を受けて処理水開閉弁71が開栓し、処理水の供給が開始される。
【0066】
又、貯水室3内における処理水の貯水量によって開栓/閉栓のタイミングは変わってくるが、外部操作盤Cにおける逆洗開始スイッチC2を操作すると、制御部Bは、原水開閉弁61及び処理水開閉弁71の閉栓、並びに逆洗開閉弁91の開栓を命令する。この命令を受けて原水開閉弁61及び処理水開閉弁71が閉栓すると共に、逆洗開閉弁91が開栓し、逆栓が開始される。
【0067】
濾過装置本体Aにおける水量検知部10は、貯水室内の処理水の貯水量を検知し、検知した貯水量に関する信号を制御部Bに与える。本実施形態において、水量検知部10は、貯水室3内に貯水された処理水の水位が高水位検知部10Hの位置に相当すると、その旨の信号を制御部Bに伝達する。一方、貯水室3内に貯水された処理水の水位が低水位検知部10Lの位置に相当すると、その旨の信号を制御部Bに伝達する。係る信号を受けた制御部Bは、原水開閉弁61、処理水開閉弁71及び逆洗開閉弁91の開栓/閉栓を命令する。
【0068】
以下、制御部Bによる各弁の制御を、図4及び図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、原水を揚水するポンプPは、原水開閉弁61の開栓と共に作動し、原水開閉弁61の閉栓と共に停止するものとする。又、原水の取水量は、処理水の供給量より多いものとする。
【0069】
<処理水供給時における制御>
図4のフローチャートに示すように、外部操作盤Cにおける処理水供給開始スイッチC1が操作(ON)されて、処理水供給開始命令が与えられると(S20)、制御部Bは、まず、処理水開閉弁71の閉栓を維持したまま、原水開閉弁61の開栓を命令する(S21)。これによって、原水開閉弁61は開栓し、上部濾過室41に原水が導入される。
【0070】
その後、制御部Bは、水量検知部10からの信号を確認し、最低貯水量を満たしているか否かを判断する(S22)。最低貯水量が満たされない間は、処理水開閉弁71の閉栓は維持される。最低貯水量が満たされた時点で、制御部Bは、処理水開閉弁71の開栓を命令する(S23)。これによって、処理水開閉弁71は開栓し、下部濾過室42から処理水が供給される。
【0071】
処理水の供給開始後、制御部Bは、水量検知部10からの信号を確認し、基準貯水量を満たしているか否かを判断する(S24)。基準貯水量が満たされた時点で、原水開閉弁61の閉栓を命令する(S25)。
【0072】
原水開閉弁61が閉栓された後、制御部Bは、最低貯水量を満たしているか否かを判断する(S26)。最低貯水量が満たされている間、処理水の供給は続行される。
【0073】
最低貯水量を満たさなくなった時点で、制御部は、処理水開閉弁71の閉栓を命令すると共に原水開閉弁の開栓を命令する(S21)。
【0074】
以後、処理水供給開始スイッチC1が操作(OFF)されて、処理水供給開始命令が解除されるまで、S21〜S26が繰り返される。なお、処理水供給開始命令が解除された時点で、処理水開閉弁71及び原水開閉弁61は閉栓される。
【0075】
<逆洗時における制御>
図5のフローチャートに示すように、外部操作盤Cにおける逆洗開始スイッチC2が操作(ON)されて、逆洗開始命令が与えられると(S30)、制御部Bは、処理水開閉弁71が開栓されているか否かを判断し(S31)、処理水開閉弁71が開栓されている場合は、処理水開閉弁71の閉栓を命令する(S32)。
【0076】
次いで、制御部は、水量検知部10からの信号を確認し、基準貯水量を満たしているか否かを判断する(S33)。基準貯水量が満たされている場合、制御部Bは、逆洗開閉弁91の開栓並びに原水開閉弁61の閉栓を命令する(S34)。これによって、濾材5の逆洗が開始される。
【0077】
一方、基準貯水量が満たされていない場合、制御部Bは、原水開閉弁61が開栓されているか否かを判断する(S35)。原水開閉弁61が開栓されている場合、制御部Bは、基準貯水量を満たすまで、水量検知部10からの信号を確認する(S33)。原水開閉弁61が閉栓されている場合、制御部Bは、原水開閉弁61の開栓を命令し(S36)、基準貯水量を満たすまで、水量検知部10からの信号を確認する(S33)。
【0078】
その後、基準貯水量を満たした時点で、制御部Bは、逆洗開閉弁91の開栓並びに原水開閉弁61の閉栓を命令する(S34)。
【0079】
逆洗開始後、制御部Bは、水量検知部10からの信号を確認し、最低貯水量を満たしているか否かを判断する(S37)。
【0080】
最低貯水量が満たされている場合は、そのまま逆洗が継続されるが、逆洗の継続によって最低貯水量が満たされなくなった時点で、制御部Bは、逆洗開閉弁91の閉栓及び原水開閉弁61の開栓を命令する(S38)。
【0081】
その後、制御部Bは、水量検知部10からの信号を確認し、基準貯水量を満たしているか否かを判断する(S39)。基準貯水量が満たされた時点で、制御部Bは、原水開閉弁61の閉栓を命令する(S40)。これによって、再度、貯水室3内に処理水が満たされ、続く処理水の供給や、その後の逆洗に備えられる。
【0082】
なお、本実施形態においては、処理水供給開始スイッチC1を操作することによって、原水の取水及び処理水の供給が開始されるようにしているが、原水の取水のみを命令するスイッチ(原水取水開始スイッチC3)を更に設けることによって、処理水の供給を停止した状態で原水の取水が行われるようにしても良い。この場合、濾過装置1のブロック図は、図6のようになる。
【0083】
又、本実施形態においては、遠隔操作を可能とすべく、外部操作盤Cを、濾過装置本体Aから独立した状態としているが、処理水供給開始スイッチC1、及び逆洗開始スイッチC2等の各スイッチを制御部Bと共に濾過装置本体Aに組み込んでも良い。この場合、濾過装置1のブロック図は、図7のようになる。
【0084】
更に、本実施形態においては、外部操作盤Cにおける逆洗開始スイッチC2を操作することによって逆洗開始命令が与えられるようにしているが、逆洗開始スイッチC2の操作とは別に、上部濾過室41の内圧を測定する圧力検知部11が設定レベル以上の圧力を検知した際に、自動的に逆洗開始命令が与えられるようにしても良い。これによって、濾材5の逆洗が必要になった時点において、適時、濾材5を逆洗することができる。この場合、濾過装置1のブロック図は、図8のようになる。
【0085】
加えて、本実施形態においては、原水開閉弁61の開栓/閉栓が行われた際に、制御部Bが、ポンプPの作動/停止を制御するようにしているが、水量検知部10から伝達される信号を基に、制御部Bが、ポンプPの揚水量の増減を制御しても良い。この場合、濾過装置1のブロック図は、図9のようになる。なお、ポンプPの揚水量の増減は、例えば、インバータなどを利用することによって容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の濾過装置は、特に、魚河岸や水族館、プール等の比較的大型の水槽に処理水を供給する際に、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 濾過装置
2 濾過槽
21 隔壁
3 貯水室
4 濾過室
41 上部濾過室
42 下部濾過室
5 濾材
6 原水取水管
61 原水開閉弁
7 処理水供給管
71 処理水開閉弁
8 集水管
9 逆洗水排水管
91 逆洗開閉弁
10 水量検知部
11 圧力検知部
A 濾過装置本体
B 制御部
C 外部操作盤
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の濾過槽と、
濾過槽内を上部側の貯水室と下部側の濾過室とに区画する隔壁と、
濾過室内を更に上部側の上部濾過室と下部側の下部濾過室に区画する濾材と、
上部濾過室内に原水を取水するための原水取水管と、
濾材を通過した処理水を下部濾過室から供給するための、処理水開閉弁を備えた処理水供給管と、
下部濾過室の容量に対して過剰となった処理水を貯水室内に輸送する集水管と、
濾過槽の壁面を通じて上部濾過室に連通すると共に上部濾過室内に向かって開口する、逆洗開閉弁を備えた逆洗水排水管と、
貯水室内の貯水量を検知する水量検知部と、
を具備する濾過装置本体に対し、
水量検知部によって検知された水量に応じて、取水の実行/停止、処理水開閉弁及び逆洗開閉弁の開栓/閉栓を命令する制御部を備えたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濾過装置において、
濾過装置本体は、原水取水管に原水を導入するためのポンプを更に具備し、水量検知部によって検知された水量に応じて、制御部からの取水の実行/停止命令を受けて、ポンプの稼動/停止が行われる濾過装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の濾過装置において、
原水取水管には、原水開閉弁が備えられてなり、制御部からの取水の実行/停止命令を受けて、原水開閉弁の開栓/閉栓が行われる濾過装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濾過装置において、
逆洗開始時、水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が基準貯水量未満の場合、制御部が、取水の実行、並びに処理水開閉弁及び逆洗開閉弁の閉栓を命令し、貯水室内の貯水量が基準貯水量を満たした時点で、制御部が、取水の停止、処理水開閉弁の閉栓、並びに逆洗開閉弁の開栓を命令する濾過装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過装置において、
逆洗開始後、水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が最低貯水量となった時点で、制御部が、逆洗開閉弁の閉栓を命令する濾過装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過装置において、
逆洗開始後、水量検知部によって検知された貯水室内の貯水量が最低貯水量となった時点で、制御部が、逆洗開閉弁の閉栓、並びに取水の実行を命令する濾過装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の濾過装置において、
濾過装置は、上部濾過室の内圧を検知する圧力検知部を更に具備し、圧力検知部において設定レベル以上の圧力が検知された場合に、制御部が、逆洗の開始を命令する濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86141(P2012−86141A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234431(P2010−234431)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】