説明

火力調節装置

【課題】従来の火力調節装置では、全閉状態にあるレバーを全開方向に向かって揺動させることにより点火が行われる。そのため、台所で作業中に身体の一部がレバーに接触した場合のように、予期せぬ状態でレバーが揺動しても点火装置が作動する恐れが生じる。
【解決手段】レバー2の先端を押し下げることによりレバー2の下面でロックピン4をロック位置からロック解除位置に押し下げるように構成し、レバー2の先端を押し下げないとレバー2を全閉位置から全開位置に向かって揺動することができないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にガスコンロに内蔵され、ガスコンロのガスバーナに供給されるガス供給量を調節する火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の火力調節装置として、1つの板状のレバーを水平方向に揺動するように設け、全閉位置から全開位置にレバーを揺動することによって点火動作と共にガスバーナへガスを供給する通路を開弁することができるようにしたものが知られている。そして、ガスバーナに点火された後は開弁された通路の開度を増減することによりガスバーナの火力を調節するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−58018号公報(第5頁、第1図、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものでは、全閉状態にあるレバーを全開方向に向かって揺動させることにより点火が行われる。そのため、台所で作業中に身体の一部がレバーに接触した場合のように、予期せぬ状態でレバーが揺動すると点火装置が作動する恐れが生じる。なお、点火操作と火力調節操作とを別個のレバーや押しボタンで行うものも提案されているが、1個のレバーで点火および火力調節操作を行うものは操作が簡便であるため市場ニーズが存在する。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、1個のレバーで点火操作および火力調節操作を行うことができ、かつ、不用意に点火操作が行われない火力調節装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による火力調節装置は、バーナにガスを供給するガス通路に介在された閉子を所定の角度範囲内で回転させることによりバーナへのガスの供給状態を、全閉状態から全開状態まで調節する火力調節装置であって、上記閉子の回転軸線上にロックピンを設け、このロックピンを閉子が全閉状態で閉子の回転を禁止するロック位置と、この回転軸線に沿って押し下げることにより閉子の回転を許可するロック解除位置との間で進退自在に設けると共に、ロックピンをロック位置側に付勢する付勢手段を取り付け、閉子を全閉状態から全開状態に向かって回転させる際に、付勢手段による付勢力に抗してロックピンをロック位置からロック解除位置に押し下げるものにおいて、上記ロックピンの先端を跨いで前方に向かって延びる板状のレバーを、このレバーを揺動することにより上記閉子を回転させるように設けると共に、レバーの先端を押し下げることによりレバーの下面でロックピンをロック位置からロック解除位置に押し下げるように構成し、レバーの先端を押し下げないとレバーを全閉位置から全開位置に向かって揺動することができないようにしたことを特徴とする。
【0007】
上記ロックピンがロック位置にあればレバーを全閉位置から全開方向に揺動しようとしてもレバーは動かない。レバーを動かすためにはレバーの前端を押し下げてロックピンをロック解除位置に押し下げる必要がある。そして、ロック解除位置にしたままレバーを全開方向に揺動させることにより閉子が回転する。
【0008】
ところで、レバーの揺動中心を閉子の回転軸線に一致させてもよいが、その構成ではレバーの揺動角度しか閉子を回転させることができない。閉子の回転角度をレバーの揺動角度より大きくするためには、レバーの揺動中心と閉子の回転中心とが離れている必要がある。但し、このように構成すると、レバーの下面とロックピンの先端との接触点がレバーの揺動に伴って移動する。すなわち、ロックピンの先端でレバーの下面が擦れることになる。レバーの先端を押し下げたままレバーを揺動すると、この擦れによりレバーの下面やロックピンの先端が摩耗することになる。
【0009】
そこで、このような場合には、上記ロックピンは、全閉位置で押し下げられた状態で閉子を全開方向に回転させ続けている状態ではロックピンに対する押し下げ方向の力を解除しても上方に戻らない機構を備え、上記レバーの揺動中心と閉子の回転中心とが離れており、レバーを全閉位置から全開位置へ揺動する途中でレバーの下面がロックピンの先端から離れるようにすることが望まれる。これにより、レバーの下面の摩耗が低減される。
【0010】
なお、上記閉子の手前に、前方から閉子に向かって液状物が浸入することを防止する隔壁を設けると共に、上記レバーをこの隔壁を越えて手前に延在させ、レバーを全閉位置から全開位置へ揺動する途中でレバーが隔壁の上縁に沿って上方に持ち上げられ、レバーの下面がロックピンの先端から離れるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、レバーの先端を一旦押し下げなければレバーを全開位置に向かって揺動させることができないので、レバーに不用意に接触してもレバーが予期せずに全開位置に向かって移動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による火力調節装置の斜視図
【図2】同火力調節装置の側面図
【図3】レバーの揺動状態を示す平面図
【図4】レバーの動きと隔壁の形状との関係を示す図
【図5】レバーから連結ピンへの力の作用方向を示す図
【図6】他の実施の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2を参照して、1は本発明による火力調節装置である。2は火力調節用のレバーであり、揺動軸21を中心として揺動自在に保持されているブラケット22に対してピン23によって連結されている。なお、ブラケット22とレバー2との間には後述するバネ24が縮設されている。
【0014】
上記構成では、レバー2は左右方向には揺動軸21を中心として揺動することができ、上下方向に対してはピン23を中心に揺動することができる。そして、バネ24はレバー2の先端を下方に向かって付勢するように作用する。
【0015】
この火力調節装置1には、特開平9−159053号公報などにより従来より知られた閉子(図示せず)が内蔵されている。この閉子は円錐台形状をしており、周面にガスの通路となる開口が形成されている。そして、閉子が収納されている周壁にも開口が形成されており、周壁の開口と閉子の開口とが一致すると、その一致した部分を通ってガスが下流のガスバーナに供給される。そして、閉子を回転させ、一致している部分の面積を増加させればガスバーナに供給されるガス量が増加し火力が大きくなり、逆に一致する部分の面積が減少すればガスバーナへ供給されるガス量が減少して火力が小さくなる。そして、さらに一致する部分の面積を減少させ、一致する部分の面積がゼロになると(全閉状態)、ガスバーナには全くガスが供給されなくなり、ガスバーナは消火する。
【0016】
この閉子はロックピン4の下方に収納されている。そして、このロックピン4を中心として回転する連結ピン31が閉子に連なっている。従って、ロックピン4を中心にしてこの連結ピン31を回転させると、下方に収納されている閉子が同じ角度で回転することになる。但し、このロックピン4は閉子が全閉状態で閉子が回転しないようにロックするものであり、ロックピン4が図示のロック位置にあると連結ピン31を回転させようとしても回転させることができない。
【0017】
ロックピン4は上方に向かって付勢されており、その付勢力に抗してロックピン4を押し下げるとロックピン4の位置がロック解除位置となりロック状態が解除される。その状態になれば、連結ピン31を回転させて閉子を回転させることができるようになるが、連結ピン31に回転トルクを作用させ続けている状態、すなわち閉子が回転し続けている状態では、ロックピン4に対する押し下げ方向の力を解除してもロックピン4は上方に戻らない機構が設けられている。この機構については上述の特開平9−159053号公報などによって既知であるため詳細な説明は省略するが、ロックピン4が押し下げられたままの状態で閉子を回転させれば、閉子は全開位置を超えた位置に設定された点火位置まで回転することができ、その点火位置ではマイクロスイッチがONされて点火装置(図示せず)が作動してガスバーナに対して火花放電が開始される。その状態では閉子は全開状態と同様であるのでガスバーナからガスが噴出し、火花によってガスバーナに点火される。
【0018】
連結ピン31に対する回転トルクを解除するとロックピン4は付勢力によって上方に戻るが、その状態で火力調節範囲内に戻されると、全開位置を超えて点火位置まで連結ピン31を回転することができなくなる。なお、ロックピン4が上方に戻っても閉子を全閉位置に戻してガスバーナを消火するまではロックピン4によるロック機能は作動せず、その結果、閉子は全閉状態と全開位置との間に挟まれた火力調節範囲内で自由に回転することができ、その回転角度に応じてガスバーナの火力が調節される。
【0019】
図1に戻り、レバー2の中程には長孔25が形成されており、レバー2をブラケット22に取り付けた状態で、連結ピン31が長孔25に挿通されるようにした。
【0020】
なお、11は隔壁であり、前方から水などの液状物が掛かった場合に、その液状物が閉子が内蔵されている部分に及ばないように堰き止めるためのものである。また、それと同時に、後述するようにレバー2の先端を押し下げた場合に必要以上にレバー2が押し下げられないように制限するものでもある。具体的にはレバー2が押し下げられるとレバー2に形成された下方に突出する凸部26が隔壁11の上縁に当接し、レバー2がそれ以上押し下げられないように制限する。また、レバー2を押し下げて隔壁11の上縁に当接させたままで左右に揺動する際の摩擦力を低減するために凸部26を形成している。さらに、レバー2の先端に左右方向、すなわち火力調節方向に瞬間的に大きな力が作用した場合に、安全壁32a,32bに当接して、その力が閉子に作用しないように、制限用の安全爪27をレバー2に形成した。
【0021】
上記構成による火力調節装置1の作用を図3及び図4を参照して説明する。レバー2の長孔25が連結ピン31に係合しているので、レバー2が図に示す全閉位置から全開位置に向かって揺動すると、連結ピン31が回転して閉子を回転させることになる。但し、全閉位置ではロックピン4によるロックが作用しているので、そのロック状態を解除しなければレバー2を全閉位置から揺動させることができない。
【0022】
上述のように、ロック状態を解除するためにはロックピン4を押し下げる必要がある。そこで、レバー2の先端を押し下げるとレバー2の下面がロックピン4の先端に当接してロックピン4を押し下げることになる。但し、ロックピン4は上方に付勢されているので、レバー2の先端を押し下げるためには、ロックピン4を上方に付勢している付勢力に抗してレバー2の先端を押し下げる必要がある。ここで、上記バネ24の付勢力はレバー2の先端を下げる方向に作用するので、バネ24の付勢力によって実際にレバー2の先端を押し下げるために必要な力が低減される。また、レバー2に触れていない状態でもバネ24の付勢力によってレバー2は下方に付勢されているので、レバー2のがたつきが防止されると共に、レバーの先端を持って操作する際のフィーリングが向上される。
【0023】
上述のように、レバー2を全閉位置から全開位置に向かって揺動する際、まず、レバー2の先端を押し下げ、ロックピン4をロック解除位置にする。その状態では、レバー2の凸部26は隔壁11の上縁低部11aに当接している。そのままの状態でレバーを右方向に揺動させると、凸部26は上縁低部11aに沿って移動するが、ロックピン4の先端はレバー2の下面を擦ることになる。さらにレバー2を揺動させると凸部26は上縁高部11bに乗り上げる。
【0024】
レバー2が揺動し続けている状態ではロックピン4に対する押し下げ力が解除されてもロックピン4は下がり続けたままの状態を保持する。従って、凸部26が上縁高部11bに乗り上げると、レバー2がロックピン4の先端から離れ、ロックピン4がレバー2の下面を擦ることがなくなる。
【0025】
さらにレバー2を右に揺動させると、全開位置を超えて点火位置までレバー2が揺動する。ここでガスバーナへの点火が確認されるとレバー2から手を離す。すると、レバー2は上方に復帰するロックピン4によって押し上げられ、かつ全開位置まで戻される。この状態ではガスバーナに点火されているので、レバー2を火力調節範囲内で移動させればガスバーナの火力を調節することができる。そして、最後にレバー2を全閉位置に戻すと、ロックピン4によるロックが作動して、再びレバー2を押し下げないとレバー2を右方向に揺動できなくなる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、隔壁11の上縁を上縁低部11aと上縁高部11bとの2段にすることによりレバー2の揺動途中でレバー2の下面にロックピン4の先端が接触しないようにしたが、レバー2の下面に凹部を形成して、揺動途中からその凹部でロックピン4の先端から逃げるようにしてもよい。
【0027】
図5を参照して、上記構成ではレバー2の揺動により連結ピン31に与える回転力の方向Fと連結ピン31が移動しようとする方向Mとがほとんどの状態で一致しない。これはレバー2の揺動中心21と連結ピン31の回転中心(ロックピン4の設置位置)とが一致していないことに起因するが、これはレバー2の揺動角度よりも連結ピン31の回転角度を大きくしたいためである。ところが、上記回転力の方向Fと移動方向Mとが一致しないとレバー2に対する揺動方向の力が効率よく連結ピン31に回転力として伝達されず、その結果、レバー2の操作感が重くなると言う不具合が生じる。
【0028】
そこで、このような場合には、図6に示すように、レバー2の揺動によって大ギヤ5を回転させ、その大ギヤ5に噛合する小ギヤ51に連動して閉子を回転させるようにしてもよい。この構成ではレバー2に対する操作力を効率よく閉子の回転力にすることができ、レバー2の操作感が軽くなる。また、ギヤ比を変更することにより、レバー2の揺動角度と閉子の回転角度との比を自由に変更することができる。
【0029】
また、上記構成ではレバー2の先端の幅を他の部分の幅より細くして、不要に大きな力が先端に作用した場合に先端部分が変形して力を吸収するようにしたが、図6に示すように、切欠き2aを設けて、積極的に切欠き2a部分で変形して力を吸収するようにしてもよい。
【0030】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0031】
1 火力調節装置
2 レバー
4 ロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナにガスを供給するガス通路に介在された閉子を所定の角度範囲内で回転させることによりバーナへのガスの供給状態を、全閉状態から全開状態まで調節する火力調節装置であって、上記閉子の回転軸線上にロックピンを設け、このロックピンを閉子が全閉状態で閉子の回転を禁止するロック位置と、この回転軸線に沿って押し下げることにより閉子の回転を許可するロック解除位置との間で進退自在に設けると共に、ロックピンをロック位置側に付勢する付勢手段を取り付け、閉子を全閉状態から全開状態に向かって回転させる際に、付勢手段による付勢力に抗してロックピンをロック位置からロック解除位置に押し下げるものにおいて、上記ロックピンの先端を跨いで前方に向かって延びる板状のレバーを、このレバーを揺動することにより上記閉子を回転させるように設けると共に、レバーの先端を押し下げることによりレバーの下面でロックピンをロック位置からロック解除位置に押し下げるように構成し、レバーの先端を押し下げないとレバーを全閉位置から全開位置に向かって揺動することができないようにしたことを特徴とする火力調節装置。
【請求項2】
上記ロックピンは、全閉位置で押し下げられた状態で閉子を全開方向に回転させ続けている状態ではロックピンに対する押し下げ方向の力を解除しても上方に戻らない機構を備え、上記レバーの揺動中心と閉子の回転中心とが離れており、レバーを全閉位置から全開位置へ揺動する途中でレバーの下面がロックピンの先端から離れるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の火力調節装置。
【請求項3】
上記閉子の手前に、前方から閉子に向かって液状物が浸入することを防止する隔壁を設けると共に、上記レバーをこの隔壁を越えて手前に延在させ、レバーを全閉位置から全開位置へ揺動する途中でレバーが隔壁の上縁に沿って上方に持ち上げられ、レバーの下面がロックピンの先端から離れるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の火力調節装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113457(P2013−113457A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257832(P2011−257832)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】